読切小説
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命短し、目覚めよ死人
 月明かりに照らされた夜の海。
 崖の下にからは冷たい波打ちの音だけが聞こえてくる。

 そんな闇の海を、崖の上から覗き込む子供達がいた。全部で十数名、少女がほとんどだが男子も数名混じっている。破れかけた汚い服を着て、十歳かそこらの子供たちは崖の淵へと歩みだす。その虚ろな瞳は金色の満月さえも写していない。誰もが崖を飛び降りた先にある『自由』を求めていた。
 溺れるのは苦しいだろう。冷たいだろう。だがそれさえ我慢すれば、もう苦しまなくて済む。

 しかし。

「……そんなことをしたって、楽にはなれないよ」

 突然背後から聞こえた声。子供達は一様に息を飲んで振り向いた。ああ、追っ手が来たのだ。せっかくここまで逃げて来たのに、また苦痛の人生へ連れ戻されてしまう。
 だがそこに立っていたのは追跡者ではなかった。夜でも目立つ派手な服を着た道化師……場違い極まりないおどけた雰囲気の男だ。白いメイクが非人間的なまでに施されたその顔に、子供達は得体の知れない恐怖を感じた。

「死のうとしているのに俺が怖いかい? そいつはおかしい」

 道化師が一歩歩み寄ると、子供達はたじろいだ。だがその中から一番年上らしい、と言っても十二、三歳程度の少女が進み出た。端正な顔立ちで、虚ろな瞳に僅かな勇気を宿し道化師を睨みつける。

「わたしたちはもう、誰の言うこともきかない!」

 力を振り絞り、震える声で少女は叫ぶ。煌煌と照る月明かりによって、白い頬に痛々しい痣があるのが分かった。彼女が、彼女達が今までどのような暮らしをしてきたのか、何故死を求めるのかは想像に難くない。今頃彼女達の主人が、逃げ出した奴隷を探しているのも間違いはない。
 だが道化師はそんな子供たちを取り押さえようとも、止めようともしなかった。ただふざけたようなメイクの顔で、左右に首を傾げながら笑うだけだ。

「君たちが自分の意志で死にたいのなら止めはしない。俺は今まで、生きていたいのに死んでしまった人を沢山……そう、沢山見てきたからね」

 指を折って数を思い出すような仕草をしながら、道化師は左手を前に差し出す。子供達はまたたじろいだ。さっさと崖から飛び降りてしまえば全てが終わるのに、見慣れない道化師の存在に圧倒されている。

「この辺りの海は意外と水が浅いし、底は尖った岩に覆われている。この高さから飛び降りれば頭を打って……確実に死ねるだろうさ」

 喋りながら、道化師は左手の上に白い布をかざした。種も仕掛けもないと言うかのように裏と表を見せたかと思うと、布で左手を隠すようにしてさっと振る。
 次の瞬間。空っぽだった彼の掌には純白の皿と、湯気を立てる料理が乗っていた。

「でも、ただ死ぬんじゃつまらない。見ている俺がね」

 子供達は一斉に息を飲む。道化師の持つその料理は、一見ただのキノコのソテー。だがその匂いは素晴らしく濃厚で、子供達の荒んだ胃を刺激するのに十分だった。リーダーらしい少女も身を震わせ、後ろの子供達も小さな口元から唾液まで垂らしている。皿から立ち上る湯気が、この世の物とは思えない美味を想像させるその匂いが、たまらなく愛おしい。
 単に彼女達が飢えているからではない。その香りは彼女達が求めていた『死』の匂いそのものなのだ。

「一人一個ずつ、ちゃんと分けて食べるんだよ。何せ貴重な品だから」

 道化師が皿を差し出すと、リーダーの少女がおずおずと受け取った。彼女は胸の高鳴りが傍目にも分かるほどにそれを欲していたが、まずは自分ではなく仲間達に与える。少女も少年も手を伸ばし、こぞってそのキノコを口へと運んだ。誰もが夢中で咀嚼する。天に昇るような味わいに身を震わせ、退廃的にさえ見える笑顔を浮かべた。先ほどまでの絶望的な姿が嘘であるかのように、幸福感を周囲に漂わせていた。

