「……そっかぁ。あのクソ教師の悪事を暴こうってわけね」

　俺の話を聞いて、美緒はふとため息を吐いた。

「ケンちゃんは戦おうとしてたんだ……私と違って」

　なんだか、しみじみとした口調で呟く美緒。ちゃんと話をしたのはいつ以来だったか……そんなことも考えたけど、この状況はどう考えても異常だ。ただ疎遠になってた片思いの幼馴染と久しぶりに話しをした、とかそんなレベルじゃない。

　まず、美緒は今、半裸だ。上半身の服も下着も脱ぎ捨てて、胸をさらけ出している。
　そして俺は、その谷間で顔を挟み込まれていた。

　どうしてこんなことになっているのか、サッパリ分からない。美緒がおもむろに服を脱いで、大きな胸を出した瞬間、俺は吸い込まれるように谷間へ顔を突っ込んでいた。
　メチャクチャ柔らかくて気持ちいい。しかも、なんか良い匂いまでする。汗の匂いに混じって、甘い香りが。まるで催眠術にかかったみたいに、ひたすらその感触と匂いを味わっていた。

「あは……息、くすぐったい……」

　楽しそうに笑いながら、俺を胸から解放する美緒。顔にひんやりした空気が当たる。

「み……美緒……」

　正気に戻れ、俺。必死で言い聞かせながら、声を出す。
　この状況の原因は、どう考えても一つしか考えられない

「あの二人に……何を……された……？」

美緒はクスッと笑い、ゆっくりと目を閉じた。その一挙手一投足がやたらと色っぽく見えるし、肌がぞくっとするくらいキレイで……まるで、あの二人みたいだ。

「色々、してくれたよ」

　瞼が開かれて、美緒の瞳がじっと俺を見た。灰色。マルガ、ハリシャと同じ瞳で。
　唖然とする、っていうのはこういう状態を指すのか。声を出せない俺を見つめながら、美緒は自分のおへそに指をあて、正中線上にをすっとなぞった。すると一瞬で、パッと制服を着た姿に戻った。胸がかなり、ボタンが弾けそうなくらいキツそうな姿に。

　次いで、俺が悪戦苦闘していた部室のドアに手をかざした。指先から線香くらいの小さな光が出た瞬間、鍵がかちゃりと音を立てる。

「ほら、開けたよ」

　元気よくドアを開けて、得意げに笑う幼馴染。部室の戸締りはあっけなく膝を屈したらしい。まだ谷間の残り香で頭がボーっとしている俺の頬を、白い手がぺちぺち叩いてくる。

「カメラ仕掛けるんでしょ？　早くしないと昼休み終わっちゃうよ？」
「あ……ああ……！」

　色々と言いたいことはある、聞きたいこともある。美緒とも、あの二人の魔女とも、もっと話をしなきゃならない。けどそれも、目的は果たしてからだ。

　入室した瞬間、近所のホームセンターで農業用の防毒マスクでも買っておけばよかったと後悔した。部室内は予想以上の汗臭さで、俺からすればこの悪臭だけで虐待だ。美緒の谷間の匂いとはえらい違いで、彼女も鼻に手を当てている。まあこれはクソ教師のせいじゃないかもだけど。
　丁度室内全体を取れそうな場所に棚があったので、そこへカメラを仕掛けた。スマホで動作確認も行った上で、とっとと脱出した。

「ね、ケンちゃん」

　魔法で再び施錠して証拠を隠滅し、美緒はまた俺に笑いかけた。それだけで良い匂いがして、部室の悪臭を上書きしてくれるような、明るい笑顔だ。可愛い女の子だってことは知っていたけど、こんなに美人だったか？

「小さい頃ってさ、私が困ったときにはいつも助けてくれたよね。ケンちゃんが困ってたときは、私が助けてさ」
「……そうだった、な」

　俺が怪我したとき、こいつが走って絆創膏取ってきてくれたっけ。俺は俺で、美緒が野良犬に絡まれてるところを助けてやったりした。
　ちゃんと覚えていてくれたのか。

「ね、私をお嫁さんにしてくれる約束、覚えてるよね？」
「……！」

　……それも覚えていてくれたのか。

「あはははっ、ケンちゃん、顔真っ赤〜」
「うおっ⁉︎」

　熱くなった顔に、柔らかくてスベスベしたものが当たる。今度は胸じゃなくて、頬擦りされている。
　顔が近い。昔、遊びでキスした美緒の顔が、すぐ側に……

「ね、今すぐキスして結婚しちゃおっか？」
「何言ってんだお前!?　本当に何があったんだよ!?」
「あ、ケンちゃん、私が正気じゃないって思ってる？」

　抵抗しようとする俺を抱き締めて、拘束する美緒。振り解けなかった。単に筋力の問題じゃなくて、別の力で押さえつけられているような感覚があった。やっぱり美緒は、あの二人と同じ力を与えられて……いや。

