不思議のルルゼ村 帽子屋編
村が消えた。
比喩表現ではない。一つの村が丸ごと、文字通り忽然と消えてしまったのだ。村の名はルルゼ・ヴィレッジ。人口は少ないが、ここで作られる紅茶は独特の香りを持ち、教団のお偉方にも愛好家が多い。それ故教団から保護を受けており、この異変についてもすぐに調査隊が編成された。
魔力研究者である私にも招集がかかり、同僚や護衛の兵士と共に現場へと向かった。
「先生、到着しました」
御者の声を聞いても、目的地へ来たという気がしなかった。実際に見て愕然とした。山間の緑豊かな土地で、絶え間なく鳥の鳴き声が聞こえる。そんな中、村のあった場所だけがぽっかりとただの空き地になっていた。人間だけではない、村の建物も、広大な茶畑も、雑草でさえも姿を消していた。今はただ黒い土が広がるだけで、『村』という存在が丸ごとこの土地から削り取られ、消滅していたのだ。
この村へ通じる街道だけは残っており、馬車で来ることはできた。だが我々を迎えたのは鳥の声だけで、ここに村があった痕跡は何一つない。不気味だ。
調査隊の誰もが、その異様な空気に圧された。しかし任務に忠実な者が揃っているので、すぐさま隊長から号令がかかり、調査が始まった。
ルーンを彫った杖を手に地面をつついて歩き、魔力の痕跡を調べる。ダウジングと呼ばれる術だ。このような事態は魔物が関わっているに違いなく、何らかの痕跡があるはずだ。しかし杖には土地に元々宿っている力しか伝わってこないし、何かが埋まっているような感覚もない。
魔物の襲撃も予想されるため、私の周囲では兵士たちが警戒に当たっていた。しかし何もないという状況は相当不安なようで、始終互いの顔を見ては心配そうな表情を浮かべている。
頭上から大きな鳴き声が聞こえた。見上げると鴉が一羽、黒い翼を羽ばたかせて飛んでいた。この事件が疫病や災害によるものだったら、奴らも地上に降りて屍肉を漁っていたことだろう。今は我々を嘲笑うかのように、けたたましく鳴きながら飛び去って行くだけだ。しかし鳥が警戒せず上空を飛ぶということは、やはりこの場所に異常な魔力はないということになる。
「ケルド、そっちはどうだ？」
近くを調べている同僚に尋ねてみた。彼は訓練した犬を連れており、魔力のみならず臭いの痕跡を探していた。しかし犬は真面目に働いているものの、何かを見つけた様子はない。
「何の反応もない。こんなことは初めてだ」
ケルドは憮然として答える。犬の方も人間の不安が伝わるのか、時折顔を上げて主人の様子を伺っていた。黒毛の美しい雌犬で、主人の言うことをよく聞き、ケルドも家族同然に扱っている。今まで地面の魔力を探知して水脈を探し当てるなど、様々な功績を上げてきた。だが今回ばかりは主人共々気が滅入っているようだ。
再び、杖に意識を集中させる。すると今度は異変があった。痺れるような感触が一瞬、手に伝わってきたのだ。
目を閉じて感覚を研ぎ澄ますと、微弱な魔力がしっかりと検知できた。人間の物ではない。
「反応あり。魔物の魔力だ」
兵士たちがさっと剣を抜き、臨戦態勢に入る。私は目を閉ざしたまま、地面の魔力を杖でなぞり、より力の濃い方へと歩を進めた。極めて微弱な痕跡だが、しっかりと道を作っていた。本当に少しずつだが力は濃くなっていく。視覚を捨ててダウジングに集中している以上、周囲で異変があっても自分では対処できない。護衛の兵士たちや同僚の愛犬が頼りだ。
一歩、二歩、三歩……最初に検知した箇所から二十歩ほど歩いたときだ。急に反応が強くなった。
同時に杖先が何か、柔らかい物にめり込んだ。
「アッー♥」
奇声にハッと目を見開く。そして驚愕した。目の前に女が、いや、魔物がいたのだ。
「ほほほ。お兄さんたらなかなか大胆ニャ」
うつ伏せに寝そべったそいつは、私を省みてニヤリと笑った。紫色の長い髪を持つ、美しい女性の姿。しかし獣の耳や尻尾を持ち、手足もまたキャット属に類する特徴を持っていた。突然姿を現したその魔物は余裕の表情を浮かべ、地面に伏したまま私を見ている。
そして杖が当たった柔らかい物の正体も分かった。うつ伏せになった魔物の、丸出しになった臀部の谷間へ、杖先がジャストミートしていたのだ。
「魔物だ！」
私が叫んだ途端、周囲の兵士たちは一斉に剣光を閃かせ、その魔物の首を……斬るかと思われた。が、剣が振り下ろされることも、ケルドの犬が吠えることもなかった。そもそも私以外の人間が、煙のごとく消えていたのだ。
しかも周囲の光景はあの異様な空き地ではない。鬱蒼と木々が並び、桃色の怪しげな植物が繁茂する、奇妙なジャングルと化していたのだ。鳥の声も鴉ではなく、酔っ払いの鼻歌のような奇妙な鳴き声が響く。同時に何か女の……または盛った獣のような、卑猥な嬌声が聞こえた。
あまりに突然のことで思考が停止したが、やがて杖を介さなくても肌で分かった。ここは魔界なのだと。魔物の魔力で満ち、周囲の奇妙な植物群も全て、その影響を受けた物なのだ。
頭にぽつりと水滴が当たる。見上げると、その正体が雨でも、木の葉に溜まった露でもないと分かった。鳥人の群れだ。桃色の羽毛を持つおびただしい数のハーピー種が、木の枝に群がり、その上でひたすら男女の行為を行っていた。捕獲されたらしい男たちは魔物に精を捧げ、従順に交わっている。魔物の股間から垂れた淫液が、雨垂れのように降り注いでいた。
「不思議の国へようこそ〜」
