3章 『ダブルメロンな奴ら』
……フニッ
「っ!!」
「ご、ごめん! 触るつもりは……」
「わ、わかっている! 早く、測れ……///」
「あ、あぁ」
フレンがエルザのバストを計測中、誤って胸を触ってしまった様子。
もちろんエルザは上半身裸。
いや〜2人とも若いね〜w ←誰?
「……よし、終わった」
「ご苦労…フレン、服を」
「あぁ、はい」
大きく張りのある胸を片腕で隠しながら、エルザはフレンから服を受け取る。
「それで、結果は?」
「えっと、トップが87,5のアンダーが65だから…Fかな」
「ふむ…まだ成長しているな」
「え?」
そんな2人を見て奴らが便乗する。
「フレンよ! ワシのバストを測る許可を出すのじゃ!」
「ティータの愛くるしいお胸をフレンさんに見せてあげます」
「フ、フレン? 嫌じゃなかったら、その…アタシも……」
「………(クイクイ)」
「何人か測る必要のない奴がいるけど、まぁいいか」
フレン君も男の子。
困った顔して案外満更でもないご様子。
結果
エルザ→F
メイ→→C
フィロ→B
アイリ&ティータ→AAA
「「一括りにされた!?」」
「これを〜こうして〜……は〜い完成〜〜♪」
「さ、さすがに早いですね」
「お客様が多い日は〜同時に複数のメニューをこなさないといけないでしょ〜? だから〜、 少しでも早く作れるように〜試行錯誤するのモ〜料理人の務めなのよ〜?」
「なるほど、勉強になります」
バイト先にて。
今日はレティを除く全ての厨房組が集まっている。
人数的にも余裕があるので、今はイサラさんに『効率の良い調理法』を教わっている。
「仕込んだストックをたくさん使う料理なら楽でイイんですけどね」
「だ〜め! そんな事したら〜安っぽい料理ば〜っかりになっちゃうでしょ〜?」
「まぁ、確かに」
「多少面倒でモ〜、誠心誠意込めて〜丁寧に料理するように〜! フレン君、わかった〜?」
「肝に銘じます」
「うん、よろしい〜♪」
終始ローテンポな口調で俺に教授するイサラさん。
「また教えてほしいことがあったら〜、遠慮なくお姉ちゃんに聞いてね〜♪」
「ありがとうございます、お姉ちゃ…じゃなくて、イサラさん!」
「ふふふ〜♪」
お姉ちゃんお姉ちゃん言うので、なんか俺もうっかり口を滑らせてしまう。
刷り込みというのだろうか、そうやって少しずつ俺を洗脳していく気なのか?
「ふ〜んふ〜んふふ〜んっと〜♪」
「………」
考え過ぎか。
この人に限ってそんな腹黒い事はしないだろう。
ホルスタウロスという種族もそれを物語っている。
「さて、俺も仕事しないと」
ホールでアイリが奮闘する声を聞きながら作業に取り掛かる俺だった。
閉店間際。
客足も減ったので明日の仕込みを済ませようと思っていたところ、
「……ぃつっ!?」
包丁で指を切ってしまった。
「いてて…ちょっと深いな、これ」
気を抜いてた…しっかりしろ俺。
チーフなら救急用品の場所を知ってるだろうか?
「フレンく〜ん? どうしたの〜?」
「あぁいえ、ちょっと指を……」
「あ〜! たいへ〜ん!?」
「え?」
血が流れ出る指先を見たイサラさんは急に俺の手首を掴み、
「あ〜〜〜ん♪」
パクリッ!と指を咥えられた。
「え、ちょ…何を!?」
「ん〜? ふぁ〜に〜?」
口内で指をペロペロと舐め回すイサラさん。
なんか、ザラザラしてて気持ちイ……じゃなくて!
「だ、だめですよイサラさん!」
「ん〜? ふぉ〜ひて〜?」
「いや、どうしてって言われても……」
どう考えてもバイト仲間のすることじゃないと思うわけで。
「あらあら♪ イサラさんったら積極的♪」(妖狐スミレ)
「「いいな〜〜〜」」(双子インプ)
「……チッ」(若干羨ましそうなリザードマン)
あ〜ほら言わんこっちゃない!
