後編
メリッサの治療のお陰で、俺の傷はすでに癒着した。それでも剣術などの激しい運動は控えるようにと言われているが、普通に生活する分には全く問題ない。つくづく彼女には感謝しなくてはならない。もちろん窮地を救ってくれたヅギや、その仲間たちにもだ。
つい最近まで教団の側にいた俺でも、病院の中を自由に歩き回ることを許されている。昨日までは監視の目を感じることもあったが、それもなくなった。知り合った医者や患者と挨拶を交わしつつ、目的地の病室へ到着した。
ドアをノックすると、すぐに「どうぞ」という返事が返ってきた。メリッサの声だ。
まだ新しいそのドアを開けると、魔法陣の描かれた病室には二人のダークスライムがいた。一人はメリッサ、もう一人はくりくりした目の、小生意気そうな少女の形をしたスライム……生まれ変わった、俺の妹である。
「……マナ、ヴィンデンだ。分かるか?」
ゆっくりと問いかける。マナは粘液でできた目で、じっと俺を見つめていた。
「いきなり何言ってるの? 兄の顔を忘れるわけないでしょ。兄さんこそメリッサ先生に、脳の検査でもしてもらったら?」
……久しぶりに聞いた妹の声は、以前通りの生意気なものだった。
安堵混じりの苦笑が溢れる。やっぱりヅギの言ったことは正しかった。例え魔物になっても、紫色の粘液でできた体になっても、マナの根本的なところは変わっていない。俺の決断も一先ず、正しかったと言えるのかもしれない。少なくとも、目的は達成できた。
「ちょっと、兄さん」
ずいっと、マナは近寄ってくる。
「せっかく呪いが解けたのに、何よその顔。ここはぎゅって抱きしめたりするところじゃないの?」
そう言って、俺に体を擦り寄せる妹。口を尖らせた表情を見て、彼女の思っていることが何となく想像できた。
俺にできることは一つだ。ダークスライムとなったマナの体をそっと抱き寄せ、しっかりと抱擁する。メリッサと同じスライムの体はひんやりとしていて、それでいて心臓の鼓動に似た微かな脈打ちがあった。生あるものであることを感じさせる微細な動きが。
マナもそれを受け入れ、ゆったりと俺の背中に手を回してくる。腕の中で俺を見上げ、微笑んでいた。
「……何となくだけど、覚えてるよ。兄さんが一生懸命、私を守ってくれたこと」
少し背伸びして、マナは言った。目線が同じ位置へ来る。幽閉されていた彼女の意思は解き放たれた。感情が戻った。それが何よりも嬉しい。
よかった……そう言おうとしたとき。
「んっ♥」
「っ……!?」
突然だった。マナに唇を奪われたのだ。子供の頃に遊びでしたのとは違う、舌まで使った濃厚なキスを。
驚いて引きはがそうとしたとき、口の中に押し入ってきたそれが舌ではないことに気づいた。とても甘い、ぷるぷるとしたゼリーを口移しで食べさせられている。それを次々と押し込まれ、喉が勝手に嚥下していく。
この味には覚えがあった。メリッサに食べさせられた、彼女の体の一部である。
ひとしきり飲み込まされた後、マナはゆっくりと口を離した。
「メリッサ先生、食べさせたよ!」
「よくできましたね。じゃあヴィンデンさんは……こっちに!」
メリッサの体が広がり、俺の体に絡み付いてくる。次の瞬間には完全に抱き上げられ、ベッドの上に乗せられた。そのまま粘液が指先のように器用に動き、俺の服を脱がせてくる。
「な、何をする気なんだ!?」
「マナさんのリハビリのためです。とっても気持ちいいですよー」
その言葉で、何をされるのか察しがつく自分が悲しかった。彼女の「気持ちいいですよ」発言は大抵、診察と称して淫らな行為をするという宣言なのだ。
メリッサのことは愛している。だが今回は状況が違う。妹の目の前で裸に剥かれてそういう『医療行為』をされるのだ。だが脱出しようと藻掻いたとき、すでに下着まで脱がされ、股間が露出してしまっていた。
「に、兄さんの……お、おち……おちん……」
マナにそこを凝視されている。自分でも驚いたことに、いつのまにか完全に勃起していた。極限まで怒張してしまっている。先ほど食べさせられたスライムのせいか。むしろそうだと思いたい。でなければ妹の前で脱がされて興奮したことになってしまう。
だが焦る俺を他所に、マナは目を見開いてそれを見つめていた。顔が亀頭に触れそうなくらい、間近から。まるで発情した獣のように。
「ま、マナ……むぐっ!?」
口にメリッサの指が押し込まれた。出そうとした声を封じられてしまう。
