前編
……ルージュ・シティ 市営牧場……
……今日は、良い天気だ。
鳥小屋の外で、僕はいつものように天気のことを考えた。朝だから空気は冷えているけど、雲ひとつ無い空に太陽が輝き、昨夜降った雨の跡を乾かしていく。その下で、僕と兄に取り押さえられた鴨が鳴き声一つ上げられずに、ただ息をしている。やかましく鳴く鴨も、両翼の端を背中で重ね合わせるようにしてやると、不思議と声を出せなくなるのだ。すでに屠った仲間の姿を見せないように、兄が手で目隠しをしている。
「良い天気だね、兄さん」
「ああ、今日も暑くなるな」
腰にさした包丁を抜いて、兄は答えた。小柄な僕と逆に、兄は屈強な体つきだ。よく研いだ包丁が日の光に煌めき、何とも言えない迫力を生み出している。
「涼しいうちに終わらせちまおう」
「そうだね」
いつも通りの会話だ。平和な、僕ら屠殺人の日常。家畜だって、蒸し暑い中で死にたくはないだろう。
僕は鴨を取り押さえる手に力を込める。兄は包丁の柄を口に咥え、両手で鴨の首を掴み……一気に捻った。
頸骨が折れた後、兄は包丁を鴨の首にあてがう。よく研いだ包丁は、兄の腕により素早く、鋭く鴨の頸動脈を切り裂いた。
血が噴きでないよう首元をしっかり握ったまま、僕が鴨の体を逆さにして持ち上げ、バケツ型の容器に頭から突っ込む。
これで一段落だ。このまま血を抜き、一度熱湯に入れて羽を取りやすくする。羽毛を全てむしるのが一番面倒くさい作業で、その後に解体。もっとも、鮮度の高い肉は死後硬直が解けておらず硬いため、食べるにはしばらく間をおく必要がある。まあ鴨は小さいから、それほど時間はかからない。
これが、僕らの日常。物心つく頃からやってきた、僕らリートゥス家の家業。父の死をきっかけに、このルージュ・シティに引っ越してきてからも変わらない。だが昔よりはマシだ。故郷と違って、この町には屠殺人であることを理由に、石を投げつけてくるような輩はいない。僕だって、気分のいい仕事ではないと思う。でも、誰かがやらなければならない仕事だ……父はそう言っていた。
「っと、今日はヅギの旦那が来るんだっけ……。クルト、悪いが砥ぎに出した包丁、受け取ってきてくれないか?」
「了解、行ってくる」
……その前に、今殺した鴨に対し、手を合わせて黙祷する。兄も同様に、静かに鴨に感謝の念を捧げた。豊かな都会に暮らしている人々は、自分たちが他の生き物の命をもらって生きていられることを、ついつい忘れてしまう。「いただきます」というごく当たり前の言葉の意味さえ、忘れてしまっていることだろう。しかし、常にその現場に携わっている僕ら屠殺人や猟師は、忘れようがない。
だからこそ、こうして家畜たちに感謝し、冥福を祈る。屠殺に使うナイフをよく研磨するのも、極力痛みを感じさせないためだ。よく切れる刃物で切られても、その瞬間は痛みを感じない。牛のような大きな家畜となると、全く苦しませないようにするのは困難だが、必要以上の苦痛を与えることは伝統的に禁じられている。
僕らが行っているのは、人々の生きる糧を作ること。誰も褒めてくれなくても、僕と兄さんはこの仕事に誇りを持っている。
「……?」
後ろを振り向いたその時。視界に一瞬だけ、影のようなものが見えた。影と言っても光のただ中で、むしろ黒い霧のような物が、一瞬だけ見えたのだ。形があるのか無いのか分からない、奇妙な何かが。しかし僕には、ふっと消えてしまったそれが、人の姿をしていたように思えた。
「クルト、どうした?」
「いや……行ってくるよ」
何かの幻覚だったのだろうか。最近仕事が多かったし……疲れのせいかもしれない。
何か気になりながらも、僕は町へ向かった。
「毎度あり。またな」
「はい、またお願いします」
研ぎ師の老人に代金を払い、僕は店から出た。往来には人と魔物が行き交い、仕立て屋、靴屋、ガラス屋などの工房が軒を連ねている。道ではジャイアントアントの少女が建築資材を運んでおり、空にはハーピーが郵便物を持って飛んでいる。人間と魔物の完全な共存を掲げて作られたこの町では、人と魔物が手を取り合って暮らしているのだ。
この町に来てよかったと思うことは、誰も僕らの仕事を蔑まないことだ。勿論最初にあった時は、屠殺人と聞いて微妙な顔をする人もいる。だが露骨な差別はないし、貴族達も上から目線ながら蔑んでくることは一切無い。領主が畜産に詳しい者を募集していたので越して来たが、僕と兄にとってここは理想的な町だった。
「おっ、クルトじゃないか」
呼び止められて、振り向く。陽気な笑みを浮かべた知り合いが、腰に手を当てて立っていた。
「やあ、コルバさん。ご注文の鴨ですが、今朝潰しました」
「おう、そうか。開店祝賀会には是非来てくれ」
