6 マトリの熱い夜
衝角
船首に備えられた突撃用の突起。
喫水線下に装備しており、敵船への体当たりに用いる。
喫水線上に搭載された物は突撃船首と呼び、破壊よりも転覆させることを狙う。
ガレー船では重要な武器だったが、軍船が大型化すると制御が難しくなり、また風で速度が左右される帆船が主流になると体当たりの機会が減ったため、廃れた。
しかし大砲が標準装備になった後も、敵船を沈没に至らしめる兵器は数少なかったため、完全に消滅はしなかった。
いきり立った男根を、イルザンナの前まで近づける。嫌がることなく、股を開いたまま俺を見ている。
「良いんだな?」
今一度確かめると、彼女はこくりと頷いた。
「ボク、人間だった頃に体売ったことがあってさ……それがちょっと、負い目というか……」
「苦労したんだな。俺は気にしないが、お前の気持ちは?」
「……船長のものになりたい」
意を決してそう言うイルザンナは、すでに手で自分の股を弄っていた。潤滑液で十分に潤ったそこは、いつでも男根を奥まで受け入れてくれそうだ。
「シて、船長……ボクが逃げ出せない、今のうちに……♥」
もはや躊躇する必要は無いと確信した。皆が見守る中で腰を下ろし、イルザンナの神聖な部分に男根をあてがう。褐色の体がぴくんと震えた。女船乗りらしい引き締まった体が、今は俺を受け入れるための柔らかな女体だ。
亀頭に感じる温もりとぬめり。このままでいてもいつかは達してしまうだろう。そのくらいフーリーの体は魅力的で、全身が愛でできているのだ。
自慰によって濡れた手を握ってやると、彼女も笑顔で握り返してくる。ぐっと腰をすすめ、十分に濡れた膣を押し分けて挿入する。
「ん……はうぅぅっ♥」
メリーカに抱かれたまま、大きく震えてよがるイルザンナ。直情的に締め付けてくる膣内を奥まで進み、その火傷しそうな熱さに俺の体も震える。膣内の感触一つ一つを取っても皆個性がある。イルザンナの女性器も甘い快楽の坩堝だった。
根元までしっかり押し込むと、楽しそうに見つめていた他のフーリーたちがわぁっと声を上げた。
「あぅ、船、長ぉ……♥」
イルザンナの目に涙が溜まる。だがそれは苦痛からではないと分かった。メリーカたちが快楽を感じているときと同じく、膣が締め付けながら脈動している。肉棒を咀嚼するかのように。
「動くぞ」
こくりと頷いた彼女の体内で、男根を前後させる。膣内の襞が表面を擦れ、亀頭をくすぐられる。その都度イルザンナは敏感に喘ぎ、悦ぶ。
「ひゃっ♥ あうんっ♥ んっはぁ♥」
「わっ。イルザンナさん、すっごく感じてますね♥」
「だ、だってぇ……んぃっ♥ 気持ち、いいっ♥」
楽しげなメリーカと、涙と涎を垂らしながら身を委ねるイルザンナ。可愛らしい二人の姿に、俺の情欲も高まっていく。手をしっかりと握り、一心不乱に突き入れた。体のぶつかり合う音が室内に響き、ヘレとミアが左右がじっと見つめている。
俺の人生は今まで、決して楽なものではなかった。しかしイルザンナが人間だった頃の苦難はきっと、俺とはまた違う辛さだったのだろう。女だてらに海賊となり、毒を呷って自害するまでの苦難は。ヘレとミアもそうだ。
今これからの彼女を幸せにする……俺にできることはそれだけだ。
彼女と手を繋いで、見つめ合いながら腰を打ち付ける。蕩けた笑顔からは多幸感が溢れていた。メリーカに後ろから乳首を弄られ、余計に感じている。
ふと悪戯心を起こし、彼女のへそをくすぐってみた。
「ひゃぁっ!?」
びくんと女体が震え、膣の締まりが強まる。そのまま優しくへそをくすぐると、イルザンナは一層よがり始めた。
「船長ぉ……船長っ……♥」
艶かしい声を聞きながら、ひたすら膣内を蹂躙する。締め付けと蠢きが激しくなってきて、引き抜くのに力がいる。
その甘い快楽で俺も達しそうになってきた。
「イルザンナ、もう出そうだ」
