十六歳の頃
コロナと出会った年から、僕の人生は少しずつ変わり始めた。と言っても、目標は父のような立派な大人になり、ワイナリーを引き継ぐことに変わりなかった。変わったのは葡萄園と同じくらい大切なものができたこと。
朝起きて最初に挨拶してくれる使用人はいつもコロナだった。休憩中に飲み物を持ってきてくれるのも、仕事の合間に一緒に勉強するのも、この小さなキキーモラの使用人だった。僕は彼女を何処へでも連れて行ったし、彼女は何処にでもついてきた。葡萄園にも、ワイン蔵にも、町にも、野山にも、川にも、僕の部屋にも……ベッドの上にも。
コロナは僕が望めばいつでも抱き枕の役をやってくれたし、あの時のように僕の滾りを鎮めてくれたりもした。最初は股間から白い物が吸い出される度、コロナに魂を吸われているのではないかと思ったものだ。とても気持ちよいが、同時に少し疲れるから。だがコロナの笑顔を見る度に安心してしまい、またしてほしくなってしまう。
僕の求めに応じて、コロナは小さな口で一生懸命にペニスをしゃぶってくれた。ふわふわの尻尾を揺らしながら、楽しそうに。やがて舌の動きが慣れてきて、的確に感じる所を突いてくるようになった。そして彼女はいつも僕の出したものを美味しそうに飲み下し、にっこり笑って頭を撫でてくれた。
そして時には、口以外でも……
「イェンス様、失礼いたします」
ベッドに寝た僕の上に、覆いかぶさってくるコロナ。いつも通りメイド服を着ているが、スカートを捲り上げていた。白い清楚な下着と、滑らかなふとももが眩しかった。僕の方はすでに下半身を裸にされており、ペニスは期待に膨れ上がっている。そのまま彼女が僕の上へうつ伏せになると、ペニスがすべすべとしたふとももに挟み込まれた。
「重くないですか?」
「平気、だよ……」
柔らかな女体の重圧は心地よく、何より彼女の顔が間近にあるのが興奮した。互いの吐息がかかる距離だ。
コロナはにこりと微笑み、脚をこすり合わせる。滑らかなふとももと下着の生地が、優しくペニスを愛撫した。彼女に抱きつき……というよりむしろしがみついて快感に震えていると、コロナは僕の目をじっと見つめ、頭を撫でてくれる。
舌のくすぐったさとは違う、甘く柔らかな摩擦。コロナも「んっ、んっ……」とくぐもった声を出す。快感の波が最高潮に達するまで、彼女は脚でペニスを抱きしめてくれていた。
「……うっ」
やがて、たまらない気持ち良さに声が漏れ、ペニスからは白濁が漏れ出した。コロナの温かなふとももの間で脈打ち、どくどくと精液を吐き出していった。
「いっぱい出てます……」
ふとももでしっかりとペニスを抱きしめながら、コロナは楽しそうに笑う。そのままいつものように頭を撫でられ、次第に心地よい眠気に包まれていった。
こうして彼女の奉仕を受けながら共に成長し、やがてそれがどういうことなのか、少しずつ分かってきた。
仕事をするときも遊ぶときも、彼女は忠実な従者だった。相変わらず平らな場所でよく転んだが、仕事は正確で、常に僕を助けてくれた。そうやって四年が過ぎ、待ちに待った十六歳の誕生日を迎えた。町の法律上、飲酒を許される歳だ。我が家で作ったワインを、僕と父、そして使用人たちの誇りであるそのワインを、ようやく味える。コロナに「どんな味なのか」と聞かれて答えられなかったワインの味を、ようやく知ることができる。コロナは僕より二週間早く十六歳になっていたが、最初の一杯は僕と一緒に飲むと言って、待っていてくれたのだ。
夜のパーティへの期待に胸を膨らませつつ、僕は古本市を見るためコロナと一緒に町へ出た。町の人たちは僕らを見ると優しく声をかけてくれた。この頃には町に済む魔物の数は徐々に増えており、その献身的な働きぶりによって住民からの信頼を得ていた。コロナもそうである。
「ねえ、ちょっといいかい」
不意に声をかけてきたのは、旅人らしい身なりの子供……とその時は思った。実際には彼女は僕たちより年上で、ドワーフだったのだ。
「ジュベリオ市の鳩時計を作った職人がこの町にいるって聞いたんだけど、何処かな?」
「ヘンシェル様の工房でしたら、向こうの十字路を左に曲がって、自警団の詰所の前で右に曲がれば正面に見えますよ。緑の看板です」
コロナが丁寧に教える。彼女はお礼を言うと、意気揚々と歩き出した。平和な街並みの中を、堂々と。
だが実際のところ、あの頃は完全に平和とも言い難かった。自然な形で魔物が町に溶け込み始め、それに伴い町の中立が崩れることを危惧する声もあった。しかし当時の僕はまだそんなことは大して気にせず、コロナと一緒に呑気に古本を物色していた。