コルバさんは僕の肩を叩き、明るく笑う。町で人気の料理人。彼がホルスタウロスである奥さんのミルクで作ったシチューは毎日すぐに売り切れてしまう。美容に良い薬草を多数使い、加えて精力増強の効果があるため、人と魔物のカップルには良いことばかりらしい。
彼はこの町から割と近いところ所にある、教団勢力下の町に住んでいたそうだが、奥さんと出会ったことがきっかけで亡命してきたらしい。その後しばらく屋台でシチューを売っていたが、この度ついに店舗を構えることとなったのである。そしてその祝賀会に使う鴨肉の用意を、僕らに依頼してきたわけだ。
「おめでとうございます。それにしても、お店が早く完成するみたいでよかったですね」
「ああ、着工まで時間はかかったけど、建て始めてからはあっという間。やっぱ魔物はスゲェよ」
しみじみと、コルバさんは言った。ルージュ街の建物はジャイアントアントによって建てられており、その速度と精度はかなりのものだ。この町は元々廃墟だったらしいが、領主がジャイアントアントを入植させて再建したのだという。実力は折り紙つきということだ。
最近になって魔物とつきあい始めた僕ら兄弟やコルバさんにとっては、彼女たちの能力には驚くばかりである。
「そうそう、エーリッヒとリウレナも来るぜ。勿論お祝いライブだ」
「それは楽しみですね、兄さんが喜びますよ。ではこの町の人気者のために、気合い入れてお肉を準備します」
「頼むぜ。ライジェにも宜しく伝えてくれ」
コルバさんは軽く手をかざし、歩き去っていった。完成間近の店を見に行くのだろう。
ライジェ、というのが兄の名だ。僕らはコルバさんやその他の友人からは「肉屋のリートゥス兄弟」と呼ばれている。屠殺人と呼ばないのは彼らなりの思いやりかもしれない。呼び名を気にする気は無いが、そうやって気遣ってくれる友人がいるというだけで、僕らの励みになる。
「よし、頑張らないと……」
コルバさんの注文は、肉の熟成日数まで指定されたものだった。だから開店祝賀会の日に合わせて作業をしていく必要がある。
僕は布にくるまれた肉切り包丁を手に、近道をするべく露地裏に入った。こういう普段見えない個所まで治安が良いのも、この町の良い所だろう。建物の隙間から差してくる日の光が、むしろ不思議な雰囲気を作っている。道も綺麗に清掃され、嫌な臭いもない。
「きゃうん……もっと、もっとぉ……」
「くっ……俺、もう……!」
……いや、時々生臭いことはあるが。
露地裏の狭いスペースで、情事に及ぶ人たちがいるわけだ。魔物のいる町ではそれほど珍しくは無いし、他者に迷惑をかけないならいいという理由で、警官隊も黙認している。そもそも、今僕の目の前でまぐわっているのが顔見知りの警官とワーウルフだったりする。特に獣人系の魔物は性欲がやたらと強く、なかなか抑えが効かないらしい。仕方なくこのような箇所で、溜まった物を処理する必要があるのだ。
「お、リートゥス……ううっ!」
「あ、こんにちわ……あっ、あおおおおおん♪」
僕に気づき律儀に挨拶するものの、二人ともそのまま絶頂し、長い嬌声を上げた。往来を歩いている人たちは「よくあること」として済ませている。
荒く息を吐いてすっきりしたらしい二人は、いそいそとズボンを履く。警官は気恥ずかしそうに苦笑を浮かべ、ワーウルフの方は晴れ晴れとした顔をして、路地から出て行った。
警官達は結構気苦労が多い。今の彼も、酒の席になるとかなり愚痴っぽくなる。そうした鬱憤を、相棒の獣欲を利用して発散しているのだろう。いつも町を守ってくれているのだから、あのくらいは許してやらないと……。僕はため息を吐いて彼らを見送ると、再び歩を進めることにした。
しかし。
「……クルト・リートゥス」
静かな声が、僕の名を呼んだ。
僕の目の前に、ここにいるはずも無い人物がいたのだ。
身につけているのは白いシャツと赤いスカートという、その辺の女性と同じものだった。しかし、中身の方は尋常ではない。砂金の滝ような、長い金髪。吸い込まれそうなほどに澄んだ、青い瞳。高級な人形のごとく整った、その顔立ち。そして、豊満な胸。それらと相反するような質素な服装が、逆にその美しさを引きたて、光を纏っているようにさえ見えた。薄暗い路地裏に、月明かりのような美しい光が灯った。
「どうして、あんたがここに……?」
そう問いかける僕は、かなり動揺していた。
彼女はエナ・ライエンベルグ。僕の住んでいた地方の貴族の令嬢で、僕の初恋の相手であり、僕が最も憎んでいる人物。
「クルト、その……久しぶりね」
おずおずと、彼女は頭を下げる。
しおらしい態度に胸が高鳴ったが、僕はそれを押さえこんだ。この高鳴りは懐かしさと、彼女への憎しみ……彼女と喋っても、きっと僕はロクなことを言わないだろう。下手をすれば彼女に暴力を振るってしまうかもしれないし、それが問題になったら今の生活も壊れてしまう。
だから僕は何も言わず、彼女の脇を通り抜けようとした。
