読切小説
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僕は幼馴染とエッチする
僕にはダンピールの幼馴染がいた。
太陽みたいな笑顔が良く似合う活発な女の子だった。駆けっこをすれば何度も追い抜かれて喧嘩をすれば何時も泣かされた。小さい頃は同性だと本気で勘違いしていた程だ。
胸や尻が出っ張り始める時期になっても気付かずに、うっかり着替えを覗いた時になって初めて幼馴染が異性だと気付いた。その時の、大事な部分は布で隠したまま顔を真っ赤にして暴れ回る痴態は本当に女の子らしくて、数年経った今でも昨日の事みたいに思い出せる。

彼女と初めて出会ったのは何時だったのかは覚えていない。忘れてしまうくらい遠い昔から一緒にいたのは確かだ。同じ産湯に浸かった仲だと両親に言われても驚かない。
両親よりも長い時間を共有してきただろう。多感だった頃はお互いに手を握っていないと相手が何処かに行ってしまいそうだと不安になるくらいに依存していた。

そして、幼馴染であっても、思春期になれば異性の身体として見てしまうようになるのは不思議な事では無いと思う。彼女の容姿は僕の好みドンピシャだった。ふわふわの金髪も、たわわな胸も、すらりとした足も、ぷりっとしたお尻も、凛とした瞳も、少し強引な性格も、何かもが恋しかった。やった後の罪悪感が凄かったけど何度か彼女を思って自慰をした事だってある。
もしも僕達は見ず知らずの赤の他人で、何気なく彼女が僕の前を通り過ぎたのなら、僕は彼女を追い掛けていただろう。けれど幼馴染として産まれてしまった僕達は安心してしまって、自分の気持ちを正直に伝える事も無いままに、友達以上恋人未満の依存生活をずるずると送り続けてしまった。

僕達が成人になった時、僕達の関係が一変する。僕達は結婚してセックスした。
地方の一貴族である「鏡」は代々から多種多様な魔族の血を取り込んで優れた継承者を作り繁栄を目指してきた。そして新たに「鏡」が取り込む事になる魔族の血が人間と悪魔の力を兼ね備えたダンピールというわけだ。此の事は百年以上前から決まってらしく、僕達は二人で一つであるように産まれる前から設計されていたらしい。
父上からそれを聞かされた時、僕は人生でこれ以上無く困惑した。自分の出生の秘密にもそうだけど、今まで幼馴染だと思っていた女の子が許嫁だった事に衝撃を受けた。何故それを黙っていたのかと問い詰めると返されたのは、二言。

「二人が別々の道を歩む事はありえない。そういう風に作られているから」

何も言い返せなかった。僕は自分の人生の中で彼女が居ない人生と言う「もしも」を考えた事が無かった。僕達は一緒に生きて一緒に死ぬのが僕にとっての当たり前だった。
それだけじゃない。僕は幼馴染以外に欲情をした事がなかった。彼女以外に綺麗だと思った女性は沢山居た。ただ綺麗だと口にする事は出来ても心が揺れ動かされることはなかった。幼馴染以外の女性は沸き立つものがない。幼馴染こそが唯一無二。その依存的な思考を、父上から指摘されるまで僕は不思議だと疑う事すらもしなかった。

そうして今みたいに自分の過去を見つめ直せるようになったのは、幼馴染との結婚を強いられてから三日後の朝。それまでの間は流されるがままに結婚式を開いて初夜を迎えていた。
自分を失っていた中で僕は何をしていたのかは頭に入ってない。初夜での脳髄が焼き切れそうな快楽だけは覚えていた。
それは当たり前なんだと今なら思える。僕と彼女は産まれる前からそうなるように決まっていたのだから。僕達の交わりはただ性欲が刺激されるだけではない、夫婦の酒杯で飲む酒のような心地良さがある。交わる度に神にでもなったかのような全能感で満たされて、浮世の事はどうでもなるくらいに快楽に沈んでいく。

ただそれでも、幼馴染の処女を奪った日から今までずっと、そしてこれからも、僕は深い深い自己嫌悪に囚われている。妻との子作りに誰が何を咎めようかと唱えても奥底ではそんな自分に吐き気を催している。それでも貴方は欲情したのでしょうと否定したくとも否定出来ない罪悪の坩堝に見られている。どうして僕達は、こうなってしまった。



