after dark
冷えきった夜風から逃げる様に、ドアの内側へと滑り込む。
晩秋の夜は冷える。しかし今日のそれは、身体だけでなく心まで冷やそうとしてくるような…そんな気がした。
もちろん気のせいである。
ただ今のやりようのない気持ちが、そう思わせるのだ。
「………。」
右手に下げた大きな紙袋を部屋の隅へと置き、礼服の上を脱ぐ。
今日は祝いの日であった。仲の良かった友人の、結婚式。
しかし今日の自分はそれを素直に祝うことが、果たして出来ていたのだろうか…。
いや、自信は無い。
なぜならその相手は、自分が好きだった女性だったから。
大学時代の同窓生、自分とも割と仲が良かった…と思う。おそらく悪い関係ではなかったし、やりようによってはもっと深い関係になれていたと今でも思う。
しかし、彼女と一緒になったのは友人の方だった。
もし、自分から思いを伝えることが出来ていたらと…何度思ったろうか。
彼女は魔物である。人魔の交流が始まって以後、この世界にやってきたサキュバスの一人。故に、友人の方を見染めてしまった後となっては既に手遅れなのだ。
いや、仮に彼女が人だったとしたら何か変わっただろうか。あの時、勇気を出せなかった自分が…。
募る後悔を燻ぶらせたまま、ついに迎えてしまったこの日。
これで諦めがつくのだと理性は言う。しかし、精神が納得してくれないのだ。
寂寥感の入り混じったため息が、冷え込んだ部屋に響く。
…………、
……。
……それはそれとして。
「まぁまぁ、元気出ましょうよ。」
「そうですよ、いいことありますって♪」
「誰ですかあなたたちは。」
部屋には何故か先客が居た。
地元から離れ、今の自分はアパートでの一人暮らし。同居人も勝手に入り浸るような知り合いも居ない。
部屋を間違えたということも無い。確かに自分の部屋だし、ちゃんと自分の鍵で扉を開けて入ってきたのだ。
「先ほどの式でお会いしたではありませんか♪あの教会に勤めておりますディアナですよー♪」
「ども。この子の守護天使してますウェンゼルです。」
そういえば会食の際、少し話したような…あの時は心ここにあらずな状態だったためよく覚えていない。
ディアナと名乗ったのは豊満な身体を黒い修道衣に包んだシスターである。露出は少ないものの、身体の起伏をはっきりと浮き立たせるその服装は目に毒だった。しかし艶やかな銀髪のその頭には外骨格のような突起が見える。一般にダークプリーストと呼ばれる魔物の一種であった。
となればその守護天使を自称する少女はダークエンジェル。こちらは背後の漆黒の翼が目立つため分かりやすい。
二人そろって炬燵に当たっていた。目の前にはお茶と蜜柑まで用意してある。
「あ、どうも。で、何のご用で…？」
「どうやらご傷心の様子でしたのでそこに付け込……いや、慰めて差し上げようかと♪」
「右に同じく。」
「今付け込みにって…」
「気のせいですよ。」
「………。」
「いや、結構なのでとりあえず今日のところは帰っていただいても…」
「いけません！一人にしたら失意のあまり自ら命を絶つ危険がありますから！」
「ありませんよそんな事っ！！」
好き放題言われている。
だいたい、こちらの事情が分かっているのだろうか。教会で会った時も、流石にそんな話はしなかったはずだ。
「ええ、今日の花嫁に片思いだったのでしょう？辛かったですね…私の胸で思う存分泣いていいですよ。さあっ！！」
「うぐっ、片思い…」
両腕を拡げ誘うディアナの言葉が的確に胸を抉ってくる。
「とりあえず炬燵にあたりましょう。ささ、こちらへ…」
立ち上がった堕天使の少女に腕を引かれ、二人の間に座らされてしまった。
自分の部屋なのにこちらが客のような扱いである。
「その恰好で寒くないですか？」
見ればウェンゼルと名乗る堕天使の服装はそのやや青白い身体の一部だけを隠す薄布のみ、素肌が９割晒されているような有様である。具体的には胸の膨らみの先端と股間だけを布が走っている。その他は素肌。
冬一歩手前のこの季節、炬燵は出しているもののストーブはまだ無く、そのきわどい水着のような恰好は流石に寒そうに見えた。
