連載小説
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後編

 闇。
 ただどこまでも、闇。

 月明かりすらない暗闇の中で、僕は自分が生きていることを知った。胸に刺さった矢の痛みは消えて、ベッドに寝かされていた。野戦病院のベッドにしては妙に柔らかく、良い匂いがする。
 起き上がろうとしたが、できなかった。両手足をベッドに縛られていたのだ。何が起きているのか理解しようとしても、思考が状況に追いつかない。袖に仕込んだ極小のナイフで拘束を解けないかと思ったが、すぐに無理だと分かった。

 僕は裸にされていたのである。


「……あ……目、覚めたのですね」

 懐かしい声が、耳元で囁かれた。

「暴れないでくださいね。柔らかいロープですけど、お肌を痛めてしまうといけませんから……」

 聞こえる声はどこか艶やかだけど、間違いなく彼女のものだ。ずっと忘れたことのない、僕の大事な人の。

「……トウィーデ、そこにいるんだね?」
「はい、フェリクス様」

 暗くて姿ははっきり見えないけど、彼女は僕のすぐ側にいる。
 ふいに、柔らかな温もりを肌に感じた。隣からぎゅっと抱きつかれている。ずっと野戦の只中にいたから、清潔な女の子の匂いを嗅ぐのも久しぶりだった。しかも、彼女のなんて。

「ずっと……お会いしたかった、です……!」

 絞り出すような涙声。抱きつく腕に力が籠もった。子供の頃一度だけ抱きつかれた、あのときよりもっと強い力。熱い吐息が耳にかかる。

「僕もだよ」

 嘘偽らざる本心を告げた。いつも諦めたふりをして、自分を騙そうとしていたけど、結局できなかった。どうか生きていてくれ……そう念じて戦い続けてきた。
 敵味方での再会だなんて思ってもみなかった。でも彼女は生きていて、今僕の側にいてくれる。それだけで十分、僕の戦いは報われた。

「大旦那様は……とても、勇敢で……ございました……!」
「うん」

 僕に寄りすがるようにして、トウィーデは泣いていた。今までずっと我慢してきたのかもしれない。
 だが僕は気づいていた。彼女は僕の知っているトウィーデだけど、同時にあの頃のままのトウィーデではないのだと。抱きついてくる腕の感触は人間やエルフのそれとは異なっている。少なくともすべすべとした肌ではないし、長袖を着ているわけでもない。

 そして手にはおそらく、鉤爪がついている。

「……トウィーデ。僕の部下たちはどうしたの?」
「……みんな、無事です。フェリクス様と同じように、捕虜になっています。怖い思いも、痛い思いもしていません。ちゃんと生きています」

 涙声でも、彼女ははっきりと答えてくれた。

「だから、フェリクス様も……もう誰も殺さなくて、いいんです」

 その言葉を聞いて、重い枷が一つ外れたような気がした。
 魔物は人間を生け捕りにする武器を使う、という話を聞いたことがある。彼女が僕に打ち込んだ矢もそうだったのだろう。なら部下たちも本当に生きているはずだ。
 虜囚となった後どう扱われるか、これから知ることになる。

「僕はどうなるの?」

 答えはすぐには帰ってこなかった。ただ彼女が一度僕から離れて、涙を拭ったのがなんとなく分かった。
 再び顔が、吐息が耳元に近づく。耳の穴を刺激する息がくすぐったい。

「ッ……!?」

 ちゅるり。突然耳を舐められた。滑った舌の感触に体が震える。しかし決して不快ではない、むしろ不思議な快感があった。

 一転して、くすくすと笑い声が聞こえる。愉快そうな、悪戯っぽい、やっぱりどこか艶やかな声が。

「どう、しちゃいましょうか?」

 心臓が大きく脈打った。何か劣情を誘うような、妖しげな響きがその声にはあった。
 再び、耳を這う舌の感触。耳たぶから穴の付近まで丹念に舐められ、口に含んで甘噛みされる。優しく当たる歯と唇の感触が奇妙に気持ちよかった。唾液がいやらしい音を立てて、体がぞくぞくしてくる。

