1章 『外道な奴ら』
え? 1章って…もしかして、もう始まっちゃった?
ぇぇ〜何も言うことないんだけどなぁ。
ん〜じゃぁ自己紹介から…かな? 普通。
名前はフレン=カーツ、19歳です。
王立聖アルゴニア大学の学生です。
1人暮らしです。
はい、終わりです
ふぅ、自己紹介って大変だなぁ意外と。
いっ…痛いイタイいたい!!!
あぁすいません。
後ろから怖い顔をした幼女と龍の女性に耳を引っ張られました。
嘘を申すでない!とのことです。
はぁ…やれやれ、仕方ない。
少し修正します。
名前はフレン=カーツ、19歳です。
王立聖アルゴニア大学の学生です。
6人暮らしです。
これで文句ないだろ?
え? 大雑把過ぎてわからんのじゃ?
なに? 詳しく説明しないと焼き殺す?
あ〜も〜うるさいな〜…。
わかったよ、ちゃんとやるよ!
てゆうか、俺も早く本文に入りたいし。
え? 本文とは何のことじゃ?
なに? 詳しく説明しないと焼き殺す?
もう! お前らうるさい!!!
「なぁフレン。 お前、女の子5人と同棲してるって噂、本当なのか?」
講義中、比較的仲の良い同級生からそんなことを訊かれた。
「それ、誰から聞いた?」
「いや、誰からというか…他の奴らが話してるのをたまたま聞いただけ」
「あ〜、そう」
「で? で? どうなんよ?」
「まったくのデタラメ」
「だよな! お前がそんなにモテるはずないもんな!」
「あ、あぁ…」
「いや〜良かった! もし噂が本当だったら、俺様一生立ち直れなかったぜ!」
「そ、そう…」
「お前に女ができて俺様にできないなんて、そんなことありえないもんな!」
「………」←青筋入りま〜す
「ましてや5人なんて! お前にそんな甲斐あるはずないしな!」
「て、てめぇ…」
「まぁチェリーはチェリーらしく!? チェリーらしいスクールライフをだな…」
「そこ! 講義中だぞ!! 静かにしないか!!!」
「「………」」
教授に怒られた。
なんで俺まで…。
てゆうかチェリーチェリーうるさいなこいつ。
「うわ、おっかね」
「100%お前が悪い」
「まっ、ガセならそれでいいさ。 安心したぜ」
「……はぁ」
教授に注意されなければ殴ってたな、間違いなく。
「あ〜…まずいな、これは」
午前中の講義を終え、俺は1人屋上のベンチで腰かけている。
今日の午後はフリーなので、これからどうするか悩んでいる風に見えるかもしれない。
でも、残念ながらそうじゃない。
独り言を呟いてしまうほど深刻な状況に置かれている。
「どこから情報が漏れた? いや、誰かに見られたのか…?」
あいつの口ぶりから察するに、まだそこまで噂は広まっていないはず。
広範囲に広がる前に、なんとかコレを打ち消さないと…!
……ん?
何を悩んでいるのかって?
もうわかるだろ…。
本当なんだよ、さっきの噂。
「どうしたもんか…」
同棲、しかも5人となんて…知られたら一体どうなることか……!
変な宗教団体に無理矢理加入させたとか、監禁して自分専用肉便器に改造したとか…きっとそんな根拠のない罪を被せられるに違いない!