「おぉ、お優しい…好き。あ、大丈夫ですよ。天使の身体ですから環境変化には強いので。あ、でもしいて言えばあなたのワイシャツが欲しいです。出来れば洗濯前の。」
とりあえず洗濯済みのジャージを渡しておいた。
「…で、単刀直入に言います。もう結婚してしまったものは仕方がないので、この際私に乗り換えませんか？」
「そんな急に言われて割り切れるものでは…」
「でも私の方がおっぱい大きいですよ？」
「いやそういう問題ではなくて…」
ディアナと名乗る女性が炬燵の上に乗せた胸を腕で寄せる。見た目からして相当な重量感を感じさせるその膨らみが、淫猥に形をゆがめた。
「あと今なら私も付いてきてお得。」
「そんな自分をおまけみたいに…」
彼女と反対側に座る堕天使の少女も柔らかな膨らみを押し付けながらそんな事を言ってくる。
「今はおまけでいいです。そのうち私がメインになるので。」
「させませんよ？」
自分を挟んで目に見えない火花が一瞬散った気がした。
「まぁとにかく、過去よりも未来ですよ！気持ちを切り替えるのです！それにあなた、このままじゃあ近いうちにドッペルゲンガーに食べられかねませんし。」
「その前に私たちに食べられてくださいよ。」
「そんな無茶な…」
「まぁまぁ、気持ちよくしますから。さぁ身体を委ねてください？」
「ええ、辛い事悲しい事全て、忘れさせてあげます。」
ディアナの方も距離を詰め、左右から柔らかな身体が押し付けられる。
腕は服越しの豊かな胸の谷間に挟み込まれ、太腿には指が這う。耳元に唇が寄せられ、甘い囁きと吐息が耳朶を打った。
流されてはいけないと思いつつも、両側から容赦なく性欲を煽ってくる二人の動作に身体は反応してしまう。
そしてディアナの手がズボンの股間部分へ至り、そこが硬さを得ていることを確認した彼女はその表情を淫靡に変えた。
「おや？この反応は…肯定ととってよろしいですね！？では早速！」
「えっ、ちょ………！」
何も言ってないのに勝手に話が進んでしまった。
体重を掛けられ上半身を床に寝かされる。同時に、彼女の手はズボンの隙間から下着の中へと侵入してくる。
彼女の、異様に滑らかな手は肌に触れているだけで快楽をもたらした。それが局部を這い回れば、押し付けられる柔肉の感触も相まってあっという間に射精感が込み上げてくる。
いつの間にか上半身だけでなく両足にも両側から彼女たちの足が絡み、身動きが取れなくなっていた。せめてもの抵抗として下腹部に力を込めるも…
「あらあら、私の手技に耐えられるとでも思っているんですか？ならば身の程を教えて差し上げましょう♪」
ささやかな抵抗が彼女の嗜虐心に火をつけてしまった。
這い回る指は巧緻さを増し、肉茎の反応を感じ取って的確に弱い個所を責めてくる。撫で、擽り、揉む動作が複雑に織り交ぜられ、最高効率で射精へと導こうと蠢くのだ。
そして程なく限界を迎えそうになったその時、反対側の堕天使が動いた。
「はむ…」
上半身を拘束したまま、側頭部に顔を寄せ耳を咥える。そしてその滑る舌先で耳穴を犯すように舐めしゃぶった。
「れぇろれろれろ………」
「ほお˝お˝お˝…………！？」
全身が痺れながら弛緩するような感覚とともに、意味不明な悲鳴を上げながらひとたまりも無く精を漏らす。勢いよく放たれた精液は彼女の掌に受け止められ、触れた先から吸収される。乾いた手指が射精中の肉茎をあやすように蠢き、快楽を長引かせてゆく…。
「はぇっ……あっ……ぁ……」
どれほどの時間が経っただろうか…狂った時間感覚の中、ようやく股間と耳が解放された。ぼやけた視界が徐々に鮮明さを取り戻すと、目の前にはうっとりと微笑むディアナの顔があった。
「んふ、お疲れ様でした。かわいいイキ顔でしたよ♪」
「うっ………」
絶頂中の表情を間近で観察されていたことを知り、頬が熱くなる。
さぞ無様な顔を晒していたことだろう。手だけならまだ精神を保てて居ただろうが、不意打ちでの耳への攻撃が異様に効いてしまっていた。
「ウェンゼル？上手くいきましたか？」
「おけ。刻印完了。」
「ゑ？」
「テスト。れろ…」
