氷のダンジョン!
※13000字超えてます。お忙しい方はご注意ください。
三軒目 冷やしラーメン専門店『エウロパ』
山形・福島発祥の夏メニュー、冷やしラーメン。ゲテモノと思うなかれ、夏場にあっさりと食べられるラーメンとして人気の一品だ。
そのスープには二種類あり、まず普通のラーメンのスープを冷やしたタイプ。これは脂が白く固形化して浮いてしまうため、それを丁寧に除去する必要がある。もう一つは植物性脂肪を使うタイプ。こちらは冷やしても脂が固まることはないが、その調理には少々手間がかかる。どちらにせよ手がかかるメニューなので、店にとっては夏限定だからこそできるのだ。
しかしここはダンジョン。ラーメンの魔境。この中には真冬にも冷やしラーメンを出す、というかそれ以外出さない店が存在するのだ。
それが、『エウロパ』。木星の軌道上を周る、氷の月にちなんで付けられた店名だ。この真冬にも関わらず、この店に冷やしラーメンを食べに来る客がいる。大半は雪女など寒冷地の魔物で、たまに熱暴走気味のゴーレム属が強制冷却に訪れたりもする。夏に比べれば少ないまでも、需要はあるのだ。
店長はグラキエス、その他に店員三名で切り盛りする。内二人は人間男性とイエティの夫婦で、仕事の後は帰宅して暖かい夜を楽しんでいるようだ。
そして、もう一人の店員は……
「店長。俺、もう我慢の限界です」
今夜、勇気を出して店長を押し倒したところだった。
「……何か私に悪いところがあったなら、言ってほしい。可能な限り改める」
ベッドに組み敷かれたグラキエスは自体を把握できていない。感情まで凍結した氷の精霊だけに、その表情もまた凍りついている。だが目が微かに見開かれているあたり、驚いてはいるようだ。
そんな彼女の態度は、若き店員・大嶋一信を苛立たせるだけだった。
「店長。俺は毎日あんたに精気を吸われてます。それは別にいいんです」
グラキエスの吸精は普通の魔物とは違い、触れるだけで強制的に力を吸い取る。それはワイトのように快楽を与えるものではなく、吸われた男性は強い寒気と孤独感を覚えるのだ。ただし一信の場合、合意の上で彼女に精気を捧げていた。それに今更不満を覚えたわけではない。
「吸われた後、無性に人肌が恋しくなるんです。そこへきて、何であんたはいつも裸なんですか!」
それこそが、彼のフラストレーションの理由だった。
店長・みぞれは実に模範的なグラキエスだった。この世界に進出した魔物娘の多くは地球の文化に溶け込み、この世界の衣類を身につけている。しかしみぞれは伝統的なグラキエスの格好、つまり魔物学の図鑑に載っているような、『全裸で胸部分のみを氷でコーティングした姿』で通しているのだ。しかも胸の氷も乳首より上を隠すのみで、いわゆる『下乳』は露出している。氷のような、しかし柔らかな肌は恥ずかしげもなく晒されていた。
当然、女の子の大事なところは全く隠していない。スレンダーだが胸やお尻がしっかりと膨らんだその女体は、素晴らしく芸術的な存在だった。オーロラのように輝く髪が、それに拍車をかける。
「私は精霊だから衣類がなくても風邪はひかないし、寒さも感じない。加えて精霊の排泄は余剰エレメントを放出するだけだから、私の尿道口と肛門は常に清潔であり、衛生的な問題もない」
淡々と、そして馬鹿正直に理由を語るみぞれ。若干十八歳(魔物にとって学歴はあまり重要ではない。ついでに言うと、精霊に年齢はあまり関係ない)でこの『ダンジョン』に店を構えるその手腕は、誰もが認めている。氷の領域の魔物が快適に過ごせるようにと、女王の命令で冷やしラーメンの専門店を出したのだ。そのためにどんな修行を積んだのかは定かではないが、少なくとも衣類の必要性については学ばなかったようだ。
中卒労働者である一信は至って健康な男子であり、彼女の姿は目に毒だった。
「店長の裸毎日見せられて、しかも先輩たちが惚気てる所も見せつけられて! ムラムラしてしょうがないんです!」
「ムラムラ、という表現はよく分からないが……」
みぞれの視線が下へ落ちる。もっこりと膨らんだ、一信のズボンが目に入った。
「君の男性器が勃起状態にあることから推察して、私との性交が望みなのか?」
「早い話がそうですッ!」
システマチックなみぞれに苛立ち、一信は怒鳴ってしまう。今日も丁度吸精された後で、極限まで人肌が恋しい状態だ。そこで極上の肢体を目の前にして堪えているのだから、彼の忍耐強さは賞賛されるべきだろう。
みぞれは少しの間何かを考えていたようだが、やがて行動に移った。脚を広げたのだ。
一信の目が極限まで見開かれる。彼女の最も大事な所を、その割れ目を、あからさまに見せつけられたのだ。ふとももに引っ張られて僅かに開かれ、薄い紫色の内部とクリトリスが見える。
「君は日頃から真面目に仕事をこなしている。また、苦痛を伴う吸精に応じてくれることにも感謝している」
ひたすら淡々と、自分の考えを説明する。
「だから君の男性器なら、膣内へ受け入れることに不快感はない。それで君の気が済むのなら、挿入してくれて構わない」
「……いいんスか?」
生唾を飲み込んで尋ねる一信。まだ少年と青年の境だが、全くもって忍耐強く、理性的な若者だ。
だが、続いてのみぞれの言葉が、彼の逆鱗に触れた。
「ああ。君が仕事への集中力を欠くと、店への不利益になる。ここで処理してほしい」
ただただ事務的な態度が、青い恋心を傷つけた。
ベルトを外し、チャックを下ろし、ズボンとパンツを脱ぎ捨てる。怒張したペニスが勢いよく反り返った。それを見ても、グラキエスの凍り付いた表情に変化はない。
だが一信は構わず、その先端を彼女の入り口に押し当てる。ひんやりと冷たい膣口が柔らかく広がり、亀頭へ吸い付くようにフィットした。
ぴくり、とみぞれの眉が動く。そのペニスは思った以上の熱気を帯びていたのだ。すでに先走りの汁が漏れ、種付の準備は整っている。対する女性器の方はまだ潤滑度が低く、本来なら前戯をすべきところだ。
しかしみぞれが僅かに不安を感じたとき、一信は強引に腰を進めていた。
「んぎっ……!?」
彼女らしからぬ悲鳴をあげ、目を見開くみぞれ。濡れていないところへ無理矢理ペニスを挿入されたのだ。根元まで一気に。
痛みは感じたわけではない。彼女の驚きは別のことにあった。
「熱っ……熱い! 抜いてくれ!」
凍った顔を歪め、必死で訴える。膣内に収まったペニスは焼け付くような感触だった。今まで精と共に少しずつ吸い取っていた彼の根付が、この肉棒に集中しているかのようだ。それでも人間の体温としては異常ではない。氷の精霊たる彼女の冷え切った膣だからこそ、その熱は強烈な刺激となったのだ。
「抜いて! 熱い! お、おかしくなるっ……!」
目尻に涙まで浮かべ、みぞれは懸命に懇願した。ただ、その熱さは決して不快ではない。氷が溶けて水になるように、その熱が自分を変質させてしまうものであると、直感的に分かったのだ。自分が変えられるのは恐怖なのである。
しかしみぞれの言葉は一信に届かない。むしろ逆効果だった。普段鉄面皮の彼女が慌てふためく姿は何とも可愛らしく、強い征服感を感じたのだ。
そしてペニスを包み込む、みぞれの女性器の感触。
「は、は……入ってる……! みぞれさんの、おマンコ……!」
ペニスをぴったりと締め付ける、冷たい花園。独特の感触で性感帯を刺激され、一信は思わず腰を揺り動かす。
その途端、ペニスが雪解け水に包まれた。急激に溢れた愛液が膣内を潤し、摩擦を減らす。途端に乾いた肉壷が蜜壺へと変わった。
「こ……こんなに、熱いなんて、聞いてな、い……! と、け、る……」
小刻みに痙攣するみぞれだが、膣内の雪解けは進行していた。柔らかな肉ヒダが冷えた愛液を絡ませ、ペニスを愛撫する。脳からの命令とは関係なく、女性器が男性器を歓迎する。きゅぅっと強く締め付けては、水音を立てて咀嚼し、蠢いて射精を促す。