事件が起きたのは、そのときだった。路地裏の方からくぐもった声がしたのだ。
町に魔物が増えるにつれ、反魔物領から来た旅行者が問題を起こすことも多くなっていた。町の魔物がよそ者に虐められているのかもしれない……そう思い、僕は恋愛小説を見ているコロナを残して様子を見に行った。
……結論から言うと、それは杞憂だった。
「もっとぉ……もっと突いてぇ……♥」
「リリーナ……リリーナぁ……!」
よく二人で喫茶店にいる、学士の青年と花屋のサキュバス。知り合いではないが、仲の良いカップルだと思っていた。路地裏で体を重ね合わせ、当時僕が誰かに教わったわけでなくても、何となく知っていた『あの行為』をしていたのだ。初めて実際に見るその光景に、僕はひたすら圧倒された。
あんなにも深々と、男根が女性器に突き刺さるものなのか。
あんなにもいやらしい汁が溢れるものなのか。
あんなにも、気持ち良さそうに艶かしい声を上げられるものなのか。
……僕とコロナにも、同じことができるのだろうか。
やがて二人は体を震わせ、共に絶頂を迎えた。混じり合った体液がふとももを伝い、抱き合ったまま肩で息をしていた。僕はしばらくその姿に魅入っていたが、やがてハッと我に還る。
コロナの悲鳴が聞こえたからだ。
大慌てで大通りへ戻った僕の見たのは道脇に倒れているコロナと、それを見下ろす貴族らしき若い男。顔はよく覚えていないし思い出したくもないが、手下を二人従え、口汚くコロナを罵っていたのを覚えている。反魔物領から来た人間であることは明らかだった。
手下の一人が足を上げ、倒れたコロナを踏みつけようとした。
「やめろ!」
僕は無我夢中で駆け出した。人生で初めて、本気で人間を殴ろうとした。拳を振り上げ、自分でもなんだか分からない叫び声を上げながら、悪漢の顔面に一撃を繰り出した。
気合いも腕力も十分だったと思う。ただ僕は喧嘩の経験というものがなかった。その拳が届く前に取り押さえられ、逆に投げられた。嫌という程地面に叩きつけられ、踏みつけられた。
恵まれた環境で育って着た僕は、そのとき初めて二つの感情を知った。悔しさと憎しみ。何故僕はこんな悪党に負けてしまうんだ。何故こんな奴らが威張り散らしているんだ。今でもあのときの思いは忘れられない。
だがそのときは運が良かった。下男のハンスがたまたま近くを通りかかったのだ。
「この腐れ外道がァァァ!」
怒号と共に突進してくる、筋骨隆々とした使用人。彼の過去は詳しく知らなかったが、傭兵崩れで僕の父に拾われたとか、完全武装の騎士を素手で殺したことがあるとか、そんな噂は聞いていた。
そしてその日、僕は初めて見ることになった。人間の体が……貴族とその手下二人が、屋根より高く吹っ飛ばされるところを。
その後僕らは駆けつけてきた自警団に保護され、父が呼び出されたり、色々あった。結局コロナが暴行された理由は、あのよそ者の馬鹿貴族が財布を落としたのを彼女が拾って渡したからだった。人間だったら殴ったりはしなかった、などと供述していたらしい。
彼女は軽い打撲程度で住んだものの、僕は足首の骨を折られていた。結局人生初のワインは治るまでお預けとなり、コロナの介護を受けることになった。
ハンスは相手に重傷を負わせたが、目撃者が大勢いたため「主人の息子を守り、使用人としての義務を果たしたのみ」として無罪となった。父は彼にボーナスを出し、僕の怪我が完治したら護身術を教えるよう命じていた。
「友達の危機を見捨てず、よく立ち向かった。勇敢になったな」
ベッドに寝かされた僕に、父は賞賛の言葉をかけてくれた。僕には素直に喜べなかった。
「……僕はあんな奴らに負けた」
「違う。負けてなどいない」
父はきっぱりと言い切った。
「お前は逃げなかった」
その言葉と共に差し出されたのは懐中時計だった。父が愛用している品と同じ、銀製の美しい時計。しかし渋みを帯びた父の物とは違い、銀の輝きはまだ眩しさがあって、つい最近作られたものだと分かった。
「ヘンシェル殿の作だ。誕生日祝いに用意しておいた」
それを聞いて胸が高鳴った。当時町に住んでいた、世界有数の時計職人である。父の時計も彼の作であり、僕にとっては憧れの一つだった。
受け取って蓋を空け、文字盤を見る。金の針が微かな音と共に時を刻み、文字盤にはアメシストで葡萄の象嵌が施されていた。アメシストは古来より酒神バッカスと縁のある宝石で、悪酔いを防ぐお守りとされている。後で分かったことだが、それは父が同じバッカス信徒の貿易商ベッカー家を通じ、聖なるアメシスト鉱山から取り寄せたものだった。