羨ましそうな声を出す双子とスミレさんは置いといて、レオナさんには舌打ちされてしまった。
「んむんむ…ちゅる♪」
「………;」
舐めては吸い舐めては吸いの繰り返し。
それに…腕が完全にイサラさんのJカップ級の胸に当たってる。
いや…メロンカップ級?
「ちゅ〜〜〜…ぱぁ♪」
ようやく満足(?)したのか、ちゅぽん!とイイ音をたてて指を解放する。
「フレン君大丈夫〜? モ〜痛くない〜?」
「あ、はい…おかげ様で」
「良かった〜♪」
状況整理に必死で痛みを感じるどころではなかっただけだが。
「待っててね〜、いま救急箱持ってくるから〜」
「あ、ありがとうございます」
豊満な胸をタユンタユンと揺らしながら、イサラさんが厨房から出ていく。
と、同時にメオ(ゴブリン)が声を掛けてきた。
「おいフレン! この色男〜!!」
「は? なにが?」
「とぼけんなって! で…今の気持ちは? なーなー教えろって!!」
「いや、だからなにがさ?」
メオが何を言っているのか理解できない。
「お前…本当にわかってないのか!?」
「???」
頭から?マークが外れない。
まぁ指をペロペロされて悪い気はしなかったけど……。
「あのなぁ…イサラはお前に求愛してたんだぞ?」
「……は?」
さっきのが求愛なのか!?
「いや〜イサラってけっこう大胆だよなー! 見てるオレ達が恥ずかしかったっつーの!」
「求愛…QI?」
「気付かなかったのか? あいつ胸、お前に押し付けてただろ?」
「……あ」
確かに…腕にだけど。
「メオさん。そう決め付けるには、まだ早いんじゃないかしら?」
「え、なんでだよ?」
「あいつは新入りの指を舐めていただけかも知れんぞ?」
「偶然押し付ける形になったってことか?」
「「きっとそうだよ〜〜!」」
俺の目の前で魔物会議が始まってしまった。
もし本当に求愛(プロポーズ)だとしたら…俺は一体どうすればイイのだろうか。
「フレンく〜んお待たせ〜…って、みんな集まってどうしたの〜?」
「お、イサラ! なー、お前もしかしてフレンに…もがっ!?」
メオがレオナさんに口を塞がれる。
「イサラ、早く新入りの治療をしてやれ」
「? わかった〜」
俺の指を洗浄(さっきのペロペロ)、消毒、バンソコーとかいうやつで手際良く処置していく。
「は〜い、終わったよ〜」
「どうもすいません…余計な手間を掛けます」
「気にしないでいいのよ〜♪」
いつも通りに接してくるイサラさん。
本当に求愛したのなら、こんなに態度が変わらないのもおかしいと思う。
そんな事を考えていると、
「はーい! みんなお疲れ様ーー!」
チーフ(アルプ)が乱入してきた。
この人が来るということは閉店の合図ということか。
「ねぇねぇ♪ みんなで何の話してたの〜?」
「「「「「なんでもありませ〜ん!!!」」」」」
「ええ!?」
この人に話すとまたややこしくなりそうだから賢明だと思う。
スタッフルームにて。
例によって双子インプとゴブリン組はさっさと帰ってしまった。
「おい新入り」
「あ、はい?」
着替えを済ませ、チーフからの差し入れ『スペルマンD』を渋い顔をして飲んでいる俺にレオナさんが声を掛けてきた。
「先ほどのことだが、アレは自分で始末をつけろ」
「始末…ですか」
「イサラがもし新入りに求愛したというのなら、我々が首を突っ込むことではないからな」
「……わかりました。なんとか確認してみます」
「一緒に帰りながら話を聞けば良いんじゃないかしら? 私がセッティングしてあげるわよ?」
「ありがとうございます、スミレさん」
「い〜え♪ でも…貸し1つ、ね♪」
「……はい」
妖狐に貸し1つか……後が怖いな。
一緒に帰りませんか?とはさすがに言えないから、ここはスミレさんに頼るしかないんだけど。
「慎重に聞き出せよ? 気まずくなっては、今後の仕事に響くからな」
「わかってます」
「イサラさんのことだから、きっと求愛したつもりはないと思うのよね〜」
「念には念をだ、スミレ」
「うふっ…そうね♪」
けっこう難しいミッションだけど……やるしかないか。
「へ〜、女の子と同棲してるんだ〜♪」
「魔物ですけどね。もうすっかり慣れちゃいましたよ」
「きっと〜、みんなフレン君のこと大好きなんじゃないかしら〜♪」
「……ノーコメントで」
「え〜? どうして〜?」
イサラさんの歩く速度に合わせて帰宅(非常にローペース)。
仕事中はあまり会話ができないので、この際ミッション以外にも色々と聞いてしまえ!