「あ、待って! 話を聞いて!」
彼女の細く白い手が、僕の腕を掴む。だがその瞬間、僕のスイッチが入ってしまった。自制も聞かずに、こみ上げてきた思いを吐き出すべく、口が開いてしまう。
「何も無いよ、あんたと話すことなんて!」
僕は叫んだ。脳内に、故郷にいた頃の記憶が蘇ってくる。
エナは僕らの村から少し離れた町に住む、貴族の娘だった。子供の頃、僕と兄が町に行ったときに、一緒にままごとだの、鬼ごっこだのをして遊んでいた。彼女がきらきらした瞳で、僕らと一緒に町を駆け回っていたのを、今でも鮮明に覚えている。
あの頃から、エナは光り輝いていたように思う。少なくとも僕の中では、彼女は何にも増して美しかった。鬼ごっこをしたとき、彼女に捕まえてほしくてわざと遅く走り、女の子に負けたことを兄からからかわれた。かくれんぼをしたとき、彼女が木の後ろにいるのに気づいていても、見を縮こまらせて隠れている彼女が可愛くて、わざと見逃していた。彼女の澄んだ笑い声が、綺麗な瞳が、僕の生きる希望だった。
しかし僕らが大人になり始めた頃、次第に会わなくなっていった。僕らは屠殺人の家業に精を出すようになり、エナはきっと、社交界へ出るようになったのだろう。僕ら下級労働者と会う機会なんて、減って当然だ。
そして父が死ぬ少し前、エナが教団の軍人と結婚するという話を聞いた。複雑な気分だったが、それでも彼女の結婚を祝おうと、花と肉を持って町へ向かったのだ。
しかし、式場に着いた僕は愕然とした。エナはすっかり変わっていたのだ。貴族に相応しい衣食、貴族に相応しい友人、そして貴族に相応しい結婚相手……そんな物で周りを固められた彼女にとって、僕ら屠殺人は最早人間ですらなかったのだ。
「僕はただ、あんたの幸せを祝いたかった。それなのにあんたは……僕を見るなり眉を顰めて言った。汚らわしい、ってさ!」
まくし立てるように、自分の感情を言葉にしてエナにぶつける。彼女はじっと俯き、ただ僕の言葉を受け入れているが、その態度が更に僕を加速させた。
「家畜を殺すだけで、みんなの食べ物を作るだけで汚らわしいのか!? 人を殺すのが仕事の軍人と結婚して、さぞかし幸せだろうね! そもそも肉が地面から生えてくるとでも思ってるのか!? 僕らが手を汚して作っているんだよ!」
自分でもいつ終わるか分からない、非難の言葉の濁流。今まで溜まっていた思いが次から次へと出てくる。
しかし、その中の僅かな合間に、エナが口を挟んだ。
「……ごめんなさい」
……ごめんなさい? 謝罪?
その一言で、僕の舌は凍り付いたように動かなくなった。ただ単なる、謝罪の一言。にも関わらず、その重みに言葉を呑み込んでしまう。
何故だ、こんな言葉で許せるわけないのに。彼女のことなんて、もう好きでも何でもない、ただ憎いだけのはずなのに。
「私ね、夫から逃げてきたの」
「えっ?」
いきなりの告白に、僕は戸惑った。
「最初は確かに幸せだった……でも、段々あの人は私に冷たくなって……仕事が上手くいかないと、私に八つ当たりして……。私って身勝手ね、そうしているうちに、貴方やライジェと遊んでいた頃が懐かしく思えてきた」
目元に涙を浮かべ、エナは語る。
彼女のこんな姿なんて初めて見たし、むしろ貴族も僕らと同じように涙を流すことに、奇妙な関心を覚える。だがエナの涙に、何故か僕まで胸が痛くなってきた。
「貴方達はみんなの食べ物を作る、立派な人間だって気付いた……許してもらえないって、分かってる……でも、会って謝りたかったの。本当に……ごめんなさいッ!」
深々と頭を下げるエナの姿に、あの結婚式の時の面影は無く、むしろ一緒に遊んでいた頃の無邪気な彼女に戻ったかのようだ。
僕は本当に、今も心の底から彼女を憎んでいるのだろうか。いや、彼女の謝罪の言葉を聞くまでは、本当に憎んでいただろうが、今ではもうその憎しみが、すでに過去のもののように感じる。『ごめんなさい』……ただそれだけのシンプルな言葉の優しさが、僕の憎しみを洗い流してしまったかのように
許してしまって、いいのか?
エナは顔を上げず、微かに嗚咽が聞こえる。もう駄目だ、見ていられない。
「エナ、もういいよ」
できるだけ優しく聞こえるよう注意しながら語りかけると、エナはゆっくりと顔を上げ、僕を見た。涙で潤んだ瞳が儚い美しさを作りだし、また胸が高鳴る。
「もう、いいんだ。謝ってくれて……僕たちのことを分かってくれただけで、僕は嬉しいから」
そう言った瞬間、僕は温かくて柔らかい感触に包まれた。
「え、エナ?」
「クルト……ありがとう!」
エナが抱きついてきたのだと知覚するまで、やや間が空いた。軽くパニックになる。子供のころはじゃれ合って抱きついてくることもあったが、今はあの頃とはいろいろと違いがある。
それに思い切り抱きついてくるから、彼女の豊満な胸が当たって……!