深い紫の結晶、金の針、白い文字盤、銀の外装。そのどれもが美しい。そして父が僕にそれを託したのは、僕を大人と認めたということだった。
「コロナ。イェンスを頼むぞ」
「はい、旦那様」
寝室を出て行く父の背中に、品良くお辞儀するコロナ。ドアが閉まり、僕らは二人きりになる。
「……イェンス様」
彼女はそっと、僕の手の上に自分の手のひらを乗せた。あの潤んだ瞳はずっと覚えている。僕がハンスに助けられてからずっと、コロナは泣きじゃくっていた。ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら。
「コロナのせいじゃないよ」
僕は何度もそう繰り返していたが、彼女はやはり悲しそうな目をしていた。だがその眼差しからは何か違う思いも感じられた。何か、思いつめたような。
コロナはちらりと部屋のドアを見た。そしてもう一回僕の目を見て、不意に小走りでドアへと駆け寄り……施錠したのだ。
どうしたの、と尋ねようとして、開いた口が自然と閉じた。彼女が服を脱ぎ始めたから。
清楚なメイド服が床へ脱ぎ捨てられ、白い手足が露わになっていく。いつも一緒に葡萄園で仕事をしているから、顔や手は少し日焼けしていた。すらりとしたお腹には小さなおへそ。下着まで脱いでしまい、綺麗な胸が露わになった。四年の間抱き枕になってもらい、そこが少しずつ成長しているのは感じていた。昼間見たサキュバスの女性ほど大きくなかったが、張りのある膨らみはとても美しく、尊く感じた。ピンク色の乳首がツンと勃ち、なんとも可愛らしかったのを覚えている。
そしてシンプルなショーツ……僕を性に目覚めさせたそれもゆっくりと降ろし、脚を抜く。彼女は慎ましく股間を手で隠したが、一瞬だけ見えてしまった。女の子の、大切なところ。男性器を受け入れ、子供を産むための割れ目。
初めて見る、コロナの全裸。玉のような肌に、ふわふわとした尻尾と手首の羽毛。清楚で綺麗で、それでも『オス』を魅了する魔性の女体だ。部屋中に彼女の香りが広がった。
「……お脱がせしますね」
今度は寝ている僕の服に手をかけて、優しく脱がせてくれた。平らなところで転ぶ癖があっても、手先は非常に器用で、あっという間に裸に剥かれてしまう。折れている足首に負担がかけないよう、丁寧に脱がされた。
裸を見て、また裸を見られて、ペニスはすっかり上を向いていた。未だに皮を被っているそれを見つめ、コロナはにこりと微笑む。
ベッドに上がってくるコロナ。潤んだ瞳で僕の隣に寄り添い、いつものようにぴったりと体を合わせる。ただし、裸で。
彼女の体温、肌の柔らかさ、汗の匂い、そして胸の鼓動。女の子の体を直に感じたのはあの日が初めてだった。
「イェンス様……わたし、もう、こうするしか、自分の思いを……」
耳元で囁くコロナ。腕に抱きつかれ、胸を押し当てられる。その弾力の向こうから脈打ちが伝わってきた。魔物は皆性交を好むが、キキーモラがあんな風に誘惑してくるのは珍しいらしい。
指先がペニスに触れ、ぴくんと震える。いつものように少しずつ、優しく包皮を剥いてくれた。親指で敏感な亀頭を撫でられる。
次いでコロナは僕の手を取り、自分の秘部へ導いた。
「あっ……」
声を出したのは僕の方だった。彼女の一番大事なところに指先が触れた。感動と言ってよい気持ちで胸が一杯になったのだ。傷つけないようそっと、できる限り優しく慎重に割れ目をなぞる。今度はコロナの方が震えた。
いつの間にか、唇が触れ合った。どちらが先にしたのかは覚えていない。柔らかな感触に続いて舌が絡み合った。心の中に、甘い味が一杯に広がる。
しばらくの間、互いの性器を愛撫しながら、キスを続けた。時折息継ぎをして見つめ合い、また唇を重ねる。コロナの胸が押し当てられ、むにむにと擦れるのがたまらなかった。
柔らかい女性器から滴る雫を指先に感じ、芳香が部屋に広がっていくうちに、欲求が高まってきた。もし足の怪我さえ無ければ、自分から彼女のそこに挿し入れて、昼間見た学士の青年のように腰を振っていただろう。だがコロナはそんな僕の欲求にも気づいていた。
コロナがくいっとペニスを引き寄せると、先端が女性器の入り口に触れた。
「あ……コロナ……」
唇が離れ、自然と彼女の名が口から出る。僕の使用人は赤らんだ顔で微笑み、コクリと頷いで……ぐっと腰を突き出して着た。
