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住民たちA |
その日、アパートには珍しい人がいた
妖狐のアヤメさんという人だ 妖狐というのは太古の古より存在していたのだという 人が妖怪というものを信じていたころまでおおっぴらに活動していたそうだが時代の波に飲まれ、今ではほとんど見ることはなくなった しかし、彼女達は変化の術が使えるので今でも人間の世に溶け込んでいるのだという 「私こういう者です」 伏見野法律事務所 葛木 アヤメ 住所:京都府○○○ ×××-×× 「法律屋さんですか遠いところからようこそ」 「いえいえ。こちらの法律のことなど分からないことが多いので相談したいとバフォメットのメアリー様から相談を受けまして伺ったしだいです」 「しかし、こちらで法律屋さんとは・・・」 「これでも結構あやかしは人の世に紛れ込んでいるものなのですよ?私達は人にない力などを持っているのでいろいろとトラブルを引き起こしてしまうこともあるんです。ですから、私のようなものが必要となるのです」 「たしかに、ここに彼女達が来て3ヶ月程経ちますが未だにトラブル続きです」 「ふふ!それは貴方が弄られ易いからなのでしょう?」 「う〜んそうなのかな?・・・」 「それでは早速なのですが、大家さんからアパートに関する一切と土地の権利書を預かったと伺いましたが?」 「はい。預かってもどうすれはいいのかさっぱりでして、いちばんの心配どころはもし名義変更などしたら税金とかどうしたらいいのかとかですかね」 「そのあたりについてはお任せください。決して悪いようにはしませんわ」 「そうですか。よろしくお願いします」 「ところで加瀬様?」 「何でしょう?」 「私の知り合いに良い殿方を紹介したいのですが・・・誰かご存知ありませんか?」 「そこら辺り人、とはいかないのですか?」 「わたくし達あやかしは無闇に人に正体のことをお教えするわけにはいかないのです。ですから、ある程度分かっている方ではないと・・・」 「なるほど」 「昔は、困っている旅人や、私達あやかしを払いに来た陰陽師となどを説得して迎えるなどと言うこともあったのですが、今は迂闊に出来ないのです」 「確かに、これだけ人の世が発達すると摩擦もあるでしょう」 「はい」 「分かりました。いい人がいないか探してみます!」 「なにとぞ、良しなに」 ピンポ〜ン 「おや誰か来た様だ」 「加瀬さ〜ん。204の小沢だけど!いるかい!!」 ガチャ 「おっ!居た居た!加瀬さんパソコンの調子がおかしいんだ!特にグラボの!だからちょっと余っている奴貸してくれね?」 「グラボですか・・・最近は使わないものは買わないようにしているんですが?」 「いいっていいって!型落ちだろうが使えれば!最近やっと暑さも引いてきたなと思った矢先にこれだろう?たぶん夏の熱でご臨終したんだろう」 「分かりました。じゃあ、あるもの選んでください!」 「わりぃね!・・・おっとお客さんでしたか!こいつはすみません。お邪魔します!!」 「これですね」 「ああこれでいいや!」 「いいんですかこれで?」 「3Dとかゲームやるわけじゃないんでこれで・・・ところで加瀬さん?」 「なんでしょう?」 「ちょっと耳貸せ・・・(そこのお客さんはコスプレヘルスか何かなのか?)」 「なんて失礼なことを!!」 「(いいから!だってよ頭には狐耳が付いているしよ、なんだか尻尾もみえるぞ?加瀬さん好みに胸も大きいし!どう見ても普通の人ではないよなぁ)」 「はぁ?狐耳?尻尾?」 「まぁいいや!それよりこれ借りるよ〜!お礼は後でするからさ〜!!」 バタン 「なんだったんだ?」 「どうなさったのですか?」 「ああ。今の小沢さんって言うんですが、なんだか変なことを・・・」 「変なこと?」 「あやめさんに狐の耳と尻尾が付いているとか言っていて」 「まあ!これが見えるのですか?」 「俺には何も見えないんですが?」 