いっしょにおふろ
僕らは洗い場を素通りし、ヒノキで作られた浴槽へ向かう。ミヤさんと一緒にかけ湯をし、ゆっくりとお湯に体を浸けた。
お湯の中には細かい泡がたくさん浮かんでいて、温度はぬるめなのに体がどんどん温まっていった。高濃度炭酸泉、とかいうやつかもしれない。
「ふいー。どや? 気持ちええやろ?」
「うん。なんか、いつまでも入っていられそう」
話をしながら、ミヤさんは当たり前のようにぴったりと体を寄せてくる。お湯の中で素肌が触れ合った。手も握り合う。
ミヤさんの頭、青白い炎のような狐耳は僕の方を向いていた。心臓の音に文字通り耳を立てているのだろう。
「かわええやろ、この耳」
「うん……触ってみていい?」
「ええよ。優しくね」
許可をもらえたので、ぴくぴく動く耳にそっと触れてみる。不思議な感触だった。確かに触ることはできたし、そこにある。だけど雲とか火とか、本来触れないものを形にしたかのような、朧げな手触りだ。
「……うちがヘンタイなことして、びっくりしたやろなぁ」
そう言いながら、ミヤさんは僕の股間に手を伸ばす。さっき浴びた『メス汁』とやらの残り香もあってか、僕のそれはまた上を向いていた。彼女は白く華奢な指で、張り詰めた肉棒を優しく握ってくれる。イイコイイコと、あやすように。
「びっくりしたけど……ええと……混浴は風俗と違うって言ってた、よね……?」
気持ちよかったし嬉しかった、と素直に言いたかった。でもその前に、彼女がこんなことをしている理由を、もう少し知りたかった。
「せやで。ここは風俗のお店とちゃうで」
楽しげに笑いながら、湯船の中でゆっくりとペニスを撫でさすってくるミヤさん。僕も我慢できなくて、また彼女の胸を触ってしまう。ぷにぷに、ぷにぷにと。
「ん……ハルくんのこと好きやから、ちょーーーっと過激におもてなししただけや」
「好きって、今日会ったばかりなのに」
「狐憑き甘く見たらあかんよー。今日会ったばっかでも、もう好きなとこ百個言えるで」
ふいに、耳元へ唇を寄せられる。
「勇敢、勇敢やけどかわええ、心臓がええ音立てる、キスしてポーッてなった顔、おっぱい揉むの上手、おまんこ舐めるの上手……」
「わ、分かったよ、もう」
恥ずかしい言葉を耳元で囁かれ、ぞくぞくしてしまう。ペニスもびくんと反応してしまった。
「ハルくんはうちのこと、好き?」
「……好き」
そう答えるしかなかった。事実として好きだから。出会ってから経った時間なんて関係ない。一緒に汽車に揺られ、塔を案内してもらい、先ほどエッチなことをした。その工程だけで、完全にミヤさんの虜になっていたのだ。
「にひひ。ありがと」
僕の肩に腕を回し、抱きついてくるミヤさん。温もりと胸の柔らかさがなんとも気持ちいい。僕からも抱きしめて、どちらからともなくキスをする。なんだか心が通じ合ったみたいで嬉しい。
けれど、ふと思い出した。明日には帰るのだということを。
そうしたらミヤさんとは……もう会えないのか?
「……ね、ハルくん」
ペニスをゆっくり撫でながら、耳元で囁いてくる。お湯の中で尻尾が揺れているのが見えた。
こうしてくっついていると、耳が四つなくても心臓の音が聞こえる。ミヤさんの鼓動も早まっていた。
「うち、な……ご飯の後で、その、したいこと、あるんや」
「……何?」
「ハルくんと……なかよし、っちゅーか……本番っちゅーか、子作りっちゅーか。ハルくんの童貞もろうて、うちの処女あげるっちゅーか」
隠語と直球が混じった言葉に、思わずペニスがぴくんと反応してしまった。手のひらでそれを感じ、ミヤさんはくすっと笑う。
「ハルくんも、してみたい?」
潤んだ瞳で顔を覗き込まれ、想像してしまう。先ほど舐めたあの女性器に、ペニスが包み込まれたら。彼女と繋がれたら。特別な関係になれたら。
「……してみたい」
「……嬉しいっ」
ミヤさんはより一層強く抱きついてきた。そんな彼女が可愛かったけど、次に彼女の口から出たのは思いも寄らない言葉だった。
「せやけどな……ここの女の子と本番すると、ハルくんは呪われてまうんよ」
「え……?」
彼女の顔から笑みが消え、神妙な面持ちで僕を見ている。片手は僕の肉棒に添えられていたが、動きを止めていた。
「呪いって、どういう……?」
「どうなるかは、まだ言えへんねん。堪忍な。死んでまうわけやないし、ちゃんとお家帰れる。けど……」
狐の耳が微かに動いた。いつの間にか僕たちの胸の音は重なって、お湯の中で一緒に脈打っている。
