魔物娘生物災害 Ⅵ
ティク達が化学実験室でレインを取り押さえている時、とある教室には２人の人影があった。
２人はゾンビではなく、もちろん学生でもない。
片方は手足がフサフサした毛に覆われた魔獣種のバフォメット。
もう片方は紫の体色をした、ダークスライムだが、見た目が一般的に見られる者と異なる。
彼女は身体を一部変形させて所謂メイド服を象った、家政婦型のダークスライムだった。
とはいっても、クイーンスライムのスライムメイドのような使役される立場ではなく、もちろんこのバフォメットの『メイドさん』と言うわけでもない。
彼女は隣のバフォメットとは異なる部隊の部隊長を勤めるれっきとした魔王軍幹部であり、彼女自身の意思でこの姿をしている。
｢で･･･だ、ベリル･･･こいつらはもういいか？｣
｢ふむ･･･そうじゃの･･････こいつらはこれ以上は無理だ･･･頼むぞリシア｣
｢任せておけ｣
ベリルと呼ばれたバフォメットは大鎌を教室の床に突き立て、片手に何かを携えている。
それはいつか誰かが使った探知魔術。
学園内の状況をつぶさに観察しているようだった。
そして、リシアと呼ばれたダークスライムはベリルの了解を得た上で、魔術を行使し始める。
人間の魔術師など比べ物にならないほどの魔力を持つ、それが彼女達幹部級の魔物だった。
そんな彼女が行使したのは空間転移魔術。
いや、ただ１つの物体を転移させるなら何も幹部級である必要は無い。
そんなことなら一介の魔女でもできる。
魔女とリシアの違い、それは一度に多数の目標を一気に転移させる事が出来る事だ。
それも本気になれば３桁に上る対象を転移させることができる。
最初にゾンビをこの学園に送り込んだのもリシアの仕業であった。
｢開け、異界の扉！！｣
リシアの気合を込めた一言と共に、魔術が行使される。
目標はゾンビに押し倒され、輪姦の末に完全に意識を手放してしまった男子学生と男性教師。
彼らの下に魔法陣が現れる。
それはこの教室に限らず、他教室でも同じことが起きていた。
｢眠れ、眠れ、眠れ、お主等は等しく、我らの胸に抱かれて眠れ、さあいざ逝かん、肉欲と快楽の宴へ！！｣
詠唱が終わり、魔術が効果を及ぼしている間、清楚なメイドの格好にも拘らず、悦楽の表情で叫ぶリシアのその姿は、可愛らしさが少し足りない様に感じられる。
間も無く、学園中の魔法陣の上に居る男子学生は沼地に沈むかのように、魔法陣の中に消えていった。
行き先は魔界のど真ん中であったり、ベリルの研究施設であったり、それぞれがそれぞれの結末を迎えることになるだろう。
｢ベリル･･･残りは何人だ？｣
｢そうじゃな･･･捕まって時間が経ってないのが３人、立て篭もってるのが７人じゃな｣
｢ほぉ、結構スムーズに済んだな｣
実に重畳、そう言いながら、リシアは辺りを見回す。
教室には餌となる男を失い、フラフラと彷徨うゾンビ達がいる。
床に伏していた者までが立ち上がり、どこかに男が居ないか探しているようだった。
輪姦の輪に混ざれなかったゾンビ達と同様に、教室の中、廊下へとそれぞれが歩いていく。
｢で･･･どうする･･･７人を捕縛するか？｣
｢･･････いや、そいつらは面白そうだから放置しておいていい、それより街へ進攻させるとするぞ｣
リシアの問いにベリルが次の段階への移行を知らせると、リシアはニヤリと笑った。
いよいよか･･･そう呟きながら、彼女の表情はこれから起きる惨事を想像して口唇が歪んでいる。
｢ふむ･･･そうだベリル、捕まって間もない３人はどうする？、そのうち１人は立て篭もってる７人のすぐ側だが？｣
｢そうじゃな･･･折角捕らえたのに助けられても厄介だし･･･３人も転移させておくか･･･｣
｢･･･ゾンビも一緒に？｣
｢うむ･･･２・３人一緒に転移させてやれ･･･男に懐いた娘を優先に･･･な｣
承知、そう言いながら、リシアは魔法陣を再展開する。
まもなく転移が完了し、この学園での『人間』は化学実験室の７人のみとなってしまった。
｢さて･･･ここからが本番じゃ｣
｢そうだな･･･｣
(それに･･･あの７人の中には･･･わしらと同じ匂いがする輩が居る･･･それを見極めてからでないと、大魚を逃しかねん･･･)
ベリルの思案はリシアには汲み取ることが出来ない様子であった。
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― 私は考えている ―
何故私は半分魔物なのにこんな所(反魔物領)にいるのだろう･･･
いや、それは愚問だ。
母が愛した男が住む場所だからだ。
父は反魔物派だったにも拘らず、母と出会ってあっさり鞍替えをした。
