掌編集「処女喪失の後」
1.バフォメット
「……むふふ」
笑みを浮かべながら、バフォメットは腰を上げる。幼い膣から男の証がヌルリと引き抜かれ、淫液がねっとりと糸を引いた。肉棒に処女膜を突き破られたときの感覚を思い出しながら、僅かに垂れた白濁を指で拭いた。
毛皮で鉤爪までついた魔獣の手に対し、股間にあるのは幼い女の子の割れ目そのものだ。ぴったりと閉じたその恥丘が、男の剛直を根元まで咥えこみ、激しく精を搾り取ったのである。
股がられていた若き勇者は、幸せと敗北感の入り混じった目で彼女を見つめていた。月明かりに照らされ、バフォメットのあどけない顔が倒錯した美しさを放つ。
「本当に初めてだったんだな……」
彼の呟きを聞き、バフォメットはくすりと笑った。教団の勇者は大抵、魔物が乙女心など持つはずがないと思っている。誰彼構わず交わるに違いないと信じている。
「魔物にも様々じゃ。性交した上で己に相応しい相手かを決める者もおるが、ワシは恋をしてから処女を捧げたかったでのう」
「こ、恋って！ 俺は陛下の命令でお前を倒しに……！」
声を荒げながらも、恋という単語に赤面している。そんな初心な反応も、彼女の好みだ。しかしこの男は間違いなく天才的な勇者なのである。彼は魔物の中でも極めて強力なバフォメットを、魔力切れを起こすまで追い詰めたのだから。
「ま、ワシの色仕掛けには敵わなかったがの？」
背中を向け、小さなお尻を得意げに見せつけてくる魔物。若者は胸を高鳴らせ、食い入るようにそれを見つめてしまった。今まで異性から遠ざけられて訓練を受けてきたたのである。幼少期に触れ合った故郷の女の子の可愛らしさが、目の前の魔物に重なる。
「じゃが、色仕掛けはしても命乞いはせぬ。ほれ」
バフォメットが指差したのは、勇者の装備。誘惑に乗って脱ぎ捨ててしまった鎧と、光り輝く長剣が地面に転がっている。
手の届くところに。
「ワシの首を取りたいのなら、まだ間に合うぞ。何せもう魔力が残っておらぬでな？」
精を吸って魔力は回復しているが、敢えて嘘をつく。
大悪魔バフォメットの首を掲げて凱旋すれば、間違いなく教団の英雄だ。報酬も名誉も思うがままだろう。
しかし彼はもう、そんな物に価値を見出せなかった。バフォメットの名器の味、そして背徳と無邪気が同居する、甘い交わりを知ってしまったのだから。
勇者の名を投げ出し、青年は彼女を抱きしめた。当然、バフォメットもそれを受け入れた。
「どうやら、ワシの処女に勝る報酬はなかったようじゃな」
楽しげに笑う、偉大な幼き悪魔。そのふとももの柔らかさに触れ、青年の肉棒は次第に硬くなる。
バフォメットは彼に更なる報酬を与えるべく、それを脚の間に挟み込んだ……
2.エキドナ
眠りこけた相方をそっと抱きしめ、青い肌で優しく包み込む。大蛇の下半身をゆっくりと巻きつけていき、きつくならないよう気をつけながら、しっかりと抱擁した。
蛇身と女体の境にある女性器は、激しい性交の後でじっとり濡れている。そして子宮は子供を作る魔法の液体で、たっぷりと満たされていた。愛しい相手の顔に頬を寄せ、若き蛇妖は嘆息する。初めて子宮に男根を受けれた感覚と、放たれた精の熱さ。あれが子作りの儀式であり、両親も同じようにして自分を産んでくれたのだ。多種多様な妹たちも、そうして生まれた。
同じことを今度は、自分が行う。今初めてを捧げた彼と、何度も何度も繰り返すことになる。そんな生活への期待に胸を膨らませながらも、若きエキドナは別の感情も抱いていた。今胸に抱く、愛しい人への感謝だ。
「ありがとう、私を許してくれて……」
眠る彼の耳元に、そっと囁く。その筋肉質な体を抱きしめていると、鍛錬の成果が出ていることを実感する。
エキドナの胎からはあらゆる魔物が生まれる。そこに優れた子種を得るために、彼女たちは『英傑たる素質を持つ男』を本能で察知できる。だから彼女は、教団が落ちこぼれとして見放した元勇者候補生に、その素質を見出せた。途方に暮れる彼に人間の姿で近づき、良き理解者として振る舞い、旅へ誘った。