猫は驚く私を楽しむかのように、ニヤニヤと笑っている。我に還り杖を振り上げようとするが、杖先は魔物の尻に刺さったままびくともしない。
「ほほほ、ボクの括約筋を甘く見ない方がいいニャ」
「どういう尻だ!?」
叫びながらも杖の柄だけを掴み、一気に引き抜く。杖先は相変わらず魔物の尻に捕まっているが、仕込みの剣が陽光に煌きながら姿を見せた。そのまま剣先を振り下ろし、魔物の背へ……突き刺したはずだった。
「おっとっと、危にゃい危にゃい」
剣先は虚しく空を切り、地面に突き刺さる。魔物はいつの間にか背後に回り、変わらぬ笑みを浮かべていたのだ。今までうつ伏せだったため分からなかったが、衣裳まで人をおちょくっている。タコの形をしたワンピースを纏っていたのだ。スカート部は8本の足で、ご丁寧に吸盤までついている。
私が素早く構えを取ると、彼女はやれやれと言いたげに身をすくめる。
「身構えられたら話もできないにゃあ。せっかく『本物の』ルルゼ・ヴィレッジへ案内してあげようと思ったのに」
「……何……!?」
意味深な言葉の直後、また猫の姿が消えた。何の予兆もなく、忽然と。
だが今度は背後に気配を感じた、素早く振り向きつつ剣を閃かせる。
が、失敗だった。振り向いた瞬間、細かい粉が顔面に直撃していたのだ。
「ふふふ、眠り花粉〜」
途端に頭が鉛のように重くなった。猛烈な睡魔に襲われる。近くの気に手をつき、必死で解毒の呪文を唱えた。しかしどうにも集中力が高まらず、さらに立て続けに粉が振りかけられる。
足元がふらつく。手から剣が滑り落ちた。地面に当たって……ああ、いかん、刃こぼれする。
拾わなければ。……駄目だ。立っていられない。
崩れかけた体を魔物に抱きとめられる。その瞬間、すっと力が抜けていった。
「お一人様ご案な〜い」
………
……
…
紅茶の香りが鼻をくすぐる。 暖かい日差しの中、テーブルの上に木製の皿が並んでいた。クッキーや色とりどりの砂糖菓子、干した果物などが載せられ、甘い匂いを漂わせている。テーブル自体も木の良い香りがして、座っている椅子のクッションと相まって非常に良い気分だ。まるで上質なベッドで半分まどろんでいるかのような、夢と現の境目にいるような、不思議な状態だ。
ぼんやりとした頭で、ここがどこなのか考える。まず、目の前にいる美しい女性は誰なのだろうか。歳は二十前後だろう、淡い緑色の燕尾服を着て、鍔広の帽子をかぶった男装の麗人だ。男装、と言っても服装がそうなだけで、大変女らしい人だ。金を糸に紡いだような髪がふんわりと緩やかに巻いており、そよ風で微かに揺れている。赤い大きな瞳、微笑を浮かべた口元、そして豊かな胸。服の上からでも分かる、というより服自体が体のラインにぴったりと合っているようで、その柔らかそうな膨らみが自己主張していた。
優雅な手つきで、彼女はティーポットを取った。白磁のカップへゆっくりと中身を注ぐと、良い香りが湯気に乗り、一際濃く漂った。以前飲んだことがあるルルゼ茶だと分かったが、それ以上のことに考えが及ばない。
舞踊のような手の動きを見ていると、彼女は私へにこやかな笑みをくれた。胸がドキリと高鳴る。
「こちらへ」
柔らかな日差しに似合う優しい声と共に、麗人は私を手招きした。頭はぼんやりとしていたが、体は軽快に椅子から立ち上がった。近くへ寄ると、胸の大きさが尚更強調される。彼女も私に歩み寄り、胸と胸が触れ合い、互いの息がかかるくらいに近寄った。
麗人の白い手が私の下腹部……否、股間を優しく撫でた。そういえば私は全裸ということに今気づいた。女性の優しい愛撫を受け、菓子の香り並みに甘い感覚が広がる。さらに麗人はその赤い瞳で私の目を覗き込み、股間のものをそっと握り、柔らかく愛撫してくれた。すべすべとしたその手で、小動物の毛並みを愛でるかのように、優しく、丁寧に。
「気持ちいいですか？」
手の中でむっくりと膨らむそれを見ながら、彼女はにっこり微笑んで尋ねてくる。気持ちいいです、と答えると、今度は空いている左手でミルクポットを取った。それを棒の先へ持ってくると、愛撫の手を早める。
込み上げてくるのが分かった。だがこのままではミルクポットを、この麗人の持ち物を汚してしまうことになる。すでに先端から垂れた雫が、白磁の器に溢れていた。不安になる私に、麗人を頬を寄せてくる。艶かしい吐息が耳にかかった。
「どうぞ、出してください。新鮮なミルクをいただきたいのです」
囁かれた瞬間、体がピクンと震える。その途端堰を切ったかのように、私のそれは脈打ちを始めた。白くて濃い物、本来生殖のために出す体液が、どろどろと迸っていく。白濁を女性の手に握られて排出する、その気持ち良さ。脚から力が抜けそうだった。しかし彼女がこれを欲しがっているのだからと、しっかりと立ったまま、全てミルクポットへ射精した。
どくどく、どくどくと長く脈打ちが続いた。それが止まったとき、白磁の中は粘ついた精液で一杯になっていた。麗人はそれを紅茶の中にいくらか入れると、ティースプーンでかき混ぜる。カップの中で白い粘液が渦を巻き、澄んでいた紅茶が濁っていく。
嬉しそうに微笑み、彼女は湯気を立てる紅茶を口にした。その美しい横顔を見ながら、私の出した物が彼女の口へ入り、喉を通って体内へ下っていくところを想像する。股間のモノがまた、下から上へと頭をもたげた。
「……貴方のミルク、とても美味しいのですね」
