7単位 『リュウと休日』
気づけば夏。
魔界にも季節という概念があるらしく、今は『夏休み』ということになっている。
まぁ俺の場合、最初の1週間は寝て過ごしたわけだが……。
いや、ただグータラしてたってわけじゃないぞ?
あのときの、合同演習での怪我が完治するのに数週間かかったというだけの話だ。
「(´Д`)y―〜〜〜」
弁当争奪戦のときもそうだったけど、今回はレイラだけじゃなくコヨミさんにまで迷惑をかけてしまった。
今度、きちんと埋め合わせをする必要があるな。
2人には感謝の一言に尽きる。
「……1日1本、か」
あぁこれ、あの2人から絶対に守れと言われた決まり事。
コヨミさんは吸っても良いが程々に。
レイラは絶対に吸うなと言うものの、自身も吸っているためあまり強くは言わなくなった。
そして2人の議論の結果……1日1本までということになった。
まぁ……うん、心配してくれるのは嬉しい。
嬉しいんだけど、さすがに少ないな〜…な〜んて思うときもある。
しか〜し! おれも男だ。
守れと言われた以上、約束を反故にするわけにはいかない。
ここは、グッと我慢だ!
「あ、そういえば課題もあったなぁ」
課題というのは長期休暇向けの、言うなれば宿題のようなものだ。
色々といい加減なこの大学も、こういうところだけはちゃんとしている。
……いや、そこはちゃんとしなくてイイだろ。
面倒くさいことこの上ない。
ちなみにその課題というのは、
『異性の体についてレポートすること。内容は概ね自由で可』
やっぱりいい加減だった。
「主様、お体の具合はいかがですか?」
「はい、もう大丈夫です。心配かけてすみません」
「そんな…小生は主様が望まれるのならば、どのようなことでも厭わぬ所存です」
「ど、どのようなことでも?」
「はい。この身を捧げろと仰せならば、小生は喜んで主様の女となりましょう」
「ぶっ!?」
「コヨミ…程々にしておけ」
ロイPT専用宿舎にて。
備え付けの豪華なソファには俺の隣にコヨミさん、正面にはレイラが座っている。
長期休暇に入ってからは、この2人と過ごす時間が特に多くなった。
「ふむ、そろそろ昼食の時間だ」
「あれ、もうそんな時間?」
「食事の準備でしたら、小生にお任せを」
「ん〜…いつもコヨミさんにばかり作らせてるし、今日は外食にでもしようか」
「はい、主様の仰せのままに」
「む…行き先は人間界か?」
「うん、そのつもりだけど?」
いつも冷静なレイラが少しソワソワしている。
大学には人間界へと繋がる時空ゲートが存在しており、休日には向こうの世界へ遊びに行く生徒が後を絶たない。
そのまま人間界から帰ってこない者も多いとか。
「ふふっ♪ レイラは本当に人間界が好きですね?」
「す、好きというわけではない! ただ、その……そう! 興味があるだけだ!」
「それ、好きとあんまり変わんないと思うけど?」
日常生活を共に過ごす中で、2人の普段見えないような姿を垣間見る機会も増えた。
例えば、
「と、とにかく! 行くなら早く準備をしろ! 時間が勿体無いだろう!」
「夏休みなんだし、何もそんなに慌てなくても……」
「主様? レイラは一刻も早く、趣味であるショッピングを楽しみたいのですよ」
「んな!?」
「へー? レイラって買い物が好きだったんだ?」
「はい♪ 小生も昔は良く、朝から晩まで付き合わされたものです」
「コ、コヨミ! それは言わないと約束したはず……」
「ですがレイラ? これは遅かれ早かれ明確になることです。それに……小生はそんなレイラのことが、とても愛おしいです♪」
「む、むぅ……///」
と、このようにレイラの少女チックな一面がポロリと発覚することも。
この他にも意外だったことといえば、レイラが家事をそつなくこなせるということ。
全然そんなイメージがなかった分、彼女への感心は非常に大きい。
「コヨミ、外出するのにこの服は、その…少し派手過ぎないか?」
「そんなことありません。レイラはいつも暗い色のものばかり身に付けていますから、今日くらいは女の子らしい格好を……」
「なっ!? 私にスカートを穿けというのか!?」
「きっと似合いますよ♪ ショートデムニだけでは男の子みたいですよ?」
「私はこれが気に入っているのだ! まったく…誰がそんなスースーするようなものを……」
「はい、では脱ぎ脱ぎしましょうね〜♪」
「人の話を聞けーーー!?」
こうして見ると、まるで仲良し姉妹のようだ。
さしずめコヨミさんがお姉さんで、レイラが妹ってところかな?