「んんッ…ん…」

彼女が股間に顔を埋めて懸命に奉仕をしてくれている。昼間はレイピアを握る指で陰茎の付け根を持ち上げながらも、ちろちろと舌で優しく、男の魔羅を。
魔性の魅力を持つ女性が跪いてグロテスクな肉棒を愛おしげに口にしているという視覚的な衝撃と、それが他ならぬ自分の分身である事実に、陰湿な優越感と征服感が湧き出る。
激しい刺激こそないけれど、彼女の口を中心に大袈裟に響く水音が頭の中で波を打ち、控え目ではあるけれど、熱の込められた吐息が敏感な部分に当てられる。人肌温度の唾液を、男根の皮膚に溶け込ませるように擦りつけられて、体が温まらないはずがない。次第に尿道口から粘着性のある先走りが漏れ始めた。

「あはッ、いただきまァす」

悪戯好きの子供のように笑って、亀頭を包むように接吻した。唇を窄めてカリ首を絞めつけ口腔で亀頭を甘く潰し、手で竿をさする。餌を貪る犬のようにも見えた。毎日僕を勇気続けてくれた明るい面影は今は何処にも無い。
ありありと見せつけられた浅ましい姿に気分が冷めるが口腔に愛撫されている以上は一物が萎える事は無い。くちゅくちゅと喉を鳴らしながらも彼女の口が離れる。膨れ上がった男の部分はミミズのような不気味な身動ぎをしてて先端は唾液と我慢汁で白く光っていた。
入れる方の潤滑油はこれで十分だろう。僕としては射精を我慢するだけで辛いのだが、入れられる側もしっかり濡らしておかなければならない。攻守を入れ替えようとして彼女の膝に手を伸ばす。が、止められた。


「今日は思い切り気持ち良くしてあげるんだから、先ずは一発、射精しちゃいな」

僕が何かを言うより先に陰茎を食まれる。そのまま宣言通り舌と口蓋が激しくうねり、されるがまま男根を弄ばれる。射精してしまいそうになったけれど反射的に腰を引かせて何とか踏み止まった。それを知ってか彼女は上目遣いに、けれど嗜虐的な笑みを浮かべている。
高位魔族である吸血鬼の血が垣間見える魔眼に背筋が凍るような被虐的な快楽を感じ、本当にこれは奉仕なのか、むしろ奉仕されているのは僕なのではと疑いたくなる。
一旦口を離した彼女は前髪をかきあげてから、舌先を、尿道口に沿うように這わせて先走りを舐め取って飲み込んだ。
動作の一つ一つが煽情的で股間に射精欲が集中する。それから前置きも無く亀頭を喉の奥に押し込んで顔全体を往復させた。ぬるぬるとした質感の軟口蓋に包まれながらも、肉棒の筋張った部分に吸血鬼の牙を突き立てられ脳味噌の沸騰点が容易く崩壊する。

「ッ、うおォお…、…」
「んん、あぁ、出た出たァ♪」

精液を喉に粘りつかれて、少し顔を顰めながらも喉を蠕動させて胃に運んでいた。断続的な後走りの汁も零す事無く、舌と口腔とを巧みに操って飲み干していく。
激しかった射精の噴火が収まっていって、ようやく彼女は男性器から離れると、ぷはぁと息を吐いた。その息抜きに、何となく幼かった頃一緒に河に泳ぎに行った時の事を思い出す。
思い出の中の少女がついさっきまで汚らしい欲望を搾り出していたダンピールと同一人物とは到底思えなかった。ハッキリと言ってしまえば目の前にいるダンピールが僕の幼馴染であると思いたくなかった。目の前にある現実を信じたくなかった。

「本当にいい匂い。熱くて臭くて、胸が火傷しちャいそう。…まだ出せるよね」
「…、好きにすればいい」

それでも僕が幼馴染の声を聞き間違える筈がない。耳に届かないはずがない。心も体も完全に狂っていた。けだるく首を縦に振る。
もう身体は生きる熱を満たす事しか考えられず、より激しい混迷を求めている。それを知ってか知らずか彼女は喜び一杯の笑顔を見せてから三度目の口戯を始めた。
陰茎の大部分を呑み込んでからゆっくりと後ろに退く。口と右手で竿をしごく一方で自慰をしていた。初めは胸を揉むくらいだったけど、上の口の動きが激しくなるにつれて溢れ出る雄の臭いに自分自身が堪え切れなくなったのか、男性器に触れていた手を女性器へと移してぐちゃぐちゃと陰唇を弄っている。
指が届く前からそこはしどしどに濡れていた。口で奉仕するだけでも興奮していたようだ。半分は人間はいえもう半分の魔物の気質がそうさせるのだろう。かく言う僕も彼女の口が前後する度に、未だ貪欲に精を搾り出そうと口腔が巧みに蠢く度に、また射精欲が浮き始める。
彼女が自慰で絶頂してしまう痴態も見てみたかったのだけれど先に僕の方に限界が来た。涙が出てしまいだったけど、何とか肺から言葉を捻り出す。

