偽物の黒魔術
アパートの一室。
…暗い部屋で、一人の男がPCに齧り付いている。最低限の生活家電すらしばらく使われた形跡がなく、ワンルームの室内にはゴミと黒魔術じみたガラクタと、何か儀式をしたであろうおぞましいラクガキが散乱していた。
……狂気。一言で表すならばそんな部屋である。
現実から目を背け、救いを求めるように、男は黒魔術の探求に没頭していた。
彼の名はヤマオカケイスケ。
角と翼と羽の生えた女に出会う為に、働きもせず、こんな事を数年は続けている。
彼は社会不適合者である。努力する者を嗤い、失敗した者を嘲り、社会全てを見下しながら生きてきた。
何より、彼は大の人間嫌いだ。彼の理想はゲームやアニメ、漫画の中にある。現実の愚かで腐った人間など、目に入れたくもない。
…大学を中退した彼は、自らを世界から隔離した。
世界に意味を見いだせず、ただ無為に人生を消費するだけの道を選んだのだ。
しかし、そんな彼の価値観を一変させる出来事が起きた。
黒い翼と角が生えた女が、空を飛んでいたのだ。
人ではない者の存在を知った彼は、世界に希望を見出した。
…再び彼女に逢いたい。その一心であらゆる情報を当たった。無駄に高いプライドから無知を認めたくない男は、ろくに調べ物なぞした事はなく、成果は芳しくなかった。今日もこうして、碌な情報も書かれていないアフィリエイト記事を漁っている。
「……ん?なんだよこれ?」
気になる記事を見つけた。『本当にサキュバスと出会う方法』。そのままスクロールしてしまおうかと悩んだが、少し興味が湧いた。
…展開されたのは、ありがちなフォントと、それらしい雰囲気のフリー素材が貼られた、よくあるアフィリエイト記事だ。
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★貴方は、サキュバスをご存知ですか?サキュバスとは、角と翼、尻尾が生えた女性型の魔物です。空想上の存在だと思われているサキュバスですが、今回は、そんなサキュバスとの出会い方をご紹介します。
★ますはじめに、このサイト以外のあらゆる記事は間違っているので、この記事以外は信じないで下さい。サキュバスは人が大好きで、愛に溢れた種族です。
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何だこの記事は。書いてある内容が胡散臭すぎるし、アフィリエイトの分際で自分以外の記事が間違ってるなどと宣っている。何より、私の言う事を信じろって?馬鹿馬鹿しい。しかし、こんな調子でこの先に何が書いてあるのかが気になった。内心小馬鹿にしながらページを下にスクロールする。
…しかし、いつまで経っても次の文章が出てこない。どんなにスクロールしても、ページを更新しても、延々と白い背景が続いているだけだ。
…何を期待していたのだろう、とページをタブごと消去した。
……やはりネットなどに頼るのが間違っていたのだ。彼はPCを閉じると、本を一冊手に取る。中身は黒魔術について書かれている。
…人で無い者なら、きっと魔法か何かで呼び出せるはずだ、と彼は漫画とゲームの知識で考え、辿りついたのが黒魔術だ。しかし、「人でない女の手掛かりを探す」という先の見えない探求に疲れた彼の中で、手段が目的にすり替わりつつあった。オカルトが持つ「自分を特別だと思わせる」誘惑に抗えなかったのだ。彼は持っていた所持品の殆どを売り払い、その金で黒魔術の本や儀式の道具を買い漁った。
…無論、そんなものが本物である筈はないのだが、彼にはもはや、現実など見えてなかった。
…彼は数週間、薄暗い部屋で彼は黒魔術に関する文献を読み漁った。食事もろくに摂らず、気絶するまで睡眠を取らず、ひたすらに。
その結果、彼は発狂した。いや悟りを開いたと言ってよい。そして彼は自ら計画を実行に移した。多次元に散らばる自らの分霊を一箇所に集める事で異界の悪魔を召喚し、自身の併合を以て自分は全能の存在となるのだ。
…今の彼には妄想と現実の区別などつかない。自分が何を考え、何をしようとしているのか認知する事すら怪しい状態になっていた。病院に行けば精神病の診断が下り、そのまま措置入院になっていただろう。それくらい彼は危険な状態だった。しかし、親や友人に距離を置かれた彼には、彼を気にかけてくれる者は誰も居なかった。
ただ一人、彼が呼び出した悪魔を除いては…
…………
「…気分はどう?」
…知らない女の声で目を覚ます。
部屋には明かりがついている、外はもう夜のようだ。
「だれだ…おまえ…?」
「通りすがりの悪魔…とでも言っておこうかしら?」
そして自分の状況に気づく、俺は膝枕をされているらしい。
…身体を起こすとそこには、人ではない女が居た。青色の肌に、白目の部分が黒い目。頭部から生えた凹凸のある角に尖った耳。腰から生えた黒い翼と先端が鋭利なハート型の尾。腰まで伸びた紫紺の髪。そして、女はとても美しく、扇情的でもあった。ギリギリの布面積の服は局部こそ覆っているものの殆ど裸体に近く、その抜群なスタイルを際立たせている。
「貴女、自分が何をしようとしたか覚えてる?」
「ん…?いや、どうだったかな…PCで調べ物をして、それが駄目だったから、本を調べる事にしたんだ。その後はあまり…」
「…貴方は精神自失状態でデタラメな儀式を実行しようとして、自分のお腹を包丁で切り裂いたのよ。私が偶然喚ばれたから良かったものの…」
そうだったのか…腹を撫でてみるが傷はないようだ。この女が助けてくれたのだろうか?
「…私が貴方の心と身体を修復したのよ。応急処置だけど…それにしても、酷い部屋ね。」
女が辺りを見渡す。ゴミとガラクタが散乱した部屋の中央にはインクで魔法陣が描かれ、その上には自分のものと思われる血がぶちまけられていた。
「とりあえず、お部屋を片付けてしまいましょうか…終わったら何か食べる物を作ってあげる。その様子じゃまともな食事を摂ってなさそうだもの。」
女は立ち上がって、俺の部屋を片付けようとする。一応自分の部屋なので、俺も手伝おうとするが止められてしまった。
女は空中に指で円を描くと、そこにフラフープ大の空間の穴が出現した。その穴に、部屋中のゴミやガラクタをドカドカと押し込んで行く。独力で黒魔術を追い求めても一生辿り着けない魔法が、部屋のゴミ掃除なんかに使われる様を見て、なんか笑えてきてしまった。
それにしても、彼女は良い身体をしている。ギリギリの面積の服は身体を隠すどころか強調しており、彼女の尻に服が食い込んでいてすごくエロい。屈んだ時、垂れた豊満な柔肉が背中側からも見える。サイズ幾つなんだろう…
「Jよ♪」
女は振り返ってカップサイズを暴露する。J把握しました、というか何故考えてる事がバレた。
…一通り部屋のゴミを穴に詰め込み、入り口までゴミでいっぱいになると、女は空間を閉じてしまった。
「…さて、後は床のお掃除ね。それが終わったらご飯にしましょう…何か食べたい物はある?夜中だから、今から買い物に行ける範囲でだけど…」
「…それは魔法でも無理なのか。」
「できなくはないけど、お店に迷惑をかけてしまうわね。後は家の食材で何とかするしかないわね。」
…と言っても、家には食材が殆どない。買い物も行ってなかったからあるのは買い込んだ缶詰と、賞味期限切れの調味料くらいのものだ。
「安心なさい、料理は結構得意なんだから♪」
女は自身満々に言う。
食べたいもの…か。そう言えば、最後には何食ったっけ…
「ラーメン…」
ぽろっと、口からこぼれた。
「バカみたいにトッピング乗っけた塩ラーメンが食いたい……」
「お安いご用よ♪男の子はラーメン好きだものね…じゃあ、一緒に行きましょう?」
「…えっ、俺も行くの?」
「だって、独りで留守番は寂しいでしょう?」
…図星だ。大の男が情けないが、外に出るより今置いてかれる方が辛い。女が床掃除をする間にギリギリ外に出られる格好になると、二人で買い物に出かけた。
…………
閑散とした夜の市街地を、俺と女は一緒に歩く。外に出る時女は人の姿に化けており、服装も普通の格好になっていた。それでも人外じみた美貌はそのままだ。芸能人にも中々居ないレベルの美女だと思う。そんな美女と二人で夜の街を歩くのは、これから悪い事をするようで少しワクワクする。…やってる事は、ラーメンの買い物なのだが。
…コンビニに着くなり空腹を認識した俺は、欲しいものをドカドカ籠に入れた。ラーメンに関係ない冷凍のピザとかたこ焼きとか、普段は飲まないビールまでも籠に入れた。女は俺が何を籠に入れても怒る事はなく、カードで支払いを済ませてしまった。
家に帰って俺が風呂に入っている間に、女はトッピングマシマシのラーメンを作ってくれた。煮卵、ソーセージ、メンマ、海苔、焼き豚、白ネギ、ほうれん草…麺が見えない程乗っけたトッピングの下から麺を引き摺り出し、冷ましもせずに音を立てて啜り上げる。…案の定口の中を火傷し、思わず口をはふはふ言わせる。
…味は普通だ。当然腹が減っているので美味いのだが、それ以上でもそれ以下でもない。なのに何故だろう。この温かさと変わらない味を、今は一番求めていた気がするのだ…「沁みる」とは、こういう事を言うのだろう。
「…うまい。こんなうまいもの、生まれて初めて食った。」
「ふふ…そう、それは良かったわ。」
