1048
「はぁ………はぁ………う、嘘だろ?」
目の前で閉まっている堅固なシャッターを見て、僕は身の毛がよだつほどの恐怖を覚える。
「だ、誰か!誰かいないのか!?」
喉が潰れるくらいに声を張り上げ、有らん限りの力でシャッターを叩く。
もちろん聞こえるはずがない。この程度の衝撃で少しでも揺らぐシャッターはここには必要ない。
「あ、あぁ……………」
無駄だ。
そう痛感した。
僕の心が、絶望で満たされていく。
この収容施設がシャッターを下ろすことの意味は新人である僕ですらわかることだった。
完全隔離。そういう対処をしなければならないほどの『何か』がここで起きたということに他ならない。
「だ、だれか!」
外部への干渉が無駄だとわかった僕は、内部に救いを求めた。
もしかしたらこの区画に誰かいるかもしれない。もしかしたらその人が解決策を思いつくような博士かもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ僕は区画を走り回る。
「ねぇ!おにーさん!」
すると、何者かの声が響いた。
幼い女の子の声。こんな施設で聞くのは違和感のある声だ。
しかし、確か財団は高いスペックさえあれば誰彼構わず引き入れていたはず。もしかしたらとんでもないほどの飛び級を成し遂げた博士なのかもしれない。
そんな期待が僕の脳裏をよぎる。
僕は声のした方に振り向く。
「おにーさん!」
だが僕の期待は最悪の形で裏切られる。
そこにいたのは小学生くらいのグリズリー。
手にはテディベアを抱えている。
「ぁ………ああぁ……」
恐怖のあまり、足の力が抜け僕はその場にへたり込む。
収容番号1048。
『ビルダーベア』
クラスはKeter。
「おにーさーん!」
「ひ、ひいぃぃっ!」
彼女はひょこひょことかわいらしい仕草で僕に近づいてくる。
僕は微動だにできなかった。
研修時、上司に真っ先に言われたのだ。
『1048番とは出会うな』と。
「た、たすけ、て」
もう目の前に彼女は来ていた。逃げるのは完全に不可能になった。
「おにーさんは逃げないの?じゃあちょうどいいや!」
彼女は、しゃがんで僕に顔を近づけてくる。
「っ………………!」
「私と一緒に『仲間づくり』しよ♥」
耳元でそう囁かれて。
僕は意識を失った。
ちゅぷっ、ぐちっ、にゅぴゅっ
「う、う……」
段々と僕の意識が戻ってくる。
もやもやとした意識の中で感じ取れるのは、下品な水音と股間の快楽だけだった。
それだけでももう、僕がどういう状況にいるかは理解できた。
「あはっ♥起きたんだ♥おにーさん♥」
「…………」
僕は彼女に、騎乗位で犯されているのだ。
視界と意識が定まってくると嬉しそうに僕の腰の上で上下する彼女が見えてきた。
夢だと思いたい。だが伝わってくる感覚は全て明瞭で現実のもののようだ。
抵抗する気力はなかった。抵抗したとしても彼女は魔物娘、力で適うはずがない。
それに下手に彼女を刺激し、暴走されても困る。
彼女にとってはあんなシャッターなど道端の石ほどの障害物にすらならないだろう。なんとかして彼女を抑え込み、救助を待つしかない。そうでないとどこに被害が向くかわからないのだ。
「はっ♥はっ♥おにーさんのおちんぽ♥固くて、太くて、気持ちいぃよぉ♥」
「っ!」
気を抜くとイってしまいそうになる。
だが、できるだけ長く彼女をここに留めておかなければならない。
魔物娘の特性上、彼女が僕に飽きてどこかへ行くということはないだろう。しかし、こいつはなにをするかわからない。
───魔物娘なのかどうかすら怪しいのだ。
「はぅッ♥はやくぅ♥はやくせーしちょうだい♥はやくわたしを孕ませてよぉ♥!」
「あぅっ」
腰の動きが一層激しく、獣的になってくる。
「はやく♥はやく♥」
それに、イってはいけない理由がもう一つある。
それは最悪の場合、世界の存続に関わってくるのだ────
彼女がここに収容されている理由。
それは彼女の『仲間づくり』に関わるものだ。