「レイラ? 早く脱がないと、大好きなショッピングに行けませんよ?」
「は、離せコヨミ! 私は、絶対に…そんな女々しいものなど、穿きたくは……!」
見ての通り、コヨミさんは普段の献身的な性格とは裏腹に、かなり強引な一面がある。
以前背中を流してほしいと言われ、もちろん断ったのだが……
『そうですか、それは残念です』
『あの、コヨミさん? 普通こういうことは異性に頼まないもんですよ?』
『致し方ありません。こうなってしまっては、レイラには小生の慰み者になっていただくしか……』
『タオルだけは巻いてください! それだけは譲れません!』
『ふふふ♪ 始めからそのつもりですよ? 主様♥』
強引というか……腹黒い?
いやいやいやいや!
コヨミさんはそんな影のある人じゃない!
俺はそう信じてる!
「こ、こら…コヨミ! 下着まで脱げてしま……」
ズルッ♪
「「あ」」俺&レイラ
「あらあら」
2度目だった。
レイラの引き締まったウエストと美しいヒップを拝んだのは。
「み…み………見るなああああああああああああああああああ!!!???」
レイラの投げつけたコヨミさんの長刀が、俺の頬を掠めた。
ロイは精神に致命的なダメージを受けた!
人間界、大都市クーゼンベルクの商業区にて。
騒ぎにならないよう、レイラとコヨミさんは角や翼を魔力で隠し人間に擬態している。
これなら滅多なことでは見抜かれないだろう。
というか人間の姿になった2人は……どうしてか、非常にレベルが高い。
もちろん普段から魅力的な2人ではあるんだけど、こう…新鮮というか何と言うか。
おかげで周囲の男達の視線を独占している(俺に対しては憎悪に近いもの)。
「いや〜、ここはいつ来ても活気があるな〜」
「はい。これだけ人の流れが激しいと、はぐれてしまわないか心配です」
「あ、それじゃぁコヨミさん」
「はい……え?」
「これなら、はぐれずに済みますよね」
町の活気に気圧されているコヨミさんの手をそっと握る。
「……っ…///」
「よし、どこに行こうかな……って、レイラはどこ行った?」
いつの間にか姿を消していた。
まぁ、レイラなら大丈夫か。
いつも時間を見つけては人間界に遊びに行ってるみたいだし、まず迷うことはないだろう。
「申し訳ありません! 小生が目を離したばかりに……」
「いや、いいですよ。レイラも1人でいた方が楽でしょうし」
にしても、ホントにこっちの世界が好きだなレイラは。
まったく、普段の彼女からは想像もつかない。
買い物が好きなんて、女の子らしいところもあるんだな〜……なんて言ったら消し炭確定だ。
「あぁ……主様と、2人きり……///」
「ん、コヨミさん? どうかしました?」
「い、いえ! なんでもありません! それよりも主様、今後のご予定は?」
「あ〜それが、特に何も決めてないんですよ」
「では、のんびりと町を見て回るのはいかがでしょう?」
「えぇ、それがいいですね」
お互いの手をギュッと握りしめたまま、俺達は人々で溢れかえる町の中心部へと足を進める。
まぁでもちょうど良い機会だ、ここでコヨミさんとの親睦を深めておこう。
いやもちろん、下心のない健全な意味で……ね?