女がテーブルの反対側に座る。
「…そういや、あんた名前何て言うんだ?」
「あら、急にどうしたの?」
「いや…部屋の掃除に夕飯までご馳走してくれて、金も全部払ってくれた相手の名前も知らないのは、変だと思って…」
「私はアルザパンよ、よろしくねケイスケ君♪」
「え…なんで俺の名前を…」
「…滅茶苦茶な儀式だったけど、一応君が私を喚んだのよ?召喚者の名前くらい知ってて当然でしょ?」
「冗談はよせ。俺は悪魔なんか召喚できないし、ましてや黒魔術なんて使えない。現実から目を背けてただけのヒキニートだ。」
そう、俺は黒魔術なんて使えないし、ましてやアレは魔術なんかではない。目の前の女…アルザパンが使った「本物」の魔術を見てそう確信していた。
「…そうだ。俺はずっと、現実から目を背けてきた。今に始まった事じゃない。」
最初は多分、単に拗らせただけのオタクだった…と思う。でもいつからか嫉妬と劣等感で、自分をコントロールできなくなっていた。気づいた時には怪しげな黒魔術とオカルトにはまり込み、後戻り出来なくなっていた。ただ現実から逃げたかったのか、何かに縋ってでも這い上がりたかったのかはよく分からない。今となっては、何て馬鹿な事をしたんだと思う。
…湯気のせいか、やけに目と鼻から汁が出る。塩ラーメンが今日は少ししょっぱい。顔をぐちゃぐちゃにしながら、俺はラーメンを啜る。
「…そう、だから私が喚ばれたのね。貴方は今の状況が嫌で、誰かに何とかして欲しかったんでしょう。」
アルザパンは椅子から立ち上がると、俺の側に歩み寄り…急に俺を抱きしめてきた。俺の頭が彼女の胸元に抱き寄せられ、俺の頭が豊満な胸で包み込まれる。…彼女は暖かくて、それになんだか……理性を溶かすような…甘い、良い匂いがする…
「…人間は愚かで脆いから、すぐ自ら不幸になろうとするけれど…貴方はもう、他の個体への劣等感や、現状への不安に苦しむ必要は無いの。ただ私に全てを捧げて私からの快楽を享受すれば、貴方は幸せになれるのよ。」
「そう…なのかな?」
…甘い香りのせいか、アルザパンの言葉は全て正しいような気がする。それでも。
「…でも俺は、もっと頑張りたい…努力して真っ当な人間になりたいんだ…」
「………」
「このままじゃダメなのは分かってる、今度こそ死ぬ気で変わりたいんだ…」
…黙って聞いていた彼女は、その言葉にぴくりと反応した。
「……ダメよ、そんな事を考えちゃ。」
「!?あぅ…!???」
アルザパンの目が光ったかと思うと、俺の頭がズンと重くなる。
彼女になにかされたようだ。でも彼女のすることはわるいことじゃない。かのじょはぼくのためになんでもしてくれる。かのじょはただしい。かのじょはすばらしい…
「…貴方の自我を安定させる為の魔法だから、なるべく自由意識は残しておきたかったけれど…これ以上自分から傷つこうとするなら、致し方ないわね。…『これから言う事を受け入れなさい』。」
うけいれる。
かのじょのいうことをうけいれる。
かのじょはぼくをおもってくれている。
かのじょのいうことはただしいです。
かのじょのいうこのはすばらしいです。
「『貴方は立派になる必要も、その為に努力する必要も無いの。貴方は私の快楽を受け入れて、私の雄としての役目を果たせばいいのよ。生きてるだけでいいの。』」
…はい。
ぼくはあなたのオスです。
「いい子ね…頭は元に戻してあげるけど…今の『約束』、ちゃんと覚えていてね?」
…………
気がついたら、俺は椅子から敷かれた布団の上に寝かされていた。
服は全て脱がされ、全裸になっている。
「おはよう、何か変なところはある?」
「別に…何も…???」
「何もおかしく無いわよね?服を脱ぐのは当然でしょう?私達はこれから、雄と雌になるのだから。」
「あ、ああ…そうだな。」
アルザパンは仰向けに寝ている俺の身体の腰付近に屈み込むように座っている。
…何かがおかしいはずだが、違和感を知覚できない。でも、彼女に何かされたのはかすかに覚えている。
「…なあ、俺に何かしたのか?」
「さあ…どうだと思う?」
案の定彼女は答えてくれない。
…俺は意識を失う直前の会話を思い出す。
確か…俺も死ぬ気で頑張りたい、みたいな事を言ってたっけ。その後彼女が俺に何かしたんだと思う。
…そういえば彼女は俺を助けたと言っていた。頭がおかしくなって血まみれで死にかけていた俺を、必死の思いで救ってくれたはずだ。発狂して記憶がない最中の事を言っても仕方ないと、彼女は態度に出さなかったのだろう。
…そんな先程まで死にかけていた奴が、死ぬ気で変わりたいなどと言い出したら、彼女はどう思うだろうか?
まず止めるだろう。絶対安静でベッドに固定されてもおかしくない。恐らく彼女は、俺を思い留まらせようと何かしたに違いない。
なんて自分は自己中だったのだろう…本当に、彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「…助けてくれてありがとう、アルザパン。それと心配かけて本当にごめん。もう、死ぬ気で頑張るとか言ったりしない。」
「………!」
アルザパンはなきそうな顔になった。そして…
「…本当に心配したのよ、バカ……!!」
…顔をくしゃくしゃにして、彼女は俺にしがみつくようにしなだれがかってきた。
「本当に怖かった…!血がいっぱい出て、身体はどんどん冷たくなっていて…もし私がいなかったら…!!偶然貴方に逢えてよかった…貴方が死ななくて、本当に……!」
彼女は泣き始めてしまった。余程恐ろしい思いをさせてしまったのだろう。俺の胸で泣く彼女の身体を、俺は抱き返す。
「俺も、君に逢えてよかった。」
「…貴方は立派に生きなくて大丈夫だし、特別な何かにならなくていいの。生きて私の旦那様で居てくれれば、それでいいのよ?死んでしまうくらいなら、頑張って欲しくないの。」
「うん、もうしない。ニートは頑張らない事に関しては人より自信がある。」
「もう、それって誇っていいの?私は人間の堕落は好きだけど…」
ぐす、と涙を拭いながら彼女が笑う。不謹慎だが、妖艶な彼女に似つかわしくない、とてつもなく可憐な笑顔だった。
…彼女は悪魔で、圧倒的上位存在だ。
でも彼女はこんなにも可愛くて、人間味に溢れていて、こんな俺を愛してくれている。
彼女と一緒に居たい、と心から思った。
「アルザパン、俺を助けてくれて本当にありがとう。こんな俺で良ければ、ずっと一緒にいてほしい。」
「貴方じゃなきゃダメなの。ケイスケ、私の旦那様になって!」
愛の誓いを交わす。
俺達は結ばれた。幸福感で足の先まで痺れそうだ。目の前のアルザパンの顔を見ると、彼女も幸せそうに微笑んでいた。
「さあ、シましょうか♪」
「あ…そうか、そういう流れだよな…」
俺が邪魔してしまったが、これから彼女と致すところだったのだ。アルザパンは俺の身体を抱き起こすと、我慢できないと言わんばかりに唇にむしゃぶりつく。唇を割って侵入して来た舌は、容赦なく俺の舌をねぶり、絡め取り、そして俺の口の中を蹂躙する。
…ふと、至近距離で彼女と目が合った。すると、彼女の目は悪戯っぽく笑い、一瞬目が光ったように感じた。俺の意識はそこで途切れた…
…………
「…んじゅっ、ちゅっ、ぴちゅっ、んちゅ♡」
…俺の意識が戻ってきた時、俺はまだ彼女にキスをされていた。いいかげん苦しくなって来たので、一度彼女を引き剥がす。
「…ぷはっ、おい、また俺に何かしたか?」
「ええ、さっきかけた『約束』を解除したの。貴方自身が決意してくれたから、もう必要ないでしょう?…ついでに、新しい暗示も幾つか入れてみたわ♡」
「ええ…何されたんだよ俺…」
「ふふっ…お・た・の・し・み♡」
アルザパンは悪戯っぽく笑う。マジで何されたんだよ俺…
「そんな事より…ねえ、こんなのはどう?」
彼女はその豊満な…Jカップ(自己申告)のおっぱいで、既にバキバキになっていた俺のチンコを包み込んでしまった。イチモツが暖かく柔らかな感触に覆われ、その感触と目の前の光景だけで達してしまいそうだ。
「ふふ…じゃあ、行くわね♪」
彼女が胸を上下させ始める。
滑りを良くする為に彼女が垂らした唾液と、俺の先走りが混ざって、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てる。
…童貞の俺は耐えられず、たちまち桃源郷に導かれる。
「もう出そうなの?いいわよ、出して♡」
限界を迎え、尿道から爆発したように精液が溢れ出て、彼女の青い肌を汚していく。胸や顔をべとべとにしても射精は収まらない。彼女は俺の精液を身体に浴びながらうっとりしていた。一発目にもかかわらず未体験の射精感で、どっと疲れを感じる。
「ふふ…いっぱい射精してくれて嬉しいわぁ…♡でも、まだ出るわよね?」
「いや、今出たばかりで…もう少し休ませて…」
「大丈夫よ…ほら、『イケ』♡」
「!えっ!?あっ、うあああああああっ♡♡♡」
彼女の言葉を聞いた途端、突然身体に電流が走った。歯をガチガチ言わせながら、先程と変わらない量の精液を吐き出す。
「…これで、まだまだ大丈夫ね♪」
「ちょ、ちょっとまっ…ああああ!!!!」
彼女がパイズリを再開する。彼女は胸をリズミカル上下させ、たまにアクセントのように左右交互に動かしたり、乳首を擦り付けてきた。先程の精液も混ざって、未知の快楽が射精後のペニスに襲いかかる。