私がそれを責めるつもりは無い。
しかし、一緒になっても尚、反魔物派の国で暮らすという父の選択は未だに理解することが出来ない。
物心が付く頃には母は居なくなっていた。
父曰く、私を守るために死んだらしい。
それは、この地で暮らしているうちに魔物であることがバレてしまったからなのだろうか。
兄と妹も居たらしいが、やはり私には記憶が無い。
国を挙げての魔物狩りの際に隠しきれなかったのだろうか。
だがそれだと何故私自身に捜査の手が及ばなかったのか･･･疑問が残ってしまう。
秘密を知りたかったが、父が去年病死してしまい、その謎は永遠に闇の中へ葬られてしまった。
私はこの地の歴史を調べたりしながら、私自身の謎を紐解こうとしている。
手っ取り早いのは母と同種の魔物に協力を乞う事なのかもしれないが、この国でそんな事をすれば異端審問行きであろう。
そう考えれば、今の現状･･･魔物側への投降、お偉い魔物に協力を願う･･･それこそが近道なのではないか？
いやいや、そんなことをすれば、私は完全に魔物になるし、私の仲間達は全員魔物化・インキュバス化を強要されるだろう。
私の我儘で私の友人をそんな目には合わせられない･･･
どうしたら･･･どうしたら･･･
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― 化学実験室 ―
レインが隣の準備室に駆け込んでから３０分ほどが経った。
ティクが出入り口に棚や椅子を積み上げて封鎖し、体中が上げる疲労の悲鳴に床に座り込んだ。
他の５人も同様に床や椅子に座り込んでおり、廊下から響いてくるアルトリアやゾンビ達の快楽に溺れた嬌声に耳を侵され、陰鬱な気分になっていた。
また、化学実験室からもレインの艶の篭った呻き声が聞こえてきて、それが更に一同の心を抉った。
どうやら彼はゾンビによって引き出された強烈な性欲を処理するのに必死になっているようだった。
｢何で･･･私達がこんな目に･･･｣
｢･･･そうね･･･｣
｢魔物って･･･やっぱり怖いわ｣
｢･･･有り得ないわよ、私達が何をしたって言うのよ？｣
クレンの丁寧ながらも何処か怒りを込めた一言に、トロメリアが同意してきた。
２人は定期的に響く喘ぎ声を意識的に無視し、言葉を紡いでいる。
そんな、クレンとトロメリアの発言に対し、表情をやや曇らせたルナが答えた。
｢･･･魔物や親魔物派に対する異端審問、度重なる浄化政策･･････親魔物派への政治干渉、領地内への教会騎士団の派遣･･･｣
｢そ･･･それは･･･｣
｢お互い様という側面が無いわけじゃない･･････でも反魔物派への対応は今回の件を引き起こすのに十分･･･｣
寡黙なルナにしては口数が多い。
彼女は彼女なりに人間と魔物の関係について、思うところがあるようだった。
｢ルナはえらく魔物連中に肩入れするな？｣
｢･･･別に･･･｣
｢けっ、魔物共に正義なんてあるわけないだろう、何考えてやがる｣
｢･･････｣
ルナはそれきり押し黙った。
と、実験室に不穏な空気が漂い始めたその時、げっそりとしたレインが準備室から戻ってきた。
｢おっ！、レイン大丈夫か？｣
｢あ･･･ああ･･･｣
｢えらく時間掛かってたけど･･･レインって遅漏？それとも抜きまくり？｣
ニヤニヤしながらティクがからかって来るが、レインは顔を真っ赤にして何も言わない。
すると、突然ティクの頭ががくんと下がった。
｢ヴヮカ！！、こんな時に何言ってるのよ！！｣
ティクの頭を殴ったのはトロメリア。
女性が４人も居る中での発言としては些か下品すぎた。
そのことも有り、レインは頬を朱に染めるだけで何も言わなかったのだった。
｢トロメリア･･･わしは気にしてないからそんな乱暴･･･は･････････｣
トロメリアを諌めながら、彼は何かに気付いたように表情を引き締めた。
｢レインさん、どうしました？｣
その表情を怪訝に思ったクレンが声をかけると、その声をきっかけにしたかのように、レインはアルトリアの残した皮袋に飛びついた。
｢！！！｣
６人が驚いている間に、レインは自分が用意した学園の見取り図を探し当てた。
｢これ見て！！｣
｢｢｢｢｢｢！？｣｣｣｣｣｣
その場に居た全員の驚愕。
それは見取り図の変化だった。
人間が居ない。
学園内の男性と思われる赤の光点は全て消えていた。
当然他に立てこもっている人間も居ない。
残っているのはゾンビと思わしき青の光点。
それは実験室前に居るはずのアルトリアも例外ではなかった。
彼に群がっていたゾンビ達は目標を失ったかの様に廊下に散開している。
｢･･･レイン･･･どうしてそんなことに気付いた？｣
