塔に着いて驚いたのは、その大きさだった。大都市を何個かに切り分けて積み重ねたような、一つの階にどれだけ多くの人が住めるかも分からない、すごいスケールだ。

　だけどSF映画に出てくるような未来都市と違って、かなり古風な雰囲気だった。提灯が下がっていて、遠くから見たときは最上階に神社や仏閣のような建物も見えた。多分あそこが、神々が住むところなのだろう。
　線路は真ん中あたりの階層へ続き、汽車は塔の中へと入って行った。電気とは違う柔らかな光が中を照らしていて、十分明るい。

　汽車から降りると、ホームもまた現実離れしていた。木や石で作られた和風の建物の中を、大勢の人が歩いている。けれど大抵はどこかしら、人間と違っていた。尻尾が生えていたり、下半身が丸ごと蛇だったり。
　本当にここは別世界……人でない存在が住む場所なのだ。
　乗ってきた汽車が足元から蒸気を吹き出し、ゆっくりと動き出した。向かいのホームにはまた別の汽車が入ってきて、人ならざる客たちが乗り込んでいく。

「ほら、こっち」

　ミヤさんに手を引かれ、駅員さんの元へ向かった。紺色の制服を着た、背の高い女性だった。ミヤさんと同じく見た目は人間。でもその美貌はどこか作り物のような、あまりにも整いすぎているような感じがした。
　彼女は淡々とした口調で、現世へ帰る汽車は明日になると教えてくれた。今夜はこの、お伽話のような世界で過ごすしかない。けれど、不安よりも期待の方が大きかった。得難い経験をしているような、良い夢を見ているような、そんな気分だ。

　多分、ミヤさんのおかげなんだろう。僕の手を引く彼女の足取りはかるく、どこまでも一緒に歩きたくなる。今まで女の子の脚なんて特に気にしてこなかったけど、ミヤさんの黒いストッキングを穿いた脚は何だか、とても綺麗な曲線でできていて、自然と目がいってしまった。その脚が交互に動くだけで、スカートの裾がひらひりするだけで、不思議と心が熱くなる。

　僕たちは階段を降りて、蔦で吊り下げられたリフトに乗って、どんどん下の階層へ降りていく。塔の中には食べ物や服、本などの店が地下街のように所狭しと並んでいて、時々美味しそうな匂いが漂ってきた。入り組んだ迷路のようだったけど、ミヤさんは全く迷うことなく僕を導いてくれた。

「凄い所だね、ここは……」
「せやろ。うちも初めて来たときビックリしたわー」

　他愛もない会話をしながら、彼女も元は人間だったということを思い出した。やっぱり神隠しに遭ったのだろうか。今は神様の家来のようなものだと言っていたけれど。
　気がつくと海面に大分近くなっていた。何故か体は疲れていないし、時間もほとんど経っていないように思える。

「とうちゃーく」

　そう言ってミヤさんが指差したのは、「伍階　温泉街」と書かれた看板。ここで五階ということは、多分海の中まで降りられるようになっているのだろう。
　周りを見ると、温泉マークの書かれた暖簾が多数並んでいる。浴衣姿で歩く人たちもいた。

「神隠しで来た人をおもてなしするなら、ここが定番なんやで」
「定番って……みんなそんなに丁寧に扱ってもらえるの？」
「うん、大抵はそうやなぁ。たまたま悪い人間やったら、お仕置きされてまうけど」

　喋りながら、ミヤさんは再び僕の手を引いていく。

「せやけどうち、『おもてなし』するの初めてやから、なんか失敗しても怒らんといてな？」
「いや、そんな。案内してもらえるだけでありがたいのに……」

　ふいにミヤさんが立ち止まり、暖簾の一つを潜った。僕も後へ続くと、温泉旅館のような古めかしい玄関があった。
　狐の置物が飾られた下駄箱に靴を入れ、誰もいないカウンターを通り過ぎる。『今日はいません。お風呂は勝手に使ってください。　女将』というアバウト極まりない貼り紙が見えた。

「ほな……おもてなし第一段」

　ミヤさんの声が今までと違う感じに聞こえた。なんとなく気恥ずかしそうな……

　そのまま手を引かれて、導かれた先。棚に籠の並ぶ更衣室だった。

　戸惑う僕を顧みて、彼女はまた悪戯っぽい笑みを浮かべる。こころなしか、頬が少し赤らんでいるような気がした。

「一緒にお風呂、入ろ？」






　……もっとドキドキさせてあげる、とミヤさんは言っていた。ドキドキするのを通り越して心臓が止まるかと思った。同い年くらい……少なくとも見た目はそう見える女の子と混浴だなんて。
　断ろうとしたけど、上目遣いで「うちとじゃ、イヤ？」なんて言われたらどうしようもない。あれは卑怯だ。

