海沿いの町
ここはとある国立大図書館。
そこに少女が１人、少々厚めの本を小脇に抱えて、読書用の机に向って歩いていた。
白く広く、静まり返った図書館で、少女が手にしているのは魔物娘達に関する書物である。
この図書館には様々な図書が所蔵されている。
それこそ有史以前の禁断の魔術書から、夫婦の性活を綴った本まで、多岐に渡る。
今、少女が机に座り開いた本は魔物達と人間の関係や生活等を残された当事者の手記や親魔物派、反魔物派の見解や記録等から編纂したものだ。
少女は本を開いた……
――――――――――――――――――――
潮騒がリズムを刻むように響く。
場所は親魔物領。
魔都エリスライから遠く西に３００ｋｍ。
漁港として栄える町、ヴォルマルク。
――――ルシア
その浜辺で、私は波を体に浴びながら座り込んでいます。
水を掌に掬い、掌を見つめると、手の中の海水も私の手も、透けて見えます。
今日も海は綺麗です。
私は立ち上がり、海に向って歩き出します。
水を蹴る音がやがて聞こえなくなり、腰まで海水に浸かりました。
ああ…海は気持ちがいい。
胸まで海水に沈んだところで私は姿勢を変え、空を見上げる。
既に西に傾いた日差しが、私の体を突き抜けてゆく。
波間に浮かぶのは気持ちがいい。
海の上で浮かぶ事は私の毎日の日課。
こうやって海からの力を体に取り込むと共に、私が海の民であったことを忘れないようにしています。
そんな事をして３０分程経っただろうか…
彼がやって来た。
――――ノーシュ・クライ
俺は浜辺への道を小走りで進んでいる。
目的は１つ、毎日この時間帯に海に漂う彼女の様子を見に行くためだ。
やがて、海風が強く吹き付けてくる。
いつも彼女が居るのは漁船や交易船が出入りしないただの浜辺だ。
彼女が見えた。
彼女…シー・スライムのルシアはいつものようにそこに居た。
｢ルシアー！｣
つい、彼女の名前を叫んでしまった。
――――ルシア
私を呼ぶ声が聞こえる…
相手は分かっています。
随分前に浜辺に打ち上げられていた私を助けてくれた方。
そのまま、ギルドに保護して貰いました。
そして、私はそれ以来ノーシュ様の元で生活支え、生活を共にしてます。
しかし、私は海の民、時折こうして海に戻るのです。
そうこうしている内にノーシュ様が浜辺まで降りてきました。
｢ノーシュ様？｣
｢そろそろ、日課は終わりそう？｣
｢はい…そろそろ満足しましたので、戻りますね｣
海中で立ち上がり、ノーシュ様の元に駆け寄ります。
海水で濡れた私をノーシュ様は抱き締めてくれました。
はぅ…そんなに強く抱き締められると照れてしまいます…
――――海の町ヴォルマルク
２人は手をつなぎ、自宅への道を歩いていた。
家の数は多くは無いが、レンガ造りのしっかりした町並みである。
潮風と潮騒と共に有る町だった。
２人が歩く通りは市が開かれる通りであり、人が多い。
人が織り成す喧騒の中、ノーシュが切り出した話はギルドについてのものだった。
｢…３ヶ月前の事件…聞いたか？｣
｢？…はい、何でも魔物と討伐隊が衝突したとか｣
｢ああ…それでギルド員が多数消息を絶っているらしくてな｣
｢どうしたんですか？｣
それは…と彼は続けた。
周囲の雑然とした音の中で、石畳を歩く足音だけがやけに大きく聞こえる。
｢反魔物領のギルドに異動になるかもしれない｣
｢！？｣
見る見るうちに少女の表情は曇り、透き通った瞳からぽろぽろと涙を流し始めた。
｢…私は、どうなるのですか？｣