時には師匠となり、手取り足取り、武芸と魔術の指導をした。また時には同い年の少女として、話し相手となった。絆を育み、先々で大小様々な人助けを行なった。
自ら英傑を育てる……エキドナとしては珍しい行為ではないし、間違ったことでもない。だが彼から感謝の念と好意を向けるようになり、次第に罪悪感が大きくなってきた。正体を偽り続けていることに。
「……怒るかと思ったのに」
魔物の姿を見せたときの彼の反応が、脳裏に焼き付いている。
少し驚き、そして笑って、彼はこう言った。
ーー薄々気づいていたよ。本当のことを話してくれてありがとう。その姿も綺麗だよーー
「度量の大きさはもう、英雄並みだったのね」
クスッと笑い、ベッドの上で体の力を抜く。交わりの後の満足感、愛しい人と抱き合う安心感が合わさり、まどろみを誘う。
反魔物領の宿屋だが、部屋に結界を張っておいた。この姿のまま寝ても大丈夫だろう。
明日には彼に、結界無しで眠れる土地へ……魔界へ行くことを提案してみよう。素晴らしい場所であることを、きっと信じてくれるだろう。そして式を挙げるのだ。両親や妹たちに祝福されながら。
その後再び旅を続けるにせよ、処女を捧げる前と同じではない。毎晩、あの熱い快楽を欲して求め合うことになる。やがて、自分も母になるだろう。
「おやすみ、旦那様……」
若きエキドナの、満足げな寝顔。暖かな希望が、二人を包み込んでいた……
3.ワイバーン
初体験を終えた少年と少女は、同じベッドで寝息を立てていた。流した汗や、互いの体に付着したいやらしい汁もそのままに。少女は緑の鱗に覆われた翼手で、少年の肩をしっかりと抱きしめていた。少年の手も、相方の発展途上の胸に添えられたままである。そして二人とも夢の中でも交わり続けているかのように、艶かしい寝言を漏らした。または二人で空を飛ぶ夢でも見ているのだろうか。
「……済んだのね」
部屋を覗き見て、母親が呟く。豊満な乳房、鍛え抜かれたしなやかな肢体を持つ、成熟したワイバーンだ。
我が子たちを起こさぬよう、そっと部屋に入る。そして持参した布巾で子供達の体を軽く拭い、上から毛布をかけてやった。性の味を知った、幸せそうな二人の顔を見て、自分も顔を綻ばせる。
自分が夫に処女を捧げたのも、確か同じくらいの年頃だったと思い出す。村単位で傭兵稼業を営むドラゴンライダーたちは、人間の男子とワイバーンを共に育てることが多い。ワイバーンはライダーと騎竜の間に生まれるが、男子の方は様々な手段で『入手』する。親魔物領の孤児院から正式な手続きを経てもらい受けることもあれば、反魔物領の浮浪児を連れ去って育てることもある。
彼女の『息子』は後者に近いが、そのときまだ赤子で、路傍に捨てられていた。それを実の娘共々、自分の乳で育てたのである。もはやその絆は実の親子と変わらない。
幼きドラゴンライダーにとって、騎竜との交尾は通過儀礼だ。初の交わりを終えれば、その後は日常的な行為となる。互いの体を貪り合うことで絆は深まり、単なる『空飛ぶ騎兵』以上の力を戦場で発揮するのだ。故に、力づくで竜を支配していた旧時代より、今のドラゴンライダーの方が強い。
今日は我が子たちがその大事な初体験を終えた、祝福すべき日。しかし母竜の心には、また別の感情が過っていた。
ベッドの傍に座り、翼手を胸の前で組む。眠る我が子たちへ向け、静かに歌い出した。
ーー小さな双翼、今はお眠りなさいーー
ーー偉大な竜騎士の父が貴方に朝を告げるまでーー
ーーその騎竜たる母が見守っていますーー
ーー私たちの愛の証が汚されることのないようにーー
ーー誰にも傷つけられることのないようにーー
ドラゴニア古語の子守唄。遥か昔から歌詞を変えながら、この村で歌い継がれてきた。竜が奴隷として使役されてきた暗黒の時代にも、心正しき人間と手を取り合い反旗を翻した革命の時代にも、そして人と竜が愛し合う時代にも。
おそらく、自分が二人に歌うのは最後になるだろう。我が子たちはもう、空の戦士なのだ。
ーー小さな双翼、貴方たちは戦士の子ーー
ーーいずれ弱きものを守るため翼を広げーー