 トウィーデはしばらくそのまま、僕の耳に奇妙な奉仕を続けた。丁寧に甘噛みし、息を吹きかけてはくすくすと笑う。そのくすぐったさに声が出そうになるのを辛うじて我慢していた。片側をひとしきり舐めると、反対側にも同じように舐めしゃぶってくる。
 その舌の動きと吐息には何か、性的な魅力があった。清楚で内気だった彼女からは考えられない。にも関わらず、そんな仕草にも彼女が間違いなくトウィーデであると分かるような、何かがあった。彼女はどうなっていて、僕はどうなるのか?

 だがそれよりも、別の疑問がふと湧いた。

「……トウィーデ、どんな格好してるの?」
「……分かってるはずですよ?」

 一層、しっかりと体を寄せられる。汗ばんだ柔らかなものが、僕の胸に当てられていた。むにゅっとした膨らみが。

 再び、体を舐められる。今度は耳ではない。腕、胸、脇腹、脚、あちこちを少しずつ舐められた。くすぐったいが、ただ身をよじることしかできない。
 膝の辺りに来たとき、トウィーデが何を舐めているのか分かった。戦傷の跡を舌先でなぞっていたのだ。

「フェリクス様……下、大きくなってますね」

 言われた瞬間、反射的に股間を隠そうとした。でも両手足を拘束されていてはどうしようもない。そんな僕に抱きつきながら、トウィーデは楽しそうに笑った。

「ふふっ……暗くても、私には全部見えてますよ……真っ赤になった、お顔も」

 ふーっと顔に息を吹きかけられた。先ほどは熱く感じた彼女の吐息が、今度は涼感を帯びている。僕の顔が羞恥心で熱くなっているからだ。

「その……もう、やめて……」
「ごめんなさい、恥ずかしいですよね。じゃあ、隠してあげます……」

 突然、真上から覆いかぶさってくるトウィーデ。女体の温かみと体重を感じた直後、股間のそれが柔らかいものに挟み込まれた。弾力があって、少しぬめりを帯びた……肌

「はい、これで大丈夫ですよ……おちんちん、私のふとももでちゃんと隠れましたから。もう恥ずかしくないですよね……?」
「……!」

 顔から火が出そうになった。トウィーデの脚……昔、密かに綺麗だと思っていた脚。その感触を一番敏感で、性的な場所で感じている。
 それではまさか、微かに感じるこのぬめりは……

「あれ……? 今フェリクス様の心臓、すごい音しましたね……?」

 面白がるような口調で、彼女は僕に頬をすり寄せてくる。

「おちんちんも……ぴくんって、動いてますね……ふとももの間で♥」

 卑猥な現実を耳元で実況され、胸の鼓動は治らない。自分の鼓動だけでなく、押し当てられている彼女の鼓動も感じる。柔らかな膨らみ……乳房越しに。
 突然、脚がすりすりと擦り合わされた。なめらかに男根を滑っていくふとももの肌。怒張した竿が火切り棒のように翻弄され、性的な快楽が込み上げてくる。

 体だけでなく、心まで裸にされていくような気がした。そうだ。僕は子供の頃、彼女をただの友達としてではなく、弓術の先生としてではなく、別の目でも見ていた。

「ぬるぬるしてるの、分かりますか……? 下、何も履いてませんから……♥」

 楽しげな声に続いて首筋を舐められ、キスを繰り返される。ふとももを伝っているぬめり……彼女の大事なところから流れ出た、温かい液体が肉棒に塗りたくられていく。そして首筋には彼女の唾液が。
 それはもう、魔性の快楽だった。僕が憎しみに駆られて変わってしまったように、彼女も変わったのだ。