小さな唇がカップの縁から離れ、最初に出てきた言葉はそれだった。自分の出した物を美味しいと言われ、不思議な興奮がこみ上げる。その一方で何かとんでもなく背徳的なことをしているような気分も湧き、それが何故かとても気持ちよくも思える。この麗人に裸を見られていることにも、得体の知れない開放感があった。見られているというよりむしろ、観察されているようだ。性器だけではなく、赤い瞳で体中をじっくりと調べられている。その眼差しに体がぞくりと震えた。
麗人はその視線を私の目に向け、にこりと笑った。私のことを知っている、というような目だ。
「コムラン・キーグ先生ですよね。フロカニア鉄鉱山についての論文、拝読いたしました」
「え……ああ」
去年、私が魔力研究機関に提出した論文だ。地面の魔力を辿って鉱脈を探す計画について書いたものだ。
「あの魔力の交差地点についての考察は素晴らしかったです。特に古代遺跡への干渉については大変楽しく読ませていただきました」
「ああ、あの件は私の考え通りでしたね。ただ予想よりも遥かに規模が大きかったわけですが……」
会話をしながら、ようやく自分が何者なのか思い出せた気がした。私は魔力研究者で、確か消滅した村の調査をしていたのだ。それが何故こんなところにいるのだろう。そもそもここはどこなのか。
思い出そうとしていると、不意に胸に柔らかな感触を覚えた。
「ふふ、自己紹介がまだでしたね」
豊満な胸を私に押し当て、こちらの腰に手を回しながら、麗人は笑いかける。甘い吐息が顔にかかった。
「私はフレイナータ・シュティレオ。魔法の農業利用を研究しております」
「ああ、お名前は聞いております。確かルルゼ・ヴィレッジで研究を……」
言いかけて、思い出した。私はルルゼ・ヴィレッジの調査をしていたのだ。脳内で情報が倒錯している。村の消えた、何もない土地。突然現れた猫。股間に柔らかい胸が当たる。
「……え？」
胸が股間に当たっていた。彼女の豊満な、柔らかな、美しい胸が。服の生地越しに、私の張り詰めた股間に密着している。いや、この柔らかさは生地なのだろうか。まるで彼女の体そのもののような……。
「な。何を？」
「ふふ。せっかく憧れの方にお会いできたのですもの。ご奉仕しなくては」
あくまでも上品な笑みを浮かべ、フレイナータは私の腰に手を回す。むにぃっ、と豊乳が股間を圧迫した。そのまま彼女が体を上下させる。すると柔らかな胸も上下し、谷間に挟まれた男根が擦りあげられる。そのとき、私は彼女の服の正体に気づいた。艶めかしく竿に絡みついてくる感触はやはり、布ではない。より粘性・弾性があり、本来不定形の物体。
菌糸だ。菌糸でできた服を着ているのだ。しかも所々には赤や青のキノコが生え、それどころかフレイナータの帽子でさえ巨大なキノコの傘だった。私と会ったときからずっとそうだった。気づかなかったのではない、気にしていなかったのだ。異様な光景なのに、それがまるで自然なことのように認識されていた。
「魔……物……」
「はい。ルルゼ・ヴィレッジが不思議の国の一部になったので、私はマッドハッターという魔物にしていただきまして」
胸と菌糸で男根を刺激しつつ、彼女は自分の指先を舐めた。その手を再び私の腰へと回し……臀部の谷間へ滑り込ませてくる。唾液に濡れた指先が肛門に触れ、体が一瞬痙攣した。そのままそこをくすぐるように刺激してくる。感じたことのない感覚だった。だが棒を挟む胸の柔らかさと温かさ、菌糸の艶かしさと合わさり、快感が増していく。
「コムラン先生、ここでは正気は許されません」
フィオレータは上目遣いにこちらを見つめ……より強く、胸で股間を圧迫してきた。体の中が切なく疼く。
菌糸の服がどろりと溶け、私の物に絡みつき始める。それに伴い、フィオレータの美しい胸が露わになった。白く、丸い二つの山。それがむにゅ、むにゅっと形を変えながら、菌糸に包まれた竿を擦りあげてくるのだ。
「さあ、早く……」
彼女の口から、言葉と共に唾液がどろりと垂れた。否、これも菌糸だった。胸の谷間に入り込み、男根の先端に纏わりついて蠢く。それだけではない、菌糸が鈴口を通って、竿の内側へ侵入してくるのだ。異物感を覚えたが、すぐにそれが快楽に変わってしまう。内側から菌糸が浸透し、神経を優しく刺激してくるかのようだ。
フィオレータがキノコの魔物だというのなら、この菌糸も彼女の一部ということになる。妖女に体の内外から犯されて、自分の中で何かが壊れていく気がした。自分とフィオレータの境目が徐々になくなっていくような、自分も狂気の一つになっていくような……。
私の様子を見て、フィオレータがにこやかな笑みを浮かべる。私の肛門に唾を塗りつけながら。帽子の影の下、その赤い瞳の中で、何か蠱惑的なものが渦巻いていた。
自然と笑顔を返してしまったとき、私は達していた。菌糸が染み込んで、胸の谷間で膨張したそれから、溜まった物がどくどくと放出されていく。敏感になった男根の中を勢い良く迸り、焼け付くような快感に声が漏れてしまう。
柔らかな乳房で迸った白濁液は、その谷間に白い池を作った。しかし止めどなく溢れる湧き水の如く、迸りは止まらない。豊満な胸もついにそれを谷間へ溜め切れず、白い肌を伝って溢れていく。
「もっと、もっと、もっと……♥」
催眠的に口ずさみながら、フィオレータは胸を揺り動かす。私はそれに逆らうことなく、快楽の沼に揺蕩っていった……
