連載小説
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あの時から今まで
「んじゃあ、ばっちゃの家にいってくる〜」

と、オレは自分の家をあとにする。
家にはだれもいないというのに、子供の時からのしつけのせいもあって、いつも出かけるときは一言いうことにしている。



両親はオレが成人を迎えたときに、仕事の都合で都会へ引っ越していった。
オレももちろん、一緒に来るよういわれたが、都会の汚れた空気がどうも苦手でここに残ることにした。



ここ”レーヌ村”はのどかな田舎で、オレは生まれたときからここで暮らしている。
村の東に広がる森以外は、西、北、南と山で囲まれてるため、ここでの暮らしは自然の恵みといつも隣り合わせとなっている。



オレが今むかっている、祖母の家は東の森に入って一里ほど東へいったところにある。
年に3回ほど行くことがあるが、今回は今年に入って初めてだ。
一里といっても歩いてしまえば、40分くらいで着くため、ちょうどいい運動くらいの距離だ。朝はやくに出たから、昼もこないうちに着けるだろう。

ばっちゃの家がある村まであと半分という目印にもなっている看板をすぎた直後、突然どこからか声が聞こえる。

「…っと…えまし…」

微かだが、大人の女性らしき声が聞こえる。

「15年ま…はあり…した」

15年?うまく聞き取れず、なにを言いたいのか理解しがたい。そこで、こっちからも声をかけることにした。

「お〜い、すまんがうまく聞き取れないんだ。隠れているなら出てきてくれ」

すこし間があいたが、声の主は応答してくれた

「すみません、今は私事ながら忙しいので、また後ほど」

今回はオレに聞こえる必要があったためか、ハッキリとした声が聞き取れた。

「そっか、んじゃ、また会えたら後で〜」

そう言い、オレはまた道を進めるのだった。



「ふ〜いい運動だったわ〜」
オレはばっちゃの家に着いたのだ。
「あらあら、ジュンちゃん、いらっしゃい」
ばっちゃが玄関の音に気付き、出迎えてくれた。
”ジュン”とはオレの名前だ。

「ばっちゃ、水くれぇ」

「はいよ、歩きなれたといっても水分は持ち歩くべきじゃよ」

「はいはい、子供の時からよくわすれちゃうんだよ〜。これから注意するわぃ」

「いつも、そういって忘れてくるのはどこのどいつじゃろか〜?」

「ばっちゃ!それ、オレのこと〜」

「わかってるなら、なおしゃんかい!ま、ジュンちゃんにいっても無駄じゃろうけどな〜」

「忘れちゃうのは、忘れちゃうんだよ!」


そうこう話してるうちに昔の話になっていった…

「ジュンちゃんやぃ、昔、15年くらい前だったかのぉ、お前さんが弱ってる蛇様をたすけてやったことは覚えてるかぃ?」

「あぁ、微かだけど覚えてるよ。たしか、あれは・・・

            ・
            ・ 
            ・ 

ミーンミーン
蝉が夏真っ盛りといわんばかりに鳴いている。
そして、朝早く起きて、今日はじめてオレは蝉を採りに森へやってきた。
いつも親に森へ行くというと、止められるから親には言っていない。
森の外の方の木には、人気が近いわけか、ぜんぜん蝉がいる気配はない。
そこで、オレは森の奥へと進んでいったのだ。
案の定、蝉は四方八方に存在を伝えるかのように鳴いている。
木によじ登ったり、蹴ったりして蝉を5匹捕まえたところで、自分がきた道、いる場所がわからなくなってることに気付いた。
オレの心は一気に不安にまみれ、その場で泣きわめくしかなかった。