「ふお˝ぉ……！？」
なにやら不穏な単語が聞こえたその直後、再度耳を舐められた。同時に、耳だけでなく股間にも強烈な快感が走る。目の前のシスターの手は既にズボンから引き抜かれていた筈なのに、だ。
「いったい何を…」
「今の射精時の快楽と耳への刺激を紐づける処置を行わせていただきました♪これで今後耳を責められるだけで射精と同等の快楽を得ることが出来ますよ♪」
「これから毎日たくさんしゃぶってあげる♡」
「んなっ……」
なし崩し的にとんでもないことをされた。
このままここに居れば追加でなにをされるか分からないと、炬燵から這って脱出しようとしたところで肩を掴まれる。
「どこに行こうというんですか？まだ終わってないですよ？」
振り返れば両側からそれぞれの肩に手を掛けた二人が、にっこりと微笑んでいる。
「さて、逃げ出そうとする悪い子にはもう一つ癖を付けてしまいましょうか♪ウェンゼル！」
「かしこまり。」
返事とともに堕天使は背後に回り、抱きつくようにして上半身を拘束した。
そして上体を起こし、膝立ちの状態で前を向かされる。目の前には両手を広げたディアナの姿があった。
「わぷっ！？」
顔面が彼女の豊かな胸に埋められる。顔面から耳の後ろまでが黒い修道服越しの柔肉に包み込まれた。そのまま後頭部に両腕を回され固定され、そして倒れ込むように前へ…。
「………。」
結果出来上がったのは女体の上で胸に顔を埋め四つん這いに跪くという、情けなくかつあまりに無防備な姿であった。
その上、次の瞬間にはズボンを下ろされる。
「うふふ、いい格好ですね♪さて、今度はちょっと面白いイキ方をさせてあげますね。…まずはこの状態で深く息を吸ってみましょう♪」
言われた通りにするのは危険だと本能が告げる。しかしいつまでも息が続くはずも無く、ついに限界を迎え鼻と口の両方から彼女の衣服越しの空気を大きく吸い込んでしまった。
甘ったるい香気が鼻腔から肺を犯し、次の瞬間手足から力が抜ける。同時に、先ほど彼女の手により一度精を搾られたばかりだというのに、腰の奥で甘い疼きが生まれ射精欲が沸き上がってきた。
ぶら下がる陰茎は起立し、程なく先端に雫を湛え始める。
「胸の谷間に溜まった淫気の効果はいかがですか？もう射精したくてたまらなくなっているかと思いますが…」
「…………っ！？」
不意に股間に何かが触れた。
手の感触ではない。柔らかく、ふわふわとした何かに尻の間から股間全体が包まれる。
「今お股に触れているそれ、何だか分かりますか？…ウェンゼルの『天使の翼』♪これからその羽根でそこを丁寧に擽ってあげます。強い刺激が無いのですぐに絶頂することはできませんが、ずっと続けてあげるととろとろぉって漏らすような射精をするようになるんです。泣いちゃう程気持ちいいですよ♪…で、一回それを体験したらすぐ刻印を刻みます。そしたら次からは顔を胸に包まれるだけで同じような射精を繰り返す身体になれますからね♪」
「ディアナも小さいころよく摘み食いのお仕置きで魔法で生やされてからコレされて泣いてた。」
「余計な事は言わないように。」
これからされることを宣告され、数秒遅れて股間を包む羽が蠢き出した。
あくまでも優しい感触。もし今の陰茎を手で強く握られたならその状態で一回前後に動かされるだけでひとたまりも無く精を漏らすだろう。しかし、羽根での愛撫は決してそれを許さない。
肉茎だけでなく、睾丸、鼠径部、会陰から尻たぶの間に至るまで、縦横無尽にその羽根は這い回る。射精に至る予感を一切感じさせないまま、表皮と、腰の奥にひたすら快感を蓄積させてゆくのだ。その証として溢れる透明な雫は、漏れる先から翼に吸い取られ吸収されてゆく。
一方、息を吸う度に胸の間で生成される淫気を取り込まされ、感度と性欲だけは高められ続ける。
まるで拷問のような仕打ちに、脱力した身体をただ震わせる事しかできなかった。
………。
その状態でどれだけの時間が経過しただろうか。
不意に腰の奥で何か押し潰されるような感覚が弾けた。
何らかの堰の様なものが壊れ、蓄積された快楽が溢れ出す。