………
……
…
ルルゼ・ヴィレッジの紅茶は人間だけでなく、魔物からも珍重されていた。特に不思議の国の支配者……私の今の主君ということになるハートの女王様はこの味を大いに気に入り、ルルゼの土地を手に入れたいと考えたらしい。その結果、村を住民や畑ごと元の世界から削り取り、不思議の国へ組み込んでしまったそうだ。リリムと言えどこのような真似はなかなかできないらしいが、女王様には世界中を旅している妹が居り、彼女が知恵を貸したという。
そこへノコノコと調査へやってきた私もまた、新しくなったルルゼ・ヴィレッジで幸せに暮らしていた。
「おはようございまーす！」
茶畑で働く子供たちが、我々に挨拶する。人間の男の子も居り、挨拶をする間もアリスやマーチヘアの子に股間を弄られ、白濁をこぼしていた。
「んッ♥ おはよ、ぅ♥ 今日も、あッ♥ 頑張りましょう、ね」
フィオレータは嬌声混じりの挨拶を返すが、彼女の乳房をしゃぶるのに忙しい私はまともな言葉を返せない。薄桃色の乳首を吸うと、乳液状に蕩けた菌糸が溢れてくる。とても甘いその味は彼女そのものだ。それを口から摂取して体に取り込みながら、男根を撫でさする彼女の手で射精する。下には巨大なミルクポットが置かれていて、出した白濁は全てそこへ溜まっていた。フィオレータもまた、乳首への刺激が気持ちいいらしい。子供達の前で彼女に精液を抜き取ってもらうのも良いものだ。
「今作ってる、んぅ、お茶はぁ♥ ルージュ・シティへ輸出する、ひゃ♥ 大事なものですから、ねっ♥」
「はーい！」
元気よく返事をし、子供たちが茶葉を摘み始める。フィオレータは私を優しく抱きかかえ、立ち上がった。今の私はあの子供たちと同じか、もっと幼いくらいの子供の体である。魔物とはいえ女性であるフィオレータが、授乳と手淫をしながら軽々と抱き上げられるくらいの大きさだ。不思議の国の魔法の菓子を食べたためである。子供の体の方が魔力に敏感なので、魔力感知の仕事がやりやすい。魔力が畑に与えている影響を調べるのが私の仕事だ。
しかし問題もある。それは股間にフィオレータの菌糸が寄生しているせいで、性器と睾丸が大人のそれより一回り大きいくらいに肥大しているのだ。子供の体で股間だけそれでは大変歩きづらい。とはいえ結局のところ、この問題はもはや問題とは言えない問題であり、私が一人で仕事をするのであれば大いに問題となるが、いつもフィオレータに抱かれて移動する以上問題にはならない。
乳房から口を離し、杖を手にして地面の魔力を図る。フィオレータは始終私を優しく抱きかかえ、後頭部に当たる豊満な胸が心地よい。
「コムランさん、フィオレータさん、おはようございます」
「あら、おはよう」
「やあ。おはよう」
畑の近くでケルドの愛犬が、ケルドを散歩させていた。ケルドはリードを愛犬に握られ、ふさふさ尻尾を振りながら楽しそうに歩いている。愛犬の方は二本足で歩くことにすっかり慣れたようで、軽い足取りだ。
このように、知人たちも楽しい不思議の国で楽しい不思議の国の住人らしく、楽しい不思議の国を楽しみながら楽しく暮らしているのだ。あのチェシャ猫という魔物に頼み、故郷にいる家族も連れてきてもらった。妹などは一日中愛液を垂れ流し、弟はそれに抱かれ続けている。良いことだ。
「この辺りに魔力を注ぐのが良さそうです」
「そうですか。では早速始めましょう」
フィオレータは私の示した場所に、ゆっくりと私を下ろして寝かせた。股間の物は上を向いたままだ。
彼女はうやうやしくお辞儀をして、その上にまたがる。燕尾服のパンツがどろりと溶け落ち、白い肌と割れ目が露わになった。すでに潤滑液が滴る割れ目は僅かに口を開け、中の桃色が見えた。
ゆっくりと、腰を沈めていくフィオレータ。その膣はいやらしく広がりながら、肥大した男根を飲み込んでいく。中はとても温かく、甘い締め付けが私を悦ばせる。ねっとりと絡む愛液と膣内のヒダが、狂おしく刺激してきた。
「あっ……！」
思わず声を出し、半分ほど入ったところで射精してしまった。子宮へ至路の途中で白濁液を放ってしまい、結合部へ垂れてくる。その瞬間、フィオレータも身を震わせた。
「アッ、ふあぁぁ♥」
悦びの声を上げ、彼女の股間から潮と尿が吹き出した。ちょろちょろと音を立てながら、フィオレータの膣はきゅうきゅうと締まる。彼女も絶頂してしまったのだ。不思議の国はハートの女王の気まぐれでコロコロと環境が変わり、住人の体調も変動する。今日は膣内射精に敏感になる日のようだ。
絶頂を愉しみながらも、フィオレータはしっかりと男根を根元まで加えこんだ。そして一心不乱に、腰を使う。悩ましい締め付けと絡みつきに、その動きが加わった。
「んっ、はぁ♥ コムラン、せんせぇ……あ、あっ♥」
「フィオレータ、さんっ……きもちいい……！」
敏感にされた男根はすぐ絶頂を迎え、彼女もまた何度も何度も絶頂し、何度も何度も魔力を含んだ潮を吹き、何度も何度もそれを大地へ吸収させる。こうやって土地の魔力を調節し、豊かな収穫を得るという合理的な農法だ。
本当は皆分かっている、教団的にはこれが反道徳的だということも、不自然だということも。だがそんなことは誰も気にしないし、気にしたとしてもその不自然さが快楽を引き立てるだけだった。
不思議の国。ここで正気は許されない。
ーfinー