「おやおや、ジュンちゃんやないかぃ?どうしてこんなとこにいるんだい?」

「ば… … ばっちゃぁぁぁぁ!!」

「よしよし、怖かったねぇ。んで、お母さんは?いつもここに来る時は一緒じゃろ〜に。」

「グスッグス、フキフキ……いない!一人できたんだ〜」

「まぁ〜お母さんに秘密にしてきたのかぃ?みんな心配してるじゃろ〜に、お母さんに心配かけたらいかんしゃい!?」

「うぅ〜、わかってるよ〜。でもね、蝉採りをさ、やってみたかったの!」

「そうかい、そうかい。いっぱい採れたかね?」

「うん!ほら〜5匹だよ〜」

「お〜すごいねジュンちゃん!ジュンちゃんはもう蝉採りの名人じゃなぁ」

「へへ〜ん。もっとも〜〜っと採って見せるさ!」

「すごいなぁジュンちゃんはぁ。でもなぁ、ジュンちゃん。蝉さんを採った後は、ちゃんと森にかえしてやるんじゃよ?」

「ええええ〜なんでぇ〜?せっかくつかまえたのにぃ。かえしちゃったら、おもしろくないじゃん!帰ってみんなに自慢するのにぃ〜」

「ジュンちゃんは優しい子じゃろ?」

「うん!!世界一優しい子だよ!!」

「そうかい、そうかい。じゃあ、ばっちゃのいうとおりにできるね」

「う〜ん。ばっちゃの言うとおりにしたら、優しい子なの?」

「そうじゃよ。ささ、かえしんしゃい」

「うん!!じゃあな、お前たち。元気でな〜」

ミーンミーン、ミーンミーン

「蝉さんたちもありがとうっていっておるよ」

「そっか!でも・・・蝉採りって悪いことなの?」

「まぁ、蝉さんたちからすると嫌なことじゃろうなぁ。でもなぁ、ジュンちゃんは知らないでやったから、仕方ないことじゃよ。ジュンちゃんは家族や友達が突然いなくなるの嫌じゃろ?」

「うん、とってもいやっていうか、悲しくなって、一日中泣きまくるよ、きっと。」

「蝉さんたちも同じなんじゃよ。仲間と一緒に鳴いて、楽しんでおるのに、そこを邪魔しちゃいかんしょ?それになぁ、蝉さんたちは長くても一か月くらいしかいきられないんじゃよ〜」

「そうなんだ。たった一カ月の楽しみを奪っちゃダメだね。ばっちゃわかったよ!」

「うんうん。いい子じゃいい子じゃ。ジュンちゃん、蝉さん以外の生き物の命もちゃんと考えるじゃよ?そうしたら、世界一優しい子にずっとなれるんじゃ」

「わかった、約束するね!」

「よしよし、おぉ、ばっちゃの家がみえてきたな〜。ちょっと休んで家にかえりんしゃい。」

「休まなくたって、へっちゃらだい!」

「そうかい?元気なのはいいことじゃが、ちょっと待ちんしゃい。
よし、あったあった
ジュンちゃん、これを持っていきんしゃい」

「これは?時計?」

「いいや、方位磁石っていうものじゃよ。この赤い針をNって書いてるとこに合わせながらWって書いてるほうに進んでいったら、ジュンちゃんの村につくはずじゃあ」

「え?Wって書いてる方に道ないけど?」

「ははっ、そうじゃなぁ。今来た道をたどって、わかれ道があったらWの文字に近いほうの道を選んでいけば、帰れるんじゃ。途中、看板があったら中間地点の目印にすればいい。・・・それか、ばっちゃも一緒に帰ってやろうかの?」

「い、いや!いいよ!!一人で帰れる!!ばっちゃも年なんだし、ゆっくりしなきゃ」

「まぁまぁ、もう孫に心配される体になったのかのぉ〜。んじゃあ、この水筒ももっていきんしゃい。真昼だから危険な動物たちもおそってこんじゃろ。じゃけど、喉はかわいてしまうからの〜熱中症とやらが一番こわい時間帯じゃから。」

「わかった、ちゃんと喉渇く前に飲むよ。いろいろありがとね、ばっちゃ。また遊びに来るね!!」

「うんうん、ジュンちゃんの元気な姿、またみせておくれ。じゃあ、きをつけていくんじゃよ〜」

「うん!!」

そうこうして、ばっちゃの村から森に入って500〜600mもしないうちに、白い縄のようなものが道のまんなかにあった。
よくみてみると、目のようなものが顔についており、縄の模様はどうやらうろこだったようだ。
つもり、オレが見つけたのは白い蛇だったようだ。

しかし、白い縄と見間違えるくらい、この白い蛇は動かないのだ。

(蛇はたしか水辺とか、じめじめしたところに普通はいるはずじゃ・・・
それに、この真夏の真昼という地も干からびそうな時にこんな場所にいるなんて。
もしや!コイツ、ばっちゃがさっき言ってたネッチューショー?だっけ。のどがかわいて動けないんじゃ・・・)