甘く、鈍く、長い快楽が訪れた。
「おめでとうございます♪上手にお漏らし射精出来ましたね♪では早速、その感覚を刻み付けてしまいましょう。」
意識は消えかかり前後不覚の状態の中、股間に一瞬熱が走る。
いまだ緩く失禁しているかのような絶頂が続いている中、頭の拘束が解かれる。途端、バランスを崩し横にくずおれた。
解放された顔面は涙と涎で酷い有様だが、それを気にしている余裕などなかった。
「…上手くいきましたかね？確かめてみましょうか。」
その声とともに、目の前に先ほどまで顔を埋めていた彼女の胸が再度迫る。
それに顔面が包み込まれた瞬間、収まりかけていた快楽がぶり返した。
「――――…ｯ！？」
「はい、上手くいったみたいですね。お疲れさまでした。」
顔が柔肉から解放され絶頂感は治まる。しかしこの腰の奥が痺れるような快感は後引く。結果、腰砕けのまま当分動くことは出来そうになかった。
「さて、これからどうしましょうか。」
「……ぇ？」
「このままここで暮らすのもいいですが結婚したからにはどこか旅行にでも行きたいですよね♪万魔殿で１年程、如何ですか？」
「え゛っ………」
いつの間にかとんでもない所まで話が進んでいた。
朦朧としていた意識が急激に覚醒する。
「いいですね。ココ以外もいろいろ開発してあげる。れろ…」
「ふお˝っ…！？」
反対側からは再び堕天使に耳をしゃぶられ、鋭い快感にさらに腰が抜けた。
覚醒した意識がまた飛ばされかける。
「ではそうしましょう♪あ、大丈夫ですよ。むこうに何年居ようが戻ってくる時にはちゃんとこの場所、この時間に戻ってこれますので。」
どうやら相談されたのは自分ではなかったらしい。
…いや、もうこのまま流されてもいいかという気になってきた。思えば、いつの間にか帰宅時の寂寥感は消えていた。
「ああ、これが神の救済か……」
「ん、何か言いました？それではこの素晴らしき出会いを祝して、我らが神の懐へれっつごー♪」
「おー。」
掛け声とともに部屋の中になんかよく分からない門が現れ、３人纏めて吸い込まれていった…。
晩秋の夜は冷える。しかし今日のそれは、身体だけでなく心まで冷やそうとしてくるような…そんな気がした。
もちろん気のせいである。
ただ今のやりようのない気持ちが、そう思わせるのだ。
「………。」
右手に下げた大きな紙袋を部屋の隅へと置き、礼服の上を脱ぐ。
今日は祝いの日であった。仲の良かった友人の、結婚式。
しかし今日の自分はそれを素直に祝うことが、果たして出来ていたのだろうか…。
いや、自信は無い。
なぜならその相手は、自分が好きだった女性だったから。
大学時代の同窓生、自分とも割と仲が良かった…と思う。おそらく悪い関係ではなかったし、やりようによってはもっと深い関係になれていたと今でも思う。
しかし、彼女と一緒になったのは友人の方だった。
もし、自分から思いを伝えることが出来ていたらと…何度思ったろうか。
彼女は魔物である。人魔の交流が始まって以後、この世界にやってきたサキュバスの一人。故に、友人の方を見染めてしまった後となっては既に手遅れなのだ。
いや、仮に彼女が人だったとしたら何か変わっただろうか。あの時、勇気を出せなかった自分が…。
募る後悔を燻ぶらせたまま、ついに迎えてしまったこの日。
これで諦めがつくのだと理性は言う。しかし、精神が納得してくれないのだ。
寂寥感の入り混じったため息が、冷え込んだ部屋に響く。
…………、
……。
……それはそれとして。
「まぁまぁ、元気出ましょうよ。」
「そうですよ、いいことありますって♪」
「誰ですかあなたたちは。」
部屋には何故か先客が居た。
地元から離れ、今の自分はアパートでの一人暮らし。同居人も勝手に入り浸るような知り合いも居ない。
部屋を間違えたということも無い。確かに自分の部屋だし、ちゃんと自分の鍵で扉を開けて入ってきたのだ。
「先ほどの式でお会いしたではありませんか♪あの教会に勤めておりますディアナですよー♪」
「ども。この子の守護天使してますウェンゼルです。」
そういえば会食の際、少し話したような…あの時は心ここにあらずな状態だったためよく覚えていない。