「ああ……気持ちいい。みぞれさん……!」
一信は快楽に身を委ね、腰を引いては打ち付ける動作を繰り返した。その度にペニスがくすぐられ、快感が増していく。ひんやりとした膣は彼の心を熱くするばかりだっった。
「あっ!? だ、ダメだ……抜いて、お願いッ。溶けるぅ……♥」
情けなく哀願しながらも、彼女は一信にしっかりとしがみついていた。無意識に。秘めたる魔物の魔力が融解し、性欲が彼女の心へ氾濫していく。じゅぷっ、じゅぷっと卑猥な音を立て、肉棒が膣内をこすり続ける。
バストをコーティングしていた氷もいつの間にか解け落ち、柔らかな乳房が完全に露出していた。腰を打ち付ける動きに合わせ、元気よく上下に揺れる。
それに気づいた一信は迷わず鷲掴みにする。ぷにゅん、と柔らかな膨らみが掌中で踊る。よく冷えたわらび餅のような、いくら揉んでも飽きない感触だった。
美味しそうだ、と思った瞬間、片方の乳首に吸い付いた。
「んひゃっ!? こ、こら、君はもう大人っ……はうっ♥」
味わったことのない刺激に震えるグラキエス。だがその頬はすでに緩み、両足は彼の腰にしっかりと絡みついていた。胸に甘えてくる若者の頭を思わず抱き締める。一信の顔が谷間に埋まった。血が上ってほてった顔に、その氷の峡谷は心地よかった。
みぞれの方も何かが満たされていくように感じた。それは恋心と性欲、そして母性だ。
「みぞれ、さん……」
谷間に吐き出される熱い息が、胸の芯まで染み込んでくるかのようだ。思わず膣をきゅっと締め付けたとき、中で肉棒がぴくんと震えた。
「お、おれ、もう……!」
「あんっ、んぅ♥ も、もう好きに、していいか、らぁ……♥」
冷たい吐息に少しずつ熱が混じる。今まで一信から精を分けてもらう度、人間の熱を取り込んできた。今度は今まで以上に強い熱を受け入れることになるのだろう。みぞれは不安と期待の合間にはさまれながら、本能のままそれを受け入れようとしていた。
どくん。
ペニスが一際大きく脈打った。
「んっはぁぁ♥」
目をぎゅっと閉じ、嬌声を上げるみぞれ。迸った熱い液が、膣内にじゅわっと広がる。その瞬間、彼女は理性を手放した。
さらにどくどくと射精は続く。水が蒸発するような音が聞こえ、結合部からさらに大量の愛液が溢れ出す。全身で一信に抱きつきながら、子宮を焼き焦がす快感に打ち震える。
「ああんんっ! 熱ッ、んうぅぅっ♥ き、もち、ひッ……♥」
体を痙攣させながら目を開けると、一信と目が合った。こんなに乱れた姿を見られる恥ずかしさ、そして彼への愛おしさで胸が一杯になる。多幸感から頬がだらしなく緩み、でれでれと蕩けた笑みを浮かべてしまう。涎と涙を垂れ流し、股間からは雪解けの愛液を流す。
大量に射精したにも関わらず、そんなみぞれを見て、一信の情欲は収まるどころではなかった。
「みぞれさん、凄ぇ可愛いっす!」
「ふえっ!?」
再び腰を打ち付けられた。膣内に射精されたばかりなのに、熱い肉棒が柔肉を擦り上げる。
彼女の膣はもはや氷の穴ではなかった。取り込んだ精が胎内で熱を生み出し、男を労わるような温かさを産んでいた。その穴は収縮を繰り返し、ペニスから貪欲に精を搾り取ろうとする。そして、ひたすら快楽を味わおうとしていた。
「せっ、せーえき熱いぃ♥ おまんこ、きもちいぃ……♥」
普段の凛々しい佇まいも、オーロラの髪も、全て台無しにするほどに蕩けていた。そんな彼女が愛おしく、一信はキスを繰り返す。柔らかな唇が触れ、舌が絡み合い、唾液が糸を引いて離れる。
「ん、は……私、もう、君のおもちゃで、いい……♥」
服従の誓いを立てるかのように、みぞれもまた彼の唇を吸った。
気の狂うような快楽に溺れ、みぞれの雪解け水がシーツを汚し、一信の迸りが彼女の中を汚す。
そのまま、二人の夜は更けていった。
そして翌日。
一信が目を覚ましたとき、みぞれはいなかった。残っているのは、彼女の匂いと汗と愛液がふんだんに染み込んだベッド。そして卓上に置かれた、ご飯と目玉焼き、味噌汁の朝食のみ。
昨日の記憶は定かではないが、最初に射精した後ひたすら彼女を抱きまくったのは確かだ。出す度によがり、甘えるみぞれの姿がたまらなく可愛かった。
時間は朝の九時を過ぎたところ。彼女が用意してくれたらしい朝食にはメモが添えられていた。
『昨日はありがとう♥
買い物に行ってくるから朝ごはんを温めて食べるように。
留守番をお願いする』
仕込みはどうするんだ、と思ったが、カレンダーを見て今日が定休日だと思い出す。次いでメモに書かれたハートマークをまじまじと見て、これがあの店長のメモなのかとしばらく疑った。
空腹を覚えたので、心づくしの朝食をレンジで温めて食べた。特に予定もなかったので留守番は問題ないが、店を開ける必要はなく暇だ。
最初は読書をしていたが、やがて体が元気になってくると、昨日の快楽が恋しくなる。みぞれの名残の染み付いたベッドにうつぶせになり、自慰にふけってしまったのも無理からぬことだ。
みぞれが帰ってきたのは十一時を過ぎた頃だった。一信が安心したのは、さすがのみぞれも裸で街中をうろつくのは反社会的だと知っていたことだ。ホットパンツにキャミソール一枚という、まるで季節感のない格好であったが。
「ただいま」
手に買い物かごをぶら下げ、出迎えた一信に微笑みかける。どきっと胸が高鳴った。今まで仕事後に労いの言葉をかけられても、笑顔が伴うことはなかったのだ。
裏口を閉めた直後、みぞれはその場で衣類を脱ぎ捨てた。どうしても伝統を守り通したいらしい。ちなみに下着はつけていなかった。
一信は彼女から、その衣類を片付け、そして風呂に湯を沸かしておくように言いつかった。精霊とて体に汚れはつくので、日頃からシャワーくらいは浴びる。浴槽も従業員が使うことがあるため、掃除は行き届いていた。
意図を今ひとつ理解できないまま、一信は言われた通り浴槽へ湯を入れる。その間、みぞれは台所で何やら調理に取り掛かっていた。
風呂が溜まると、今度はそれに浸かっていろと言われた。昨晩入浴していないので、まずは体を洗ってからにした。
そして湯船に浸かってくつろぎ始めたとき、みぞれがにゅっと姿を現した。両手に丼を持って。
「お待ちどうさま」
片方を差し出し、優しく微笑むみぞれ。中を覗くと醤油スープの良い香りがした。湯気は立っておらず、やはり冷やしラーメンだ。しかしいつも店で出しているものとは少し違う。麺は普段から使っている縮れ麺だが、その上にトロロがかけられていた。上質な自然薯を摩り下ろしたそれは雪のように白く、彼女の名前を連想させる。
もう一つ、いつもと違うことがあった。普段ならグラキエスの力で作った氷を三つほど浮かべ、流氷のような見た目を作る。だが今回は氷は入っていない。丼を受け取ってみると、確かに冷たいが、いつものようにキンキンに冷やしていないのだ。
みぞれは自分の丼を持ったまま、浴槽へ入ってきた。グラキエスや雪女とて入浴はできるし、体に害はない。
一信はどきりとした。胸まで湯に浸かった途端、彼女のバストを覆っていた氷が溶けてなくなったのだ。浮力を得た乳房が水面で揺れる。またバスタブ自体特別大きなものではないため、肩も触れ合う。
「さあ、食べよう」
「は、はい!」
生まれて初めての混浴。しかも相手は昨夜、あれだけ激しく交わった意中の女性。興奮を抑えながらも、元は真面目で理性的な彼である。箸を受け取って麺を摘み、一口すすった。
食べてみて思ったことは『美味しい』ではなく『気持ちが良い』であった。性的な意味ではない。冷えすぎていない麺とスープは口当たりが良く、湯船で温まった体へ柔らかく染み込んでくるかのようだった。トロロを絡ませるとさらにまろやかになり、それでいてあっさりと食べられる。正月明けで疲れた胃にも良いかもしれない。