そこで、オレはばっちゃから受け取った水筒のふたを開け、そのふたを器代わりに、水筒の中の水をふたいっぱいに注ぎ込んで、蛇の目の前に置いてやった。

蛇は一度オレの方を向いて、礼のようなしぐさをし、ふたのなかに顔をいれた。

(やっぱり、のどかわいてたんだな〜。蛇といっても、命ある生き物だから大切にしなきゃ、ばっちゃと約束したし。っと、そう思ってるオレものどがかなり渇いてるのに気づいた)

「ウグッウグッウグッ グハーーーッ!!やっぱ、喉渇いてる時の水は格別だな〜。
お前もそう思うだろ〜?あっ蛇には言葉通じないか〜
って、水筒の中もう底見えるくらいしか残ってな〜い。ふたもはずしたし、まだまだ水飲んでる蛇から取り上げてもいけないし〜。
う〜ん、そうだ!!一度ばっちゃの家にもどろ〜」

蛇はまだ蓋に顔を沈めている。

「よし!もどろ〜。 お前、さっき死にそうだったけど、命大切にしろよ?相手のも自分のも。そうしなきゃ、優しい子になれないし、なによりオレが怒るからな!! まぁ、蛇にいっても意味ないことかもしれないけどなぁ〜。
んじゃ〜ばっちゃの家にれっつご〜」



急いでオレはまたばっちゃの家にもどった。

「ばっちゃ、ちょっともどってきた!!」

「ジュンちゃん、どうしたんしゃい?ケガでもしたん?」

「いいや、水筒の水なくなっちゃって。蓋は道で死にそうだった蛇の命をたすけるために置いてきたから、今はないけど、また通るときにでも拾って帰るよ」

「ふむ・・・いいんしゃい、いいんしゃい。蓋の一つくらい、蛇様の命を助けられたのなら。蛇様はなぁこの森の守り神っていう言い伝えがあるんじゃよ」

「守り神?」

「そうじゃ、この森をな、いつも平和でのどかな森にしておくれてるんじゃよ、蛇様がな〜」

「へ〜、んじゃあ、オレさオレさすごいことしたってことだよね!!」

「そうじゃな〜きっといいことがあるとおもうぞよ、蛇様はちゃんとジュンちゃんが困った時に守ってくれるはずじゃ。
ほいさ、ジュンちゃん、ちょっと大きめの水筒じゃよ、おもたいかの〜?」

「へっちゃらだよ!!それより、森の守り神のお礼がたのしみだな〜」

「ふふっ、ジュンちゃん、あんまよくばっちゃ罰が当たるんじゃよ?いつもどおりの生活をしてたら、いつか知らない間にお礼がきてるはずじゃ」

「そっか、わかったよばっちゃ!!んじゃ、今度こそ家に帰るね」

「あいさ〜またおいで〜きをつけるんじゃよ〜」

ばっちゃはオレが見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

(たしか、このあたりであの白い蛇をみつけて、蓋を置いたはずなんだけど…)
足元をしっかり注意しながら道を歩いているのに、ふたはみつからなかった。
(あれ〜おかしいな〜誰かゴミとまちがって拾っていったのかな〜)
水筒の水をちょくちょく飲みながら、中間地点という目印の看板をすぎ、あっといまに自分の村に着いた。
(ふ〜蓋もなかったし、あの白い蛇もいなかったな〜)
家の戸をあけると・・・
「コラ!!あんたどこいってたの!!?何も言わずに心配したんだから!!今度からは・・・」

親にさんざん怒られた。
しかし、いけないことをしたことより、それよりはるかによいことをしたと自画自賛し、おこられながら内心、満足げな気前のオレであった。


          ・
          ・
          ・

・・・というかんじだったな〜」

「そうだったかの〜、ばっちゃはジュンちゃんが蛇様を助けてやったということくらいしか覚えておらんの〜老いかのぉ」

「ばっちゃは実際に現場に居合わせたわけじゃないし、そんなに覚えてないのは当然だよ。」

「ふふっそうかいそうかい。ばっちゃはまだおいぼれてないってことじゃの?
それはそうとなぁ、いまこうしてジュンちゃんがな、大怪我もせず大病もせず立派な成人になれたのはな、その蛇様のご加護だったのかもしれんのぉ」

「そうかもな〜、そう思えば生きていて困ることは全然なかったような・・・
一つ除いてだけどね」

「おお?なにかあったのかぃ?」

「い、いや、恥ずかしいことだけどね、
その…おん…女に好かれずに生きてきたことがちょっと困ったな〜
好かれずというか避けられてるというか・・・
今もそれ続いてて、成人になった身なのに、女経験なしって…トホホ」