 やがて、子供達に変化が起きはじめた。キノコ飲み下した者から順に目を閉ざし、その場にばたりと崩れ落ちていく。一人、二人……恍惚とした表情のまま倒れ伏し、そのままぴくりとも動かない。
 最後にキノコを食べた年長の少女に、道化師は歩み寄った。

「美味しいかい?」

 仲間達が次々と倒れていくのにも関わらず、少女は口の中のキノコを飲み下し、幸せそうな顔で頷いた。頬の痣さえ気にならなくなるような、幸福感にとろけた笑顔だ。道化師は彼女の頭をそっと撫でる。

「それはよかった。その味をよく覚えて……死ぬといい」

 次の瞬間、少女は糸の切れた人形のように倒れた。仲間の上に折り重なり、体から血の気が引いて行く中で、彼女の口が動いた。

「あ……り、が…………」

 辛うじて言葉になったその声を最後に、少女は目を閉ざす。辺りはまた静寂に包まれ、波の音だけが響いた。

 ……道化師は顔を上げて、黄金色の月を仰ぎ見た。その顔に感情は浮かんでいないが、目元に施された涙のメイクがどこか哀しげな雰囲気を醸し出している。やがて子供達の屍を前に、彼はため息を吐いた。

「……お礼なんて言わないでおくれ。俺はただ身勝手で、愚かなピエロなのだから」

 彼は少女の手首を握り、血の巡りが無いことを確認する。子供達は完全に絶命していた。死のキノコの力で。
 すると彼の背後から、乾いた足音が近づいて来た。カシャン、カシャンと音を立てながら、小さな影が近づいてくる。やがて月明かりに照らされて、その姿が明らかになった。白骨の四肢を持ち、顔半分が仮面のような頭蓋骨で覆われた魔物。見る者によってはおぞましい姿だが、その体つきは華奢で小さく、まだ幼い少女そものだった。その仕草もどこか子供じみていて、自分と同い年くらいの子供達の死体を覗き込み、興味深げに指先でつついている。
 そんな幼いスケルトンの頭を撫で、道化師は初めて明るい笑みを浮かべた。

「ミルカ、お前と同じくらいの歳だ。仲良くしてあげな」

 ミルカと呼ばれたスケルトンが頷くと、道化師は子供の屍を肩に担いだ。ミルカも小さな体で少女の死体を抱きかかえ、引きずりはじめる。

「さて、荷馬車に乗せないと。少し骨が折れるかな」

 空いている肩にも屍を担いで道化師はぼやく。ミルカはそんな彼の目をじっと見つめ、ぽつりと呟いた。

「おれるの……イヤ」

 ……道化師は声を出して笑った。















 ………











 ……










 …













 薄暗い部屋の中、壁に多数の原木が立てかけられていた。朽ちかけた木でもまだ養分を豊富に含んでおり、その証拠にいくつかの原木からはその養分を吸ってキノコが生えている。しかしそのキノコの姿たるや不気味なもので、傘には苦悶や嘲笑の表情を思わせる模様が浮かんでいた。

「ふむふむ、合計九本か。やはりまだ大量には生産できないようだ」

 道化師は不気味なキノコを数え、手帳に記録をつける。ページには日々の生育記録が記されており、彼がこれらを栽培していることは間違いない。

「だがこの分なら、また近いうちに収穫できるかな……そろそろ投資でも頼んでみようかね……」

 薄ら笑いを浮かべつつ、道化師は栽培部屋を立ち去った。

 正式名称を「アンデッドハイイロナゲキタケ」と呼ばれるこのキノコ。かつて『死神の使い』と恐れられた猛毒キノコで、現魔王によって性質が変異した今でさえ、魔物が腹痛を起こす数少ない毒キノコとして知られる。しかしアンデッド型の魔物やその夫であるインキュバスにとっては非常に美味な食材であり、希少性と相まって高級食材として認知されているのだ。
 だが道化師がこれの栽培に心血を注ぐのは売買目的だけではない。このキノコの持つもう一つの効果こそが重要だったのだ。



