連載小説
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騎士の本音 (前編)
大図書館の読書用机を挟んで、少女と司書が向かい合って座っていた。

司書…ルーイェは少女が過去の魔物と人間が争っていた時代の記録を読み漁っているのを知っていた。

「一つ昔話をしてあげる」

「昔話?」

自分の同僚の話、彼女はそう言った。

ルーイェの口から紡がれる言葉は鈴を鳴らすような響く声であった。


――――――――――――――――――――

年代不明

その日、デュラハンの少女スレイを乗せた船はジパングの港に接岸した。
木造帆船が送り届けた彼女の姿は普段着込んでいる鎧とは異なり、黒のワンピースを着込み、片手に黒に鞄を携えている。
スレイ日光を避ける為の日傘をたたみ、首に巻いていたショールを外した。
それはいつもの騎士の出で立ちとは異なる、所謂どこにでもいる少女の姿であった。


何故彼女はこんな場所にいるのか、それは彼女は従事していた作戦が完了し、次の任務につくまでの間、休暇を貰っていたからだった。
その休暇の初日に彼女は次の任務に従事する地、ジパングに降り立った。

そこはジパングの中でも中程度の規模を持つ漁港。
朝の日差しの中、周りは洋服やジパング特有の『着物』を来た男女が行き交っている。

元々ジパングは魔王交代以前から魔物と人間の共生関係が構築された希少な国家。
畏敬を込めて妖と呼ばれていた時代から、人間と魔物が共に暮らしていた。

そして、魔王交代、海神の態度の変化を境にジパングは海洋産業を前面に押し出した国家となる。
海神や海洋の魔物達の加護を背景に国に数多くある漁港を生かし、親魔物派・反魔物派を相手に交易を行っていた。

特に海路を全て遮断された、大陸にある反魔物派の国々にとっては、ジパングを介した交易は生命線に近い。
そんな彼らを商売相手にすることで、ジパングはかなりの利益を上げていた。

スレイはそんな海洋産業の状況調査のためにジパングへ赴いたが、そのためだけに来た訳では無い、無論休暇を満喫する目的もあった。

それは……


「スレイ!」
「あ…ショウ♪」

ある1人の男性と会うため。
彼女は自分の思い人をジパングに残していた。

いや、正確には昔、彼女がジパングを訪れ、彼と出会い、恋に落ち、結ばれ、そして一時の別れをしていただけだ。
今回は一月半ぶりにジパングに来るという事で、彼はわざわざ、スレイを迎えに漁港まで出ていたのだった。

「久し振りだね、スレイ」
「そうだね、ショウ…ンチュ…」

2人は船を下りたところで再会し、その場で抱き合い口付けを交わした。
すると、2人があまりに強く唇を貪りあったため、スレイの頭が後ろにポロリと転がり落ちた。

「あ…ごめん」
「ぁんっ…構わないから…早くボクを抱いて…」

首が取れて、スレイの本音が漏れ出した。
ショウは公共の面前での大胆発言に赤面し、慌てて彼女の頭を拾い上げ、スレイの首に頭をはめた。

「と…とりあえず、俺の家に行こう…まずはそれからだ…なっ?」
「はぁ…ぁぁ……あ…うん…」

そして、ショウは彼女の荷物を持ち、スレイは彼に寄り添い、そそくさとその場から離れた。
かなり目立つことをしてしまった自覚は有るらしく、周囲の目から逃れようと、早足で漁港から移動する。

漁港を離れてすぐの道は石畳のような舗装こそされていないが、人や物の流通のために、石の類が取り除かれた砂地の街道になっている。
道の両側に商いをするための木造作りの家屋が立ち並び、街道上にも露店が開かれ、人で賑わっている。
商店や露店には近場で取れる魚屋や山村から仕入れた山菜などが並んでいる他、武具を取り扱う店までが軒を連ねている。
2人で人ごみを避けつつ歩いていると、脇からスレイ恨めしい言葉が聞こえてきた