「なんじゃい?そんなことかぃな。そんなら、困ることはないとおもうけどな〜」

「えぇ?なんで?オレだって女ほしいんだよ〜!!?」

「うんうん、だいじょうぶじゃ。ジュンちゃんは、優しくて立派な子じゃから、いずれ世の一位をも争うべっぴんさんと結ばれるはずじゃよ〜」

「そうかな〜?う〜ん、で、でも、いずれって年老いてからじゃ遅いんだよお!?すぐに、いますぐに、本当はほしいんだけどな〜」

「ふふっ焦ったらいかんぞぃ?もうじき女の方からくるわい。ばっちゃの勘はなかなかあたるんじゃよ?」

「そ、そう?んじゃ、ばっちゃの言葉信じる!!
って、もう昼過ぎだね、帰らないといけね〜や」

「そうかい、もうそんな時間なのかい?
ご飯食べていくかぃ?」

「い、いや、いいよ。満腹だと歩きづらいし。ばっちゃの手料理だと、おなか破裂するくらい食っちまうからな〜」

「ふふっ褒めるのもうまいの〜
ジュンちゃんはやっぱりいい子やな〜
また、おいで、気をつけて帰るんじゃよ〜」

「うん!!ばっちゃ、今日もいろいろとありがとね〜
んじゃあ、帰る!!また来るから〜」

そして、いつもどおりオレの姿が見えなくなるまで、手を振って見送ってくれる。





春の初めとはいえ、昼過ぎはやはり生温かい。
自分の喉の渇きに気づくのと同時に、さっきばっちゃと話し合った蛇をたすけたのもこのあたりだと気付いた。
(う〜ぅ 喉が渇いたっていうのに、真夏でもない今回はばっちゃから水筒を受け取ってるわけでもないし、う〜ん
よし!あの時みたいに、ばっちゃの家にもどろう!!)
そう思いついた瞬間、後ろの方から

「ここにおられましたか、お会いできて光栄です。さきほどは失礼いたしました。」

と言う女性の声がした。
顧みると、今日ばっちゃの家に向かうときにした、あの時の女性に声と同じだと気付く。

(大人らしく穏やかで優しいその声の女は、きっとばっちゃがいってたオレの女なのではないか?そうなら、かなりの美人だろうな〜)

と胸を高鳴らせながら、振り向くと・・・

とっさにその期待は裏切られたのだ。

彼女は長いアイスブルーの髪の毛に、今までに見た女とは比べることができないほどに顔は美しく、胸は身につけている着物が張り裂けそうなくらいにふっくらとしていて、肌は雪のように白い。

ここまでは、つまり上半身まではばっちゃの言う通りの世で一番べっぴんであろう女だった。

しかし!!下半身とはいうと、いままで見たことのない白い大蛇のような格好なのだ。

オレはそんな恰好をした彼女に圧倒され、かたまったまま立ちすくんでいた。
そうすると、彼女は微笑みながら口をひらいた。

「うふふ、ずっとこの日が来ることを待っておりました。
さあ、一緒にいきましょう」

オレは彼女の美しい顔と誘うような声につられそうになったが、自我をなんとかとりもどせた。そして、オレからも声を出す

「ま、待っていたといっても、オ、オレは、お前のことなど知らん!!なんせ、お前みたいな化け物など今初めてこの目で見たのだからな!!」

(やばい、つい口が先走って、挑発的なことを言ってしまった。
このままだと、襲われしまうのではないか!!?)
と少し不安げに身構える。

「化け物だなんて、失礼ですよ?
ふふっここを晒してあげれば、安心してくれるかしら」

そう言うと、その女は着物を肩の方からずらし、ついに胸のとこの布までずらし、その大きな胸をあらわにした。

「ふふっ、安心してください、襲ったり傷つけたりはしませんから。
さぁ、おいで」

彼女は両手を広げ微笑みながら、こっちをみている。おおきな胸はもちろん丸見えだ。

「クッ!!だ、だませれないぞ!!お前は油断して近寄ったところを襲うつもりなんだろ!!?そんな分かり切った罠にはまってたまるか!!」

「いいえ、けっして襲ったりはしません。私はあなたを守りにきたのですから。」

「嘘だ!!油断させられてたまるか!!そ、それに化け物に守られるなんて、まっぴらごめんだぜ!!」

「そうですか・・・」

彼女は少し悲しげな顔をして続けた

「では、しかたありませんね。私の方から参らせてもらいましょう。」

そう言うと、彼女はオレの方へゆっくりとだが歩みよるというか、這い寄ってくる。
オレは逃げようと考えたが、唯一の助けが呼べそうなばっちゃの家への道はあの女にさえぎられているし、かといって自分の村の方へ逃げてみても、喉の渇きで走り続けることは不可だと考えられるに加え、相手は化け物だ。本気を出されては、到底走って逃げれないだろう。