ーー強き者の暴虐を破るため武器を取るでしょうーー
ーー勇敢な父親がそうであるようにーー
ーー偉大なるデルロウがそうであったようにーー
ーー小さき双翼、巣立ちの日を待ちなさいーー
ーー風の精シルフより翼に大いなる力を受けーー
ーー土の精ノームからは腕に強さを得るでしょうーー
ーー私たちがそうして戦場へ赴いたようにーー
ーー多くの竜騎士が今ままでそうしてきたようにーー
ーー小さき双翼、今はお眠りなさいーー
ーー例え母の翼がどこかの戦場で破れてもーー
ーー父がその背で永遠の眠りについたとしてもーー
ーー貴方たちはどこまでも高く飛びなさいーー
ーー父も母も、大勢の祖霊と共に見守っていますーー
ーー今はお眠りなさいーー
我が子たちは一人前のドラゴンライダーへと、大きな一歩を踏み出した。それは即ち、戦場へ赴く日が近いということ。
母竜は自問する。自分が夫に処女を捧げた夜も、我が母はこんな気持ちで歌ったのだろうか、と。
そのとき、微かな音を立てて部屋の戸が開いた。子守唄を聞いてか、愛しい夫がそこまで来ていたのだ。
「おいで」
声をかけられ、母竜はその胸に飛び込んだ。母親から『女』に戻り、甘えるように。そんな妻を優しく抱きかかえ、父親は部屋を出た。子供達に祈りの言葉を残して。
「始まりの竜騎士・デルロウの加護があらんことを」
4.ゴーレム
「全員、製薬機の前へ並べ。採取した精液を提出せよ」
管理ゴーレムの指示で、十体のゴーレムが整列した。精液採取用の魔導人形である彼女たちは、今しがた任務を終えたところだ。つまりその体内には、搾り取ってきた精液が蓄えられている。
それらの用途は様々だが、多くは未婚の魔物向けの、精補給剤の原料となる。目の前にある巨大なフラスコへ、集められた精液を注ぎ、エネルギーを抽出するのだ。
「用意」
管理ゴーレムの声と共に、フラスコに張り付いたスライム状の生体部品が反応した。表面がうねうねと蠢き、多数の触手を伸ばし始めたのだ。ゴーレムたちはそれを一本ずつ掴み、自分の股間……女性器を模した器官へ充てがう。
十分な潤滑液を割れ目から分泌し、彼女たちは触手をそこへ搾精器官受け入れた。ずぶり、ずぶりと卑猥な水音が薄暗い部屋に響く。しかし性感を意図的に遮断ているため、ゴーレムたちは股間に異物を納めても声一つ上げなかった。
しかし十体のうち、三体だけは他の個体と違った。手に触手を握ったまま、しばらく動かなかった。赤い目でそれを見つめ、しばし躊躇うかのように動作を停止する。
「用意」
管理ゴーレムが再度命じ、その三体はおずおずと触手を股へ挿入した。様子をしばし観察する。
「開始」
じゅるじゅると卑猥な音を立て、触手が吸引を始めた。胎内に蓄えられた精液が吸い出され、半透明な触手の中を通っていく。それが本体の生体部品を通じ、フラスコの中へと溜まっていった。作られた魔物とはいえ、ゴーレムも魔性の体を持っている。それによって搾取された精液はゼリーのように濃厚だった。
やがてフラスコの半分以上が白濁で満たされ、触手が胎内から引き抜かれた。ゴーレムたちは直立不動のままだが、先ほど挿入を躊躇った三体だけは違った。貯蔵タンクが空になった下腹部をしきりに撫で摩っているのだ。どこか切なそうな、潤んだ目をして。
恐らく当人たちにも、自分に何が起きているのか分かっていまい。だが左腕に装着された石版……ゴーレムの活動を司る、ルーン文字の刻まれた石版が、何が起きているのかを告げていた。多数刻まれたルーンの内、『芽吹き』を意味する文字が赤く光っていたのだ。
「A2-23、28、29のみ残れ。残りは自己メンテナンスののち、休止せよ」
命令に従い、七体のゴーレムは一斉に踵を返した。彼女たちは姉妹の内三人だけが呼び止められた理由など分からないし、興味も持たない。ただ明日の搾精任務に備えるだけだ。自分たちもいずれ、三人と同じものに目覚めることも知らずに。
残された三体を見やり、管理ゴーレムは優しく微笑んだ。この施設のゴーレムは皆、彼女をベースとした量産型。自分の娘であり、妹でもある。