「『イケ♡』『イケ♡』『イケ♡』『イケ♡』」
「あがっあっ!?うああっあっああうあ!?!?♡♡♡♡」
単体でも凄まじい快楽を流し込まれながら繰り返し絶頂を命じられ、俺はおもちゃみたいに射精した。それも、一発毎に気が遠くなる射精である。上半身が白濁で真っ白になっても、彼女は射精を要求してくる。神経が耐えられず、俺は意識を手放す…
「まだ寝たらダメよケイスケ、『雄の役目を果たしなさい』♡」
「!!あっ!?ぐううううう…!!!!」
どくん。
彼女の言葉を聞いた途端、暗くなった視界が晴れ、一気に赤く染まった。先程の射精を上回る量の精液が急速に生産され、全身の血がペニスに集まって来るのを感じた。
…目の前の女を犯せ。孕ませろ。雄の欲望を全てこの女にぶつけろ。本能がそう叫んでいる。
激情に抗えず、俺はアルザパンを押し倒す。彼女は驚く事もなく、いやらしく満足げな笑みを浮かべている。
「ほら…ここよ♡」
彼女は僅かな布面積の服を消し去ってしまうと、指で秘所を広げて見せた。僅かに毛が生えた彼女の女性器は既に濡れそぼっており、物欲しそうにひくひくしている。
…お望み通りのモノをくれやる…そう思った矢先、
「あと、今私とセックスしたら、ケイスケ君には私の『お願い』を何でも聞いて貰うわ♡」
「なっ!?」
…彼女の「お願い」を何でも聞くという事は、すなわち先程の射精地獄以上の快楽が待ち受けているという事である。
無理だ。アレ以上の快楽を与えられたら、俺はおかしくなってしまう。しかし理性とは裏腹に身体は止まってくれない。意識の抵抗も虚しく俺の怒張が彼女を貫く。彼女の膣内は侵入者を歓迎するかの如く、俺の敏感な場所を的確に責め、狂おしく締め上げる。
「あああんっ♡♡♡ダメよ、まだ『イクな』!」
「!うぎっ?!ああああああ!!♡♡♡」
入れただけで達しそうになるが、それは彼女によって阻止される。射精直前の快楽を引き延ばされた俺は、惨めな叫び声を上げる。
「…ダメよ…♡貴方ばかり気持ちよくなっちゃ♡私を気持ちよくできるように、頑張って♡♡」
「あああああっ!む、むりぃいいいい!!!」
彼女の膣内から与えられる人外の快楽に加え、射精直前の一番鋭い快楽を引き延ばされているのだ。こんな状態で腰なんて振れるわけがない、焼けた鉄板を触り続けるようなものだ。
「仕方ないわね…♡ほら、『雄の役目を果たしなさい』?」
「!ああっやめてぇ!!ああ"あ"あ"あ"っ♡♡♡♡♡」
快楽で擦り切れそうな精神を無視して、本能が勝手に腰振りを始める。
許容値を遥かに超えた快楽がイチモツを通じて脳に流れ込み、激しくスパークする。例え意識を失っても、激しい快楽で再び叩き起こされる。
…俺に逃げ場はない、彼女をイかせない限りは。
パン!パン!パン!パン!
脳が焼き切れそうになりながら、俺は壊れたように腰を振る。この快楽地獄を少しでも早く終わらせる為には、彼女により大きな快楽を与えるしかない。
「いいっ♪いいわっ、ケイスケっ…もっとお♡」
…彼女も感じているようだ。このままいけば彼女をイカせる事ができる…そう思った矢先。
「ふふっ…そんなにイかせてほしい?でもダメ…♡イかせて貰う許可が欲しかったら、私に全てを捧げ、永遠の隷属を誓いなさい♡」
「ああああっ♡そんなああああっっ♡♡♡」
腰を振りながら俺は絶望する。
…今でさえこんな異次元の快楽漬けになっているのだ。彼女に全てを捧げるという事はすなわち、人間性を捨てる事に他ならない。彼女は絶頂と引き換えに、俺に破滅しろと言っているのだ。
そんな契約、普通なら乗る筈もない。しかし、
「なるう"う"う"う"!!!なる"からはやくイカせてぇ!!!!」
俺はあっさりと、自らの破滅を受け入れた。
…契約は成立した。
下腹部に淫紋じみた模様が刻まれる。悪魔との契約の証であり、俺が人以下の奴隷に堕ちた烙印である。
「ふふふっ…貴方の堕落した姿、とってもステキよ…♪それじゃあ約束どおり………『イけ』♡」
…待ちに待った瞬間。
取り返しのつかない代償と引き換えに得た地獄の終わりは、想像を絶する天国だった。
許容値をとっくに超え、既に壊れかかった俺の身体に、激流のような絶頂が訪れる。
「あああああああああっ♡♡♡♡『イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡』!!!!」
彼女も絶頂しながら、あろうことか追加でとんでもない快楽を上乗せして来た。
さながら身体全てがペニスになって、全身で射精しているかのような天井知らずの快楽。脳が破壊され、破壊された細胞は脳内物質を爆発的に放出させる。
本当に限界を迎えた俺の意識は、白い世界に包まれていった…
…………
…ヤマモトケイスケは子供の頃から人一番繊細で、他の人なら些細な事として忘れてしまうような事にも傷付いてしまう人間だった。時には子供の残酷な無邪気さ、時には大人の余裕のなさ、時には悪意ある人間の毒牙によって、彼は繰り返し傷ついた。それら一つ一つの出来事が心の病巣となって、彼を人間嫌いにした。
人と上手く関係を築けない彼にとって、現実は手に負えないものだった。彼はやがて家から出られなくなり、本当に孤独になってしまった。
しかし、彼には自分を変える方法も、現状を打破する方法も分からなかった。
…そんな時だった。人ではない女を見かけたのは。
彼は人とは関係が作れない。しかし人間ではない相手ならどうだろうか。もしかしたら、自分を孤独から救ってくれるかもしれない。
…彼は世界に希望を見出した。
彼は救いを求めて、人ではない存在という空想に近い奇跡に縋った。そして心が弱った彼を、偽物の黒魔術が食い物にした。
彼は日を追う事におかしくなっていった。もしも、何かのきっかけ…例えばあのアフィリエイト記事を信じていれば、或いは踏みとどまれたかもしれない。遂に錯乱した彼は、最期に滅茶苦茶な儀式を実行し、死ぬ運命だった。
…しかし、偶然儀式が不完全な形で発動し、救いを求める微かな心を、幸運にも異世界のアルザパンがキャッチした。彼女が興味本位で異世界に向かった事で、彼の命は救われた。図らずも、彼は人ではない女との邂逅を果たしたのだ。
…古びた細胞と共に忌々しい記憶は葬られ、新生した細胞と共に彼は生まれ変わろうとしている。彼を人間嫌いで非社会的にした記憶は、快楽によって脳細胞ごと破壊された。そして脳の空いたスペースは、新たに彼女への愛と欲望で満たされている。
…ヤマモトケイスケは心の病巣から解放され、夫に相応しい雄として生まれ変わった。命だけでなく、心まで彼女に救われたのだ。
もう手に負えない現実で苦しむ必要はない。彼はもう、孤独ではないのだから…
…………
俺の意識が戻って来ても、俺は緩やかな射精を続けていた。先程とは違う穏やかな刺激が、彼女からもたらされている。結合部からはおびただしい量の精液が溢れ、むせ変えるような匂いを放っている。ふと、繋がったままの彼女に目をやると、彼女も絶頂で気を失っているようだった。閉じられた目尻には、うっすら涙を浮かべている。
…いま気づいたが、彼女の下腹部にも俺と同じ形の契約紋が浮かんでいる。俺も自分の下腹部に手をやる。契約紋からは、彼女の俺に対する想いが沢山伝わって来る。
「生きててよかった」
「逢えて嬉しい」
「いっぱい甘やかしたい」
「愛しい」
「嫌な事を忘れさせてあげたい」
「無理しないか心配」
「滅茶苦茶にしてあげたい」
「愛してる」
…果たして、これは本当に奴隷に対する想いだろうか?きっとこの契約は烙印などではない。これは彼女との婚姻の証、そして俺達の新しい繋がりなのだ。
…何だか、彼女が愛しくて堪らなくなった。
「アルザパン、愛してるよ…」
「ん…ちゅぅ…」
俺は彼女の目尻をそっと拭ってやると、彼女に口づけをした。
…それで彼女も起きたのか、つっつくような軽いキスはやがて舌を絡め合うキスになった。あれだけ激しいセックスをしておきながら、俺達はどちらからでもなく発情していた。これも契約の効果らしい。
俺はおっぱいを揉みしだきながら、腰の動きを再開させる。
「うむぅ…!んちゅぴちゅっ、ちゅぅぅう♡」
彼女は抵抗する事なく俺のピストンを受け入れる。先程の快楽はあまりに壮絶で味わっている余裕が無かったので、今度は彼女の膣内の形を確かめるように、じっくりと腰を動かす。
「ああっ♡これ…ケイスケの形、わかるぅ……♡」
それは彼女も同じらしく、彼女も膣内で俺の形を感じ取っているようだ。時々、押しつぶすように子宮をプレスしてやる。
「お"お"ぉ〜っ♡おまんこの形、ケイスケに変えられてるうぅ〜っ…♡♡♡これすきぃ♡」
「アルザパンのココ、奥突いてやると凄く締め付けてくるよ。膣内の形変えられるの、そんなにイイのか?」
「いいのぉ♪私のおまんこもおっぱいも全部、ケイスケ専用に変えてぇ♡」
男の征服欲を刺激するのがうまいヤツだ。彼女のお望み通り、全部俺専用に変えてやる。
…もっと彼女を気持ちよくさせてあげたい。さっきの俺みたいに、よがり狂わせる事は出来ないだろうか。
…思い付きで、アルザパンの目をじっと見つめる
「?」
彼女はきょとんとこちらを見つめている。
…そんな彼女目掛けて、ダメ元で念じてみる。
(『感度が100倍になれ』!!!)