さらにトロロとは別の滑りも感じた。一センチほどに切ったキノコが入っており、ナメコのような食感である。それらの滑りが麺の歯ざわりをよくし、もちもちと弾力のある食感を生み出していた。飲み込むのが勿体ないような歯ごたえに、思わず必要以上に咀嚼してしまう。飲み下せばつるりと喉を下っていく。食欲が増す喉越しだった。
「いいですねこれ。新作ですか?」
「うん。今朝、君の寝顔を見ながら考えた」
一信はむせ込んだ。
「な、何スかそれ?」
「昨日からお腹の奥がポカポカと暖かい。とても良い気分なんだ。そんな幸せをお裾分けしたいな、って」
自分の麺をつるつると吸い込み、ニコリと笑う。
「ああ、あと。笑うのって楽しいんだな」
「……!」
笑顔に胸が高鳴る一信。股間の物は湯の中で限界まで怒張していた。しかし気をしっかりと持ち、まずはラーメンに集中する。ずるずると豪快に音を立て、麺も、スープも、具も片付けてしまう。チャーシューは良質な魔界豚だった。
彼の横顔を見て楽しみながら、みぞれも麺を啜る。作った料理で喜んでもらうのがどれだけ良いことか、彼女は今初めて知った。心を弾ませながら冷やしラーメンを啜り、スープまで飲み干してしまう。
一信の方もすぐに完食した。状況が違えばお代わりを頼んでいたことだろう。だが今は食器を浴槽の外へ置き、赤面しながらみぞれの方を見る。彼女もまた、一信の股間をじっと見つめていた。
「昨日は本当にありがとう」
綺麗な手が、湯船の中で近づいてくる。
「とても気持ち良かった。だから今日は私が……」
細い指先が、竿をくすぐる。柔らかな掌が包み込む。湯の中で温まっていたペニスに、彼女の手はひんやりと心地よい。それも氷の冷たさではなく、今のラーメンと同じマイルドな温度だ。しかも、冷たさの中に温もりがある。
「気持ちよく、してあげる」
耳元で囁く息は、じんわりと温かかった。ぴったりと身を寄せ、竿を握った手を上下に動かしてくる。一信は思わず身を震わせ、湯の水面に波紋が広がった。
ピクピクと動く肉棒を観察しながら、もう片方の手で亀頭をつついてくる。敏感な部分を指の腹で撫でさすり、くすぐるように弄ぶ。特に鈴口を何度もなぞり、精液が出てくる場所の感触を確かめていた。
「……どうかな? 私、多分下手だと思うから、君から指図して……」
ちらり、と一信の顔を見て、みぞれは言葉を切った。彼の蕩けきった表情に、胸が高鳴る。精霊も体をエレメントが循環しているので、脈はあるのだ。それは触れ合っている肩を通じ、一信へと伝わった。
みぞれが興奮している。昨日まで氷の彫刻だった彼女が、愛おしそうに自分のペニスを愛撫し、熱い吐息を漏らし、胸を高鳴らせている。
みぞれは胸を押しつけるように、一信へ抱きついた。彼の肩が谷間に挟まれる。お互いの鼓動を感じ合う。
男根への愛撫は不器用ながらも、一層情熱的になっていく。一信も彼女の股間へと手を伸ばした。
「ん……♥」
愛しい人の指が割れ目を広げ、クリトリスを優しく撫でてくる。痺れるような快感が広がり、全身から力が抜けそうになる。とろりと濃厚な愛液が彼の指に纏わりついた。湯になかなか溶けないほど粘つき、指を絡め取ろうとする。もしここにペニスを挿入すれば、昨日以上の快楽を得られるだろう。
だが二人はしばらく、互いの鼓動を聞きながら愛撫を続けた。手を動かしたまま見つめ合い、互いの視線に感じてしまう。自分の恥ずかしい姿を、全て見られているのだ。
「みぞれさん……!」
一信が唇を奪うと、彼女は抵抗せず、それどころか極めて情熱的に受け入れた。柔らかく弾力のある唇で一信に吸い付き、熱い吐息を楽しみながら、舌を絡めてくる。二人ともラーメンの醤油味がした。混ざり合った唾液が垂れ落ちる。
その間、手の動きは早まっていった。ぎこちなかったみぞれの手淫はいつのまにかこなれた手つきとなり、リズム良く肉棒をしごき立てる。単調な往復運動だけでなく、感触を確かめるかのように指先でくすぐってくる、何ともいやらしい手つきだった。女性器の粘り気と柔らかさを楽しみながら、一信は次第に彼女に身を委ねていった。
ちゅぱ、ちゅぱっと音を立てながらキスを繰り返し、みぞれは彼の玉袋へ触れた。気持ちよくするため、というより、その存在にふと興味が湧いただけだ。しかしそこを指先でくすぐられた途端、一信の体が大きく震えた。
そこが性感帯だと学習し、さらに悪戯っぽい指使いでくすぐってくる。玉袋の中身が追い出され始めた。
ちゅぽん、と唇が離れる。一信はみぞれのだらしない表情を間近で見た。緩んだ口元からは涎が垂れ、目を潤ませ、性欲と快感に蕩けきっている。そんな彼女の熱い視線が快楽をより一層深めた。
「みぞれさん、俺、もう……!」
「うん、見せて欲しい……君の素敵な精液が出るところ……♥」
じっとペニスを観察されたまま、手でしごかれ続け、若者はとうとう限界に達した。蕩けるような気持ち良さと共に、湯船に浸かった鈴口から白い液体が滲み出る。しかし、それはお湯に溶け出すことなく、鈴口と繋がったままゆっくりと吐き出された。ラーメンに入っていたネバリタケの効用だ。男性の精液、女性なら愛液の粘度を上げ、快感を増す魔界のキノコだ。
みぞれは少し指の力を強め、搾り出すように根元から先へとしごく。尿道に溜まった、粘ついたゼリーのような精液が、優しい手つきで水中へ搾られていく。一信はたまらない快感を覚えた。
「あ、こ、これ、いい!」
湯船に浸かっていることと、それ自体が非常に粘ついていることで、射精の勢いは非常のゆっくりとしたものだった。一信が快感によがるのを見つめるみぞれは、何とも言えず幸せそうな笑みを浮かべていた。
そしてようやく射精が止まった後も、みぞれはしばらく手淫を続けた。確かに全部搾り出したことを確認すると、湯の中に帯となって漂っている白濁を指で摘み、すくい上げる。湯から出しても形が崩れないほどに粘度が高い。どうやら一信はネバリタケの成分が効きやすい体質らしい。
みぞれは精液ゼリーを両手で握って、小ぶりなおにぎりくらいの塊を作る。鼻を近づけ、うっとりとした表情で匂いを嗅ぐ。そしてぱくりと口に含んだ。そのときの彼女の顔に、一信はまたドキリとした。最高のおやつにありつけた子供のような、氷の精霊らしからぬ無邪気な笑みだった。
自分の出した物をみぞれがぱくりと食べ、飲み込み、こんな花のような笑みを浮かべている。愛する人のこのような姿を見せつけられては、情欲は収まるどころではない。みぞれもまた、粘る白濁を咀嚼し、ゆっくりと飲み下し、喉に残る感触に恍惚となる。
「君の男性器を私の女性器に挿入し、今のような濃厚な精液を膣内射精されてみたい。君のおちんぽと私のおまんこで『仲良し』して、素敵なザーメンで子宮をドロドロにされてみたい……」
意味の同じ言葉を、単語の卑猥度を上げて繰り返すみぞれ。買い物に行ったとき、知り合いのサキュバスから助言を得たのだ。普段冷静な女性がふいに淫らな単語を使うと、男は興奮するのだと。少なくとも一信には効果覿面で、変わり果てたみぞれがたまらなく愛おしく、このまま一つに繋がりたいという思いを強くした。
だがみぞれは湯船から立ち上がり、洗い場へと出た。
「そろそろ出ないと、のぼせてしまう」
「……はい」
彼女にうながされ、一信もしぶしぶ浴槽から出た。しかしそれで終わりではない。
「座って」
洗い場の椅子を差し出し、ボディソープを手に取るみぞれ。泡立てた石鹸を身体中に塗りたくっていく。
一信も彼女が何をしてくれるのか察し、期待に胸と股間を膨らませたまま着席した。尻が冷たいが、気にしていられない。目の前では青白く美しい女体が、艶めかしく泡に包まれていく。つんと尖った乳首も、へそも、色っぽい鎖骨も、泡に覆われた。
自分から目を離せない一信に、みぞれは悪戯っぽく微笑んだ。
「……ぎゅっ♥」
「んぶっ!?」