｢わしだって魔力の流れくらい読めるよ！｣
｢あーそうだったな･･･スマンスマン｣
ティクの素直な疑問だったが、長年の付き合いである彼にそんな事を言われると思ってなかったのだろう、レインは多少語気を強めて反論した。
｢へー、魔術は１つしか使えないショボイあんたでも、それくらいは抑えてるのね｣
｢トロメリア･･･わしを何だと思ってるの？｣
｢爺言葉を使う変わり者｣
｢･･･ﾃﾞｽﾖﾈｰ｣
｢･･･皆は･･･どこに？｣
トロメリアとレインのやり取りを他所に、シャルは皆が思っているであろう疑問を口にした。
だが、シャルの言葉に答えられる者はこの場に存在しない。
トロメリアも軽口を止め、耳をすませると、廊下が静まり返っているのに気付いた。
｢･･･そういえばアルトリアの声･･･少し前からしないわね･･･｣
｢好んで聞きたい声では･･･ないですけど･･･｣
トロメリアの言葉に、クレンは素直な感想を述べた。
｢それに･･････これ･･･｣
レインは見取り図の項を捲る。
魔術で描かれた地図を捲っているのだが、それはまるで書物の項を捲るようであった。
間も無く、彼が示したのは１階の見取り図である。
｢･･････昇降口･･･？｣
｢これが･･･どうしたｎ･･･！？｣
姉妹はそれぞれ感想を述べるが、問題に気付いたティクとシルトは表情を歪めた。
｢ゾンビ共が･･･｣
｢校舎から出てやがる･･･｣
それまでは閉ざされ、何人かの学生が開けようとして開けられなかった扉が開かれているようだった。
その証拠にゾンビ達が次々と昇降口から外に出て行っている。
レインの作った見取り図は学園内のみの為、どこに行こうとしているのかは不明であるが、ゾンビ達が昇降口に向かい、光点が消滅しているところを見ると、外に出ているのは間違いないようだった。
｢どうしよう･･･街に広がっちゃう！！｣
｢分かってる、でもどうしたら･･･｣
｢とにかく、自警団に知らせたほうがいいんじゃないかしら？｣
｢待て、トロメリア、ゾンビの中を通って行けってか？、自殺行為もいいところだ、地理を考えろ、ここから自警団の詰め所まで･･･街の中央を抜けて国境線近くまで行かなきゃ行けないんだぞ？｣
｢シルトさん･･･でもこのまま放って置いたら、街も家族も皆やられます･･･｣
｢･･････ゾンビよりも早く街の中心を抜けて、被害が出る前に自警団に通報する･･･｣
｢ルナ･･･問題なのはその方法だと思うよ･･･わしは思いつかん｣
シャルとティクの悲鳴のような言葉を皮切りにトロメリア・シルト・クレン・ルナ・レインと伝播し一同パニック。
それぞれがそれぞれ議論を交わしているようだが、何も実りはない。
と、収集のつかない事態になりつつあったその時、突然窓硝子が砕け散った。
｢！！｣
全員が水を打った様に静かになる。
そんな中、レインが動いた。
｢わしが見てくる｣
彼が砕けた窓に近寄り、確認するが誰も居ない。
｢大丈夫か？｣
｢うん･･･誰も居らん｣
シルトに安全かを問われ、見たままの状況を伝えるレイン。
ゾンビの襲撃･･･という訳ではないようだった。
｢原因･･･なんだろな･･･｣
｢･･･魔物かな？｣
原因は分からない。
だが、そのお陰でこの場が一気に静まった。
そこでレインは再び混乱に陥る前に自分の提案を伝えようと口を開いた。
｢とりあえずさ･･･この学園から出よう｣
｢！？｣
一同の困惑した顔。
ゾンビで溢れつつあり、おそらく住人のゾンビ化で更に増えるであろう街へあえて出て行く、その提案の意味するところを６人は汲みかねていた。
｢･･･家族の安否･･･確かめてさ･･･逃げるしかないよ｣
｢それはこの街からって事か？｣
｢今、この街のどこに逃げろと･･････それに学園に現れたゾンビは予測だけど２００人以上、学園の教師・学生のうち女性は１６０人位かな･･･合わせて３５０人以上･･･これだけの数のゾンビが街で暴れたら自警団でも抑え込めない･･･｣
この街は終わる、そんな事をさも当然と言うような顔をしてレインは答える。
実際この街の自警団は規模がそれほど大きくない。
人数にして２００人もいれば良い方である。
彼らはおそらく事態を把握し集団として抵抗を試みる前に各個に捕らえられ、事態の深刻さに気が付いたときには手遅れになっているだろう。
｢それに･･･あれだけゾンビが突然学園に現れたり、かと思えば男達が一斉にこの学園から消えたり、どう見てもゾンビ以外の魔物が入り込んでる｣
｢･･･かもね･･･｣
ゾンビだけでは高等魔術の行使は難しい。
特にこの学園の男子学生・男性教員を皆まとめてこの学園から移動させる方法は数が限られる。