「トウィ、デ……やっぱり、魔物、に……」
「……ええ。でも」

 唇に柔らかいものが触れた。ちゅっ、と小さな音を立てて離れる。舌が入ってくることを心のどこかで期待してしまった。

「あの頃から、心の底で抱いていた願望……優しいフェリクス様と、もっと触れ合いたい、イタズラしてみたい、わがまま言ってみたい……あなたに全てを捧げたい、って……」

 辿々しい、けれど熱のこもった口調。脚はより激しくすり合わされ、肉棒をこねくり回し、追い詰める。

「全部、私の望みなんです……昔考えていたより、えっちな形になっちゃったけど……今、この体になって、フェリクス様とまた会えて……やっと、こうして……!」

 ふとももだけでなく、性器同士が擦れ合っているのを感じた。明らかに興奮している彼女の声を聞いて、僕は何か許されたような思いを抱いた。そして込み上げてくる快感の中、懺悔するかのように口を開く。

「ぼ……僕、トウィーデの裸、見たことあるんだ……」
「え……?」

 きょとんとした声と共に、ふとももの動きが止まった。

「着替えているところ、こっそり……トウィーデが、好きで……どうしても、気になって……ごめん」
「じゃあ……私だけじゃ、なかったんですね……♥」

 独り言のようにぽつりと呟き、くすっと笑う彼女。顔は見えなくても、あの可愛らしい微笑みがすぐ側にある。
 脚が再び優しく擦れ合い、男根は玉袋からこみ上げてきたそれを吐き出そうとした。自分の意思で止めることはできない。

「トウィーデ、で、る……!」

 そう告げても、彼女は男根への刺激を続けた。続けてくれた。
 脚が汚れるのも気にしないで、僕を気持ち良くする。してくれる。

 快感が最高潮に達して、「うっ」と声が漏れた。柔らかなふとももの間で男根が溶け出したかのような、全身の力が抜けてしまうような気持ち良さ。弾力のある脚で柔らかく締め付けられた管から、ゆっくりと精が溢れ出ていく。

「ん……あったかい、です……♥」

 僕にしっかりと抱きついて、彼女は射精を脚で受け止めてくれた。真っ暗で目には見えない。それでもぴったりと閉じられたふとももの合間に、ゆっくりと粘ついた液が広がっていくのを感じる。
 トウィーデを抱きしめたい。でも手足を縛られている。僕にできるのは、この甘く優しい拷問をただただ受け入れることだけだった。

 僕の鼓動と、トウィーデの鼓動。二つが同じくらいの強さになって、互いに一定のリズムを刻んでいく。そのとき改めて分かった。彼女が、僕の元に帰ってきてくれたのだと。

「ああ……気持ちいい……」
「……いっぱい、出てます、ね」

 彼女が少し、脚を開いたり閉じたりした。粘ついた液体が立てるいやらしい音が、暗闇の中に響く。恥ずかしさが何故か心地よい。多分、トウィーデだからこんな気持ちになるのだろう。

 ふいに彼女が僕から離れたかと思うと、小さな火がベッドの側に灯った。いや、正確には火ではない。丸っこい形の燭台に揺らぐ桃色のそれは、炎に似た魔力が放出されているものだった。

「ちょっとだけ、明るくしました……ちょっとだけ」

 気恥ずかしそうに、トウィーデは僕を見た。桃色の灯火に照らされた彼女の目には、昔と同じ綺麗な瞳があった。鮮やかな緑の髪も、エルフ族の尖った耳も昔のままだ。
 ただし、耳は増えていた。髪と同じ色の、柔らかそうな体毛に覆われた大きな耳が、頭の上に二つ生えていたのだ。そして僕に抱きついていた腕もやはり、人間のものではない。緑の細かな体毛が生えて、三本の鉤爪がある。長く伸びた骨には皮膜が張られ、翼を形成していた。