彼女……もしくはまだ見つかってはいないが彼女達という種は異様に子供を作りたがる。それだけなら魔物娘と変わらない。
だが、彼女達を解析した結果驚くべき事実にたどり着く。
彼女は、『非常に妊娠しやすい体質』なのだそうだ。
その繁殖力はハツカネズミにも匹敵するらしく、そのまま放っておけば人間界が猛スピードで侵食されてしまう────
だから、ここで僕が彼女を妊娠させるわけにはいかない。
「ぐっ、あっ」
そうだ、確か職員には緊急用の射精抑制薬が配られていたはず…この部屋は職員の寮室だ。どうやら僕の部屋ではないが……物をしまえる場所は限られているはず。
「うやぁ♥子宮の入り口に♥亀頭さん当たってるっ♥」
なんとか手の届く範囲に小さなタンスが一つ。手を伸ばしてこっそり開けると中には目的の物が入っていた。
「んっ♥なにそれ♥?お薬♥?飲ませてあげるね♥」
幸運なことに、彼女はこの薬の正体を精力増強剤とでも勘違いしているらしい。
彼女の手で飲ませてくれるらしい。
「んーっ♥………はい♥」
正確には手ではなく口移しという形でだが──飲みやすいように大量の唾液まで流し込んでくれた。
「元気になーれ♥うふふ♥いっぱい赤ちゃん作ろーね♥」
そんな非日常的で卑猥な言葉に、僕の性器は少しだけ反応してしまった。
「あ♥ぴくってした♥そういうの好きなんだ♥」
悪戯っぽく笑う彼女。
すごく妖艶で────美しく見えてしまった。
彼女が収容対象でなければ。
僕はきっと。
「う、うぉぉ!」
「え?……やぁん♥」
そんな考えを振り払い僕は起き上がる。
そして体制を変え、正常位の形になる。
射精抑制剤の効果はそこまで長くはない。時間内に彼女との交わりを終わらせなくてはならないのだ。
そのためにも僕が主導権を握り、彼女を果てさせなければならないのだ。
「…………………」
ベッドに仰向けになった彼女は唖然としていた。
「……………どうか、したの?」
つい僕はそんな彼女に声をかけてしまう。
「………動いてくれるの?優しいんだね♥」
彼女はまた、嬉しそうに微笑む。
「遠慮はしなくていいんだよ?こんなに小さいけども十分子供は産めるんだから♥」
「………………」
ごくり、と唾を飲む。
彼女の身体はなだらかで、色気とか大人の魅力とかは感じられない。
でも彼女の言葉、表情、動きから、僕は何かを感じ取っていた。
「じゃあ……動くよ」
その何かに動かされた僕は。
本来の目的を忘れた───
というか。
セックスの本来の意義を思い出したのだった。
「あぁん♥やっ♥すごいよぉ♥すごく気持ちいいぃぃぃぃ♥!」
彼女の膣が、さっき以上に僕の性器を締め上げてくる。
「おにーさん♥おにーさん♥おにーさぁぁんっ♥!」
瞳に涙を浮かべながら僕を呼ぶ彼女。
僕はその唇を唇で塞ぐ。
「んちゅっ♥ちゅっ♥ちゅっ♥」
やはり彼女は激しく、獣のように貪りついてくる。
「ちゅぷ………おにーさん♥ありがと♥こんなの初めてだよぉ♥」
彼女の表情を見る。
この上ない至福を受け取った、そんな満ち足りた表情をしている。
「ずっと♥ずっと待ってたんだよ♥わたしのこと♥受け入れてくれる人♥」
「…………………」
「ありがとう……………わたし嬉しいよ♥」
「…………」
僕は───僕らは勘違いしていたらしい。
魔物娘かどうかも怪しい、なんて思ってたのに────
この子はどうしようもないほど魔物娘だ。
僕なんかでは受け止められないくらいほど大きくて深い愛を持った魔物娘なんだ────
「ごめん…………」
「? どうしたの♥?」
「いいや、なんでもない」
なんでもないさ。
悔やんでも仕方がないのだ。ならば今は──
「ひゃうっ♥!また、激しく…………っ♥」
僕は動く。
彼女が満足できるくらいに。
もっと彼女が気持ちよくなれるように。
「いい、よぉ♥もっともっと♥い〜っぱい楽しも♥」
やはり彼女は、嬉しそうに笑うのだった。
「はぁっ♥はぁっ♥おにーさんっ♥んっ♥だいすき♥」
「だいすきすぎて♥おかしくなっちゃいそうだよぉ♥」
「おねがいだからっ♥もう一人にしないでね♥」