ふいに顔へ抱きつかれ、一信は胸の谷間で溺れることになった。ほんのりと温かな体となった氷の精霊は、石鹸でヌルつく乳房で彼の顔をこねくり回す。天にも昇る柔らかさに、思わず乳首へ口をつけ、舐めしゃぶってしまう。ホルスタウロスのバターを原料とした石鹸なので、口に含んでも安全だ。『ソーププレイ中に授乳プレイもしたい』というホルスタウロスらしい発想で作られている。
「あんっ♥ そう、口で、おっぱいに甘えて……」
一信の後頭部へ腕を回し、母性本能を満たすみぞれ。だがそれだけでは彼が満足できないことは分かっている。
しばらく乳首をしゃぶらせた後、一旦彼から離れる。股間の割れ目を指で広げると、粘り気のついた愛液がぐちゃぐちゃと音を立てた。ぷっくりと膨らんだ陰核も、中の柔らかな青い肉も、全て一信に見せる。
「次はおちんぽで、おまんこに甘えなさい」
卑猥な言葉を口にする度、自分でも興奮する。もっと淫乱に、もっと気持ち良く。彼女は完全に、魔物の心を手にしていた。
白魚の指で肉棒を掴み、角度を調節する。彼の下半身を跨ぎ、対面座位の体勢で腰を下ろして挿入した。
ぐちょぉっ。
この上なく卑猥な音が、浴場に響いた。
「ああっ!」
一信が思わず声を上げる。氷の名器は温かみを宿し、火照った男性器を絶妙な温度で締め付けてくる。さらに粘る愛液によって、みぞれの膣はもはや凶器となっていた。半分挿入しただけで、ひだがねっとりと絡みついてきた。とりもちのように粘着し、肉棒を捉えて離さない。
みぞれが体重をかけて、根元まで全部股に咥え込む。奥の気持ち良い所を亀頭がこつんとノックし、彼女は艶かしく喘いだ。
「あはぁっ、イイ……私は今、君の熱いおちんぽを、おまんこで食べている……素敵だ♥」
「みぞれさんっ! 大好きです!」
「んっ♥ そうか、大好きとはこういう気持ちなんだな……私も君が大好きだ♥」
不器用なりに愛を語りながら、雪解けを迎えたグラキエスは腰を使い始める。愛液の粘りにより、抜き差しにも力が必要だった。しかしそれによって男根との摩擦が強まり、お互いに強い快感を受ける。
「あっ、んぅっ、ひっ、いっ♥」
熱い吐息を一信の顔へかけ、腰を振り続ける。膣内でもみくちゃにされた肉棒はピクピクと悦び、挿入からさほど経っていないのに今にも射精しそうだった。
だが先に達しつつあったのは、手で女性器を弄られていたみぞれの方だった。昨夜の交わりですっかり開発され、敏感になった膣は男根の熱さを感じ取り、粘液をとめどなく垂れ流す。彼女が『食べている』と表現した通り、もぐもぐと蠢いて男根を咀嚼していた。腰の動きもたまらなくいやらしく、一信はその細いウェストのくねりだけで悩殺されそうだ。
腰を弾ませ、打ち付ける音が木霊する。泡まみれの裸体が滑らかにこすれ合う。抱き合いながら互いを見つめ、胸部を押し付け合い、キスをし、臀部を撫でさする。石鹸でぬるついた尻はさながらプリンのようだ。夢中になった一信がその谷間に指を滑り込ませる。
「ひゃんっ!?」
お尻の穴をくすぐられ、みぞれの体がぴくんと震える。その途端に快楽が絶頂に達した。
「あっ、あっ、あああ♥」
激しく痙攣し、愛する男……むしろ『夫』にしがみつく。その震えに増して、膣内はより激しく蠢いていた。べちゃべちゃと音を立て、粘った愛液が大量に吹き出す。そればかりか、乾いた音を立てて別の物も排出された。
五ミリ程度の、雪の結晶。美しい自然の芸術品が、みぞれの股間から放出されていく。
「や、やだっ! 見るなっ!」
みぞれは慌てた。彼女が一信に語った通り、グラキエスは体内に溜まった氷の魔力の内、余剰分を体の外へ出す。それが気持ちよさのあまり、勝手に流れ出てしまったのだ。不衛生なことは全くないし、今まで恥ずかしいと思ったことはない。しかし人間で言えば放尿に当たることを愛する夫に見られ、初めて羞恥心がこみ上げてきたのだ。
こんな姿を見られて、嫌われないか……そう思うのもまた、初めての感情だった。そんな彼女がたまらなく愛おしくなり、一信は強く抱きしめる。
「お、俺も出しますよ!」
絶頂した膣で締め上げられ、彼も限界に達していた。どくり、と大きく脈打った肉棒から、またよく粘った液体が吹き出す。
「ふあああんっ♥ 熱いぃぃ♥」
嬌声が一際大きく、風呂場に響き渡った。今度は指ではなく、蠢く膣が肉棒内のミルクを搾り出す。みぞれも知らず知らずの内に、魔性の性器の使い方を覚えていたのだ。
にゅるり、にゅるり……ゆっくりと膣内へ吐き出されていく、白い液体。ネバリタケの効用で、それは一滴も外へ流れ出さなかった。
「き、気持ちいいっす、これ、すげぇ……!」
「んっ、きゃぁっ。まだ、まだ出てるぅ♥」
互いに強く抱き合ったまま、快感を味わう。みぞれが一信の顔を夢中で舐め始めた。愛おしくて、抱き合うだけでは物足りなくなったのだ。
ネバリタケの効果は強力で、精液はみぞれの膣内にべっとりと張り付き、篭った力がゆっくりと吸収されていく。その感触は腹部に長く残るだろう。
射精が収まってくると、みぞれは下腹部に力を込め、膣をきゅっと締め付けた。尿道に残った精液が搾り出され、その刺激に一信の体が震える。
「ああ……!」
そしてその直後には、またどくどくと精液が溢れた。立て続けに射精してしまったのだ。
「あっ、またイってくれた……♥」
嬉しそうに頬を緩ませ、一信の顔にキスの雨を降らせる。さすがに今度の射精は少量だった。
全て搾りとった後、彼に全体重を預け脱力するみぞれ。そのオーロラのような髪を撫で、一信も呼吸を整える。
しばらく多幸感に包まれ、余韻に浸る二人。深呼吸の音だけが聞こえる。
みぞれがこの店を開いたのは、ただ氷の女王に命じられたからだ。凍土の魔物たちが『こちらの世界』で過ごしやすいように、と。女王がそのアイディアを思いついたのは、夫との交わりの後だった。
今なら、女王の気持ちが分かる。そしてこれからは義務感だけでなく、彼への愛情を持って冷やしラーメンを作り続けることになるだろう。作ったものを食べて「美味しい」と言ってもらえる喜びもまた、先ほど彼から教わったのだ。愛欲だけでなく、ラーメンへの情熱という熱も湧いてきた。
だが、今は。
みぞれがゆっくりと腰を上げると、白濁と愛液の混ざった物がいやらしく糸を引いた。
「……堕落の果実とか、アルラウネの蜜も買ってきた」
淫らな股間を凝視する一信に、楽しげに語りかける。
「今日は家に帰らせない。今日は君と私が、ずっと『仲良し』になる日にしよう」
そう告げたみぞれの笑顔は、とても華やかで、穏やかで。
冬の太陽のようだった。
……それから、一週間。
まだ冬は去らぬのに、冷やしラーメン専門店『エウロパ』は盛況だった。
「あのドロイド、本当にイケメンだったよねー」
「うん。悲しかったけど、ストーリーしっかり繋がったわね」
「兵士が設計図を必死で守って、お姫様に届けようとする所も壮絶だったわ。仲間が命懸けで手に入れた希望を繋いだのよね」
「あたし、ああいうシーン泣けてしょうがないんだよー。前に観たやつだとホラ、KV-2が盾になってパーシングに立ち向かうのとか、初恋の女の子に『俺を見ろ』って言い残して車を横転させるやつとか……」
店内のこたつを囲み、映画ファンらしいサキュバスたちが雑談する。その目の前には、新作「雪解け冷やし麺」があった。トロロの絡んだコシの強い麺をすすり、ほどよい冷たさのスープで火照った体を冷ます。デザートメニューのアイスも含め、温かなこたつの中で楽しむことができる。
店の中には穏やかな笑顔が溢れ、働く者達もまた笑顔だった。
「みぞれさん、雪解け三人前追加ー!」
「了解だ」
厨房の窓から笑顔で応えるみぞれ。すでに一信とは同居し、遠からず挙式しようと考えている。従業員のイエティ夫妻も二人を祝福していた。
やがて、寒い冬を乗り切るために、多くの客が『エウロパ』の暖簾をくぐるようになった。春を迎えた氷の精は愛する夫と共に、彼らを心から歓迎する。
多くの強者が集うこの『ダンジョン』に、新たな歴史が紡がれたのだ。