｢それは…｣
｢ぐすっ……置き去りにしないで下さい…うぇぇぇ…｣
ルシアは往来の真ん中で泣き出してしまった。
幼気な少女を泣かせたというのは体裁がとても悪い。
あっという間に二人の周りに人だかりが出来始めた。
彼は慌てて泣きじゃくる彼女の手を引き、周囲の人の冷たい視線を背に受けながら、自宅まで走った。
――――ノーシュ宅
時刻は夕刻。
彼の家ではルシアを必死に慰めるノーシュの姿があった。
｢泣かないでくれよ、まだ決まったわけじゃないんだしさ｣
｢決まったら、私を置いて行くのですか？、それはあんまりです｣
｢でも、反魔物領の内陸って話だから海は無いし…ルシアは定期的に海に戻らないとだめだろ？｣
話はまとまらず、気不味い雰囲気のまま、夕餉を済ませる事にした。
料理は主として海鮮を用いた物が多い。
漁業が発達している事もあるが、海洋の魔物達と友好関係を結んだことで、良質な魚が沢山取れるのだ。
今夜は焼き魚だった。
だが、この日ばかりは味も素っ気も感じられなかった。
２人とも言葉が無いまま、夕餉を終え、夜を迎えた。
今は布団を敷き、寝る用意をしている。
｢明かり…消すよ？｣
｢はい…｣
ノーシュが明かりを落とし、部屋は闇に包まれる。
２人がそれぞれ別々の寝床に入ると、遠く、潮騒だけが響くのが聞こえた。
それから１週間。
２人は顔を合わせることが無かった。
そして、彼に正式な異動の辞令が降りると、見計らったかのようにルシアが現れた。
それは異動の２日前の真夜中の事だった……
――――ノーシュ・クライ
その夜、俺は考え事をして眠れなかった。
明かりは落として部屋は暗い。
普段はルシアと一緒にしている夕餉の後片付けも洗濯も、中途半端になっている。
正式に反魔物側のギルドへの異動が決まり、引っ越しの準備も相まって、部屋は散らかっている。
俺の生活は崩れていた。
彼女には異動の話をすべきなのだろうが、避けられているのか、いつもの場所には居ることも無く、寝食を共にすることも無くなった。
彼女に…嫌われただろうな…
俺がそんな事を考えていたときだった。
コンコンと扉を叩く音が暗い部屋に響いた。
俺は起き上がって、扉を開ける。
そこには青白く透き通った彼女が立っていた。
――――ノーシュ宅
ノーシュが扉を開けると、そこには両手の胸の前で組み、じ〜っと彼を見詰めるルシアが立っていた。
｢あ…ルシ…ア？｣
｢ノーシュ様、今……いいですか？｣
｢ああ…｣
彼はルシアを家に入れた。
玄関に立つ彼女の様子は落ち着かない様子だった。
｢ごめん、今明かりをつけｒ｣
｢待って｣
｢？｣
｢ノーシュ様！！｣
｢！！｣
彼女に背を向け、部屋の明かりをつけようとした所、彼女の声に制止された。
そして、彼が振り返った刹那、ルシアはノーシュに抱きついた。
｢ルシア？｣
｢ノーシュ様……私は知っています……ノーシュ様は異動が決まったのですよね…｣
｢……ああ｣
彼女はなぜか知っていた、彼がもう直ぐ内陸の地へ去ってしまうことを。
だから彼も正直に答えた。
ルシアは彼の胸に顔をこすり付ける。
声は涙ぐんでいた。
｢…ごめん…ルシア｣
｢いいんです…仕方の無いことです…でも…戻ってきてくれますよね？｣
｢もちろんだ…向こうのギルドの人員が揃ったらこっちに戻って来れるさ…｣
｢それまで…時間が掛かりますよね…｣
｢多分な…２年か…３年か…目処は立たないらしいが｣
その場で抱き合ったまま、２人は零れ落ちる様に言葉を紡いだ。
