連載小説
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後編
 古びた作法室のドアを前に、僕は手の中にある瓶を見つめた。トリコミンH。刑部狸の扱う商品に間違いはないと言うし、里原さんは友達を騙すようなことはしないだろう。とはいえいざ飲むとなると、少し躊躇してしまう。
 成海さんに襲われるのが怖いのか、こういう手を使うのが卑怯に思えるのか、自分でも分からない。ただ一つ確かなのは、今日やらなければ後悔するだろうということだ。

 古い旧校舎の臭いを吸い込んで、吐き出す。意を決して蓋を開け、中身を一気に口に放り込んだ。

「……うえっ!」

 飲み干した後の第一声はそれだった。不味くはないがとにかく甘かった。普通の栄養ドリンクのあの味に甘さをこれでもかというくらい足した、とてつもなく濃厚な甘さだ。少しずつ味わって飲もうものなら舌がバカになっていたかもしれない。
 飲んだからといって僕自身の体に異変はなかった。成海さんに会わなければ効能を知ることはできないだろう。

 そっとドアを開け、僕は作法室に足を踏み入れた。

「成海さん」

 襖の向こうへ呼びかけると、いつものように彼女はその隙間から手を差し出してきた。白くてすらりとした、僕の好きな手だ。

 上履きを脱いで畳みの上へ上がり、僕もいつものように座って、その手を握る。だがその瞬間、いつもと違うことが起きた。
 右手をぐいっと引っ張られ、何か柔らかい物に掌がぶつかった。布の感触と、その下の柔らかな感触に、右手が押し付けられていた。襟やボタンらしきものにも指が触れる。その下でふっくらと盛り上がった、柔らかいもの。ほのかに温もりのあるそれは、どう考えても成海さんの体だった。

「ふふっ、沢渡くーん……」

 彼女の声はいつもより楽しげで、人懐っこい。

「どう? 私の胸……もっと触って」

 制服の上からでも分かる、豊かなふくらみの蕩けるような柔らかさ。それに指先が押し付けられ、強制的に揉まされる。初めて触った女の子の胸に酔いしれ、僕は言葉を失った。しかもそれが成海さんの胸というだけで興奮し、いつの間にか自分で手を動かしてそれを揉んでいた。掌から少し溢れそうなほどの、ボリュームのある胸だった。いつまでも飽きずに揉んでいたくなるような、幸せな柔らかさである。
 服の上からでこれなら、直接触れることができれば。すべすべした肌を直に撫でることができればどれだけ気持ちいいのだろうか。

「男子って、おっぱい好きよね……♥ メドゥーサの私が怖いくせに、おっぱいに触れて嬉しいんでしょ?」

 からかうような口調で成海さんは言う。顔から火が出そうだ。恥ずかしい。それでも、彼女の胸を揉むのが止められない。

「それに、このニオイ」

 ふいに、ぬめりを帯びたものが手の甲に這った。ぞくりと体が震える。嫌悪感からではない。むしろ不思議と、たまらなく気持ちよかった。
 成海さんはそのまま僕の手を舐め、キスをしてきた。ぷるぷるの唇や、熱い吐息に目眩さえ感じる。たかが手を舐められているだけなのに、何故こんなに気持ちいいのか。

「虜の果実を食べて魔物に会いに来るなんて……ふふ。気を失うまで犯されても文句言えないのよ?」

 少し意地悪に笑い、成海さんは僕の右手を味わい続ける。彼女の舌が這い回り、唾液が塗りたくられ、右手はいつの間にか動かなくなってしまった。左手と同じく、蛇の毒を受けたかのように。違うのは痛みがなく、ただひたすら気持ちいいことだ。

「ぼ、僕は、成海さんと、もっと……近づきたくて……」

 快感に比例して心拍数は高まる。興奮を堪えて堪えて、やっと口から言葉を出せた。
 襖の向こうから返ってきたのはくすくすという笑い声だった。舌の攻撃が止み、唾液まみれにされた右手にひんやりした空気が当たる。

「あんた、勃起してるの?」

 ギクリという効果音が聞こえそうだった。仕方ないじゃないか。いきなり好きな女の子が胸を揉ませてくれたら、しかも手をこんなにいやらしく舐められたら、興奮が股間に集中するのは当然だ。

「ん、ちゅ……ねぇ? してるんでしょ?」
「してる……してます……!」

 手の甲にキスをされ、僕は必死で答えた。痛いほどに勃起したペニスがズボンを押し上げ、先走りが染み出してきている。もしかしたらあのドリンク剤には、男の精力を増強する効果もあったのかもしれない。今すぐペニスを出してしごきたいくらいだが、僕の左手は使い物にならず、右手は成海さんに拘束されて甘い拷問を受けていた。