「ずっとずっと一緒にいて♥いっぱい赤ちゃんつくろ♥?」
「ねぇ♥いいでしょ♥おにーさん♥」
薬の効果も切れかけてきたのか次第に精子が僕の性器を上ってくる。
「おに、ぃ、さん♥でそう♥なんでしょ♥?」
すっかりととろけ、少し動くだけで激しく絶頂するようになった彼女は聞いてくる。
「はやく♥赤ちゃんのおへやに♥のーこーなこだねミルクちょーだいよぉ♥」
散々焦らされ、我慢の限界がきたのか精子をねだり、腰を僕の性器から精子を搾り上げるように動かす。
「くっ………」
そういえば効いたことがある。
射精抑制薬は射精を止めるのではなく後回しにするものらしい。
つまり、効果時間の間に出るはずだった精液は無くなるのではなく効果が切れたあとの最初の射精で一気に出るらしい。
つまりつまり────
「はぁ、はぁ、多分すごい出ると思うから……覚悟しておいて」
「いいよ♥おにーさんのせーしなら何億匹でもなん何兆匹でも何京匹でも受け止めてあげる♥」
彼女は僕にぎゅっと抱きつく。
「だから♥一番奥でびゅ〜〜っ♥てしてね♥」
「………わかった」
僕はもう一回、キスをする。
彼女は愛おしそうに僕の頭を撫でる。
そして、決壊の時が来た。
びゅるるるるっ!びゅくっ!びゅっ!
「はぁぁぁぁぅぅんっ♥!!すごいぃぃ♥いっぱいででるよぉ♥」
びゅ〜〜〜〜っ!
「はぁ♥はぁ♥お腹ぱんぱんになっちゃうぅぅ♥」
びゅくびゅくびゅくっ!
「♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥っっっ!」
「はぁ………………♥はぁ………………♥」
十何秒間かの射精を終え、性器を彼女から引き抜く。
ドロリと白濁液が溢れ、あまりの量に膨れていた彼女の下腹部も少しずつしぼんでいった。
「はぁ…………………♥いっぱい♥でたぁ………♥」
彼女はその溢れた濃い精液の塊を指で摘まみ、もったいなさそうに口で味わう。
「濃い♥これならきっと着床してるね♥────元気な赤ちゃん産むから♥一緒に頑張ろうね♥」
「──────うん、そうだね」
「えへへ♥」
「お帰りなさい、どうだったの?」
それからの数週間は手続きに追われる毎日だった。
僕の研究員としての立場がどうなるかだとか、居住区画への引っ越しだとか──
なによりも重大なのは彼女がどうなるかである。
「ただいま」
僕は今、それを聞きにいってきたのである。
いくら愛し合っていようとも一歩間違えれば大惨事になるわけで、そこの判断は財団の上の方がすることになったのだ。
それで、その結果は─────
「君はこのままでいいんだってさ」
「じゃあ!このまま一緒に暮らせるの?」
「このまま─────かどうかはちょっと微妙だな」
「? じゃあどうなるの?」
「それは────」
正直、財団に抹殺されてもおかしくないことをしでかしたのだが。
上からの僕の評価は鰻登りだった。
なんでも彼女が魔物娘であり、一人の男しか愛さないことを証明した手柄が思ったよりも大きいものらしく、このまま研究員として残ることが決定し、さらには僕が昇進することまで考えられているらしい。
ただ、子供を産みまくるのはまずい。
ということで一つ処置をすることになった。
それは彼女に対してではなく。
僕に対してのもので────
「僕の精子が財団に制御されることになりました」
「あらま」
「セックスとかは普通にしていいんだけども、子供が欲しいときは財団に届けでなければならないらしい」
なんかすごく複雑な気分だ。
「……………そっかぁ…………でも、まぁ、しかたないね」
彼女は、大きくなった自分のおなかをさする。
その中には新たな命────きっとまた彼女と同じような運命を背負った子供がいるのだ。
「今の私はこの子と────あなたがいれば十分だから」
彼女は僕に笑顔を向ける。
僕も彼女のおなかに手を当てる。
中で少し動いたような、そんな気がした。
彼女のために、この子のために。
そして彼女が愛してくれている自分のために。
幸せに生きよう。
そう思った。