そして、ルシアは続ける。
｢ノーシュ様…お願いがあります…｣
｢…何？｣
｢ノーシュ様…私と子供を…作ってください…｣
｢！？｣
｢ちゅ…ん…ちゅ…｣
貴方の子供が欲しい…そう言いながら、彼女はノーシュにキスをした。
スライムの柔らかい唇の感触が彼に伝わった。
それと同時に、口の中に何か液体を流し込まれてしまう。
｢ん…ぷ…ルシア…何を……｣
｢…魔女特製の精力剤です…ん…ちゅ……一晩は止まりません…｣
だから…自分を抱いて欲しい、彼女はそう言った。
彼はあっという間に自分が昂ぶっていくのを感じていた。
それでも辛うじて残った理性で、彼女の手を引き、ベッドまで連れて来る。
｢はぁ……はぁ…ルシア…本当にいいのか？｣
｢構いません…ノーシュ様が居ない間、私は貴方の子供を育ててお待ちします｣
それなら、寂しくない、そう言った。
彼も覚悟を決めたようだった。
｢分かった…｣
｢はい……お願いします｣
｢あっ…ん…ちゅ……あぁぁ！｣
彼はルシアを抱き寄せ、キスをすると、ベッドにゆっくりと押し倒した。
彼女の体はしっとりとしており、起伏の少ない胸を擦る様撫でると、切なげな吐息を漏らした。
｢あ…ん…はぁ…｣
甲高く喘ぎ声を上げる彼女に、ノーシュは疑問に思ったことがあった。
｢ひょっとして…ルシアも飲んじゃった？｣
｢はいぃ……だから…お願いします…こっちも触ってくださいぃ！｣
彼女は横になったまま、スカートのようになっている傘を自分で捲り上げた。
彼女のその場所には普段は存在しない、いわゆる人間の女性の部分があった。
そこはしっとりと濡れ、彼を受け入れんとひくひくと震えていた。
ノーシュはそこに口づけし舐め上げた。
｢やぁぁ…｣
｢もうこんなになってる…｣
｢いゃぁ…言わないで下さい…あぁん…｣
ルシアの秘所はあっという間に愛液で溢れた。
彼女の身体は仄かに火照り、小さく痙攣している。
じゅるじゅると音を立てて吸ったり舐めたりすると、まもなくルシアの体が反り返った。
｢だめです…イッちゃいます…あぁぁぁぁぁぁ！！！｣
｢うわっ……顔中べとべとになっちゃった…｣
ルシアは叫び声をあげ、絶頂に達した。
彼の顔に愛液を浴びせ、彼女は肩で息をしている。
そして、小さな声で囁いた。
｢ノーシュ様…そろそろ…挿れて下さい…｣
｢分かってるよ…｣
彼は服を脱ぎ、既にいきり立っている肉棒を彼女のそこに擦り付ける。
焦らされる快感で彼女は震えた。
｢あぁぁ…焦らさないで下さいぃ！！！、お願いします…私のここにノーシュ様のおちんちん下さいぃぃ！！！｣
亀頭が自分の秘所を擦る刺激に耐えかね、ルシアの叫び声を上げた。
彼は肉棒を秘所に添え、ゆっくりと腰を進めた。
すると、ぐちゃぐちゃと軟体を押し広げる感覚が纏わり付いて来る。
彼女の中はネチョネチョとした粘液が溢れ、柔らかい内壁が彼の肉棒を包み込んだ。
｢あっ…ん…はぁ…んぁ…気持ち良いです！！もっと…もっと動いてぇぇ！！｣
｢はぁ…はぁ…ん…あ…｣
腰を前後させ、抽送を繰り返す。
引く時は纏わり付き、突く時は押し返そうとする。
その快感は、彼を更に昂ぶらせた。
｢ノーシュ様ぁ…気持ち良いですか？私の中…気持ち良いですかぁぁ？｣
｢ああ…気持ち良いよ…んっ……それより…もう…出ちゃいそうだ…っ…｣
｢はいぃ！！下さい、膣内に一杯下さいぃぃ！！｣
｢あぁぁぁぁぁ！！出る！！！｣
彼女の中に出し入れするうち、彼はあっという間に限界に達した。