 鳥でもなく、獣でもなく。
 丸いお尻を少し見せ、ほどよく膨らんだ乳房を小さく揺らしながら、蝙蝠の魔物はベッドに腰掛けた。

「……耳、可愛いね」
「どちらが、ですか?」

 はにかみ笑いを浮かべながら、獣の耳と元からの耳を順番にピクピク動かす。

「両方が」

 答えた直後、未だに手足を動かせないのが不満に感じた。目の前に彼女がいるのに、自分からは何もできないなんて。

「ねぇ、ほどいてよ」

 そう頼むと、トウィーデは僕の手をちらりと見て、少し考え込んだ。

「……じゃあ……ぎゅって、抱きしめてくださるなら……ほどいてあげます」
「うん。抱きしめたいから、ほどいて」

 必死で訴えると、彼女は小さな笑い声を漏らしながら、鉤爪でロープにそっと触れた。何かの魔力によるものだろうか、それだけでロープはするりと解け、右腕が自由になった。同じように左腕も解放してくれた。
 嬉しそうに身を寄せてくる彼女を、そっと抱きしめる。ぷにっ、と乳房が胸板にひしゃげる。

 ぎゅっと力を込めて、小柄な彼女のぬくもりを感じる。頭を撫で、蝙蝠の耳に手を触れた。

「ん……」

 くすぐったそうに耳を震わせながらも、幸せそうに僕の掌を受け入れるトウィーデ。可愛い。愛おしい。
 この汚れた手で触れていいのか……そんな思いさえ、

「また、お側に……置いていただけます、か……?」
「うん。今度はずっと、一緒にいよう。何があっても」
「……よかった」

 また、唇が触れ合った。今度は互いに舌を絡め合う、濃厚なキス。トウィーデの甘い吐息が口に入ってくる。柔らかな舌に口内をくすぐられ、自分の舌で彼女の口を味わって、一致していく鼓動に耳を傾ける。

 しばらくして唇が離れた時、トウィーデは僕の前に脚を投げ出した。ふとももにべっとりと付着した、白い粘液。抽出された獣欲が綺麗な肌を汚している。それが桃色の明かりに照らし出された姿はなんとも言えない卑猥さを醸し出していた。
 そして精とは別の液体が、白く濁っていない透明な汁が、シーツを濡らしていることに気づいた。脚を開いたトウィーデの股間にあったのは、少し盛り上がった無毛の恥丘。着替えを覗いたときと同じ、無垢な子供のように綺麗な女性器だ。脚を開いた姿勢のせいか割れ目がほんの少しだけ開いて、中のピンク色が微かに見えた。

 鼻をついたのは精液の臭いではなく、甘く誘うような雌の匂い。垂れ流される愛液の匂いだった。

「今度は、この中に……」

 トウィーデは僕の股間、女体の柔らかさと香りで力を取り戻した男根に、愛おしげな眼差しを向けた。次の瞬間には僕の腰に跨り、快楽を待ち望む亀頭の上に自分の恥丘をかざす。
 熱い愛液がぽたりと落ち、亀頭に触れた。思わず体が震えてしまう。いたずらっぽい、少しだけ意地悪な笑みを絶やさず、トウィーデはゆっくりと腰を下ろす。呼吸が少し速くなっていた。

「フェリクス様の、大切な精液……ココに、ください……♥」

 熱っぽい瞳を向けられた直後、割れ目と亀頭がちょんと触れた。

「ひゃんっ」
「あっ」

 今度は二人同時に体が震えた。敏感な亀頭で感じる女性器の柔らかさ、ぬめり。気持ち良くて竿全体がどくんどくんと震えている。
 けれど、これで終わりではなかった。トウィーデは僕の顔を見ながら、翼手の鉤爪で男根の根元を押さえて、さらに腰を沈めていった。

 亀頭が入り口をくぐった途端、そこだけ別次元のような感覚に襲われた。まるで彼女の体内に、耳を這い回った舌が無数に生えているかのよう。愛液を纏った襞に絡みつかれ、その気持ちよさに男根が敏感に反応する。