ーーfin
三軒目 冷やしラーメン専門店『エウロパ』
山形・福島発祥の夏メニュー、冷やしラーメン。ゲテモノと思うなかれ、夏場にあっさりと食べられるラーメンとして人気の一品だ。
そのスープには二種類あり、まず普通のラーメンのスープを冷やしたタイプ。これは脂が白く固形化して浮いてしまうため、それを丁寧に除去する必要がある。もう一つは植物性脂肪を使うタイプ。こちらは冷やしても脂が固まることはないが、その調理には少々手間がかかる。どちらにせよ手がかかるメニューなので、店にとっては夏限定だからこそできるのだ。
しかしここはダンジョン。ラーメンの魔境。この中には真冬にも冷やしラーメンを出す、というかそれ以外出さない店が存在するのだ。
それが、『エウロパ』。木星の軌道上を周る、氷の月にちなんで付けられた店名だ。この真冬にも関わらず、この店に冷やしラーメンを食べに来る客がいる。大半は雪女など寒冷地の魔物で、たまに熱暴走気味のゴーレム属が強制冷却に訪れたりもする。夏に比べれば少ないまでも、需要はあるのだ。
店長はグラキエス、その他に店員三名で切り盛りする。内二人は人間男性とイエティの夫婦で、仕事の後は帰宅して暖かい夜を楽しんでいるようだ。
そして、もう一人の店員は……
「店長。俺、もう我慢の限界です」
今夜、勇気を出して店長を押し倒したところだった。
「……何か私に悪いところがあったなら、言ってほしい。可能な限り改める」
ベッドに組み敷かれたグラキエスは自体を把握できていない。感情まで凍結した氷の精霊だけに、その表情もまた凍りついている。だが目が微かに見開かれているあたり、驚いてはいるようだ。
そんな彼女の態度は、若き店員・大嶋一信を苛立たせるだけだった。
「店長。俺は毎日あんたに精気を吸われてます。それは別にいいんです」
グラキエスの吸精は普通の魔物とは違い、触れるだけで強制的に力を吸い取る。それはワイトのように快楽を与えるものではなく、吸われた男性は強い寒気と孤独感を覚えるのだ。ただし一信の場合、合意の上で彼女に精気を捧げていた。それに今更不満を覚えたわけではない。
「吸われた後、無性に人肌が恋しくなるんです。そこへきて、何であんたはいつも裸なんですか!」
それこそが、彼のフラストレーションの理由だった。
店長・みぞれは実に模範的なグラキエスだった。この世界に進出した魔物娘の多くは地球の文化に溶け込み、この世界の衣類を身につけている。しかしみぞれは伝統的なグラキエスの格好、つまり魔物学の図鑑に載っているような、『全裸で胸部分のみを氷でコーティングした姿』で通しているのだ。しかも胸の氷も乳首より上を隠すのみで、いわゆる『下乳』は露出している。氷のような、しかし柔らかな肌は恥ずかしげもなく晒されていた。
当然、女の子の大事なところは全く隠していない。スレンダーだが胸やお尻がしっかりと膨らんだその女体は、素晴らしく芸術的な存在だった。オーロラのように輝く髪が、それに拍車をかける。
「私は精霊だから衣類がなくても風邪はひかないし、寒さも感じない。加えて精霊の排泄は余剰エレメントを放出するだけだから、私の尿道口と肛門は常に清潔であり、衛生的な問題もない」
淡々と、そして馬鹿正直に理由を語るみぞれ。若干十八歳(魔物にとって学歴はあまり重要ではない。ついでに言うと、精霊に年齢はあまり関係ない)でこの『ダンジョン』に店を構えるその手腕は、誰もが認めている。氷の領域の魔物が快適に過ごせるようにと、女王の命令で冷やしラーメンの専門店を出したのだ。そのためにどんな修行を積んだのかは定かではないが、少なくとも衣類の必要性については学ばなかったようだ。
中卒労働者である一信は至って健康な男子であり、彼女の姿は目に毒だった。
「店長の裸毎日見せられて、しかも先輩たちが惚気てる所も見せつけられて! ムラムラしてしょうがないんです!」
「ムラムラ、という表現はよく分からないが……」
みぞれの視線が下へ落ちる。もっこりと膨らんだ、一信のズボンが目に入った。
「君の男性器が勃起状態にあることから推察して、私との性交が望みなのか?」
「早い話がそうですッ!」
システマチックなみぞれに苛立ち、一信は怒鳴ってしまう。今日も丁度吸精された後で、極限まで人肌が恋しい状態だ。そこで極上の肢体を目の前にして堪えているのだから、彼の忍耐強さは賞賛されるべきだろう。
みぞれは少しの間何かを考えていたようだが、やがて行動に移った。脚を広げたのだ。
一信の目が極限まで見開かれる。彼女の最も大事な所を、その割れ目を、あからさまに見せつけられたのだ。ふとももに引っ張られて僅かに開かれ、薄い紫色の内部とクリトリスが見える。
「君は日頃から真面目に仕事をこなしている。また、苦痛を伴う吸精に応じてくれることにも感謝している」
ひたすら淡々と、自分の考えを説明する。
「だから君の男性器なら、膣内へ受け入れることに不快感はない。それで君の気が済むのなら、挿入してくれて構わない」
「……いいんスか?」
生唾を飲み込んで尋ねる一信。まだ少年と青年の境だが、全くもって忍耐強く、理性的な若者だ。
だが、続いてのみぞれの言葉が、彼の逆鱗に触れた。
「ああ。君が仕事への集中力を欠くと、店への不利益になる。ここで処理してほしい」
ただただ事務的な態度が、青い恋心を傷つけた。
ベルトを外し、チャックを下ろし、ズボンとパンツを脱ぎ捨てる。怒張したペニスが勢いよく反り返った。それを見ても、グラキエスの凍り付いた表情に変化はない。
だが一信は構わず、その先端を彼女の入り口に押し当てる。ひんやりと冷たい膣口が柔らかく広がり、亀頭へ吸い付くようにフィットした。
ぴくり、とみぞれの眉が動く。そのペニスは思った以上の熱気を帯びていたのだ。すでに先走りの汁が漏れ、種付の準備は整っている。対する女性器の方はまだ潤滑度が低く、本来なら前戯をすべきところだ。
しかしみぞれが僅かに不安を感じたとき、一信は強引に腰を進めていた。
「んぎっ……!?」
彼女らしからぬ悲鳴をあげ、目を見開くみぞれ。濡れていないところへ無理矢理ペニスを挿入されたのだ。根元まで一気に。
痛みは感じたわけではない。彼女の驚きは別のことにあった。
「熱っ……熱い! 抜いてくれ!」
凍った顔を歪め、必死で訴える。膣内に収まったペニスは焼け付くような感触だった。今まで精と共に少しずつ吸い取っていた彼の根付が、この肉棒に集中しているかのようだ。それでも人間の体温としては異常ではない。氷の精霊たる彼女の冷え切った膣だからこそ、その熱は強烈な刺激となったのだ。
「抜いて! 熱い! お、おかしくなるっ……!」
目尻に涙まで浮かべ、みぞれは懸命に懇願した。ただ、その熱さは決して不快ではない。氷が溶けて水になるように、その熱が自分を変質させてしまうものであると、直感的に分かったのだ。自分が変えられるのは恐怖なのである。
しかしみぞれの言葉は一信に届かない。むしろ逆効果だった。普段鉄面皮の彼女が慌てふためく姿は何とも可愛らしく、強い征服感を感じたのだ。
そしてペニスを包み込む、みぞれの女性器の感触。
「は、は……入ってる……! みぞれさんの、おマンコ……!」
ペニスをぴったりと締め付ける、冷たい花園。独特の感触で性感帯を刺激され、一信は思わず腰を揺り動かす。
その途端、ペニスが雪解け水に包まれた。急激に溢れた愛液が膣内を潤し、摩擦を減らす。途端に乾いた肉壷が蜜壺へと変わった。
「こ……こんなに、熱いなんて、聞いてな、い……! と、け、る……」
小刻みに痙攣するみぞれだが、膣内の雪解けは進行していた。柔らかな肉ヒダが冷えた愛液を絡ませ、ペニスを愛撫する。脳からの命令とは関係なく、女性器が男性器を歓迎する。きゅぅっと強く締め付けては、水音を立てて咀嚼し、蠢いて射精を促す。
「ああ……気持ちいい。みぞれさん……!」