「それじゃあマナさん。お兄さんのおちんちんから精をもらう練習をしましょうね。これは魔物にとって、とても大事なことなんですよー」
「うんっ! 兄さんのためにも、立派な魔物になれるように……私、頑張ります!」
息を荒げ、マナがベッドに上がってくる。スライムが呼吸をするということ以前に、まさか、と思った。メリッサはマナのリハビリと言ったが、もしやメリッサではなくマナに、実の妹にこれから犯されるというのか。
そんなことは駄目だ。教団の教えなどとは関係なしに、あまりにも非道徳的すぎる。普通ならそう思うだろう。
「ふふっ、どうしたの兄さん。欲情してるの?」
それなのに何故か、俺はそれを受け入れられそうな気がしていた。むしろ、あってはならないその現象を渇望さえしている自分がいる。そそり立った俺のペニスがマナに包み込まれ、メリッサがしてくれるように精液を搾り取られることを。これもスライム体を食べさせられたせいか。メリッサのときもその乳房を食べさせられた後、猛烈に彼女が欲しくなった。今俺は近親相姦などということを関係なしに、マナを欲しているのだ。
マナにもきっと、それが分かっているのだろう。獲物を見つけた肉食獣のごとく貪欲な、それでいて小悪魔めいた目で俺を見ていた。
「ん……でも」
マナは急にもじもじとしながら目を細め、視線を下に向けた。
「ココから挿れるのは……ちょっと恥ずかしい、かな……」
スライムでできた体も、人間の女の形を再現している。マナが腰を降ろせばその股間部分……人間で言えば女性器のある所へ、ペニスは包み込まれるだろう。騎乗位でのセックスと同じ体勢になるわけだ。だが魔物として発情していても、人間のメンタリティが残っているようだ。少女らしい恥じらいの表情を浮かべている。
そんな妹に、女医メリッサが優しくアドバイスをした。
「それなら恥ずかしくないところで練習しましょう。お口や……あっ、おへそもいいですね」
「おへそ……」
マナは指先で自分の腹部を撫でる。ダークスライムの体にもへそが窪みとして再現されているのだ。そう言えば町で露出度の高い格好をしているハーピーを何度か見かけたが、卵から生まれる魔物なのに何故かへそがあった。一体魔物にとってへそとは何なのか。
妙な方向へ思考が行きかけた俺の前で、マナがにんまりと笑っていた。人間だったころの生意気さと、あの頃にはなかった妖艶さが混じった笑顔で。
「それじゃあ兄さん……妹の体でボッキしちゃう変態おちんちん、おへその中でお仕置きしてあげる!」
宣言するなり、マナは可愛らしいへそを亀頭に押当ててきた。スライムのぷるぷるした感触がフィットし、それだけでも敏感に快楽を感じてしまう。さらにそのまま体重をかけ、お腹の中へ俺のペニスを……
「んっ……えいっ!」
可愛らしいかけ声と共に、つるんと飲み込んでしまった。
口はメリッサの指に塞がれ、声は出ない。もし口が聞けたなら、その感触に喘いでいただろう。流体がペニスにまとわりつき、くすぐるように刺激してくる快感。水圧によってみっちりと竿を握りしめてくる快感。どちらもたまらない気持ち良さだった。それに加え背中はメリッサに支えられ、柔らかなダークスライム二人に上下から挟まれているのだ。
そしてマナは俺の胸に抱きつき、蕩けるような笑みを浮かべている。
「あはぁ……兄さんのおちんちんが、お腹の中にぃ……♥」
「ふふ。お腹の中で舌や粒を作って、おちんちんを気持ちよくしてあげましょうね」
「はいっ」
メリッサのレクチャーに従い、マナは貪欲に精液を搾り取ろうとする。彼女の体内で粘液がうねりながら、その感触を変え始めた。メリッサの手の中でスライムの舌に舐められたように、スライム体は自在に形を変える。
たちまちペニスのくすぐったさが倍増した。弾力に富んだ突起がいくつも生じ、みっちりとペニスに絡み付いてくる。それが次第に細かくなり、竿部分に密着して蠢いているのだ。そして亀頭には舌がまとわりつき、絶え間なく刺激を与えてくる。
教団の下にいたときは汚れなど知らなかった妹。魔物になった途端、実の兄相手にこんなことをして、それがどういうことか分かっているのだろうか。魔物化した今となっては普通のことなのか。
それとも人間だった頃から、心の奥底で望んでいたのか……
「上手ですよー。それじゃあ、コアをおちんちんの先にくっつけてみてください」
「えっと……こう?」