「顔に。顔に出したいんだけど」
「えっ? ふふッ、どうぞ♪」

限界寸前の一物を彼女の顔に突き出して、外気と口腔との温度差に被虐的な快感を覚えた僕は、獣欲に任せるがままに精液をぶち撒いた。行儀悪く飛び散った白濁液が明るい金髪や少し小麦色が混ざった健康的な肌色にへばり付く、得も知れぬ快感。
さらに、射精後からゆっくりと瞼を開けた彼女が赤い瞳を輝かせながらも自分に付着した子種を指で掬って舐め取る姿にはどうしようもない加虐的な快楽と優越感に満たされて出したばかりの陰茎にまた持ち上がり始めた。
自分の事だけど、この性欲の強さには呆れるばかりだ。その度に僕にも「鏡」が取り込んできた魔物の血が流れているということ、僕は彼女を気が済むまで犯し尽くせるように出来ていることを自覚させられる。
そんな自分自身を黙らせるように彼女にキスをする。突然だったけれど示し合せていたみたいに舌を合わせてくれた。新鮮な精液の苦い味がしたけれど、それすらも酔える麻薬だ。
彼女は積極的に自分の唾液を塗りつけてきた。舌と舌とを遊ばせながらも、わざと吸い付く音を大きく出して聴覚的にも快楽に漬ける事も忘れない。

「ねェ、いれて?」

そして、今までの戯れとは線を一つ越えた先へある行為への誘い。名家「鏡」の現当主として未だ子を宿さぬ妻からの性交を断る理由は無いし気概も無い。優しく押し倒すと笑って股を開いてくれる。赤ん坊を生み出す神秘の穴は、興奮と自慰の御蔭で充分に濡れていた。
彼女はスライムよりもねちっこく潤んだ視線を流してくれる。人外の美少女にそんなあられもない眼を向けられて股間を力ませない男は居ないだろう。
僕もその例外では無い、けれど同時に、自殺願望のようなものからの眼に見られていた。僕は誰、ここは何処、という疑問から始める幾億数もの哲学的宿題を降って湧き、耳を塞いで目を閉じて、この時だけは獣になって生物的本能が叫ぶがままに雌の子宮に種付ける。

「んん、あァはァ、ァ♪」

亀頭の先が擦らせるだけでも女性器は善がり陰唇が戦慄いて淫液を垂らす。性欲が強いのは僕と同じ。肉棒を口に含みながらも貫かれるのを待ち望んでいたのだろう。表面では余裕を保っていても内心では気が狂いそうだったに違いない。
そのいじらしいまでの奉仕精神とその仮面の下にあるセックスへの渇望に対して出来る限り欲情を抑えながら、人を殺す時の様な思い切りで僕は陰茎を彼女の中に刺し込んだ。
やや乱暴気味な挿入だったにも関わらず、肉襞は泣く子をあやす母のように男性器を優しく抱きしめる受け止めて、触れ合いながらも膣道のより奥へと善導する。
今までの上の口を荒らしてきた魔羅は嘘のように大人しくなって肉壁に寄り添いながらもゆっくりと進んでいき、…、やがて秘裂の奥に到達した。

「ん、ふゥ…、…、全部、入ったね」
「うん。凄く温かくて、気持ちいい」
「僕もだよ。君の心臓の鼓動が伝わってくる。お腹の中に赤ちゃんがいるのって、こんな感じなのかな?」
「それを男に聴くのは酷」
「はは、そりゃそうだ」

最奥にあるのは絶対的な安心感。女性器は肉棒から絞り取ろうとはせず、ただ男という来訪者を受け容れて歓迎のキスをする。それに気付いた時に得られる快楽は性的快楽とは全く異なるもの。温泉に浸かった時の毒気を抜かれる感覚と似ている。
彼女も同じようで、お腹の中に赤ちゃんがいるような、というのは男性には分からない比喩だけど、この時の見せる微笑みは神々しいまでの母性を表現していて母親こそが原初の神であるという一説も頷けた。
お互いが絶対的な安らぎの心地にいるからか、彼女はこの時が一番好きだと言った。けれど僕はこの時が一番嫌いだと言えなかった。