そして、そのまま彼女の中に精を放ってしまった。
精液が彼女の中に吐き出された。
あっという間に体内に取り込まれたそれは、彼女の身体に薄まる様に溶けていった。
｢はぁ…はぁ……あれ…？｣
｢ノーシュ様…まだまだ元気ですよぉ♪｣
一度達したのにも拘らず、彼の肉棒は未だにいきり立っている。
するりと、ルシアがノーシュの腕の中から這い出し、横から彼を引っくり返した。
｢ルシア？｣
｢今度は私が上に……挿れますね……ああぁん…♪｣
彼を仰向けにし、その上に跨った彼女はそそり立つ肉棒を再び秘所に埋めていった。
そして、身体を上下に揺すり、彼の肉棒を擦り上げた。
・・・・・・・・・・
それから５の刻の間、２人は交わり続けた。
後背位で、対面座位で、背面立位で…口で、手で、菊門で、膣で、理性をかなぐり捨て、がむしゃらに交わった。
そして、時刻は早朝へ…
｢ルシア…大丈夫？｣
｢…何とか…｣
２人はよろよろと腰を抑えながら、家の中を片付けていた。
結局、彼女がこっそりアルバイトをして買ったという精力剤は絶大な効果を発揮し、２人は限界まで性交に溺れてしまった。
大量に注がれた精はルシアの身体に魔力として取り込まれ、小さなシー・スライムを１人産み落とすに至った。
幼子は引っ越しの準備をする２人の後を追いかける様に歩き回っている。
ふと、ノーシュは荷物の整理を止めて立ち止まると、後ろからぶつかる様に娘が抱きついてきた。
｢ぱぱぁ、どうしたの？かなしいの？｣
｢…ごめんな…｣
｢…っ…うっ…｣
自らを父と呼んでくれる幼気な少女を自分は置いて行かなければならない。
ルシアのために、と考えた行動は他でもない愛娘を傷つけることになってしまう。
彼は自責の念にとらわれていた。
ルシアもそんな彼の心中を察してか、嗚咽を漏らした。
｢ぱぱ…あたし、いい子でまってるよ♪、だから早くかえってきてね？｣
｢｢！｣｣
ノーシュは思わず娘を抱き締めた。
娘は自分の父親がすぐに自分の前から居なくなってしまう事を知っていた。
過剰に溜め込まれた精(＝魔力)がルシアの記憶の一部を娘に与えていたのだった。
事情を知った上で、それでも尚、健気に父を送り出そうとしていた。
母親はそんな娘と父親をまとめて抱き締めた
｢ああ…すぐに帰るよ…そしたら…３人で暮らそうな｣
｢うん♪｣
｢ノーシュ様…いえ旦那様…私はずっとお待ちしております｣
そして、家族３人は仲良く荷物をまとめにかかった。
やがて、荷物をまとめ終わり、翌日には運送屋に荷物を引き渡し、彼は反魔物領へと旅立っていった。
だがしかし、それから半年足らずで、彼はヴォルマルクへ舞い戻る事となる。
彼はどうやら彼自身や周りが考える以上に親馬鹿だったらしい、最後に見た愛娘の涙ぐむ姿に、彼はギルドでの仕事が手付かずになってしまい、あっという間に転属を命じられてしまったのだ。
帰省したその日に、甲斐甲斐しく彼の家で生活を続けていた妻子に飛びつかれ、それまでの分も合わせて搾り取られてしまう。
それから彼はあっさりとギルドを辞め、シービショップの導きの下、海の民となり、海中に消えた。
〜あとがき〜
その後の彼らに関する記述は残っていない。
消息を絶つまでの記録が、ルシアというシー・スライムが残した手記の一部を元に書き起こされているのみである。
――――――――――――――――――――
そこに少女が１人、少々厚めの本を小脇に抱えて、読書用の机に向って歩いていた。
