読切小説
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サボテンの恩返し
ある日、サボテンを拾った
道端にぽつんと置かれていた。
はじめ見たとき単なる障害物だと思った
蹴飛ばそうとしたけどそれが鉢植えだと気付いてやめた
よくよく見ると握りこぶしくらいの何かが丸まっていた。手にとってしげしげとみると、どうやらサボテンだと気付くのに時間を要した
なんだかそのまま置き返すのも気になったのでそのまま持って帰ってしまった

家に帰って灯りの下でよく観察してみる
サボテンだと思うのだがどうみても丸いちんちくりんだ。枯れているような発色の悪い色。針はもはや茶色く変色している
なんだかキウイを一回り大きくしたかのようだ
なのでこいつの名前は“キューイ”にした

そういえば家の中が静かだ。この家はとあるマンションの一室なのだがこの時間いつもお隣さんから聞こえてくる音楽が聞こえてこない。
お隣さんも派遣切りにあったのだろうか?
この地区には派遣の人用のマンションが多く建っている。景気の悪化と共に一人また一人といなくなっていった
カーテンを開けベランダの向こうに見えるのは真っ暗な町並み。少し前まで虫食いのような明かりだったのが今は真っ暗。
まるでゴーストタウンだ。

キューイを拾ったのも、たぶん無意識に寂しさを紛らわせるためだったのだろう
キューイを手にしたとき、こいつも飼い主に捨てられたのか?と思った。
まるで俺達派遣と一緒だな。用済みになったら捨てられる・・・

相変わらず先が見えず冴えない日々
でも家の中は少し変わった気がする
それに“いってきます”“ただいま”だけだった言葉に“キューイ”を加えるだけで何かが変わった気がする
日差しのあたる所に置き、水をくれ、わずかだが肥料も与えてやるとだんだんとみずみずしく色もよくなってきた
たぶん買われたときのままだったのであろう小さなプラスチックの植木鉢をもう一回り大きいものに変えてやった

その晩、おかしな夢を見た

『・・・』
『・・・』
『・・・ここは?』
『私を拾ってくれてありがとうおにいちゃん!』
『・・・?だれだ?』
『私、キューイ!』
『キューイ?そんな知り合いいたっけか?』
『キューイだよう』
『で?そのキューイがどうした?』
『うん!鉢植えを変えてくれたでしょ』
『たしかに変えたがなんで君が知ってんだ?』
『キューイ!』
『いやだから』
『私、キューイ』
『そうかキューイなのか・・・』
『お礼がいいたくて…ありがとう』
『おう。よかったな』
『うん!』
『・・・』
『・・・』

「はっ!・・・なんだったんだ?今の・・・夢だよな?」
夢の中にキューイを名乗る美少女がでてきたのだ。なんだか肌が若草色していたような気がしたが夢だしなぁ

最近はだいぶサボテンらしくなってきた
うれしい気持ちからかつい眺めて話しかけてしまう
「〜でよー。やめさせた人の分俺らに回しやがってそのぶん毎日残業だろ?遊びにもいけないし、くったくっただよ」
まったくサボテンに独り言なんて自分でやっていてはずかしい・・・なんで植物相手に憂さ晴らししてるんだか

その晩、また変な夢を見た

『・・・』
『・・・』
『お仕事大変なのね。お兄ちゃん』
『そうなんだよ・・・えーと?』
『キューイ』
『ああ、キューイ』
『遊びにも行けないの?』
『そうなんだよ〜。・・・なんで知ってんの?』
『そう話しかけてくれたじゃない』
『?おおそうだっけか』
『わすれちゃった?』
『いいや』
『それでね?毎日が大変なおにいちゃんのためにキューイが頑張っちゃいます!』
『頑張るって?』
ちゅっ
『えへへ』
『…え?キューイ?』
『もっとしたい?』
ちゅー
今度は舌を絡ませるディープキス。その際、甘い蜜のようなものを流し込まれた
『キューイ?なにを?』
なんだか下半身がむらむらしだした
『おにいちゃん。なんだかここが大きくなってきたよ?』
『ここが大きくって?おおぅ。なぜ俺は下半身露出してんだ?…って夢の中だったっけ?』
ペロッ
『おおぅ』
『ふふ!びくってなったね』
ペロッ!はむっ!ペロペロ!!ちゅちゅー!!
『うぉい!ああっ!っっ!!あくっ!!』
『おにいちゃん!かわいい!』
そういいながら竿や尿道をいじくられる
『っっ気持ちいい!なんでそんなテクを・・・』
上目遣いに微笑むキューイを見て背筋がゾクッとした
『おにいちゃん。もっと気持ちよくなってね』
キューイはそういうと、一段と音をあげてしだした
レロッ!チュー!ズズッー!!
なめられ、しごかれ、バキュームのように吸われる
『キューイ!!だめだ!もうっ俺!!』
『うん!出して!キューイにちょうだい!』
『!!あああ!っく!』
『・・・』
『・・・』