ぬるりとした感触が、滑らかにペニスを包み込んだ。当時の僕にとってあれは未知の感触で、けれど四年間親しんだコロナの温もりを確かに感じた。互いの心臓の鼓動も重なり合い、いつしか同じリズムになっていた。今でも体を重ねる度にそうなるから不思議だ。
「んっ、はっ……♥」
艶かしい声。コロナは根元までしっかりとペニスを咥え込んでくれた。目からポロポロと涙を流しながら。
「……痛いの?」
心配になって尋ねると、彼女はまたにこりと笑った。
「えへへ……これは、痛い涙じゃありません」
再び唇が合わさり、コロナの舌と唾液が口に入ってくる。その一方で、ペニスが強い快感に晒された。温かな膣がゆっくりとした動きでペニスを締め付け、緩めてを繰り返す。互いに腰を全く動かしていないのに、股間からは「ちゅぱっ、ちゅぱっ」といやらしい音が立っていたのだ。
「んんっ、ちゅ……イェンふ、ひゃま……」
僕の口を貪りながら、優しく頬を撫でてくれるコロナ。手首の羽毛が首筋をくすぐった。僕も手を伸ばし、彼女の臀部に触れた。何回かお願いして、服の上から触らせてもらったことはあった。直に触る丸いお尻はすべすべとした桃のようで、柔らかく、いつまでも撫で回していたい感触だった。ふわふわの尻尾もとても温かい。寒い日にはこれを僕の首に巻きつけて、マフラー代わりに使わせてくれる。
膣の収縮するペースは次第に速くなり、ペニスが彼女の中でぴくぴく震える。すでに前戯で高められていたそれは今にも弾けそうだった。
唇が離れ唾液が音を立てる。互いに荒く呼吸しながら、見つめ合う。それまでは想像もできなかった。清楚なコロナが、あんなに蕩けた顔をするなんて。半開きにした口からは唾液が垂れ、赤らんだ頬に涙が伝わって、それでも嬉しそうに笑っている。
「イェンス様……我慢しないで、出してくださいね……♥」
「で、でも……!」
射精したかった。大好きなコロナの中に、一杯出してみたかった。でもそれだけじゃ、コロナが気持ちよくなれないのではないか……そのことを気にしていた。
だがコロナは僕の耳元で囁いた。
「大丈夫ですっ……イェンス様の熱いのが、お腹の中で、じゅわってなったら……っ♥ きっと、コロナもすっごく気持ちいいですからっ……!」
その瞬間、我慢の糸がプツッと切れた。細い体を強く抱きしめ、快楽に身を任せた。コロナの中で僕のペニスが激しく脈打つ。どくんと溢れ出したそれが、狭い膣内へ迸った。
「あ、ふあっ、きたぁぁ……♥」
コロナが僕にぎゅっと抱きついて、膣内もさらに強く締め付けてきた。汗ばんだ肌を密着させながら、二人で快楽に浸る。耳元でコロナが艶かしく声を上げ、ぶるぶると震える。
今でも僕はその快感を味わう度、自分の寝ているベッドだけが世界の全てのような気分になる。コロナと二人だけの世界にいる……そんな気持ちに。何度味わっても飽きることはないが、互いに初めてを捧げあったあの日は、忘れられない特別な思い出だ。
女性は一度に大きく絶頂する人もいれば、何度も絶頂する人もいるという。コロナは後者らしく、治ってきたかと思うとまた体を震わせて快楽によがった。そんな彼女を抱きしめて射精の余韻に浸り……しばらくして、僕らの肌は離れた。
互いに見つめ合い、呼吸を整える。荒い息が顔にかかった。
「コロナ、大好き、だよ……」
「わたしも、です……!」
互いに蕩けた笑顔で、気持ちを伝え合う。その直後、彼女は僕の手を握り、真っ直ぐにこちらを見つめてきた。そして意を決したように、再び口を開く。
「わたし……イェンス様みたいに、勇気を出します。次は必ず、一緒に立ち向かいます……!」
……足首の骨折は予想よりかなり早く治った。魔物の使う医療魔術には患者に添い寝し、魔力で少しずつ体を癒す方法があるというが、コロナは無意識のうちにそれと似たことをしていたらしい。献身的なキキーモラは元々、癒しの魔法にも向いているのだ。
完治した僕は改めて、生まれて初めてワインを味わった。正直、そこまで美味しいとは思わなかった。だが多くの人がこの飲み物を好むのは何故か、分かった気がした。
互いに酔いが回るにつれ、コロナの姿がより一層美しく、可愛らしく見えたのだ。
町は魔物との交流が年々盛んになり、反魔物領との軋轢も増してきた。町の司祭がなんとか仲介しようとしたものの、対立は避けられなくなっていった。
何とかして中立を保つか。
教団の要求を受け入れ魔物を追い出すか。
逆に魔王へと降るか。
父を含めた町の有力者たちは選択を迫られ、僕らにもその日が迫っていた。