でも、そんなことはダメだ。
両親が残してくれた学費が無駄になる。
「むぅ…どうしたら……」
いや、ダメだ…独りで考え込んでいては何も解決しない。
とりあえず帰って、あいつらに相談するしかない。
ベンチから立ち上がり、屋上を後にする―――
「ただいま〜…」
あれこれ悩みながら歩いていたから、いつもより少し時間が掛かった。
この時間の帰宅は珍しいので、出迎える者はいない。
家の地下から気配があるけど、いつものことなのでスルー。
「いつもこんだけ静かならなぁ〜」
なにせ6人で住んでいるのだから、騒がしくない方がおかしい。
しかも6人が平気で暮らせるほど家が広いのだから、まったく皮肉な話だ。
父さんと母さん、金もないのに無理してたんだな。
「下からティータ呼ぶのも面倒だし、みんなが集まるまで昼寝でもするかな…」
これまた高級感漂うソファーに体を預ける。
まったく…こんなもの買うくせに、息子の入学費が苦しいってどうゆうことだよ……。
「ふぁ〜〜…はぁ」
まぁ寝心地イイからこの際なんでもいいか。
早く相談しないとな…早く……………
「……であるからして、ティータの名器は今だピンク色のままなのです」
「ん〜? 要するに処女ってこと?」
「端的に言えば、そういうことになります」
「なら始めから、処女なら処女と申せば良いではないか;」
「珍しく貴様と同意見だ。 食事を作る時間を割いてまでお前の話を聴いていたのに…まったく!」
「何を言っているんですか、アイリさんにエルザさん。 ティータの武勇伝を聴きたいと言うから、こうして恥を忍んで赤裸々に話していたというのに…」
「いや、ワシは処女か非処女か訊ねただけなのじゃが…」
「でも面白かったよ〜、博士のお話!」
「フィロとビッチは馬鹿だからな。 くだらん話も笑い話になるのだろう」
「なっ!? おい淫乱雌トカゲ! 何故ワシも馬鹿の1人に入っておるのじゃ! あとビッチと呼ぶでない!!」
「ビッチをビッチと呼んで何が悪い?」
「ワシはビッチではない! 訂正じゃ! 訂正を要求するのじゃ!!」
「そうか。 では貧乳腐れビッチと訂正しよう。 どうだ、問題ないだろ?」
「大アリじゃボケナス! 貧乳はワシのステータスじゃから良いとして、腐れビッチは問題外じゃ!!」
「はぁ、やれやれ…注文の多いビッチは疲れる……」
「何故ワシが悪者になっておるのじゃ!? しかもビッチに戻っておるし!?」
どれくらい寝ていたのか。
限りなく低レベルな会話が聞こえてくる。
「………(zzz)」
「メイちゃん、こんなに騒がしいのに良く眠れるよね〜?」
「それを言うならフレンさんも同じですよ…あ、ちょうど起きたみたいです」
「あ! フレンおはよ〜! 夜だけど」
「ん…はよぉ〜」
「昼ごろから眠っていたみたいですね。 お疲れですか?」
「ん〜、疲れてはいないと思うぞ? ただ悩みはあるけど…」
「え〜? 悩み〜?」
「それは興味深いですね。 是非ティータにお話しください」
「あぁ〜、なんとゆうか…後でみんなに話すよ。 俺達全員に関係あることだし」
「そうですか」
「それはそうと、夕食は? 今日はエルザが当番だろ?」
「見ての通りです」
「ホントに2人は仲良しだよね〜!」
「目が節穴にも程があるぞ? フィロ」
「しかし、喧嘩するほどなんとやら…という格言があります」
「それ格言か?」
依然として続くバフォメットとドラゴンによる喧騒。
喧騒よりは罵倒合戦と表現した方が正しいかもしれない。
「はぁ…俺が作ってくるよ」
「では、ティータもお手伝いします」
「アタシも手伝う〜!」
「悪いな、助かる」
「いつものことですから」
「ですから!」
フィロとティータの3人で夕食作りに取り掛かる。
このトリオでキッチンに立つのは、別段そう珍しいことではない。
アイリとエルザのどちらかが食事当番の日には、およそ5割の確率でこういった事態になる。
「………」
「ん? メイ、どした?」
むくりと起き上ったメイが、目を擦りながら歩み寄ってくる。
「………」
「あぁ〜、じゃぁ食器を並べておいてくれ」
「………(コクリ)」
メイは家事能力が皆無なので、できる範囲のことだけやらせるようにしている。