ディアナと名乗ったのは豊満な身体を黒い修道衣に包んだシスターである。露出は少ないものの、身体の起伏をはっきりと浮き立たせるその服装は目に毒だった。しかし艶やかな銀髪のその頭には外骨格のような突起が見える。一般にダークプリーストと呼ばれる魔物の一種であった。
となればその守護天使を自称する少女はダークエンジェル。こちらは背後の漆黒の翼が目立つため分かりやすい。
二人そろって炬燵に当たっていた。目の前にはお茶と蜜柑まで用意してある。
「あ、どうも。で、何のご用で…？」
「どうやらご傷心の様子でしたのでそこに付け込……いや、慰めて差し上げようかと♪」
「右に同じく。」
「今付け込みにって…」
「気のせいですよ。」
「………。」
「いや、結構なのでとりあえず今日のところは帰っていただいても…」
「いけません！一人にしたら失意のあまり自ら命を絶つ危険がありますから！」
「ありませんよそんな事っ！！」
好き放題言われている。
だいたい、こちらの事情が分かっているのだろうか。教会で会った時も、流石にそんな話はしなかったはずだ。
「ええ、今日の花嫁に片思いだったのでしょう？辛かったですね…私の胸で思う存分泣いていいですよ。さあっ！！」
「うぐっ、片思い…」
両腕を拡げ誘うディアナの言葉が的確に胸を抉ってくる。
「とりあえず炬燵にあたりましょう。ささ、こちらへ…」
立ち上がった堕天使の少女に腕を引かれ、二人の間に座らされてしまった。
自分の部屋なのにこちらが客のような扱いである。
「その恰好で寒くないですか？」
見ればウェンゼルと名乗る堕天使の服装はそのやや青白い身体の一部だけを隠す薄布のみ、素肌が９割晒されているような有様である。具体的には胸の膨らみの先端と股間だけを布が走っている。その他は素肌。
冬一歩手前のこの季節、炬燵は出しているもののストーブはまだ無く、そのきわどい水着のような恰好は流石に寒そうに見えた。
「おぉ、お優しい…好き。あ、大丈夫ですよ。天使の身体ですから環境変化には強いので。あ、でもしいて言えばあなたのワイシャツが欲しいです。出来れば洗濯前の。」
とりあえず洗濯済みのジャージを渡しておいた。
「…で、単刀直入に言います。もう結婚してしまったものは仕方がないので、この際私に乗り換えませんか？」
「そんな急に言われて割り切れるものでは…」
「でも私の方がおっぱい大きいですよ？」
「いやそういう問題ではなくて…」
ディアナと名乗る女性が炬燵の上に乗せた胸を腕で寄せる。見た目からして相当な重量感を感じさせるその膨らみが、淫猥に形をゆがめた。
「あと今なら私も付いてきてお得。」
「そんな自分をおまけみたいに…」
彼女と反対側に座る堕天使の少女も柔らかな膨らみを押し付けながらそんな事を言ってくる。
「今はおまけでいいです。そのうち私がメインになるので。」
「させませんよ？」
自分を挟んで目に見えない火花が一瞬散った気がした。
「まぁとにかく、過去よりも未来ですよ！気持ちを切り替えるのです！それにあなた、このままじゃあ近いうちにドッペルゲンガーに食べられかねませんし。」
「その前に私たちに食べられてくださいよ。」
「そんな無茶な…」
「まぁまぁ、気持ちよくしますから。さぁ身体を委ねてください？」
「ええ、辛い事悲しい事全て、忘れさせてあげます。」
ディアナの方も距離を詰め、左右から柔らかな身体が押し付けられる。
腕は服越しの豊かな胸の谷間に挟み込まれ、太腿には指が這う。耳元に唇が寄せられ、甘い囁きと吐息が耳朶を打った。
流されてはいけないと思いつつも、両側から容赦なく性欲を煽ってくる二人の動作に身体は反応してしまう。
そしてディアナの手がズボンの股間部分へ至り、そこが硬さを得ていることを確認した彼女はその表情を淫靡に変えた。
「おや？この反応は…肯定ととってよろしいですね！？では早速！」
「えっ、ちょ………！」
何も言ってないのに勝手に話が進んでしまった。
体重を掛けられ上半身を床に寝かされる。同時に、彼女の手はズボンの隙間から下着の中へと侵入してくる。
