連載小説
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11.エピローグ ふたり寄り添って
「よっと」
雷にうたれた私は、その影響で腕や体が思うように動かなくなっていたが、ミーリエルの献身的な看病とメルの回復魔法で何とか動けるまで回復していた
そんな私にミーリエルは今は体を治すだけでいいと言ってくれているけど、せっかく動けるようになったのだし何かをしたいと思う。いつかのテレビで見た、田舎暮らしの醍醐味・・・薪割り。あれをやってみたいと思っていたのだ・・・
「・・・っ!」
やはり腕を振り上げる時、痛みが走る
「ユージ!そんな体じゃ無理よ!!」
痛みに顔を歪めたのを見たのか、ミーリエルが飛んできた
「せっかくの田舎暮らしだよ?私も何かしたいんだよ。それにミーリエルに甘えっぱなしというのもなぁ・・・」
「あぁユージ。これからずっと一緒に暮らしていくのだから、体を治してから少しずつ出来るようにしていけばいいじゃない?」
私を抱きしめてミーリエルはそう言った
「・・・でもなぁ」
何かを手伝いたい。いつまでもお客様扱いというものなぁ・・・
そんな思いが顔に出てしまったようで、彼女は言った
「ユージはいてくれるだけでいいの!あなたは無理を押してワタシのとこに来てくれた!それだけで幸せよ?」
「なぁミーリエル。結婚式はしてないけど私たちは夫婦になるんだろう?だったら私は君と何かを築いていきたいな」
「夫婦・・・結婚式?!」
途端に顔がぱぁっと明るくなった。目をキラキラさせて、顔が紅くなっていく
「夫婦・・・。ユージとの結婚式!みんな!みんな呼ぼう?メルも、応援してくれた人たちみんな!!」
「待って!ミーリエル!結婚式は私の体が治ってからにしてくれないか?」

どうして?と首を傾けるミーリエル

・・・だって今のままだと彼女をお姫様抱っこできないじゃないか!!
「だって知っている人たちみんな来るんだろ?だったらみっともない姿見せたくないよ」
そんな企てを隠してそんな事を言ってみる
「大丈夫よ!この傷は世界の壁を越えたって言う証なんですもの!みんな分かっているわよ!」
・・・みんなと言うけど、みんなってどんな人たちなんだろう?
「ミーリエル?みんなってどんな人たちなの?」
「前にユージのこと記事にしたって言ったでしょ?あの後あなたとの関係がどうなったのか聞いてくる読者が多くて、ちょくちょく記事に載せていたの!だから、式をするといえば応援してくれた人たちみんな来ると思うわ!」
・・・眩暈がした
そんな大事になっていたなんて・・・
「それだけみんなユージと異世界のことについて興味を持っているっていう事よ?」

異世界に興味・・・か
!!
唐突に頭に閃いた!
「なぁミーリエル!私が出来そうなこと思いついたよ!!」

私も記事を書く!!
私が記事を書くことによってミーリエルの書いている記事の部数も増えるだろう
書く内容は・・・そうだなぁ・・・
私のいた世界のこと・・・あと…そうだな。食べ物系かな?
魔法と言うものが一般的なこの世界で、科学に興味を持つものは少ないだろう
文系の私に科学的なことは教えられないし・・・
食べ物系が一番、親しみやすいだろう!

この世界には、ジパングと言う所があって聞いた限りでは昔の日本に似ているらしい。この地方ではジパングの食材はまず出回っていない
召喚魔法だか転移魔法だかによってジパングに注文できるみたいだけれど、それでは面倒だ。
もし、記事を見た人たちの間に異世界料理を食べてみたいと言う人達が現れたら、和食の食材が市場に置かれる日も来るかもしれない。それで需要と供給の関係ができれば私も手軽に買いに行ける
私自身、故郷の味が懐かしくなることもあるだろう
私も思うことがあって、こちらに越してくる時いろいろ日用品とか、食べ物、植物の種とか持ち込んでは来たけどそれには限界がある。故郷に戻ることは出来ないけれどソウルフードがあればどんなに心強いかと思う
私の世界のことや食べ物に興味津々だったミーリエル
故郷の味をその舌で味わってもらいたいとも思う

そんな提案を彼女にすると喜んでくれた
「ユージの国の食べ物?!食べてみたい!!どこかのお店を覗いていた時、テーブルについた人がおいしそうにお肉とかケーキとか食べていたのを見た時、よく涎が出ちゃったのよ!あんなおいしそうなものいつか食べてみたいと思っていたの!ユージもあれの作り方わかるの?だったらあなたの記事が載せられるか記者仲間のハーピーちゃんに聞いてみるね?」
そういってこの話を持っていった

ハーピーの人は二つ返事で了承してくれたらしい
私が書くことになった記事・・・題名は・・・
“ユージとミーリエルの異世界クッキング!”
つたない文字をミーリエルが校正して書き上げる
いつも市場にある食材と記憶にある食材を掛け合わせて頭を捻る。そうしながら記事を書いていく
この世界の食文化とあの世界の食文化なかなか似ているのもが多いけど、あの日本独特のの和洋折衷というのがないからそれらを載せてみることにした
いくつか書いてみたけど正直難しい。反響はあるけどまず材料がないから実際作るとまではいかないようだ
まあ、それでもなかなか好評だからそのうち街中でジパング食材を売り出す店も出てくるかもしれない
今から楽しみだ