比喩表現ではない。一つの村が丸ごと、文字通り忽然と消えてしまったのだ。村の名はルルゼ・ヴィレッジ。人口は少ないが、ここで作られる紅茶は独特の香りを持ち、教団のお偉方にも愛好家が多い。それ故教団から保護を受けており、この異変についてもすぐに調査隊が編成された。
魔力研究者である私にも招集がかかり、同僚や護衛の兵士と共に現場へと向かった。
「先生、到着しました」
御者の声を聞いても、目的地へ来たという気がしなかった。実際に見て愕然とした。山間の緑豊かな土地で、絶え間なく鳥の鳴き声が聞こえる。そんな中、村のあった場所だけがぽっかりとただの空き地になっていた。人間だけではない、村の建物も、広大な茶畑も、雑草でさえも姿を消していた。今はただ黒い土が広がるだけで、『村』という存在が丸ごとこの土地から削り取られ、消滅していたのだ。
この村へ通じる街道だけは残っており、馬車で来ることはできた。だが我々を迎えたのは鳥の声だけで、ここに村があった痕跡は何一つない。不気味だ。
調査隊の誰もが、その異様な空気に圧された。しかし任務に忠実な者が揃っているので、すぐさま隊長から号令がかかり、調査が始まった。
ルーンを彫った杖を手に地面をつついて歩き、魔力の痕跡を調べる。ダウジングと呼ばれる術だ。このような事態は魔物が関わっているに違いなく、何らかの痕跡があるはずだ。しかし杖には土地に元々宿っている力しか伝わってこないし、何かが埋まっているような感覚もない。
魔物の襲撃も予想されるため、私の周囲では兵士たちが警戒に当たっていた。しかし何もないという状況は相当不安なようで、始終互いの顔を見ては心配そうな表情を浮かべている。
頭上から大きな鳴き声が聞こえた。見上げると鴉が一羽、黒い翼を羽ばたかせて飛んでいた。この事件が疫病や災害によるものだったら、奴らも地上に降りて屍肉を漁っていたことだろう。今は我々を嘲笑うかのように、けたたましく鳴きながら飛び去って行くだけだ。しかし鳥が警戒せず上空を飛ぶということは、やはりこの場所に異常な魔力はないということになる。
「ケルド、そっちはどうだ？」
近くを調べている同僚に尋ねてみた。彼は訓練した犬を連れており、魔力のみならず臭いの痕跡を探していた。しかし犬は真面目に働いているものの、何かを見つけた様子はない。
「何の反応もない。こんなことは初めてだ」
ケルドは憮然として答える。犬の方も人間の不安が伝わるのか、時折顔を上げて主人の様子を伺っていた。黒毛の美しい雌犬で、主人の言うことをよく聞き、ケルドも家族同然に扱っている。今まで地面の魔力を探知して水脈を探し当てるなど、様々な功績を上げてきた。だが今回ばかりは主人共々気が滅入っているようだ。
再び、杖に意識を集中させる。すると今度は異変があった。痺れるような感触が一瞬、手に伝わってきたのだ。
目を閉じて感覚を研ぎ澄ますと、微弱な魔力がしっかりと検知できた。人間の物ではない。
「反応あり。魔物の魔力だ」
兵士たちがさっと剣を抜き、臨戦態勢に入る。私は目を閉ざしたまま、地面の魔力を杖でなぞり、より力の濃い方へと歩を進めた。極めて微弱な痕跡だが、しっかりと道を作っていた。本当に少しずつだが力は濃くなっていく。視覚を捨ててダウジングに集中している以上、周囲で異変があっても自分では対処できない。護衛の兵士たちや同僚の愛犬が頼りだ。
一歩、二歩、三歩……最初に検知した箇所から二十歩ほど歩いたときだ。急に反応が強くなった。
同時に杖先が何か、柔らかい物にめり込んだ。
「アッー♥」
奇声にハッと目を見開く。そして驚愕した。目の前に女が、いや、魔物がいたのだ。
「ほほほ。お兄さんたらなかなか大胆ニャ」
うつ伏せに寝そべったそいつは、私を省みてニヤリと笑った。紫色の長い髪を持つ、美しい女性の姿。しかし獣の耳や尻尾を持ち、手足もまたキャット属に類する特徴を持っていた。突然姿を現したその魔物は余裕の表情を浮かべ、地面に伏したまま私を見ている。
そして杖が当たった柔らかい物の正体も分かった。うつ伏せになった魔物の、丸出しになった臀部の谷間へ、杖先がジャストミートしていたのだ。
「魔物だ！」
私が叫んだ途端、周囲の兵士たちは一斉に剣光を閃かせ、その魔物の首を……斬るかと思われた。が、剣が振り下ろされることも、ケルドの犬が吠えることもなかった。そもそも私以外の人間が、煙のごとく消えていたのだ。
しかも周囲の光景はあの異様な空き地ではない。鬱蒼と木々が並び、桃色の怪しげな植物が繁茂する、奇妙なジャングルと化していたのだ。鳥の声も鴉ではなく、酔っ払いの鼻歌のような奇妙な鳴き声が響く。同時に何か女の……または盛った獣のような、卑猥な嬌声が聞こえた。
あまりに突然のことで思考が停止したが、やがて杖を介さなくても肌で分かった。ここは魔界なのだと。魔物の魔力で満ち、周囲の奇妙な植物群も全て、その影響を受けた物なのだ。
頭にぽつりと水滴が当たる。見上げると、その正体が雨でも、木の葉に溜まった露でもないと分かった。鳥人の群れだ。桃色の羽毛を持つおびただしい数のハーピー種が、木の枝に群がり、その上でひたすら男女の行為を行っていた。捕獲されたらしい男たちは魔物に精を捧げ、従順に交わっている。魔物の股間から垂れた淫液が、雨垂れのように降り注いでいた。
「不思議の国へようこそ〜」