「ちょ、ちょっと、エナ!」
「……クルト?」
エナはきょとんとした顔で、何故か下を見る。
僕はその段階でようやく気付いた。エナの胸の感触だけで、僕のペニスが勃起してしまっていることに。そしてあろうことか、それがエナの腰に当たっていることに。
「え、エナ、これは、そのッ!」
「クルト、顔赤い……」
エナは悪戯っぽい笑みを浮かべたかと思うと、急に僕の股間を撫でてきた!
「―――ッ!?」
エナの手が、指が、僕の最も卑猥な部分を愛撫している。その現実に頭は混乱し、顔は熱くなる一方だった。
エナはそんな僕を見て楽しむかのように、今度はペニスをズボン越しに掴んできた。
「クルトのこれ、凄く硬い……ズボンの上からなのに、熱くなってるのが分かるわ」
「え、エナ、止めて」
しかしエナは制止も聞かず、ペニスの感触を確かめるように、むにむにと手を動かす。何故彼女がこんなことをするのか……その疑問をまともに考えることさえできないまま、僕の意識はぼーっとしていった。初恋の幼馴染が、僕にエッチなことをしているという現実が、妨げ用の無い興奮をもたらしているのだ。
「きつそう……痛くない?」
「あ……エナぁ……」
思わずエナを抱きしめると、彼女は嬉しそうに笑いながら、僕のベルトをはずしにかかった。
「直接、触りたいの」
「ううっ」
ズボンとパンツを降ろされ、下半身に冷たい空気を感じたのもつかの間、エナの柔らかい手が直にペニスを刺激してきた。すべすべの掌と、悪戯な指先に感じてしまう。
「あ、ヌルヌルが出てきた。気持ちいいのね?」
「う、うん……」
「私の手で感じてるんだ、嬉しいな……クルトも、私に触って?」
エナの言葉を聞いた瞬間、僕は彼女の臀部に手を伸ばし、思い切り揉んだ。柔らかい。指がめり込んでいきそうなほどに。
子供のころ、鬼ごっこで逃げる彼女の後姿を見たときから、ずっと触ってみたかった。それが今、叶ったのだ。
「お尻、好きなのね」
エナは微笑を浮かべ、「良い子、良い子」と呟きながら、亀頭の先を撫でてくる。彼女の手が、言葉が、全てが僕の情欲を刺激した。
「エナ、もう……!」
「――クルト、私と、する?」
僕が一瞬固まると、エナは一旦離れ、長いスカートを一気にまくりあげた。その瞬間、僕の視線は純白の下着にくぎ付けになる。そこには尿とは異なる液体が染みを作り、芸術的なまでに美しい太腿にも滴っていた。
そしてエナはスカートの裾を口に咥え、下着を降ろす。愛液の源泉が、彼女の最も神聖な部分が、僕の目の前に曝け出された。開いた割れ目の合間から、卑猥な、美しいピンク色の肉が覗いている。
エナはその体制のまま、僕をじっと見つめていた。何かを期待するような目で。
「エナ!」
我慢など、自制など、できるはずがない。
彼女に抱きつき、立ったままペニスを花園に押し入れようとした。しかし互いの潤滑液でぬめり、ペニスは彼女の恥丘表面をつるりと滑ってしまう。
焦ってやり直しても、結果は同じ。するとエナが手でペニスを掴み、角度を調整してくれた。そのまま、僕らの下半身は結合する……
「あ、ああんっ♪」
「うあっ……エナァ!」
先端、カリ首、竿……根元まで入るった。
彼女の中に、処女膜と呼ばれる門の感触は無かった。しかし彼女の花園は、僕を激しく歓迎してくれた。ぬめぬめした肉壁がペニスを圧迫し、腰を動かす度にひだが刺激してくる。
エナの方も、端正な顔を最大限に蕩けさせ、恍惚の表情を浮かべていた。
「んっ……ひゃん♪ 私のココと、クルトのコレ……相性、最高なのねぇ♪」
「エナ、凄い…ッ! もう……!」
「だめ、一緒にぃ……一緒にぃ!」
僕は必死で、腰を突き動かした。ぱんぱんと肉の弾ける音が、露地裏に響く。快感のあまりのけ反り、感極まって泣き出すエナを更に突き上げると、僕はいよいよ限界に達した。
「エナ、出る!」
「来てぇ! アツアツのを……中に出してぇ!」
「エナぁ!」
「クルトぉ♪」
互いの名前を呼び合い、絶頂。エナの膣はペニスを搾るかのように締め付け、僕はそこへ最高の快感と共に精を迸らせた。ほんの少しの間の快楽が、永遠に続くかのようだった。
そしてそれが収まってきた頃、僕らの結合部分から水音が聞こえた。エナが脱力のあまり、失禁してしまったのだ。その音に耳を傾けながら、僕は呆けた表情のエナと抱き合った。
「……一つに、なれたね……♪」
エナの囁きに、僕は今更ながら……彼女とキスを交わした。
……今日は、良い天気だ。
鳥小屋の外で、僕はいつものように天気のことを考えた。朝だから空気は冷えているけど、雲ひとつ無い空に太陽が輝き、昨夜降った雨の跡を乾かしていく。その下で、僕と兄に取り押さえられた鴨が鳴き声一つ上げられずに、ただ息をしている。やかましく鳴く鴨も、両翼の端を背中で重ね合わせるようにしてやると、不思議と声を出せなくなるのだ。すでに屠った仲間の姿を見せないように、兄が手で目隠しをしている。