「お前たちに特別任務を与える。A2-23は本日の搾精対象の元へ赴き、今後そこで対象者の生活の世話をしつつ、採取任務を続行せよ。A2-28、29は対象者をこの街へ亡命させた上で、同じように生活の世話と採取任務を行え。住む場所はこちらで手配する。支援物資が必要な場合は連絡するように」
「了解」
「了解」
「了解」
静かに返事をする彼女たちに、解散を命じる。三体は早足に退室した。一刻も早く『特別任務』に取り掛かりたいのだろう。
管理ゴーレムは今までの記録を遡り、量産型たちのデータを見返す。人工の膣内に精を注がれようと、基本的にはゴーレムが孕むことはない。だが回を重ねるごとに、彼女たちには『感情』というものが植え付けられていくのだ。自分がそうであったように、娘達もそうして自我に目覚めていく。その後は心に決めた男に妻として仕えながら、授けられた精液のいくらかを製薬用に提出しつつ、夫婦生活を送る。
しかし最近、初回の交わりで感情の萌芽を見せるゴーレムが増えている。よほど良い相手に巡り会えたのか、と思っていたが、どうやらそれだけではないらしい。
自分の石版をそっとなで、管理ゴーレムはくすりと笑う。そこに刻まれているのは愛しい夫であり、自分たちを作ってくれた父親でもある男の名だ。他の娘たちにも早く幸せになってもらいたい……そんな製作者の思いが、量産型ゴーレムたちに影響しているのではないか。
「本当に、優しいのだから……」
呟きながら、薬の生成作業に取り掛かる。早く終わらせ、自分も愛しい彼の元へ向かうべく……
5.つぼまじん
「……ごめんよ」
全身を白濁で汚された少女に、青年は詫びた。褐色の肌に白い液体がよく映え、幼い体型にも関わらず淫らな姿を形作っている。幼い恥丘からは精液と愛液の混ざり合った物が滴り、強引に押し広げられたせいで少し開いている。
壺の中の世界で、青年は彼女を犯し続けた。中に引き込まれた自分を見てもじもじと怯える彼女を、力づくで無理やりねじ伏せて、ぴたりと閉じた割れ目に男根を押し入れた。如何に道徳的な教育を受けていようと、つぼまじんの体から放たれる誘惑の魔力には敵わない。壺を覗いてしまった時点で、心正しき若者も獣に堕ちる運命なのだ。
謝罪と後悔の念は絶えない。だが出し尽くして萎えた男根には、この幼女から得た快楽の余韻が残っていた。またあれを味わいたい、という欲求も生まれつつあった。
「……いいんです」
幼女の声に、青年はハッと顔を上げた。汚し尽くされたつぼまじんが、穏やかな笑みを向けてくる。
「あたし、すごく幸せなんです。こんなに気持ちいいことがあったなんて、初めて知りました……」
目尻に浮かぶ涙を小さな手で拭い、つぼまじんは微笑む。その涙は悲しみの涙ではなかった。次いで、その手を青年の手に重ねる。
「あたしだけじゃなくて、お兄さんもいっぱい気持ちよくなってくれましたよね……だから、幸せです……」
健気な幼女の言葉に、青年のペニスがぴくりと反応する。すでに体は魔性の快楽の虜になっていた。それでも道徳心の強い彼はそんな自分に嫌悪感を抱いた。何かしら償いの手段は、彼女に詫びる手段はないか必死に考える。
そのとき、つぼまじんは身を起こした。そして半分勃起した肉棒に顔を寄せ、青年を見上げる。股間に吐息が当たり、青年の胸が高鳴る。あどけない顔立ちとつぶらな瞳がそれを加速させる。
つぼまじんは男を欲しつつも怖がる魔物だが、激しい初体験を終えた後なら、愛しい相手に恐怖を感じることはない。壺の中に作られた魔法の空間で、いつまでも相手と繋がることを欲するのだ。
「こ、これからいつまでも壺の中で、あたしといっしょに……し、幸せになってくれますか？」
頬を赤らめ、どきどきしながら告白する。そんな彼女の唇に、青年は再び理性を捨て、ペニスを押し込んだ。
「んっ」
くぐもった声を出しながら、幼い口腔に男根を頬張るつぼまじん。ハッと我に返った青年を安心させるためか、小さな手で可愛らしくピースサインをしてみせる。上目遣いの視線で見つめられ、彼は安堵する。欲望を満たす道と、贖罪の道が同じだと気づいたのだ……