猫は驚く私を楽しむかのように、ニヤニヤと笑っている。我に還り杖を振り上げようとするが、杖先は魔物の尻に刺さったままびくともしない。
「ほほほ、ボクの括約筋を甘く見ない方がいいニャ」
「どういう尻だ!?」
叫びながらも杖の柄だけを掴み、一気に引き抜く。杖先は相変わらず魔物の尻に捕まっているが、仕込みの剣が陽光に煌きながら姿を見せた。そのまま剣先を振り下ろし、魔物の背へ……突き刺したはずだった。
「おっとっと、危にゃい危にゃい」
剣先は虚しく空を切り、地面に突き刺さる。魔物はいつの間にか背後に回り、変わらぬ笑みを浮かべていたのだ。今までうつ伏せだったため分からなかったが、衣裳まで人をおちょくっている。タコの形をしたワンピースを纏っていたのだ。スカート部は8本の足で、ご丁寧に吸盤までついている。
私が素早く構えを取ると、彼女はやれやれと言いたげに身をすくめる。
「身構えられたら話もできないにゃあ。せっかく『本物の』ルルゼ・ヴィレッジへ案内してあげようと思ったのに」
「……何……!?」
意味深な言葉の直後、また猫の姿が消えた。何の予兆もなく、忽然と。
だが今度は背後に気配を感じた、素早く振り向きつつ剣を閃かせる。
が、失敗だった。振り向いた瞬間、細かい粉が顔面に直撃していたのだ。
「ふふふ、眠り花粉〜」
途端に頭が鉛のように重くなった。猛烈な睡魔に襲われる。近くの気に手をつき、必死で解毒の呪文を唱えた。しかしどうにも集中力が高まらず、さらに立て続けに粉が振りかけられる。
足元がふらつく。手から剣が滑り落ちた。地面に当たって……ああ、いかん、刃こぼれする。
拾わなければ。……駄目だ。立っていられない。
崩れかけた体を魔物に抱きとめられる。その瞬間、すっと力が抜けていった。
「お一人様ご案な〜い」
………
……
…
紅茶の香りが鼻をくすぐる。 暖かい日差しの中、テーブルの上に木製の皿が並んでいた。クッキーや色とりどりの砂糖菓子、干した果物などが載せられ、甘い匂いを漂わせている。テーブル自体も木の良い香りがして、座っている椅子のクッションと相まって非常に良い気分だ。まるで上質なベッドで半分まどろんでいるかのような、夢と現の境目にいるような、不思議な状態だ。
ぼんやりとした頭で、ここがどこなのか考える。まず、目の前にいる美しい女性は誰なのだろうか。歳は二十前後だろう、淡い緑色の燕尾服を着て、鍔広の帽子をかぶった男装の麗人だ。男装、と言っても服装がそうなだけで、大変女らしい人だ。金を糸に紡いだような髪がふんわりと緩やかに巻いており、そよ風で微かに揺れている。赤い大きな瞳、微笑を浮かべた口元、そして豊かな胸。服の上からでも分かる、というより服自体が体のラインにぴったりと合っているようで、その柔らかそうな膨らみが自己主張していた。
優雅な手つきで、彼女はティーポットを取った。白磁のカップへゆっくりと中身を注ぐと、良い香りが湯気に乗り、一際濃く漂った。以前飲んだことがあるルルゼ茶だと分かったが、それ以上のことに考えが及ばない。
舞踊のような手の動きを見ていると、彼女は私へにこやかな笑みをくれた。胸がドキリと高鳴る。
「こちらへ」
柔らかな日差しに似合う優しい声と共に、麗人は私を手招きした。頭はぼんやりとしていたが、体は軽快に椅子から立ち上がった。近くへ寄ると、胸の大きさが尚更強調される。彼女も私に歩み寄り、胸と胸が触れ合い、互いの息がかかるくらいに近寄った。
麗人の白い手が私の下腹部……否、股間を優しく撫でた。そういえば私は全裸ということに今気づいた。女性の優しい愛撫を受け、菓子の香り並みに甘い感覚が広がる。さらに麗人はその赤い瞳で私の目を覗き込み、股間のものをそっと握り、柔らかく愛撫してくれた。すべすべとしたその手で、小動物の毛並みを愛でるかのように、優しく、丁寧に。
「気持ちいいですか？」
手の中でむっくりと膨らむそれを見ながら、彼女はにっこり微笑んで尋ねてくる。気持ちいいです、と答えると、今度は空いている左手でミルクポットを取った。それを棒の先へ持ってくると、愛撫の手を早める。
込み上げてくるのが分かった。だがこのままではミルクポットを、この麗人の持ち物を汚してしまうことになる。すでに先端から垂れた雫が、白磁の器に溢れていた。不安になる私に、麗人を頬を寄せてくる。艶かしい吐息が耳にかかった。
「どうぞ、出してください。新鮮なミルクをいただきたいのです」
囁かれた瞬間、体がピクンと震える。その途端堰を切ったかのように、私のそれは脈打ちを始めた。白くて濃い物、本来生殖のために出す体液が、どろどろと迸っていく。白濁を女性の手に握られて排出する、その気持ち良さ。脚から力が抜けそうだった。しかし彼女がこれを欲しがっているのだからと、しっかりと立ったまま、全てミルクポットへ射精した。
どくどく、どくどくと長く脈打ちが続いた。それが止まったとき、白磁の中は粘ついた精液で一杯になっていた。麗人はそれを紅茶の中にいくらか入れると、ティースプーンでかき混ぜる。カップの中で白い粘液が渦を巻き、澄んでいた紅茶が濁っていく。
嬉しそうに微笑み、彼女は湯気を立てる紅茶を口にした。その美しい横顔を見ながら、私の出した物が彼女の口へ入り、喉を通って体内へ下っていくところを想像する。股間のモノがまた、下から上へと頭をもたげた。
「……貴方のミルク、とても美味しいのですね」