透き通った体の中で、マナの本体たるスライムコアがゆっくりと動き始めた。胸の位置から腹部まで降りてきて、亀頭の先端へ触れる。
「ひゃああぅぅん♥」
突然、嬌声と共にマナの体が大きく痙攣した。流体の体がぶるぶる震え、それが刺激となって俺に伝わる。体にまとわりつく粘体が全身をくすぐってくる。ペニスを刺激していた粒が、スライム舌が、渦巻くように暴れ出す。
気が狂うような快感。口は塞がれていても、代わりにペニスが激しく脈打ち、悲鳴を上げた。
ごぽっ、と音を立てて、透き通った紫の体に白濁を放出する。
「んきゃぁっ♥ で、出てるっ♥ 兄さんの、あつ、熱いのぉっ♥」
妹が乱れ、喘ぎ、俺にしがみつく。気づけば俺もマナの体を強く抱きしめていた。背中からメリッサに抱かれ、腕の中にマナを抱きながら、彼女の、妹の体内へ射精し続けていた。
射精など一瞬の快楽のはずなのに、何秒も続いているように感じた。
妹の体に射精している。
妹と交わっている。
取り澄ました顔の小生意気な妹だったマナが、俺のペニスをへそで飲み込み、しゃぶり、射精されて喜んでいる。
背徳ももはや興奮材料でしかなかった。どんな過酷な戦場でも強姦だけはしなかったし、部下たちにもさせなかった。その俺が妹と性的な関わりを持ち、それを楽しんでいる。食べさせられたスライムのせいで、俺の心も溶かされているのかもしれない。彼女たちの体のように。
甘い快感が長く続き、スライムの揺りかごの中でそれに酔いしれていた。マナの体の中に俺の白濁が漂っているのを、ぼんやりと見つめる。
「んはぁ……♥ いっぱぁい……♥」
「ふふっ、一杯ぴゅっぴゅしてもらえましたねー」
口からメリッサの指が抜かれた。途端に息と喘ぎ声を漏らしてしまう。そんな俺をマナはうっとりと見つめ、再びキスをしてきた。唇だけではない、耳にもメリッサがキスしてくる。
口腔と耳の穴、二カ所をスライムにしゃぶられる。不思議な、甘ったるい気持ち良さだった。股間に再び血が集まっていくのを感じる。
ちゅるん、と音を立てて、メリッサが耳から口を離した。
「コアに触ってもらうと気持ちいいでしょう。そうやって自分も楽しみながら、精液を搾ってあげるんですよー」
「はい……♥」
頬の緩んだ表情で、マナはゆっくりと起き上がった。へそからペニスが抜け、ひんやりとした空気を感じる。
だがそれも、束の間。
「兄さぁん……♥」
最初に「恥ずかしい」と言っていた所、つまり股間部をペニスに近づけてくる。いわゆる騎上位の体勢。再び興奮が湧き起こる。スライムの体は何処からでも男性器を受け入れられるのだろうが、性器の部分で結合するというのはより一層、性的な交わりという実感を強くした。
マナも同じ心持ちなのか、蕩け切った笑顔に興奮の色が見える。股間からたらりと流れるスライム体の一部が、あたかも愛液であるかのように見えた。
「せっくす……兄さんと、セックスしたいよぉ……♥」
甘ったるい声でせがまれ、いよいよ俺の獣欲も最高潮に達した。もう妹との性交に何の躊躇いもなかった。あるのはそれを欲している、性欲だけ。
「さあヴィンデンさん。もっとマナさんに、気持ちいいお注射してあげましょうね♥」
メリッサの指が口から引き抜かれ、拘束が解かれる。俺は腹筋で起き上がり、マナの華奢な体を抱きしめた。
そして、腰を突き上げる。
「きゃっはぁぁん♥」
嬌声を上げ、マナの体が仰け反った。股間部を結合し、ペニスの先端は彼女のコアを突き上げていた。マナが快感に身を震わせ、ぷるぷるのスライム体がその震動をペニスへ伝えてくる。
たちまちスライムの中に粒や舌が生じ、蠢き始める。そのくすぐったり気持ち良さに突き動かされ、自然と腰が上下し始めた。下から突き上げる度、亀頭にコアが接触する。
「ひゃぁぁんっ♥ すごぃ……兄さぁん……♥ ふあぁんっ♥」
マナも俺にしがみつき、体全体を揺り動かして快楽だけを求めている。それ以外に何も考えず、兄妹で互いの体を貪った。
食べさせられたスライムゼリーの効果か、あるいは心理的な作用か、ペニスはどんどん敏感になっていき、あっという間に高まってしまう。男のプライドやら、我慢しようという考えすらもない。
「お……お……ぉ……!」
声にならない声と共に、たちまちマナの体内に白濁が放出してしまう。
「んぁっ、出たぁ! また、またせーえき注射されちゃったぁ……♥ 兄さんっ……♥」