そして、それを行使できる魔物の種類も限定されてくる。
当然、力のある高位の魔物と言うことになり、そんな輩が率いるゾンビ集団など、一地方都市の自警団で何とかなる物ではない。
７人全員が学園の講義をしっかり聞いていたためか、同様の結論に至ったのだろう。
｢･･･そうだな･･･この状況･･･家族の無事を確かめてから街を脱出した方がよさそうだな･･･｣
｢ちょっと待って下さい｣
シルトが賛成を表明すると、それに食い下がるようにクレンが待ったをかけた。
｢どうしたのよ、クレン｣
｢それは･･･えっと･･･家族の安否を確かめるためにゾンビがうろつく街を走り回るのは危険じゃないかな･･･って｣
トロメリアが他のメンバーが邪魔に入らないよう、クレンの言葉に返事を返し、彼女の発言を促した。
クレンの心配も尤もで、これから街は混乱をきたすことは間違いが無い。
そんな街の中にあえて飛び込むとなれば不安に思うのも当然であった。
｢しかし･･･家族を見捨てて逃げることが出来るのか？｣
｢･･･でも、そのために自分まで捕まったら何の意味も･･･｣
｢そのためにここには７人が集まってるんだろ？｣
｢･･･｣
ティクとシルトの説得に、クレンは黙ってしまった。
それを見届けて、ルナが寡黙さを投げ捨てた。
｢･･････学園を脱出して全員の自宅へ･･･家族が家に居ればよし、仕事などに出ていれば家に書置きを残す･･･流石に仕事場まで行くのは無理だから、家に居なければ基本的に諦める･･････これでどう？｣
｢ルナにしてはよく喋る事･･･｣
｢お姉ちゃん･･･一言多い｣
｢･･････ごめん｣
姉妹のやり取りを他所に男性陣３人は考えていた。
家族が家に居れば助けられるが、仕事などで外出していた場合、どうすればいいか･･･
ルナの言うように書置きを残して諦めるか･･･それとも仕事場まで探しに行くか･･･
だが、大抵の場合、仕事場は街の中央･･･すなわちおそらく最もゾンビが沢山出現するであろう区域に有るのだ。
しかも各個の仕事場まで探しに行くとなると、一学生達の集まりではとても対処できない。
｢よし･･･それで行こう｣
｢わしも賛成｣
｢だなぁ･･･俺も異論無し｣
３人の意見は一致をみた。
後は女性陣との意見の摺り合わせだが･･･
｢･･･しょうがないよ･･･ね･･･｣
｢クレン･･･余り落ち込まないの、私だって不安なんだから｣
トロメリアとクレンが･･･
｢･･･ルナは私とずっと一緒よ｣
｢･･････お姉ちゃん･･････うん･･･一緒に行く･･･｣
ルナとシャルが、それぞれ何らかの決意を心に決めたようだった。
｢えっと･･･脱出後、各々の家を回る･･･ということで良いか？｣
｢そうね、構わないわよ｣
｢私も･･･｣
｢私達も賛成よ･･･ね、ルナ｣
｢うん･･･｣
全員の意見の一致を得たところで、改めて見取り図を見直す。
この頃には学園からゾンビは殆どがいなくなっていた。
｢よし･･･誰もいないわ｣
｢だな、とりあえず街の中央には近付かない事･･･多少面倒でも回り道をしていった方がいい｣
｢そうですね･･･それは賛成です｣
街の見取り図は作成していないし、これから作成することも出来ないので、ゾンビがどこに潜んでいるか、完全に目視が頼りとなってしまう。
そのため、７人は慎重に街を歩くことを確認し、更にもう１つ確認事項を思い出したレインが口を開いた。
｢で･･･どういうルートで家を回るの？、後･･･誰の家を回る？｣
しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのはシャルだった。
｢私達は不要よ、両親は遠方に出稼ぎに出てるわ｣
｢私も不要よ、両親は死んだわ｣
シャルに続き、トロメリアも自宅へ寄る必要がないことを告げる。
続けて口を開いたクレンは少し悲しげな表情をしながら発言した。
｢私は中央地区から見て南に家があります･･･中央地区に近すぎるかもしれないです･･･｣
｢俺は中央地区から見て東･･･つまり学園からすぐだ｣
｢こっちは西･･･つまり国境側でここからは一番遠いな･･･｣
｢わしは不要、両親は家に居ないからね｣
クレンに続き、ティクとシルトも自分の自宅へよる必要を訴えるが、レインは不要を申し出た。
そうして全員の状況を確認し終えた上で、ルートを考える。
ティク→クレン→シルトと回り、その後、国境ギリギリに流れるヴィルート河伝いに隣の街まで強行軍で脱出する事に決まった。
７人は立ち上がり、実験室の扉の封鎖を解き、扉を･･････開いた。
～ 続 ～