「!えっ!?!?いっぐううううう♡♡♡♡」
彼女は動揺しながら、身体を弓なりにして絶頂した。俺のチンコがすごい力で締め付けられ、思わず射精しそうになる。どうやら本気でイッてしまったようだ。
…マジかよ、ほんとに上手くいってしまった。
「ケイスケっ♡何でっそれをっ♡!?!?」
「いや…ダメ元で試してみたら出来た…『イケ』!」
「そんなはああああんっ♡♡♡♡」
再び彼女が絶頂する。どうやら本当に効いているみたいだ。これなら、彼女をもっと気持ちよくさせる事ができる…
再び、ゆっくりとしたピストンを再開する。彼女の弱いところは把握したので、天井と最奥を中心に、ねちっこく責め立ててみる。手が寂しかったので、右手でクリトリスを責めたて、左手でおっぱいを捏ねくり回す。
「お"お"っ♡♡♡ほお" っ♡♡♡お"っほぉ〜っ♡♡♡♡♡」
ぷしっ♡ぷしっ♡ぷしゃあああっ♡
彼女は目を裏返し、断続的に潮を吹きながらオホ声でヨガっている。どうやら1ストローク事に深イキしてるらしく、最奥を突く度に膣内が切羽詰まったように締め付けてくる。どうやら子宮が一番感じるようだ。
ふと、エロゲの知識を思い出した。女性は子宮のあたりを身体の外から押すだけでもイけるらしい。感度が上がった今の彼女はどうだろうか。
…試しに絶頂で彼女の腰が浮くのに合わせて一旦両手を離し、子宮の入り口あたりを身体の上から押してみた。
「お"お"っ…ぎひいぃぃいんっ?!?!♡♡♡♡」
彼女は絶頂で腰を浮かせた事で、俺の指に間接的に子宮を押し当てる形になった。それで再度深く絶頂した事で腰が突き出され、意識と裏腹に更に強く子宮を押し付けてしまう。
「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!!♡♡♡♡」
彼女は完全に白目を剥き、腰をガクガク言わせながらお手本のようなブリッジアクメを決めた。勢いでじゅぽん、と卑猥な音を立ててペニスが抜け、開きっぱなしの秘所から一回戦の精液が溢れてきた。
…長い絶頂の後、彼女は足腰が砕けたように崩れ落ちる。
「…どう、ちゃんと気持ちよくできた?」
「……してぇ…」
「え?」
「犯してぇ…!!滅茶苦茶にして、ケイスケの赤ちゃん孕ませてぇ♡♡♡♡」
…どうやらまだ満足させられていなかったらしい。もはや上位存在としての面影はなく、俺の子をねだる一匹の雌に成り下がっていた。
…こんな姿を見せられて、応えない雄などいない。アルザパンに背中を向かせると、痴態を見て硬さを増したチンコを、背後からぐちゃぐちゃの秘所に突き入れた。
「ああああんっ♡♡♡」
彼女はそれだけでも達してしまった。だがこれでは終わらない。彼女を満足させない限り、このセックスは続くのだ。
先程のねちっこさは残したまま、俺は腰振りを強めていく。控えめだった水音が派手になり、腰と尻がぶつかる音が部屋中に響く。
「あ"っ♡あ"っ♡お"あ"ああっ♡♡♡」
彼女は獣のような声で喘いでいる。もうイキまくっているらしく、先程から膣内が別の生き物のようにうねり、締め付け、凄まじい快楽を与えてくる。
だが、そんな事はお構いなしに、俺は快楽をねじ伏せるように腰を叩きつける。
「お"おっ♡それいいっ♡♡♡けいしゅけっ、あいしてるぅぅっ♡♡♡♡」
イキ狂いながらもアルザパンは俺に愛を伝えてくれる。言葉で答える代わりに、俺は更にグラインドを強める。
「いぎいいいいいっ!!!♡♡♡♡お"ああああああっ!!!♡♡まらイグううううう!!!!♡♡♡♡♡♡」
…喘ぎ声は叫び声に変わり、背中を丸め顔面を布団に押し付けながら、彼女は今日イチ深い絶頂をする。
俺の方もそろそろ限界だ。イキっぱなしの強烈な膣圧で射精感が込み上げて来る。
「だしてっ!ケイスケの精子全部だしてえぇっ!!!♡」
彼女もそれを感じたのか、中出しを懇願して来る。だが、急に俺は意地悪がしたくなった。
「だめだ、外に出す。」
「やだ!!ナカがいい!なかにしてぇえっ!!!」
「わかった。その代わり…『一人目が出来るまで、俺との子作りセックス以外で絶対イクな』」
「!!!」
強い意志を込めて彼女に告げる。
実際、アルザパンとはもっとセックスしていたいし、彼女が俺以外で性処理するのはなんかモヤモヤする。あまり意味はないかもしれないが、俺は彼女の性欲すら独占したかったのだ。
「はいぃ!!しませんっ、こずくりせっくすしかしませんからぁ!!♡おねがいだからなかにしてぇ♡♡」
…彼女の返事を聞くと同時に限界が訪れる。
彼女の子宮に鈴口を目一杯押し当て、爆発したかのように射精した。
「オ"ぉ … …♡ … …っ♡♡♡♡」
彼女は意識を飛ばしながら、特大の絶頂を迎えた。丸めていた背中がぴーんと弓なりになり、翼や尻尾もぴーんと張り詰める。
…射精が終わると同時に、一気に体力の限界が押し寄せてくる。幾ら悪魔と契約したとはいえ、ヒキニートの体力ではこれが限界らしい。
幸せそうな顔で気を失ったアルザパンを見ながら、俺も意識を手放した…
…………
「ケイスケ♡また『イケ』♡」
「あ"あ"いっぐう〜!!!♡」
…今日も俺はアルザパンに精を放っていた。
あれから数週間、俺達にとってセックスは日常そのものになった。朝起きてから夜寝るまで一日中ずっと致しているなんて事もザラだ。幸い魔物は性交だけでも生きていけるので、餓死する心配はないらしい。
彼女曰く、魔物は子供が極めて出来にくいらしく、一人目を授かるまで下手すると数十年はかかるそうだ。まだ長い道のりだが、彼女の為にも頑張るつもりだ。
…毎日のように励んでいるせいで騒音で苦情が来る事もあったが、彼女が住民を悉く魔物に変えてしまったので、今では全ての部屋が大体自分達と似たような状況だ。どうやら彼女は「全ての人間は魔物になるべき」という思想を持っているらしく、元いた世界でも魔物を増やす為に活動していたらしい。
…しかし、調子に乗って住民全員を魔物にしたところ何かヤバい裏組織にバレたらしく、黒ずくめの剣を持った人にキツめにお灸を据えられたので、当面は人を魔物に変える気はないらしい。あの強いアルザパンが一方的にボコボコにされる恐怖は、俺も二度と味わいたくない。それに今は、彼女との子作りの方が大事だ。
…ちなみに俺が無職故の金銭的な問題も、彼女の謎の資金力で解決してしまった。当面は生活に困る心配がないので、俺が脱ニートする機会は失われてしまった。機会があったとしても過保護な彼女は許さないと思うが。
そんなこんなで、俺はアルザパンのおかげで幸せに暮らしている。
黒魔術はもう、必要ない。
…暗い部屋で、一人の男がPCに齧り付いている。最低限の生活家電すらしばらく使われた形跡がなく、ワンルームの室内にはゴミと黒魔術じみたガラクタと、何か儀式をしたであろうおぞましいラクガキが散乱していた。
……狂気。一言で表すならばそんな部屋である。
現実から目を背け、救いを求めるように、男は黒魔術の探求に没頭していた。
彼の名はヤマオカケイスケ。
角と翼と羽の生えた女に出会う為に、働きもせず、こんな事を数年は続けている。
彼は社会不適合者である。努力する者を嗤い、失敗した者を嘲り、社会全てを見下しながら生きてきた。
何より、彼は大の人間嫌いだ。彼の理想はゲームやアニメ、漫画の中にある。現実の愚かで腐った人間など、目に入れたくもない。
…大学を中退した彼は、自らを世界から隔離した。
世界に意味を見いだせず、ただ無為に人生を消費するだけの道を選んだのだ。
しかし、そんな彼の価値観を一変させる出来事が起きた。
黒い翼と角が生えた女が、空を飛んでいたのだ。
人ではない者の存在を知った彼は、世界に希望を見出した。
…再び彼女に逢いたい。その一心であらゆる情報を当たった。無駄に高いプライドから無知を認めたくない男は、ろくに調べ物なぞした事はなく、成果は芳しくなかった。今日もこうして、碌な情報も書かれていないアフィリエイト記事を漁っている。
「……ん?なんだよこれ?」
気になる記事を見つけた。『本当にサキュバスと出会う方法』。そのままスクロールしてしまおうかと悩んだが、少し興味が湧いた。
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何だこの記事は。書いてある内容が胡散臭すぎるし、アフィリエイトの分際で自分以外の記事が間違ってるなどと宣っている。何より、私の言う事を信じろって?馬鹿馬鹿しい。しかし、こんな調子でこの先に何が書いてあるのかが気になった。内心小馬鹿にしながらページを下にスクロールする。