「イサラさん、恋人とかいるんですか?」
「え〜? 知りた〜い〜?」
「えっと……できれば」
「ふふっ♪ もちろん、いないわよ〜」
「そうなんですか?」
「言い寄られる事は〜良くあるんだけどね〜」
「ほんとですか!?」
「本当よ〜♪ でモ〜、ワタシそういうの〜あんまり好きじゃないのよね〜」
「え?」
ホルスタウロスは基本的に温厚で平和主義。
自分から男を襲うことのない種族ということもあり、人間からも非常に愛されている。
もちろん、そんな彼女達の『大きなある部分』を愛する人種も少なくない。
「みんな〜目が嫌らしいのよ〜」
「まぁ、わかりますけど……それくらいイサラさんが魅力的ってことなんじゃないですか?」
「そうかな〜? ふふっ…フレン君にそう言われると、お姉ちゃん嬉しいな〜♪」
無理に関係を迫る男には鉄拳制裁したとのこと。
こう見えてアイキドー?やジュウジュツ?の免許皆伝者らしい。
見た目によらず恐ろしいなこの人。
「それじゃ〜ワタシからモ〜質問していいかな〜?」
「あぁはい、どうぞ」
「フレン君って〜……」
好きな人いるの〜?とかかな?
「ワタシのこと〜、好き〜?」
「ぶふっ!?」
思わずむせてしまった。
「大丈夫〜?」
「ぐふ…げほっ…すいません、大丈夫です」
いくらなんでもストレート過ぎるだろ……。
「それで〜、どうなのかな〜?」
「ええっと……」
これでYESなんて言ったら結婚……なんてオチはないよな?
でもイサラさんのことは嫌いじゃないし……。
それに、この人に嘘はつきたくない。
「好き…ですよ、とても。 イサラさん優しいですし」
「………」
そう言うや否や、イサラさんは俺を抱き寄せる。
「え、あの……!?」
「フレン君…ありがとうね〜」
「……え?」
はち切れんばかりの大きな胸を俺に押し付けながら、彼女はこう囁いた。
「お姉ちゃん…ん〜ん、ワタシ……やっとちゃんとした恋ができそう……///」
背中に回した腕をソッと離し俺と向き合うと、イサラさんはなにやらモジモジとし始める。
「ライバルい〜っぱいいそうだけど〜…ワタシ〜、一生懸命頑張るからね〜♪」
「………」
「それじゃ〜ね〜フレンく〜ん♪」
ヒラヒラと手を振りながらその場を後にするイサラさん。
「………」
俺……好きって言われたのか?
結局あの時の真意を聞き損ねたけど…現に抱きつかれたわけだし……。
しばらくの間、俺はその場で立ち尽くす他なかった。
〜おまけ〜
「Jカップ…かぁ」
「フレンが変なこと呟いてるよ〜;」
「放っておくのじゃ。なにか思うところがあるのじゃろう」
「それにしてもJとは…一体何者なのだ?」
「考えられる線としては、ホルスタウロス辺りではないでしょうか?」
「「「ま、負けたorz」」」
「っ!!」
「ご、ごめん! 触るつもりは……」
「わ、わかっている! 早く、測れ……///」
「あ、あぁ」
フレンがエルザのバストを計測中、誤って胸を触ってしまった様子。
もちろんエルザは上半身裸。
いや〜2人とも若いね〜w ←誰?