彼女の、異様に滑らかな手は肌に触れているだけで快楽をもたらした。それが局部を這い回れば、押し付けられる柔肉の感触も相まってあっという間に射精感が込み上げてくる。
いつの間にか上半身だけでなく両足にも両側から彼女たちの足が絡み、身動きが取れなくなっていた。せめてもの抵抗として下腹部に力を込めるも…
「あらあら、私の手技に耐えられるとでも思っているんですか？ならば身の程を教えて差し上げましょう♪」
ささやかな抵抗が彼女の嗜虐心に火をつけてしまった。
這い回る指は巧緻さを増し、肉茎の反応を感じ取って的確に弱い個所を責めてくる。撫で、擽り、揉む動作が複雑に織り交ぜられ、最高効率で射精へと導こうと蠢くのだ。
そして程なく限界を迎えそうになったその時、反対側の堕天使が動いた。
「はむ…」
上半身を拘束したまま、側頭部に顔を寄せ耳を咥える。そしてその滑る舌先で耳穴を犯すように舐めしゃぶった。
「れぇろれろれろ………」
「ほお˝お˝お˝…………！？」
全身が痺れながら弛緩するような感覚とともに、意味不明な悲鳴を上げながらひとたまりも無く精を漏らす。勢いよく放たれた精液は彼女の掌に受け止められ、触れた先から吸収される。乾いた手指が射精中の肉茎をあやすように蠢き、快楽を長引かせてゆく…。
「はぇっ……あっ……ぁ……」
どれほどの時間が経っただろうか…狂った時間感覚の中、ようやく股間と耳が解放された。ぼやけた視界が徐々に鮮明さを取り戻すと、目の前にはうっとりと微笑むディアナの顔があった。
「んふ、お疲れ様でした。かわいいイキ顔でしたよ♪」
「うっ………」
絶頂中の表情を間近で観察されていたことを知り、頬が熱くなる。
さぞ無様な顔を晒していたことだろう。手だけならまだ精神を保てて居ただろうが、不意打ちでの耳への攻撃が異様に効いてしまっていた。
「ウェンゼル？上手くいきましたか？」
「おけ。刻印完了。」
「ゑ？」
「テスト。れろ…」
「ふお˝ぉ……！？」
なにやら不穏な単語が聞こえたその直後、再度耳を舐められた。同時に、耳だけでなく股間にも強烈な快感が走る。目の前のシスターの手は既にズボンから引き抜かれていた筈なのに、だ。
「いったい何を…」
「今の射精時の快楽と耳への刺激を紐づける処置を行わせていただきました♪これで今後耳を責められるだけで射精と同等の快楽を得ることが出来ますよ♪」
「これから毎日たくさんしゃぶってあげる♡」
「んなっ……」
なし崩し的にとんでもないことをされた。
このままここに居れば追加でなにをされるか分からないと、炬燵から這って脱出しようとしたところで肩を掴まれる。
「どこに行こうというんですか？まだ終わってないですよ？」
振り返れば両側からそれぞれの肩に手を掛けた二人が、にっこりと微笑んでいる。
「さて、逃げ出そうとする悪い子にはもう一つ癖を付けてしまいましょうか♪ウェンゼル！」
「かしこまり。」
返事とともに堕天使は背後に回り、抱きつくようにして上半身を拘束した。
そして上体を起こし、膝立ちの状態で前を向かされる。目の前には両手を広げたディアナの姿があった。
「わぷっ！？」
顔面が彼女の豊かな胸に埋められる。顔面から耳の後ろまでが黒い修道服越しの柔肉に包み込まれた。そのまま後頭部に両腕を回され固定され、そして倒れ込むように前へ…。
「………。」
結果出来上がったのは女体の上で胸に顔を埋め四つん這いに跪くという、情けなくかつあまりに無防備な姿であった。
その上、次の瞬間にはズボンを下ろされる。
「うふふ、いい格好ですね♪さて、今度はちょっと面白いイキ方をさせてあげますね。…まずはこの状態で深く息を吸ってみましょう♪」
言われた通りにするのは危険だと本能が告げる。しかしいつまでも息が続くはずも無く、ついに限界を迎え鼻と口の両方から彼女の衣服越しの空気を大きく吸い込んでしまった。
甘ったるい香気が鼻腔から肺を犯し、次の瞬間手足から力が抜ける。同時に、先ほど彼女の手により一度精を搾られたばかりだというのに、腰の奥で甘い疼きが生まれ射精欲が沸き上がってきた。