ゆっくりと彼女が近づいてきながらも、なすすべが思い浮かばない自分に焦りを感じ、汗をたらしていた。すると、救いの手でもいおうか、汗といおうか、一滴の汗が流れ落ちた先をふとみてみると、ポケットにしまってある、護身用のナイフとえんまくがあることに気づく。

(これらを利用すれば、なんとかなりそうだな。でも、化け物相手じゃ普通に立ち向かっても歯が立たない。こっちも油断させて、その瞬間、きゅうしょをこのナイフでつきさし、えんまくを素早く放ち逃げることにしよう。
逃げる方向は自分の村の方にしよう。ばっちゃの家の方に逃げようとすると、えんまくで前が見えず、彼女にぶつかって止められるという可能性があるためだ。さすがにこれだけやって、つかまったのならオレはそこまでだったってことだな・・・)

彼女との距離は最初と比べちょうど半分くらいになっていた。
オレは作戦通りに彼女を油断させるため、片膝をつき、顔を地面の方に向けた。すると、見事に・・・

「どうされたのですか!?どこか具合がわるいのですか!?」

彼女が這いよるスピードをかなりあげて近寄ってきたのは、驚いたが、もう目の前にオレの運命を左右させる化け物がいるのだ。

(まだだ、もうすこし近くないと、よけられてしまう。もうすこし、近寄ってくれよ。)

そう願いながら、オレは左手をガクッと地べたに着けて、右手はナイフとえんまくのあるポケットに入れる。
おもったとおりに、左手を地べたにやったのが効果になったのか、彼女は上半身をオレの腰くらいにまで下げてきた。

「だいじょうぶで・・」

女がそう言いかけた瞬間

「よし!!いまだああああああああ!!!!」

オレはすばやく前もって右手で握ってたナイフをポケットからだし、女の胸の人間でいう心臓のあたりをねらって突き刺した!!
ブスッ!!
・・・・・・
やったか?と目をやると、ナイフはちゃんと狙った所にささっており、仕留めたかと、彼女の表情を確認すると、口元がニヤリと笑ったように見えた。
オレはとっさにえんまくを彼女の方めがけ放った。
黒い煙が彼女を覆い、オレはすばやく自分の村の方へ走り逃げて行った。

きゅうしょをさしてもニヤリと笑われたような気がして不安でいっぱいだったが、どうやら彼女に捕まるといったことは避けられたらしい。
なぜなら、中間地点の看板もずいぶん前に通り過ぎ、半ば歩いたが、今では村の囲いが見えるほどに森を抜けていたからである。
オレはラストスパートをかけるように全力で村へと走ろうとした途端!!
なにかにつまづいて、前にこけそうになったが、後ろから誰かの両手で抱き支えられ、なんとか倒れずに済んだのだ、
オレは「ありがとう」といいながら、後ろをふりかえったが
また、あの絶望が待ち受けていたのだ。

「お怪我はありませんか?すこし強引な手であなたを捕まえることになるなんて……すみませんでした。」

(ああ、なるほど、さっきつまづいたのは、この女の尾の仕業だったのか)

「それに、あなたがいきなり襲ってきたり、えんまくを使うだなんて考えもしておりませんでした。えんまくの黒汚れを落とす必要があったため、今となってしまいました。ご心配をかけてしまい、すみませんでした。」

(そうか、いままで汚れを落としていたのか〜それは時間がかかりそうで〜って!!心配をかけたって、今こうして捕まえられてしまってる方がめっちゃ心配なんだけど!!あれ?なんかオレ、おかしくなってるような…)
恐怖心によって俺の思考はもうグチャグチャだった。

オレはしばらく硬直してしまっていたが、自分を取り戻し、必死にもがきはじめた。
が、彼女の腕の力は想像以上に強く、離してくれる気配はない。

「あらあら、喜んでくださってるのですね?私もこうしてあなた様と近くにいるなんて幸せですよ?」

「ク、クソ!!離しやがれ!!」

「ふふっ照れ屋さんなんだから。でも、ちょっと乱暴ですよ?こうしたら落ち着くかしら」

そう言うと、彼女は蛇体の下半身を巧につかい、オレと彼女の顔が面向かうように、巻き抱きかかえられた。そうして、すぐに彼女の顔が近づいてきて、オレはよけようにもよけるところがなく、目をつむることしかできなかった。

(食われる!)