　互いにジロジロ見ないとか、最低限のマナーさえ守れば混浴は決していやらしいものではない。風俗とは違う。ミヤさんはそう力説していた。
　確かにそうかもしれない。だけど。

「うちの友達も、お風呂で男の子を『おもてなし』したんやけど……」

　僕の後ろで、ミヤさんが楽しそうに話す。お互い、背中合わせで服を脱ぎながら。

「まー、その子雷獣やから気ぃ強うてなぁ。おまけにスケベやから、すぐにエッチぃことしてもうたんやって」

　徐々に裸になっていく僕のすぐ後ろで、ミヤさんもまた服を脱いでいく。混浴でも大抵脱衣場は別だって聞いた気がするのだけど、ここは違うらしい。

「ハルくんも気ぃ付けなあかんよ。ここはそういう、えっと、肉食系？　そんな女の子も大勢おるんやから」
「う、うん……気をつける」

　僕はミヤさんを見ないようにして、ミヤさんも僕を見ていない。話しながらも脱いだ服を籠に入れていく。
　しかし。

「ハルくん、今どこまで脱いだん？　うちは今からブラ外すとこやけど」
「〜〜ッ」

　ミヤさんは明らかに、僕をからかっている。今も胸の音を聞いて楽しんでいるに違いない。
　パンツを脱いだとき、股間のモノが半分くらい勃ちかけていた。これを見られたらさすがに恥ずかしいどころじゃ済まない。ゆっくり息をして鎮めようとしたとき、臀部に何かが「ぽよん」と当たった。

「あ、ごめーん。おいど当たってもうた〜」

　おいど、という単語の意味を強制的に教わった。背中合わせで尻に何か当たるとしたら、同じ部位しかない。
　わざとらしく謝った彼女は、弾力のあるそれをグイグイと押し付けてくる。

「せっかくやし、おしくらまんじゅうしよか」
「ちょ、やめっ……！」

　お尻で棚へ押し付けられそうになって、思わず振り向いた途端。

　黒いパンティストッキングに包まれたお尻が、股間に密着した。弾力を押し返すように、ソレがぐっと大きくなる。

「あれ〜？　なんや、硬いの当たってるで〜？」

　かーっと顔が熱くなるのを感じた。そんな僕を肩越しに見ながら、ミヤさんはにやついている。けれど彼女の顔も、今度は明らかに真っ赤で、リンゴのようだった。
　白くなめらかな肌の、綺麗な背中が間近にある。下半身のストッキング以外、全て脱いでしまっていた。ただの人間の僕が、彼女こんな姿を見てしまっていいのか……そう思ってしまうほどの美しさだ。

　次の瞬間、ミヤさんはお尻で僕の……ペニスをぐりぐりとこね回し始めた。

「うりうり♥」
「ちょっと、ミヤさん、それは……！」

　後ろが棚で逃げられない。ストッキングのさらさらとした質感越しに、お尻の柔らかさと弾力が、張り詰めたペニスを圧迫する。ミヤさんはストッキングの下に下着の類は着けていない。本来パンティストッキングというのはそういうものらしいけど、お尻の感触がダイレクトに伝わってしまう。

「お風呂の前にスッキリせなあかんやろ〜？　おいどにぴゅぴゅーって、お射精してええで？」

　『お射精』という単語が彼女の口から出た途端、理性が飛びそうになった。そればかりか彼女は僕の手を取って、自分の前へと持っていった。抱きしめさせるように。
　手のひらに「むにっ」と柔らかい感触が当たる。これは……おっぱい……？

「触ってええよ。……言うて、あんま大きくないんやけど」

　ミヤさんはそう謙遜したけど、十分大きかった。そういえばここまで来る途中、とても胸が大きくて、しかも谷間の見えるような服装の女性を何人か見た。確かにあの人たちほどではないだろうけど、ミヤさんの胸もしっかり存在感があって、手のひらに収まるかと思えば、揉むと指の隙間からはみ出して。しっかり重さもあって、蕩けそうだけど弾力もあって。
　気づけば、無我夢中でおっぱいを揉みしだいていた。僕の方が少し背は高いのに、僕が彼女にしがみ付いていた。