平和な少年時代に、別れを告げる日が。
朝起きて最初に挨拶してくれる使用人はいつもコロナだった。休憩中に飲み物を持ってきてくれるのも、仕事の合間に一緒に勉強するのも、この小さなキキーモラの使用人だった。僕は彼女を何処へでも連れて行ったし、彼女は何処にでもついてきた。葡萄園にも、ワイン蔵にも、町にも、野山にも、川にも、僕の部屋にも……ベッドの上にも。
コロナは僕が望めばいつでも抱き枕の役をやってくれたし、あの時のように僕の滾りを鎮めてくれたりもした。最初は股間から白い物が吸い出される度、コロナに魂を吸われているのではないかと思ったものだ。とても気持ちよいが、同時に少し疲れるから。だがコロナの笑顔を見る度に安心してしまい、またしてほしくなってしまう。
僕の求めに応じて、コロナは小さな口で一生懸命にペニスをしゃぶってくれた。ふわふわの尻尾を揺らしながら、楽しそうに。やがて舌の動きが慣れてきて、的確に感じる所を突いてくるようになった。そして彼女はいつも僕の出したものを美味しそうに飲み下し、にっこり笑って頭を撫でてくれた。
そして時には、口以外でも……
「イェンス様、失礼いたします」
ベッドに寝た僕の上に、覆いかぶさってくるコロナ。いつも通りメイド服を着ているが、スカートを捲り上げていた。白い清楚な下着と、滑らかなふとももが眩しかった。僕の方はすでに下半身を裸にされており、ペニスは期待に膨れ上がっている。そのまま彼女が僕の上へうつ伏せになると、ペニスがすべすべとしたふとももに挟み込まれた。
「重くないですか?」
「平気、だよ……」
柔らかな女体の重圧は心地よく、何より彼女の顔が間近にあるのが興奮した。互いの吐息がかかる距離だ。
コロナはにこりと微笑み、脚をこすり合わせる。滑らかなふとももと下着の生地が、優しくペニスを愛撫した。彼女に抱きつき……というよりむしろしがみついて快感に震えていると、コロナは僕の目をじっと見つめ、頭を撫でてくれる。
舌のくすぐったさとは違う、甘く柔らかな摩擦。コロナも「んっ、んっ……」とくぐもった声を出す。快感の波が最高潮に達するまで、彼女は脚でペニスを抱きしめてくれていた。
「……うっ」
やがて、たまらない気持ち良さに声が漏れ、ペニスからは白濁が漏れ出した。コロナの温かなふとももの間で脈打ち、どくどくと精液を吐き出していった。
「いっぱい出てます……」
ふとももでしっかりとペニスを抱きしめながら、コロナは楽しそうに笑う。そのままいつものように頭を撫でられ、次第に心地よい眠気に包まれていった。
こうして彼女の奉仕を受けながら共に成長し、やがてそれがどういうことなのか、少しずつ分かってきた。
仕事をするときも遊ぶときも、彼女は忠実な従者だった。相変わらず平らな場所でよく転んだが、仕事は正確で、常に僕を助けてくれた。そうやって四年が過ぎ、待ちに待った十六歳の誕生日を迎えた。町の法律上、飲酒を許される歳だ。我が家で作ったワインを、僕と父、そして使用人たちの誇りであるそのワインを、ようやく味える。コロナに「どんな味なのか」と聞かれて答えられなかったワインの味を、ようやく知ることができる。コロナは僕より二週間早く十六歳になっていたが、最初の一杯は僕と一緒に飲むと言って、待っていてくれたのだ。
夜のパーティへの期待に胸を膨らませつつ、僕は古本市を見るためコロナと一緒に町へ出た。町の人たちは僕らを見ると優しく声をかけてくれた。この頃には町に済む魔物の数は徐々に増えており、その献身的な働きぶりによって住民からの信頼を得ていた。コロナもそうである。
「ねえ、ちょっといいかい」
不意に声をかけてきたのは、旅人らしい身なりの子供……とその時は思った。実際には彼女は僕たちより年上で、ドワーフだったのだ。
「ジュベリオ市の鳩時計を作った職人がこの町にいるって聞いたんだけど、何処かな?」
「ヘンシェル様の工房でしたら、向こうの十字路を左に曲がって、自警団の詰所の前で右に曲がれば正面に見えますよ。緑の看板です」
コロナが丁寧に教える。彼女はお礼を言うと、意気揚々と歩き出した。平和な街並みの中を、堂々と。
だが実際のところ、あの頃は完全に平和とも言い難かった。自然な形で魔物が町に溶け込み始め、それに伴い町の中立が崩れることを危惧する声もあった。しかし当時の僕はまだそんなことは大して気にせず、コロナと一緒に呑気に古本を物色していた。
事件が起きたのは、そのときだった。路地裏の方からくぐもった声がしたのだ。