白く広く、静まり返った図書館で、少女が手にしているのは魔物娘達に関する書物である。
この図書館には様々な図書が所蔵されている。
それこそ有史以前の禁断の魔術書から、夫婦の性活を綴った本まで、多岐に渡る。
今、少女が机に座り開いた本は魔物達と人間の関係や生活等を残された当事者の手記や親魔物派、反魔物派の見解や記録等から編纂したものだ。
少女は本を開いた……
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潮騒がリズムを刻むように響く。
場所は親魔物領。
魔都エリスライから遠く西に３００ｋｍ。
漁港として栄える町、ヴォルマルク。
――――ルシア
その浜辺で、私は波を体に浴びながら座り込んでいます。
水を掌に掬い、掌を見つめると、手の中の海水も私の手も、透けて見えます。
今日も海は綺麗です。
私は立ち上がり、海に向って歩き出します。
水を蹴る音がやがて聞こえなくなり、腰まで海水に浸かりました。
ああ…海は気持ちがいい。
胸まで海水に沈んだところで私は姿勢を変え、空を見上げる。
既に西に傾いた日差しが、私の体を突き抜けてゆく。
波間に浮かぶのは気持ちがいい。
海の上で浮かぶ事は私の毎日の日課。
こうやって海からの力を体に取り込むと共に、私が海の民であったことを忘れないようにしています。
そんな事をして３０分程経っただろうか…
彼がやって来た。
――――ノーシュ・クライ
俺は浜辺への道を小走りで進んでいる。
目的は１つ、毎日この時間帯に海に漂う彼女の様子を見に行くためだ。
やがて、海風が強く吹き付けてくる。
いつも彼女が居るのは漁船や交易船が出入りしないただの浜辺だ。
彼女が見えた。
彼女…シー・スライムのルシアはいつものようにそこに居た。
｢ルシアー！｣
つい、彼女の名前を叫んでしまった。
――――ルシア
私を呼ぶ声が聞こえる…
相手は分かっています。
随分前に浜辺に打ち上げられていた私を助けてくれた方。
そのまま、ギルドに保護して貰いました。
そして、私はそれ以来ノーシュ様の元で生活支え、生活を共にしてます。
しかし、私は海の民、時折こうして海に戻るのです。
そうこうしている内にノーシュ様が浜辺まで降りてきました。
｢ノーシュ様？｣
｢そろそろ、日課は終わりそう？｣
｢はい…そろそろ満足しましたので、戻りますね｣
海中で立ち上がり、ノーシュ様の元に駆け寄ります。
海水で濡れた私をノーシュ様は抱き締めてくれました。
はぅ…そんなに強く抱き締められると照れてしまいます…
――――海の町ヴォルマルク
２人は手をつなぎ、自宅への道を歩いていた。
家の数は多くは無いが、レンガ造りのしっかりした町並みである。
潮風と潮騒と共に有る町だった。
２人が歩く通りは市が開かれる通りであり、人が多い。
人が織り成す喧騒の中、ノーシュが切り出した話はギルドについてのものだった。
｢…３ヶ月前の事件…聞いたか？｣
｢？…はい、何でも魔物と討伐隊が衝突したとか｣
｢ああ…それでギルド員が多数消息を絶っているらしくてな｣
｢どうしたんですか？｣
それは…と彼は続けた。
周囲の雑然とした音の中で、石畳を歩く足音だけがやけに大きく聞こえる。
｢反魔物領のギルドに異動になるかもしれない｣
｢！？｣
見る見るうちに少女の表情は曇り、透き通った瞳からぽろぽろと涙を流し始めた。
｢…私は、どうなるのですか？｣
｢それは…｣
｢ぐすっ……置き去りにしないで下さい…うぇぇぇ…｣