目の前で閉まっている堅固なシャッターを見て、僕は身の毛がよだつほどの恐怖を覚える。
「だ、誰か!誰かいないのか!?」
喉が潰れるくらいに声を張り上げ、有らん限りの力でシャッターを叩く。
もちろん聞こえるはずがない。この程度の衝撃で少しでも揺らぐシャッターはここには必要ない。
「あ、あぁ……………」
無駄だ。
そう痛感した。
僕の心が、絶望で満たされていく。
この収容施設がシャッターを下ろすことの意味は新人である僕ですらわかることだった。
完全隔離。そういう対処をしなければならないほどの『何か』がここで起きたということに他ならない。
「だ、だれか!」
外部への干渉が無駄だとわかった僕は、内部に救いを求めた。
もしかしたらこの区画に誰かいるかもしれない。もしかしたらその人が解決策を思いつくような博士かもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ僕は区画を走り回る。
「ねぇ!おにーさん!」
すると、何者かの声が響いた。
幼い女の子の声。こんな施設で聞くのは違和感のある声だ。
しかし、確か財団は高いスペックさえあれば誰彼構わず引き入れていたはず。もしかしたらとんでもないほどの飛び級を成し遂げた博士なのかもしれない。
そんな期待が僕の脳裏をよぎる。
僕は声のした方に振り向く。
「おにーさん!」
だが僕の期待は最悪の形で裏切られる。
そこにいたのは小学生くらいのグリズリー。
手にはテディベアを抱えている。
「ぁ………ああぁ……」
恐怖のあまり、足の力が抜け僕はその場にへたり込む。
収容番号1048。
『ビルダーベア』
クラスはKeter。
「おにーさーん!」
「ひ、ひいぃぃっ!」
彼女はひょこひょことかわいらしい仕草で僕に近づいてくる。
僕は微動だにできなかった。
研修時、上司に真っ先に言われたのだ。
『1048番とは出会うな』と。
「た、たすけ、て」
もう目の前に彼女は来ていた。逃げるのは完全に不可能になった。
「おにーさんは逃げないの?じゃあちょうどいいや!」
彼女は、しゃがんで僕に顔を近づけてくる。
「っ………………!」
「私と一緒に『仲間づくり』しよ♥」
耳元でそう囁かれて。
僕は意識を失った。
ちゅぷっ、ぐちっ、にゅぴゅっ
「う、う……」
段々と僕の意識が戻ってくる。
もやもやとした意識の中で感じ取れるのは、下品な水音と股間の快楽だけだった。
それだけでももう、僕がどういう状況にいるかは理解できた。
「あはっ♥起きたんだ♥おにーさん♥」
「…………」
僕は彼女に、騎乗位で犯されているのだ。
視界と意識が定まってくると嬉しそうに僕の腰の上で上下する彼女が見えてきた。
夢だと思いたい。だが伝わってくる感覚は全て明瞭で現実のもののようだ。
抵抗する気力はなかった。抵抗したとしても彼女は魔物娘、力で適うはずがない。
それに下手に彼女を刺激し、暴走されても困る。
彼女にとってはあんなシャッターなど道端の石ほどの障害物にすらならないだろう。なんとかして彼女を抑え込み、救助を待つしかない。そうでないとどこに被害が向くかわからないのだ。
「はっ♥はっ♥おにーさんのおちんぽ♥固くて、太くて、気持ちいぃよぉ♥」
「っ!」
気を抜くとイってしまいそうになる。
だが、できるだけ長く彼女をここに留めておかなければならない。
魔物娘の特性上、彼女が僕に飽きてどこかへ行くということはないだろう。しかし、こいつはなにをするかわからない。
───魔物娘なのかどうかすら怪しいのだ。
「はぅッ♥はやくぅ♥はやくせーしちょうだい♥はやくわたしを孕ませてよぉ♥!」
「あぅっ」
腰の動きが一層激しく、獣的になってくる。
「はやく♥はやく♥」
それに、イってはいけない理由がもう一つある。
それは最悪の場合、世界の存続に関わってくるのだ────
彼女がここに収容されている理由。
それは彼女の『仲間づくり』に関わるものだ。
彼女……もしくはまだ見つかってはいないが彼女達という種は異様に子供を作りたがる。それだけなら魔物娘と変わらない。