ぶら下がる陰茎は起立し、程なく先端に雫を湛え始める。
「胸の谷間に溜まった淫気の効果はいかがですか？もう射精したくてたまらなくなっているかと思いますが…」
「…………っ！？」
不意に股間に何かが触れた。
手の感触ではない。柔らかく、ふわふわとした何かに尻の間から股間全体が包まれる。
「今お股に触れているそれ、何だか分かりますか？…ウェンゼルの『天使の翼』♪これからその羽根でそこを丁寧に擽ってあげます。強い刺激が無いのですぐに絶頂することはできませんが、ずっと続けてあげるととろとろぉって漏らすような射精をするようになるんです。泣いちゃう程気持ちいいですよ♪…で、一回それを体験したらすぐ刻印を刻みます。そしたら次からは顔を胸に包まれるだけで同じような射精を繰り返す身体になれますからね♪」
「ディアナも小さいころよく摘み食いのお仕置きで魔法で生やされてからコレされて泣いてた。」
「余計な事は言わないように。」
これからされることを宣告され、数秒遅れて股間を包む羽が蠢き出した。
あくまでも優しい感触。もし今の陰茎を手で強く握られたならその状態で一回前後に動かされるだけでひとたまりも無く精を漏らすだろう。しかし、羽根での愛撫は決してそれを許さない。
肉茎だけでなく、睾丸、鼠径部、会陰から尻たぶの間に至るまで、縦横無尽にその羽根は這い回る。射精に至る予感を一切感じさせないまま、表皮と、腰の奥にひたすら快感を蓄積させてゆくのだ。その証として溢れる透明な雫は、漏れる先から翼に吸い取られ吸収されてゆく。
一方、息を吸う度に胸の間で生成される淫気を取り込まされ、感度と性欲だけは高められ続ける。
まるで拷問のような仕打ちに、脱力した身体をただ震わせる事しかできなかった。
………。
その状態でどれだけの時間が経過しただろうか。
不意に腰の奥で何か押し潰されるような感覚が弾けた。
何らかの堰の様なものが壊れ、蓄積された快楽が溢れ出す。
甘く、鈍く、長い快楽が訪れた。
「おめでとうございます♪上手にお漏らし射精出来ましたね♪では早速、その感覚を刻み付けてしまいましょう。」
意識は消えかかり前後不覚の状態の中、股間に一瞬熱が走る。
いまだ緩く失禁しているかのような絶頂が続いている中、頭の拘束が解かれる。途端、バランスを崩し横にくずおれた。
解放された顔面は涙と涎で酷い有様だが、それを気にしている余裕などなかった。
「…上手くいきましたかね？確かめてみましょうか。」
その声とともに、目の前に先ほどまで顔を埋めていた彼女の胸が再度迫る。
それに顔面が包み込まれた瞬間、収まりかけていた快楽がぶり返した。
「――――…ｯ！？」
「はい、上手くいったみたいですね。お疲れさまでした。」
顔が柔肉から解放され絶頂感は治まる。しかしこの腰の奥が痺れるような快感は後引く。結果、腰砕けのまま当分動くことは出来そうになかった。
「さて、これからどうしましょうか。」
「……ぇ？」
「このままここで暮らすのもいいですが結婚したからにはどこか旅行にでも行きたいですよね♪万魔殿で１年程、如何ですか？」
「え゛っ………」
いつの間にかとんでもない所まで話が進んでいた。
朦朧としていた意識が急激に覚醒する。
「いいですね。ココ以外もいろいろ開発してあげる。れろ…」
「ふお˝っ…！？」
反対側からは再び堕天使に耳をしゃぶられ、鋭い快感にさらに腰が抜けた。
覚醒した意識がまた飛ばされかける。
「ではそうしましょう♪あ、大丈夫ですよ。むこうに何年居ようが戻ってくる時にはちゃんとこの場所、この時間に戻ってこれますので。」
どうやら相談されたのは自分ではなかったらしい。
…いや、もうこのまま流されてもいいかという気になってきた。思えば、いつの間にか帰宅時の寂寥感は消えていた。
「ああ、これが神の救済か……」
「ん、何か言いました？それではこの素晴らしき出会いを祝して、我らが神の懐へれっつごー♪」
「おー。」
掛け声とともに部屋の中になんかよく分からない門が現れ、３人纏めて吸い込まれていった…。
21/11/28 00:32更新 / ラッペル