　あの二人と『同じ生き物』になっている。

「正気なの、私。ただ本性をさらけ出しただけ！」

　次の瞬間、唇に柔らかいものが当たった。ほんのり甘い、懐かしい感触。小さい頃と違うのは、舌が俺の口の中へ押し入ってきたことだ。ちゅるちゅる音を立てながら、自分の舌を絡め取られて……蹂躙される、ってこういう感じか。

　入ってきたのは舌だけじゃない、甘い吐息が体の奥深くまで染み込んでくる。体から力が抜けて、されるがままになってしまう。
　美緒のキスはしつこく続いた。たまに唇を離して「ケンちゃん」とか「大好き」とか呟いて、また舌を入れてくる。口の周りが涎でベトベトになるころ、ようやく終わった。

　息を整えながら微笑む美緒は、昔みたいに可愛くて、昔と違って恐ろしかった。それなのに、こいつのことが好きって気持ちが抑えられない。脱力しきった俺の体をぎゅっと支えて、まるでデカいテディベアでも抱いているみたいに、頭を撫でてくる。

「私、もう人間だった頃とは違うんだよ。昔みたいに……昔よりもっと、ケンちゃんを助けるから」
「……俺のこと……」
「ん？」

　ぱっちりとした灰色の眼が、じっと見つめてくる。見ていると不思議な気分になる魔女の眼だけど、間違いなく美緒の眼だった

「俺を……ずっと、想って、くれてた……のか……？」
「……うん」

　はにかみ笑いを浮かべる、俺の幼馴染。ここまでやっておいて気恥ずかしげな様子が、なんだかこいつらしい。

　もうどうなっても構わない、このままこいつとイチャついていたい。そんな思いに浸りかけていた俺は、校舎の方から聞こえる予鈴で現実に引き戻された。

「う〜、昼休み終わった〜」

　美緒も残念そうにぼやきながら、俺に抱きついたまま離れようとしない。ずっしりした胸が押し当てられたままだ。

「美緒、教室に戻らないと……」
「分かってるけどさぁ……離れたくない……ケンちゃんは？」
「お、俺だって……」

　離れたくない。思っていた形とは違ったけれど、せっかくこいつとまた話せて、くっつき合えたんだから。


「サボっちゃえばいいじゃん」

　……予鈴が終わるのと入れ替わるようなタイミングで、すっかり聞き慣れた声がした。

「もう授業受けてる場合じゃないでしょ？」
「お、お前ら……」

　学校の制服じゃなくて魔女の衣装を着た、マルガとハリシャ。どうしてここに、とか訊くのはマヌケだろう。多分最初から見ていたんだろうから。

「あ……そっか。もう私、人間じゃないんだし」
「そうそう。やりたいことヤればいいんだよ」
「それに……」

　後ろから、ハリシャがくっついてきた。少し屈んで、胸を背中に押し当てながら、俺の股間を撫でる。

「う……ッ！」

　女の子の指先がそこに触れる感触。思わず声が出てしまった。

「勃起、してるわね」
「えっ、そうなの!?」

　美緒がなんだかワクワクしたような顔で、ガシッとそこを掴んでくる。

「わ……わっ……硬い……！」
「ミオちゃんのおっぱいとキス、効いたみたいだね」

　マルガも俺にぴったりとくっついて、顔を寄せてくる。俺は心臓が破裂しそうだけど、心なしかマルガも顔が赤いように見えた。

　けどそれ以上に興奮したのは、人外になったらしい幼馴染が、息を荒げながら股間をまさぐってくることだった。視線というか眼光がメチャクチャ熱い。美緒には違いないのに、姿形は人間なのに、すでに別の生き物になっていることがそれだけで分かるくらい。
　それがどうしてか、無性に魅力的だ。ズボン越しにナニをカリカリ擦られるのも、すごく気持ちいい。

