第四話 今宵はバフォ様と同じ屋根の下 前編
「…んでまあ、本題に入らせてもらう」
レオナがはっとする。
「なぜ、ここにいるんだ」
レオナがしょげて俯いた。
「…友の無くし物が、ここにあるのじゃ」
とも…とブライトが心の中で呟く。
それを聞いてふと、無くし物であの反応は過剰ではないかとブライトは思った。普通のただの物ではないのだろうか。
レオナの口が開くのを待つ。
「昔…ジパングに来た事があった」
「へえ、そうなのか」
ブライトの興味と楽しそうな声に、レオナも笑う。
「ああ、そこである魔物と出会ったのじゃ」
「それが友?」
レオナが頷いた。
「名は彩宵(さいしょう)、ドラゴンじゃなくてええと…そう龍と呼ばれていた」
龍と呼ばれる魔物の彩宵は、母がジパングでは神として崇められていると誇らしげに語っていた事を、レオナは今でも鮮明に記憶として残っている。
ジパングの知識を得にレオナはジパングに訪れ、そこで彩宵と出会った。
バフォメットのレオナの力を認め、レオナも神とされる彩宵の力を認め、サバトに入るには無理だが、大人とは呼ばない見た目だった。しかし、それでも二人は仲が良かった。
幼い頃は人の子と対等のように接して、遊んでいたのだという。今ではそれがそろそろ難しくなって遊べなくなったと言っていた事を思い出す。
そろそろ自国に帰らなければならない時になった。
―遊びにいくよ
そう言ってくれた彩宵に地図でここと教え、レオナは帰っていった。
「その後、この大陸に来てくれたのじゃが…ジパングの魔物は人と歩んでいたじゃろ?」
そう言われて、ブライトは嫌な予感がした。
「あの時まだ、多くの人間が魔物に敵意を持っていた」
それでも、息絶える事がなかったのは、龍としての能力の高さがあったからだろう。
ブライトの予感が確信に変わる。
「道が分からんと、尋ねたそうじゃ」
「っ!」
言葉では伝えていた。しかし、実際に体験しなければ、分かったつもりになるだけだ。
彩宵に得物をふるった相手から逃走は出来た。しかし。
「ある物を、盗られたと」
ブライトの言葉に肯定の言葉が聞こえた。
「ああ」
納得したブライトは、ある事が気になり、バフォメットに聞いた。
「なあ、何を盗られたんだ?」
「…我は、聞いてもよく分からんかったが…宝玉と、呼ぶ物だそうじゃ」
「宝玉!?」
ブライトが驚愕した。
宝玉は、龍の生命にかかわる物ではないが、それでも無ければ水神としての役目が果たせなくなる。
宝玉を盗られた場所は別の土地だったが、ここまで移った事が分かり、レオナはこの地に訪れた。
「じゃがな、それは封印されていた」
宝玉の力が強く。初めはどうしようもなかったらしい。
調べる為にこの地にとどまろうとしていたが、まだ敵対心を持つ人と近いこの場所に長くはとどまれなかった。
「魔物と人が生きるようになって、ここの兵士が穏やかに変化した事は本当に助かった」
あの兵隊だろうと、殺しではなく追い払おうとしている。あからさまに違った。たった数年だが、魔物の中のふれあえる存在が、変えていたのかもしれない。
「そして、宝玉が眠る場所を何度も調べ、封印から解放する法をつくった」
あとは、実行するだけ。ではさっさと行動すればとブライトは思い、それについての問いを口にした。
「…たしかにそうじゃ、しかし、あと一つが足りない」
「一つ…?」
レオナがこくりと頷く。
「そう、我一人では力不足なのだ…頼む力を貸してくれ…男の力が必要なのじゃ」
自分を超えるほどの者の助力を得たくて、だから旅人を襲ったのか。これはブライトの推測だが、外れていはいない。
明るく笑って、ブライトは言った。
「なるほど…まあいいよ、彩宵って龍も何とかしたい」
レオナの顔が、ぱあっと明るくなった。
その後は、レオナの研究が記録された書物を読んでいた。書かれている事は非常に興味深い、興味深いのだが。
「…性に関する事が多くないか…」
さすがは魔物だと感嘆としてしまう。ちらりと様々な薬品が保存された棚をみる。