ルシアは往来の真ん中で泣き出してしまった。
幼気な少女を泣かせたというのは体裁がとても悪い。
あっという間に二人の周りに人だかりが出来始めた。
彼は慌てて泣きじゃくる彼女の手を引き、周囲の人の冷たい視線を背に受けながら、自宅まで走った。
――――ノーシュ宅
時刻は夕刻。
彼の家ではルシアを必死に慰めるノーシュの姿があった。
｢泣かないでくれよ、まだ決まったわけじゃないんだしさ｣
｢決まったら、私を置いて行くのですか？、それはあんまりです｣
｢でも、反魔物領の内陸って話だから海は無いし…ルシアは定期的に海に戻らないとだめだろ？｣
話はまとまらず、気不味い雰囲気のまま、夕餉を済ませる事にした。
料理は主として海鮮を用いた物が多い。
漁業が発達している事もあるが、海洋の魔物達と友好関係を結んだことで、良質な魚が沢山取れるのだ。
今夜は焼き魚だった。
だが、この日ばかりは味も素っ気も感じられなかった。
２人とも言葉が無いまま、夕餉を終え、夜を迎えた。
今は布団を敷き、寝る用意をしている。
｢明かり…消すよ？｣
｢はい…｣
ノーシュが明かりを落とし、部屋は闇に包まれる。
２人がそれぞれ別々の寝床に入ると、遠く、潮騒だけが響くのが聞こえた。
それから１週間。
２人は顔を合わせることが無かった。
そして、彼に正式な異動の辞令が降りると、見計らったかのようにルシアが現れた。
それは異動の２日前の真夜中の事だった……
――――ノーシュ・クライ
その夜、俺は考え事をして眠れなかった。
明かりは落として部屋は暗い。
普段はルシアと一緒にしている夕餉の後片付けも洗濯も、中途半端になっている。
正式に反魔物側のギルドへの異動が決まり、引っ越しの準備も相まって、部屋は散らかっている。
俺の生活は崩れていた。
彼女には異動の話をすべきなのだろうが、避けられているのか、いつもの場所には居ることも無く、寝食を共にすることも無くなった。
彼女に…嫌われただろうな…
俺がそんな事を考えていたときだった。
コンコンと扉を叩く音が暗い部屋に響いた。
俺は起き上がって、扉を開ける。
そこには青白く透き通った彼女が立っていた。
――――ノーシュ宅
ノーシュが扉を開けると、そこには両手の胸の前で組み、じ〜っと彼を見詰めるルシアが立っていた。
｢あ…ルシ…ア？｣
｢ノーシュ様、今……いいですか？｣
｢ああ…｣
彼はルシアを家に入れた。
玄関に立つ彼女の様子は落ち着かない様子だった。
｢ごめん、今明かりをつけｒ｣
｢待って｣
｢？｣
｢ノーシュ様！！｣
｢！！｣
彼女に背を向け、部屋の明かりをつけようとした所、彼女の声に制止された。
そして、彼が振り返った刹那、ルシアはノーシュに抱きついた。
｢ルシア？｣
｢ノーシュ様……私は知っています……ノーシュ様は異動が決まったのですよね…｣
｢……ああ｣
彼女はなぜか知っていた、彼がもう直ぐ内陸の地へ去ってしまうことを。
だから彼も正直に答えた。
ルシアは彼の胸に顔をこすり付ける。
声は涙ぐんでいた。
｢…ごめん…ルシア｣
｢いいんです…仕方の無いことです…でも…戻ってきてくれますよね？｣
｢もちろんだ…向こうのギルドの人員が揃ったらこっちに戻って来れるさ…｣
｢それまで…時間が掛かりますよね…｣
｢多分な…２年か…３年か…目処は立たないらしいが｣
その場で抱き合ったまま、２人は零れ落ちる様に言葉を紡いだ。
そして、ルシアは続ける。
｢ノーシュ様…お願いがあります…｣