「メイさんの花嫁修業というやつですね?」
「いや、そうゆう意図はない」
早々と夕食の準備をする。
「お主の尻尾を切ったらどうなるのじゃ? また新しく生えてくるのかのう?」
「き、貴様…私をあの低俗なトカゲと一緒にするとは! 万死に値するぞ!!」
「なんと! お主はトカゲではなかったのか?」
「私は気高き空の支配者! ドラゴンだ!!」
「おぉすまぬ。 トカゲ語は理解できんのでな!」
「殺す! 八つ裂きにしてやる!!」
「上等じゃ!!」
止めなければ一生続きそうだな、あの2人………
「なるほどのう。 ワシらと寝食を共にすることが噂として広まるのは、お主にとって本意ではないと?」
「存亡の危機、というやつですね?」
「いや、そこまで大袈裟じゃないけど…ただ、悪評として広まるのは避けたいかな」
「フレン、お前の両親の話は聞いている。 大学…だったか? 確かにそこを辞めさせられたら、天国にいる2人に顔向けできないからな」
「あ〜いや…まだ死ぬ予定はないけど、その通りだよ」
「むぅ…これは難しいのう」
「ティータは今、自分の天才的頭脳をフル回転させています」
食後、そのまま皆に今の状況を伝えた。
「ん〜〜むにゃ〜〜〜」「………(zzz)」
「2人は…寝たか」
「メイとフィロを寝室に運んでおこう」
「助かるよ、エルザ」
エルザは2人を担いだまま2階へと上がっていく。
「フレンさん、発想の転換です」
「発想の転換?」
「ここは敢えて、ティータ達の家庭内状況を暴露するのです」
「そ、そのこころは?」
「魔物を5匹も養っている苦学生を、学校側はどう評価すると思いますか?」
「養う、か。 確かに聞こえはいいな」
「どうです? ティータの作戦は?」
「良い方法だと思うけど、ちょっと使えないかな」
「何故じゃ? ワシもその作戦に1票入れるつもりじゃが」
「まず大前提として、うちの大学は『魔物との交友関係を持つ者、これを極刑とする』ってゆう規則があるんでよね…」
「「………」」
ガクリと肩を落とす幼女2人。
「ではいっそのこと、大学を爆破してみてはどうでしょう?」
「いや、どうでしょうって言われても…」
「ティータよ…ドワーフはそこまで過激派ではないはずじゃぞ?」
「すみません…案が通らなくて、少しショックを受けているのかと」
「まぁ、大学は魔物嫌いってわけじゃないんだ。 ただ世間体を保つための建前だと思うけど…」
「じゃが、極刑とまで宣言しておるのじゃ。 ムリにリスクを負う必要もなかろう」
「だな…」
「振り出しに戻ってしまいました…」
「「「………」」」
なかなかまともな案が出てこない。
「どうだ、話は進んでいるか?」
「いや、まったく」
「おい雌トカゲ、何か良い案を出してみよ!」
「その学校とやらの最高権力者を脅しつけるのはどうだ?」
「「………」」
「なるほど、それは考え付きませんでした」
「いや普通は考えないだろ…」
「魔界の覇王であるワシも、そんな外道な手段は選ばんぞい…」
「だが、状況が状況なのだろ?」
「そうですよ。 えり好みしている場合ではありません」
「ん〜〜〜;」
「んむ…ワシもお主次第じゃな」
最高権力者…理事長を脅す?
まぁ直接俺が脅しつけるわけじゃないと思うけど…。
「汚れ役なら私が請け負うぞ?」
「念のためワシも行くのじゃ。 トカゲと2人なんぞ不本意じゃがな」
「フレンさん、指示を」
…
……
………
「よし…やってやれ!」
「了解」「了解なのじゃ!」
どこかで聞いたようなセリフを思わず出してしまった。
2人は早々に家を出て行ってしまった。
「フレンさん、ティータは責めたりしませんよ」
「頼む…何も言わないでくれ……」
言った後に痛感した。
俺………外道だ――――――――――――――――
その後、大学の規則から1つの項目が消えていた
ぇぇ〜何も言うことないんだけどなぁ。
ん〜じゃぁ自己紹介から…かな? 普通。
名前はフレン=カーツ、19歳です。
王立聖アルゴニア大学の学生です。
1人暮らしです。
はい、終わりです
ふぅ、自己紹介って大変だなぁ意外と。
いっ…痛いイタイいたい!!!