用途も不明で怪しいが、大方の予想があたりそうだ。
「なんじゃ、その目は」
レオナがこちらをじとりと睨む。
「いやー、なんでこう、性欲が高まる魔術とか媚薬とかそんなのばっかなんだ」
もちろん戦闘に関する記録もあるのだが。
「もちろん、我が選んだお兄様と来たるべき日の為に」
そう言ってブライトをちらりと見る。
「ふーん、お兄様になる人も大変だな、同情するよ」
レオナの視線に気づかず、ブライトが兄になる人を憐れむ。
余談だが、バフォメットの『兄』は『強大な力を持った彼女が頼りにでき思いきり甘えられる強くて優しい』が当てはまる。
ブライトは自覚なしだが、レオナを打ち負かし、ココアなどを持ってきて、困っている事を手伝う。少し違う所もあるが、ブライトは理想の兄に近い存在なのだ。
そんなブライトに、レオナはコーヒーを持ってきた。
「ほれ」
「んー」
本から目を離し、それを手に取る。口に近付けた様子を見て、レオナが期待に目を寄せる。しかし。
すんすん。とん。
コーヒーの匂いをかいだブライトが、テーブルに置いた。
「なぜじゃ!?」
「あー…やっぱいらないや」
「飲め」
「やだ」
「飲め」
「やだよ」
「飲まぬか」
「やだって」
「なぜじゃ」
「へんな匂いがした」
「…気のせいじゃ」
「なんで止まった」
「気のせいじゃ」
「そっか、けど、俺はいらないからな…飲ましてあげようかな」
椅子から立ち上がり、すたすた歩き、流しの前に立ち。
じゃー。
「な、なにするだー!」
「だから、飲ましてあげたんだよ」
「お、お主は…お主はー!!」
「俺で実験するな俺で、お兄様になる人にやれよ」
「…」
呆れた口調のブライトは本気で言っていた。その様子にレオナが唖然としていた。
レオナをみてブライトが口を開く。
「? なに」
「…なんでもない」
斜め上の発言からこれが演技なのか天然なのか計り知れない。こちらの反応を見て、楽しんでいる可能性もある。
そんなレオナを尻目にブライトがある事に気付いた。
「そろそろ夕食時だな」
小屋は洞窟の入り口とそう離れていない所にある。入口に差し込む光で大方の時刻が予想できた。
洞窟の色がしっかりあった所は、今では橙に染まっている。
レオナがはっとした。
まてよまてまて、あの時勝てば教えてやると言ったのだから、まだ謝罪はすんでいない。つまり、ここで夕食を作ろうが何の問題もない。
そう頭の中でよぎったレオナは、食事を作ると申し出た。
「別にいいけど…勝手に作っていいんなら作るけど」
「いや、考えてみればあの謝罪がいまだに終わっていない…あの話はお主が勝てば話す約束じゃったしな」
そこまでいうならと、ブライトはレオナに頼んだ。
「へんなものは入れるなよ」
「ウグ…」
しっかり釘をさして。
さて、レオナが食事を持ってきた。質素でもなく、豪勢でもない、普通の食事だった。
それでは味はと言うと、それなりにうまかった。
「…」
レオナの料理を口に運びながら、ブライトは何かを考えていた。
「どうした?」
それに気付いた声がブライトの鼓膜を優しく叩く。
「ああ…別にどうでもいいんだけど、魔物の料理も人間と違いがほとんどないんだなって」
「そりゃな、地域が違わなくては食文化も変化せんじゃろ」
レオナにもっともの言葉を言われ、苦笑する。
「…」
ふと、体の最奥が火照り出している事にレオナは気付いた。ブライトに気取られないように股をもじもじとする。
「ブライト、相談があるのじゃが」
「なんの?」
「いま我の体は魔力が空の状態そこでじゃ、今晩お主とかかわって精をくれぬか?」
「…えーと」
「ほら結局の所、封印を解くには精が必要なのじゃから」
歯切れの悪いブライトに慌ててレオナがひと押しした。
「え? そうなのか?」
男の力と言ってなぜ分からなかったのだろうか。その点がレオナにとって不可解だった。
「でもなぁ、そういうのはお兄様と決めた人と」
「いやいやじゃから…あぁもう!! だからお主が好きなのじゃ!」