２人はゾンビではなく、もちろん学生でもない。
片方は手足がフサフサした毛に覆われた魔獣種のバフォメット。
もう片方は紫の体色をした、ダークスライムだが、見た目が一般的に見られる者と異なる。
彼女は身体を一部変形させて所謂メイド服を象った、家政婦型のダークスライムだった。
とはいっても、クイーンスライムのスライムメイドのような使役される立場ではなく、もちろんこのバフォメットの『メイドさん』と言うわけでもない。
彼女は隣のバフォメットとは異なる部隊の部隊長を勤めるれっきとした魔王軍幹部であり、彼女自身の意思でこの姿をしている。
｢で･･･だ、ベリル･･･こいつらはもういいか？｣
｢ふむ･･･そうじゃの･･････こいつらはこれ以上は無理だ･･･頼むぞリシア｣
｢任せておけ｣
ベリルと呼ばれたバフォメットは大鎌を教室の床に突き立て、片手に何かを携えている。
それはいつか誰かが使った探知魔術。
学園内の状況をつぶさに観察しているようだった。
そして、リシアと呼ばれたダークスライムはベリルの了解を得た上で、魔術を行使し始める。
人間の魔術師など比べ物にならないほどの魔力を持つ、それが彼女達幹部級の魔物だった。
そんな彼女が行使したのは空間転移魔術。
いや、ただ１つの物体を転移させるなら何も幹部級である必要は無い。
そんなことなら一介の魔女でもできる。
魔女とリシアの違い、それは一度に多数の目標を一気に転移させる事が出来る事だ。
それも本気になれば３桁に上る対象を転移させることができる。
最初にゾンビをこの学園に送り込んだのもリシアの仕業であった。
｢開け、異界の扉！！｣
リシアの気合を込めた一言と共に、魔術が行使される。
目標はゾンビに押し倒され、輪姦の末に完全に意識を手放してしまった男子学生と男性教師。
彼らの下に魔法陣が現れる。
それはこの教室に限らず、他教室でも同じことが起きていた。
｢眠れ、眠れ、眠れ、お主等は等しく、我らの胸に抱かれて眠れ、さあいざ逝かん、肉欲と快楽の宴へ！！｣
詠唱が終わり、魔術が効果を及ぼしている間、清楚なメイドの格好にも拘らず、悦楽の表情で叫ぶリシアのその姿は、可愛らしさが少し足りない様に感じられる。
間も無く、学園中の魔法陣の上に居る男子学生は沼地に沈むかのように、魔法陣の中に消えていった。
行き先は魔界のど真ん中であったり、ベリルの研究施設であったり、それぞれがそれぞれの結末を迎えることになるだろう。
｢ベリル･･･残りは何人だ？｣
｢そうじゃな･･･捕まって時間が経ってないのが３人、立て篭もってるのが７人じゃな｣
｢ほぉ、結構スムーズに済んだな｣
実に重畳、そう言いながら、リシアは辺りを見回す。
教室には餌となる男を失い、フラフラと彷徨うゾンビ達がいる。
床に伏していた者までが立ち上がり、どこかに男が居ないか探しているようだった。
輪姦の輪に混ざれなかったゾンビ達と同様に、教室の中、廊下へとそれぞれが歩いていく。
｢で･･･どうする･･･７人を捕縛するか？｣
｢･･････いや、そいつらは面白そうだから放置しておいていい、それより街へ進攻させるとするぞ｣
リシアの問いにベリルが次の段階への移行を知らせると、リシアはニヤリと笑った。
いよいよか･･･そう呟きながら、彼女の表情はこれから起きる惨事を想像して口唇が歪んでいる。
｢ふむ･･･そうだベリル、捕まって間もない３人はどうする？、そのうち１人は立て篭もってる７人のすぐ側だが？｣
｢そうじゃな･･･折角捕らえたのに助けられても厄介だし･･･３人も転移させておくか･･･｣
｢･･･ゾンビも一緒に？｣
｢うむ･･･２・３人一緒に転移させてやれ･･･男に懐いた娘を優先に･･･な｣
承知、そう言いながら、リシアは魔法陣を再展開する。
まもなく転移が完了し、この学園での『人間』は化学実験室の７人のみとなってしまった。
｢さて･･･ここからが本番じゃ｣
｢そうだな･･･｣
(それに･･･あの７人の中には･･･わしらと同じ匂いがする輩が居る･･･それを見極めてからでないと、大魚を逃しかねん･･･)
ベリルの思案はリシアには汲み取ることが出来ない様子であった。
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― 私は考えている ―
何故私は半分魔物なのにこんな所(反魔物領)にいるのだろう･･･
いや、それは愚問だ。
母が愛した男が住む場所だからだ。
父は反魔物派だったにも拘らず、母と出会ってあっさり鞍替えをした。
私がそれを責めるつもりは無い。
しかし、一緒になっても尚、反魔物派の国で暮らすという父の選択は未だに理解することが出来ない。