「良い天気だね、兄さん」
「ああ、今日も暑くなるな」
腰にさした包丁を抜いて、兄は答えた。小柄な僕と逆に、兄は屈強な体つきだ。よく研いだ包丁が日の光に煌めき、何とも言えない迫力を生み出している。
「涼しいうちに終わらせちまおう」
「そうだね」
いつも通りの会話だ。平和な、僕ら屠殺人の日常。家畜だって、蒸し暑い中で死にたくはないだろう。
僕は鴨を取り押さえる手に力を込める。兄は包丁の柄を口に咥え、両手で鴨の首を掴み……一気に捻った。
頸骨が折れた後、兄は包丁を鴨の首にあてがう。よく研いだ包丁は、兄の腕により素早く、鋭く鴨の頸動脈を切り裂いた。
血が噴きでないよう首元をしっかり握ったまま、僕が鴨の体を逆さにして持ち上げ、バケツ型の容器に頭から突っ込む。
これで一段落だ。このまま血を抜き、一度熱湯に入れて羽を取りやすくする。羽毛を全てむしるのが一番面倒くさい作業で、その後に解体。もっとも、鮮度の高い肉は死後硬直が解けておらず硬いため、食べるにはしばらく間をおく必要がある。まあ鴨は小さいから、それほど時間はかからない。
これが、僕らの日常。物心つく頃からやってきた、僕らリートゥス家の家業。父の死をきっかけに、このルージュ・シティに引っ越してきてからも変わらない。だが昔よりはマシだ。故郷と違って、この町には屠殺人であることを理由に、石を投げつけてくるような輩はいない。僕だって、気分のいい仕事ではないと思う。でも、誰かがやらなければならない仕事だ……父はそう言っていた。
「っと、今日はヅギの旦那が来るんだっけ……。クルト、悪いが砥ぎに出した包丁、受け取ってきてくれないか?」
「了解、行ってくる」
……その前に、今殺した鴨に対し、手を合わせて黙祷する。兄も同様に、静かに鴨に感謝の念を捧げた。豊かな都会に暮らしている人々は、自分たちが他の生き物の命をもらって生きていられることを、ついつい忘れてしまう。「いただきます」というごく当たり前の言葉の意味さえ、忘れてしまっていることだろう。しかし、常にその現場に携わっている僕ら屠殺人や猟師は、忘れようがない。
だからこそ、こうして家畜たちに感謝し、冥福を祈る。屠殺に使うナイフをよく研磨するのも、極力痛みを感じさせないためだ。よく切れる刃物で切られても、その瞬間は痛みを感じない。牛のような大きな家畜となると、全く苦しませないようにするのは困難だが、必要以上の苦痛を与えることは伝統的に禁じられている。
僕らが行っているのは、人々の生きる糧を作ること。誰も褒めてくれなくても、僕と兄さんはこの仕事に誇りを持っている。
「……?」
後ろを振り向いたその時。視界に一瞬だけ、影のようなものが見えた。影と言っても光のただ中で、むしろ黒い霧のような物が、一瞬だけ見えたのだ。形があるのか無いのか分からない、奇妙な何かが。しかし僕には、ふっと消えてしまったそれが、人の姿をしていたように思えた。
「クルト、どうした?」
「いや……行ってくるよ」
何かの幻覚だったのだろうか。最近仕事が多かったし……疲れのせいかもしれない。
何か気になりながらも、僕は町へ向かった。
「毎度あり。またな」
「はい、またお願いします」
研ぎ師の老人に代金を払い、僕は店から出た。往来には人と魔物が行き交い、仕立て屋、靴屋、ガラス屋などの工房が軒を連ねている。道ではジャイアントアントの少女が建築資材を運んでおり、空にはハーピーが郵便物を持って飛んでいる。人間と魔物の完全な共存を掲げて作られたこの町では、人と魔物が手を取り合って暮らしているのだ。
この町に来てよかったと思うことは、誰も僕らの仕事を蔑まないことだ。勿論最初にあった時は、屠殺人と聞いて微妙な顔をする人もいる。だが露骨な差別はないし、貴族達も上から目線ながら蔑んでくることは一切無い。領主が畜産に詳しい者を募集していたので越して来たが、僕と兄にとってここは理想的な町だった。
「おっ、クルトじゃないか」
呼び止められて、振り向く。陽気な笑みを浮かべた知り合いが、腰に手を当てて立っていた。
「やあ、コルバさん。ご注文の鴨ですが、今朝潰しました」
「おう、そうか。開店祝賀会には是非来てくれ」
コルバさんは僕の肩を叩き、明るく笑う。町で人気の料理人。彼がホルスタウロスである奥さんのミルクで作ったシチューは毎日すぐに売り切れてしまう。美容に良い薬草を多数使い、加えて精力増強の効果があるため、人と魔物のカップルには良いことばかりらしい。