「ハルくんの人生、全部狂ってまう。お家帰っても、ここに居てもええんやけど、昨日までの暮らしにはもう戻れへん」
呪い。実際に神隠しなんてものに遭って、人外の世界を目の当たりにしなければ、特に信じはしなかった。ミヤさんが言うからには本当にあるのかもしれない。またからかっているにしては、深刻な眼差しだ。
具体的にどうなるのか分からない。それが余計に怖い。けれど、それでも。
それでも、ミヤさんと……
「あうっ……!」
ふいに彼女の指先が肉棒を弄び始め、思わず声が出てしまった。ミヤさんはくすっと笑い、先端の敏感なところをくすぐるように刺激してくる。
「もっかいスッキリしてから、考えてや」
そう言って、頬にキスをしてくれるミヤさん。唇の感触が柔らかい。とても気持ちいいし嬉しいけれど、湯船の中でこんなことをして大丈夫なのか、少し心配になる。
「ミヤさんっ、う……お湯汚したら、まずいんじゃ……?」
「へーきへーき。よくあることやし、すぐ綺麗にできるし、心配せんでええよ」
親指の腹で先端をくりくりと可愛がりながら、ミヤさんは僕の耳に口をつけた。ぺろり、と耳の穴付近を舐められて、ぞくっとした快感が広がる。そのまま音を立てて耳をしゃぶられると、もうたまらなく気持ちよかった。
「んっふ……ちゅ……すき……んっ」
唾液と一緒に、甘い声が耳に注がれる。ペニスを刺激する手も……自分でするより何倍も気持ちいい。
「そのまま楽〜にして……出したくなったら、いつでもええよ……」
囁きがとても優しい。甘えたくなる。
二の腕に押し当てられた胸がぐにゃっと潰れて、彼女の鼓動が伝わってくる。しばらく続けると反対側へ移って、そちら側の耳を甘噛みしてくれる。そしてペニスには、絶えず指先での愛撫が続いていた。
もうミヤさんが体に触れてくれるだけで嬉しい。できるだけ長くこうしていたくて、わざと出すのを我慢したくなる。
するとミヤさんは、両手で僕の股間を弄り始めた。片手で亀頭をくすぐり続け、もう片方の手で玉袋とその下辺りをまさぐる。
「ハルくん、もうちょい……おいど、こう、ぐいって前に出せへん?」
「こう?」
言われるまま、臀部をしゃくるようにして前へ出す。ミヤさんはその部分を触って、細い指を僕のお尻の間に滑り込ませ、にこりと笑う。
「ん、おおきに」
「んぁっ!?」
感謝の言葉を聞いた直後、思わず変な声を出してしまった。彼女の指先が、あの白くて細い綺麗な指先が、肛門へ入ってきたのだ。
「そーっと、そーっと、ゆっくりゆっくり……」
ずぶずぶとお尻の穴に入ってくる異物感。ミヤさんが慎重にやってくれているからか、痛くはない。でも予想外だった。
「だ、駄目だって、ミヤさんっ……! そこ、汚いよ……!」
「あはははっ。せやなぁ、汚いなぁ♥」
僕の反応を面白がりながら、お尻の中で微かに指を動かす。人外の女の子はいたずらが大成功したかのように喜んでいる。湯船に浸かりながら、倒錯した行為が徐々に快感に変わっていく。
「ハルくんの外も中も、うちのもんやでぇ……♥」
亀頭は相変わらずくすぐりに翻弄される。お尻の中では指がくいっ、くいっと動いて、ただの異物感だけでなく快楽を与えてきた。
もう何がどうなってもいい。さっき彼女のお尻に射精したときと同じ気持ちが湧き上がってきた。もう我慢なんてできるわけがない。
「にひひ、出そうなんやろ? 出してまえ、出してまえ♥」
くにくにと刺激されたのがトドメとなった。こみ上げたものが湯船の中に爆発する。
気持ちよさに頭が真っ白になりそうだった。迸った白濁が小さい塊に分かれて、お湯の中に浮かんでくるのがぼんやりと見える。後はただひたすら、気持ちいい。
「わぁ、すごいすごい! ぎょーさん出てはるなぁ♥」
肛門から指を引き抜いて、ミヤさんは楽しそうに笑う。お湯の中で青白い尻尾が左右に揺れていた。
二回目だというのに、さっきお尻でされたときに負けないほど、たくさん出た。漫画のような量だ。この世界に来たせいか、相手が人外だからか。お湯に溶けることなく水面を漂う精液を、彼女は丸い目で見つめている。そしてぴったりと肩を寄せ、僕の頬にキスをしてくれた。
その唇、その眩しい笑顔を見ながら、脱力する。そして快感に蕩けた頭で、ぼんやりと考えた。
やっぱり、ミヤさんとセックスしたい……と。
21/12/13 20:31更新 / 空き缶号
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