物心が付く頃には母は居なくなっていた。
父曰く、私を守るために死んだらしい。
それは、この地で暮らしているうちに魔物であることがバレてしまったからなのだろうか。
兄と妹も居たらしいが、やはり私には記憶が無い。
国を挙げての魔物狩りの際に隠しきれなかったのだろうか。
だがそれだと何故私自身に捜査の手が及ばなかったのか･･･疑問が残ってしまう。
秘密を知りたかったが、父が去年病死してしまい、その謎は永遠に闇の中へ葬られてしまった。
私はこの地の歴史を調べたりしながら、私自身の謎を紐解こうとしている。
手っ取り早いのは母と同種の魔物に協力を乞う事なのかもしれないが、この国でそんな事をすれば異端審問行きであろう。
そう考えれば、今の現状･･･魔物側への投降、お偉い魔物に協力を願う･･･それこそが近道なのではないか？
いやいや、そんなことをすれば、私は完全に魔物になるし、私の仲間達は全員魔物化・インキュバス化を強要されるだろう。
私の我儘で私の友人をそんな目には合わせられない･･･
どうしたら･･･どうしたら･･･
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― 化学実験室 ―
レインが隣の準備室に駆け込んでから３０分ほどが経った。
ティクが出入り口に棚や椅子を積み上げて封鎖し、体中が上げる疲労の悲鳴に床に座り込んだ。
他の５人も同様に床や椅子に座り込んでおり、廊下から響いてくるアルトリアやゾンビ達の快楽に溺れた嬌声に耳を侵され、陰鬱な気分になっていた。
また、化学実験室からもレインの艶の篭った呻き声が聞こえてきて、それが更に一同の心を抉った。
どうやら彼はゾンビによって引き出された強烈な性欲を処理するのに必死になっているようだった。
｢何で･･･私達がこんな目に･･･｣
｢･･･そうね･･･｣
｢魔物って･･･やっぱり怖いわ｣
｢･･･有り得ないわよ、私達が何をしたって言うのよ？｣
クレンの丁寧ながらも何処か怒りを込めた一言に、トロメリアが同意してきた。
２人は定期的に響く喘ぎ声を意識的に無視し、言葉を紡いでいる。
そんな、クレンとトロメリアの発言に対し、表情をやや曇らせたルナが答えた。
｢･･･魔物や親魔物派に対する異端審問、度重なる浄化政策･･････親魔物派への政治干渉、領地内への教会騎士団の派遣･･･｣
｢そ･･･それは･･･｣
｢お互い様という側面が無いわけじゃない･･････でも反魔物派への対応は今回の件を引き起こすのに十分･･･｣
寡黙なルナにしては口数が多い。
彼女は彼女なりに人間と魔物の関係について、思うところがあるようだった。
｢ルナはえらく魔物連中に肩入れするな？｣
｢･･･別に･･･｣
｢けっ、魔物共に正義なんてあるわけないだろう、何考えてやがる｣
｢･･････｣
ルナはそれきり押し黙った。
と、実験室に不穏な空気が漂い始めたその時、げっそりとしたレインが準備室から戻ってきた。
｢おっ！、レイン大丈夫か？｣
｢あ･･･ああ･･･｣
｢えらく時間掛かってたけど･･･レインって遅漏？それとも抜きまくり？｣
ニヤニヤしながらティクがからかって来るが、レインは顔を真っ赤にして何も言わない。
すると、突然ティクの頭ががくんと下がった。
｢ヴヮカ！！、こんな時に何言ってるのよ！！｣
ティクの頭を殴ったのはトロメリア。
女性が４人も居る中での発言としては些か下品すぎた。
そのことも有り、レインは頬を朱に染めるだけで何も言わなかったのだった。
｢トロメリア･･･わしは気にしてないからそんな乱暴･･･は･････････｣
トロメリアを諌めながら、彼は何かに気付いたように表情を引き締めた。
｢レインさん、どうしました？｣
その表情を怪訝に思ったクレンが声をかけると、その声をきっかけにしたかのように、レインはアルトリアの残した皮袋に飛びついた。
｢！！！｣
６人が驚いている間に、レインは自分が用意した学園の見取り図を探し当てた。
｢これ見て！！｣
｢｢｢｢｢｢！？｣｣｣｣｣｣
その場に居た全員の驚愕。
それは見取り図の変化だった。
人間が居ない。
学園内の男性と思われる赤の光点は全て消えていた。
当然他に立てこもっている人間も居ない。
残っているのはゾンビと思わしき青の光点。
それは実験室前に居るはずのアルトリアも例外ではなかった。
彼に群がっていたゾンビ達は目標を失ったかの様に廊下に散開している。
｢･･･レイン･･･どうしてそんなことに気付いた？｣
｢わしだって魔力の流れくらい読めるよ！｣
｢あーそうだったな･･･スマンスマン｣