「私どもあやかしは変化の術が使えると言ったでしょう?普通の人間には人と違うものは見えないようになるのです」 「そうなんですか」 「あの小沢さん?彼はご結婚なさっているのでしょうか?」 「いや、彼も俺と同じ独身だったはず・・・」 バタン 再び小沢さんがやってきた 「加瀬さん!HDMIコード持ってない?このグラボHDMI端子があるんだよ。なんか使ってみたくってさ!」 「・・・あの小沢さんとか言いましたか?」 「はい?あっ突然すみませんお邪魔でしたか?」 「いいえ!つかぬ事をお伺いしますが?」 「?・・・なんでしょう」 「ご結婚されていますか?もしくは彼女さんは?」 「はあ?いやそんな人はいませんよ?なんですか?唐突に」 「結婚なさらないのですか?」 「これまた・・・。いや、俺は中小企業の工場で働いている下っ端工員ですよ?給料だって安いし。そんな奴の所に来たいなんていう物好きな女性がいるとは到底思えません。それに彼女を持ったら持ったで金がかかるし、どこかでいい娘探すと言っても肉体労働だから休みの日はくたくたになっててどこにも出たくなくなっている。これじゃあ彼女なんて夢のまた夢でしょう」 「あの失礼ですが・・・あなたにはこれが見えるのでしょうか?」 「ああその狐耳と尻尾ですか?見えるも何も?加瀬さん?なんか変なことを聞かれているんだけども耳と尻尾見えてるよね」 「・・・耳も尻尾も俺には見えないんだけども?」 「冗談!なんだか山吹色したきれいな色しているじゃん!」 「やはり!見えていらっしゃるのですか!!」 「はあ?一体なんのこと?」 「ぜひ、あなたに会っていただきたい人がいるのです!」 そうして、俺、小沢さん、アヤメさん、あやめさんの知り合いという女性が来て話をすることとなった。なんだかお見合いみたいだ 席には黒髪の容姿端麗な和服美人が来た 「はじめまして、私、稲荷の綾乃と申します」 「小沢です。・・・あやかしというのはこちらの加瀬さんとアヤメさんに大体聞きましたが・・・今ひとつぴんとこないですね」 「小沢様。あやかしというものをどうお考えですか?」 「いなりといいましたか?」 「はい」 「お稲荷さん?よく神様の眷属と聞きますがそれとはどう?」 「神の眷属もしくはウカノミタマノカミと私たちは別物です。魔力が強いので神に近いと言われることはありますが、そんなにかしこまれることもありません」 「で?どう小沢さん?」 「彼女が出来ること自体は大歓迎だけども、俺なんかでいいの?」 「普通、あやかしの変化を見破ることは出来ないはずなのですが、小沢様は私の変化をいとも簡単に見破ってしまわれた。丁度、綾乃さんの為にもいい人を探していたので、願ったり叶ったりですわ!」 「アヤメさま・・・」 「まっ俺はお狐さまは昔から好きだったから、本心としてはうれしいんだけどね」 「貴方の家にお社があったのですか?」 「俺の家というより、家の前に工場があってね、そこには小さなお社があってあの狐の置物が安置されていたんだ。特にどうっていう感情は持っていなかったけどなんとなくそういうモノはあるんだろうなっていう感情はあったな。でも無闇に拝むなって言うでしょ?だから拝むというよりいたずらしたら謝りに行くそんなもんだったけどね」 「人の信仰心は時に強い力を発揮します。私の術を見破ったのもそんなものが働いたのでしょう」 「綾乃さん。いや綾乃!これからよろしく!」 「はい!不束者ですがこちらこそよろしくお願いします!」 そうしてカップルができた その後を聞くと、綾乃さんはおしとやかそうに見えて結構パワフルな女性なのだそうだ。付き合ったそばからカカア天下の様相を見せ始め、尻にひかれているらしい。エッチの時も大概、受けだそうだが攻めに回ると以外に弱くなってすごく乱れるらしい。でもその様子を語る小沢さんはすごく幸せそうだ こうなると結婚も近いのかもしれない 204号室が空くのもそう遠いことではないだろう・・・ ------------------------------------------- その日103号室を訪ねてみた 「とっつあん!