町に魔物が増えるにつれ、反魔物領から来た旅行者が問題を起こすことも多くなっていた。町の魔物がよそ者に虐められているのかもしれない……そう思い、僕は恋愛小説を見ているコロナを残して様子を見に行った。
……結論から言うと、それは杞憂だった。
「もっとぉ……もっと突いてぇ……♥」
「リリーナ……リリーナぁ……!」
よく二人で喫茶店にいる、学士の青年と花屋のサキュバス。知り合いではないが、仲の良いカップルだと思っていた。路地裏で体を重ね合わせ、当時僕が誰かに教わったわけでなくても、何となく知っていた『あの行為』をしていたのだ。初めて実際に見るその光景に、僕はひたすら圧倒された。
あんなにも深々と、男根が女性器に突き刺さるものなのか。
あんなにもいやらしい汁が溢れるものなのか。
あんなにも、気持ち良さそうに艶かしい声を上げられるものなのか。
……僕とコロナにも、同じことができるのだろうか。
やがて二人は体を震わせ、共に絶頂を迎えた。混じり合った体液がふとももを伝い、抱き合ったまま肩で息をしていた。僕はしばらくその姿に魅入っていたが、やがてハッと我に還る。
コロナの悲鳴が聞こえたからだ。
大慌てで大通りへ戻った僕の見たのは道脇に倒れているコロナと、それを見下ろす貴族らしき若い男。顔はよく覚えていないし思い出したくもないが、手下を二人従え、口汚くコロナを罵っていたのを覚えている。反魔物領から来た人間であることは明らかだった。
手下の一人が足を上げ、倒れたコロナを踏みつけようとした。
「やめろ!」
僕は無我夢中で駆け出した。人生で初めて、本気で人間を殴ろうとした。拳を振り上げ、自分でもなんだか分からない叫び声を上げながら、悪漢の顔面に一撃を繰り出した。
気合いも腕力も十分だったと思う。ただ僕は喧嘩の経験というものがなかった。その拳が届く前に取り押さえられ、逆に投げられた。嫌という程地面に叩きつけられ、踏みつけられた。
恵まれた環境で育って着た僕は、そのとき初めて二つの感情を知った。悔しさと憎しみ。何故僕はこんな悪党に負けてしまうんだ。何故こんな奴らが威張り散らしているんだ。今でもあのときの思いは忘れられない。
だがそのときは運が良かった。下男のハンスがたまたま近くを通りかかったのだ。
「この腐れ外道がァァァ!」
怒号と共に突進してくる、筋骨隆々とした使用人。彼の過去は詳しく知らなかったが、傭兵崩れで僕の父に拾われたとか、完全武装の騎士を素手で殺したことがあるとか、そんな噂は聞いていた。
そしてその日、僕は初めて見ることになった。人間の体が……貴族とその手下二人が、屋根より高く吹っ飛ばされるところを。
その後僕らは駆けつけてきた自警団に保護され、父が呼び出されたり、色々あった。結局コロナが暴行された理由は、あのよそ者の馬鹿貴族が財布を落としたのを彼女が拾って渡したからだった。人間だったら殴ったりはしなかった、などと供述していたらしい。
彼女は軽い打撲程度で住んだものの、僕は足首の骨を折られていた。結局人生初のワインは治るまでお預けとなり、コロナの介護を受けることになった。
ハンスは相手に重傷を負わせたが、目撃者が大勢いたため「主人の息子を守り、使用人としての義務を果たしたのみ」として無罪となった。父は彼にボーナスを出し、僕の怪我が完治したら護身術を教えるよう命じていた。
「友達の危機を見捨てず、よく立ち向かった。勇敢になったな」
ベッドに寝かされた僕に、父は賞賛の言葉をかけてくれた。僕には素直に喜べなかった。
「……僕はあんな奴らに負けた」
「違う。負けてなどいない」
父はきっぱりと言い切った。
「お前は逃げなかった」
その言葉と共に差し出されたのは懐中時計だった。父が愛用している品と同じ、銀製の美しい時計。しかし渋みを帯びた父の物とは違い、銀の輝きはまだ眩しさがあって、つい最近作られたものだと分かった。
「ヘンシェル殿の作だ。誕生日祝いに用意しておいた」
それを聞いて胸が高鳴った。当時町に住んでいた、世界有数の時計職人である。父の時計も彼の作であり、僕にとっては憧れの一つだった。
受け取って蓋を空け、文字盤を見る。金の針が微かな音と共に時を刻み、文字盤にはアメシストで葡萄の象嵌が施されていた。アメシストは古来より酒神バッカスと縁のある宝石で、悪酔いを防ぐお守りとされている。後で分かったことだが、それは父が同じバッカス信徒の貿易商ベッカー家を通じ、聖なるアメシスト鉱山から取り寄せたものだった。