「……むふふ」
笑みを浮かべながら、バフォメットは腰を上げる。幼い膣から男の証がヌルリと引き抜かれ、淫液がねっとりと糸を引いた。肉棒に処女膜を突き破られたときの感覚を思い出しながら、僅かに垂れた白濁を指で拭いた。
毛皮で鉤爪までついた魔獣の手に対し、股間にあるのは幼い女の子の割れ目そのものだ。ぴったりと閉じたその恥丘が、男の剛直を根元まで咥えこみ、激しく精を搾り取ったのである。
股がられていた若き勇者は、幸せと敗北感の入り混じった目で彼女を見つめていた。月明かりに照らされ、バフォメットのあどけない顔が倒錯した美しさを放つ。
「本当に初めてだったんだな……」
彼の呟きを聞き、バフォメットはくすりと笑った。教団の勇者は大抵、魔物が乙女心など持つはずがないと思っている。誰彼構わず交わるに違いないと信じている。
「魔物にも様々じゃ。性交した上で己に相応しい相手かを決める者もおるが、ワシは恋をしてから処女を捧げたかったでのう」
「こ、恋って！ 俺は陛下の命令でお前を倒しに……！」
声を荒げながらも、恋という単語に赤面している。そんな初心な反応も、彼女の好みだ。しかしこの男は間違いなく天才的な勇者なのである。彼は魔物の中でも極めて強力なバフォメットを、魔力切れを起こすまで追い詰めたのだから。
「ま、ワシの色仕掛けには敵わなかったがの？」
背中を向け、小さなお尻を得意げに見せつけてくる魔物。若者は胸を高鳴らせ、食い入るようにそれを見つめてしまった。今まで異性から遠ざけられて訓練を受けてきたたのである。幼少期に触れ合った故郷の女の子の可愛らしさが、目の前の魔物に重なる。
「じゃが、色仕掛けはしても命乞いはせぬ。ほれ」
バフォメットが指差したのは、勇者の装備。誘惑に乗って脱ぎ捨ててしまった鎧と、光り輝く長剣が地面に転がっている。
手の届くところに。
「ワシの首を取りたいのなら、まだ間に合うぞ。何せもう魔力が残っておらぬでな？」
精を吸って魔力は回復しているが、敢えて嘘をつく。
大悪魔バフォメットの首を掲げて凱旋すれば、間違いなく教団の英雄だ。報酬も名誉も思うがままだろう。
しかし彼はもう、そんな物に価値を見出せなかった。バフォメットの名器の味、そして背徳と無邪気が同居する、甘い交わりを知ってしまったのだから。
勇者の名を投げ出し、青年は彼女を抱きしめた。当然、バフォメットもそれを受け入れた。
「どうやら、ワシの処女に勝る報酬はなかったようじゃな」
楽しげに笑う、偉大な幼き悪魔。そのふとももの柔らかさに触れ、青年の肉棒は次第に硬くなる。
バフォメットは彼に更なる報酬を与えるべく、それを脚の間に挟み込んだ……
2.エキドナ
眠りこけた相方をそっと抱きしめ、青い肌で優しく包み込む。大蛇の下半身をゆっくりと巻きつけていき、きつくならないよう気をつけながら、しっかりと抱擁した。
蛇身と女体の境にある女性器は、激しい性交の後でじっとり濡れている。そして子宮は子供を作る魔法の液体で、たっぷりと満たされていた。愛しい相手の顔に頬を寄せ、若き蛇妖は嘆息する。初めて子宮に男根を受けれた感覚と、放たれた精の熱さ。あれが子作りの儀式であり、両親も同じようにして自分を産んでくれたのだ。多種多様な妹たちも、そうして生まれた。
同じことを今度は、自分が行う。今初めてを捧げた彼と、何度も何度も繰り返すことになる。そんな生活への期待に胸を膨らませながらも、若きエキドナは別の感情も抱いていた。今胸に抱く、愛しい人への感謝だ。
「ありがとう、私を許してくれて……」
眠る彼の耳元に、そっと囁く。その筋肉質な体を抱きしめていると、鍛錬の成果が出ていることを実感する。
エキドナの胎からはあらゆる魔物が生まれる。そこに優れた子種を得るために、彼女たちは『英傑たる素質を持つ男』を本能で察知できる。だから彼女は、教団が落ちこぼれとして見放した元勇者候補生に、その素質を見出せた。途方に暮れる彼に人間の姿で近づき、良き理解者として振る舞い、旅へ誘った。