重蔵のとっつあん!いないのかい?それともボケてくたばっちまったかい?」 「誰がボケだ!このクソガキが!!」 「はいよ!さつまいもの煮っ転がし!おすそ分け!」 「おお加瀬さんか。いつもいろいろとすまんね!」 「いいっていいって!いつもお世話になっていますから!」 「悪いなぁ。そうだ息子のヤツから米が届いたんだよ!新米だからうまいぞ?これ持ってけ!!」 103号室に住んでいるのは、重蔵のじいさん。本名は忘れた。このアパートではある程度近所付き合いがあるためにこういうこともある 重蔵さんは東北出身。詳しい事はいいたくないんだろう・・・あまり話さないが、結構大きな田んぼを持っていて今は息子さんに譲ったらしい 奥さんは大分前に亡くしたらしく棚に遺影と位牌が置かれえている 「最近大家のババアがこないけどどうしたんだ?」 「ああ、ちょっと旅に出たらしいですよ?健康と美容についてだそうで」 「無駄なことを・・・一般人がそんなことしても何にも変わりはしないだろうになぁ!それに気持ちが悪いだけだ!!」 「さぁ俺にはなんとも・・・(魔界送りにしたなんて言っても信じてはもらえないだろうな・・・)」 「精米したばっかだからうまいぞ」 「ありがとうごさいます!!」 「それにしても秋になったとはいえまだ暑い日があるな!年寄りには敵わんよ」 「なに言っているんですか!とっあんは農家だったって言っていたじゃないですか。だったら農仕事の炎天下にも慣れているんじゃないですか?」 「もう昔の話だ。それに田んぼも息子に譲った。もう土を触ることもないだろう」 「・・・そうなんですか。また始めたいですか?」 「ふっ、もう体が動かんよ。ただこんな都会ではなく田舎だったらなとは思うときがある」 「この辺はかなり田舎なんですが?」 「わしの家はここよりももっと山の中でな。ここも十分都会なんだよ。暮らし向きは便利になったが、時々あのころが懐かしくなる。なんてな・・・」 「そのうち、いいことがありますよ!それじゃ僕はこれで!お米いただきます!」 「おうまた来いよ!」 家に戻るとお客さんがいた。が、二人はいないもよう 「こんにちは!え〜とどちらさまで?」 「・・・こ、こんにちは・・・わ、私、ホ、ホルスタウロスのミアです」 「ミアちゃんか。かわいい名だね。ホルスタウロス?ごめん俺魔物のことあまり知らないんだ」 「ホルスタウロスて言うのは、牛が魔物化した姿です」 「牛さんか・・・。うーむ家には草はないのだが・・・。!!そうだミアちゃんお腹すいてる?」 「え?ええ。なんでですか?」 「丁度、お米をもらったんだ。新米だって言うし、食べてみよう」 と、さっそくご飯を作りに掛かる 「お米ってなんですか?」 「この世界のこの辺りの人の主食だよ。とってもおいしいんだよ?」 「パンみたいなものですか?」 「パンは麦を焼くけど、お米は“炊く”だからなんといっていいやら・・・まぁとにかく食べてみてよ!」 「炊飯器は時間が掛かるし、急速炊き上げってうまいのかな〜?ここは久しぶりにガスでやってみるか!」 ザッザッザッ お米を研いでいる間に雑念を払う 牛というだけあって乳が大きく、ついそっちに目が行きそうになってしまうのだ だから、手間があるほうが都合がいい 「ミアちゃんはどうしてここに?」 「はい。サキュバスのレナという人と男の方が来て誰かおっぱいの大きい娘はいないかと聞かれて友達を紹介したんです」 「ミアちゃんではなくて?」 「私はまだ幼く見えたんだと思います」 「そんなにかわいいのに?」 「・・・とにかく、友達の方に行って、男の方が赤いお花を送ったみたいで・・・それ見てその友達興奮してしまって・・・」 「友達のそういうとこ見るの失礼かなとか思ってレナさんにいい所ないか聞いたら、しばらく魔方陣の向こう側に行ってみたらと進められて・・・」 「なるほどね。確かに俺も友達の情事は見たくないな」 しばらくして、炊き上がった 「よっしゃ出来た!