ティクの素直な疑問だったが、長年の付き合いである彼にそんな事を言われると思ってなかったのだろう、レインは多少語気を強めて反論した。
｢へー、魔術は１つしか使えないショボイあんたでも、それくらいは抑えてるのね｣
｢トロメリア･･･わしを何だと思ってるの？｣
｢爺言葉を使う変わり者｣
｢･･･ﾃﾞｽﾖﾈｰ｣
｢･･･皆は･･･どこに？｣
トロメリアとレインのやり取りを他所に、シャルは皆が思っているであろう疑問を口にした。
だが、シャルの言葉に答えられる者はこの場に存在しない。
トロメリアも軽口を止め、耳をすませると、廊下が静まり返っているのに気付いた。
｢･･･そういえばアルトリアの声･･･少し前からしないわね･･･｣
｢好んで聞きたい声では･･･ないですけど･･･｣
トロメリアの言葉に、クレンは素直な感想を述べた。
｢それに･･････これ･･･｣
レインは見取り図の項を捲る。
魔術で描かれた地図を捲っているのだが、それはまるで書物の項を捲るようであった。
間も無く、彼が示したのは１階の見取り図である。
｢･･････昇降口･･･？｣
｢これが･･･どうしたｎ･･･！？｣
姉妹はそれぞれ感想を述べるが、問題に気付いたティクとシルトは表情を歪めた。
｢ゾンビ共が･･･｣
｢校舎から出てやがる･･･｣
それまでは閉ざされ、何人かの学生が開けようとして開けられなかった扉が開かれているようだった。
その証拠にゾンビ達が次々と昇降口から外に出て行っている。
レインの作った見取り図は学園内のみの為、どこに行こうとしているのかは不明であるが、ゾンビ達が昇降口に向かい、光点が消滅しているところを見ると、外に出ているのは間違いないようだった。
｢どうしよう･･･街に広がっちゃう！！｣
｢分かってる、でもどうしたら･･･｣
｢とにかく、自警団に知らせたほうがいいんじゃないかしら？｣
｢待て、トロメリア、ゾンビの中を通って行けってか？、自殺行為もいいところだ、地理を考えろ、ここから自警団の詰め所まで･･･街の中央を抜けて国境線近くまで行かなきゃ行けないんだぞ？｣
｢シルトさん･･･でもこのまま放って置いたら、街も家族も皆やられます･･･｣
｢･･････ゾンビよりも早く街の中心を抜けて、被害が出る前に自警団に通報する･･･｣
｢ルナ･･･問題なのはその方法だと思うよ･･･わしは思いつかん｣
シャルとティクの悲鳴のような言葉を皮切りにトロメリア・シルト・クレン・ルナ・レインと伝播し一同パニック。
それぞれがそれぞれ議論を交わしているようだが、何も実りはない。
と、収集のつかない事態になりつつあったその時、突然窓硝子が砕け散った。
｢！！｣
全員が水を打った様に静かになる。
そんな中、レインが動いた。
｢わしが見てくる｣
彼が砕けた窓に近寄り、確認するが誰も居ない。
｢大丈夫か？｣
｢うん･･･誰も居らん｣
シルトに安全かを問われ、見たままの状況を伝えるレイン。
ゾンビの襲撃･･･という訳ではないようだった。
｢原因･･･なんだろな･･･｣
｢･･･魔物かな？｣
原因は分からない。
だが、そのお陰でこの場が一気に静まった。
そこでレインは再び混乱に陥る前に自分の提案を伝えようと口を開いた。
｢とりあえずさ･･･この学園から出よう｣
｢！？｣
一同の困惑した顔。
ゾンビで溢れつつあり、おそらく住人のゾンビ化で更に増えるであろう街へあえて出て行く、その提案の意味するところを６人は汲みかねていた。
｢･･･家族の安否･･･確かめてさ･･･逃げるしかないよ｣
｢それはこの街からって事か？｣
｢今、この街のどこに逃げろと･･････それに学園に現れたゾンビは予測だけど２００人以上、学園の教師・学生のうち女性は１６０人位かな･･･合わせて３５０人以上･･･これだけの数のゾンビが街で暴れたら自警団でも抑え込めない･･･｣
この街は終わる、そんな事をさも当然と言うような顔をしてレインは答える。
実際この街の自警団は規模がそれほど大きくない。
人数にして２００人もいれば良い方である。
彼らはおそらく事態を把握し集団として抵抗を試みる前に各個に捕らえられ、事態の深刻さに気が付いたときには手遅れになっているだろう。
｢それに･･･あれだけゾンビが突然学園に現れたり、かと思えば男達が一斉にこの学園から消えたり、どう見てもゾンビ以外の魔物が入り込んでる｣
｢･･･かもね･･･｣
ゾンビだけでは高等魔術の行使は難しい。
特にこの学園の男子学生・男性教員を皆まとめてこの学園から移動させる方法は数が限られる。
そして、それを行使できる魔物の種類も限定されてくる。