体も順調に回復したころ、記事のほうもなんとか順調に回り始めていた

そして・・・

その日、とある場所には大勢の人々が集まっていた
街のある一画にある聖堂。神を信じている者などいないから、聖堂とは名ばかりだけれど一応神を祭っていることになっている…

魔女のメルを初めとして、彼女の師というメルと同じようにちっちゃくて丸まっている角がかわいらしいバフォメット様。そして、メルの所属しているサバトの方々。彼女達は空間転移や召喚についてアドバイスをしてくれた人達だ
それにミーリエルの記者仲間達。記者のきっかけになったというハーピーさんなど。そして、一番多いのがミーリエルの記事の読者だという人々。それらの人々がミーリエルと異世界人である私をひと目見ようと、そして祝福しようと集まってくれている

白いドレスに身を包んだミーリエル
純白に包まれている
きれいだった
他に言葉が要らないほど
化粧を必要としない美貌の持ち主だが、さっと曳いた紅がとてもまぶしく見えて私の心を捉えて離さない

聖堂の中の祭壇には天使がいた
天使さんは私とミーリエルのことをとても感激して祝ってくれている。聞けば彼女もミーリエルの記事の読者だという
ここにはいろいろな魔物さんたちが集っていて、いつもだったら見とれてしまうところだけれど、今の私はミーリエルに魅了されっぱなしで心が浮きまくっている
腕を組んで歩く間、離れ離れで苦しかった時のことが思い浮かぶ
異世界にうきうきした事・・・
彼女に会ったこと・・・
心が通じ合ったこと・・・
会えないという事実に絶望したこと・・・
苦しみも悲しみもすべて過ぎ去った
彼女を本当に幸せにする!
二度とあんな寂しげな悲しげな顔をさせるものか!

『・・・・・・を誓いますか?』
そんなことを考えていたら、天使になにかを問いかけられていた
「っ・・・誓います!」
なにを言われたかまったく上の空だったけどたぶん誓いの言葉だろう
「誓います」
ミーリエルの少し潤みを含んだ言葉・・・心が震えた
向かい合って顔を見ると、その瞳は涙をたたえうれし泣きをしていた
まだ、本当に現実のことなのかとつねりたくなるけど、これは現実だ
ほらこんなにミーリエルが幸せそうな顔してる
大勢の人が集まってくれて、私たちがキスするのを今か今かと待っている

この際だし見せ付けてやろう!!
そう思ったときには、彼女に唇を奪われていた
あの少しざらついた舌が、あなたはワタシのもの!とばかりに私の舌に絡み付いてくる
「ミーリエル・・・好きだ・・・愛している!」
ちゅ・・・ちゅう・・・ちゅ
集まってくれた人たちの歓声を聞いたような気もするけれど、すぐに頭も心も甘くとろけたようで一心に口を貪る
「ユージぃすきぃ!ちゅ・・・愛してる♪」
唇を離すとツーっと唾が二人をつなぐ
参列者の方も触発されたのか、夫婦や恋人同士で来た人たちは皆、口づけを交わしていた

参列者達が聖堂を出て行く
「ミーリエル。ありがとう。そして、これからもよろしく!」
「ユージ?愛しているわ!ずっと傍にいてね♪離さないんだから♪♪」
ちゅっ
「さあみんなが待っているわ」
ふたり、手をつなぎながら光差し込む扉の向こうへと歩む

拍手と歓声が包み込んだ
よし!ここでミーリエルをお姫様抱っこだとか思ったら、体が浮いていた
「?!・・・ミーリエル!?」
「ふふっ!あなたはワタシをお姫様抱っこしたくて体を治すまで待ってくれなんて言っていたみたいだけど、こればっかりは譲れないわよ?ずっと・・・ずっとワタシの楽しみだったんだから!」
大勢の人々の前でのお姫様抱っこ。・・・恥ずかしい。普通逆だろう・・・

ミーリエルは器用にしっぽでブーケを持つと、それを投げた
誰が受け取るのか?と人々の視線が集まった瞬間を狙ってキスしてみた

彼女が笑っている
私も笑っている

私たちの新たな道のりがはじまった
幸せをかみしめて、私たちはもう一度誓いの口づけをかわした
11/02/04 22:34更新 / 茶の頃
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■作者メッセージ
“レンズの向こう側”これにて完結です。なんとかHappyENDで終わらせることができました
読んでくれた人々、感想くれた皆様どうもありがとうございます
一つのSSにこんなに入れ込んで書いたの初めてなんで終わっちゃったんだ…なんて思っていますが、まぁ楽しかった
本来このSS、ユージ視点とミーリエル視点を交互で書いていく予定だったのですが途中でめんどくさくなってユージ視点で最後まで行ってしまいました
ミーリエル視点も何話か書いてあるけどUpするかは?です。暇があったらうpするかも・・・

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