「ミルカー? どこにいるんだいー?」

 おどけた声を出し、寝室をまさぐる道化師。ベッドの下やクローゼットの中を探り、小さなスケルトンの姿を探す。子供一人が隠れられる場所は大体探したが、どうも見つからない。
 ふと思い当たったことがあり、彼はタンスの引き出しを開けた。

「おお、見〜つけた〜」

 引き出しの中に詰め込まれていた手足の骨を、道化師は一本ずつ掴んで取り出した。それらはバラバラのまま彼の肩や腕にまとわりつき、じゃれるように動き回る。続いて道化師がもっと大きな引き出しを開けると、そこには真っ白な胴体があった。

「ほぉら、また見つけた」

 彼は優しくそれを抱き上げる。スケルトンの胴は魔力でできたかりそめの肉体であるが、本物の少女の体同様とても柔らかい。道化師にまとわりついていた手足の骨が胴に次々と繋がっていき、首の無い小さな子供の骨格になった。

「さてさて、頭はどこかな〜?」

 ミルカの体を立たせて、道化師は辺りを見回した。だがそのとき。

「うわっ!?」

 近くの壷から突然飛び出してきた球体を、彼は咄嗟に受け止めた。どすんと少々大げさに尻餅を着き、痛たたと呻く。彼の腕の中で、その物体はしてやったりという微笑を浮かべていた。

「……うーむ、こりゃ俺の負けのようだ」

 頭をかきつつ、道化師は幼きスケルトンの頭を撫でた。僅かに持ち上がった口元をつついてみると、ミルカはその指にぱっくりと食いつく。

「わー、わー、助けて助けて! 食べられるー!」
「……あは」

 大げさに手足をばたつかせて暴れてみせる彼に、ミルカは小さく笑い声を漏らした。
 かつて絶望に打ちひしがれたこの男がミルカに出会ったとき、彼女はただ精を求めすり寄ってくるだけで、感情らしきものは見受けられなかった。それが今ではこうやって変則的な隠れんぼで遊んだり、微笑を浮かべて懐いてくる。ミルカに慕われるようになってからほどなくして、道化師にとってもミルカは無くてはならない存在となった。同時にそれは、絶望の中から立ち上がるきっかけでもあった。


 ミルカは丸くて赤い目で道化師の顔を見つめ、呟くように口を開いた。

「……オナカすいた」
「そうか、遊んだらお腹空いちゃったんだね」

 道化師は彼女の頭を右手で抱えたまま、ズボンの前を開けて男根を取り出した。そこへミルカの頭を近づけると、彼女は小さな鼻を鳴らしてニオイを嗅ぐ。
 やがて小さな舌をぺろりと出し、ペニスの先端を舐め上げた。猫がミルクを舐めるような動きでちろちろと舐めていくと、道化師のペニスはそれに応えるかのように上を向きはじめた。

「……イタダキます」

 ミルカがそう唱えると、切り離されている彼女の体がお行儀よく合唱した。小さな口をかぱっと開き、一気にペニスに食いつく。

「…………♥」
「おっ……今日も口の中が気持ちいいな、ミルカ」

 口一杯にペニスを頬張り、ミルカは満足げな上目遣いで道化師を見つめていた。下手をすればペニスで窒息してしまうのではないかと心配になる小さな口腔だが、魔物、それも死者の骨から生まれた彼女は苦しむ様子もなくペニスを貪っていた。その小さな口はペニスを圧迫するだけでなく、小さく柔らかい舌がねっとりと、ちろちろと刺激してくる。ときに頬の内側などが亀頭に当たり、道化師はくすぐったい快感を味わった。

「うっ……ミルカ、上手いな」
「ん……♥」

 ペニスを貪るのに夢中になっていても、大好きな彼に褒められた言葉はしっかり聞こえている。それをより励みにするかのごとく、ミルカはさらに激しいフェラチオを始めた。じゅるじゅるという下品な音を立て、ペニスを吸い上げる。