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…何を期待していたのだろう、とページをタブごと消去した。
……やはりネットなどに頼るのが間違っていたのだ。彼はPCを閉じると、本を一冊手に取る。中身は黒魔術について書かれている。
…人で無い者なら、きっと魔法か何かで呼び出せるはずだ、と彼は漫画とゲームの知識で考え、辿りついたのが黒魔術だ。しかし、「人でない女の手掛かりを探す」という先の見えない探求に疲れた彼の中で、手段が目的にすり替わりつつあった。オカルトが持つ「自分を特別だと思わせる」誘惑に抗えなかったのだ。彼は持っていた所持品の殆どを売り払い、その金で黒魔術の本や儀式の道具を買い漁った。
…無論、そんなものが本物である筈はないのだが、彼にはもはや、現実など見えてなかった。
…彼は数週間、薄暗い部屋で彼は黒魔術に関する文献を読み漁った。食事もろくに摂らず、気絶するまで睡眠を取らず、ひたすらに。
その結果、彼は発狂した。いや悟りを開いたと言ってよい。そして彼は自ら計画を実行に移した。多次元に散らばる自らの分霊を一箇所に集める事で異界の悪魔を召喚し、自身の併合を以て自分は全能の存在となるのだ。
…今の彼には妄想と現実の区別などつかない。自分が何を考え、何をしようとしているのか認知する事すら怪しい状態になっていた。病院に行けば精神病の診断が下り、そのまま措置入院になっていただろう。それくらい彼は危険な状態だった。しかし、親や友人に距離を置かれた彼には、彼を気にかけてくれる者は誰も居なかった。
ただ一人、彼が呼び出した悪魔を除いては…
…………
「…気分はどう?」
…知らない女の声で目を覚ます。
部屋には明かりがついている、外はもう夜のようだ。
「だれだ…おまえ…?」
「通りすがりの悪魔…とでも言っておこうかしら?」
そして自分の状況に気づく、俺は膝枕をされているらしい。
…身体を起こすとそこには、人ではない女が居た。青色の肌に、白目の部分が黒い目。頭部から生えた凹凸のある角に尖った耳。腰から生えた黒い翼と先端が鋭利なハート型の尾。腰まで伸びた紫紺の髪。そして、女はとても美しく、扇情的でもあった。ギリギリの布面積の服は局部こそ覆っているものの殆ど裸体に近く、その抜群なスタイルを際立たせている。
「貴女、自分が何をしようとしたか覚えてる?」
「ん…?いや、どうだったかな…PCで調べ物をして、それが駄目だったから、本を調べる事にしたんだ。その後はあまり…」
「…貴方は精神自失状態でデタラメな儀式を実行しようとして、自分のお腹を包丁で切り裂いたのよ。私が偶然喚ばれたから良かったものの…」
そうだったのか…腹を撫でてみるが傷はないようだ。この女が助けてくれたのだろうか?
「…私が貴方の心と身体を修復したのよ。応急処置だけど…それにしても、酷い部屋ね。」
女が辺りを見渡す。ゴミとガラクタが散乱した部屋の中央にはインクで魔法陣が描かれ、その上には自分のものと思われる血がぶちまけられていた。
「とりあえず、お部屋を片付けてしまいましょうか…終わったら何か食べる物を作ってあげる。その様子じゃまともな食事を摂ってなさそうだもの。」
女は立ち上がって、俺の部屋を片付けようとする。一応自分の部屋なので、俺も手伝おうとするが止められてしまった。
女は空中に指で円を描くと、そこにフラフープ大の空間の穴が出現した。その穴に、部屋中のゴミやガラクタをドカドカと押し込んで行く。独力で黒魔術を追い求めても一生辿り着けない魔法が、部屋のゴミ掃除なんかに使われる様を見て、なんか笑えてきてしまった。
それにしても、彼女は良い身体をしている。ギリギリの面積の服は身体を隠すどころか強調しており、彼女の尻に服が食い込んでいてすごくエロい。屈んだ時、垂れた豊満な柔肉が背中側からも見える。サイズ幾つなんだろう…
「Jよ♪」
女は振り返ってカップサイズを暴露する。J把握しました、というか何故考えてる事がバレた。
…一通り部屋のゴミを穴に詰め込み、入り口までゴミでいっぱいになると、女は空間を閉じてしまった。
「…さて、後は床のお掃除ね。それが終わったらご飯にしましょう…何か食べたい物はある?夜中だから、今から買い物に行ける範囲でだけど…」
「…それは魔法でも無理なのか。」
「できなくはないけど、お店に迷惑をかけてしまうわね。後は家の食材で何とかするしかないわね。」
…と言っても、家には食材が殆どない。買い物も行ってなかったからあるのは買い込んだ缶詰と、賞味期限切れの調味料くらいのものだ。
「安心なさい、料理は結構得意なんだから♪」
女は自身満々に言う。
食べたいもの…か。そう言えば、最後には何食ったっけ…
「ラーメン…」
ぽろっと、口からこぼれた。
「バカみたいにトッピング乗っけた塩ラーメンが食いたい……」
「お安いご用よ♪男の子はラーメン好きだものね…じゃあ、一緒に行きましょう?」
「…えっ、俺も行くの?」
「だって、独りで留守番は寂しいでしょう?」
…図星だ。大の男が情けないが、外に出るより今置いてかれる方が辛い。女が床掃除をする間にギリギリ外に出られる格好になると、二人で買い物に出かけた。
…………
閑散とした夜の市街地を、俺と女は一緒に歩く。外に出る時女は人の姿に化けており、服装も普通の格好になっていた。それでも人外じみた美貌はそのままだ。芸能人にも中々居ないレベルの美女だと思う。そんな美女と二人で夜の街を歩くのは、これから悪い事をするようで少しワクワクする。…やってる事は、ラーメンの買い物なのだが。
…コンビニに着くなり空腹を認識した俺は、欲しいものをドカドカ籠に入れた。ラーメンに関係ない冷凍のピザとかたこ焼きとか、普段は飲まないビールまでも籠に入れた。女は俺が何を籠に入れても怒る事はなく、カードで支払いを済ませてしまった。
家に帰って俺が風呂に入っている間に、女はトッピングマシマシのラーメンを作ってくれた。煮卵、ソーセージ、メンマ、海苔、焼き豚、白ネギ、ほうれん草…麺が見えない程乗っけたトッピングの下から麺を引き摺り出し、冷ましもせずに音を立てて啜り上げる。…案の定口の中を火傷し、思わず口をはふはふ言わせる。
…味は普通だ。当然腹が減っているので美味いのだが、それ以上でもそれ以下でもない。なのに何故だろう。この温かさと変わらない味を、今は一番求めていた気がするのだ…「沁みる」とは、こういう事を言うのだろう。
「…うまい。こんなうまいもの、生まれて初めて食った。」
「ふふ…そう、それは良かったわ。」
女がテーブルの反対側に座る。
「…そういや、あんた名前何て言うんだ?」
「あら、急にどうしたの?」
「いや…部屋の掃除に夕飯までご馳走してくれて、金も全部払ってくれた相手の名前も知らないのは、変だと思って…」
「私はアルザパンよ、よろしくねケイスケ君♪」
「え…なんで俺の名前を…」
「…滅茶苦茶な儀式だったけど、一応君が私を喚んだのよ?召喚者の名前くらい知ってて当然でしょ?」
「冗談はよせ。俺は悪魔なんか召喚できないし、ましてや黒魔術なんて使えない。現実から目を背けてただけのヒキニートだ。」
そう、俺は黒魔術なんて使えないし、ましてやアレは魔術なんかではない。目の前の女…アルザパンが使った「本物」の魔術を見てそう確信していた。
「…そうだ。俺はずっと、現実から目を背けてきた。今に始まった事じゃない。」
最初は多分、単に拗らせただけのオタクだった…と思う。でもいつからか嫉妬と劣等感で、自分をコントロールできなくなっていた。気づいた時には怪しげな黒魔術とオカルトにはまり込み、後戻り出来なくなっていた。ただ現実から逃げたかったのか、何かに縋ってでも這い上がりたかったのかはよく分からない。今となっては、何て馬鹿な事をしたんだと思う。
…湯気のせいか、やけに目と鼻から汁が出る。塩ラーメンが今日は少ししょっぱい。顔をぐちゃぐちゃにしながら、俺はラーメンを啜る。
「…そう、だから私が喚ばれたのね。貴方は今の状況が嫌で、誰かに何とかして欲しかったんでしょう。」
アルザパンは椅子から立ち上がると、俺の側に歩み寄り…急に俺を抱きしめてきた。俺の頭が彼女の胸元に抱き寄せられ、俺の頭が豊満な胸で包み込まれる。…彼女は暖かくて、それになんだか……理性を溶かすような…甘い、良い匂いがする…