「その服、とても似合ってますよ」
「あ…主様に褒めていただけるなんて…光栄の、至りです……///」
そんな甘酸っぱいやりとりが続く正午過ぎ。
ワンピースの上からカーディガンを羽織った、コヨミさんらしい落ち着いた服装を褒める。
あぁちなみに、レイラは結局スカートを穿きませんでした。
……見てみたかったが。
「コヨミさん、何か見たいものとかありますか?」
「小生はジパング地方の出身ですので、異国のもの全てが珍しく見えます」
「あぁ、そうでしたね」
「はい。ですから、どうかお気使いなく。小生は、主様と供にいられるだけで……ではなく! 見ているだけで十分に楽しいですから!」
「そ、そうですか?」
「は、はい! そうです!」
大都市の名は伊達ではなく、商業区にはありとあらゆる出店が立ち並んでいる。
雑貨店や装飾品店、武器商に食事処とさすがに幅広い。
昼食をまだ済ませていなかった俺達は、先程出店で買った『ドグナケルブ』という異国料理を 頬張りながら歩いている。
自家製ソースに一晩漬けた肉や野菜を、パン生地を薄くしたものに挟み込んだ手軽なものだが、これがまた…なんとも食欲をそそる。
「見るだけで楽しいって、正直良くわからなかったけど、なんとなくその気持ちがわかった気がします」
「ふふっ、それは良かったです……あ、主様」
そう言うと、コヨミさんは俺の頬を下から上に指で撫でるような行動をとった。
「ぇ……ぇえ!?」
「ソースがお顔に付いていましたよ? ふふふ…案外子供っぽいところもあるんですね♪ んっ」
「あ…あ、ありがとう、ございます」
指ですくったソースを舌でペロリと舐めとる仕草に、俺は不覚にもドキリとしてしまった。
「さぁ主様! 小生達の休日は、まだまだこれからですよ♪」
「あ…はい! そうですね!」
コヨミさんの手を引いていた俺が、いつの間にか…コヨミさんに手を引かれていた。
〜おまけ〜
「コヨミさん。これ、俺からのプレゼントです」
「え!? そ、そんな…受け取れません!」
「俺が勝手にやったことですから! さぁ、コヨミさん」
「主様……それは、ご命令ですか?」
「いいえ? ただの『お願い』です」
「……っ…」
コヨミさんは恐る恐る俺から紙袋を受け取る。
「……主様は…ずるいです……///」
「こうでも言わないと、受け取ってくれないと思って。すみません」
「……いえ」
受け取った袋をギュッと抱きしめるコヨミさん。
「大切にします……主様♪」
「はい!」
魔界にも季節という概念があるらしく、今は『夏休み』ということになっている。
まぁ俺の場合、最初の1週間は寝て過ごしたわけだが……。
いや、ただグータラしてたってわけじゃないぞ?
あのときの、合同演習での怪我が完治するのに数週間かかったというだけの話だ。
「(´Д`)y―〜〜〜」
弁当争奪戦のときもそうだったけど、今回はレイラだけじゃなくコヨミさんにまで迷惑をかけてしまった。
今度、きちんと埋め合わせをする必要があるな。
2人には感謝の一言に尽きる。
「……1日1本、か」
あぁこれ、あの2人から絶対に守れと言われた決まり事。
コヨミさんは吸っても良いが程々に。
レイラは絶対に吸うなと言うものの、自身も吸っているためあまり強くは言わなくなった。
そして2人の議論の結果……1日1本までということになった。
まぁ……うん、心配してくれるのは嬉しい。
嬉しいんだけど、さすがに少ないな〜…な〜んて思うときもある。
しか〜し! おれも男だ。
守れと言われた以上、約束を反故にするわけにはいかない。
ここは、グッと我慢だ!