一信は快楽に身を委ね、腰を引いては打ち付ける動作を繰り返した。その度にペニスがくすぐられ、快感が増していく。ひんやりとした膣は彼の心を熱くするばかりだっった。
「あっ!? だ、ダメだ……抜いて、お願いッ。溶けるぅ……♥」
情けなく哀願しながらも、彼女は一信にしっかりとしがみついていた。無意識に。秘めたる魔物の魔力が融解し、性欲が彼女の心へ氾濫していく。じゅぷっ、じゅぷっと卑猥な音を立て、肉棒が膣内をこすり続ける。
バストをコーティングしていた氷もいつの間にか解け落ち、柔らかな乳房が完全に露出していた。腰を打ち付ける動きに合わせ、元気よく上下に揺れる。
それに気づいた一信は迷わず鷲掴みにする。ぷにゅん、と柔らかな膨らみが掌中で踊る。よく冷えたわらび餅のような、いくら揉んでも飽きない感触だった。
美味しそうだ、と思った瞬間、片方の乳首に吸い付いた。
「んひゃっ!? こ、こら、君はもう大人っ……はうっ♥」
味わったことのない刺激に震えるグラキエス。だがその頬はすでに緩み、両足は彼の腰にしっかりと絡みついていた。胸に甘えてくる若者の頭を思わず抱き締める。一信の顔が谷間に埋まった。血が上ってほてった顔に、その氷の峡谷は心地よかった。
みぞれの方も何かが満たされていくように感じた。それは恋心と性欲、そして母性だ。
「みぞれ、さん……」
谷間に吐き出される熱い息が、胸の芯まで染み込んでくるかのようだ。思わず膣をきゅっと締め付けたとき、中で肉棒がぴくんと震えた。
「お、おれ、もう……!」
「あんっ、んぅ♥ も、もう好きに、していいか、らぁ……♥」
冷たい吐息に少しずつ熱が混じる。今まで一信から精を分けてもらう度、人間の熱を取り込んできた。今度は今まで以上に強い熱を受け入れることになるのだろう。みぞれは不安と期待の合間にはさまれながら、本能のままそれを受け入れようとしていた。
どくん。
ペニスが一際大きく脈打った。
「んっはぁぁ♥」
目をぎゅっと閉じ、嬌声を上げるみぞれ。迸った熱い液が、膣内にじゅわっと広がる。その瞬間、彼女は理性を手放した。
さらにどくどくと射精は続く。水が蒸発するような音が聞こえ、結合部からさらに大量の愛液が溢れ出す。全身で一信に抱きつきながら、子宮を焼き焦がす快感に打ち震える。
「ああんんっ! 熱ッ、んうぅぅっ♥ き、もち、ひッ……♥」
体を痙攣させながら目を開けると、一信と目が合った。こんなに乱れた姿を見られる恥ずかしさ、そして彼への愛おしさで胸が一杯になる。多幸感から頬がだらしなく緩み、でれでれと蕩けた笑みを浮かべてしまう。涎と涙を垂れ流し、股間からは雪解けの愛液を流す。
大量に射精したにも関わらず、そんなみぞれを見て、一信の情欲は収まるどころではなかった。
「みぞれさん、凄ぇ可愛いっす!」
「ふえっ!?」
再び腰を打ち付けられた。膣内に射精されたばかりなのに、熱い肉棒が柔肉を擦り上げる。
彼女の膣はもはや氷の穴ではなかった。取り込んだ精が胎内で熱を生み出し、男を労わるような温かさを産んでいた。その穴は収縮を繰り返し、ペニスから貪欲に精を搾り取ろうとする。そして、ひたすら快楽を味わおうとしていた。
「せっ、せーえき熱いぃ♥ おまんこ、きもちいぃ……♥」
普段の凛々しい佇まいも、オーロラの髪も、全て台無しにするほどに蕩けていた。そんな彼女が愛おしく、一信はキスを繰り返す。柔らかな唇が触れ、舌が絡み合い、唾液が糸を引いて離れる。
「ん、は……私、もう、君のおもちゃで、いい……♥」
服従の誓いを立てるかのように、みぞれもまた彼の唇を吸った。
気の狂うような快楽に溺れ、みぞれの雪解け水がシーツを汚し、一信の迸りが彼女の中を汚す。
そのまま、二人の夜は更けていった。
そして翌日。
一信が目を覚ましたとき、みぞれはいなかった。残っているのは、彼女の匂いと汗と愛液がふんだんに染み込んだベッド。そして卓上に置かれた、ご飯と目玉焼き、味噌汁の朝食のみ。
昨日の記憶は定かではないが、最初に射精した後ひたすら彼女を抱きまくったのは確かだ。出す度によがり、甘えるみぞれの姿がたまらなく可愛かった。
時間は朝の九時を過ぎたところ。彼女が用意してくれたらしい朝食にはメモが添えられていた。
『昨日はありがとう♥
買い物に行ってくるから朝ごはんを温めて食べるように。
留守番をお願いする』
仕込みはどうするんだ、と思ったが、カレンダーを見て今日が定休日だと思い出す。次いでメモに書かれたハートマークをまじまじと見て、これがあの店長のメモなのかとしばらく疑った。
空腹を覚えたので、心づくしの朝食をレンジで温めて食べた。特に予定もなかったので留守番は問題ないが、店を開ける必要はなく暇だ。
最初は読書をしていたが、やがて体が元気になってくると、昨日の快楽が恋しくなる。みぞれの名残の染み付いたベッドにうつぶせになり、自慰にふけってしまったのも無理からぬことだ。
みぞれが帰ってきたのは十一時を過ぎた頃だった。一信が安心したのは、さすがのみぞれも裸で街中をうろつくのは反社会的だと知っていたことだ。ホットパンツにキャミソール一枚という、まるで季節感のない格好であったが。
「ただいま」
手に買い物かごをぶら下げ、出迎えた一信に微笑みかける。どきっと胸が高鳴った。今まで仕事後に労いの言葉をかけられても、笑顔が伴うことはなかったのだ。
裏口を閉めた直後、みぞれはその場で衣類を脱ぎ捨てた。どうしても伝統を守り通したいらしい。ちなみに下着はつけていなかった。
一信は彼女から、その衣類を片付け、そして風呂に湯を沸かしておくように言いつかった。精霊とて体に汚れはつくので、日頃からシャワーくらいは浴びる。浴槽も従業員が使うことがあるため、掃除は行き届いていた。
意図を今ひとつ理解できないまま、一信は言われた通り浴槽へ湯を入れる。その間、みぞれは台所で何やら調理に取り掛かっていた。
風呂が溜まると、今度はそれに浸かっていろと言われた。昨晩入浴していないので、まずは体を洗ってからにした。
そして湯船に浸かってくつろぎ始めたとき、みぞれがにゅっと姿を現した。両手に丼を持って。
「お待ちどうさま」
片方を差し出し、優しく微笑むみぞれ。中を覗くと醤油スープの良い香りがした。湯気は立っておらず、やはり冷やしラーメンだ。しかしいつも店で出しているものとは少し違う。麺は普段から使っている縮れ麺だが、その上にトロロがかけられていた。上質な自然薯を摩り下ろしたそれは雪のように白く、彼女の名前を連想させる。
もう一つ、いつもと違うことがあった。普段ならグラキエスの力で作った氷を三つほど浮かべ、流氷のような見た目を作る。だが今回は氷は入っていない。丼を受け取ってみると、確かに冷たいが、いつものようにキンキンに冷やしていないのだ。
みぞれは自分の丼を持ったまま、浴槽へ入ってきた。グラキエスや雪女とて入浴はできるし、体に害はない。
一信はどきりとした。胸まで湯に浸かった途端、彼女のバストを覆っていた氷が溶けてなくなったのだ。浮力を得た乳房が水面で揺れる。またバスタブ自体特別大きなものではないため、肩も触れ合う。
「さあ、食べよう」
「は、はい!」
生まれて初めての混浴。しかも相手は昨夜、あれだけ激しく交わった意中の女性。興奮を抑えながらも、元は真面目で理性的な彼である。箸を受け取って麺を摘み、一口すすった。
食べてみて思ったことは『美味しい』ではなく『気持ちが良い』であった。性的な意味ではない。冷えすぎていない麺とスープは口当たりが良く、湯船で温まった体へ柔らかく染み込んでくるかのようだった。トロロを絡ませるとさらにまろやかになり、それでいてあっさりと食べられる。正月明けで疲れた胃にも良いかもしれない。