そう思ったが、俺を襲ったのは痛みというより、快楽であった。
唇になにかやわらかいものが押し当てられたのだ。
オレはなんだこれは?と確かめたく目を開くと、そこには彼女の目が至近距離にあったのだ。
彼女と目があい、とっさに目をそらすついでに口のほうをみると、彼女の唇がオレの唇とかさなっていることがわかった。

オレはすぐ突き放そうとすると、彼女は自分から顔を離してくれた。
安堵したのもつかの間、またすぐに彼女の顔がオレの顔に近づいて、

「さっきのは普通の関係でもやることなのです。いまからやるのは、特別な関係でしかやらないことを…」

そういうと、さっきのように彼女は唇を重ねてきたかと思うと、唇の間から濡れたひものようなものが、オレの唇をこじ開けようとしてくる。
オレは必死に唇を閉ざそうとした、
すると・・・

「開けてくださらないと、襲っちゃいますよ?」

と、脅しがきた。
オレはなすすべなく、唇を軽く開けた。
その瞬間、あの濡れたものがオレの口に入り込んできて、頬の裏、歯ぐき、舌、のどちんこまでチュルチュルと撫でて、そとにでていった

「うふふ、喉が渇いてらっしゃるのですね。私が潤わせてさしあげます。」

そういうと、また口の中にあの濡れたものが入りん込んできたかと思うと、それは喉にまで伸びていき、喉の奥をすこし撫でると、じわじわと液体がそれをつたって流れ込んでくることがわかる。喉がかわきすぎて、ちょっとヒリヒリと痛かった痛みが、みるみるうちに消えていく。
もういちど、なにかを確認するように喉の奥をなでてから、スルスルと外へと帰っていくのかと思うと、オレの舌全体を巻き上げるように絞めつけた。
むりやり、オレの舌が外に連行されると、彼女は唇を離し、オレの舌をみながら、艶めかしく笑った。
オレはようやく、オレの口に侵入してきた濡れたもの、今オレの舌を巻き上げてるものの正体が彼女の細い舌だとわかった。

「お次は、あなたの液を私の口に注いでください。」

そう言うと、また唇をかさね、次はオレの舌が引っ張られ、彼女の口へと入れられそうになった。しかし、オレも抵抗を止めなかったため、互いの口の中で舌の綱引きでもやってるかのような状況になっていた。
しばらくそう続いたわけか、彼女は舌を解放してくれて、顔を離してくれた。

「本当に照れ屋さんなんですね。今日あなたの液はもらえなかったのは残念ですが、いずれもらえると思うと、いまでも胸がはりさけそうです」

そういうと、彼女は胸を強調するようにタプンっと大きな胸を揺らした。
オレはそんな艶めかしい胸に固唾をのんだが、とっさに自分の置かれてる状況を再確認し、再びもがきはじめた。

「あらあら、さっきまではすこしおとなしくいてくださったのに、こう暴れてしまっては、もうこうするしかありませんね〜」

そういうと彼女は不気味な笑みを浮かべ、オレの首筋に顔を近づけてきた。

「な、なにをするつもりだ!!」

彼女は上目づかいで笑いながら

「うふふ、だいじょうぶです。なにも心配ありません。すこしお体が楽になるだけですよ。」

その瞬間、首筋になにか刺さったような衝撃が走ったが、すぐにその衝撃はやわらげられ、なにかきもちよくて、フワフワした感じのものが、全身にいきわたっていく。

「うっ!な、なにを!!」

「おやすみなさいませ」

「・・・・・・。」

オレはあまりの気持ちよさに、自分の置かれた状況も把握せず、彼女に抱きかかえられたまま眠りについてしまったのだった。
13/10/06 01:58更新 / 水晶
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■作者メッセージ
投稿のやりかた、まちがえてしまってました^^;

駄文ですが、少しでも楽しめられるようがんばります。

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