「…人間は愚かで脆いから、すぐ自ら不幸になろうとするけれど…貴方はもう、他の個体への劣等感や、現状への不安に苦しむ必要は無いの。ただ私に全てを捧げて私からの快楽を享受すれば、貴方は幸せになれるのよ。」
「そう…なのかな?」
…甘い香りのせいか、アルザパンの言葉は全て正しいような気がする。それでも。
「…でも俺は、もっと頑張りたい…努力して真っ当な人間になりたいんだ…」
「………」
「このままじゃダメなのは分かってる、今度こそ死ぬ気で変わりたいんだ…」
…黙って聞いていた彼女は、その言葉にぴくりと反応した。
「……ダメよ、そんな事を考えちゃ。」
「!?あぅ…!???」
アルザパンの目が光ったかと思うと、俺の頭がズンと重くなる。
彼女になにかされたようだ。でも彼女のすることはわるいことじゃない。かのじょはぼくのためになんでもしてくれる。かのじょはただしい。かのじょはすばらしい…
「…貴方の自我を安定させる為の魔法だから、なるべく自由意識は残しておきたかったけれど…これ以上自分から傷つこうとするなら、致し方ないわね。…『これから言う事を受け入れなさい』。」
うけいれる。
かのじょのいうことをうけいれる。
かのじょはぼくをおもってくれている。
かのじょのいうことはただしいです。
かのじょのいうこのはすばらしいです。
「『貴方は立派になる必要も、その為に努力する必要も無いの。貴方は私の快楽を受け入れて、私の雄としての役目を果たせばいいのよ。生きてるだけでいいの。』」
…はい。
ぼくはあなたのオスです。
「いい子ね…頭は元に戻してあげるけど…今の『約束』、ちゃんと覚えていてね?」
…………
気がついたら、俺は椅子から敷かれた布団の上に寝かされていた。
服は全て脱がされ、全裸になっている。
「おはよう、何か変なところはある?」
「別に…何も…???」
「何もおかしく無いわよね?服を脱ぐのは当然でしょう?私達はこれから、雄と雌になるのだから。」
「あ、ああ…そうだな。」
アルザパンは仰向けに寝ている俺の身体の腰付近に屈み込むように座っている。
…何かがおかしいはずだが、違和感を知覚できない。でも、彼女に何かされたのはかすかに覚えている。
「…なあ、俺に何かしたのか?」
「さあ…どうだと思う?」
案の定彼女は答えてくれない。
…俺は意識を失う直前の会話を思い出す。
確か…俺も死ぬ気で頑張りたい、みたいな事を言ってたっけ。その後彼女が俺に何かしたんだと思う。
…そういえば彼女は俺を助けたと言っていた。頭がおかしくなって血まみれで死にかけていた俺を、必死の思いで救ってくれたはずだ。発狂して記憶がない最中の事を言っても仕方ないと、彼女は態度に出さなかったのだろう。
…そんな先程まで死にかけていた奴が、死ぬ気で変わりたいなどと言い出したら、彼女はどう思うだろうか?
まず止めるだろう。絶対安静でベッドに固定されてもおかしくない。恐らく彼女は、俺を思い留まらせようと何かしたに違いない。
なんて自分は自己中だったのだろう…本当に、彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「…助けてくれてありがとう、アルザパン。それと心配かけて本当にごめん。もう、死ぬ気で頑張るとか言ったりしない。」
「………!」
アルザパンはなきそうな顔になった。そして…
「…本当に心配したのよ、バカ……!!」
…顔をくしゃくしゃにして、彼女は俺にしがみつくようにしなだれがかってきた。
「本当に怖かった…!血がいっぱい出て、身体はどんどん冷たくなっていて…もし私がいなかったら…!!偶然貴方に逢えてよかった…貴方が死ななくて、本当に……!」
彼女は泣き始めてしまった。余程恐ろしい思いをさせてしまったのだろう。俺の胸で泣く彼女の身体を、俺は抱き返す。
「俺も、君に逢えてよかった。」
「…貴方は立派に生きなくて大丈夫だし、特別な何かにならなくていいの。生きて私の旦那様で居てくれれば、それでいいのよ?死んでしまうくらいなら、頑張って欲しくないの。」
「うん、もうしない。ニートは頑張らない事に関しては人より自信がある。」
「もう、それって誇っていいの?私は人間の堕落は好きだけど…」
ぐす、と涙を拭いながら彼女が笑う。不謹慎だが、妖艶な彼女に似つかわしくない、とてつもなく可憐な笑顔だった。
…彼女は悪魔で、圧倒的上位存在だ。
でも彼女はこんなにも可愛くて、人間味に溢れていて、こんな俺を愛してくれている。
彼女と一緒に居たい、と心から思った。
「アルザパン、俺を助けてくれて本当にありがとう。こんな俺で良ければ、ずっと一緒にいてほしい。」
「貴方じゃなきゃダメなの。ケイスケ、私の旦那様になって!」
愛の誓いを交わす。
俺達は結ばれた。幸福感で足の先まで痺れそうだ。目の前のアルザパンの顔を見ると、彼女も幸せそうに微笑んでいた。
「さあ、シましょうか♪」
「あ…そうか、そういう流れだよな…」
俺が邪魔してしまったが、これから彼女と致すところだったのだ。アルザパンは俺の身体を抱き起こすと、我慢できないと言わんばかりに唇にむしゃぶりつく。唇を割って侵入して来た舌は、容赦なく俺の舌をねぶり、絡め取り、そして俺の口の中を蹂躙する。
…ふと、至近距離で彼女と目が合った。すると、彼女の目は悪戯っぽく笑い、一瞬目が光ったように感じた。俺の意識はそこで途切れた…
…………
「…んじゅっ、ちゅっ、ぴちゅっ、んちゅ♡」
…俺の意識が戻ってきた時、俺はまだ彼女にキスをされていた。いいかげん苦しくなって来たので、一度彼女を引き剥がす。
「…ぷはっ、おい、また俺に何かしたか?」
「ええ、さっきかけた『約束』を解除したの。貴方自身が決意してくれたから、もう必要ないでしょう?…ついでに、新しい暗示も幾つか入れてみたわ♡」
「ええ…何されたんだよ俺…」
「ふふっ…お・た・の・し・み♡」
アルザパンは悪戯っぽく笑う。マジで何されたんだよ俺…
「そんな事より…ねえ、こんなのはどう?」
彼女はその豊満な…Jカップ(自己申告)のおっぱいで、既にバキバキになっていた俺のチンコを包み込んでしまった。イチモツが暖かく柔らかな感触に覆われ、その感触と目の前の光景だけで達してしまいそうだ。
「ふふ…じゃあ、行くわね♪」
彼女が胸を上下させ始める。
滑りを良くする為に彼女が垂らした唾液と、俺の先走りが混ざって、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てる。
…童貞の俺は耐えられず、たちまち桃源郷に導かれる。
「もう出そうなの?いいわよ、出して♡」
限界を迎え、尿道から爆発したように精液が溢れ出て、彼女の青い肌を汚していく。胸や顔をべとべとにしても射精は収まらない。彼女は俺の精液を身体に浴びながらうっとりしていた。一発目にもかかわらず未体験の射精感で、どっと疲れを感じる。
「ふふ…いっぱい射精してくれて嬉しいわぁ…♡でも、まだ出るわよね?」
「いや、今出たばかりで…もう少し休ませて…」
「大丈夫よ…ほら、『イケ』♡」
「!えっ!?あっ、うあああああああっ♡♡♡」
彼女の言葉を聞いた途端、突然身体に電流が走った。歯をガチガチ言わせながら、先程と変わらない量の精液を吐き出す。
「…これで、まだまだ大丈夫ね♪」
「ちょ、ちょっとまっ…ああああ!!!!」
彼女がパイズリを再開する。彼女は胸をリズミカル上下させ、たまにアクセントのように左右交互に動かしたり、乳首を擦り付けてきた。先程の精液も混ざって、未知の快楽が射精後のペニスに襲いかかる。
「『イケ♡』『イケ♡』『イケ♡』『イケ♡』」
「あがっあっ!?うああっあっああうあ!?!?♡♡♡♡」
単体でも凄まじい快楽を流し込まれながら繰り返し絶頂を命じられ、俺はおもちゃみたいに射精した。それも、一発毎に気が遠くなる射精である。上半身が白濁で真っ白になっても、彼女は射精を要求してくる。神経が耐えられず、俺は意識を手放す…
「まだ寝たらダメよケイスケ、『雄の役目を果たしなさい』♡」
「!!あっ!?ぐううううう…!!!!」
どくん。
彼女の言葉を聞いた途端、暗くなった視界が晴れ、一気に赤く染まった。先程の射精を上回る量の精液が急速に生産され、全身の血がペニスに集まって来るのを感じた。
…目の前の女を犯せ。孕ませろ。雄の欲望を全てこの女にぶつけろ。本能がそう叫んでいる。