何も気づいていないブライトにしびれを切らしたレオナが声を荒げていった。
「…」
ブライトが呆然としている。
レオナは自身の顔がかぁ…と赤くなる事を自覚した。
「つまり! お主はお兄様に相応しいのじゃ!」
「…ええとこんな事きくけど本当にごめんな、俺のどこが相応しいんだ?」
ブライトのその言葉に倒れたくなったレオナだった。
ブライトにこれまでの己の行動を言うが。
故意でなくさらに自分の否を認めている者を許し、さらに疲労がたまっている者に飲み物の一つをだす。つらい目にあっている者に対し、自分が手伝えることは手伝う。
「普通はしないのか?」
本気で驚いているブライトにレオナは唖然とした。いくら魔物と和解したと言っても数年、ここまで抵抗もなく接する者もそうそうにいない。
ふと、思い出す。ジパングに来た時は、大人でもブライトぐらいではなかっただろうか。ブライトの身長を見る。顔は青年や大人のそれなのに、160前後の身長はこの辺りの者ではあまりいない。
そして、ジパングでは魔物と共に歩く。
「…お主の国は、ジパングか?」
「いや、違うよ」
ではどこと問うレオナにブライトは言った。
「俺の国は、日本ってとこ」
「ニホン? 聞いた事ない国じゃな」
「まあ、当然だな…ここからじゃ…遠すぎる」
遠いのでこの辺りとは貿易も繋がりもないという事か、そう解釈したレオナは日本という国が気になった。
「ニホンはどういう国なのじゃ?」
「…うーん、色んな国の要素をとって、色々と中途半端で…色んな意味でいろいろとまあ凄い国…だなぁ」
「え?」
最後はよく聞こえなく聞き返すが、ブライトがなんでもない事と言ったので、気に掛けなくていいかと考えた。
ブライトが苦笑いで遠い目をしているのは気のせいだろうか
レオナが本題に戻る。
「まあニホンは置いておいて、お主はお兄様に相応しい」
「それは嬉しいけど、本当に俺でいいのか?」
「無論だ」
即答のレオナにブライトは嬉しくなった。
「…そっか」
レオナがはっとする。
「なぜ、ここにいるんだ」
レオナがしょげて俯いた。
「…友の無くし物が、ここにあるのじゃ」
とも…とブライトが心の中で呟く。
それを聞いてふと、無くし物であの反応は過剰ではないかとブライトは思った。普通のただの物ではないのだろうか。
レオナの口が開くのを待つ。
「昔…ジパングに来た事があった」
「へえ、そうなのか」
ブライトの興味と楽しそうな声に、レオナも笑う。
「ああ、そこである魔物と出会ったのじゃ」
「それが友?」
レオナが頷いた。
「名は彩宵(さいしょう)、ドラゴンじゃなくてええと…そう龍と呼ばれていた」
龍と呼ばれる魔物の彩宵は、母がジパングでは神として崇められていると誇らしげに語っていた事を、レオナは今でも鮮明に記憶として残っている。
ジパングの知識を得にレオナはジパングに訪れ、そこで彩宵と出会った。
バフォメットのレオナの力を認め、レオナも神とされる彩宵の力を認め、サバトに入るには無理だが、大人とは呼ばない見た目だった。しかし、それでも二人は仲が良かった。
幼い頃は人の子と対等のように接して、遊んでいたのだという。今ではそれがそろそろ難しくなって遊べなくなったと言っていた事を思い出す。
そろそろ自国に帰らなければならない時になった。
―遊びにいくよ
そう言ってくれた彩宵に地図でここと教え、レオナは帰っていった。
「その後、この大陸に来てくれたのじゃが…ジパングの魔物は人と歩んでいたじゃろ?」
そう言われて、ブライトは嫌な予感がした。
「あの時まだ、多くの人間が魔物に敵意を持っていた」
それでも、息絶える事がなかったのは、龍としての能力の高さがあったからだろう。
ブライトの予感が確信に変わる。
「道が分からんと、尋ねたそうじゃ」
「っ!」
言葉では伝えていた。しかし、実際に体験しなければ、分かったつもりになるだけだ。
彩宵に得物をふるった相手から逃走は出来た。しかし。
「ある物を、盗られたと」
ブライトの言葉に肯定の言葉が聞こえた。
「ああ」