あぁすいません。
後ろから怖い顔をした幼女と龍の女性に耳を引っ張られました。
嘘を申すでない!とのことです。
はぁ…やれやれ、仕方ない。
少し修正します。
名前はフレン=カーツ、19歳です。
王立聖アルゴニア大学の学生です。
6人暮らしです。
これで文句ないだろ?
え? 大雑把過ぎてわからんのじゃ?
なに? 詳しく説明しないと焼き殺す?
あ〜も〜うるさいな〜…。
わかったよ、ちゃんとやるよ!
てゆうか、俺も早く本文に入りたいし。
え? 本文とは何のことじゃ?
なに? 詳しく説明しないと焼き殺す?
もう! お前らうるさい!!!
「なぁフレン。 お前、女の子5人と同棲してるって噂、本当なのか?」
講義中、比較的仲の良い同級生からそんなことを訊かれた。
「それ、誰から聞いた?」
「いや、誰からというか…他の奴らが話してるのをたまたま聞いただけ」
「あ〜、そう」
「で? で? どうなんよ?」
「まったくのデタラメ」
「だよな! お前がそんなにモテるはずないもんな!」
「あ、あぁ…」
「いや〜良かった! もし噂が本当だったら、俺様一生立ち直れなかったぜ!」
「そ、そう…」
「お前に女ができて俺様にできないなんて、そんなことありえないもんな!」
「………」←青筋入りま〜す
「ましてや5人なんて! お前にそんな甲斐あるはずないしな!」
「て、てめぇ…」
「まぁチェリーはチェリーらしく!? チェリーらしいスクールライフをだな…」
「そこ! 講義中だぞ!! 静かにしないか!!!」
「「………」」
教授に怒られた。
なんで俺まで…。
てゆうかチェリーチェリーうるさいなこいつ。
「うわ、おっかね」
「100%お前が悪い」
「まっ、ガセならそれでいいさ。 安心したぜ」
「……はぁ」
教授に注意されなければ殴ってたな、間違いなく。
「あ〜…まずいな、これは」
午前中の講義を終え、俺は1人屋上のベンチで腰かけている。
今日の午後はフリーなので、これからどうするか悩んでいる風に見えるかもしれない。
でも、残念ながらそうじゃない。
独り言を呟いてしまうほど深刻な状況に置かれている。
「どこから情報が漏れた? いや、誰かに見られたのか…?」
あいつの口ぶりから察するに、まだそこまで噂は広まっていないはず。
広範囲に広がる前に、なんとかコレを打ち消さないと…!
……ん?
何を悩んでいるのかって?
もうわかるだろ…。
本当なんだよ、さっきの噂。
「どうしたもんか…」
同棲、しかも5人となんて…知られたら一体どうなることか……!
変な宗教団体に無理矢理加入させたとか、監禁して自分専用肉便器に改造したとか…きっとそんな根拠のない罪を被せられるに違いない!
