vsドラゴン
魔物娘との遭遇、魔物娘が持ち込んだそのカードゲームは社会現象といえるまでに流行していた。美麗なイラスト、そのほとんどが美少女キャラクターといえるものだったが他のカードゲームと比べて女性の割合は多い。ただしその女性のほとんどは魔物娘なのだが。
そして人間にも魔物娘にも、このカードゲームをするもので下心のないものは少ない。
「我に勝てるものなど存在しないだろうが気骨のあるドラゴン使いがいれば…んふふ」ドラゴンのレイルは例にもれず、男あさりのために舌なめずりしながら大会会場に乗り込んでいった。
(今日は不作だったか…)
参加者にドラゴン使いは見つからずレイルは意気消沈していた。
「第一回戦第八試合、レイル対勇人!」
(おっと、これからのデュエルに集中しなくては)
気を取り直して向かいに座る対戦相手を見定める。灰色薄手のVネックにジーンズという着る人を選ぶファッションがやや痩せ型の体系に合う。やや大人びた顔立ちの青年だ。
互いに宣言しつつフィールドのセットをしていく。デュエル開始前の恒例だ。
「「メインモンスター、セット」」互いにデッキからカードを選んで取り出す。そして相手に見えないようにフィールドの最前列中央に一枚のカードをセットする。
「「シャッフル」」デッキをシャッフルする。
「「ライフカード、セット」」デッキの上から五枚、互いの最奥列に裏向きの状態で並べる。
「「コイントス」」
「表」
「裏」
「…先攻は俺だな」
「「手札、セット」」デッキから五枚ドローし手札にする。
「「メインモンスター、オープン」」メインゾーンに伏せていた互いのカードを表向きにする。
「「デュエル!!」」
(…ふざけているのか?)
それがレイルから見た青年の印象だった。
リリム考案のカードゲーム「デュエルモンスターガールズ」では互いに一体しかメインモンスターにできない。
しかも戦闘に負けてもメインモンスターは退場しないため、一度メインになったモンスターはそうそう交代の機会はない。
(それなのにメインモンスターに『駆け出し勇者』だと…?)
『駆け出し勇者』
サポート3
戦闘力(BP)500
効果:このモンスターがメインゾーンに存在する限り一度だけカードを二枚ドローできる。
カードに充てんされた魔力により卓上に小さなキャラクターが現れる。
勇人のメインゾーンでナイフを構えて少年勇者がプルプル震えていた。
(魔物娘最弱のゴブリンですらBP1000のサポート5だぞ…。)
メインゾーンに存在するキャラクターによって使えるサポートゾーンの枠数は決まっている。
レイルのメインゾーンで悠々と構えているドラゴンは効果なしのサポート1、つまりサポートカードを一枚しか置けないがBPは10000。純粋なパワーで攻め立てるわかりやすいモンスターだ。
BP500とBP10000、両者の差は火を見るより明らかであった。
「なるほど、貴様『犯され希望』か」
「……」
「とぼけても無駄だ。勝てる見込みのないデッキを使って強い伴侶を探す、いわば接待デッキの一つだ。大方恋人のいない自分に焦りを感じたか。残念ながら貴様は何の成果も得られず家路につくことに「始まったばかりでよくしゃべる」
「……!!」
「俺は媚びるつもりもなければ負ける気もない。」
見てろ、と言葉を加える。
「人が龍を御する瞬間をな。」
「ドロー。『駆け出し勇者』の効果でカードをさらに二枚ドロー。手札から『死闘』発動。」
『死闘』
サポートカード
自分のライフカードを任意の枚数捨て札に送り、メインモンスターのBPをこのターンのみ捨て札に送った枚数×1000ポイントアップさせる
「俺はライフカードをすべてを捨て札に送り『駆け出し勇者』の効果をこのターンのみ5000ポイントアップさせる。」
ライフカードがない状態で戦闘に負ければ、そのままゲームの敗北となる。
(しかも単純に破壊されれば手札に加わるはずのライフカードをすべて捨て札にするだと!?デメリットが大きすぎる!!)
しかしここで終わらない
勇人のターンはまだ始まったばかりである。
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6ターン目
レイルは目の前の光景が理解できなかった。
自身のフィールドにはBPが16000となったドラゴン。
サポートカードゾーンにあるのは勇人が送りつけたカード『挑発』
そして向かい側には
BP23500の『逆境勇者』
「バトル。BP23500の『逆境勇者』に対しそっちはBP16000の『ドラゴン』。戦闘はこっちの勝利。ライフカードは?」
「……ない。私の負けだ。」
レイルの手札は一枚も減っていない。
使えなかったのだ。
(1ターン目で、勝負は決していた…!!)
勇人はありがとうございました、と言うとレイルに目もくれず
この試合、勇人は完封していた。
17/08/04 16:51更新 / からくりにんじゃ
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