「おおっ……これは……」

 道化師の反応が面白いのか、彼女は狭い口腔内で一生懸命ペニスをこねくりまわした。裏筋を舌先でくすぐり、柔らかい喉の奥で亀頭をもぐもぐと咀嚼する。

「うぉぅ……気持ちいいよ、ミルカ。俺の顔をまたいでごらん、アソコを舐めてあげるから」

 するとミルカの体が動きだし、仰向けに寝転んだ道化師の顔にまたがった。白骨の手で彼の頭を掴んで顔面騎上位をしながら、股間では頭だけがフェラを続けている。スケルトンかデュラハンだけができる、少々猟奇的な体位だ。
 真っ白な魔力の肌に、ぴったりと閉じた小さな女性器が再現されていた。道化師がそこに息を当てると、ミルカは体中がぴくりと震える。そこへ道化師が舌を這わすのと同時に、ペニスを吸う口の力が強まった。

「ん……んん……ん……♥」

 幼くして朽ち果てたミルカの体はとても敏感で、舌による股間への刺激にぴくぴくと震える。同時に固く閉じていた割れ目が少し開き、中から温かな愛液がとろりと流れ出た。

「んむっ……んむっ……♥」

 道化師がねっとりとした汁をすするたび、ミルカも激しくペニスをしゃぶる。少しだけ精の混じった先走りの液を喉を味わいながら、もっと濃厚なものを欲してフェラを続けた。だがそれはただ食欲によるものではない。大好きな道化師にもっと気持ちよくなってほしいという愛情が、彼女の中にも生まれているのだ。

「んむぅ……んんん……ぅぅん……♥」

 ペニスを頬張った口から艶かしくも初々しい声が漏れるたび、道化師の顔をまたぐ白い体も激しく震えた。愛液溢れる股間が道化師の顔に押し付けられ、メイクの上をぐっしょりと濡らしていく。道化師の方もまた、ミルカの口の中で天にも昇るような快楽を堪能していた。大きなあめ玉を夢中で舐めしゃぶるような舌の動きにどんどん高められていく。

 相手から受け取った快感を返すように、互いに奉仕し合う二人。それは程なくして、二人を絶頂へと導いた。

「んぅぅぅぅ………♥」

 幼い嬌声を上げ、先にミルカが絶頂に達した。骨をカタカタと鳴らし、白い体をびくつかせながら汁を噴き出す。
 同時に彼女の口がきゅぅっとすぼまり、それが道化師の快楽を最高潮へ押し上げた。

「うぅぅ……上手だ、出るぞ、ミルカ」

 どくどくと流れ出す、濃厚な白濁液。口の奥に大量に放たれたそれを、ミルカは懸命に飲み干していった。しかし小さく幼い口腔は迸りを受け止めきれず、唇からごぽっと溢れてしまう。それでも彼女は大好きな人の精液を、大事に大事に味わって飲んだ。

 やがてミルカの体が道化師の顔から転がり落ちるようにして、かちゃんと崩れ落ちる。股間に吸い付いたままの頭部を道化師が拾い上げると、彼女はあどけない、それでいて物欲しそうな笑みを浮かべた。

「……オカワリほしい」
「ははっ、そう焦っちゃ駄目だ」

 口周りを白濁でべとべとにした彼女の頭を、道化師は体の上に戻してやった。

「お楽しみはこれからだよ、ミルカ。死体置き場の様子を見に行こうか」

 道化師はミルカの体を抱き上げ、あやすように頭を撫でた。

 彼は見てきた。多くの人が命を失うのを。
 彼は許せなかった。自ら命を絶つ者がいる現実を。
 彼は憎かった。そんな自分たちを見下ろしているだけの神が。そして無力な自分が。

 しかし死して尚スケルトンとして生きるミルカに出会い、思ったのだ。死を『終わり』ではなく、『始まり』に変えることができるのではないかと。
 それは正しいことではないと彼は思っていた。ただの自分の身勝手、憂さ晴らしのための愚かな行為だと考えていた。だが、それでも……。

「さあ……楽しい収穫祭が始まっているよ」







 ……アンデッドハイイロナゲキタケの効果。それは死を欲する人間や、余命幾ばくもない人間がそれを食べたときに現れる。女の場合はこの世の物とは思えない美味を味わいながら絶命し、人間としての生涯を終えることになる。だがやがて蘇るのだ。生ける屍……現魔王の時代では『恋する屍』とでも言うべき存在、アンデッドとして。
 男性の場合は完全に死なず、仮死状態となる。その間に精が変質し、アンデッド型の魔物を引き寄せる『生き餌』となるのだ。やがて魔物との交わりによって、彼女達の夫となるインキュバスとして蘇生するのである。