「……襖に、穴が空いてるでしょ?」

 そう言われ、僕はボロい襖に小さな穴があることに気づいた。直系五センチもないが、成海さんのいる側と繋がっている。丁度、僕の腰の高さくらいで……。

「こっちに寄越しなさいよ。あんたのチンチン、食べたいの……♥」

 右手が解放された。
 僕の体は見えない糸で操られるかのように立ち上がり、成海さんのよだれにまみれた右手でズボンを降ろした。バネ仕掛けのように飛び出してきたペニスに手を添え、襖の穴に狙いを定める。

 向こうに成海さんがいる。そこへ男性器だけを差し出す。そのことにまた興奮を覚え、先走りの液が畳に垂れてしまう。ゆっくりと腰を進め、ペニスを根元まですっぽりと、穴へ突入れた。

「わぁ……♥」

 艶かしく、成海さんが感嘆の声を上げた。今襖の反対側では、襖からペニスがキノコのように生えていて、それを成海さんがじっと観察しているのだろう。熱い息が亀頭にかかっている。

「ふふっ、ぴくぴく動いてるのね」

 ふわりと優しい手の感触が、ペニスを包み込んだ。電気ショックを受けたかのように体全体が震える。
 ああ、あの手だ。あの奇麗な手で、一番恥ずかしい所に触れられているのだ。自分で握るのとは比べ物にならない、甘い快楽だ。しかも手の感触だけでは済まない。

「んっ♥」
「ああっ……!」

 ぷるぷるした柔らかい物が、鈴口にそっと触れた。先ほど手の甲に感じたのと同じ、柔らかくてくすぐったい感触だ。
 間違いない。成海さんの上の口が、ペニスの鈴口とキスをしている。そしてちゅるちゅると音を立てて、先走りを啜っている。

「ん……このおつゆ、美味しい……♥」

 ふいに、ペニス自体が温かい感触に包まれた。粘液がいやらしく絡みつき、くすぐったい感触が亀頭を這い回る。舌だ。
 口の中で震えるペニスを楽しむかのように、先端部分をこちょこちょと舐めてくる。一番敏感なところを集中的に責められ、たまらない快感がこみ上げてきた。

「成海さん、気持ちいい……うっ」

 恍惚に浸って口走った言葉に気を良くしたのか、成海さんは音を立てながらペニスを吸い立ててきた。ぐっと奥まで咥え込まれ、亀頭をくすぐっていた舌が竿の方まで絡み付いてくる。初めてされるフェラという行為。今まで知識として知っていて、想像していたよりもずっとエロかった。

 彼女の顔は見えず、ただいやらしい音が聞こえるのみだ。だが襖の向こうでペニスを頬張る姿を想像してしまい、ますます興奮した。あんな最悪の出会い方をした女の子に、こんなことをしてもらっているなんて。

「んぅ♥ は、ちゅ……♥ んふふっ……」

 情熱的で、活発になってくる舌の動き。きっと心の底から楽しそうに、彼女はペニスをしゃぶってくれているのだろう。
 僕は力が抜けてくる脚で何とか踏ん張りながら、こみ上げてくるそれの感覚に酔いしれた。

「あ……出そう……」
「ちゅぅ……ふふっ♥ いいわよ、出して。飲んであげるね……♥」

 そう言ったかと思うと、成海さんはペニスを咥え直し、一気に吸引してきた。玉袋の中から吸い出されるかのように、こみ上げてきたものが迸る。

「あ、あぁぁ!」

 ついに、彼女の口の中へ出してしまった。温かい口腔にどくどくと精液を注ぎ込む。今まで経験した中で一番気持ちいい射精だった。出る量も多いし、時間も妙に長い。

「んっ……んっ……んっ……♥」

 喉の鳴る音が聞こえた。飲んでくれているんだ。時々ちゅっと吸引され、残っている精液まで搾り取られる。ペニス自体が成海さんの口で蕩けそうだった。
 今どんな表情で、彼女は僕の出したものを飲んでいるのだろうか。少しつり目の、気の強そうな成海さんの顔を思い出す。あの成海さんが、今こんなに情熱的に、淫らにペニスを頬張っているなんて。襖に遮られて表情は見えないが、そのギャップが何とも情欲を誘う。