「もう、動くよ」

だから僕はこう切り出す。自分が許せないからだ。好きだったくせに正直に気持ちを伝えられず降って湧いた解決方法で幸せになって許嫁だからという理由で強姦同然に大切な人の処女を奪った自分を誰よりも憎んでいた。幼馴染を強姦した犯罪者がこんなに善いものを享受していいはずがない。安心の中だからこそ悪魔は声高く断罪を要求してくるのだ。

「僕と結婚した事、まだ後悔してる?」

だから彼女は切り返す。産まれる前から結ばれるように設計され双子の姉弟のように育てられたのだから互いの心の有り様なんて手に取るように分かるのだ。僕が罪悪に悩まされていることを知っているからその罪を問うた上で容赦を与えてくれようとしている。

「もしかして、他に好きな人がいたの?」
「君以外に居るものか。ずっと昔から君が好きだったさ」
「じゃあ何で、そんな悲しそうな顔をするの?」
「ずっと前から好きだったのに、許嫁だって分かった瞬間に告白するなんて、情けないにも程があるじゃないか」
「気にしていないよ。僕も君の事はずっと好きだった。でも、何もしなかった。環境に甘えていたのはお互い様なんだから」
「それでも僕は僕を許せない。僕は婚約を盾に君の処女を奪った。そんなのは金に物を言わせる下種と大差は無い」
「真面目過ぎるよ。僕は君を恨んでなんかいない。大好きな君と結ばれて良かったって何度でも言えるんだから」

違う。僕からしてみれば逆なんだ。許嫁が君以外なら良かった。種馬として何も考えずにセックスが出来た。でも君の前じゃ感情を押し殺す事なんて出来ないんだ。ずっと恋焦がれていた。家族になりたいって夢見ていた。けれどこんな形でそうなりたかったわけじゃない。それが悲しいんだ。この絶望を引きずったまま君と共に生きていくのが辛いんだ。
どうしてこうなってしまったんだと自分に問い詰めても答えられるはずがない。僕達が幼馴染だった頃に手を伸ばしても過去に手を加えられるはずが無い。自分を絞め殺してしまいそうだ。

「それは駄目。君が居ない世界なんて僕には考えられない。自殺なんて考えないで」
「あァ、分かってる。分かっているよ。僕も君の居ないあの世なんて考えられない。だから自殺はしない」
「それじゃあ君はいつ生きたいって言ってくれるの?」
「分からない。今まで生きていた中で生きたいなんて一度も思った事が無いから」
「それじゃあ君はどうしたら愛してるって言ってくれるの?」
「君の事はこの世の何よりも愛している」
「嘘」

言えなかった。嘘でも言えなかった。だから僕は腰を使って彼女を黙らせる。
膣は、その抱擁に反抗した途端に優しく慈しんでくれる慈母から、激しくも淫らに男の欲情を掻き立ててくる娼婦へと変貌した。絡みついた肉襞が陰茎を捻って、男から精液を絞り出そうとしている。僅かな痛みと多数の快楽が巧みに混合された肉の渦巻きに、僕は歯を食い縛って何とか射精を堪え切った。
先に口や顔に出していなかったらほんの数秒で射精していただろう。そう思わせる程の激情を噛み締めつつも意識を腰にのみ集中させて抽送をし始める。

「ひィん、いきなりはずるいよォ」

何が「ずるい」のかは聞きたくない。ただ気持ち良くなりたい。嬉しそうに泣く幼馴染を視界の隅に追い払い獣欲に身を任せる。戦士が槍を振るうように全身を喝で震わせながら一心不乱に肉棒を突き出した。
ぬるぬるとした潤滑油で覆われた柔らかな膣内は一切の抵抗はせずとも悪魔的に心地良い触感で、触れた部分から一斉に粘っこく纏わりついてくる。蜜壺から逃げるように腰を引かせてもその時に走る摩擦が頭を電撃し、また気をやりそうになる。
射精してしまえば確かに性欲は満たされるだろうけれど、それだけでは満足が出来ない。僕がさらに求めるのは精神的な愉悦だ。
愛した人に気持ち良くなって欲しいと願う自分への陶酔と愛した人に痴態の限りを尽くさせ凌辱したいと望む自分への嘲笑。自分勝手で退廃的な趣味ではあるけれど、だからこそ愉しく、それを思えば地獄のような快楽の責め苦も我慢出来た。