「む〜…お腹減ったぞ〜」
「ま…まあそう焦るなって…もうすぐ着くから…な」
「…分かってるけど…ボクはお腹が減ってしょうがないんだからね?」

1月半、その間スレイは他の男の精を摘み食いしたりせず、食物の経口摂取で何とか魔力を維持してきた。
だが、魔王軍の任務やギルドの活動でどうしても魔力は失われる。

他の独身の魔物達は一夜の相手をひっ捕まえたり、男婦(男妾とも言うらしい)を雇ったりして魔力不足を補っているようだが、貞操意識の高いスレイにそれはできなかった。
もっとも、飢えていた時に首を外していたら…どうなったかは分からないが…

人が漁港や店が並ぶ中心街から、やや離れた丘を目指して歩いていると、周りの風景が変わってきた。
この町は海水によって滑らかに抉られた海岸線に沿って広がっており、その背後には佇む様に丘が点在している。

そこは街道が砂地のままだが、周囲に広葉樹の広がる少し小高い丘に、普段生活するための木造家屋が並んでいる。
その一角に、ショウの家はあった。
針葉樹の樹木を材木とし、ジャイアントアントが施工した1階建ての小さな家だった。

街道50m先に自宅が見えてきたところで、スレイが口を開いた。

「ふぅ…相変わらず仕事場からは離れているんだね…」
「仕方ないだろう…あの辺りは商売のための建物の方が多いし、そのせいで夜も騒がしいからな」
「そうだね、この辺は静かでボクもゆっくりできるよ」

ちなみに彼の職業は刀鍛冶である。
上司のサイクロプスから指導を受けつつ、彼女のデザインする刀剣を鍛造している。
小さな鍛冶場であるが、そこそこ盛況しているようだった。

少し早足で歩くと、間もなくショウの自宅にたどり着いた。

「やっと着いたな…」
「…うん」

ショウは扉の南京錠の鍵を開け、扉を開いた。
家の中はほのかな木の匂いが漂っていた。
玄関から見て右手が台所兼食卓、左手が寝室、正面が厠と浴室となっている。
この付近の建物の作りはは大凡この形で建築されていた。

「…船旅で疲れたろ…何か食べるk…おぃ!」
「食べたいよぉ…ボクは…ショウを食べたいよぉ」

まずは身体を休めてから…そう考えていたショウの目論見は裏切られた。
ショウより頭1つ程身長の低い彼女は、彼の胸に飛び込み、その胸板に顔をこすり付けて抱きついた。
意外なことに、彼女は首を外さずして、デュラハン本来の好色さを発露していたのだ。


「…スレイ、大丈夫か?!」
「もうだめなのぉ、ボクはここ1ヶ月以上、まったく精を取り込んでないの、もう我慢できないのよぉ!」
「分かったから、布団で…な?」
「どこでもいいから、早く犯してぇ…」

頬を高潮させ、息を荒げ、視線が彷徨うスレイは、既に彼との情を交わす事しか考えられない。
今の今までそれを理性でひたすら押さえつけていた彼女だが、ここに来て、愛しの男性と2人きり、その状況に防壁はあっさりと崩れ落ち、本能のままに彼を求めていた。

ショウは何とか彼女の身体を支え、寝室までやってきた。
スレイは時折、ショウの引き締まった肉体を撫で回し、物欲しげな瞳で彼を見詰めている。

「ねぇ…早くシようよ…」
「布団敷くから待てって…ちょっ、おぃ服脱がすな、まだ服脱ぐな!!」

スレイはあっさりと自分の服を脱ぎ、ショウの服も脱がしに掛かった。
畳が敷かれた6畳ほどの寝室で、部屋の隅に畳み詰まれた布団を敷こうとしてたショウは脱がせる彼女に抵抗することはできない。

それでも何とか、敷き布団を広げ、彼女との交接の場を設けることができた。
その時には自分も彼女も下着一枚という状態であった。

「ねぇ…ショウ…早く……抱いて」
「あ…ああ」

まだ朝なんだが、ショウがそう言葉を口にする事は無かった。
彼女が『飢えてしまう』事の原因は間違いなく自分である。
自分が彼女と常に一緒ならば彼女をこんなに苦しめることも無いだろう、そう考えたからだった。

