連載小説
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中編
 しばらく温泉に浸かったのち、浴場を出て1階の廊下を歩く。 
 あの後更衣室で別の妖狐とすれ違い、もう一度一緒に入らないかと誘われたが鉄の意志で断った。
 ここの決まりから考えれば強引に連れ込むことも出来た筈だが、一尾の彼女は「そう、残念♪」と言って快く見逃してくれた。




 そして廊下を歩くこと数分、右手にやや開けたスペースが現れる。そこに鎮座するのは様々な種類の大型の椅子達……マッサージチェアであった。

「……。」

 せっかくなので使ってみようか。と。
 そう思いそれらのうちの一つに近づく。コイン投入口等は見当たらない。当然の如く無料らしい。そして自分のほかに利用者も居ないようだ。
 椅子のうちから1つを選び、腰掛ける。足と腕をそれぞれ指定の位置に置くと機械が作動し、手足を固定した。
 足から掌まで全身をマッサージしてくれるタイプらしい。
 
「…ッ」

 背もたれに埋め込まれた揉み玉が振動し、背筋に沿って撫で上げる。同時に手足を包む部位のエアーが膨らみ、心地よい程度の圧迫が加えられた。 

 心なしか身体がぽかぽかとしてくる。




「あ、いらっしゃいませお客様。」

 不意に正面から声がかけられた。
 目を開くと狐耳と一本の尻尾を備えた少女がマッサージチェアの前に立っている。


「では始めて行きますね♪」
「ゑ?」

 狐耳の娘…一尾の妖狐の少女は備え付けのリモコンに手を伸ばし操作を始めた。
 両足を包むフットレストが左右に広がりその間に少女を迎え入れる形となった。

「ちょ、ちょっと…」
「どうぞリラックスして、全て私にお任せください。気持ちよくして差し上げます♪」

 無防備に晒された股間に浴衣の上から小さな手が添えられた。優しく、撫でる様な指圧にゆっくりと性感を刺激され、身体が反応を始める。
 
「あ…そうそう、この機械には色々と面白い機能があるんですよ。ちょっと試してみましょう♪」

 身体が反応しきったところで彼女は一旦手の動きを止め、再度リモコンを手に取った。

「例えば…」

 不意に両手を包んでいた左右の装置の内部が変容する。先ほどまではエアーによる力強い圧迫を加えていたそれが、驚くほどに柔らかな感触へと変化していた。何事かと、10の指を動かしそれを確かめていると

「ひゃふっ!?」

 正面から声が上がった。


「あ、お気になさらず…。ハンドマッサージャーの感触が変わりましたよね?それは近くに居る人物の身体の感触が転写されているんです。さて…誰のどこだと思いますか?」
「近くって…まさか……」
 
「はい、私の胸の感触です♪小さくて申し訳ありませんが、その分柔らかさには自信がありまして…あとついでに転写元の方にも刺激がフィードバックされるので、思う存分揉んでいただけると私が悦びます!」
「は、はぁ…」

「それとそれと…あとはコレも付けましょう。」

 再びリモコンが操作されると、今度は椅子の真ん中に半球形をした拳大の突起が現れた。

「なにこれは…?」
「スイッチオン♪」

 彼女がリモコンのボタンを押すと同時に、それが細かな振動を始める。

「おおおぉお!?」

 突起はちょうど会陰のあたりに食い込み、その身を震わせていた。耐えがたい擽ったさとそれに入り混じる快感に翻弄され、腰が跳ねる。

「電気あんまです。会陰から前立腺までを直接刺激する特殊な振動で快感を与える機能でして…この刺激だけでも少しの時間受け続けていれば大抵のお客様は精をお漏らしになられます。でも、この状態で直接ここにマッサージを受けたら…あっという間ですよ?」
「や、やめ…」

 切羽詰まったこちらの声を無視し少女はリモコンを戻すと、わきわきと指を動かしながら再度股間へとその手を伸ばした。そして浴衣の上から形が分かるほどに硬くなったそれへと触れ、ゆっくりとひと揉みしたところで、