「ィぐ、あァは、溶けちャう、私のまんこ、溶けちゃううゥ!」

激しくも冷静に。少しでも長く楽しむ為に憂鬱な事で気を紛らわせながらも亀頭をぐりぐりと子宮口に押し付ける。魔物の膣の中は、このまま溶け合ってしまいたいくらい心地良い。
交ざり合う僕達の身体から吹き出る湯気は呼吸を通して肺を満たし、性質の悪い風邪のように頭蓋骨の中の脳味噌をぐつぐつと茹で上げる。
荒々しくも情熱的な性交に、先程までの、感傷的で情緒的な触れ合いが割り込める隙間なんてものは一切無い。無情に徹して欲望を掻き立てる。
カリ首で底無し沼のような秘裂からじゅぷじゅぷと淫液を掬い上げると余計に深みへと嵌っていきそうだ。いわゆる人間らしい心さえも沈んでいってしまいそうで、そんな自我への危険を懸命に報せる本能的な恐怖すらも愛おしい。

「ひィぐゥ、はァッ、はァ、はァん♪」

僕は余裕を以て性行を愉しんでいるけど彼女の方はそうではないらしい。まだ一回もイってないから当たり前だろう。元々端正な顔は過呼吸で歪んでも可愛らしくて途切れ途切れの吐息も煽情的だ。是非とも僕の胸の中で絶叫を上げさせたくなってくる。
また一段と燃え上がった情熱を糧にして両手で掴んで抱き寄せた。人一人を抱えて腰を動かすのは少し面倒ではあるけれど、正面から抱き合って交わる、いわゆる対面座位は、正常位とはまた違った良さがある。
受け身がちだった膣肉は重力を味方につけた御蔭でゴリゴリと責め立てきて、圧し掛かってくる太腿や尻肉は、乳とは負けず劣らずの瑞々しい柔らかさを兼ね備えている。
何よりも、体を密着させられるのがいい。手足で固く拘束されると病的な愛を錯覚する。彼女の嬌声を身近に感じ取る事が出来て、汗や香料の匂いを胸一杯に蓄える事が出来る。感覚を研ぎ澄ませばお互いの心臓の鼓動が聞こえてくる。彼女も胸を高鳴らせていると分かってくると僕も嬉しくなってきて、むくむくと元気が持ち上がってくる。
温かな血が通った首に舌を這わせるとビクンと全身を跳ねさせた。しょっぱかったけれど口当たりは滑らかで何度でも口にしたくなる。ダンピールの首筋ぺろぺろ。

「んんもォ、遊んでないでェちャんとしてよォ!」
「あ、ごめん」

怒られたので真面目にする事にした。吸血鬼ごっこのお陰で大分冷静になれた。対面座位の時の女性器の絞めつけは本当に気持ちいい。彼女が自分のものは名器である事を自覚していない所為もあって、こうでもして気を紛らわせないと理性丸ごと持っていかれてしまう。
落ち着いたところで物欲しそうに揺れ動いている彼女に合わせて陰茎を突き上げた。破竹の勢いで肉原を掻き分け蜜滝を登り詰め、最上にある分厚い肉蓋に触れた。しゃっくりを繰り返すに子宮口に亀頭を叩き込むと痙攣は体全体に広がっていく。
それからは肉棒で楽器を奏でるように膣肉を弾く。陽と陰の肉を一体化させるように、単純に噛み合って安定するのではなく、複雑に絡み合って繋がるように。その時こそに女性は美しい嬌声で鳴く。男として産まれたからにはこれよりもやりがいのある仕事は無い。

「ねェ、キス、キィス、してぇ!思いっきり、チュゥしてぇ!」
「いいよ」

返事をすると後頭部と首の裏を持たれて引き寄せられた。互いの口が一つに重なると無遠慮に唾液を貪られる。接吻ではなくて吸引だ。肺の空気すらも吸い込まれて脳味噌が苦痛に呻く。だがこれもこれで悪くはなく、こちらからも吸い立てると舌が面白い様に踊ってくれる。
このまま口で音頭を執っていてもいんだけどそれではまた怒られてしまうだろう。彼女の本当の望みを叶えてあげる。歯で自分の唇の皮を切って、精液に似た味の赤い液体を向こうの口に送り届けた。ほんの一滴とはいえ血液を飲ませた時ダンピールは全身を、身に纏う雰囲気さえも震えあがらせる。
そして吸血鬼としての快楽が最高潮に達する瞬間を見計らい、僕は今まで最高と自負出来る勢いで彼女の最も敏感な部分に男の釘を叩きつけた。