納得したブライトは、ある事が気になり、バフォメットに聞いた。
「なあ、何を盗られたんだ?」
「…我は、聞いてもよく分からんかったが…宝玉と、呼ぶ物だそうじゃ」
「宝玉!?」
ブライトが驚愕した。
宝玉は、龍の生命にかかわる物ではないが、それでも無ければ水神としての役目が果たせなくなる。
宝玉を盗られた場所は別の土地だったが、ここまで移った事が分かり、レオナはこの地に訪れた。
「じゃがな、それは封印されていた」
宝玉の力が強く。初めはどうしようもなかったらしい。
調べる為にこの地にとどまろうとしていたが、まだ敵対心を持つ人と近いこの場所に長くはとどまれなかった。
「魔物と人が生きるようになって、ここの兵士が穏やかに変化した事は本当に助かった」
あの兵隊だろうと、殺しではなく追い払おうとしている。あからさまに違った。たった数年だが、魔物の中のふれあえる存在が、変えていたのかもしれない。
「そして、宝玉が眠る場所を何度も調べ、封印から解放する法をつくった」
あとは、実行するだけ。ではさっさと行動すればとブライトは思い、それについての問いを口にした。
「…たしかにそうじゃ、しかし、あと一つが足りない」
「一つ…?」
レオナがこくりと頷く。
「そう、我一人では力不足なのだ…頼む力を貸してくれ…男の力が必要なのじゃ」
自分を超えるほどの者の助力を得たくて、だから旅人を襲ったのか。これはブライトの推測だが、外れていはいない。
明るく笑って、ブライトは言った。
「なるほど…まあいいよ、彩宵って龍も何とかしたい」
レオナの顔が、ぱあっと明るくなった。
その後は、レオナの研究が記録された書物を読んでいた。書かれている事は非常に興味深い、興味深いのだが。
「…性に関する事が多くないか…」
さすがは魔物だと感嘆としてしまう。ちらりと様々な薬品が保存された棚をみる。
用途も不明で怪しいが、大方の予想があたりそうだ。
「なんじゃ、その目は」
レオナがこちらをじとりと睨む。
「いやー、なんでこう、性欲が高まる魔術とか媚薬とかそんなのばっかなんだ」
もちろん戦闘に関する記録もあるのだが。
「もちろん、我が選んだお兄様と来たるべき日の為に」
そう言ってブライトをちらりと見る。
「ふーん、お兄様になる人も大変だな、同情するよ」
レオナの視線に気づかず、ブライトが兄になる人を憐れむ。
余談だが、バフォメットの『兄』は『強大な力を持った彼女が頼りにでき思いきり甘えられる強くて優しい』が当てはまる。
ブライトは自覚なしだが、レオナを打ち負かし、ココアなどを持ってきて、困っている事を手伝う。少し違う所もあるが、ブライトは理想の兄に近い存在なのだ。
そんなブライトに、レオナはコーヒーを持ってきた。
「ほれ」
「んー」
本から目を離し、それを手に取る。口に近付けた様子を見て、レオナが期待に目を寄せる。しかし。
すんすん。とん。
コーヒーの匂いをかいだブライトが、テーブルに置いた。
「なぜじゃ!?」
「あー…やっぱいらないや」
「飲め」
「やだ」
「飲め」
「やだよ」
「飲まぬか」
「やだって」
「なぜじゃ」
「へんな匂いがした」
「…気のせいじゃ」
「なんで止まった」
「気のせいじゃ」
「そっか、けど、俺はいらないからな…飲ましてあげようかな」
椅子から立ち上がり、すたすた歩き、流しの前に立ち。
じゃー。
「な、なにするだー!」
「だから、飲ましてあげたんだよ」
「お、お主は…お主はー!!」
「俺で実験するな俺で、お兄様になる人にやれよ」
「…」
呆れた口調のブライトは本気で言っていた。その様子にレオナが唖然としていた。
レオナをみてブライトが口を開く。
「? なに」
「…なんでもない」
斜め上の発言からこれが演技なのか天然なのか計り知れない。こちらの反応を見て、楽しんでいる可能性もある。
そんなレオナを尻目にブライトがある事に気付いた。
「そろそろ夕食時だな」
小屋は洞窟の入り口とそう離れていない所にある。入口に差し込む光で大方の時刻が予想できた。