「・・・はっ?!!マイゴォォォォッド!!!」
気が付けばパンツの中がヤバイ事になっていた
「夢精かよ?!!そんなに溜まっていたのか?俺?!」
履き替えて風呂場で悲しく洗う
「・・・はぁ〜・・・はぁーまーったくなにやってんだか…」

その日以後、そんな夢が多くなった
そうして悲しくパンツを洗う・・・
「おっかしいなぁ〜?夢精しないようきちんと出してるんだけどなぁ???」

最近、サボテンがかなり大きくなってきた。それに黄色い花まで咲き出して良い匂いいているし。なんだか例の夢の後で大きくなっているような気がする
サボテンの大きいのは1mくらいまで大きくなるらしい。しかしこんなに一気に成長するものなのか?
仕方がなく鉢植えを直径1mくらいの大きいのに変えた

「キューイよ?さすがに大きくなりすぎだろ?これじゃ、キウイではなく巨大かぼちゃ並だぞ?・・・それにしても夢の中のキューイ、見るたんびに体の各所が成長しているように見えるのは気のせいか?胸は俺好みの美乳だし…美少女の美ぬー…イイネ!!」

夢とはいえ、そんな毎日は俺に活力を与えてくれた
しかし、一気に巨大化したキューイを見て、不安も出てくる。
「まさか、内部が空洞化するような病気ではないだろうな?それとも水が溜まってしまう病気か?」
いよいよ鉢植えが手狭になってきたのでどうするか悩む
「キューイ!大きくなっているのにはなんかあるのか?病気になっているんじゃないだろうな?何とか言ったらどうなんだ!!」

ぽん!!

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜ん!!」
「・・・ぁ・・・・」
「おにいちゃん?」
「・・・ぁ・・・ぁ・・・ぁ」
「もしもし?」
「・・・ぁ・・・ぅ・・・ぃっっっ!!」
「あーうーい?」
「・・・っ?!こっこれは夢なのか???いやそうに決まっている!なぜならば夢の中の美キューイが目の前にいるからだ!!」
「美なんてキューイ照れるよ」
ドガッ!壁に頭をぶつけてみる
「痛くない?だとっ?やはり夢なのか?」
「わわわ!何しているの?!おにいちゃん!」
「ならばこの机の角に頭を・・・」
「やめて!エイッ!」
やめてと言いながら腰にタックルをして抱きついてきた
ゴツッ!!
「ぐぬぉぉぉぉぉぉ。いーたーい!!200のダメージを受けた・・・。死ぬ・・・」
「おおーゆーしゃよ死んでしまうとはなさけない・・・」
「おまえのせいだろうが!っぅ…おーいてー!」
「おにいちゃん!しっかりして!!骨はキューイが拾ってあげるから!!」
「ってなんでやねん!勝手に殺すなぁ・・・あれ?」
「おにいちゃん!大丈夫?」
「ってキューイ?ここは夢の中?俺起きているよね?幻覚?…なんで?」
「私を心配して呼んでくれたでしょ〜。だから心配させたくないって思ったら出て来れちゃった」
改めて彼女を見ると頭に黄色い花、サボテンを見るとぱっくり開いていて確かに人一人入れそうな感じになっている
信じられないとぽかんとしていると不意に抱きつかれた
「おにいちゃん!好き!!キューイいつもおにいちゃんと触れ合いたかった。今までは力もあんまりなくて夢の中で触れあうしかなかったけど、これからはいつでもこうしていたいよ」
「俺も好きだぞ?おお!しかしまさか、実体化してくるとは思わなかった。まだ夢の中と疑うほどだ」
「じゃぁ、いろいろためしてみる?」
「はぁ?試す?」

いきなり唇をうばわれた。そして、甘い蜜を大量に流し込まれた
そんな匂いを嗅ぐだけでなんだかくらくらしてくる
だんだんと体が火照ってきた
「キューイ?なんだか俺…」
「蜜を飲ませたからね、したくなっちゃっうようになるの」
「そうなのか?でも俺はキューイとしたい」
お互いを感じあうように口付けをしていく
「んっ」
「キューイの蜜、本当においしいな」
体が熱くてたまらない
キューイの少し低い体温が心地よい
「あふん」
涼しさをもとめてからだのあちこちを揉んでいく
乳房は柔らかく乳首はしっかりたっていた
「ああっおにいちゃん!もっと触って?」
「ああ」
体のあちこちにキスをする。そうして下の茂みに手をやる。もう準備はできているかのように滴っていた
「なあキューイ。俺なんだか我慢できなくなってきた。いれていいか?」
「ふふ。いいよおにいちゃん!おにいちゃんの好きなようにしていいんだよ?」
「じゃあいくよ?」
正面から向き合ってキスをしながら膣にいれていく
「ああっ。入ってくる。おにいちゃんのが…ああん!」
キューイの中はしっとりと濡れていてきついのかとも思ったがすんなり入っていった
「ああ!キューイ!キューイのなか、やさしく包み込んでくれるようでとても気持ち良い!」