「―――――――ッ、―――ッ!」
「―――ッ。――ッ」

一層強く締め付けられた。ミシミシと過剰な愛情表現によって自分の骨を折られる寸前の心地良い音さえも聞こえる。膣道と尿道口と陰唇と陰核と恥丘が一斉に、小さな僕にギュゥウとしがみついてくる。それは激痛ではあるけれど、己が抱く雌をイかせた証でもあって、一人の雄としての極上の優越感だった。
彼女の悲鳴が僕の口の中に消えていく。赤い瞳から透明な液体が流れていた。腕や脚から力が抜けていき仰向けに倒れそうになった身体を支えて留める。
膣はまだしがみつきながらも断続的な痙攣を繰り返している。その揺れ心地が何とも気持ち良くて、男根には射精力が漲ってきた。そろそろ僕も中に射精してしまいたい。その前に声が聞きたくなってきたので、身を委ねてしまいたい欲望を我慢して、ゆっくりと唇を離した。

「ぷははァ、はァ、はァん、はあァ」
「ふぅ。気持ち良かったかな?」
「良かったァ…、凄く、良かったよォ♪」
「それはよかった。じゃあ僕の方からも思い切り動くよ」
「はァん、あァん、あァ…、愛してる」
「ッ!」

その囁きに僕は目が覚めた。ドクドクと精液を母胎に流し込みながらも快楽に溶けていた世界は一転して元に戻った。気だるい。罪悪感。快楽に圧殺されたはずの理性は不死身のように現れる。女の甘い嬌声。僕が何をしてしまったのかを物語る。
錬鉄のように熱い股間の鼓動が死神の吐息に掻き消される。大切な幼馴染を犯す悦びは蜜の味がしたけれど、大切な思い出を穢す苦みは精液のように粘っこい。
逃げる為にセックスをしたのに追いつかれてしまった。僕は一体何をしているんだと問い詰めても言い返せなくて涙が出た。

「…どうして」
「泣いてるの…?」
「どうして僕は君を心から愛せないんだ。ずっと昔から愛していたのに。どうしてこんなに哀しいんだ」
「…、君は僕の事、本当は好きじゃないんでしょう?」
「そんな事は無い。君が好きだ。大好きなんだ。嫌いになんてなるはずがない」
「嘘。本当に好きだったら涙なんて流さない」
「それでも僕は君を―――」

優しさと、悲哀が織り交ぜられた彼女の仮面を見て、僕はようやく気付いた。
僕達は幼馴染。一緒になるように産まれて一緒になるように育てられた、同心異体。彼女の太陽のような笑顔に、僕もまた笑う。僕が雨のように哀しめば、彼女もまた哀しむ。二人は一つであってそれ以外の何者でもない。
つまりは、彼女も僕と同じ気持ちだったんだ。僕の童貞を奪った自分に殺意を抱き、大切な人の心を踏み躙った罪に責め立てられていた。だからセックスで忘れようとしていた。僕は独りで悩んでいるんじゃなかった。悲しんでいたのは僕だけじゃないんだ。それに気付いた時、絶望と安堵が見えた気がした。

「きっとね、これは神様からの罰なんだよ。僕達は人を好きになるってことを本当は分かっていなかったのに分かっているような振りをしていたから」
「そんな、そんなのって」
「もう泣かないで。僕達は愛し合う事は出来ないけど夫婦なんだ。だから好きとか嫌いとかそういうのは忘れて、セックスしよ?」

ゆっくりと腰を揺り動かす。そして唇を舐めるようなキス。焦らすような愛撫に、しおしおになっていた魔羅は元気を取り戻し始める。そんな自分に吐き気を催したけれど、逃げ出したいと言う事も出来ずに、ただ本能に命じられるままに陰茎を突き出す。
僕はキスを返した。もう僕達は幼馴染だった頃には戻れないのだから、二人で堕ちていこう。そう思うと心が軽くなった。
12/11/09 16:15更新 / 全裸のドラゴンライダー

■作者メッセージ
前作は日常描写が多過ぎて肝心のエッチ描写が少なくなってしまったので、今回はエッチ描写の為だけに書き上げました。

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