さらにトロロとは別の滑りも感じた。一センチほどに切ったキノコが入っており、ナメコのような食感である。それらの滑りが麺の歯ざわりをよくし、もちもちと弾力のある食感を生み出していた。飲み込むのが勿体ないような歯ごたえに、思わず必要以上に咀嚼してしまう。飲み下せばつるりと喉を下っていく。食欲が増す喉越しだった。
「いいですねこれ。新作ですか?」
「うん。今朝、君の寝顔を見ながら考えた」
一信はむせ込んだ。
「な、何スかそれ?」
「昨日からお腹の奥がポカポカと暖かい。とても良い気分なんだ。そんな幸せをお裾分けしたいな、って」
自分の麺をつるつると吸い込み、ニコリと笑う。
「ああ、あと。笑うのって楽しいんだな」
「……!」
笑顔に胸が高鳴る一信。股間の物は湯の中で限界まで怒張していた。しかし気をしっかりと持ち、まずはラーメンに集中する。ずるずると豪快に音を立て、麺も、スープも、具も片付けてしまう。チャーシューは良質な魔界豚だった。
彼の横顔を見て楽しみながら、みぞれも麺を啜る。作った料理で喜んでもらうのがどれだけ良いことか、彼女は今初めて知った。心を弾ませながら冷やしラーメンを啜り、スープまで飲み干してしまう。
一信の方もすぐに完食した。状況が違えばお代わりを頼んでいたことだろう。だが今は食器を浴槽の外へ置き、赤面しながらみぞれの方を見る。彼女もまた、一信の股間をじっと見つめていた。
「昨日は本当にありがとう」
綺麗な手が、湯船の中で近づいてくる。
「とても気持ち良かった。だから今日は私が……」
細い指先が、竿をくすぐる。柔らかな掌が包み込む。湯の中で温まっていたペニスに、彼女の手はひんやりと心地よい。それも氷の冷たさではなく、今のラーメンと同じマイルドな温度だ。しかも、冷たさの中に温もりがある。
「気持ちよく、してあげる」
耳元で囁く息は、じんわりと温かかった。ぴったりと身を寄せ、竿を握った手を上下に動かしてくる。一信は思わず身を震わせ、湯の水面に波紋が広がった。
ピクピクと動く肉棒を観察しながら、もう片方の手で亀頭をつついてくる。敏感な部分を指の腹で撫でさすり、くすぐるように弄ぶ。特に鈴口を何度もなぞり、精液が出てくる場所の感触を確かめていた。
「……どうかな? 私、多分下手だと思うから、君から指図して……」
ちらり、と一信の顔を見て、みぞれは言葉を切った。彼の蕩けきった表情に、胸が高鳴る。精霊も体をエレメントが循環しているので、脈はあるのだ。それは触れ合っている肩を通じ、一信へと伝わった。
みぞれが興奮している。昨日まで氷の彫刻だった彼女が、愛おしそうに自分のペニスを愛撫し、熱い吐息を漏らし、胸を高鳴らせている。
みぞれは胸を押しつけるように、一信へ抱きついた。彼の肩が谷間に挟まれる。お互いの鼓動を感じ合う。
男根への愛撫は不器用ながらも、一層情熱的になっていく。一信も彼女の股間へと手を伸ばした。
「ん……♥」
愛しい人の指が割れ目を広げ、クリトリスを優しく撫でてくる。痺れるような快感が広がり、全身から力が抜けそうになる。とろりと濃厚な愛液が彼の指に纏わりついた。湯になかなか溶けないほど粘つき、指を絡め取ろうとする。もしここにペニスを挿入すれば、昨日以上の快楽を得られるだろう。
だが二人はしばらく、互いの鼓動を聞きながら愛撫を続けた。手を動かしたまま見つめ合い、互いの視線に感じてしまう。自分の恥ずかしい姿を、全て見られているのだ。
「みぞれさん……!」
一信が唇を奪うと、彼女は抵抗せず、それどころか極めて情熱的に受け入れた。柔らかく弾力のある唇で一信に吸い付き、熱い吐息を楽しみながら、舌を絡めてくる。二人ともラーメンの醤油味がした。混ざり合った唾液が垂れ落ちる。
その間、手の動きは早まっていった。ぎこちなかったみぞれの手淫はいつのまにかこなれた手つきとなり、リズム良く肉棒をしごき立てる。単調な往復運動だけでなく、感触を確かめるかのように指先でくすぐってくる、何ともいやらしい手つきだった。女性器の粘り気と柔らかさを楽しみながら、一信は次第に彼女に身を委ねていった。
ちゅぱ、ちゅぱっと音を立てながらキスを繰り返し、みぞれは彼の玉袋へ触れた。気持ちよくするため、というより、その存在にふと興味が湧いただけだ。しかしそこを指先でくすぐられた途端、一信の体が大きく震えた。
そこが性感帯だと学習し、さらに悪戯っぽい指使いでくすぐってくる。玉袋の中身が追い出され始めた。
ちゅぽん、と唇が離れる。一信はみぞれのだらしない表情を間近で見た。緩んだ口元からは涎が垂れ、目を潤ませ、性欲と快感に蕩けきっている。そんな彼女の熱い視線が快楽をより一層深めた。
「みぞれさん、俺、もう……!」
「うん、見せて欲しい……君の素敵な精液が出るところ……♥」
じっとペニスを観察されたまま、手でしごかれ続け、若者はとうとう限界に達した。蕩けるような気持ち良さと共に、湯船に浸かった鈴口から白い液体が滲み出る。しかし、それはお湯に溶け出すことなく、鈴口と繋がったままゆっくりと吐き出された。ラーメンに入っていたネバリタケの効用だ。男性の精液、女性なら愛液の粘度を上げ、快感を増す魔界のキノコだ。
みぞれは少し指の力を強め、搾り出すように根元から先へとしごく。尿道に溜まった、粘ついたゼリーのような精液が、優しい手つきで水中へ搾られていく。一信はたまらない快感を覚えた。
「あ、こ、これ、いい!」
湯船に浸かっていることと、それ自体が非常に粘ついていることで、射精の勢いは非常のゆっくりとしたものだった。一信が快感によがるのを見つめるみぞれは、何とも言えず幸せそうな笑みを浮かべていた。
そしてようやく射精が止まった後も、みぞれはしばらく手淫を続けた。確かに全部搾り出したことを確認すると、湯の中に帯となって漂っている白濁を指で摘み、すくい上げる。湯から出しても形が崩れないほどに粘度が高い。どうやら一信はネバリタケの成分が効きやすい体質らしい。
みぞれは精液ゼリーを両手で握って、小ぶりなおにぎりくらいの塊を作る。鼻を近づけ、うっとりとした表情で匂いを嗅ぐ。そしてぱくりと口に含んだ。そのときの彼女の顔に、一信はまたドキリとした。最高のおやつにありつけた子供のような、氷の精霊らしからぬ無邪気な笑みだった。
自分の出した物をみぞれがぱくりと食べ、飲み込み、こんな花のような笑みを浮かべている。愛する人のこのような姿を見せつけられては、情欲は収まるどころではない。みぞれもまた、粘る白濁を咀嚼し、ゆっくりと飲み下し、喉に残る感触に恍惚となる。
「君の男性器を私の女性器に挿入し、今のような濃厚な精液を膣内射精されてみたい。君のおちんぽと私のおまんこで『仲良し』して、素敵なザーメンで子宮をドロドロにされてみたい……」
意味の同じ言葉を、単語の卑猥度を上げて繰り返すみぞれ。買い物に行ったとき、知り合いのサキュバスから助言を得たのだ。普段冷静な女性がふいに淫らな単語を使うと、男は興奮するのだと。少なくとも一信には効果覿面で、変わり果てたみぞれがたまらなく愛おしく、このまま一つに繋がりたいという思いを強くした。
だがみぞれは湯船から立ち上がり、洗い場へと出た。
「そろそろ出ないと、のぼせてしまう」
「……はい」
彼女にうながされ、一信もしぶしぶ浴槽から出た。しかしそれで終わりではない。
「座って」
洗い場の椅子を差し出し、ボディソープを手に取るみぞれ。泡立てた石鹸を身体中に塗りたくっていく。
一信も彼女が何をしてくれるのか察し、期待に胸と股間を膨らませたまま着席した。尻が冷たいが、気にしていられない。目の前では青白く美しい女体が、艶めかしく泡に包まれていく。つんと尖った乳首も、へそも、色っぽい鎖骨も、泡に覆われた。
自分から目を離せない一信に、みぞれは悪戯っぽく微笑んだ。
「……ぎゅっ♥」
「んぶっ!?」
ふいに顔へ抱きつかれ、一信は胸の谷間で溺れることになった。ほんのりと温かな体となった氷の精霊は、石鹸でヌルつく乳房で彼の顔をこねくり回す。天にも昇る柔らかさに、思わず乳首へ口をつけ、舐めしゃぶってしまう。ホルスタウロスのバターを原料とした石鹸なので、口に含んでも安全だ。『ソーププレイ中に授乳プレイもしたい』というホルスタウロスらしい発想で作られている。