彼自身、随分前から悩んでいた。

今の刀鍛冶を辞めて、彼女の伴侶として、同じ時間と空間を共有すべきではないか?
しかし、大陸に赴いたらこの地に残る両親が心配だし、大陸での生活はジパングとは異なる文化圏であり、自分が馴染めるかどうかも心配であった。
等々、懸念事項が多すぎて一歩を踏み出せなかったのだった。

ショウは悩みが脳裏に掠めつつも、今は彼女を抱く事のみを考えるようにしたようだ。
彼はスレイを敷き布団の上に座らせ、正面から抱き締めながらキスをした。

「はぁ…んっ…あ…アアッ!!」
「んっ…ちゅ…」

2人は唇を重ね、互いに舌を蛞蝓のように這わせた。
スレイは唇と唇を舌と舌を淫猥に絡ませながら、ショウの下着に手を滑り込ませ、肉棒を擦り上げた。

「あ…ショウのおっきくなった…」

あっという間に硬く勃起し、熱を持ち始める彼の分身。
そんな彼の反応に満足しながら、彼女はショウを布団に押し倒した。

「スレイ?」
「はぁ…ふぅ…んっ…ボクが上になるね…」

そして、スレイは彼の腰に跨るとそのまま体を倒して、キスをした。
ショウもされるがままではない、体を倒してくる彼女に合わせて、その豊満な両乳房にそれぞれ両手を添え、キスを交わしながら、優しく揉みしだいた。
スレイの乳房はショウの片の手では収まらず、彼の揉みしだく手の動きに合わせて、柔らかく形を変え、その中心の乳首も硬くしこり始めていた。

柔らかい感触の中に混じるコリコリとした硬い感触。
彼は悪戯心から指二本で乳首を挟み込み、強く挟んだり、左右に動かしたりしてみた。

「ぁ…きゃっ…んぅ……いやっ…刺激が強すぎるぅ!」
「ちゅ…スレイは乳首弱いよね」
「いやぁ…言わないでよぅ…」
「おっぱい凄く柔らかいな…」
「…ボクのおっぱい…嫌い?」

スレイの言葉と同時に、彼はスレイごと身体を起こし、抱き締めながらその大きな乳房に顔を埋めた。
そして、彼女の敏感な乳首を口にくわえ込んだ。
舌で嬲り、吸い上げ、唇で挟む。
彼女の身体はその度に震えた。

「あっ…だめだよっ…!!」
「嫌いなものを愛でるような男じゃないぞ」
「んっ…ふぁ……じゃあ…もっと弄ってぇ!」

スレイの懇願に答えるべく、ショウは彼女の乳首に軽く歯を立てる。
突然の快感にスレイの身体がビクンと跳ねた。
彼は乳首を歯で傷つけないように気をつけながら、甘噛みを繰り替えした。

「はっ…あっ!…ああっ!!」

断続的に、しかしある程度の間隔を置いて全身を貫く快感が、彼女の脳髄と身体の芯を揺さぶった。
スレイの表情は与えられる快感とその次に訪れるであろう、悦楽と絶頂への期待ですっかりと乱れ、涎と涙を撒き散らしている。
普段の理性的で力強い彼女の姿はそこにはない、ただひたすら肉欲に溺れ、愛しい男に滅茶苦茶に犯される事しか考えていないようだった。

ふと気づけば、彼女の下着は自身の愛液でグショグショに濡れていた。
もちろんショウの肉棒ははちれきんばかりに隆起している。

お互い準備が万端であれば、次にどうなるかは考えるまでも無かった。

〜続〜
10/07/11 04:28更新 / 月影
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■作者メッセージ
チャットでのお話を思い出しつつ、ジパングの話を書きました。
だが、肝心な中身はお預けを喰らったデュラ娘のエロエロな話という…
設定を生かし切れるようにしたいところ…

そして、また文字数で切ったので半端な終わり方をして申し訳ないです。

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