彼はこの町から割と近いところ所にある、教団勢力下の町に住んでいたそうだが、奥さんと出会ったことがきっかけで亡命してきたらしい。その後しばらく屋台でシチューを売っていたが、この度ついに店舗を構えることとなったのである。そしてその祝賀会に使う鴨肉の用意を、僕らに依頼してきたわけだ。
「おめでとうございます。それにしても、お店が早く完成するみたいでよかったですね」
「ああ、着工まで時間はかかったけど、建て始めてからはあっという間。やっぱ魔物はスゲェよ」
しみじみと、コルバさんは言った。ルージュ街の建物はジャイアントアントによって建てられており、その速度と精度はかなりのものだ。この町は元々廃墟だったらしいが、領主がジャイアントアントを入植させて再建したのだという。実力は折り紙つきということだ。
最近になって魔物とつきあい始めた僕ら兄弟やコルバさんにとっては、彼女たちの能力には驚くばかりである。
「そうそう、エーリッヒとリウレナも来るぜ。勿論お祝いライブだ」
「それは楽しみですね、兄さんが喜びますよ。ではこの町の人気者のために、気合い入れてお肉を準備します」
「頼むぜ。ライジェにも宜しく伝えてくれ」
コルバさんは軽く手をかざし、歩き去っていった。完成間近の店を見に行くのだろう。
ライジェ、というのが兄の名だ。僕らはコルバさんやその他の友人からは「肉屋のリートゥス兄弟」と呼ばれている。屠殺人と呼ばないのは彼らなりの思いやりかもしれない。呼び名を気にする気は無いが、そうやって気遣ってくれる友人がいるというだけで、僕らの励みになる。
「よし、頑張らないと……」
コルバさんの注文は、肉の熟成日数まで指定されたものだった。だから開店祝賀会の日に合わせて作業をしていく必要がある。
僕は布にくるまれた肉切り包丁を手に、近道をするべく露地裏に入った。こういう普段見えない個所まで治安が良いのも、この町の良い所だろう。建物の隙間から差してくる日の光が、むしろ不思議な雰囲気を作っている。道も綺麗に清掃され、嫌な臭いもない。
「きゃうん……もっと、もっとぉ……」
「くっ……俺、もう……!」
……いや、時々生臭いことはあるが。
露地裏の狭いスペースで、情事に及ぶ人たちがいるわけだ。魔物のいる町ではそれほど珍しくは無いし、他者に迷惑をかけないならいいという理由で、警官隊も黙認している。そもそも、今僕の目の前でまぐわっているのが顔見知りの警官とワーウルフだったりする。特に獣人系の魔物は性欲がやたらと強く、なかなか抑えが効かないらしい。仕方なくこのような箇所で、溜まった物を処理する必要があるのだ。
「お、リートゥス……ううっ!」
「あ、こんにちわ……あっ、あおおおおおん♪」
僕に気づき律儀に挨拶するものの、二人ともそのまま絶頂し、長い嬌声を上げた。往来を歩いている人たちは「よくあること」として済ませている。
荒く息を吐いてすっきりしたらしい二人は、いそいそとズボンを履く。警官は気恥ずかしそうに苦笑を浮かべ、ワーウルフの方は晴れ晴れとした顔をして、路地から出て行った。
警官達は結構気苦労が多い。今の彼も、酒の席になるとかなり愚痴っぽくなる。そうした鬱憤を、相棒の獣欲を利用して発散しているのだろう。いつも町を守ってくれているのだから、あのくらいは許してやらないと……。僕はため息を吐いて彼らを見送ると、再び歩を進めることにした。
しかし。
「……クルト・リートゥス」
静かな声が、僕の名を呼んだ。
僕の目の前に、ここにいるはずも無い人物がいたのだ。
身につけているのは白いシャツと赤いスカートという、その辺の女性と同じものだった。しかし、中身の方は尋常ではない。砂金の滝ような、長い金髪。吸い込まれそうなほどに澄んだ、青い瞳。高級な人形のごとく整った、その顔立ち。そして、豊満な胸。それらと相反するような質素な服装が、逆にその美しさを引きたて、光を纏っているようにさえ見えた。薄暗い路地裏に、月明かりのような美しい光が灯った。
「どうして、あんたがここに……?」
そう問いかける僕は、かなり動揺していた。
彼女はエナ・ライエンベルグ。僕の住んでいた地方の貴族の令嬢で、僕の初恋の相手であり、僕が最も憎んでいる人物。
「クルト、その……久しぶりね」
おずおずと、彼女は頭を下げる。
しおらしい態度に胸が高鳴ったが、僕はそれを押さえこんだ。この高鳴りは懐かしさと、彼女への憎しみ……彼女と喋っても、きっと僕はロクなことを言わないだろう。下手をすれば彼女に暴力を振るってしまうかもしれないし、それが問題になったら今の生活も壊れてしまう。
だから僕は何も言わず、彼女の脇を通り抜けようとした。
「あ、待って! 話を聞いて!」