「ケンちゃん、これ、気持ちいいの？」
「う、うん……」

　見透かされていた。マルガとハリシャもクスクス笑っている。

「そのままイかせるの？　パンツに精液吸わせてもしょうがなくない？」
「服を消す魔法、できるでしょ？」
「あ、そっか」

　美緒がパッと俺から離れると、指をピンと立てて、知らない言葉で呪文を唱えた。短いけど綺麗な、歌うようなリズムで。
　次の瞬間、俺は真っ裸にされていた。制服からベルト、パンツに至るまで、全部一瞬で消滅してしまった。もう魔法と書いて理不尽と読むべきじゃないか。

「わ、わ……ケンちゃんのおちんちん……！」

　抑えるものがなくなって上を向いたそれを、目を輝かせて見つめる美緒。反射的に隠そうとしたけど、マルガとハリシャに左右から腕をがっしり掴まれる。

「だーめ。男らしくエッチしなよー」
「ただ気持ちよくなればいいだけよ」

　耳元でささやかれて、両側から耳へキスをされた。途端に体から、すーっと力が抜けていく。
　魔女どもは俺を支えてくれたが、身長差があるせいで俺の頭が2人の胸……胸元が開いた衣装の、丸出しの谷間に受け止められる格好になった。さっきの美緒のおっぱいに勝るとも劣らない、ボリューミーで柔らかい感触。そうだ、初めて会ったときもそうだった。どんどん幸せな気分になる、魔法のおっぱい……

「あぁ……柔らかいぃ……」

　思わず声が出た。2人は笑ったりしないで、優しく頭を撫でてくれる。

「ケント、かーわいいっ♥」
「簡単でしょ？　そのまま身を任せて」

　耳に流し込まれる声が、ハチミツみたいに甘い。このまま声と胸に身を任せたい。谷間でムニムニ挟まれて、瞼がだんだん重くなってきた。

「……うりゃ」

　ふいに、股間を圧迫された。左右からむにゅっと。

「ほらほら、こっち見てよっ」

　美緒が拗ねたような顔で、俺のナニを挟み込んでいた。何で挟んでいるかは、言うまでもなく。

　パイズリだ。実在したのかこの現象は。しかも美緒にしてもらう日が来るなんて。
　ナニは全部谷間に埋もれて、全く見えなくなっていた。こっちが小さいんじゃなくて、胸の方がデカすぎるんだと信じたい。

「もっと思いっきり、上下に擦っちゃっていいと思うよ」
「こんな感じ？」

　美緒は自分の巨乳をむぎゅっと掴んで、上下にすり合わせた。ボリューミーな丸い胸が変形しながら上下する、その光景だけでも凄いのに、その刺激を受けているのは俺の股間だ。ただ柔らかいだけじゃなくて、肌の感触がすごく気持ちいい。挟まれてるだけでもたまらないのに、激しく擦り合わされて、自分でするのとは比べ物にならない快感だ。
　くりっとした灰色の目でこっちを見上げ、美緒は満足そうに笑う。俺、今どんな顔してるんだろう。

「魔物の肌は気持ちいいでしょ？」

　ハリシャが囁いた。

「人間の女の子にしてもらうときは、ちゃんとローションとか使わないと痛いわよ」
「ま、もう人間のカラダじゃ満足できなくなるだろうけどね。オナニーとかもできなくなっちゃうかも」

　さり気なく怖いことを言われた。こいつら、人の人生をホイッと変えやがって。

　ああ、けど……めちゃくちゃ幸せだ。

「あ。おっぱいの中で、ちんちんが動いてる」
「そのまま胸に出してもらいなよっ」

　マルガが何だか、ウキウキした様子だ。そういや俺のオナニーを覗き見しようとしてたな。どんだけ痴女なんだ。いや、今は美緒もか。

「ケンちゃんっ、出して♥」

　美緒が思いっきり胸を寄せてきた。大きな膨らみがひしゃげて、間のペニスをぎゅっと圧迫してくる。

　やばい。気持ちよすぎて、やばい。

「みぃ、ちゃん……」

　自然と、子供の頃みたいに読んでいた。そうしたら美緒は、何だかすごく嬉しそうに笑って……
　俺はどくどくと、射精していた。

「あっ、なんか、なんか熱い……♥」

　声を上げながらも、幼馴染はペニスを胸で閉じ込めて離さない。猛烈に気持ちいい射精は谷間へ封じられて、それでもなかなか終わらなくて。射精の気持ち良さなんて一瞬なのに、何だかやけに長く感じた。
　錯覚じゃない。白いネバネバしたやつが、とうとう胸の隙間からぬるぬると溢れ出した。俺の金玉ってこんなに容量あったのか、と驚くくらい、凄い量。