 道化師の家の地下室には、彼がこのキノコを与えた子供達の死体が並べられていた。だがすでに……。


「うぅ……もっと……ん、もっと……♥」
「ひぃ……もっと、僕の……すってぇ……」
「あむっ……じゅるるるる……♥」
「さむいの……あたた、めてぇ……あん……♥」
「あはぁ……おいしぃよぉ……きもちイイよぉ……♥」

 地下室中に響き渡る声、声、声。
 睦み合う子供達はすでに人間ではない。新たな命を得た少女たちは、愛しい少年たちを夢中で『収穫』していた。幼い体が絡み合い、汁と唾液が流れ落ちる。股間への刺激によって目覚めた少年たちもすぐに恐怖を忘れ、彼女達のご馳走になることをこの上なく悦んでいた。

「よしよし、効果はばっちりのようだ……」

 ミルカを抱いて訪れた道化師は、その光景を見て満足げに笑った。同時にその笑顔は自嘲的にも見えた。自分の愚かしさが分かっているかのように。
 しかしそのとき、ミルカの白骨の手が彼の頭を撫でた。元気づけるように、優しく。

「……ありがとうよ、ミルカ」

 道化師は改めて、繰り広げられる収穫祭に目を向けた。

「もっと……ちゅぱ……もっと……♥」
「あう……あうぅ……♥」
「ちょうだい……ちょうだい……じゅるっ♥」

 ある小さな少年はゾンビとなった少女三人に群がられ、股間を舐めしゃぶられている。彼女たちが空腹を訴えながら小さなペニスを刺激するたび、少年は恍惚の表情でそれに応え続ける。生前に精通を迎えていたかも怪しい小さな少年は、自分の股間から出る白い液体が何なのかすら知らないかもしれない。ただ分かっているのは、ゾンビとなった友達にとってはそれがご馳走だということ。そしてそれを吸い出されるのがとても気持ちいいということ。インキュバス化しているために精は無尽蔵、しかも子供は欲望に正直であるからして、味をしめれば遠慮なく奉仕を受け続けるのである。

「んちゅ……ふ……みゅ……♥」
「んむぅ……おいひぃよぉ……らしてぇ、おくちにぃ……♥」

 その隣では瓜二つの顔をした双子の少女が、少年の口と股間にそれぞれむしゃぶりついていた。彼女達の手足は赤い皮膜で覆われており、グールになったのだと分かる。その魔性の舌が少年の口を犯して激しく喘がせ、ペニスから精液を絞り出す。少女は口に溜まった精液をすぐには飲み込まず、片割れに口移しで分け与えた。幼い唇同士が白濁の糸を引いた後、今度は二人がかりでペニスをしゃぶり始めた。少年への愛だけでなく、姉妹の絆を再確認するかのように。


「はうぅぅ……きもちィィィィ……♥」
「はひっ、く、くりゅぅ……ひィィィィん♥」

 またある少年は二人の少女に前後から挟み込まれ、しきりに体をこすりつけられていた。少女達の肌にひび割れが見えることから、どうやらマミーとして蘇ったらしい。極限まで敏感な肌をうぶな少年にこすりつけ、絶頂と失禁を繰り返している。少年もまたペニスに柔らかな肌がこすれ、そこへ白濁を吐き出し続けた。熱く粘ついた精の感触もマミーにとってはかなりの快感のようで、ねちゃねちゃと卑猥な音を立てながらその精液を全身へ塗り広げる。少年が感極まって射精するたび、彼女達の褐色の肌が白く染まっていった。


 そして断崖の上で道化師に抗おうとした少女。彼女は腰から生えた蝙蝠のような翼をばたつかせ、同い年くらいの少年の上で盛んに腰を振っていた。口元には少年の血が付着しており、歓喜と愛欲の声が漏れている。

「おやおや、ヴァンパイアになるとは珍しい」

 少女は道化師の声に気づいたらしく、彼の方を向いて元気一杯に手を振った。花のような満面の笑顔だ。彼女にまたがられた少年の方も、手を伸ばして未発達な胸を揉んであげている。