小さな唇がカップの縁から離れ、最初に出てきた言葉はそれだった。自分の出した物を美味しいと言われ、不思議な興奮がこみ上げる。その一方で何かとんでもなく背徳的なことをしているような気分も湧き、それが何故かとても気持ちよくも思える。この麗人に裸を見られていることにも、得体の知れない開放感があった。見られているというよりむしろ、観察されているようだ。性器だけではなく、赤い瞳で体中をじっくりと調べられている。その眼差しに体がぞくりと震えた。
麗人はその視線を私の目に向け、にこりと笑った。私のことを知っている、というような目だ。
「コムラン・キーグ先生ですよね。フロカニア鉄鉱山についての論文、拝読いたしました」
「え……ああ」
去年、私が魔力研究機関に提出した論文だ。地面の魔力を辿って鉱脈を探す計画について書いたものだ。
「あの魔力の交差地点についての考察は素晴らしかったです。特に古代遺跡への干渉については大変楽しく読ませていただきました」
「ああ、あの件は私の考え通りでしたね。ただ予想よりも遥かに規模が大きかったわけですが……」
会話をしながら、ようやく自分が何者なのか思い出せた気がした。私は魔力研究者で、確か消滅した村の調査をしていたのだ。それが何故こんなところにいるのだろう。そもそもここはどこなのか。
思い出そうとしていると、不意に胸に柔らかな感触を覚えた。
「ふふ、自己紹介がまだでしたね」
豊満な胸を私に押し当て、こちらの腰に手を回しながら、麗人は笑いかける。甘い吐息が顔にかかった。
「私はフレイナータ・シュティレオ。魔法の農業利用を研究しております」
「ああ、お名前は聞いております。確かルルゼ・ヴィレッジで研究を……」
言いかけて、思い出した。私はルルゼ・ヴィレッジの調査をしていたのだ。脳内で情報が倒錯している。村の消えた、何もない土地。突然現れた猫。股間に柔らかい胸が当たる。
「……え？」
胸が股間に当たっていた。彼女の豊満な、柔らかな、美しい胸が。服の生地越しに、私の張り詰めた股間に密着している。いや、この柔らかさは生地なのだろうか。まるで彼女の体そのもののような……。
「な。何を？」
「ふふ。せっかく憧れの方にお会いできたのですもの。ご奉仕しなくては」
あくまでも上品な笑みを浮かべ、フレイナータは私の腰に手を回す。むにぃっ、と豊乳が股間を圧迫した。そのまま彼女が体を上下させる。すると柔らかな胸も上下し、谷間に挟まれた男根が擦りあげられる。そのとき、私は彼女の服の正体に気づいた。艶めかしく竿に絡みついてくる感触はやはり、布ではない。より粘性・弾性があり、本来不定形の物体。
菌糸だ。菌糸でできた服を着ているのだ。しかも所々には赤や青のキノコが生え、それどころかフレイナータの帽子でさえ巨大なキノコの傘だった。私と会ったときからずっとそうだった。気づかなかったのではない、気にしていなかったのだ。異様な光景なのに、それがまるで自然なことのように認識されていた。
「魔……物……」
「はい。ルルゼ・ヴィレッジが不思議の国の一部になったので、私はマッドハッターという魔物にしていただきまして」
胸と菌糸で男根を刺激しつつ、彼女は自分の指先を舐めた。その手を再び私の腰へと回し……臀部の谷間へ滑り込ませてくる。唾液に濡れた指先が肛門に触れ、体が一瞬痙攣した。そのままそこをくすぐるように刺激してくる。感じたことのない感覚だった。だが棒を挟む胸の柔らかさと温かさ、菌糸の艶かしさと合わさり、快感が増していく。
「コムラン先生、ここでは正気は許されません」
フィオレータは上目遣いにこちらを見つめ……より強く、胸で股間を圧迫してきた。体の中が切なく疼く。
菌糸の服がどろりと溶け、私の物に絡みつき始める。それに伴い、フィオレータの美しい胸が露わになった。白く、丸い二つの山。それがむにゅ、むにゅっと形を変えながら、菌糸に包まれた竿を擦りあげてくるのだ。
「さあ、早く……」
彼女の口から、言葉と共に唾液がどろりと垂れた。否、これも菌糸だった。胸の谷間に入り込み、男根の先端に纏わりついて蠢く。それだけではない、菌糸が鈴口を通って、竿の内側へ侵入してくるのだ。異物感を覚えたが、すぐにそれが快楽に変わってしまう。内側から菌糸が浸透し、神経を優しく刺激してくるかのようだ。
フィオレータがキノコの魔物だというのなら、この菌糸も彼女の一部ということになる。妖女に体の内外から犯されて、自分の中で何かが壊れていく気がした。自分とフィオレータの境目が徐々になくなっていくような、自分も狂気の一つになっていくような……。
私の様子を見て、フィオレータがにこやかな笑みを浮かべる。私の肛門に唾を塗りつけながら。帽子の影の下、その赤い瞳の中で、何か蠱惑的なものが渦巻いていた。
自然と笑顔を返してしまったとき、私は達していた。菌糸が染み込んで、胸の谷間で膨張したそれから、溜まった物がどくどくと放出されていく。敏感になった男根の中を勢い良く迸り、焼け付くような快感に声が漏れてしまう。
柔らかな乳房で迸った白濁液は、その谷間に白い池を作った。しかし止めどなく溢れる湧き水の如く、迸りは止まらない。豊満な胸もついにそれを谷間へ溜め切れず、白い肌を伝って溢れていく。
「もっと、もっと、もっと……♥」
催眠的に口ずさみながら、フィオレータは胸を揺り動かす。私はそれに逆らうことなく、快楽の沼に揺蕩っていった……