だが、彼女達を解析した結果驚くべき事実にたどり着く。
彼女は、『非常に妊娠しやすい体質』なのだそうだ。
その繁殖力はハツカネズミにも匹敵するらしく、そのまま放っておけば人間界が猛スピードで侵食されてしまう────
だから、ここで僕が彼女を妊娠させるわけにはいかない。
「ぐっ、あっ」
そうだ、確か職員には緊急用の射精抑制薬が配られていたはず…この部屋は職員の寮室だ。どうやら僕の部屋ではないが……物をしまえる場所は限られているはず。
「うやぁ♥子宮の入り口に♥亀頭さん当たってるっ♥」
なんとか手の届く範囲に小さなタンスが一つ。手を伸ばしてこっそり開けると中には目的の物が入っていた。
「んっ♥なにそれ♥?お薬♥?飲ませてあげるね♥」
幸運なことに、彼女はこの薬の正体を精力増強剤とでも勘違いしているらしい。
彼女の手で飲ませてくれるらしい。
「んーっ♥………はい♥」
正確には手ではなく口移しという形でだが──飲みやすいように大量の唾液まで流し込んでくれた。
「元気になーれ♥うふふ♥いっぱい赤ちゃん作ろーね♥」
そんな非日常的で卑猥な言葉に、僕の性器は少しだけ反応してしまった。
「あ♥ぴくってした♥そういうの好きなんだ♥」
悪戯っぽく笑う彼女。
すごく妖艶で────美しく見えてしまった。
彼女が収容対象でなければ。
僕はきっと。
「う、うぉぉ!」
「え?……やぁん♥」
そんな考えを振り払い僕は起き上がる。
そして体制を変え、正常位の形になる。
射精抑制剤の効果はそこまで長くはない。時間内に彼女との交わりを終わらせなくてはならないのだ。
そのためにも僕が主導権を握り、彼女を果てさせなければならないのだ。
「…………………」
ベッドに仰向けになった彼女は唖然としていた。
「……………どうか、したの?」
つい僕はそんな彼女に声をかけてしまう。
「………動いてくれるの?優しいんだね♥」
彼女はまた、嬉しそうに微笑む。
「遠慮はしなくていいんだよ?こんなに小さいけども十分子供は産めるんだから♥」
「………………」
ごくり、と唾を飲む。
彼女の身体はなだらかで、色気とか大人の魅力とかは感じられない。
でも彼女の言葉、表情、動きから、僕は何かを感じ取っていた。
「じゃあ……動くよ」
その何かに動かされた僕は。
本来の目的を忘れた───
というか。
セックスの本来の意義を思い出したのだった。
「あぁん♥やっ♥すごいよぉ♥すごく気持ちいいぃぃぃぃ♥!」
彼女の膣が、さっき以上に僕の性器を締め上げてくる。
「おにーさん♥おにーさん♥おにーさぁぁんっ♥!」
瞳に涙を浮かべながら僕を呼ぶ彼女。
僕はその唇を唇で塞ぐ。
「んちゅっ♥ちゅっ♥ちゅっ♥」
やはり彼女は激しく、獣のように貪りついてくる。
「ちゅぷ………おにーさん♥ありがと♥こんなの初めてだよぉ♥」
彼女の表情を見る。
この上ない至福を受け取った、そんな満ち足りた表情をしている。
「ずっと♥ずっと待ってたんだよ♥わたしのこと♥受け入れてくれる人♥」
「…………………」
「ありがとう……………わたし嬉しいよ♥」
「…………」
僕は───僕らは勘違いしていたらしい。
魔物娘かどうかも怪しい、なんて思ってたのに────
この子はどうしようもないほど魔物娘だ。
僕なんかでは受け止められないくらいほど大きくて深い愛を持った魔物娘なんだ────
「ごめん…………」
「? どうしたの♥?」
「いいや、なんでもない」
なんでもないさ。
悔やんでも仕方がないのだ。ならば今は──
「ひゃうっ♥!また、激しく…………っ♥」
僕は動く。
彼女が満足できるくらいに。
もっと彼女が気持ちよくなれるように。
「いい、よぉ♥もっともっと♥い〜っぱい楽しも♥」
やはり彼女は、嬉しそうに笑うのだった。
「はぁっ♥はぁっ♥おにーさんっ♥んっ♥だいすき♥」
「だいすきすぎて♥おかしくなっちゃいそうだよぉ♥」
「おねがいだからっ♥もう一人にしないでね♥」
「ずっとずっと一緒にいて♥いっぱい赤ちゃんつくろ♥?」