「あぅぅ……♥ キモチイイよぉっ♥ 血も、せーえきも、あんッ……とっても、オイシイのぉっ♥」

 まだ十二歳かそこらの少女だが、彼女の腰の動きはある程度性交に慣れていた。もしかしたら奴隷の技術として、主人から無理矢理教え込まれたのかもしれない。だがそんな過去も、今では大好きな男の子との繋がりをより気持ちいいものにするために使われていた。

 すでに死んだにも関わらず、誰もが淫らで無邪気な笑顔を浮かべている。自殺を望んでいたなど、想像もつかないくらいに。

「……そう、子供は元気が一番だ。好きなだけ遊びな、死人たち」

 その場に腰を降ろし、道化師は呟く。
 彼の膝の上で、ミルカは物欲しそうに股を開いた。彼女の白く柔らかな髪を撫でながら、道化師はズボンを降ろす。彼もまたインキュバスである故に、一回口に射精した後でも力に溢れている。

「おいで、ミルカ」
「ん……♥」

 ミルカは道化師の腰をまたぎ、白骨の指で優しくペニスを握る。固く冷たいはずの骨だが、魔物の持つ『保護の魔力』のせいか不思議と気持ちいい感触だった。このまましごかれても射精できそうだが、それではミルカが満足しないことを道化師は分かっていた。
 ペニスが真っ白な股間にあてがわれ、ミルカはゆっくりと腰を沈めていく。

「ん……ふ……♥」

 小さな口から僅かに喘ぎ声が漏れた。同時に幼い白骨、特に大腿骨の辺りがカタカタと震える。割れ目からは愛液がちょろちょろと漏れ出し、道化師の竿を伝って垂れていた。
 道化師は彼女の手を優しく握った。最初のうちはただ機械的に、無表情で精液を搾るだけだった彼女が、今はこうして楽しむことを覚えている。行為を重ね、彼との絆が深まるに連れて性感が目覚めたのだ。今では生きた子供のような振る舞いさえ見せるミルカのことが、道化師は愛おしくて仕方がない。

「よっ、と」

 彼はミルカの顔反面を覆う仮面骨に手をかけると、それを外した。まん丸で赤い目が両方とも露になり、それがうっとりと道化師を見つめている。
 そしてペニスが幼女の小さな女性器に埋まっていくたび、柔らかくきつい包容が快感を与えてきた。先端から順に、ぬめった膣肉にじわじわと包まれていく。

「んっ♥」

 根元まで挿入されると、ミルカは口が半開きになった。感じるところに当たっているのだ。道化師の方も亀頭を膣奥で強く締め付けられ、えもいわれぬ快楽を味わっていた。

「ああ……ミルカの中は気持ちいい……」
「……あり、がと……」

 緩んだ小さな口から出た言葉に、道化師は目を丸くした。

「ミルカ、お礼が言えるようになったのかい! 偉いよ、ご褒美にして欲しいことはあるかな?」

 するとミルカは上半身を反らし……否、小さな小さな胸を突き出した。そこを覆っていた爪状の骨がかぱっと横へ開き、辛うじて盛り上がりが分かる程度の胸と、乳白色に少しだけ赤みが差した乳首が露になった。
 ミルカはヴァンパイアになった少女をちらりと見つめた。男の子に胸をいじられ悦ぶ彼女を見て、自分もして欲しくなったのだろう。

「……おっぱい、シテ」
「よしよし」

 道化師は自分と彼女の結合部に手を伸ばし、垂れている彼女の愛液を指につけた。小さくて可愛い乳首を、そのぬるついた指で擦るように刺激する。

「んんっ……♥」
「ミルカの胸、ちっちゃいけどちゃんと柔らかいね。気持ちいいかい?」
「キモチイイ……スキ……♥」

 そう言いながら、ミルカは口元からよだれを垂らした。だがうっとりしながら快楽を楽しみつつも、大好きな道化師を気持ちよくすることも忘れてはいない。地面に手をつき、華奢な体を安定させる。
 彼女はゆっくりと、だがリズミカルに腰を上下させた。