「……よし、終わった」
「ご苦労…フレン、服を」
「あぁ、はい」
大きく張りのある胸を片腕で隠しながら、エルザはフレンから服を受け取る。
「それで、結果は?」
「えっと、トップが87,5のアンダーが65だから…Fかな」
「ふむ…まだ成長しているな」
「え?」
そんな2人を見て奴らが便乗する。
「フレンよ! ワシのバストを測る許可を出すのじゃ!」
「ティータの愛くるしいお胸をフレンさんに見せてあげます」
「フ、フレン? 嫌じゃなかったら、その…アタシも……」
「………(クイクイ)」
「何人か測る必要のない奴がいるけど、まぁいいか」
フレン君も男の子。
困った顔して案外満更でもないご様子。
結果
エルザ→F
メイ→→C
フィロ→B
アイリ&ティータ→AAA
「「一括りにされた!?」」
「これを〜こうして〜……は〜い完成〜〜♪」
「さ、さすがに早いですね」
「お客様が多い日は〜同時に複数のメニューをこなさないといけないでしょ〜? だから〜、 少しでも早く作れるように〜試行錯誤するのモ〜料理人の務めなのよ〜?」
「なるほど、勉強になります」
バイト先にて。
今日はレティを除く全ての厨房組が集まっている。
人数的にも余裕があるので、今はイサラさんに『効率の良い調理法』を教わっている。
「仕込んだストックをたくさん使う料理なら楽でイイんですけどね」
「だ〜め! そんな事したら〜安っぽい料理ば〜っかりになっちゃうでしょ〜?」
「まぁ、確かに」
「多少面倒でモ〜、誠心誠意込めて〜丁寧に料理するように〜! フレン君、わかった〜?」
「肝に銘じます」
「うん、よろしい〜♪」
終始ローテンポな口調で俺に教授するイサラさん。
「また教えてほしいことがあったら〜、遠慮なくお姉ちゃんに聞いてね〜♪」
「ありがとうございます、お姉ちゃ…じゃなくて、イサラさん!」
「ふふふ〜♪」
お姉ちゃんお姉ちゃん言うので、なんか俺もうっかり口を滑らせてしまう。
刷り込みというのだろうか、そうやって少しずつ俺を洗脳していく気なのか?
「ふ〜んふ〜んふふ〜んっと〜♪」
「………」
考え過ぎか。
この人に限ってそんな腹黒い事はしないだろう。
ホルスタウロスという種族もそれを物語っている。
「さて、俺も仕事しないと」
ホールでアイリが奮闘する声を聞きながら作業に取り掛かる俺だった。
閉店間際。
客足も減ったので明日の仕込みを済ませようと思っていたところ、
「……ぃつっ!?」
包丁で指を切ってしまった。
「いてて…ちょっと深いな、これ」
気を抜いてた…しっかりしろ俺。
チーフなら救急用品の場所を知ってるだろうか?
「フレンく〜ん? どうしたの〜?」
「あぁいえ、ちょっと指を……」
「あ〜! たいへ〜ん!?」
「え?」
血が流れ出る指先を見たイサラさんは急に俺の手首を掴み、
「あ〜〜〜ん♪」
パクリッ!と指を咥えられた。
「え、ちょ…何を!?」
「ん〜? ふぁ〜に〜?」
口内で指をペロペロと舐め回すイサラさん。
なんか、ザラザラしてて気持ちイ……じゃなくて!
「だ、だめですよイサラさん!」
「ん〜? ふぉ〜ひて〜?」
「いや、どうしてって言われても……」
どう考えてもバイト仲間のすることじゃないと思うわけで。
「あらあら♪ イサラさんったら積極的♪」(妖狐スミレ)
「「いいな〜〜〜」」(双子インプ)
「……チッ」(若干羨ましそうなリザードマン)
あ〜ほら言わんこっちゃない!