でも、そんなことはダメだ。
両親が残してくれた学費が無駄になる。
「むぅ…どうしたら……」
いや、ダメだ…独りで考え込んでいては何も解決しない。
とりあえず帰って、あいつらに相談するしかない。
ベンチから立ち上がり、屋上を後にする―――
「ただいま〜…」
あれこれ悩みながら歩いていたから、いつもより少し時間が掛かった。
この時間の帰宅は珍しいので、出迎える者はいない。
家の地下から気配があるけど、いつものことなのでスルー。
「いつもこんだけ静かならなぁ〜」
なにせ6人で住んでいるのだから、騒がしくない方がおかしい。
しかも6人が平気で暮らせるほど家が広いのだから、まったく皮肉な話だ。
父さんと母さん、金もないのに無理してたんだな。
「下からティータ呼ぶのも面倒だし、みんなが集まるまで昼寝でもするかな…」
これまた高級感漂うソファーに体を預ける。
まったく…こんなもの買うくせに、息子の入学費が苦しいってどうゆうことだよ……。
「ふぁ〜〜…はぁ」
まぁ寝心地イイからこの際なんでもいいか。
早く相談しないとな…早く……………
「……であるからして、ティータの名器は今だピンク色のままなのです」
「ん〜? 要するに処女ってこと?」
「端的に言えば、そういうことになります」
「なら始めから、処女なら処女と申せば良いではないか;」
「珍しく貴様と同意見だ。 食事を作る時間を割いてまでお前の話を聴いていたのに…まったく!」
「何を言っているんですか、アイリさんにエルザさん。 ティータの武勇伝を聴きたいと言うから、こうして恥を忍んで赤裸々に話していたというのに…」
「いや、ワシは処女か非処女か訊ねただけなのじゃが…」
「でも面白かったよ〜、博士のお話!」
「フィロとビッチは馬鹿だからな。 くだらん話も笑い話になるのだろう」
「なっ!? おい淫乱雌トカゲ! 何故ワシも馬鹿の1人に入っておるのじゃ! あとビッチと呼ぶでない!!」
「ビッチをビッチと呼んで何が悪い?」
「ワシはビッチではない! 訂正じゃ! 訂正を要求するのじゃ!!」
「そうか。 では貧乳腐れビッチと訂正しよう。 どうだ、問題ないだろ?」
「大アリじゃボケナス! 貧乳はワシのステータスじゃから良いとして、腐れビッチは問題外じゃ!!」
「はぁ、やれやれ…注文の多いビッチは疲れる……」
「何故ワシが悪者になっておるのじゃ!? しかもビッチに戻っておるし!?」
どれくらい寝ていたのか。
限りなく低レベルな会話が聞こえてくる。
「………(zzz)」
「メイちゃん、こんなに騒がしいのに良く眠れるよね〜?」
「それを言うならフレンさんも同じですよ…あ、ちょうど起きたみたいです」
「あ! フレンおはよ〜! 夜だけど」
「ん…はよぉ〜」
「昼ごろから眠っていたみたいですね。 お疲れですか?」
「ん〜、疲れてはいないと思うぞ? ただ悩みはあるけど…」
「え〜? 悩み〜?」
「それは興味深いですね。 是非ティータにお話しください」
「あぁ〜、なんとゆうか…後でみんなに話すよ。 俺達全員に関係あることだし」
「そうですか」
「それはそうと、夕食は? 今日はエルザが当番だろ?」
「見ての通りです」
「ホントに2人は仲良しだよね〜!」
「目が節穴にも程があるぞ? フィロ」
「しかし、喧嘩するほどなんとやら…という格言があります」
「それ格言か?」
依然として続くバフォメットとドラゴンによる喧騒。
喧騒よりは罵倒合戦と表現した方が正しいかもしれない。
「はぁ…俺が作ってくるよ」
「では、ティータもお手伝いします」
「アタシも手伝う〜!」
「悪いな、助かる」
「いつものことですから」
「ですから!」
フィロとティータの3人で夕食作りに取り掛かる。
このトリオでキッチンに立つのは、別段そう珍しいことではない。
アイリとエルザのどちらかが食事当番の日には、およそ5割の確率でこういった事態になる。
「………」
「ん? メイ、どした?」
むくりと起き上ったメイが、目を擦りながら歩み寄ってくる。
「………」
「あぁ〜、じゃぁ食器を並べておいてくれ」
「………(コクリ)」