｢…何？｣
｢ノーシュ様…私と子供を…作ってください…｣
｢！？｣
｢ちゅ…ん…ちゅ…｣
貴方の子供が欲しい…そう言いながら、彼女はノーシュにキスをした。
スライムの柔らかい唇の感触が彼に伝わった。
それと同時に、口の中に何か液体を流し込まれてしまう。
｢ん…ぷ…ルシア…何を……｣
｢…魔女特製の精力剤です…ん…ちゅ……一晩は止まりません…｣
だから…自分を抱いて欲しい、彼女はそう言った。
彼はあっという間に自分が昂ぶっていくのを感じていた。
それでも辛うじて残った理性で、彼女の手を引き、ベッドまで連れて来る。
｢はぁ……はぁ…ルシア…本当にいいのか？｣
｢構いません…ノーシュ様が居ない間、私は貴方の子供を育ててお待ちします｣
それなら、寂しくない、そう言った。
彼も覚悟を決めたようだった。
｢分かった…｣
｢はい……お願いします｣
｢あっ…ん…ちゅ……あぁぁ！｣
彼はルシアを抱き寄せ、キスをすると、ベッドにゆっくりと押し倒した。
彼女の体はしっとりとしており、起伏の少ない胸を擦る様撫でると、切なげな吐息を漏らした。
｢あ…ん…はぁ…｣
甲高く喘ぎ声を上げる彼女に、ノーシュは疑問に思ったことがあった。
｢ひょっとして…ルシアも飲んじゃった？｣
｢はいぃ……だから…お願いします…こっちも触ってくださいぃ！｣
彼女は横になったまま、スカートのようになっている傘を自分で捲り上げた。
彼女のその場所には普段は存在しない、いわゆる人間の女性の部分があった。
そこはしっとりと濡れ、彼を受け入れんとひくひくと震えていた。
ノーシュはそこに口づけし舐め上げた。
｢やぁぁ…｣
｢もうこんなになってる…｣
｢いゃぁ…言わないで下さい…あぁん…｣
ルシアの秘所はあっという間に愛液で溢れた。
彼女の身体は仄かに火照り、小さく痙攣している。
じゅるじゅると音を立てて吸ったり舐めたりすると、まもなくルシアの体が反り返った。
｢だめです…イッちゃいます…あぁぁぁぁぁぁ！！！｣
｢うわっ……顔中べとべとになっちゃった…｣
ルシアは叫び声をあげ、絶頂に達した。
彼の顔に愛液を浴びせ、彼女は肩で息をしている。
そして、小さな声で囁いた。
｢ノーシュ様…そろそろ…挿れて下さい…｣
｢分かってるよ…｣
彼は服を脱ぎ、既にいきり立っている肉棒を彼女のそこに擦り付ける。
焦らされる快感で彼女は震えた。
｢あぁぁ…焦らさないで下さいぃ！！！、お願いします…私のここにノーシュ様のおちんちん下さいぃぃ！！！｣
亀頭が自分の秘所を擦る刺激に耐えかね、ルシアの叫び声を上げた。
彼は肉棒を秘所に添え、ゆっくりと腰を進めた。
すると、ぐちゃぐちゃと軟体を押し広げる感覚が纏わり付いて来る。
彼女の中はネチョネチョとした粘液が溢れ、柔らかい内壁が彼の肉棒を包み込んだ。
｢あっ…ん…はぁ…んぁ…気持ち良いです！！もっと…もっと動いてぇぇ！！｣
｢はぁ…はぁ…ん…あ…｣
腰を前後させ、抽送を繰り返す。
引く時は纏わり付き、突く時は押し返そうとする。
その快感は、彼を更に昂ぶらせた。
｢ノーシュ様ぁ…気持ち良いですか？私の中…気持ち良いですかぁぁ？｣
｢ああ…気持ち良いよ…んっ……それより…もう…出ちゃいそうだ…っ…｣
｢はいぃ！！下さい、膣内に一杯下さいぃぃ！！｣
｢あぁぁぁぁぁ！！出る！！！｣
彼女の中に出し入れするうち、彼はあっという間に限界に達した。
そして、そのまま彼女の中に精を放ってしまった。