 やがて、成海さんはペニスから口を離した。唾液をふんだんにまぶされた肉棒が、ひんやりとした外気に晒される。出し尽くして、全部飲んでもらえた喜びで脚から力が抜けていく。襖の穴からペニスを抜き、畳の上にへたり込んでしまった。

「あはっ……美味しかったぁ……♥」
「僕も……気持ちよかった」

 心底幸せに、僕らはそう言い合った。
 だが、どういうことか。あれだけ出し尽くしたにも関わらず、もっと成海さんと気持ちよくなりたいと考え始めてしまう。不思議なことにペニスは全く萎えず、上を向いて甘く切なく疼いていた。

 成海さんも同じ気持ちなのだろうか……そう思った瞬間、音を立てて襖が開かれた。だがそこにいるであろう成海さんの姿を見ることはできなかった。次の瞬間に、僕は頭に布をすっぽりと被せられたのである。
 視界が暗闇に包まれた。布の中は熱気が籠っていて、何か甘酸っぱい匂いがする。

「あぁっ、沢渡くんっ」

 状況を理解する前に、布の上から頭を押さえつけられた。鼻先が何か柔らかい物が触れる。それだけで自分が今どこにいるのか把握してしまう。ねっとりと濡れて、淫らな香りを放つ「割れ目」がそこにあったのだ。

「沢渡くん、お願い。舐めて……♥」

 甘ったるい声で懇願された。いやらしい汁を垂れ流す割れ目が、女の子の一番大事なところが顔に押し付けられているのだ。むわっと鼻を突く女の香り、いや、メスの香り。成海さんはこんなにエッチだったのか。
 お願いされた通り、僕はその尊くていやらしい割れ目に舌を這わせた。

「ひゃぅぅう♥」

 可愛い声が聞こえた。彼女がこんな声を出すなんて。
 もう一回、二回と舐める。成海さんの味がする。とろとろと湧き出てくる果汁を啜り、飲み下していく。彼女が僕のを飲んでくれたように、僕もそうしてみたかったのだ。
 女の子の体から出たものを飲む……それがこんなに興奮することだとは思わなかった。頭がぼーっとしてくる。

「ふわっ、ぁぁ♥ イイよ……もっとぉ♥」

 成海さんが僕の舌で感じてくれている。思わず割れ目の後ろ……彼女のお尻に手を回して、しっかりと押さえながら割れ目を舐めた。手探りで味わう女の子のお尻は丸くて、柔らかくて、指を押し返す弾力がある。それを掌で掴み、滴る愛液を舐めていると、まるで自分が昆虫になって、美味しい果物にしゃぶりついているような気分になった。動かない左手でこの感触を味わえないのが残念だと思った。
 お尻の膨らみの下はすべすべした、でも少しざらついた、独特の感触の下半身だった。メドゥーサの蛇体だ。しかし見えないせいか、初めてのクンニに夢中なせいか、僕は恐怖を感じなかった。

 ふいに、僕の体に何かが巻き付いてきた。太くて柔らかく、ぎゅっと体を締め付けてくる何かだ。ぐるぐる巻きにされ、僕と成海さんはごろっと畳の上に横になってしまう。

「あ……ご、ごめん、巻き付いちゃったぁ……」

 蛇体で男に巻き付き、拘束する。それがラミア種の愛情表現だということくらい、僕でも知っている。

「あぅぅ……か、体が言うこと聞かない……!」

 悩ましい声で申し訳無さそうに言う彼女。僕の拘束は弱まることはなく、よりしっかりと巻き付いてくるばかりだ。虜の果実の効果に加え、フェラをして高揚した彼女は無我夢中のうちに本能に従ったのだろう。
 巨大な蛇に巻き付かれているのと同じ。もしこうなったらトラウマどころの騒ぎではなく、発狂してしまうかもしれないと思っていた。

 だが実際はそんなことはなかった。巻き付かれたとき、それが蛇の体ではなく、成海さんの体だと感じたのだ。今僕が舐めている割れ目と同じ、女の子の体だと。

 だから僕は怖くない。成海さんとくっつき合って、スカートの中という女子の聖域に閉じ込められて、幸せだから。
 それを伝えるために、もっと奥まで舌を潜り込ませる。

「ひぁぁん♥ し、舌がぁ……沢渡くんの舌がぁ……♥」

 彼女が身をよじるので、お尻をもっとしっかり押さえながら舐め続ける。顔中が成海さんの汁でべちょべちょだ。体を締め付ける下半身もうねうねと動き、全身で快感を表しているみたいだ。彼女の顔は見えなくても、どれだけ気持ちいいか伝わってくる。