「わ、わ！　なんかすっごい……本当に白いんだ、コレ！」

　変な感動の仕方をしている美緒。

「うん、良い射精量……ボクらの魔力、ちゃんと染みてたみたいだね」
「そうね。これならお互い、思いっきり楽しめそう」

　クスクス笑う魔女たち。ああ、俺もこいつらに何かされてたのか……そんな恐ろしい事実も、すんなり受け入れてしまう。
　だって、めちゃくちゃ気持ちいいし。しかも大好きな美緒と……みぃちゃんと、こんなことができたんだから。

「うわぁ……♥」

　やっと射精が止まった頃、巨乳が股間から離れた。ひどい光景、かつエロい光景だった。白くて柔らかくて、綺麗な丸みを帯びた、芸術的な膨らみの間に俺の汚いナニがある。そして左右のおっぱいと肉棒の間で、精液が蜘蛛の巣みたいに糸を引いていた。

　それよりもエロいのは、うっとりとした幼馴染の表情。けれどふいに、どこか心配そうな顔でこっちを見てきた。

「……ケンちゃん、病気とかじゃないよね？」
「え……？」
「いや、なんか……精液って、こんなにベトベトなものなのかなー、って」

　……思わず笑ってしまった。人間じゃなくなって、こんなスケベになっても、こういうところは変わらないのか。マルガとハリシャも笑っている。

「これが普通よ。まあ私も何度も見たことあるわけじゃないけど」
「そ、そうなんだ……」

　手で胸の谷間を開いたり閉じたりして、精液の感触を確かめている美緒。ムワッと生臭さが漂ったけど、それで体を汚されても全然嫌そうじゃない。

「舐めてみなよ。きっと美味しいよ」
「う、うん。なんか、すっごく良い匂い……」

　幼馴染はワクワクした様子に戻り、巨乳を汚す白濁を指で掬い取った。ためらうことなくそれを、俺の股間から出た液体を口へ運ぶ。

「んっ……♥」
「どんな味？」

　尋ねたマルガも、なんだか興奮していた。
　そう言えばこいつは生まれたときから魔女だったから、今まで何度もこんなことをしていたんだろうか。いや、ただエロいことが好きなだけなら、俺をしつこく誘惑しないで他をあたれば良かったんじゃないか？

「なんか、甘くて、とろってしてて……匂いがふわーって、鼻に抜けて、幸せな味で……」

　こちらの疑問なんて知るわけもなく、美緒はマルガの質問に答える。俺の精液を舐めた感想を。

「あと、すっごく……ケンちゃんだな、って味がする」

　奇妙な食レポを終えて、美緒は貪るように精霊液を食べ始めた。おっぱいをぐっと持ち上げ、直接下で舐め取っている。大きいって便利だな、なんてことを半ば呆れながら考えた。

「ミオちゃんは幸せそうだね。で……」

　ぐいっと身を乗り出し、俺の顔を覗き込む金髪の魔女。灰色の瞳がキラキラ輝いている。

「キミは、どんな気分？」

　……その瞳は、望みは叶ったか、と訊いていた。
　文句を言おうと思えば、言える。俺が望んだ形じゃなかったとか、人間としての尊厳がどうとか。

　けれど美味しそうに白濁を啜る、じゅるじゅるという音を聞いていると、そんなことはどうでもよくなってくる。それに、美緒の胸でイカされた快感の余韻が、まだ体を包んでいるみたいだ。

「幸せ、だよ……」

　正直で率直な感想しか、口から出てこない。美緒の頭を撫でながら、ひたすら多幸感に浸っていた。

「よかった。なら……」










「代償は遠慮なくいただくわ」

■作者メッセージ
お読みいただき、ありがとうございます。
他のものを書いたり、軽くスランプ気味だったりしてかなり遅くなってしまいました。
次回でようやく本気のエロシーンを書ける……！