羨ましそうな声を出す双子とスミレさんは置いといて、レオナさんには舌打ちされてしまった。
「んむんむ…ちゅる♪」
「………;」
舐めては吸い舐めては吸いの繰り返し。
それに…腕が完全にイサラさんのJカップ級の胸に当たってる。
いや…メロンカップ級?
「ちゅ〜〜〜…ぱぁ♪」
ようやく満足(?)したのか、ちゅぽん!とイイ音をたてて指を解放する。
「フレン君大丈夫〜? モ〜痛くない〜?」
「あ、はい…おかげ様で」
「良かった〜♪」
状況整理に必死で痛みを感じるどころではなかっただけだが。
「待っててね〜、いま救急箱持ってくるから〜」
「あ、ありがとうございます」
豊満な胸をタユンタユンと揺らしながら、イサラさんが厨房から出ていく。
と、同時にメオ(ゴブリン)が声を掛けてきた。
「おいフレン! この色男〜!!」
「は? なにが?」
「とぼけんなって! で…今の気持ちは? なーなー教えろって!!」
「いや、だからなにがさ?」
メオが何を言っているのか理解できない。
「お前…本当にわかってないのか!?」
「???」
頭から?マークが外れない。
まぁ指をペロペロされて悪い気はしなかったけど……。
「あのなぁ…イサラはお前に求愛してたんだぞ?」
「……は?」
さっきのが求愛なのか!?
「いや〜イサラってけっこう大胆だよなー! 見てるオレ達が恥ずかしかったっつーの!」
「求愛…QI?」
「気付かなかったのか? あいつ胸、お前に押し付けてただろ?」
「……あ」
確かに…腕にだけど。
「メオさん。そう決め付けるには、まだ早いんじゃないかしら?」
「え、なんでだよ?」
「あいつは新入りの指を舐めていただけかも知れんぞ?」
「偶然押し付ける形になったってことか?」
「「きっとそうだよ〜〜!」」
俺の目の前で魔物会議が始まってしまった。
もし本当に求愛(プロポーズ)だとしたら…俺は一体どうすればイイのだろうか。
「フレンく〜んお待たせ〜…って、みんな集まってどうしたの〜?」
「お、イサラ! なー、お前もしかしてフレンに…もがっ!?」
メオがレオナさんに口を塞がれる。
「イサラ、早く新入りの治療をしてやれ」
「? わかった〜」
俺の指を洗浄(さっきのペロペロ)、消毒、バンソコーとかいうやつで手際良く処置していく。
「は〜い、終わったよ〜」
「どうもすいません…余計な手間を掛けます」
「気にしないでいいのよ〜♪」
いつも通りに接してくるイサラさん。
本当に求愛したのなら、こんなに態度が変わらないのもおかしいと思う。
そんな事を考えていると、
「はーい! みんなお疲れ様ーー!」
チーフ(アルプ)が乱入してきた。
この人が来るということは閉店の合図ということか。
「ねぇねぇ♪ みんなで何の話してたの〜?」
「「「「「なんでもありませ〜ん!!!」」」」」
「ええ!?」
この人に話すとまたややこしくなりそうだから賢明だと思う。
スタッフルームにて。
例によって双子インプとゴブリン組はさっさと帰ってしまった。
「おい新入り」
「あ、はい?」
着替えを済ませ、チーフからの差し入れ『スペルマンD』を渋い顔をして飲んでいる俺にレオナさんが声を掛けてきた。
「先ほどのことだが、アレは自分で始末をつけろ」
「始末…ですか」
「イサラがもし新入りに求愛したというのなら、我々が首を突っ込むことではないからな」
「……わかりました。なんとか確認してみます」
「一緒に帰りながら話を聞けば良いんじゃないかしら? 私がセッティングしてあげるわよ?」
「ありがとうございます、スミレさん」
「い〜え♪ でも…貸し1つ、ね♪」
「……はい」
妖狐に貸し1つか……後が怖いな。
一緒に帰りませんか?とはさすがに言えないから、ここはスミレさんに頼るしかないんだけど。
「慎重に聞き出せよ? 気まずくなっては、今後の仕事に響くからな」
「わかってます」
「イサラさんのことだから、きっと求愛したつもりはないと思うのよね〜」
「念には念をだ、スミレ」
「うふっ…そうね♪」
けっこう難しいミッションだけど……やるしかないか。
「へ〜、女の子と同棲してるんだ〜♪」
「魔物ですけどね。もうすっかり慣れちゃいましたよ」
「きっと〜、みんなフレン君のこと大好きなんじゃないかしら〜♪」
「……ノーコメントで」
「え〜? どうして〜?」
イサラさんの歩く速度に合わせて帰宅(非常にローペース)。
仕事中はあまり会話ができないので、この際ミッション以外にも色々と聞いてしまえ!