「あ、そういえば課題もあったなぁ」
課題というのは長期休暇向けの、言うなれば宿題のようなものだ。
色々といい加減なこの大学も、こういうところだけはちゃんとしている。
……いや、そこはちゃんとしなくてイイだろ。
面倒くさいことこの上ない。
ちなみにその課題というのは、
『異性の体についてレポートすること。内容は概ね自由で可』
やっぱりいい加減だった。
「主様、お体の具合はいかがですか?」
「はい、もう大丈夫です。心配かけてすみません」
「そんな…小生は主様が望まれるのならば、どのようなことでも厭わぬ所存です」
「ど、どのようなことでも?」
「はい。この身を捧げろと仰せならば、小生は喜んで主様の女となりましょう」
「ぶっ!?」
「コヨミ…程々にしておけ」
ロイPT専用宿舎にて。
備え付けの豪華なソファには俺の隣にコヨミさん、正面にはレイラが座っている。
長期休暇に入ってからは、この2人と過ごす時間が特に多くなった。
「ふむ、そろそろ昼食の時間だ」
「あれ、もうそんな時間?」
「食事の準備でしたら、小生にお任せを」
「ん〜…いつもコヨミさんにばかり作らせてるし、今日は外食にでもしようか」
「はい、主様の仰せのままに」
「む…行き先は人間界か?」
「うん、そのつもりだけど?」
いつも冷静なレイラが少しソワソワしている。
大学には人間界へと繋がる時空ゲートが存在しており、休日には向こうの世界へ遊びに行く生徒が後を絶たない。
そのまま人間界から帰ってこない者も多いとか。
「ふふっ♪ レイラは本当に人間界が好きですね?」
「す、好きというわけではない! ただ、その……そう! 興味があるだけだ!」
「それ、好きとあんまり変わんないと思うけど?」
日常生活を共に過ごす中で、2人の普段見えないような姿を垣間見る機会も増えた。
例えば、
「と、とにかく! 行くなら早く準備をしろ! 時間が勿体無いだろう!」
「夏休みなんだし、何もそんなに慌てなくても……」
「主様? レイラは一刻も早く、趣味であるショッピングを楽しみたいのですよ」
「んな!?」
「へー? レイラって買い物が好きだったんだ?」
「はい♪ 小生も昔は良く、朝から晩まで付き合わされたものです」
「コ、コヨミ! それは言わないと約束したはず……」
「ですがレイラ? これは遅かれ早かれ明確になることです。それに……小生はそんなレイラのことが、とても愛おしいです♪」
「む、むぅ……///」
と、このようにレイラの少女チックな一面がポロリと発覚することも。
この他にも意外だったことといえば、レイラが家事をそつなくこなせるということ。
全然そんなイメージがなかった分、彼女への感心は非常に大きい。
「コヨミ、外出するのにこの服は、その…少し派手過ぎないか?」
「そんなことありません。レイラはいつも暗い色のものばかり身に付けていますから、今日くらいは女の子らしい格好を……」
「なっ!? 私にスカートを穿けというのか!?」
「きっと似合いますよ♪ ショートデムニだけでは男の子みたいですよ?」
「私はこれが気に入っているのだ! まったく…誰がそんなスースーするようなものを……」
「はい、では脱ぎ脱ぎしましょうね〜♪」
「人の話を聞けーーー!?」
こうして見ると、まるで仲良し姉妹のようだ。
さしずめコヨミさんがお姉さんで、レイラが妹ってところかな?
「レイラ? 早く脱がないと、大好きなショッピングに行けませんよ?」
「は、離せコヨミ! 私は、絶対に…そんな女々しいものなど、穿きたくは……!」
見ての通り、コヨミさんは普段の献身的な性格とは裏腹に、かなり強引な一面がある。
以前背中を流してほしいと言われ、もちろん断ったのだが……
『そうですか、それは残念です』
『あの、コヨミさん? 普通こういうことは異性に頼まないもんですよ?』
『致し方ありません。こうなってしまっては、レイラには小生の慰み者になっていただくしか……』
『タオルだけは巻いてください! それだけは譲れません!』
『ふふふ♪ 始めからそのつもりですよ? 主様♥』
強引というか……腹黒い?
いやいやいやいや!
コヨミさんはそんな影のある人じゃない!
俺はそう信じてる!
「こ、こら…コヨミ! 下着まで脱げてしま……」
ズルッ♪
「「あ」」俺&レイラ
「あらあら」
2度目だった。
レイラの引き締まったウエストと美しいヒップを拝んだのは。
「み…み………見るなああああああああああああああああああ!!!???」
レイラの投げつけたコヨミさんの長刀が、俺の頬を掠めた。
ロイは精神に致命的なダメージを受けた!