深い紫の結晶、金の針、白い文字盤、銀の外装。そのどれもが美しい。そして父が僕にそれを託したのは、僕を大人と認めたということだった。
「コロナ。イェンスを頼むぞ」
「はい、旦那様」
寝室を出て行く父の背中に、品良くお辞儀するコロナ。ドアが閉まり、僕らは二人きりになる。
「……イェンス様」
彼女はそっと、僕の手の上に自分の手のひらを乗せた。あの潤んだ瞳はずっと覚えている。僕がハンスに助けられてからずっと、コロナは泣きじゃくっていた。ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら。
「コロナのせいじゃないよ」
僕は何度もそう繰り返していたが、彼女はやはり悲しそうな目をしていた。だがその眼差しからは何か違う思いも感じられた。何か、思いつめたような。
コロナはちらりと部屋のドアを見た。そしてもう一回僕の目を見て、不意に小走りでドアへと駆け寄り……施錠したのだ。
どうしたの、と尋ねようとして、開いた口が自然と閉じた。彼女が服を脱ぎ始めたから。
清楚なメイド服が床へ脱ぎ捨てられ、白い手足が露わになっていく。いつも一緒に葡萄園で仕事をしているから、顔や手は少し日焼けしていた。すらりとしたお腹には小さなおへそ。下着まで脱いでしまい、綺麗な胸が露わになった。四年の間抱き枕になってもらい、そこが少しずつ成長しているのは感じていた。昼間見たサキュバスの女性ほど大きくなかったが、張りのある膨らみはとても美しく、尊く感じた。ピンク色の乳首がツンと勃ち、なんとも可愛らしかったのを覚えている。
そしてシンプルなショーツ……僕を性に目覚めさせたそれもゆっくりと降ろし、脚を抜く。彼女は慎ましく股間を手で隠したが、一瞬だけ見えてしまった。女の子の、大切なところ。男性器を受け入れ、子供を産むための割れ目。
初めて見る、コロナの全裸。玉のような肌に、ふわふわとした尻尾と手首の羽毛。清楚で綺麗で、それでも『オス』を魅了する魔性の女体だ。部屋中に彼女の香りが広がった。
「……お脱がせしますね」
今度は寝ている僕の服に手をかけて、優しく脱がせてくれた。平らなところで転ぶ癖があっても、手先は非常に器用で、あっという間に裸に剥かれてしまう。折れている足首に負担がかけないよう、丁寧に脱がされた。
裸を見て、また裸を見られて、ペニスはすっかり上を向いていた。未だに皮を被っているそれを見つめ、コロナはにこりと微笑む。
ベッドに上がってくるコロナ。潤んだ瞳で僕の隣に寄り添い、いつものようにぴったりと体を合わせる。ただし、裸で。
彼女の体温、肌の柔らかさ、汗の匂い、そして胸の鼓動。女の子の体を直に感じたのはあの日が初めてだった。
「イェンス様……わたし、もう、こうするしか、自分の思いを……」
耳元で囁くコロナ。腕に抱きつかれ、胸を押し当てられる。その弾力の向こうから脈打ちが伝わってきた。魔物は皆性交を好むが、キキーモラがあんな風に誘惑してくるのは珍しいらしい。
指先がペニスに触れ、ぴくんと震える。いつものように少しずつ、優しく包皮を剥いてくれた。親指で敏感な亀頭を撫でられる。
次いでコロナは僕の手を取り、自分の秘部へ導いた。
「あっ……」
声を出したのは僕の方だった。彼女の一番大事なところに指先が触れた。感動と言ってよい気持ちで胸が一杯になったのだ。傷つけないようそっと、できる限り優しく慎重に割れ目をなぞる。今度はコロナの方が震えた。
いつの間にか、唇が触れ合った。どちらが先にしたのかは覚えていない。柔らかな感触に続いて舌が絡み合った。心の中に、甘い味が一杯に広がる。
しばらくの間、互いの性器を愛撫しながら、キスを続けた。時折息継ぎをして見つめ合い、また唇を重ねる。コロナの胸が押し当てられ、むにむにと擦れるのがたまらなかった。
柔らかい女性器から滴る雫を指先に感じ、芳香が部屋に広がっていくうちに、欲求が高まってきた。もし足の怪我さえ無ければ、自分から彼女のそこに挿し入れて、昼間見た学士の青年のように腰を振っていただろう。だがコロナはそんな僕の欲求にも気づいていた。
コロナがくいっとペニスを引き寄せると、先端が女性器の入り口に触れた。
「あ……コロナ……」
唇が離れ、自然と彼女の名が口から出る。僕の使用人は赤らんだ顔で微笑み、コクリと頷いで……ぐっと腰を突き出して着た。
ぬるりとした感触が、滑らかにペニスを包み込んだ。当時の僕にとってあれは未知の感触で、けれど四年間親しんだコロナの温もりを確かに感じた。互いの心臓の鼓動も重なり合い、いつしか同じリズムになっていた。今でも体を重ねる度にそうなるから不思議だ。