メイは家事能力が皆無なので、できる範囲のことだけやらせるようにしている。
「メイさんの花嫁修業というやつですね?」
「いや、そうゆう意図はない」
早々と夕食の準備をする。
「お主の尻尾を切ったらどうなるのじゃ? また新しく生えてくるのかのう?」
「き、貴様…私をあの低俗なトカゲと一緒にするとは! 万死に値するぞ!!」
「なんと! お主はトカゲではなかったのか?」
「私は気高き空の支配者! ドラゴンだ!!」
「おぉすまぬ。 トカゲ語は理解できんのでな!」
「殺す! 八つ裂きにしてやる!!」
「上等じゃ!!」
止めなければ一生続きそうだな、あの2人………
「なるほどのう。 ワシらと寝食を共にすることが噂として広まるのは、お主にとって本意ではないと?」
「存亡の危機、というやつですね?」
「いや、そこまで大袈裟じゃないけど…ただ、悪評として広まるのは避けたいかな」
「フレン、お前の両親の話は聞いている。 大学…だったか? 確かにそこを辞めさせられたら、天国にいる2人に顔向けできないからな」
「あ〜いや…まだ死ぬ予定はないけど、その通りだよ」
「むぅ…これは難しいのう」
「ティータは今、自分の天才的頭脳をフル回転させています」
食後、そのまま皆に今の状況を伝えた。
「ん〜〜むにゃ〜〜〜」「………(zzz)」
「2人は…寝たか」
「メイとフィロを寝室に運んでおこう」
「助かるよ、エルザ」
エルザは2人を担いだまま2階へと上がっていく。
「フレンさん、発想の転換です」
「発想の転換?」
「ここは敢えて、ティータ達の家庭内状況を暴露するのです」
「そ、そのこころは?」
「魔物を5匹も養っている苦学生を、学校側はどう評価すると思いますか?」
「養う、か。 確かに聞こえはいいな」
「どうです? ティータの作戦は?」
「良い方法だと思うけど、ちょっと使えないかな」
「何故じゃ? ワシもその作戦に1票入れるつもりじゃが」
「まず大前提として、うちの大学は『魔物との交友関係を持つ者、これを極刑とする』ってゆう規則があるんでよね…」
「「………」」
ガクリと肩を落とす幼女2人。
「ではいっそのこと、大学を爆破してみてはどうでしょう?」
「いや、どうでしょうって言われても…」
「ティータよ…ドワーフはそこまで過激派ではないはずじゃぞ?」
「すみません…案が通らなくて、少しショックを受けているのかと」
「まぁ、大学は魔物嫌いってわけじゃないんだ。 ただ世間体を保つための建前だと思うけど…」
「じゃが、極刑とまで宣言しておるのじゃ。 ムリにリスクを負う必要もなかろう」
「だな…」
「振り出しに戻ってしまいました…」
「「「………」」」
なかなかまともな案が出てこない。
「どうだ、話は進んでいるか?」
「いや、まったく」
「おい雌トカゲ、何か良い案を出してみよ!」
「その学校とやらの最高権力者を脅しつけるのはどうだ?」
「「………」」
「なるほど、それは考え付きませんでした」
「いや普通は考えないだろ…」
「魔界の覇王であるワシも、そんな外道な手段は選ばんぞい…」
「だが、状況が状況なのだろ?」
「そうですよ。 えり好みしている場合ではありません」
「ん〜〜〜;」
「んむ…ワシもお主次第じゃな」
最高権力者…理事長を脅す?
まぁ直接俺が脅しつけるわけじゃないと思うけど…。
「汚れ役なら私が請け負うぞ?」
「念のためワシも行くのじゃ。 トカゲと2人なんぞ不本意じゃがな」
「フレンさん、指示を」
…
……
………
「よし…やってやれ!」
「了解」「了解なのじゃ!」
どこかで聞いたようなセリフを思わず出してしまった。
2人は早々に家を出て行ってしまった。
「フレンさん、ティータは責めたりしませんよ」
「頼む…何も言わないでくれ……」
言った後に痛感した。
俺………外道だ――――――――――――――――
その後、大学の規則から1つの項目が消えていた
10/11/21 16:13更新 / HERO
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