人間界、大都市クーゼンベルクの商業区にて。
騒ぎにならないよう、レイラとコヨミさんは角や翼を魔力で隠し人間に擬態している。
これなら滅多なことでは見抜かれないだろう。
というか人間の姿になった2人は……どうしてか、非常にレベルが高い。
もちろん普段から魅力的な2人ではあるんだけど、こう…新鮮というか何と言うか。
おかげで周囲の男達の視線を独占している(俺に対しては憎悪に近いもの)。
「いや〜、ここはいつ来ても活気があるな〜」
「はい。これだけ人の流れが激しいと、はぐれてしまわないか心配です」
「あ、それじゃぁコヨミさん」
「はい……え?」
「これなら、はぐれずに済みますよね」
町の活気に気圧されているコヨミさんの手をそっと握る。
「……っ…///」
「よし、どこに行こうかな……って、レイラはどこ行った?」
いつの間にか姿を消していた。
まぁ、レイラなら大丈夫か。
いつも時間を見つけては人間界に遊びに行ってるみたいだし、まず迷うことはないだろう。
「申し訳ありません! 小生が目を離したばかりに……」
「いや、いいですよ。レイラも1人でいた方が楽でしょうし」
にしても、ホントにこっちの世界が好きだなレイラは。
まったく、普段の彼女からは想像もつかない。
買い物が好きなんて、女の子らしいところもあるんだな〜……なんて言ったら消し炭確定だ。
「あぁ……主様と、2人きり……///」
「ん、コヨミさん? どうかしました?」
「い、いえ! なんでもありません! それよりも主様、今後のご予定は?」
「あ〜それが、特に何も決めてないんですよ」
「では、のんびりと町を見て回るのはいかがでしょう?」
「えぇ、それがいいですね」
お互いの手をギュッと握りしめたまま、俺達は人々で溢れかえる町の中心部へと足を進める。
まぁでもちょうど良い機会だ、ここでコヨミさんとの親睦を深めておこう。
いやもちろん、下心のない健全な意味で……ね?
「その服、とても似合ってますよ」
「あ…主様に褒めていただけるなんて…光栄の、至りです……///」
そんな甘酸っぱいやりとりが続く正午過ぎ。
ワンピースの上からカーディガンを羽織った、コヨミさんらしい落ち着いた服装を褒める。
あぁちなみに、レイラは結局スカートを穿きませんでした。
……見てみたかったが。
「コヨミさん、何か見たいものとかありますか?」
「小生はジパング地方の出身ですので、異国のもの全てが珍しく見えます」
「あぁ、そうでしたね」
「はい。ですから、どうかお気使いなく。小生は、主様と供にいられるだけで……ではなく! 見ているだけで十分に楽しいですから!」
「そ、そうですか?」
「は、はい! そうです!」
大都市の名は伊達ではなく、商業区にはありとあらゆる出店が立ち並んでいる。
雑貨店や装飾品店、武器商に食事処とさすがに幅広い。
昼食をまだ済ませていなかった俺達は、先程出店で買った『ドグナケルブ』という異国料理を 頬張りながら歩いている。
自家製ソースに一晩漬けた肉や野菜を、パン生地を薄くしたものに挟み込んだ手軽なものだが、これがまた…なんとも食欲をそそる。
「見るだけで楽しいって、正直良くわからなかったけど、なんとなくその気持ちがわかった気がします」
「ふふっ、それは良かったです……あ、主様」
そう言うと、コヨミさんは俺の頬を下から上に指で撫でるような行動をとった。
「ぇ……ぇえ!?」
「ソースがお顔に付いていましたよ? ふふふ…案外子供っぽいところもあるんですね♪ んっ」
「あ…あ、ありがとう、ございます」
指ですくったソースを舌でペロリと舐めとる仕草に、俺は不覚にもドキリとしてしまった。
「さぁ主様! 小生達の休日は、まだまだこれからですよ♪」
「あ…はい! そうですね!」
コヨミさんの手を引いていた俺が、いつの間にか…コヨミさんに手を引かれていた。
〜おまけ〜
「コヨミさん。これ、俺からのプレゼントです」
「え!? そ、そんな…受け取れません!」
「俺が勝手にやったことですから! さぁ、コヨミさん」
「主様……それは、ご命令ですか?」
「いいえ? ただの『お願い』です」
「……っ…」
コヨミさんは恐る恐る俺から紙袋を受け取る。
「……主様は…ずるいです……///」
「こうでも言わないと、受け取ってくれないと思って。すみません」
「……いえ」
受け取った袋をギュッと抱きしめるコヨミさん。
「大切にします……主様♪」
「はい!」
12/02/12 12:14更新 / HERO
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