精液が彼女の中に吐き出された。
あっという間に体内に取り込まれたそれは、彼女の身体に薄まる様に溶けていった。
｢はぁ…はぁ……あれ…？｣
｢ノーシュ様…まだまだ元気ですよぉ♪｣
一度達したのにも拘らず、彼の肉棒は未だにいきり立っている。
するりと、ルシアがノーシュの腕の中から這い出し、横から彼を引っくり返した。
｢ルシア？｣
｢今度は私が上に……挿れますね……ああぁん…♪｣
彼を仰向けにし、その上に跨った彼女はそそり立つ肉棒を再び秘所に埋めていった。
そして、身体を上下に揺すり、彼の肉棒を擦り上げた。
・・・・・・・・・・
それから５の刻の間、２人は交わり続けた。
後背位で、対面座位で、背面立位で…口で、手で、菊門で、膣で、理性をかなぐり捨て、がむしゃらに交わった。
そして、時刻は早朝へ…
｢ルシア…大丈夫？｣
｢…何とか…｣
２人はよろよろと腰を抑えながら、家の中を片付けていた。
結局、彼女がこっそりアルバイトをして買ったという精力剤は絶大な効果を発揮し、２人は限界まで性交に溺れてしまった。
大量に注がれた精はルシアの身体に魔力として取り込まれ、小さなシー・スライムを１人産み落とすに至った。
幼子は引っ越しの準備をする２人の後を追いかける様に歩き回っている。
ふと、ノーシュは荷物の整理を止めて立ち止まると、後ろからぶつかる様に娘が抱きついてきた。
｢ぱぱぁ、どうしたの？かなしいの？｣
｢…ごめんな…｣
｢…っ…うっ…｣
自らを父と呼んでくれる幼気な少女を自分は置いて行かなければならない。
ルシアのために、と考えた行動は他でもない愛娘を傷つけることになってしまう。
彼は自責の念にとらわれていた。
ルシアもそんな彼の心中を察してか、嗚咽を漏らした。
｢ぱぱ…あたし、いい子でまってるよ♪、だから早くかえってきてね？｣
｢｢！｣｣
ノーシュは思わず娘を抱き締めた。
娘は自分の父親がすぐに自分の前から居なくなってしまう事を知っていた。
過剰に溜め込まれた精(＝魔力)がルシアの記憶の一部を娘に与えていたのだった。
事情を知った上で、それでも尚、健気に父を送り出そうとしていた。
母親はそんな娘と父親をまとめて抱き締めた
｢ああ…すぐに帰るよ…そしたら…３人で暮らそうな｣
｢うん♪｣
｢ノーシュ様…いえ旦那様…私はずっとお待ちしております｣
そして、家族３人は仲良く荷物をまとめにかかった。
やがて、荷物をまとめ終わり、翌日には運送屋に荷物を引き渡し、彼は反魔物領へと旅立っていった。
だがしかし、それから半年足らずで、彼はヴォルマルクへ舞い戻る事となる。
彼はどうやら彼自身や周りが考える以上に親馬鹿だったらしい、最後に見た愛娘の涙ぐむ姿に、彼はギルドでの仕事が手付かずになってしまい、あっという間に転属を命じられてしまったのだ。
帰省したその日に、甲斐甲斐しく彼の家で生活を続けていた妻子に飛びつかれ、それまでの分も合わせて搾り取られてしまう。
それから彼はあっさりとギルドを辞め、シービショップの導きの下、海の民となり、海中に消えた。
〜あとがき〜
その後の彼らに関する記述は残っていない。
消息を絶つまでの記録が、ルシアというシー・スライムが残した手記の一部を元に書き起こされているのみである。
――――――――――――――――――――
10/06/26 16:29更新 / 月影
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