当然、力のある高位の魔物と言うことになり、そんな輩が率いるゾンビ集団など、一地方都市の自警団で何とかなる物ではない。
７人全員が学園の講義をしっかり聞いていたためか、同様の結論に至ったのだろう。
｢･･･そうだな･･･この状況･･･家族の無事を確かめてから街を脱出した方がよさそうだな･･･｣
｢ちょっと待って下さい｣
シルトが賛成を表明すると、それに食い下がるようにクレンが待ったをかけた。
｢どうしたのよ、クレン｣
｢それは･･･えっと･･･家族の安否を確かめるためにゾンビがうろつく街を走り回るのは危険じゃないかな･･･って｣
トロメリアが他のメンバーが邪魔に入らないよう、クレンの言葉に返事を返し、彼女の発言を促した。
クレンの心配も尤もで、これから街は混乱をきたすことは間違いが無い。
そんな街の中にあえて飛び込むとなれば不安に思うのも当然であった。
｢しかし･･･家族を見捨てて逃げることが出来るのか？｣
｢･･･でも、そのために自分まで捕まったら何の意味も･･･｣
｢そのためにここには７人が集まってるんだろ？｣
｢･･･｣
ティクとシルトの説得に、クレンは黙ってしまった。
それを見届けて、ルナが寡黙さを投げ捨てた。
｢･･････学園を脱出して全員の自宅へ･･･家族が家に居ればよし、仕事などに出ていれば家に書置きを残す･･･流石に仕事場まで行くのは無理だから、家に居なければ基本的に諦める･･････これでどう？｣
｢ルナにしてはよく喋る事･･･｣
｢お姉ちゃん･･･一言多い｣
｢･･････ごめん｣
姉妹のやり取りを他所に男性陣３人は考えていた。
家族が家に居れば助けられるが、仕事などで外出していた場合、どうすればいいか･･･
ルナの言うように書置きを残して諦めるか･･･それとも仕事場まで探しに行くか･･･
だが、大抵の場合、仕事場は街の中央･･･すなわちおそらく最もゾンビが沢山出現するであろう区域に有るのだ。
しかも各個の仕事場まで探しに行くとなると、一学生達の集まりではとても対処できない。
｢よし･･･それで行こう｣
｢わしも賛成｣
｢だなぁ･･･俺も異論無し｣
３人の意見は一致をみた。
後は女性陣との意見の摺り合わせだが･･･
｢･･･しょうがないよ･･･ね･･･｣
｢クレン･･･余り落ち込まないの、私だって不安なんだから｣
トロメリアとクレンが･･･
｢･･･ルナは私とずっと一緒よ｣
｢･･････お姉ちゃん･･････うん･･･一緒に行く･･･｣
ルナとシャルが、それぞれ何らかの決意を心に決めたようだった。
｢えっと･･･脱出後、各々の家を回る･･･ということで良いか？｣
｢そうね、構わないわよ｣
｢私も･･･｣
｢私達も賛成よ･･･ね、ルナ｣
｢うん･･･｣
全員の意見の一致を得たところで、改めて見取り図を見直す。
この頃には学園からゾンビは殆どがいなくなっていた。
｢よし･･･誰もいないわ｣
｢だな、とりあえず街の中央には近付かない事･･･多少面倒でも回り道をしていった方がいい｣
｢そうですね･･･それは賛成です｣
街の見取り図は作成していないし、これから作成することも出来ないので、ゾンビがどこに潜んでいるか、完全に目視が頼りとなってしまう。
そのため、７人は慎重に街を歩くことを確認し、更にもう１つ確認事項を思い出したレインが口を開いた。
｢で･･･どういうルートで家を回るの？、後･･･誰の家を回る？｣
しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのはシャルだった。
｢私達は不要よ、両親は遠方に出稼ぎに出てるわ｣
｢私も不要よ、両親は死んだわ｣
シャルに続き、トロメリアも自宅へ寄る必要がないことを告げる。
続けて口を開いたクレンは少し悲しげな表情をしながら発言した。
｢私は中央地区から見て南に家があります･･･中央地区に近すぎるかもしれないです･･･｣
｢俺は中央地区から見て東･･･つまり学園からすぐだ｣
｢こっちは西･･･つまり国境側でここからは一番遠いな･･･｣
｢わしは不要、両親は家に居ないからね｣
クレンに続き、ティクとシルトも自分の自宅へよる必要を訴えるが、レインは不要を申し出た。
そうして全員の状況を確認し終えた上で、ルートを考える。
ティク→クレン→シルトと回り、その後、国境ギリギリに流れるヴィルート河伝いに隣の街まで強行軍で脱出する事に決まった。
７人は立ち上がり、実験室の扉の封鎖を解き、扉を･･････開いた。
～ 続 ～
11/10/05 18:34更新 / 月影
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