彼女の細く白い手が、僕の腕を掴む。だがその瞬間、僕のスイッチが入ってしまった。自制も聞かずに、こみ上げてきた思いを吐き出すべく、口が開いてしまう。
「何も無いよ、あんたと話すことなんて!」
僕は叫んだ。脳内に、故郷にいた頃の記憶が蘇ってくる。
エナは僕らの村から少し離れた町に住む、貴族の娘だった。子供の頃、僕と兄が町に行ったときに、一緒にままごとだの、鬼ごっこだのをして遊んでいた。彼女がきらきらした瞳で、僕らと一緒に町を駆け回っていたのを、今でも鮮明に覚えている。
あの頃から、エナは光り輝いていたように思う。少なくとも僕の中では、彼女は何にも増して美しかった。鬼ごっこをしたとき、彼女に捕まえてほしくてわざと遅く走り、女の子に負けたことを兄からからかわれた。かくれんぼをしたとき、彼女が木の後ろにいるのに気づいていても、見を縮こまらせて隠れている彼女が可愛くて、わざと見逃していた。彼女の澄んだ笑い声が、綺麗な瞳が、僕の生きる希望だった。
しかし僕らが大人になり始めた頃、次第に会わなくなっていった。僕らは屠殺人の家業に精を出すようになり、エナはきっと、社交界へ出るようになったのだろう。僕ら下級労働者と会う機会なんて、減って当然だ。
そして父が死ぬ少し前、エナが教団の軍人と結婚するという話を聞いた。複雑な気分だったが、それでも彼女の結婚を祝おうと、花と肉を持って町へ向かったのだ。
しかし、式場に着いた僕は愕然とした。エナはすっかり変わっていたのだ。貴族に相応しい衣食、貴族に相応しい友人、そして貴族に相応しい結婚相手……そんな物で周りを固められた彼女にとって、僕ら屠殺人は最早人間ですらなかったのだ。
「僕はただ、あんたの幸せを祝いたかった。それなのにあんたは……僕を見るなり眉を顰めて言った。汚らわしい、ってさ!」
まくし立てるように、自分の感情を言葉にしてエナにぶつける。彼女はじっと俯き、ただ僕の言葉を受け入れているが、その態度が更に僕を加速させた。
「家畜を殺すだけで、みんなの食べ物を作るだけで汚らわしいのか!? 人を殺すのが仕事の軍人と結婚して、さぞかし幸せだろうね! そもそも肉が地面から生えてくるとでも思ってるのか!? 僕らが手を汚して作っているんだよ!」
自分でもいつ終わるか分からない、非難の言葉の濁流。今まで溜まっていた思いが次から次へと出てくる。
しかし、その中の僅かな合間に、エナが口を挟んだ。
「……ごめんなさい」
……ごめんなさい? 謝罪?
その一言で、僕の舌は凍り付いたように動かなくなった。ただ単なる、謝罪の一言。にも関わらず、その重みに言葉を呑み込んでしまう。
何故だ、こんな言葉で許せるわけないのに。彼女のことなんて、もう好きでも何でもない、ただ憎いだけのはずなのに。
「私ね、夫から逃げてきたの」
「えっ?」
いきなりの告白に、僕は戸惑った。
「最初は確かに幸せだった……でも、段々あの人は私に冷たくなって……仕事が上手くいかないと、私に八つ当たりして……。私って身勝手ね、そうしているうちに、貴方やライジェと遊んでいた頃が懐かしく思えてきた」
目元に涙を浮かべ、エナは語る。
彼女のこんな姿なんて初めて見たし、むしろ貴族も僕らと同じように涙を流すことに、奇妙な関心を覚える。だがエナの涙に、何故か僕まで胸が痛くなってきた。
「貴方達はみんなの食べ物を作る、立派な人間だって気付いた……許してもらえないって、分かってる……でも、会って謝りたかったの。本当に……ごめんなさいッ!」
深々と頭を下げるエナの姿に、あの結婚式の時の面影は無く、むしろ一緒に遊んでいた頃の無邪気な彼女に戻ったかのようだ。
僕は本当に、今も心の底から彼女を憎んでいるのだろうか。いや、彼女の謝罪の言葉を聞くまでは、本当に憎んでいただろうが、今ではもうその憎しみが、すでに過去のもののように感じる。『ごめんなさい』……ただそれだけのシンプルな言葉の優しさが、僕の憎しみを洗い流してしまったかのように
許してしまって、いいのか?
エナは顔を上げず、微かに嗚咽が聞こえる。もう駄目だ、見ていられない。
「エナ、もういいよ」
できるだけ優しく聞こえるよう注意しながら語りかけると、エナはゆっくりと顔を上げ、僕を見た。涙で潤んだ瞳が儚い美しさを作りだし、また胸が高鳴る。
「もう、いいんだ。謝ってくれて……僕たちのことを分かってくれただけで、僕は嬉しいから」
そう言った瞬間、僕は温かくて柔らかい感触に包まれた。
「え、エナ?」
「クルト……ありがとう!」
エナが抱きついてきたのだと知覚するまで、やや間が空いた。軽くパニックになる。子供のころはじゃれ合って抱きついてくることもあったが、今はあの頃とはいろいろと違いがある。
それに思い切り抱きついてくるから、彼女の豊満な胸が当たって……!