「とん……とん……とん……♥」

 呟きながら、それに合わせて腰を振る。まだ熟していない狭い蜜壷の中で、道化師のペニスとヒダがこすれ合う。その快感をしっかり楽しみつつ、ミルカは徐々に速度を速めた。

「ふ、ぁ……とん、とん、とん、とん……♥」
「おおっ……気持ちいいよ、ミルカ」
「とんとん、とんとん……♥」

 小刻みに腰を振っていると、やがて膣内でペニスがびくつき始める。かなり感じているのだと彼女にも分かった。
 同時に道化師が小さな胸への攻撃を強めた。ぐりぐりと押し、つまんだり指先で揉んだりして刺激する。それがくすぐったくて身をよじらせ、ミルカは喘いだ。

「とんとん……あ……ふぁ……ん……んん……♥」

 互いに見つめ合い、二人は一緒に高まっていく。ミルカが幼い体をよじらせる動きも、ペニスと膣が余計に擦れる結果となった。
 周囲で白濁まみれになっている子供達に負けまいと、ミルカはさらに腰を振った。

「ん……とんとんとんっ♥」
「うっ……」

 ミルカの素早い動きに、二人とも強い快楽が股間へと集まった。もうすぐイってしまう、もうすぐ出してもらえる……二つの幸せにミルカは目がとろんとなり、口元を緩ませた。

「……いち、にの、さん、で一緒にイこうな」
「……ウン」

 ミルカは道化師の肩につかまり、腰を浮かせた。ペニスが全部抜けてしまわないよう、注意しながら。

「いち、にの……さん!」

 道化師が腰を突き上げ、ミルカが腰を降ろす。
 勢いよく摩擦された性器は、高まった快楽を一気に弾けさせた。

「うぉ……出る! 出るぞ、出るぞミルカ!」
「んんん……ふ……んんんぅぅぅ……♥」

 ミルカの全身の骨が、そして魔力でできた真っ白な体が激しく震えた。男と交わるために作られているかりそめの体は熱い迸りをしっかりと受け止め、ゴクゴクと飲み干して行った。

「すごい、吸われてるぞ、これ!」
「あ……んん……♥」

 目をぎゅっと閉じ、器に溜まっていく精液を味わうミルカ。それでも幼い割れ目から僅かに白濁るが垂れ落ち、愛液と混じり合ってますます卑猥で背徳的な光景を生み出していた。脈動する蜜壷のおかげで、道化師は最後の一滴まで気持ちよく射精することができた。

 やがてミルカは繋がったまま、道化師の上でうつ伏せになる。小さな彼女は彼の胸に顔を埋めたが、ふいに自分で頭を取り外した。
 目の前に自分の顔を差し出してくるミルカの望みを、もちろん道化師は察していた。

「……♥」

 唇がふれ合い、舌が愛を交わす。

「ミルカ、好きだよ」

 道化師は彼女の頭を抱きしめた。彼は自分が正しいことをしているなどと考えてはいないが、ミルカとの絆にだけは胸を張ることができる。自分を愛し、自分に愛されてくれる小さなスケルトンを。
 ミルカは幸せそうに目を細め、彼の愛情を受け入れた。同時にペニスと繋がったままの体は、再びおかわりを欲して上下運動を始めていた……

















 ……アンデッドにとっては希少な食材であるハイイロナゲキタケ。それを少量ずつながら栽培することに成功したという話は、ヴァンパイアなどの美食家たちを騒がせた。
 その研究者は常に道化師の姿をしており、自殺志望者をキノコの力でアンデッドに変えては農園で働かせているという。
 元々教団の軍医だったらしいという噂があるものの、その男は一切素性を明かさず、彼の側に寄り添う幼きスケルトンも何も語らない。

 しかし彼の農園を訪れた魔界貴族たちは、彼の研究に快く投資した。
 農園で働くアンデッドたちが、皆一様に笑顔だったからである。






〜fin〜
12/10/29 23:35更新 / 空き缶号

■作者メッセージ
お読み頂きありがとうございます。
SS大会のテーマは「ハロウィン ロリ」で「ハロリン」だったので、ちょい怪奇色の強いロリ物を書いてみました。
主人公の過去についてはあえて謎を残しておきます。
ではまた次回、ルージュ・シティでお会いしましょう……なんつって。

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