「あんっぁぁ!? そ、そこぉ……♥」

 舌に豆粒のような突起が当たった瞬間、成海さんは一際大きくよがった。それが何か分かった僕は、そこを舌先で転がすように舐め続ける。

「ら、だ、らめぇ……やらぁ♥ あぅ、うぅン……♥」

 呂律が回らなくなった声を聞きながら刺激し続けると、彼女は腰を上下に揺らし、僕の顔に秘部を擦り付け始めた。まるで僕を使ってオナニーするかのように。
 きっとこのまま続けていれば、僕をスカートの中へ幽閉したまま、彼女はイってしまうのだろう。

 だが僕はそこで舐めるのを止めた。

「……沢渡、くん……?」

 成海さんも腰の動きを止め、ゆっくりとスカートをまくり上げた。新鮮な外気を感じる。
 顔を上げると、彼女もこちらを見下ろしていた。サイドテールの蛇髪にも見下ろされている。だが今度は大丈夫だった。あんなに蛇が嫌いだったのに、今は純粋にこの女の子を可愛いと思える。潤んだ瞳も、赤く色づいた頬も、口端から垂れたよだれも、甘えるように僕を抱きかかえる蛇体さえも。
 あの奇麗な手も。愛液がいやらしく滴る女性器も。全部成海さんの体なのだ。

「成海さんの、中で……出したい」
「うん、分かった……♥」

 彼女はにっこりと、優しく微笑んだ。つり目がちの強気な顔立ちの子が、こんな笑顔をするんだと感動さ覚える。そんな可愛い笑顔で、僕と僕のペニスを見下ろしている。
 奉仕している間、ペニスはずっと怒張して切なく疼いていた。僕の左手が動くなら、成海さんの割れ目を味わいながら抜くこともできただろう。だがそれができたとしても、ペニスは別のことを願っていたはずだ。今舐めている穴に入りたい、と。
 人間の肌と蛇腹の境目に、ぱっくりとピンク色の割れ目が口を開けていた。メスの香りのする汁を垂れ流し、少しずつ収縮する姿がたまらなくいやらしい。そこへ挿入し、成海さんと一つになって、一緒にイってみたい。

 成海さんは姿勢を変え、改めて拘束してきた。黒い、きらきらした目が間近にある。互いの息が顔にかかる距離で、僕の胸板に彼女の胸が密着する。先に制服の上着を脱いでいたのか、彼女はワイシャツ姿だ。薄い布越しにおっぱいの感触が密着してくる。そして股間は、彼女のあそこに押し当てられている。

「私から挿れちゃって、いいのよね……?」
「うん。お願い……」

 胸が高鳴る。僕たちはじっと見つめ合い、頬を寄せ合った。髪の蛇がすり寄ってくるのも、もう怖くない。

 成海さんが少し、腰を動かした。亀頭に柔らかい物が触れる。そして次の瞬間に、つるんとペニスが飲み込まれた。
 温かくて淫らな、肉の穴に。

「うぅぅっ!」
「んっはぁぁぁ♥」

 挿入の瞬間、僕たちは叫んだ。怒濤のような快感が襲ってきたのだ。
 彼女の穴はぐにゃぐにゃと蠢きつつペニスを迎え入れ、蛇体のようにぎゅっと締め付けてきた。疼き続けていたペニスにとって、その快感は強烈過ぎる。しかし膣は一切加減してくれず、収縮を繰り返してペニスをいじめ続ける。

「はぁっ♥ あんっ♥ イイ……このおチンチン、気持ちイイよぉっ……♥」

 成海さんも両手と下半身でしっかり僕に抱きつき、快感に身を震わせている。散々舌で舐めた後で挿入したのだから、彼女も強烈に気持ちいいはずだ。

「うぁっ、で、出ちゃうっ!」

 だが情けないことに、僕の方が先に絶頂しそうだ。魔物の女性器は凶器そのものだった。しかも大好きな子の中ともなれば、尚更。

 我慢しきれず放出しようとした瞬間、成海さんは僕とじっと目を合わせた。吸い込まれそうな黒い瞳の奥で、ボゥッと青白い光が生まれる。それに魅入った瞬間、僕の体に変化が起き始めた。

「あはぁっ♥ ほら、石になっちゃえ……♥」

 気持ち良さそうに、楽しそうに彼女は笑う。メドゥーサの一睨みで、僕の下半身は徐々に石化していく。脚はべつに構わない、もう拘束されているから。
 ペニスや玉袋までもが石になってしまったことで、迸る寸前のものが強制的にせき止められてしまったのだ。