また、妹に唇を奪われた。口移してスライムを食べさせられる。濃厚な甘さを楽しまされ、それだけでペニスの硬さは保たれる。射精している間もずっと、俺たちは腰を動かしていた。
亀頭に当たるコアは弾力があり、突き上げる度に弾むように上下する。そしてその都度、マナは体を震わせて喘ぐのだ。
さらにメリッサが、後ろから抱きついてくる。柔らかなダークスライムに再び前後から挟まれ、全身が蕩けていくような快感を覚えた。
「ちゅるゅっ……あむっ……♥ にい、さん……もう……」
小振りな粘液の乳房を俺の胸板に擦り付けながら、マナは懇願するような目でじっと俺を見つめていた。淫らに蕩け切った表情とは違い、以前にも見覚えのある顔だった。呪われる前の小生意気な姿とはかけ離れたものだが、確かに見たことがある。
「もう……どこにも……行かないで……」
スライム体の目尻が少し溶けかけたその表情は、あたかも涙を流しているかのようだった。
ああ、そうか。
これは辺境へ左遷される俺を、見送ってくれたときの顔だ。
マナは俺が勇者候補生から外されたとき、そのことを心から悲しんでくれていた。無鉄砲に振る舞い、上官に楯突くことも日常茶飯事だった俺をいつも心配し、ときには諌めていたのもマナだった。
その後俺は辺境の戦場で過酷な戦いを続け、マナはエリートとして教育を受けた。そのために溝ができた後でも、本心では俺を心配してくれていたのかもしれない。だから口うるさく、俺に神の教えを説いたのだ。現実の悲惨さを見てしまった俺を、教団の『正しい道』へ引き戻そうと。俺を救おうと。
――心の根底にあるものは簡単には変わらない――
ヅギの言葉が、脳内に思い浮かんだ。
「……マナ」
妹の頭を撫で、ゆっくりと語りかける。快楽に酔ったまま、辛うじて言葉を紡げた。
「これからは……三人、ずっと、一緒だ」
「本当……?」
「そうですよ、マナさん」
微笑みながら、メリッサがマナの横へ這い出た。紫色の大きな乳房を揺らし、マナの華奢な肩に腕を回す。こうして見ると姉妹のようだ。
「私たち『三人』、これからずっと一つですからね。……こんな風にっ♥」
ふいに、ぐちょぐちょと卑猥な音が病室に響く。
予想外の光景が目の前に広がっていた。メリッサとマナ、二人のダークスライムの下半身が密着したかと思うと、その境目がなくなった。スライムの体が混ざり合い、融合し始めたのだ。
「ふぁぁっ♥ す、すごぉい……メリッサ先生が、混ざってくるぅ……♥」
「んっ♥ あんっ、感じる……ヴィンデンさんの、おちんちん……♥」
「ああっ……ううっ!」
下半身を融合させ、二人掛かりでペニスを味わうメリッサとマナ。スライムが混ざり合う水流が竿を刺激し、多数の舌がペニスを舐め回してくる。俺はただ喘ぐしかなかった。手足を縛られて荒波の中へ放り出されたように、ひたすら快感の波に押し流されている。
二つのスライムコアがペニスに接触し、その度に彼女たちも大きく喘いだ。凄まじい勢いでペニスが脈打つ。
「んあぁぁっ♥ また、また出たぁっ……♥」
「ふあぁぁぁぁん♥ あはぁっ♥ 三回目なのに、ヴィンデンさんの、凄い濃いですぅっ♥」
同じ快感を共有し、二人は嬌声を上げる。ごぽごぽと音を立てて迸った精液は、二つに別れてそれぞれのコアへと漂っていった。
スライムの暴虐は絶え間なく続く。マナもきっと、この気の狂いそうな快楽を味わいながら魔物になったのだろう。俺も今、心はおろか体さえ蕩けていくような錯覚を感じていた。
「ヴィンデンさん、あーん♥」
メリッサが乳房を口に押し付けてきた。遠慮なくそれを齧り、スライム体を摂取する。癖になる濃厚な甘さを感じる度、自分がもう彼女たちから離れない体になったのを実感する。
それで本望だ。
俺と、マナと、メリッサ。これからはずっと、ずっと一つなのだから。
スライムに包み込まれながら何度でも勃起するペニスを、二人は愛おしそうな笑顔で見つめた。そして揃って、俺に顔を近づけてくる。スライムの唇と舌でねっとりとキスをされ、俺も舌を出して彼女たちに応える。
玉袋や肛門までスライムに愛撫され、俺は完全に彼女たちに身を任せた。
確かな喜びを胸に抱きながら。
彼女たちと共に、新たな人生を歩む決意を持って。
――fin
14/12/13 18:27更新 / 空き缶号
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