「はうっ」

 それはひとたまりもなく決壊した。




……。




「はい、お疲れさまでした。そしてごちそうさまです♪」

 そう言って妖狐の少女が股間に当てた手を軽く押し付ける。すると下着の中に吐き出された精液が一瞬熱を持ち、そしてその濡れた感触ごと姿を消した。
 全て精として吸収されたようだ。


「よろしければ明日以降もまたお越しください。今度はまた別の機能を使って癒して差し上げますので♪」


 そう言って少女は煙とともに姿を消した。
 いつの間にかチェアの駆動は止まり、手足も動かせるようになっていたが下腹部にはいまだ痺れるような快感の余韻が残り、しばらく動けそうになかった。






………、


……。







 そうは言ってもずっと座ったままというのはまずい。誰かが目の前を通りかからないとも限らず、そうなれば何をされるかわからないし、されても抵抗は許されないのだ。
 故に、動けるようになって早々にその場を後にすることにした。

 とりあえず自室を目指すこと数分、良い香りが漂ってくる。
 そそられる食欲…急に意識される空腹感…。

 食事処があった。


「………。」

 ここの施設は基本無料で利用できる筈である。すなわち食事もタダ…。
 匂いに吸い寄せられるように、足は自然とそちらへと向かっていった。








「はい、きつねうどん。あと施設内で精を提供済みのお客さんにはサービスの天ぷら付きだよ。」

 3尾の妖狐がテーブルにうどんのどんぶりと皿を運んでくる。メニューにあったのはそれのみ。…まさかのきつねうどん専門店である。
 そして、

「あの……」
「ん?」

 なぜ料理を運んできた店員が客の隣にそのまま座るのか。しかも密着するほどに近く。


……。


 …いや、分かってはいるのだ。

「一回分だけ、ちょうだいね?ああ、キミは食べながらでいいよ。全部私に任せて。」

 
 それだけ言うと彼女は更に身体を寄せ、手を膝へと這わせた。豊かな胸が腕へと押し付けられ、内腿を撫でる細い指先と相まって興奮を掻き立ててくる。
 先程も一度精を搾られたばかりだというのに程なくして身体が反応を始めてしまった。

「準備できたね♪じゃあイイものをあげる。」

 彼女が膝に触れるのと反対側の掌を見せる。すると、ボッという音とともにそこに青白い炎が上がった。それは揺らめきながら収縮し、人のような狐のような…手のひらサイズのよくわからないモノへと変わる。
 そしてそれが3つに増えた。

「…それは?」
「狐火未満♪これを服の中に入れると…」

 妖狐が手を浴衣の合わせ目に寄せると、その3つの生き物(?)は独りでに動き出し衣服の中へと入っていった。

「んひっ!?」

それは布地の下で動き回り、やがて股間の盛り上がりへと集まってくる。驚くほどすべすべとしたその腹を擦りつけながら、小さな手足で先端や根元を刺激し始めた。

「その子たちが勝手に搾ってくれるから。我慢しないで気にせず出しちゃっていいよ。あ、うどんも冷めないうちにね。」

 無茶なことを言う。
 浴場やマッサージチェアの時と違ってここには他の客も大勢居るのだ。

「そんな気にすることないのに。みんな同じような状況だよ。ほら、あそこのお客さん、両側から妖狐に挟まれて耳しゃぶられながら弄られてる。あれは食後もそのまま部屋までついてく気だね、漏れ出てる妖気が本気のそれだ。それと反対側の席は一人に見えるけど…よく見れば机の下に狐憑きが隠れてて股に顔を埋めてるし、すぐ隣の席は正真正銘一人だけだけど誰かに淫術を受けてるね。…ほら、勝手にイッた。」

 自分以外の客の状況が次々とつまびらかになる。食事中だろうと関係ないのだ。この施設における自身の立場に対する認識がまだ甘かったようだ。


………、


……。



 結局1回では終わらず、食べ終わるまでに2回搾られることとなった。
 あとうどんと天ぷらは普通に美味しかった。









「お兄さんお兄さん。ちょっと寄っていかない?」

 
 食事処を出てすぐ、今度は客引きに逢った。
 暖簾付きの引き戸の前で年若い妖狐に声を掛けられる。

「…ここは?」
「リラクゼーション♪かわいいコがじっくり揉み解してくれるよ。あ、中は完全個室だから安心してね?」
「個室………。」

 この施設のコンセプト的に只のマッサージで終わる筈もなく、個室の意味もそういう事なのだろう。…と、少し離れた場所に設けられた出口からちょうど人が出てきた。
 …が、震える足で一人で立つ事もままならず、両側から2人の妖狐に支えられている。やけにゆっくりとした歩みで、廊下の先へと消えていった。
 次いで出てきた客に至っては、これまた大柄な妖狐に抱き抱えられて運ばれていた。