「あふっ……♥ な、中で震えてます……♥」

 感動したように言うトウィーデ。息を荒げ、興奮を抑えきれないと言った様子で、一気に腰を下ろす。

「あはぁっ……♥」
「ううっ!?」

 彼女は甲高い嬌声を、僕は悲鳴を上げた。竿が全て膣内へ咥え込まれた途端、亀頭に熱いものが触れた。そしてどんどん敏感になっていく亀頭が激しくくすぐられる。彼女の膣の奥に、とても熱くて襞がいっぱいな所があったのだ。
 一度出しているにも関わらず、僕は快楽に追い詰められていく。まるで膣内に何人もの小さなトウィーデがいて、一斉に男根を愛しているような。

「あっ、だめ、トウィーデ、抜いて……!」
「……は、はい……抜きますね……」

 僕が切羽詰まっているのを見て、彼女はゆっくりと腰を上げてくれた。加え込まれた男根が、徐々に抜かれて……

「……えへへ」

 また一気に、奥まで逆戻りした。

「はぁん♥」
「ちょっ、だめ……!」

 膣奥を突いた快楽に、彼女は体を仰け反らして酔いしれる。膣内にいる大勢のトウィーデが、また亀頭を弄び始めた。先ほど出し尽くしたかと思った玉袋から、またこみ上げてくる。

「トウィーデ、ほんとに、気持ちよすぎて……! もうだめ、だからっ……! 」
「ご、ごめんなさい、つい……! こ、今度こそちゃんと、抜きます、から……」

 再び、腰を持ち上げる。膣奥の快楽地獄から亀頭が抜け出し、竿が半ばほど引き抜かれ……


 トウィーデは微笑み、ぺろりと舌を出した。

「……う・そ・で・す♥」

 すとん、じゅぷっ。腰が落とされた瞬間、きゅーっと膣が締め付けられた。彼女が意図的にやったのか、膣奥の肉襞が亀頭に押し付けられ、ぐりぐりとくすぐってくる。それがたまらない、魔性をはらんだ、快感で。

「あああぁんっ、気持ち、いいですぅ……!」
「あっ、うっ、ううっ!」

 今射精すればきっと、最高に気持ちいいだろう。
 今射精すればきっと、頭が真っ白になってしまうだろう。
 今射精すればきっと、この快感無しでは生きていけなくなるだろう。
 今射精すればきっと……彼女は喜んでくれるだろう。

「トウィー、デぇ……気持ちよすぎ……頭が、おかしく……」
「なって、ください♥」

 淫らに笑い、耳をぴくつかせ、腰を揺り動かす、懐かしい蝙蝠の女の子。彼女はもう性的な捕食者で、僕は獲物だと自覚させられた。緩んだ口元から垂れた唾液が胸板を濡らした瞬間、僕の理性は崩壊した。

「あ、あ、お、おおぉ……!」

 獣じみた声は僕のものか、それでも彼女のものだったのか。激しく脈打った男根から、どくどくと精液が迸る。今まで経験したことのない、強い快楽と共に。
 耳に淫らな嬌声が聞こえた。僕たちの繋がっている部分……無毛の割れ目を僕の肉棒が押し広げ、ピンク色の襞がそれに絡みついている部分から、ぷしゅっと透明な液が吹き出す。その潮吹きは僕のへそのあたりまで飛散した。

 トウィーデの体が仰け反り、長い嬌声を上げる。絶頂を迎えたのに膣内は蠢き続け、じゅるじゅると音を立てて精を吸い出す『下の口』になっていた。それでも白濁が結合部からだらだらと溢れ出し二人の股間をべっとりと汚していった。
 何分も射精が続いたかのように思えた。それなのに、それが収まりかけてきた途端、トウィーデは腰を上下に揺さぶり始めた。快楽に蕩け、淀んだ目で僕を見ながら、うっとりとした笑顔で腰を使う。

 その艶かしい動きがたまらなく気持ち良かった。そしてまた強い快感が身体中を駆け巡り、またも白濁が勢い良く迸った。僕は射精しながらもう一度絶頂させられたのだ。

「フェリクス様ぁ……すごぉい……♥」

 トウィーデは気持ち良さそうな笑顔のまま、泣き出してしまった。僕も同じだ。感極まっての、嬉し涙。
 翼手についた鉤爪と手を繋いで、互いに見つめ合う。前髪の隙間から覗く目からは涙がこぼれ落ち、顔は快楽に塗れている。