激情に抗えず、俺はアルザパンを押し倒す。彼女は驚く事もなく、いやらしく満足げな笑みを浮かべている。
「ほら…ここよ♡」
彼女は僅かな布面積の服を消し去ってしまうと、指で秘所を広げて見せた。僅かに毛が生えた彼女の女性器は既に濡れそぼっており、物欲しそうにひくひくしている。
…お望み通りのモノをくれやる…そう思った矢先、
「あと、今私とセックスしたら、ケイスケ君には私の『お願い』を何でも聞いて貰うわ♡」
「なっ!?」
…彼女の「お願い」を何でも聞くという事は、すなわち先程の射精地獄以上の快楽が待ち受けているという事である。
無理だ。アレ以上の快楽を与えられたら、俺はおかしくなってしまう。しかし理性とは裏腹に身体は止まってくれない。意識の抵抗も虚しく俺の怒張が彼女を貫く。彼女の膣内は侵入者を歓迎するかの如く、俺の敏感な場所を的確に責め、狂おしく締め上げる。
「あああんっ♡♡♡ダメよ、まだ『イクな』!」
「!うぎっ?!ああああああ!!♡♡♡」
入れただけで達しそうになるが、それは彼女によって阻止される。射精直前の快楽を引き延ばされた俺は、惨めな叫び声を上げる。
「…ダメよ…♡貴方ばかり気持ちよくなっちゃ♡私を気持ちよくできるように、頑張って♡♡」
「あああああっ!む、むりぃいいいい!!!」
彼女の膣内から与えられる人外の快楽に加え、射精直前の一番鋭い快楽を引き延ばされているのだ。こんな状態で腰なんて振れるわけがない、焼けた鉄板を触り続けるようなものだ。
「仕方ないわね…♡ほら、『雄の役目を果たしなさい』?」
「!ああっやめてぇ!!ああ"あ"あ"あ"っ♡♡♡♡♡」
快楽で擦り切れそうな精神を無視して、本能が勝手に腰振りを始める。
許容値を遥かに超えた快楽がイチモツを通じて脳に流れ込み、激しくスパークする。例え意識を失っても、激しい快楽で再び叩き起こされる。
…俺に逃げ場はない、彼女をイかせない限りは。
パン!パン!パン!パン!
脳が焼き切れそうになりながら、俺は壊れたように腰を振る。この快楽地獄を少しでも早く終わらせる為には、彼女により大きな快楽を与えるしかない。
「いいっ♪いいわっ、ケイスケっ…もっとお♡」
…彼女も感じているようだ。このままいけば彼女をイカせる事ができる…そう思った矢先。
「ふふっ…そんなにイかせてほしい?でもダメ…♡イかせて貰う許可が欲しかったら、私に全てを捧げ、永遠の隷属を誓いなさい♡」
「ああああっ♡そんなああああっっ♡♡♡」
腰を振りながら俺は絶望する。
…今でさえこんな異次元の快楽漬けになっているのだ。彼女に全てを捧げるという事はすなわち、人間性を捨てる事に他ならない。彼女は絶頂と引き換えに、俺に破滅しろと言っているのだ。
そんな契約、普通なら乗る筈もない。しかし、
「なるう"う"う"う"!!!なる"からはやくイカせてぇ!!!!」
俺はあっさりと、自らの破滅を受け入れた。
…契約は成立した。
下腹部に淫紋じみた模様が刻まれる。悪魔との契約の証であり、俺が人以下の奴隷に堕ちた烙印である。
「ふふふっ…貴方の堕落した姿、とってもステキよ…♪それじゃあ約束どおり………『イけ』♡」
…待ちに待った瞬間。
取り返しのつかない代償と引き換えに得た地獄の終わりは、想像を絶する天国だった。
許容値をとっくに超え、既に壊れかかった俺の身体に、激流のような絶頂が訪れる。
「あああああああああっ♡♡♡♡『イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡イケ♡』!!!!」
彼女も絶頂しながら、あろうことか追加でとんでもない快楽を上乗せして来た。
さながら身体全てがペニスになって、全身で射精しているかのような天井知らずの快楽。脳が破壊され、破壊された細胞は脳内物質を爆発的に放出させる。
本当に限界を迎えた俺の意識は、白い世界に包まれていった…
…………
…ヤマモトケイスケは子供の頃から人一番繊細で、他の人なら些細な事として忘れてしまうような事にも傷付いてしまう人間だった。時には子供の残酷な無邪気さ、時には大人の余裕のなさ、時には悪意ある人間の毒牙によって、彼は繰り返し傷ついた。それら一つ一つの出来事が心の病巣となって、彼を人間嫌いにした。
人と上手く関係を築けない彼にとって、現実は手に負えないものだった。彼はやがて家から出られなくなり、本当に孤独になってしまった。
しかし、彼には自分を変える方法も、現状を打破する方法も分からなかった。
…そんな時だった。人ではない女を見かけたのは。
彼は人とは関係が作れない。しかし人間ではない相手ならどうだろうか。もしかしたら、自分を孤独から救ってくれるかもしれない。
…彼は世界に希望を見出した。
彼は救いを求めて、人ではない存在という空想に近い奇跡に縋った。そして心が弱った彼を、偽物の黒魔術が食い物にした。
彼は日を追う事におかしくなっていった。もしも、何かのきっかけ…例えばあのアフィリエイト記事を信じていれば、或いは踏みとどまれたかもしれない。遂に錯乱した彼は、最期に滅茶苦茶な儀式を実行し、死ぬ運命だった。
…しかし、偶然儀式が不完全な形で発動し、救いを求める微かな心を、幸運にも異世界のアルザパンがキャッチした。彼女が興味本位で異世界に向かった事で、彼の命は救われた。図らずも、彼は人ではない女との邂逅を果たしたのだ。
…古びた細胞と共に忌々しい記憶は葬られ、新生した細胞と共に彼は生まれ変わろうとしている。彼を人間嫌いで非社会的にした記憶は、快楽によって脳細胞ごと破壊された。そして脳の空いたスペースは、新たに彼女への愛と欲望で満たされている。
…ヤマモトケイスケは心の病巣から解放され、夫に相応しい雄として生まれ変わった。命だけでなく、心まで彼女に救われたのだ。
もう手に負えない現実で苦しむ必要はない。彼はもう、孤独ではないのだから…
…………
俺の意識が戻って来ても、俺は緩やかな射精を続けていた。先程とは違う穏やかな刺激が、彼女からもたらされている。結合部からはおびただしい量の精液が溢れ、むせ変えるような匂いを放っている。ふと、繋がったままの彼女に目をやると、彼女も絶頂で気を失っているようだった。閉じられた目尻には、うっすら涙を浮かべている。
…いま気づいたが、彼女の下腹部にも俺と同じ形の契約紋が浮かんでいる。俺も自分の下腹部に手をやる。契約紋からは、彼女の俺に対する想いが沢山伝わって来る。
「生きててよかった」
「逢えて嬉しい」
「いっぱい甘やかしたい」
「愛しい」
「嫌な事を忘れさせてあげたい」
「無理しないか心配」
「滅茶苦茶にしてあげたい」
「愛してる」
…果たして、これは本当に奴隷に対する想いだろうか?きっとこの契約は烙印などではない。これは彼女との婚姻の証、そして俺達の新しい繋がりなのだ。
…何だか、彼女が愛しくて堪らなくなった。
「アルザパン、愛してるよ…」
「ん…ちゅぅ…」
俺は彼女の目尻をそっと拭ってやると、彼女に口づけをした。
…それで彼女も起きたのか、つっつくような軽いキスはやがて舌を絡め合うキスになった。あれだけ激しいセックスをしておきながら、俺達はどちらからでもなく発情していた。これも契約の効果らしい。
俺はおっぱいを揉みしだきながら、腰の動きを再開させる。
「うむぅ…!んちゅぴちゅっ、ちゅぅぅう♡」
彼女は抵抗する事なく俺のピストンを受け入れる。先程の快楽はあまりに壮絶で味わっている余裕が無かったので、今度は彼女の膣内の形を確かめるように、じっくりと腰を動かす。
「ああっ♡これ…ケイスケの形、わかるぅ……♡」
それは彼女も同じらしく、彼女も膣内で俺の形を感じ取っているようだ。時々、押しつぶすように子宮をプレスしてやる。
「お"お"ぉ〜っ♡おまんこの形、ケイスケに変えられてるうぅ〜っ…♡♡♡これすきぃ♡」
「アルザパンのココ、奥突いてやると凄く締め付けてくるよ。膣内の形変えられるの、そんなにイイのか?」
「いいのぉ♪私のおまんこもおっぱいも全部、ケイスケ専用に変えてぇ♡」
男の征服欲を刺激するのがうまいヤツだ。彼女のお望み通り、全部俺専用に変えてやる。
…もっと彼女を気持ちよくさせてあげたい。さっきの俺みたいに、よがり狂わせる事は出来ないだろうか。
…思い付きで、アルザパンの目をじっと見つめる
「?」
彼女はきょとんとこちらを見つめている。
…そんな彼女目掛けて、ダメ元で念じてみる。
(『感度が100倍になれ』!!!)