時には師匠となり、手取り足取り、武芸と魔術の指導をした。また時には同い年の少女として、話し相手となった。絆を育み、先々で大小様々な人助けを行なった。
自ら英傑を育てる……エキドナとしては珍しい行為ではないし、間違ったことでもない。だが彼から感謝の念と好意を向けるようになり、次第に罪悪感が大きくなってきた。正体を偽り続けていることに。
「……怒るかと思ったのに」
魔物の姿を見せたときの彼の反応が、脳裏に焼き付いている。
少し驚き、そして笑って、彼はこう言った。
ーー薄々気づいていたよ。本当のことを話してくれてありがとう。その姿も綺麗だよーー
「度量の大きさはもう、英雄並みだったのね」
クスッと笑い、ベッドの上で体の力を抜く。交わりの後の満足感、愛しい人と抱き合う安心感が合わさり、まどろみを誘う。
反魔物領の宿屋だが、部屋に結界を張っておいた。この姿のまま寝ても大丈夫だろう。
明日には彼に、結界無しで眠れる土地へ……魔界へ行くことを提案してみよう。素晴らしい場所であることを、きっと信じてくれるだろう。そして式を挙げるのだ。両親や妹たちに祝福されながら。
その後再び旅を続けるにせよ、処女を捧げる前と同じではない。毎晩、あの熱い快楽を欲して求め合うことになる。やがて、自分も母になるだろう。
「おやすみ、旦那様……」
若きエキドナの、満足げな寝顔。暖かな希望が、二人を包み込んでいた……
3.ワイバーン
初体験を終えた少年と少女は、同じベッドで寝息を立てていた。流した汗や、互いの体に付着したいやらしい汁もそのままに。少女は緑の鱗に覆われた翼手で、少年の肩をしっかりと抱きしめていた。少年の手も、相方の発展途上の胸に添えられたままである。そして二人とも夢の中でも交わり続けているかのように、艶かしい寝言を漏らした。または二人で空を飛ぶ夢でも見ているのだろうか。
「……済んだのね」
部屋を覗き見て、母親が呟く。豊満な乳房、鍛え抜かれたしなやかな肢体を持つ、成熟したワイバーンだ。
我が子たちを起こさぬよう、そっと部屋に入る。そして持参した布巾で子供達の体を軽く拭い、上から毛布をかけてやった。性の味を知った、幸せそうな二人の顔を見て、自分も顔を綻ばせる。
自分が夫に処女を捧げたのも、確か同じくらいの年頃だったと思い出す。村単位で傭兵稼業を営むドラゴンライダーたちは、人間の男子とワイバーンを共に育てることが多い。ワイバーンはライダーと騎竜の間に生まれるが、男子の方は様々な手段で『入手』する。親魔物領の孤児院から正式な手続きを経てもらい受けることもあれば、反魔物領の浮浪児を連れ去って育てることもある。
彼女の『息子』は後者に近いが、そのときまだ赤子で、路傍に捨てられていた。それを実の娘共々、自分の乳で育てたのである。もはやその絆は実の親子と変わらない。
幼きドラゴンライダーにとって、騎竜との交尾は通過儀礼だ。初の交わりを終えれば、その後は日常的な行為となる。互いの体を貪り合うことで絆は深まり、単なる『空飛ぶ騎兵』以上の力を戦場で発揮するのだ。故に、力づくで竜を支配していた旧時代より、今のドラゴンライダーの方が強い。
今日は我が子たちがその大事な初体験を終えた、祝福すべき日。しかし母竜の心には、また別の感情が過っていた。
ベッドの傍に座り、翼手を胸の前で組む。眠る我が子たちへ向け、静かに歌い出した。
ーー小さな双翼、今はお眠りなさいーー
ーー偉大な竜騎士の父が貴方に朝を告げるまでーー
ーーその騎竜たる母が見守っていますーー
ーー私たちの愛の証が汚されることのないようにーー
ーー誰にも傷つけられることのないようにーー
ドラゴニア古語の子守唄。遥か昔から歌詞を変えながら、この村で歌い継がれてきた。竜が奴隷として使役されてきた暗黒の時代にも、心正しき人間と手を取り合い反旗を翻した革命の時代にも、そして人と竜が愛し合う時代にも。
おそらく、自分が二人に歌うのは最後になるだろう。我が子たちはもう、空の戦士なのだ。
ーー小さな双翼、貴方たちは戦士の子ーー
ーーいずれ弱きものを守るため翼を広げーー
ーー強き者の暴虐を破るため武器を取るでしょうーー