………
……
…
ルルゼ・ヴィレッジの紅茶は人間だけでなく、魔物からも珍重されていた。特に不思議の国の支配者……私の今の主君ということになるハートの女王様はこの味を大いに気に入り、ルルゼの土地を手に入れたいと考えたらしい。その結果、村を住民や畑ごと元の世界から削り取り、不思議の国へ組み込んでしまったそうだ。リリムと言えどこのような真似はなかなかできないらしいが、女王様には世界中を旅している妹が居り、彼女が知恵を貸したという。
そこへノコノコと調査へやってきた私もまた、新しくなったルルゼ・ヴィレッジで幸せに暮らしていた。
「おはようございまーす！」
茶畑で働く子供たちが、我々に挨拶する。人間の男の子も居り、挨拶をする間もアリスやマーチヘアの子に股間を弄られ、白濁をこぼしていた。
「んッ♥ おはよ、ぅ♥ 今日も、あッ♥ 頑張りましょう、ね」
フィオレータは嬌声混じりの挨拶を返すが、彼女の乳房をしゃぶるのに忙しい私はまともな言葉を返せない。薄桃色の乳首を吸うと、乳液状に蕩けた菌糸が溢れてくる。とても甘いその味は彼女そのものだ。それを口から摂取して体に取り込みながら、男根を撫でさする彼女の手で射精する。下には巨大なミルクポットが置かれていて、出した白濁は全てそこへ溜まっていた。フィオレータもまた、乳首への刺激が気持ちいいらしい。子供達の前で彼女に精液を抜き取ってもらうのも良いものだ。
「今作ってる、んぅ、お茶はぁ♥ ルージュ・シティへ輸出する、ひゃ♥ 大事なものですから、ねっ♥」
「はーい！」
元気よく返事をし、子供たちが茶葉を摘み始める。フィオレータは私を優しく抱きかかえ、立ち上がった。今の私はあの子供たちと同じか、もっと幼いくらいの子供の体である。魔物とはいえ女性であるフィオレータが、授乳と手淫をしながら軽々と抱き上げられるくらいの大きさだ。不思議の国の魔法の菓子を食べたためである。子供の体の方が魔力に敏感なので、魔力感知の仕事がやりやすい。魔力が畑に与えている影響を調べるのが私の仕事だ。
しかし問題もある。それは股間にフィオレータの菌糸が寄生しているせいで、性器と睾丸が大人のそれより一回り大きいくらいに肥大しているのだ。子供の体で股間だけそれでは大変歩きづらい。とはいえ結局のところ、この問題はもはや問題とは言えない問題であり、私が一人で仕事をするのであれば大いに問題となるが、いつもフィオレータに抱かれて移動する以上問題にはならない。
乳房から口を離し、杖を手にして地面の魔力を図る。フィオレータは始終私を優しく抱きかかえ、後頭部に当たる豊満な胸が心地よい。
「コムランさん、フィオレータさん、おはようございます」
「あら、おはよう」
「やあ。おはよう」
畑の近くでケルドの愛犬が、ケルドを散歩させていた。ケルドはリードを愛犬に握られ、ふさふさ尻尾を振りながら楽しそうに歩いている。愛犬の方は二本足で歩くことにすっかり慣れたようで、軽い足取りだ。
このように、知人たちも楽しい不思議の国で楽しい不思議の国の住人らしく、楽しい不思議の国を楽しみながら楽しく暮らしているのだ。あのチェシャ猫という魔物に頼み、故郷にいる家族も連れてきてもらった。妹などは一日中愛液を垂れ流し、弟はそれに抱かれ続けている。良いことだ。
「この辺りに魔力を注ぐのが良さそうです」
「そうですか。では早速始めましょう」
フィオレータは私の示した場所に、ゆっくりと私を下ろして寝かせた。股間の物は上を向いたままだ。
彼女はうやうやしくお辞儀をして、その上にまたがる。燕尾服のパンツがどろりと溶け落ち、白い肌と割れ目が露わになった。すでに潤滑液が滴る割れ目は僅かに口を開け、中の桃色が見えた。
ゆっくりと、腰を沈めていくフィオレータ。その膣はいやらしく広がりながら、肥大した男根を飲み込んでいく。中はとても温かく、甘い締め付けが私を悦ばせる。ねっとりと絡む愛液と膣内のヒダが、狂おしく刺激してきた。
「あっ……！」
思わず声を出し、半分ほど入ったところで射精してしまった。子宮へ至路の途中で白濁液を放ってしまい、結合部へ垂れてくる。その瞬間、フィオレータも身を震わせた。
「アッ、ふあぁぁ♥」
悦びの声を上げ、彼女の股間から潮と尿が吹き出した。ちょろちょろと音を立てながら、フィオレータの膣はきゅうきゅうと締まる。彼女も絶頂してしまったのだ。不思議の国はハートの女王の気まぐれでコロコロと環境が変わり、住人の体調も変動する。今日は膣内射精に敏感になる日のようだ。
絶頂を愉しみながらも、フィオレータはしっかりと男根を根元まで加えこんだ。そして一心不乱に、腰を使う。悩ましい締め付けと絡みつきに、その動きが加わった。
「んっ、はぁ♥ コムラン、せんせぇ……あ、あっ♥」
「フィオレータ、さんっ……きもちいい……！」
敏感にされた男根はすぐ絶頂を迎え、彼女もまた何度も何度も絶頂し、何度も何度も魔力を含んだ潮を吹き、何度も何度もそれを大地へ吸収させる。こうやって土地の魔力を調節し、豊かな収穫を得るという合理的な農法だ。
本当は皆分かっている、教団的にはこれが反道徳的だということも、不自然だということも。だがそんなことは誰も気にしないし、気にしたとしてもその不自然さが快楽を引き立てるだけだった。
不思議の国。ここで正気は許されない。
ーfinー
16/03/05 07:19更新 / 空き缶号