キューイをそっと寝かせる。そして覆いかぶさるように向き合う
チュッ
「動くぞ?」
「うん。気持ちよくなっておにいちゃん」」
最初はやさしく腰を使っていたのだが、強く締め付けてくるので自分を抑えきれなくなって、強く腰を使うようになっていった
「あっ、ああっ。おにいちゃんもっとつよく!」
「ああ!なかが気持ちよくてっ!!キューイ!キューイ!!」
「あっあん!おにいちゃんのがつよくあたって!!」
「・・・!!なっ!なあもうそろそろ!お、俺いきそうだ」
「ああんっいっいい!!いっしょに!いっしょに!!」
「ああ!!」
!!!!
「ああーーん」
気だるさが全身を覆い。いつまでも抱き合っていた

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キューイと毎日過ごすようになってから、なんだか周りが変わってきたような気がする。
普段、同年代の同僚と話すことの方が多かったのに、最近では女性とよく話をするようになってきた
“最近、良い匂いしてるよね?なんの香水使っているの?”と尋ねられることが多い
特には使っていないのだが…
そのことをキューイに話すと
『キューイよりそういう女の人のほうがいい?』
と、すねたように聞いてくるのだが、もう俺はキューイから離れられないだろう
たぶんキューイの花と蜜の匂いではないかとのことだった。花の匂いには揮発性の催淫効果が、蜜は催淫剤としての効果がある
いつも一緒にいて蜜も分けて貰っているからそんな匂いが染み付いたのだろうと


そんなたのしい毎日を送っていたのだが、いつしかキューイは元気がなくなっていった
エッチをするときは相変わらずお互い貪欲に求め合っているのだが、そうではないときはサボテン内に帰って寝ているようだった
そんなある日。
「…おにいちゃん。ごめんなさい。もうわたし出てこれないかもしれない…」
「なんで?あんなに愛し合っていたのに!」
「わからない。わからないの。私だっておにいちゃんといつまでもいたい!でも、でもなんだか力が出ないようになってきていて!」
「なんとかならないのかい?」
「……また夢の中ならなんとか…」
「……なあキューイ。愛しているだから、俺はいつまででも待つよ?」
「うん…。私もおにいちゃんのこと愛してる。ずっとずっと愛してる!」

そうして、実体はおろか、夢の中でもほとんど会えることは少なくなっていった


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毎日毎日、話しかけ、サボテンの世話をする。時々どうしようもなく寂しくなるときもあるがそこは我慢だ

季節は冬を越し、春の暖かな陽気が戻ってくる頃になっていた

「なぁ、キューイ今日は良い天気だぞ?ベランダに出て日光浴と洒落込もうじゃないか!」
ベランダに出て一人と一株?で日光浴…

「良い気持ちか?暖かくなってきたもんな。…(…でも心は寂しいよ…)」
枯れたわけではないので死んではいないと思うが、人として触れ合ってしまったからなんとなく寂しい
肘をつき頭を抱えて目を瞑ったとき

ぽんっ

なんだか懐かしい音と、ふっとあの甘い香りが鼻腔をくすぐる

「………」
「………」
「………ただいま」
「………うん」
「なんで、目を瞑っているの?」
「なんだかキューイが消えちゃいそうで」
「わたしはここにいるよ?」
ふっとやさしく抱きしめられた
「キューイ、ああキューイのいい匂いがする!戻ってきたんだ。…おかえり!」

「うん。ただいま!おにいちゃん!!」
互いにいっぱいに抱きしめる
本当にまた会えたんだと思うとなんだか涙が出てきた


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冬の間、キューイはずっと眠り続けていたようだ
「植物にも冬眠はあるの?」
「わからない。普通はないのかも。でもキューイはこうして人型になっているでしょ?結構消耗しているみたい」
「そうか、最近の冬はなんだか寒いしなぁ」
「もう会えないかと本当に思った」
「これからの冬は何か対策しないとな」
「うん。ね?おにいちゃん?」
「なんだい?」
「これからもよろしくね」
「ああ!もちろんさ」

そうして、俺とキューイの幸せな日々は再び続いていく
10/05/30 15:58更新 / 茶の頃

■作者メッセージ
初エロですが・・・
やはりエロは・・・苦手だなぁ

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