ーー勇敢な父親がそうであるようにーー
ーー偉大なるデルロウがそうであったようにーー
ーー小さき双翼、巣立ちの日を待ちなさいーー
ーー風の精シルフより翼に大いなる力を受けーー
ーー土の精ノームからは腕に強さを得るでしょうーー
ーー私たちがそうして戦場へ赴いたようにーー
ーー多くの竜騎士が今ままでそうしてきたようにーー
ーー小さき双翼、今はお眠りなさいーー
ーー例え母の翼がどこかの戦場で破れてもーー
ーー父がその背で永遠の眠りについたとしてもーー
ーー貴方たちはどこまでも高く飛びなさいーー
ーー父も母も、大勢の祖霊と共に見守っていますーー
ーー今はお眠りなさいーー
我が子たちは一人前のドラゴンライダーへと、大きな一歩を踏み出した。それは即ち、戦場へ赴く日が近いということ。
母竜は自問する。自分が夫に処女を捧げた夜も、我が母はこんな気持ちで歌ったのだろうか、と。
そのとき、微かな音を立てて部屋の戸が開いた。子守唄を聞いてか、愛しい夫がそこまで来ていたのだ。
「おいで」
声をかけられ、母竜はその胸に飛び込んだ。母親から『女』に戻り、甘えるように。そんな妻を優しく抱きかかえ、父親は部屋を出た。子供達に祈りの言葉を残して。
「始まりの竜騎士・デルロウの加護があらんことを」
4.ゴーレム
「全員、製薬機の前へ並べ。採取した精液を提出せよ」
管理ゴーレムの指示で、十体のゴーレムが整列した。精液採取用の魔導人形である彼女たちは、今しがた任務を終えたところだ。つまりその体内には、搾り取ってきた精液が蓄えられている。
それらの用途は様々だが、多くは未婚の魔物向けの、精補給剤の原料となる。目の前にある巨大なフラスコへ、集められた精液を注ぎ、エネルギーを抽出するのだ。
「用意」
管理ゴーレムの声と共に、フラスコに張り付いたスライム状の生体部品が反応した。表面がうねうねと蠢き、多数の触手を伸ばし始めたのだ。ゴーレムたちはそれを一本ずつ掴み、自分の股間……女性器を模した器官へ充てがう。
十分な潤滑液を割れ目から分泌し、彼女たちは触手をそこへ搾精器官受け入れた。ずぶり、ずぶりと卑猥な水音が薄暗い部屋に響く。しかし性感を意図的に遮断ているため、ゴーレムたちは股間に異物を納めても声一つ上げなかった。
しかし十体のうち、三体だけは他の個体と違った。手に触手を握ったまま、しばらく動かなかった。赤い目でそれを見つめ、しばし躊躇うかのように動作を停止する。
「用意」
管理ゴーレムが再度命じ、その三体はおずおずと触手を股へ挿入した。様子をしばし観察する。
「開始」
じゅるじゅると卑猥な音を立て、触手が吸引を始めた。胎内に蓄えられた精液が吸い出され、半透明な触手の中を通っていく。それが本体の生体部品を通じ、フラスコの中へと溜まっていった。作られた魔物とはいえ、ゴーレムも魔性の体を持っている。それによって搾取された精液はゼリーのように濃厚だった。
やがてフラスコの半分以上が白濁で満たされ、触手が胎内から引き抜かれた。ゴーレムたちは直立不動のままだが、先ほど挿入を躊躇った三体だけは違った。貯蔵タンクが空になった下腹部をしきりに撫で摩っているのだ。どこか切なそうな、潤んだ目をして。
恐らく当人たちにも、自分に何が起きているのか分かっていまい。だが左腕に装着された石版……ゴーレムの活動を司る、ルーン文字の刻まれた石版が、何が起きているのかを告げていた。多数刻まれたルーンの内、『芽吹き』を意味する文字が赤く光っていたのだ。
「A2-23、28、29のみ残れ。残りは自己メンテナンスののち、休止せよ」
命令に従い、七体のゴーレムは一斉に踵を返した。彼女たちは姉妹の内三人だけが呼び止められた理由など分からないし、興味も持たない。ただ明日の搾精任務に備えるだけだ。自分たちもいずれ、三人と同じものに目覚めることも知らずに。
残された三体を見やり、管理ゴーレムは優しく微笑んだ。この施設のゴーレムは皆、彼女をベースとした量産型。自分の娘であり、妹でもある。