「!えっ!?!?いっぐううううう♡♡♡♡」
彼女は動揺しながら、身体を弓なりにして絶頂した。俺のチンコがすごい力で締め付けられ、思わず射精しそうになる。どうやら本気でイッてしまったようだ。
…マジかよ、ほんとに上手くいってしまった。
「ケイスケっ♡何でっそれをっ♡!?!?」
「いや…ダメ元で試してみたら出来た…『イケ』!」
「そんなはああああんっ♡♡♡♡」
再び彼女が絶頂する。どうやら本当に効いているみたいだ。これなら、彼女をもっと気持ちよくさせる事ができる…
再び、ゆっくりとしたピストンを再開する。彼女の弱いところは把握したので、天井と最奥を中心に、ねちっこく責め立ててみる。手が寂しかったので、右手でクリトリスを責めたて、左手でおっぱいを捏ねくり回す。
「お"お"っ♡♡♡ほお" っ♡♡♡お"っほぉ〜っ♡♡♡♡♡」
ぷしっ♡ぷしっ♡ぷしゃあああっ♡
彼女は目を裏返し、断続的に潮を吹きながらオホ声でヨガっている。どうやら1ストローク事に深イキしてるらしく、最奥を突く度に膣内が切羽詰まったように締め付けてくる。どうやら子宮が一番感じるようだ。
ふと、エロゲの知識を思い出した。女性は子宮のあたりを身体の外から押すだけでもイけるらしい。感度が上がった今の彼女はどうだろうか。
…試しに絶頂で彼女の腰が浮くのに合わせて一旦両手を離し、子宮の入り口あたりを身体の上から押してみた。
「お"お"っ…ぎひいぃぃいんっ?!?!♡♡♡♡」
彼女は絶頂で腰を浮かせた事で、俺の指に間接的に子宮を押し当てる形になった。それで再度深く絶頂した事で腰が突き出され、意識と裏腹に更に強く子宮を押し付けてしまう。
「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!!!♡♡♡♡」
彼女は完全に白目を剥き、腰をガクガク言わせながらお手本のようなブリッジアクメを決めた。勢いでじゅぽん、と卑猥な音を立ててペニスが抜け、開きっぱなしの秘所から一回戦の精液が溢れてきた。
…長い絶頂の後、彼女は足腰が砕けたように崩れ落ちる。
「…どう、ちゃんと気持ちよくできた?」
「……してぇ…」
「え?」
「犯してぇ…!!滅茶苦茶にして、ケイスケの赤ちゃん孕ませてぇ♡♡♡♡」
…どうやらまだ満足させられていなかったらしい。もはや上位存在としての面影はなく、俺の子をねだる一匹の雌に成り下がっていた。
…こんな姿を見せられて、応えない雄などいない。アルザパンに背中を向かせると、痴態を見て硬さを増したチンコを、背後からぐちゃぐちゃの秘所に突き入れた。
「ああああんっ♡♡♡」
彼女はそれだけでも達してしまった。だがこれでは終わらない。彼女を満足させない限り、このセックスは続くのだ。
先程のねちっこさは残したまま、俺は腰振りを強めていく。控えめだった水音が派手になり、腰と尻がぶつかる音が部屋中に響く。
「あ"っ♡あ"っ♡お"あ"ああっ♡♡♡」
彼女は獣のような声で喘いでいる。もうイキまくっているらしく、先程から膣内が別の生き物のようにうねり、締め付け、凄まじい快楽を与えてくる。
だが、そんな事はお構いなしに、俺は快楽をねじ伏せるように腰を叩きつける。
「お"おっ♡それいいっ♡♡♡けいしゅけっ、あいしてるぅぅっ♡♡♡♡」
イキ狂いながらもアルザパンは俺に愛を伝えてくれる。言葉で答える代わりに、俺は更にグラインドを強める。
「いぎいいいいいっ!!!♡♡♡♡お"ああああああっ!!!♡♡まらイグううううう!!!!♡♡♡♡♡♡」
…喘ぎ声は叫び声に変わり、背中を丸め顔面を布団に押し付けながら、彼女は今日イチ深い絶頂をする。
俺の方もそろそろ限界だ。イキっぱなしの強烈な膣圧で射精感が込み上げて来る。
「だしてっ!ケイスケの精子全部だしてえぇっ!!!♡」
彼女もそれを感じたのか、中出しを懇願して来る。だが、急に俺は意地悪がしたくなった。
「だめだ、外に出す。」
「やだ!!ナカがいい!なかにしてぇえっ!!!」
「わかった。その代わり…『一人目が出来るまで、俺との子作りセックス以外で絶対イクな』」
「!!!」
強い意志を込めて彼女に告げる。
実際、アルザパンとはもっとセックスしていたいし、彼女が俺以外で性処理するのはなんかモヤモヤする。あまり意味はないかもしれないが、俺は彼女の性欲すら独占したかったのだ。
「はいぃ!!しませんっ、こずくりせっくすしかしませんからぁ!!♡おねがいだからなかにしてぇ♡♡」
…彼女の返事を聞くと同時に限界が訪れる。
彼女の子宮に鈴口を目一杯押し当て、爆発したかのように射精した。
「オ"ぉ … …♡ … …っ♡♡♡♡」
彼女は意識を飛ばしながら、特大の絶頂を迎えた。丸めていた背中がぴーんと弓なりになり、翼や尻尾もぴーんと張り詰める。
…射精が終わると同時に、一気に体力の限界が押し寄せてくる。幾ら悪魔と契約したとはいえ、ヒキニートの体力ではこれが限界らしい。
幸せそうな顔で気を失ったアルザパンを見ながら、俺も意識を手放した…
…………
「ケイスケ♡また『イケ』♡」
「あ"あ"いっぐう〜!!!♡」
…今日も俺はアルザパンに精を放っていた。
あれから数週間、俺達にとってセックスは日常そのものになった。朝起きてから夜寝るまで一日中ずっと致しているなんて事もザラだ。幸い魔物は性交だけでも生きていけるので、餓死する心配はないらしい。
彼女曰く、魔物は子供が極めて出来にくいらしく、一人目を授かるまで下手すると数十年はかかるそうだ。まだ長い道のりだが、彼女の為にも頑張るつもりだ。
…毎日のように励んでいるせいで騒音で苦情が来る事もあったが、彼女が住民を悉く魔物に変えてしまったので、今では全ての部屋が大体自分達と似たような状況だ。どうやら彼女は「全ての人間は魔物になるべき」という思想を持っているらしく、元いた世界でも魔物を増やす為に活動していたらしい。
…しかし、調子に乗って住民全員を魔物にしたところ何かヤバい裏組織にバレたらしく、黒ずくめの剣を持った人にキツめにお灸を据えられたので、当面は人を魔物に変える気はないらしい。あの強いアルザパンが一方的にボコボコにされる恐怖は、俺も二度と味わいたくない。それに今は、彼女との子作りの方が大事だ。
…ちなみに俺が無職故の金銭的な問題も、彼女の謎の資金力で解決してしまった。当面は生活に困る心配がないので、俺が脱ニートする機会は失われてしまった。機会があったとしても過保護な彼女は許さないと思うが。
そんなこんなで、俺はアルザパンのおかげで幸せに暮らしている。
黒魔術はもう、必要ない。
23/07/31 05:09更新 / 飢餓