「んぅ、はぁっ……♥」

　熱い吐息を漏らしながら、さらにお尻を押し付けてくるミヤさん。ぎゅっ、ぎゅっと股間を圧迫してくる感触に、胸の鼓動はどんどん高まる。
　いや、僕の鼓動だけじゃない。ミヤさんの背中の、すべすべの肌から、彼女の鼓動も伝わってくる。それにその肌は火照っていて、とても温かい。やっぱり彼女も興奮しているんだ。それがはっきりと分かって、何故か無性に嬉しくなる。

「にひひ……おっぱい揉むの上手いんやなぁ。慣れてはるの？」
「は、初めてだよ……！　ミヤさんこそ、その……前にも、こういう……」

　僕の言葉に、彼女は照れ臭そうに笑う。

「女の子同士なら、ちょこっと。男の子にはぁ……ハルくんだけ」

　こちらを振り返って、またキスをしてくれた。口に金平糖を含んでいないはずなのに、甘い。美味しい。いつまでも舌を絡めあっていたい。
　股間をぐりぐり押してくるお尻も、甘い快感を与えてくれた。パンスト一枚なんていうあられもない格好の女の子が、それも人外の美少女がこんなことをしてくれるなんて。変態と呼ばれそうだけど、それでもいい。ミヤさんのお尻と胸の柔らかさが、弾力が、すごく気持ちいい。

「んちゅっ、ちゅるっ♥　はふっ」

　唇が離れ、よだれが糸を引き、彼女は熱い吐息を漏らす。ふいに股間からお尻が離れた。止めてしまうのかと思ったら、ミヤさんはパンストに手をかけ、ぐいっと下ろした。
　丸くて白い、すべすべとした、桃のようなお尻。素肌のお尻が露わになった。

「ほな……仕上げっ」

　再び、むにっとした感触がペニスに襲いかかる。ストッキング越しでも気持ちよかったのに、今度は素肌が密着してくる。それどころか、肉棒がお尻の谷間に滑り込んでしまった。その瞬間、快感が一気に高まった。

「わあ……おちんちん、あったかいなぁ」

　出したい。このまま射精して気持ちよくなりたい。欲求に逆らえず、自分からもお尻に押し付ける。

「あっ、で、出るぅっ！」

　恥も外聞もなく叫ぶのと同時に、込み上げた快感が一気に迸った。自分でしたときとは比べ物にならないほど気持ちよく、出た量も多い。
　というより、自分でも気持ちよすぎて怖いくらいの勢いで射精していた。桃のようなお尻が白濁まみれになり、半脱ぎのパンティストッキングにまでどろどろと垂れていく。

「うわぁ……めっちゃ出てはる……」
「ご、ごめんっ！　まだ、止まらないっ……！」
「ええよ、ええよ♥」

　ミヤさんは興味深々な様子で、自分の下半身が汚されていくのを楽しんでいた。いつのまにか後ろの棚に体重を預けて、ミヤさんにもぎゅっと抱きつき、快楽に身を任せた。

　ようやく絶頂が収まり、可愛いお尻がゆっくりと股間から離れる。白い糸を引きながら。
　半分しぼみかけていま肉棒が、離れていくお尻目掛けて、名残惜しむかのように少量の白濁を飛ばした。そしてやっとのことで、満足したかのように下を向いた。

「ああ……」

　幸せな気分に包まれて、脚に力が入らなくなる。その場にへたり込むと、僕がどろどろに汚したお尻が目の前にあった。なんとミヤさんは生臭い白濁をお尻から指で取っては、口へ運んでいた。

「ん……おいし♥」

　心の中がゾクゾクとした。精液を美味しいだなんて、エロ漫画の中だけの話かと思っていた。ミヤさんみたいな可愛い、それも特別な女の子の口から、そんな言葉を聞くなんて。
　脱力したまま、徐々に白濁が拭われていくお尻を眺める。谷間の間でも粘ついた精液が糸を引いていた。その奥にちらっと肛門が見える。

　そのとき、お尻のやや上あたりに、青白い何かが揺れているのが見えた。雲や炎のようにふわふわとしていて、しかししっかりと形がある。まるで……

「……しっぽ？」
「あ、見えるようになったんやね」

　にっこり笑って、こちらを見下ろすミヤさん。その頭の上にも、二つの青白い、三角形のものが見えた。動物の耳、尻尾と同じく狐に似たそれがあったのだ。ああ、これが本当の姿なのか。神秘的で、妖しくて、でもやっぱり可愛い。