「イサラさん、恋人とかいるんですか?」
「え〜? 知りた〜い〜?」
「えっと……できれば」
「ふふっ♪ もちろん、いないわよ〜」
「そうなんですか?」
「言い寄られる事は〜良くあるんだけどね〜」
「ほんとですか!?」
「本当よ〜♪ でモ〜、ワタシそういうの〜あんまり好きじゃないのよね〜」
「え?」
ホルスタウロスは基本的に温厚で平和主義。
自分から男を襲うことのない種族ということもあり、人間からも非常に愛されている。
もちろん、そんな彼女達の『大きなある部分』を愛する人種も少なくない。
「みんな〜目が嫌らしいのよ〜」
「まぁ、わかりますけど……それくらいイサラさんが魅力的ってことなんじゃないですか?」
「そうかな〜? ふふっ…フレン君にそう言われると、お姉ちゃん嬉しいな〜♪」
無理に関係を迫る男には鉄拳制裁したとのこと。
こう見えてアイキドー?やジュウジュツ?の免許皆伝者らしい。
見た目によらず恐ろしいなこの人。
「それじゃ〜ワタシからモ〜質問していいかな〜?」
「あぁはい、どうぞ」
「フレン君って〜……」
好きな人いるの〜?とかかな?
「ワタシのこと〜、好き〜?」
「ぶふっ!?」
思わずむせてしまった。
「大丈夫〜?」
「ぐふ…げほっ…すいません、大丈夫です」
いくらなんでもストレート過ぎるだろ……。
「それで〜、どうなのかな〜?」
「ええっと……」
これでYESなんて言ったら結婚……なんてオチはないよな?
でもイサラさんのことは嫌いじゃないし……。
それに、この人に嘘はつきたくない。
「好き…ですよ、とても。 イサラさん優しいですし」
「………」
そう言うや否や、イサラさんは俺を抱き寄せる。
「え、あの……!?」
「フレン君…ありがとうね〜」
「……え?」
はち切れんばかりの大きな胸を俺に押し付けながら、彼女はこう囁いた。
「お姉ちゃん…ん〜ん、ワタシ……やっとちゃんとした恋ができそう……///」
背中に回した腕をソッと離し俺と向き合うと、イサラさんはなにやらモジモジとし始める。
「ライバルい〜っぱいいそうだけど〜…ワタシ〜、一生懸命頑張るからね〜♪」
「………」
「それじゃ〜ね〜フレンく〜ん♪」
ヒラヒラと手を振りながらその場を後にするイサラさん。
「………」
俺……好きって言われたのか?
結局あの時の真意を聞き損ねたけど…現に抱きつかれたわけだし……。
しばらくの間、俺はその場で立ち尽くす他なかった。
〜おまけ〜
「Jカップ…かぁ」
「フレンが変なこと呟いてるよ〜;」
「放っておくのじゃ。なにか思うところがあるのじゃろう」
「それにしてもJとは…一体何者なのだ?」
「考えられる線としては、ホルスタウロス辺りではないでしょうか?」
「「「ま、負けたorz」」」
11/03/27 14:45更新 / HERO
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