「お前たちに特別任務を与える。A2-23は本日の搾精対象の元へ赴き、今後そこで対象者の生活の世話をしつつ、採取任務を続行せよ。A2-28、29は対象者をこの街へ亡命させた上で、同じように生活の世話と採取任務を行え。住む場所はこちらで手配する。支援物資が必要な場合は連絡するように」
「了解」
「了解」
「了解」
静かに返事をする彼女たちに、解散を命じる。三体は早足に退室した。一刻も早く『特別任務』に取り掛かりたいのだろう。
管理ゴーレムは今までの記録を遡り、量産型たちのデータを見返す。人工の膣内に精を注がれようと、基本的にはゴーレムが孕むことはない。だが回を重ねるごとに、彼女たちには『感情』というものが植え付けられていくのだ。自分がそうであったように、娘達もそうして自我に目覚めていく。その後は心に決めた男に妻として仕えながら、授けられた精液のいくらかを製薬用に提出しつつ、夫婦生活を送る。
しかし最近、初回の交わりで感情の萌芽を見せるゴーレムが増えている。よほど良い相手に巡り会えたのか、と思っていたが、どうやらそれだけではないらしい。
自分の石版をそっとなで、管理ゴーレムはくすりと笑う。そこに刻まれているのは愛しい夫であり、自分たちを作ってくれた父親でもある男の名だ。他の娘たちにも早く幸せになってもらいたい……そんな製作者の思いが、量産型ゴーレムたちに影響しているのではないか。
「本当に、優しいのだから……」
呟きながら、薬の生成作業に取り掛かる。早く終わらせ、自分も愛しい彼の元へ向かうべく……
5.つぼまじん
「……ごめんよ」
全身を白濁で汚された少女に、青年は詫びた。褐色の肌に白い液体がよく映え、幼い体型にも関わらず淫らな姿を形作っている。幼い恥丘からは精液と愛液の混ざり合った物が滴り、強引に押し広げられたせいで少し開いている。
壺の中の世界で、青年は彼女を犯し続けた。中に引き込まれた自分を見てもじもじと怯える彼女を、力づくで無理やりねじ伏せて、ぴたりと閉じた割れ目に男根を押し入れた。如何に道徳的な教育を受けていようと、つぼまじんの体から放たれる誘惑の魔力には敵わない。壺を覗いてしまった時点で、心正しき若者も獣に堕ちる運命なのだ。
謝罪と後悔の念は絶えない。だが出し尽くして萎えた男根には、この幼女から得た快楽の余韻が残っていた。またあれを味わいたい、という欲求も生まれつつあった。
「……いいんです」
幼女の声に、青年はハッと顔を上げた。汚し尽くされたつぼまじんが、穏やかな笑みを向けてくる。
「あたし、すごく幸せなんです。こんなに気持ちいいことがあったなんて、初めて知りました……」
目尻に浮かぶ涙を小さな手で拭い、つぼまじんは微笑む。その涙は悲しみの涙ではなかった。次いで、その手を青年の手に重ねる。
「あたしだけじゃなくて、お兄さんもいっぱい気持ちよくなってくれましたよね……だから、幸せです……」
健気な幼女の言葉に、青年のペニスがぴくりと反応する。すでに体は魔性の快楽の虜になっていた。それでも道徳心の強い彼はそんな自分に嫌悪感を抱いた。何かしら償いの手段は、彼女に詫びる手段はないか必死に考える。
そのとき、つぼまじんは身を起こした。そして半分勃起した肉棒に顔を寄せ、青年を見上げる。股間に吐息が当たり、青年の胸が高鳴る。あどけない顔立ちとつぶらな瞳がそれを加速させる。
つぼまじんは男を欲しつつも怖がる魔物だが、激しい初体験を終えた後なら、愛しい相手に恐怖を感じることはない。壺の中に作られた魔法の空間で、いつまでも相手と繋がることを欲するのだ。
「こ、これからいつまでも壺の中で、あたしといっしょに……し、幸せになってくれますか？」
頬を赤らめ、どきどきしながら告白する。そんな彼女の唇に、青年は再び理性を捨て、ペニスを押し込んだ。
「んっ」
くぐもった声を出しながら、幼い口腔に男根を頬張るつぼまじん。ハッと我に返った青年を安心させるためか、小さな手で可愛らしくピースサインをしてみせる。上目遣いの視線で見つめられ、彼は安堵する。欲望を満たす道と、贖罪の道が同じだと気づいたのだ……
17/10/22 10:06更新 / 空き缶号