　けどそのとき、ふいに別の部分を目の前に突き出された。お尻の反対側。男になくて、女にある割れ目。毛は全く生えていなくて、わずかな隙間から中のピンク色が少しだけ見えた。そして僕が出したものとも、おしっことも違う透明なぬるぬるが、彼女のふとももまで伝わっていた。

「今度は、ハルくんにうちをイかせて欲しいなぁ。……どうすればええか、分かる？」

　座り込んだ僕の口元へ、「ずいっ」と近づけられた割れ目。お尻にかけた精液の臭いが一瞬したけど、それを覆い隠すかのように、甘酸っぱい匂いを放っていた。何かムラムラしてくるような、いやらしい匂いを。

　僕はそっと、割れ目にキスをした。

「あっ……♥」

　ミヤさんが色っぽい声を出した。お尻に手を回して掴み、舌で割れ目を舐めあげる。

「ひゃぁ♥　そう、ええで♥」

　気持ち良さそうに喘ぎながら、僕の頭を撫でてくれるミヤさん。それが何だか嬉しくて、もっともっと舐めてあげたくなる。
　愛液が甘いなんていうのは妄想だと知ってたし、美味しくはないとも聞いていたけど、少なくともミヤさんのは美味しい。良い匂いがした。甘酸っぱくて、でも少しクセのある匂い。おまけにミヤさんが悦んでくれるなら、いつまでも舐めていられそうだった。

　手でお尻を揉んで、形を確かめるように撫でて、そっちも楽しむ。

「ふぁぁ……ハルくんっ、はぅっ。おまんこ舐めるのもっ、んぅ。上手や、なぁ……♥」

　瞳を潤ませ、蕩けた顔で見下ろしてくる、人外の女の子。下から見上げると、やっぱり胸はちゃんと膨らんでいる。股間を舐める僕の頭を撫でているせいで、腕が左右のおっぱいを寄せる姿勢になって、余計目立つ。散々揉んだから少し赤らんでいた。
　むせ返るような女の子の匂いにぼーっとしながらも、夢中で割れ目を舐める。ピンク色で、うねうねしていて、確かに少しグロテスクだけど、とても綺麗だ。つんと膨らんだところを舌先でつつくたび、ミヤさんが大きく震える。

　僕が彼女を気持ち良くしているんだ。それが無性に嬉しくて、一心不乱に女性器を舐め続けた。汁がとめどなく溢れてきて、匂いでむせ返りそうだった。

「あっ、ひゃんっ！　あぅっ、あのっ。ハルくんっ、もう……っんっきゃぁぁ♥」

　半ば人、半ば動物のような甲高い声が、脱衣所に響く。その瞬間、割れ目からぷしゅっと音を立てて吹き出したものが僕の顔に浴びせられた。おしっこ……ではないみたいだ。嫌な臭いはしない。凝縮された、女の子の……ミヤさんの匂いだ。
　浴びたのがおしっこだったとしても、ミヤさんのだったらそんなに嫌じゃないかも……なんてことを考えてしまう。完全に変態じゃないか。

「はぁ、はぁっ……あはっ」

　ぺたん、と尻餅をつき、呼吸を整えるミヤさん。愛液と僕の唾液でとろとろになった割れ目をさらしながら、僕の顔を見て笑う。

「堪忍なぁ……メス汁、ひっかけてもうたぁ♥」

　蕩けた笑顔で僕と見つめ合うミヤさん。すごくエッチだ。

　けれどそう感じた瞬間、僕たちは同時にくしゃみをした。

「あわ……こないな所でいつまでも遊んでたらダメやわ。ほいっ！」

　ミヤさんが「パンッ」と手を叩いた。その瞬間、僕の股間の汚れも、顔にかけられた『メス汁』も消え去った。そればかりか汗までなくなって、肌がさらさらになっている。ミヤさんの体も同じように、垂れ流した愛液が消滅し、割れ目は慎ましくぴったり閉じていた。半脱ぎのストッキングにはまだ白濁が付いていたが、彼女はそれを完全に脱ぎ捨てて籠へ放り込む。

「これで綺麗になったで。ほんとは洗いっことかしたかったんやけど……もうはよ湯船入って温まろ？」

　手を引かれ、立ち上がり、浴場へ入った。途端に木の良い匂いがした。波の音が間近に聞こえる露天風呂。日は沈みかけ、空には星がいくつか見え始めている。宙を渡る線路には小さな照明が光り、汽車が渡っていった。