「気持ち良すぎて腰が抜けちゃってもああやってお泊りの部屋まで運んでくれるから安心して……あれ?」

 
 最後まで聞くことなく、退散することにした。




………、


……。





 廊下をまっすぐ、積み重なった疲労感にふらつきながらも自室に向かって歩く。もう寄り道はできない。
 ただ、夜になり人自体も増えてきたようだ。。
 途中にある自販機スペースの陰や給湯室など、わずかな暗がりがあれば決まって睦言と媚声、水音が聞こえてきた。1対1の時もあれば2人や3人掛かりで犯されるように搾られている男性も多い。
 なるべく意識しないよう、そして気づかれないように心を無にして通り過ぎた。


「いっ……!?」

 しかし、嫌でも目を止めてしまうような光景が繰り広げられている事もある。

 休憩スペースにあるソファではどう見ても成人には見えない少年が5人の妖狐に群がられていた。1人の母性的な妖狐がソファに腰掛け、膝に乗せた少年を背後から拘束している。両足に1人ずつ取り付いた年若い妖狐は強制的に股を広げさせ、その間に入り込んだ一人が股間に顔を埋め精を啜っていた。残りの2人はそれぞれ真横に投げ出された手を取り、片方は股間を、もう片方は胸を無理やり揉ませていた。
 背後から抱きすくめている一人以外は少年が射精するたびに場所を交代しているようだが、もうどれだけの時間そうされているのか、ソファに座る妖狐の胸の谷間からかろうじて覗く少年の表情を見ればその視点は定まらず、こちらの視線に気づく気配もない。

「流石に犯罪じゃ……」
「いえ、あれは術により姿を若返らせられているだけでして…中身はきちんと成人ですわ♪」

 思わず漏らした声に傍で様子を見ていた妖狐の一人が答えた。

「よろしければ体験していかれませんか?同じような術を使える者はここには何人も居りますので♪」

 よく見れば傍で見ていたのは彼女1人だけではなかった。いつの間にかいくつもの視線が自分に向けられており…それは肌で感じる程に獣欲を帯びたものへと変わってゆく。

「い、いえ、結構です…!」

 これ以上少しでもこの場にとどまれば、有無を言わさずあの少年(の姿をした人)と同じ状態にされるのを理解し、逃げる様にその場を後にした。




「あら残念♪でもどうやらあなたに、逃げ場はないようですよ?」

 離れてゆく背中に向けてそう呟く妖狐の声は、しかし耳に入ることは無かった。









 数多の誘惑を振り切ったり振り切れなかったり…色々あったがようやく自分が宿泊する個室の前まで戻ってきた。行きはあっという間だった気がしたのに、帰りはやけに遠かったように感じる。ただ、あまりにも広い施設であるため、実のところ同じ道を通ってきたのかもよくわからなかった。知らないうちに遠回りをしていたのかもしれない。

 何はともあれ、無事に戻っては来れたので一旦休もうと思った。なんなら今夜はこのまま寝てしまってもいいかもしれない。一点、浴場で一人の妖狐に部屋番号を知られてしまったのが気がかりだが、先に寝てしまっていれば仕方ないとして諦めるだろう。だいたい、本当に来るかも分からない。

ガチャリ…

 そんなふうに軽く考えて部屋の扉を開け、次の瞬間自分の考えが甘かったことを悟る。



「お待ちしておりました、お客様♪」


 扉を開けた先の玄関口、そこには件の妖狐…カオンが正座をして待ち構えていた。






21/02/21 00:31更新 / ラッペル
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■作者メッセージ
まだ温泉に行きたい季節の筈…

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