「ねぇ♥いいでしょ♥おにーさん♥」
薬の効果も切れかけてきたのか次第に精子が僕の性器を上ってくる。
「おに、ぃ、さん♥でそう♥なんでしょ♥?」
すっかりととろけ、少し動くだけで激しく絶頂するようになった彼女は聞いてくる。
「はやく♥赤ちゃんのおへやに♥のーこーなこだねミルクちょーだいよぉ♥」
散々焦らされ、我慢の限界がきたのか精子をねだり、腰を僕の性器から精子を搾り上げるように動かす。
「くっ………」
そういえば効いたことがある。
射精抑制薬は射精を止めるのではなく後回しにするものらしい。
つまり、効果時間の間に出るはずだった精液は無くなるのではなく効果が切れたあとの最初の射精で一気に出るらしい。
つまりつまり────
「はぁ、はぁ、多分すごい出ると思うから……覚悟しておいて」
「いいよ♥おにーさんのせーしなら何億匹でもなん何兆匹でも何京匹でも受け止めてあげる♥」
彼女は僕にぎゅっと抱きつく。
「だから♥一番奥でびゅ〜〜っ♥てしてね♥」
「………わかった」
僕はもう一回、キスをする。
彼女は愛おしそうに僕の頭を撫でる。
そして、決壊の時が来た。
びゅるるるるっ!びゅくっ!びゅっ!
「はぁぁぁぁぅぅんっ♥!!すごいぃぃ♥いっぱいででるよぉ♥」
びゅ〜〜〜〜っ!
「はぁ♥はぁ♥お腹ぱんぱんになっちゃうぅぅ♥」
びゅくびゅくびゅくっ!
「♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥っっっ!」
「はぁ………………♥はぁ………………♥」
十何秒間かの射精を終え、性器を彼女から引き抜く。
ドロリと白濁液が溢れ、あまりの量に膨れていた彼女の下腹部も少しずつしぼんでいった。
「はぁ…………………♥いっぱい♥でたぁ………♥」
彼女はその溢れた濃い精液の塊を指で摘まみ、もったいなさそうに口で味わう。
「濃い♥これならきっと着床してるね♥────元気な赤ちゃん産むから♥一緒に頑張ろうね♥」
「──────うん、そうだね」
「えへへ♥」
「お帰りなさい、どうだったの?」
それからの数週間は手続きに追われる毎日だった。
僕の研究員としての立場がどうなるかだとか、居住区画への引っ越しだとか──
なによりも重大なのは彼女がどうなるかである。
「ただいま」
僕は今、それを聞きにいってきたのである。
いくら愛し合っていようとも一歩間違えれば大惨事になるわけで、そこの判断は財団の上の方がすることになったのだ。
それで、その結果は─────
「君はこのままでいいんだってさ」
「じゃあ!このまま一緒に暮らせるの?」
「このまま─────かどうかはちょっと微妙だな」
「? じゃあどうなるの?」
「それは────」
正直、財団に抹殺されてもおかしくないことをしでかしたのだが。
上からの僕の評価は鰻登りだった。
なんでも彼女が魔物娘であり、一人の男しか愛さないことを証明した手柄が思ったよりも大きいものらしく、このまま研究員として残ることが決定し、さらには僕が昇進することまで考えられているらしい。
ただ、子供を産みまくるのはまずい。
ということで一つ処置をすることになった。
それは彼女に対してではなく。
僕に対してのもので────
「僕の精子が財団に制御されることになりました」
「あらま」
「セックスとかは普通にしていいんだけども、子供が欲しいときは財団に届けでなければならないらしい」
なんかすごく複雑な気分だ。
「……………そっかぁ…………でも、まぁ、しかたないね」
彼女は、大きくなった自分のおなかをさする。
その中には新たな命────きっとまた彼女と同じような運命を背負った子供がいるのだ。
「今の私はこの子と────あなたがいれば十分だから」
彼女は僕に笑顔を向ける。
僕も彼女のおなかに手を当てる。
中で少し動いたような、そんな気がした。
彼女のために、この子のために。
そして彼女が愛してくれている自分のために。
幸せに生きよう。
そう思った。
19/11/05 23:29更新 / 鯖の味噌煮