艶秘抄-魔刀-
大陸で魔剣と呼ばれる存在がある。
剣であって人である。
それはまったく魔物の類。
遠いジパングの地にも、魔刀と呼ばれる存在がおったそうな。
それは人を斬ることで艶めく、正に妖刀魔刀。
業の物、と書いて業物と呼ぶ。
これは、人を斬るために作られた刀の、業の話である。
「くふ。くふふふふふふ」
砂塵が吹いた。
城門の前に立つ二人の歩哨は目を疑った。
一瞬前までは誰もいなかった門前に、
一人の女が、
身体から赤い妖艶な気を立ち昇らせてそこにいた。
「くふ」
腕が振り抜かれた。
歩哨の身体は半ばから両断され、上半身は地に落ち、断面からは血が噴き出す。
雨のように降る赤を浴びながら、女は満ち溢れる快感に笑った。
その右腕は刀になっていた。
女はさらにそれを振るった。
ぎぃん、という凄絶な音が聞こえ、一拍遅れて閉じていた城門が斜めに両断され、轟音と共に崩落した。
錠を斬ればよかったのかもしれない、と女は首を傾げたが、些細な問題である。
それよりも、今は斬りたくて斬りたくて仕方がなかった。
身体が疼く。
斬らせて、もっと、もっと斬らせてくれと疼く。
そうしたら、もっと、もっと、天にも昇る快感が味わえるから。
女はその内なる声を嬉々として受け入れる。
さあ行こう。
狩りの時間だ。
獲物はそこら中を走り回っている。
ほら大変だ、鬼が来たぞ。
「くふふふうふふふふふふふふふふふふううふふふふ」
女は抑え切れぬ笑い声を上げながら駆け出した。
いつの間にか、雨が降り出していた。
城の庭にはうずたかく人が積まれている。
池は血の色、柱は木と大量の血が混じって臙脂色である。
廊下にもそこかしこに人が倒れている。
すべて物言わぬ骸となって。
城の最上に城主の住まう部屋がある。
「くふ、あなたは私の性欲の解消材料になってくださいね」
女は今、ただ一人生き残った城主にのしかかっていた。
城主のそこは、通常では考えられないほど大きく、硬くなっていた。
「くふふふ、あれえ? 興奮しちゃったんですか? 城主様、いい趣味してますねえ」
絶妙な力加減で着物の上からそこを撫でながら、女はにっこり笑った。
「ちっ、違う……私はこんなことで!」
反論を意に介さず、女は艶めかしい手つきで彼の着物をはだけさせ、逞しい肉棒を取り出し、息を吹きかける。城主が呻くと、その唇を自分の唇で塞いだ。そして手でそれをしごき、緩急をつけた動きで巧みに快感を誘う。口づけをゆっくりと堪能した後、女は顔を肉棒の前に持ってきて、それをしゃぶり始めた。わざと卑猥な水音を立てながら、上目遣いで城主の反応を愉しむ。
「んちゅ、んっ、んぶっ、ぢゅるっ」
口の中に出し入れし、速度を早めたり遅めたりしながら責め嬲る。
「んんっ、んちゅっ、ぢゅるるるるるるっ」
「うう……っあ、ああっ、で、出るっ」
城主の腰が跳ねた。女は目の前の熱いものから口の中に吐き出されたそれを味わいながら嚥下する。
「んっ……くふふふ、気持ちよかったですか?」
城主は目を背けて答えない。
が、
「おやぁ? くふふ、まだまだ元気じゃないですか……やっぱりあなたに目をつけておいてよかったですね」
城主のそれは、精を吐き出したばかりだというのになお屹立していた。
「それじゃあ、いただきます」
女は自分も着物の裾をまくると、城主の上に跨り、とっくの昔に濡れそぼっている秘裂に、熱く滾った欲望の塊を迎え入れたのだった。
半刻後。
天守では上気した肌の女が、男に覆い被さって熱っぽい息を吐いていた。
「くふー……ふふふ、とてもよかったですよ」
「そうかい、それはどうもありがとう」
城主も荒い息をついていた。
なぜだか知らないが、常の夜伽の何倍も興奮して、何回も求めてしまった。
「くふふふ……あなたの在り様は私に似ているのですよ。ああ――ですから誇りに思ってください、あなたを今から私の夫にしてあげます」
女はさも当然のようにそう言った。
城主はそれを聞いて、諦めたようにふっと笑った。
もはや城の人間などどうでもよかった。
この魔刀と一緒にいられるのなら、それでよかった。
もはやこの快楽は一生忘れることができないだろう。
男は理解した。
己を理解した。
そして男は、女に身体を預けた。
これは人を斬り、それを糧となす魔刀の話。
また、その在りように魅入られた、一人の男の業の話である。