「んっんぅぅぅぅん♥ 石チンチンもぉ♥ 気持ちイイのぉ♥」

 よだれを垂らし、熱っぽい視線で僕を見つめながらよがる成海さん。下の口からも汁が垂れ、蠢く膣壁で石になったペニスをしゃぶり尽くしている。
 彼女は僕と一緒にイきたいんだ。生殺しにされても、成海さんの可愛さが先に立つ。

「成海さんっ、一緒にぃっ!」
「うんっ! 一緒に、いっしょに、イっちゃお……♥」

 僕たちはキスを交わした。先端が二股になった舌が僕の舌に絡み付いてくる。先ほどまで互いの性器をしゃぶった舌なのに、全く気にならなかった。気持ちよすぎて。

 石化したペニスでも性感はしっかりある。肉穴でいじめられれば、生殺しの射精感の上に更なる快感が重なっていく。口から言葉は出ず、互いの唇をしゃぶる以外に口の使い道はなくなった。
 だから成海さんが絶頂に達するのも、下半身が急に軽くなったことで初めて察した。石化が解かれたのだ。

 それはつまり、出してもいいということ。

「〜〜ッ!」

 声にならない叫びだった。代わりにペニスが叫んだ。どくどく、びゅくびゅくと豪快な音を立てながら、溜まりに溜まった精液を注ぎ込んで行く。成海さんの膣内……子供を作るところへ、子供ができる液体を。

「――♥」

 成海さんの絶頂の声も、僕の唇で塞がれていた。蛇体と膣内がぎゅうぎゅうと締まり、尚かつ脈動し、極上の快感を与えてくる。一度射精が終わりそうになったのに、膣の動きでまたエンジンがかかる。
 再び彼女の中で、ペニスは大きく脈打った。一度に二回もイかされた。頭が快感で真っ白になる。ますます沢山、彼女の中に出してしまう。

 そのままひたすらぎゅっと互いを抱きしめ、キスをしていると、ちょろちょろという水音が聞こえてきた。同時に下半身に温かい感触が広がる。

 ぼーっとした頭では何も考えられなかったが、徐々に思考力が戻ってきた。唇が離れるころには、何が起きたのか理解できていた。

「はぁ、はぁ……♥」

 肩で息をしながら、成海さんは涙目になって俺を見つめる。快感からか、あるいは申し訳なさからか。

「ごめん……おもらし、しちゃった……」

 叱られた子供のように、ぽつりと言う。頭の蛇たちも心無しか、しゅんと縮こまっていた。

 それがもうたまらなく可愛くて。

 ペニスは彼女の中で、再び膨らみはじめた。



















 ………











 ……









 …










「朝日が奇麗ねー」
「だね。一晩中セックスしてたんだね、僕たち」
「あんたのチンチンが気持ちよすぎるのがいけないのよ」
「成海さんがエロすぎるせいだよ。おしっこも漏らしたし」
「おしっこは関係ないでしょっ。ま、今日が土曜でよかったわ」
「これからどうする?」
「とりあえず私の家に来なさいよ。体洗って、朝ご飯作ってあげる」
「え、いいの?」
「私はザーメン一杯飲んだけど、あんたはお腹空いてるでしょ。結構得意なのよ」


 ……そんなことを話しながら旧校舎を去る僕たちを、朝日が見下ろしている。その下の成海さんの笑顔はとても奇麗で、すり寄って来る蛇髪ももうすっかり可愛くなってきた。魔物の異形さが美しく見えるのは、魔物の虜になったというサインの一つ。僕はもう、成海さん無しではいられないのだろう。

 朝日に照らされた学校は静かで、僕たちの声しかしない。最悪の出会い方をした僕たちは今、二人だけの世界を散歩しているような錯覚さえ覚えていた。コンクリートに影が伸び、後を着いてくる。気持ちのいい朝だ。

「浮気したら、グーパンなんだからっ」

 拳を突き出して笑う成海さんとしっかり手を繋ぎ、僕は歩く。
 きっとこの先、どこまでも。

 こうして。









 ――fin
14/09/01 23:22更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ

もう時間はかかってもいいから濃く書こうとした結果。
お口に合えば幸いですが、前編は甘酸っぱくても後編で案の定酸味が抜けたかもしれません。
次からルージュ街の方に戻りますが、また途中で短編を書くこともあると思います。
気づけばこの学校シリーズも、ルージュ街と同じくらい思い入れが出てきました。
今後も応援宜しくお願い致します。
ご意見・ご感想も遠慮なくどうぞ。

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