が、まだ待て!!蒸らし時間がある!折角だからここは重蔵のとっあんでも呼んで夕飯としよう!ミアちゃんちょっと待ってて!」 「ちーす!とっあん夕飯まだか?まだなら一緒にどうだい?」 「お、加瀬さんか丁度、飯炊こうと思っていたんだよ」 「ちょっとお客もいるけどいいよな?」 「そのお客さんがいいというならな」 「んじゃ決まり!」 「ただいま!ミアちゃん下に住んでいる重蔵さんだ」 「ミアです。よろしく」 「おお若いのにしっかりした娘さんだ。わしは重蔵。加瀬さんは“とっあん”なんて呼んでいるが好きに呼んでくれ」 「さあ、ご飯にしよう!」 「「「いただきます!!」」」 「おいしい!」 「うまい!」 「・・・おいしい!」 「嬢ちゃん、うめえか?その米は家の田んぼで作ったもんだ。まずいわけないよ」 ミアちゃんはご飯を始めて食べたようだったがとても気に入ってくれたみたいだった 食事の後 「加瀬さんあんなおっぱいのでかい娘どこで見つけたんだ?彼女かい?わしももう少し若かったらな!はっははは!!」 「いや、彼女ではないんですが?それに重蔵さんは十分若いと思いますが?」 「年金暮らしのじじいに若いはねぇだろう?」 そんな話をしていたら、なんだかミアちゃんがそわそわしている気がする。なんだかとっあんに何かを聞きたいようだった 「ミアちゃん。重蔵さんに何か聞きたいの?」 「ひぁっ!は、はい」 「わしに?なんだろう?」 「・・・はい。なんだかおじいちゃん、いい匂いが・・・」 「いい匂い?なにもつけてはいないが?」 「いえ。なんだか干草のあの安らぐような・・・お日様のような」 「草なんて何年も触っていないが?」 「ミアちゃん。何か感じたの?重蔵さんは昔、農業やってた人がだからそういう匂いが染み付いていてもおかしくはないな」 「いい匂い・・・」 そう言うと重蔵さんに抱きついた 「おい!嬢ちゃん!若いのに何を・・・年寄りをからかっちゃいけねえ」 「・・・重蔵さん実はまだ言っていないことが・・・」 「加瀬さん?」 「最近、このアパートの住人が消えていっているのをご存知ですか?」 「ああ。ホストの若いのだとか、大家のババアだとか、何より上のデブがいなくなったな。あのデブなんだか気色の悪い笑い声をあげることがあったから気味悪くてな。いなくなったみたいでほっとしていたんだよ」 「実はこんなことが・・・」 そうして、ことのあらましを伝えた 「魔界?ねぇ。世の中には不思議なことがあるとは言うがこの歳になってそれを知ることになろうとは・・・」 「おじいちゃん、わたしと一緒にのんびり暮らさない?」 「嬢ちゃん・・・」 「こんな自然の匂いがしないところじゃなくて、私の家は緑豊かな牧草地だよ?」 「・・・」 「重蔵さん。ここではない田舎に引っ越したいとか言っていましたよね」 「でも、こんな孫に近いむすめっ子と・・・」 「心配はいりません。なにしろ向こうは魔界!若返りの妙薬なんてゴロゴロしています」 「聞けば聞くほど不思議な場所なんだねぇ」 「それに、重蔵さんは僕のおっぱい師匠じゃないですか。ミアちゃんに抱きつかれてまんざらでもない顔していますよ?」 「む・・・ゴホン。確かにな。このまま今までの後悔を引きずるより、新しい人生を暮らした方がいいかもな」 「いいの?おじいちゃん」 「ああ。すぐにとはいかないが・・・のんびり暮らすのも悪くはないな」 その後、すべてを片付けた重蔵さんは魔界の田舎へ引っ越していった 『加瀬さん!世話になったな!この部屋と隣に溜めておいたエロ本とか使っていいからな!!』 とか言って旅立っていった その後とっあんの部屋に行ってみると、遺影と位牌だけが消えていた 奥さんも若い娘さんとイチャイチャしているところなんて見たくないだろうと思っていたが、後日、息子さんから電話があり、遺影と位牌、あと通帳やお金関係だけを送って行ってしまっていたことが分かった その後、魔界から幸せに暮らしているという手紙が送られてくる うまくいっているようでなによりだ |