「ちょ、ちょっと、エナ!」
「……クルト?」
エナはきょとんとした顔で、何故か下を見る。
僕はその段階でようやく気付いた。エナの胸の感触だけで、僕のペニスが勃起してしまっていることに。そしてあろうことか、それがエナの腰に当たっていることに。
「え、エナ、これは、そのッ!」
「クルト、顔赤い……」
エナは悪戯っぽい笑みを浮かべたかと思うと、急に僕の股間を撫でてきた!
「―――ッ!?」
エナの手が、指が、僕の最も卑猥な部分を愛撫している。その現実に頭は混乱し、顔は熱くなる一方だった。
エナはそんな僕を見て楽しむかのように、今度はペニスをズボン越しに掴んできた。
「クルトのこれ、凄く硬い……ズボンの上からなのに、熱くなってるのが分かるわ」
「え、エナ、止めて」
しかしエナは制止も聞かず、ペニスの感触を確かめるように、むにむにと手を動かす。何故彼女がこんなことをするのか……その疑問をまともに考えることさえできないまま、僕の意識はぼーっとしていった。初恋の幼馴染が、僕にエッチなことをしているという現実が、妨げ用の無い興奮をもたらしているのだ。
「きつそう……痛くない?」
「あ……エナぁ……」
思わずエナを抱きしめると、彼女は嬉しそうに笑いながら、僕のベルトをはずしにかかった。
「直接、触りたいの」
「ううっ」
ズボンとパンツを降ろされ、下半身に冷たい空気を感じたのもつかの間、エナの柔らかい手が直にペニスを刺激してきた。すべすべの掌と、悪戯な指先に感じてしまう。
「あ、ヌルヌルが出てきた。気持ちいいのね?」
「う、うん……」
「私の手で感じてるんだ、嬉しいな……クルトも、私に触って?」
エナの言葉を聞いた瞬間、僕は彼女の臀部に手を伸ばし、思い切り揉んだ。柔らかい。指がめり込んでいきそうなほどに。
子供のころ、鬼ごっこで逃げる彼女の後姿を見たときから、ずっと触ってみたかった。それが今、叶ったのだ。
「お尻、好きなのね」
エナは微笑を浮かべ、「良い子、良い子」と呟きながら、亀頭の先を撫でてくる。彼女の手が、言葉が、全てが僕の情欲を刺激した。
「エナ、もう……!」
「――クルト、私と、する?」
僕が一瞬固まると、エナは一旦離れ、長いスカートを一気にまくりあげた。その瞬間、僕の視線は純白の下着にくぎ付けになる。そこには尿とは異なる液体が染みを作り、芸術的なまでに美しい太腿にも滴っていた。
そしてエナはスカートの裾を口に咥え、下着を降ろす。愛液の源泉が、彼女の最も神聖な部分が、僕の目の前に曝け出された。開いた割れ目の合間から、卑猥な、美しいピンク色の肉が覗いている。
エナはその体制のまま、僕をじっと見つめていた。何かを期待するような目で。
「エナ!」
我慢など、自制など、できるはずがない。
彼女に抱きつき、立ったままペニスを花園に押し入れようとした。しかし互いの潤滑液でぬめり、ペニスは彼女の恥丘表面をつるりと滑ってしまう。
焦ってやり直しても、結果は同じ。するとエナが手でペニスを掴み、角度を調整してくれた。そのまま、僕らの下半身は結合する……
「あ、ああんっ♪」
「うあっ……エナァ!」
先端、カリ首、竿……根元まで入るった。
彼女の中に、処女膜と呼ばれる門の感触は無かった。しかし彼女の花園は、僕を激しく歓迎してくれた。ぬめぬめした肉壁がペニスを圧迫し、腰を動かす度にひだが刺激してくる。
エナの方も、端正な顔を最大限に蕩けさせ、恍惚の表情を浮かべていた。
「んっ……ひゃん♪ 私のココと、クルトのコレ……相性、最高なのねぇ♪」
「エナ、凄い…ッ! もう……!」
「だめ、一緒にぃ……一緒にぃ!」
僕は必死で、腰を突き動かした。ぱんぱんと肉の弾ける音が、露地裏に響く。快感のあまりのけ反り、感極まって泣き出すエナを更に突き上げると、僕はいよいよ限界に達した。
「エナ、出る!」
「来てぇ! アツアツのを……中に出してぇ!」
「エナぁ!」
「クルトぉ♪」
互いの名前を呼び合い、絶頂。エナの膣はペニスを搾るかのように締め付け、僕はそこへ最高の快感と共に精を迸らせた。ほんの少しの間の快楽が、永遠に続くかのようだった。
そしてそれが収まってきた頃、僕らの結合部分から水音が聞こえた。エナが脱力のあまり、失禁してしまったのだ。その音に耳を傾けながら、僕は呆けた表情のエナと抱き合った。
「……一つに、なれたね……♪」
エナの囁きに、僕は今更ながら……彼女とキスを交わした。
11/08/07 00:25更新 / 空き缶号
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