 もう、恐怖はなくなっていた。今この瞬間こそが、救いの時だと気づいたのだ。




 やがて絶頂が収まり、真っ白になった頭に色が戻ったとき。
 トウィーデは僕の隣に寝て、僕はいつしか彼女の胸を揉んでいた。ぷにぷにとした感触を掌で味わい、ピンク色の乳首を指先で弄ぶ。強烈な快感を味わった彼女はそんな愛撫を穏やかな笑顔で受け入れ、僕の唇と頬にキスを繰り返す。

「んっ、ちゅっ……あっ……フェリクス、様……おっぱ、い、そんなに……♥」
「トウィーデ……柔らかい……好き……」

 まるで赤ん坊に戻ったみたいだ……自分でそう思った。でもこれは恥じゃないのだろう。少なくとも、彼女の前では。

 もう少し、何も考えずにいてもいいだろうから。














 ……魔王軍の襲撃は、僕たちが匪賊を皆殺しにしているのが原因だった。実際のところ、魔物たちはよほどの例外を除き、悪党を殺すことなく更生させる力を持っている。だから更生する見込みのある匪賊が殺されていくのを看過できなかったのだ。
 僕の分隊は魔物の捕虜となったが、本隊は逃走に成功。その後上層部の命によって、急遽別の地方へ派遣されたらしい。こうして今度は教団に代わって、魔物たちが匪賊征伐を始めた。彼女たちらしいやり方で。

 僕はトウィーデと二人で、しばらく静かに魔界に暮らしていた。ポローヴェという国だ。大抵の魔物は人間に化ける術を使えるようで、彼女は今でも弓の名手だ。たまに二人で狩猟に出かけたが、そのとき彼女は日光を苦手とすることを知った。それがワーバットの種族的特徴であることも。


「は、早く、お願いしますっ……! フェリクス様ぁ……!」

 木漏れ日の当たる森の中で、トウィーデは懇願する。地面に這いつくばり、丸出しのお尻を高く持ち上げて、涙目でこちらを顧みている。その姿は夜の彼女とはまた違った淫らさがあった。

「さっきもしたのに……もう限界なの?」
「無理ですぅ……光、怖いんです……どうか、お情けを……!」

 お尻の穴の下、女性器からは先ほど出してあげた白濁が少し垂れている。光へ極端に恐怖を抱くワーバットだが、好きな男に抱かれればそれを克服できる。だから彼女も日中に出歩くときは定期的に『補充』が必要なのだ。

 蝙蝠をいじめない。その誓い通り、僕は彼女を助けてあげる。こんな姿を見たら、僕だって平然としてはいられないから。
 怒張した男根を出して、お尻を掴んで、女性器へ一気に突き入れる。

「ふあぁぁんっ……♥ あ、あっ、ありがとう、ございます……」

 少し安心したような笑顔で、トウィーデは快楽に蕩けていく。光の中での弱気な彼女でも、暗闇での少し意地悪な彼女でも、交わりの快感は変わらない。毎回あの頭が真っ白になるほどの快感を味わう羽目になる。
 しかし魔界で暮らしているせいか、僕は何度彼女の膣内に精を吐き出しても、疲れることがなくなった。それどころか最近では、射精した後力が漲っているような気分にさえなる。だから何も気にせず、彼女と一緒にいられるのだ。

 人間、エルフ、そしてワーバット。どれでもあって、どれでもない。
 だが自分が何者かという問いに対して、彼女はただ一つ、確かな答えを見つけ出してくれた。


「私はトウィーデ……フェリクス様の、トウィーデです……!」






ーーfin
19/10/18 06:19更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ
お読みいただきありがとうございます。
ワーバットのSSが少ないと聞いたので私も加勢します。
これで作品数二桁ですな。

ところでコウモリは間違いなく哺乳類ですが、カモノハシは哺乳類・鳥類・爬虫類の遺伝子を全部持ってるんですって!

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