「あんっ♥ そう、口で、おっぱいに甘えて……」
一信の後頭部へ腕を回し、母性本能を満たすみぞれ。だがそれだけでは彼が満足できないことは分かっている。
しばらく乳首をしゃぶらせた後、一旦彼から離れる。股間の割れ目を指で広げると、粘り気のついた愛液がぐちゃぐちゃと音を立てた。ぷっくりと膨らんだ陰核も、中の柔らかな青い肉も、全て一信に見せる。
「次はおちんぽで、おまんこに甘えなさい」
卑猥な言葉を口にする度、自分でも興奮する。もっと淫乱に、もっと気持ち良く。彼女は完全に、魔物の心を手にしていた。
白魚の指で肉棒を掴み、角度を調節する。彼の下半身を跨ぎ、対面座位の体勢で腰を下ろして挿入した。
ぐちょぉっ。
この上なく卑猥な音が、浴場に響いた。
「ああっ!」
一信が思わず声を上げる。氷の名器は温かみを宿し、火照った男性器を絶妙な温度で締め付けてくる。さらに粘る愛液によって、みぞれの膣はもはや凶器となっていた。半分挿入しただけで、ひだがねっとりと絡みついてきた。とりもちのように粘着し、肉棒を捉えて離さない。
みぞれが体重をかけて、根元まで全部股に咥え込む。奥の気持ち良い所を亀頭がこつんとノックし、彼女は艶かしく喘いだ。
「あはぁっ、イイ……私は今、君の熱いおちんぽを、おまんこで食べている……素敵だ♥」
「みぞれさんっ! 大好きです!」
「んっ♥ そうか、大好きとはこういう気持ちなんだな……私も君が大好きだ♥」
不器用なりに愛を語りながら、雪解けを迎えたグラキエスは腰を使い始める。愛液の粘りにより、抜き差しにも力が必要だった。しかしそれによって男根との摩擦が強まり、お互いに強い快感を受ける。
「あっ、んぅっ、ひっ、いっ♥」
熱い吐息を一信の顔へかけ、腰を振り続ける。膣内でもみくちゃにされた肉棒はピクピクと悦び、挿入からさほど経っていないのに今にも射精しそうだった。
だが先に達しつつあったのは、手で女性器を弄られていたみぞれの方だった。昨夜の交わりですっかり開発され、敏感になった膣は男根の熱さを感じ取り、粘液をとめどなく垂れ流す。彼女が『食べている』と表現した通り、もぐもぐと蠢いて男根を咀嚼していた。腰の動きもたまらなくいやらしく、一信はその細いウェストのくねりだけで悩殺されそうだ。
腰を弾ませ、打ち付ける音が木霊する。泡まみれの裸体が滑らかにこすれ合う。抱き合いながら互いを見つめ、胸部を押し付け合い、キスをし、臀部を撫でさする。石鹸でぬるついた尻はさながらプリンのようだ。夢中になった一信がその谷間に指を滑り込ませる。
「ひゃんっ!?」
お尻の穴をくすぐられ、みぞれの体がぴくんと震える。その途端に快楽が絶頂に達した。
「あっ、あっ、あああ♥」
激しく痙攣し、愛する男……むしろ『夫』にしがみつく。その震えに増して、膣内はより激しく蠢いていた。べちゃべちゃと音を立て、粘った愛液が大量に吹き出す。そればかりか、乾いた音を立てて別の物も排出された。
五ミリ程度の、雪の結晶。美しい自然の芸術品が、みぞれの股間から放出されていく。
「や、やだっ! 見るなっ!」
みぞれは慌てた。彼女が一信に語った通り、グラキエスは体内に溜まった氷の魔力の内、余剰分を体の外へ出す。それが気持ちよさのあまり、勝手に流れ出てしまったのだ。不衛生なことは全くないし、今まで恥ずかしいと思ったことはない。しかし人間で言えば放尿に当たることを愛する夫に見られ、初めて羞恥心がこみ上げてきたのだ。
こんな姿を見られて、嫌われないか……そう思うのもまた、初めての感情だった。そんな彼女がたまらなく愛おしくなり、一信は強く抱きしめる。
「お、俺も出しますよ!」
絶頂した膣で締め上げられ、彼も限界に達していた。どくり、と大きく脈打った肉棒から、またよく粘った液体が吹き出す。
「ふあああんっ♥ 熱いぃぃ♥」
嬌声が一際大きく、風呂場に響き渡った。今度は指ではなく、蠢く膣が肉棒内のミルクを搾り出す。みぞれも知らず知らずの内に、魔性の性器の使い方を覚えていたのだ。
にゅるり、にゅるり……ゆっくりと膣内へ吐き出されていく、白い液体。ネバリタケの効用で、それは一滴も外へ流れ出さなかった。
「き、気持ちいいっす、これ、すげぇ……!」
「んっ、きゃぁっ。まだ、まだ出てるぅ♥」
互いに強く抱き合ったまま、快感を味わう。みぞれが一信の顔を夢中で舐め始めた。愛おしくて、抱き合うだけでは物足りなくなったのだ。
ネバリタケの効果は強力で、精液はみぞれの膣内にべっとりと張り付き、篭った力がゆっくりと吸収されていく。その感触は腹部に長く残るだろう。
射精が収まってくると、みぞれは下腹部に力を込め、膣をきゅっと締め付けた。尿道に残った精液が搾り出され、その刺激に一信の体が震える。
「ああ……!」
そしてその直後には、またどくどくと精液が溢れた。立て続けに射精してしまったのだ。
「あっ、またイってくれた……♥」
嬉しそうに頬を緩ませ、一信の顔にキスの雨を降らせる。さすがに今度の射精は少量だった。
全て搾りとった後、彼に全体重を預け脱力するみぞれ。そのオーロラのような髪を撫で、一信も呼吸を整える。
しばらく多幸感に包まれ、余韻に浸る二人。深呼吸の音だけが聞こえる。
みぞれがこの店を開いたのは、ただ氷の女王に命じられたからだ。凍土の魔物たちが『こちらの世界』で過ごしやすいように、と。女王がそのアイディアを思いついたのは、夫との交わりの後だった。
今なら、女王の気持ちが分かる。そしてこれからは義務感だけでなく、彼への愛情を持って冷やしラーメンを作り続けることになるだろう。作ったものを食べて「美味しい」と言ってもらえる喜びもまた、先ほど彼から教わったのだ。愛欲だけでなく、ラーメンへの情熱という熱も湧いてきた。
だが、今は。
みぞれがゆっくりと腰を上げると、白濁と愛液の混ざった物がいやらしく糸を引いた。
「……堕落の果実とか、アルラウネの蜜も買ってきた」
淫らな股間を凝視する一信に、楽しげに語りかける。
「今日は家に帰らせない。今日は君と私が、ずっと『仲良し』になる日にしよう」
そう告げたみぞれの笑顔は、とても華やかで、穏やかで。
冬の太陽のようだった。
……それから、一週間。
まだ冬は去らぬのに、冷やしラーメン専門店『エウロパ』は盛況だった。
「あのドロイド、本当にイケメンだったよねー」
「うん。悲しかったけど、ストーリーしっかり繋がったわね」
「兵士が設計図を必死で守って、お姫様に届けようとする所も壮絶だったわ。仲間が命懸けで手に入れた希望を繋いだのよね」
「あたし、ああいうシーン泣けてしょうがないんだよー。前に観たやつだとホラ、KV-2が盾になってパーシングに立ち向かうのとか、初恋の女の子に『俺を見ろ』って言い残して車を横転させるやつとか……」
店内のこたつを囲み、映画ファンらしいサキュバスたちが雑談する。その目の前には、新作「雪解け冷やし麺」があった。トロロの絡んだコシの強い麺をすすり、ほどよい冷たさのスープで火照った体を冷ます。デザートメニューのアイスも含め、温かなこたつの中で楽しむことができる。
店の中には穏やかな笑顔が溢れ、働く者達もまた笑顔だった。
「みぞれさん、雪解け三人前追加ー!」
「了解だ」
厨房の窓から笑顔で応えるみぞれ。すでに一信とは同居し、遠からず挙式しようと考えている。従業員のイエティ夫妻も二人を祝福していた。
やがて、寒い冬を乗り切るために、多くの客が『エウロパ』の暖簾をくぐるようになった。春を迎えた氷の精は愛する夫と共に、彼らを心から歓迎する。
多くの強者が集うこの『ダンジョン』に、新たな歴史が紡がれたのだ。
ーーfin
17/01/11 22:04更新 / 空き缶号