洞窟の色がしっかりあった所は、今では橙に染まっている。
レオナがはっとした。
まてよまてまて、あの時勝てば教えてやると言ったのだから、まだ謝罪はすんでいない。つまり、ここで夕食を作ろうが何の問題もない。
そう頭の中でよぎったレオナは、食事を作ると申し出た。
「別にいいけど…勝手に作っていいんなら作るけど」
「いや、考えてみればあの謝罪がいまだに終わっていない…あの話はお主が勝てば話す約束じゃったしな」
そこまでいうならと、ブライトはレオナに頼んだ。
「へんなものは入れるなよ」
「ウグ…」
しっかり釘をさして。
さて、レオナが食事を持ってきた。質素でもなく、豪勢でもない、普通の食事だった。
それでは味はと言うと、それなりにうまかった。
「…」
レオナの料理を口に運びながら、ブライトは何かを考えていた。
「どうした?」
それに気付いた声がブライトの鼓膜を優しく叩く。
「ああ…別にどうでもいいんだけど、魔物の料理も人間と違いがほとんどないんだなって」
「そりゃな、地域が違わなくては食文化も変化せんじゃろ」
レオナにもっともの言葉を言われ、苦笑する。
「…」
ふと、体の最奥が火照り出している事にレオナは気付いた。ブライトに気取られないように股をもじもじとする。
「ブライト、相談があるのじゃが」
「なんの?」
「いま我の体は魔力が空の状態そこでじゃ、今晩お主とかかわって精をくれぬか?」
「…えーと」
「ほら結局の所、封印を解くには精が必要なのじゃから」
歯切れの悪いブライトに慌ててレオナがひと押しした。
「え? そうなのか?」
男の力と言ってなぜ分からなかったのだろうか。その点がレオナにとって不可解だった。
「でもなぁ、そういうのはお兄様と決めた人と」
「いやいやじゃから…あぁもう!! だからお主が好きなのじゃ!」
何も気づいていないブライトにしびれを切らしたレオナが声を荒げていった。
「…」
ブライトが呆然としている。
レオナは自身の顔がかぁ…と赤くなる事を自覚した。
「つまり! お主はお兄様に相応しいのじゃ!」
「…ええとこんな事きくけど本当にごめんな、俺のどこが相応しいんだ?」
ブライトのその言葉に倒れたくなったレオナだった。
ブライトにこれまでの己の行動を言うが。
故意でなくさらに自分の否を認めている者を許し、さらに疲労がたまっている者に飲み物の一つをだす。つらい目にあっている者に対し、自分が手伝えることは手伝う。
「普通はしないのか?」
本気で驚いているブライトにレオナは唖然とした。いくら魔物と和解したと言っても数年、ここまで抵抗もなく接する者もそうそうにいない。
ふと、思い出す。ジパングに来た時は、大人でもブライトぐらいではなかっただろうか。ブライトの身長を見る。顔は青年や大人のそれなのに、160前後の身長はこの辺りの者ではあまりいない。
そして、ジパングでは魔物と共に歩く。
「…お主の国は、ジパングか?」
「いや、違うよ」
ではどこと問うレオナにブライトは言った。
「俺の国は、日本ってとこ」
「ニホン? 聞いた事ない国じゃな」
「まあ、当然だな…ここからじゃ…遠すぎる」
遠いのでこの辺りとは貿易も繋がりもないという事か、そう解釈したレオナは日本という国が気になった。
「ニホンはどういう国なのじゃ?」
「…うーん、色んな国の要素をとって、色々と中途半端で…色んな意味でいろいろとまあ凄い国…だなぁ」
「え?」
最後はよく聞こえなく聞き返すが、ブライトがなんでもない事と言ったので、気に掛けなくていいかと考えた。
ブライトが苦笑いで遠い目をしているのは気のせいだろうか
レオナが本題に戻る。
「まあニホンは置いておいて、お主はお兄様に相応しい」
「それは嬉しいけど、本当に俺でいいのか?」
「無論だ」
即答のレオナにブライトは嬉しくなった。
「…そっか」
12/02/27 23:10更新 / ばめごも
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