剣であって人である。
それはまったく魔物の類。
遠いジパングの地にも、魔刀と呼ばれる存在がおったそうな。
それは人を斬ることで艶めく、正に妖刀魔刀。
業の物、と書いて業物と呼ぶ。
これは、人を斬るために作られた刀の、業の話である。
「くふ。くふふふふふふ」
砂塵が吹いた。
城門の前に立つ二人の歩哨は目を疑った。
一瞬前までは誰もいなかった門前に、
一人の女が、
身体から赤い妖艶な気を立ち昇らせてそこにいた。
「くふ」
腕が振り抜かれた。
歩哨の身体は半ばから両断され、上半身は地に落ち、断面からは血が噴き出す。
雨のように降る赤を浴びながら、女は満ち溢れる快感に笑った。
その右腕は刀になっていた。
女はさらにそれを振るった。
ぎぃん、という凄絶な音が聞こえ、一拍遅れて閉じていた城門が斜めに両断され、轟音と共に崩落した。
錠を斬ればよかったのかもしれない、と女は首を傾げたが、些細な問題である。
それよりも、今は斬りたくて斬りたくて仕方がなかった。
身体が疼く。
斬らせて、もっと、もっと斬らせてくれと疼く。
そうしたら、もっと、もっと、天にも昇る快感が味わえるから。
女はその内なる声を嬉々として受け入れる。
さあ行こう。
狩りの時間だ。
獲物はそこら中を走り回っている。
ほら大変だ、鬼が来たぞ。
「くふふふうふふふふふふふふふふふふううふふふふ」
女は抑え切れぬ笑い声を上げながら駆け出した。
いつの間にか、雨が降り出していた。
城の庭にはうずたかく人が積まれている。
池は血の色、柱は木と大量の血が混じって臙脂色である。
廊下にもそこかしこに人が倒れている。
すべて物言わぬ骸となって。
城の最上に城主の住まう部屋がある。
「くふ、あなたは私の性欲の解消材料になってくださいね」
女は今、ただ一人生き残った城主にのしかかっていた。
城主のそこは、通常では考えられないほど大きく、硬くなっていた。
「くふふふ、あれえ? 興奮しちゃったんですか? 城主様、いい趣味してますねえ」
絶妙な力加減で着物の上からそこを撫でながら、女はにっこり笑った。
「ちっ、違う……私はこんなことで!」
反論を意に介さず、女は艶めかしい手つきで彼の着物をはだけさせ、逞しい肉棒を取り出し、息を吹きかける。城主が呻くと、その唇を自分の唇で塞いだ。そして手でそれをしごき、緩急をつけた動きで巧みに快感を誘う。口づけをゆっくりと堪能した後、女は顔を肉棒の前に持ってきて、それをしゃぶり始めた。わざと卑猥な水音を立てながら、上目遣いで城主の反応を愉しむ。
「んちゅ、んっ、んぶっ、ぢゅるっ」
口の中に出し入れし、速度を早めたり遅めたりしながら責め嬲る。
「んんっ、んちゅっ、ぢゅるるるるるるっ」
「うう……っあ、ああっ、で、出るっ」
城主の腰が跳ねた。女は目の前の熱いものから口の中に吐き出されたそれを味わいながら嚥下する。
「んっ……くふふふ、気持ちよかったですか?」
城主は目を背けて答えない。
が、
「おやぁ? くふふ、まだまだ元気じゃないですか……やっぱりあなたに目をつけておいてよかったですね」
城主のそれは、精を吐き出したばかりだというのになお屹立していた。
「それじゃあ、いただきます」
女は自分も着物の裾をまくると、城主の上に跨り、とっくの昔に濡れそぼっている秘裂に、熱く滾った欲望の塊を迎え入れたのだった。
半刻後。
天守では上気した肌の女が、男に覆い被さって熱っぽい息を吐いていた。
「くふー……ふふふ、とてもよかったですよ」
「そうかい、それはどうもありがとう」
城主も荒い息をついていた。
なぜだか知らないが、常の夜伽の何倍も興奮して、何回も求めてしまった。
「くふふふ……あなたの在り様は私に似ているのですよ。ああ――ですから誇りに思ってください、あなたを今から私の夫にしてあげます」
女はさも当然のようにそう言った。
城主はそれを聞いて、諦めたようにふっと笑った。
もはや城の人間などどうでもよかった。
この魔刀と一緒にいられるのなら、それでよかった。
もはやこの快楽は一生忘れることができないだろう。
男は理解した。
己を理解した。
そして男は、女に身体を預けた。
これは人を斬り、それを糧となす魔刀の話。
また、その在りように魅入られた、一人の男の業の話である。
16/06/10 13:36更新 / 戸枝