「んっ、はっ……♥」
艶かしい声。コロナは根元までしっかりとペニスを咥え込んでくれた。目からポロポロと涙を流しながら。
「……痛いの?」
心配になって尋ねると、彼女はまたにこりと笑った。
「えへへ……これは、痛い涙じゃありません」
再び唇が合わさり、コロナの舌と唾液が口に入ってくる。その一方で、ペニスが強い快感に晒された。温かな膣がゆっくりとした動きでペニスを締め付け、緩めてを繰り返す。互いに腰を全く動かしていないのに、股間からは「ちゅぱっ、ちゅぱっ」といやらしい音が立っていたのだ。
「んんっ、ちゅ……イェンふ、ひゃま……」
僕の口を貪りながら、優しく頬を撫でてくれるコロナ。手首の羽毛が首筋をくすぐった。僕も手を伸ばし、彼女の臀部に触れた。何回かお願いして、服の上から触らせてもらったことはあった。直に触る丸いお尻はすべすべとした桃のようで、柔らかく、いつまでも撫で回していたい感触だった。ふわふわの尻尾もとても温かい。寒い日にはこれを僕の首に巻きつけて、マフラー代わりに使わせてくれる。
膣の収縮するペースは次第に速くなり、ペニスが彼女の中でぴくぴく震える。すでに前戯で高められていたそれは今にも弾けそうだった。
唇が離れ唾液が音を立てる。互いに荒く呼吸しながら、見つめ合う。それまでは想像もできなかった。清楚なコロナが、あんなに蕩けた顔をするなんて。半開きにした口からは唾液が垂れ、赤らんだ頬に涙が伝わって、それでも嬉しそうに笑っている。
「イェンス様……我慢しないで、出してくださいね……♥」
「で、でも……!」
射精したかった。大好きなコロナの中に、一杯出してみたかった。でもそれだけじゃ、コロナが気持ちよくなれないのではないか……そのことを気にしていた。
だがコロナは僕の耳元で囁いた。
「大丈夫ですっ……イェンス様の熱いのが、お腹の中で、じゅわってなったら……っ♥ きっと、コロナもすっごく気持ちいいですからっ……!」
その瞬間、我慢の糸がプツッと切れた。細い体を強く抱きしめ、快楽に身を任せた。コロナの中で僕のペニスが激しく脈打つ。どくんと溢れ出したそれが、狭い膣内へ迸った。
「あ、ふあっ、きたぁぁ……♥」
コロナが僕にぎゅっと抱きついて、膣内もさらに強く締め付けてきた。汗ばんだ肌を密着させながら、二人で快楽に浸る。耳元でコロナが艶かしく声を上げ、ぶるぶると震える。
今でも僕はその快感を味わう度、自分の寝ているベッドだけが世界の全てのような気分になる。コロナと二人だけの世界にいる……そんな気持ちに。何度味わっても飽きることはないが、互いに初めてを捧げあったあの日は、忘れられない特別な思い出だ。
女性は一度に大きく絶頂する人もいれば、何度も絶頂する人もいるという。コロナは後者らしく、治ってきたかと思うとまた体を震わせて快楽によがった。そんな彼女を抱きしめて射精の余韻に浸り……しばらくして、僕らの肌は離れた。
互いに見つめ合い、呼吸を整える。荒い息が顔にかかった。
「コロナ、大好き、だよ……」
「わたしも、です……!」
互いに蕩けた笑顔で、気持ちを伝え合う。その直後、彼女は僕の手を握り、真っ直ぐにこちらを見つめてきた。そして意を決したように、再び口を開く。
「わたし……イェンス様みたいに、勇気を出します。次は必ず、一緒に立ち向かいます……!」
……足首の骨折は予想よりかなり早く治った。魔物の使う医療魔術には患者に添い寝し、魔力で少しずつ体を癒す方法があるというが、コロナは無意識のうちにそれと似たことをしていたらしい。献身的なキキーモラは元々、癒しの魔法にも向いているのだ。
完治した僕は改めて、生まれて初めてワインを味わった。正直、そこまで美味しいとは思わなかった。だが多くの人がこの飲み物を好むのは何故か、分かった気がした。
互いに酔いが回るにつれ、コロナの姿がより一層美しく、可愛らしく見えたのだ。
町は魔物との交流が年々盛んになり、反魔物領との軋轢も増してきた。町の司祭がなんとか仲介しようとしたものの、対立は避けられなくなっていった。
何とかして中立を保つか。
教団の要求を受け入れ魔物を追い出すか。
逆に魔王へと降るか。
父を含めた町の有力者たちは選択を迫られ、僕らにもその日が迫っていた。
平和な少年時代に、別れを告げる日が。
19/11/03 18:11更新 / 空き缶号
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