「んっ、あぅっ♥ イイよ……♥ いつでも、ふあああぁっ♥」
普段の凜とした彼女からは想像できない、甲高い嬌声。ぷしゅっと音を立て、熱い愛液が俺の腰を濡らす。
絶頂した。そのことを知覚した途端、俺の方もこみ上げてきたものが迸る。彼女の一番奥で。
「あうぅぅ♥ で、出てるっ! 船長の、船長の熱いのがぁ……♥」
仲間たち皆が見守る中で、イルザンナが全身を震わせて歓喜の声を上げる。メリーカやアイリたちが歓声を上げ、俺もそれを聞きながら注ぎ込む。
結合部からたらたらと白濁が垂れ、愛液と混じり合い、床の上に小さな水溜りを作った。
ゆっくりと射精が止まると、アイリが後ろから俺を抱きしめ、労ってくれた。ヘレとミアも、イルザンナに「おめでとう」と声をかけている。
「ありがと……船長」
余韻に浸る笑顔で、イルザンナは呟いた。
「ボク、これでやっと……本当のフーリーになれたのかも……♥」
生前のしがらみから解き放たれたのだろう。その笑顔は愛天使らしい、晴れ晴れとしたものだった。じっくりとキスをしてやり、彼女が俺のものであるという悦びを改めて噛みしめる。
男根を引き抜くと、ヘレとミアの前に差し出す。二人はすぐに口をつけて掃除してくれた。チロチロと這い回る二枚の舌の刺激で、ペニスは大きく勃起する。
周囲では皆が服を脱いで期待の眼差しを向けている。俺がそれに応えるのは、当然のことだった。
……数日後。
エル・ヴァリエンテ号改め、アントルチャ号の改修は無事に完了した。その間ずっとフーリーたちと愛し合っていただけではなく、マトリの海賊たちと交流し知己を得た。魔物たちの社会と文化を知れたのも大きな収穫だった。
そして船を改造するだけでなく、自分の装備も整えることにした。伊達者が多いマトリの海賊たちの中で貧相な格好をしているわけにはいかない。新しいサーベルと短剣を買い、服も青いコートを新調した。
「船長! 海賊旗が届きました!」
メリーカが黒い旗を広げて見せた。髑髏の下に交差した二本の松明。注文通りのデザインだ。
「よし、メインマストに掲げろ」
「はい!」
飛び立つメリーカを見上げ、また改装された船を見下ろす。外板は白く塗られ、側砲は片舷十門。しかも魔法を使える砲手なら一人で操作できる。船縁には旋回砲を搭載し、船首には新たに購入した女神像と、水面には牙のような衝角が突き出ている。そして例の雷臼なる兵器も試射してみたが、確かに凄まじい威力だった。小さな船であることを考えれば破格の重武装だ。
だが俺たちの役目上、必要なのは船の大きさでも火力でもなく、敵船を振り切れる速度だ。
マストに黒旗が翻り、メリーカが甲板に降り立った。アルエット号からはギュスター船長たちが手を振っている。
「抜錨! 船首帆とメインスルを張れ!」
皆が一斉に作業にかかる。メリーカは舵輪へ着き、残りは錨を上げ、マストへ飛んで帆を降ろす。
緑色の帆が風をはらみ、船はゆっくりと進み始める。メリーカが舵をきり、他に船のいない沖へと向かう。波はやや高く、アントルチャ号は大分揺れていた。だが慣れればこの揺れと速度こそ、大型船にはない醍醐味だ。
次いでフォアマストのトップ、ゲルン、ロイヤルといった帆を張らせる。水兵服のフーリーたちがマストの上を舞う姿は美しかった。
各横帆の左右にある補助用のスタンセイルも張り、それらが風を受けて一杯に膨らむ。衝角が波を切り裂き、黒旗が前に向かって靡いた。
「ギュスター船長の言った通りだね」
副船長イルザンナも速力に感動したようだ。確かにコートアルフの技術力は大したものだ。これだけの出資をしてくれたエロス教会、そしてエロス神の期待に応えねばなるまい。
自由と愛を奪われる者たちが、まだこの世に数多くいるのだから。
20/04/05 17:43更新 / 空き缶号
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