連載小説
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第一話・俺たち日常的な朝







 おっぱい。




 おっぱい、おっぱい、おっぱい。
 実に良い言葉だ、おっぱい。

 ある者はそれを子を育む神聖な器官と呼び、母性の象徴とする。
 またある者は男を狂わせる存在と見なし、背徳の象徴とする。
 ある者はその曲線美を、ある者は手を触れたときの柔らかさを、ある者は手からはみ出てひしゃげる大きさを、またある者は可愛らしく未成熟な小ささを愛でる。そしてまたある者は、その頂点から滴る白き雫を至高と呼ぶ。

 乳房、双峰、胸の果実。その表現もまた多種多様だ。
 たかが脂肪の塊……そのような言葉で片付けるにはあまりにも美しく、妖しく、多くの人々を魅了する。

 おっぱい。

 それは時代を超え、民族や思想さえ超えて人を虜にする。恐ろしく甘く、艶やかな果実。
 大小それぞれを愛で、崇め奉る男たち。その柔らかさを、膨らみを、ピンク色の突起の前に誰もがひれ伏す。

 あの存在は何なのか……
 おっぱいとは、何なのか……








………






……














「……う」

 目が覚めた。ボロくて狭苦しい一家屋、床に干し草を敷き詰めて布をかぶせ、その上に雑魚寝する俺たち一家の朝。ベッドくらいは買おうと思えば買えるが、家族みんなが一緒に寝られるようにこうしている。
 これでもなかなかどうして、実に爽やかな目覚めだ。この気分を一言で表現させてもらうなら、もう最高ってところだ。
 何せ俺のムスコにおっぱいがのしかかっているのだから。

「あ、おはよー」

 その大きなおっぱいの持ち主が朗らかに朝の挨拶をしてくる。レスカティエ風の赤い瞳が妖しく光り、悪戯っぽい笑顔に二本の角がよく似合っていた。

「朝から素晴らしいぜ、アレット」
「えへへ。デロイのおちんぽ、ボクのおっぱいが欲しそうだったからさぁ♥」

 豊かな谷間から突き出た亀頭にそっとキスをされる。やべぇ、寝起きにこれは超気持ちいい。男としては最高の起こされ方だ、少なくとも俺にとっては。
 ……なんだけど。

「つってもアレット、今この状況でそれをやられると収集つかなくなるから……」

 さて、今の状況についてざっとまとめてみよう。
 まず干し草のど真ん中に寝ているのは家長たる俺、デロイ・ルックランツ。無精髭がよく似合うと評されるクロスボウ使いだ。あまり腕を披露する機会は無いけど。

 そして俺の股間に量感溢れる双峰を押し付けているのが我が愛妻たるバイコーン、アレットだ。バイコーンはユニコーンの変種(と言ってもこいつは元人間だけど)であるため、横たえている下半身は艶やかな毛並みの黒馬。そしてそれと対比するかのように上半身は白い肌。おっぱいも白く、そして大きい。髪型はその胸と相反するかのようにボーイッシュなショートヘアで、悪戯な笑みを引き立てる。朝はこうやってモーニングコールをしてくれるし、昼は俺を背に乗せて移動中におっぱい揉んでとねだってくれるし、全くもって可愛い小悪魔系だ。体はデカいけど。

「収集つかなく? どういうこと?」
「いや、こいつら起きたら絶対混ざりたがるだろ」

 左右の様子をうかがいながら小声で喋る俺。先ほど雑魚寝と言ったようにこの即席ベッドに寝ているのは二人だけじゃない。

「……すぅ……すぅ……」
「んぅ……」
「くかー くかー」

 俺の右腕にはホーネットのニッセが抱きついている。アレット同様に素っ裸で、俺の腕はその胸の谷間でがっちりと拘束されていた。時々触覚をピクピク動かしながら幸せそうに寝息を立てる。
 左腕に抱きついているのはデュラハンのメリカ。耳が尖っている以外は人間と大して変わらない裸体なんだが、首には固定用のチョーカーを装着している。いつだったか寝ている間に首を外したら起きたときにエライことになった。「ザーメン置いてけ、なあ! 大将ザーメンだ、大将ザーメンだろ!? なあ大将ザーメンだろお前!?」とか叫びながら追ってくる首無し全裸美女の迫力は半端なかったぜ。
 そして俺の胸で大の字に寝転がっているのはフェアリーのチルル。やっぱり全裸だ。こいつはフェアリーなので小さい。おっぱいも小さい。だがそれも良い

「別にいいじゃん。ボクもみんなでエッチしたいし♥」

 バイコーンという魔物にはハーレム形成能力がある。原種のユニコーンは一夫一婦制限定の魔物だが、バイコーンは一夫多妻を推進するとんでもない種族だ。バイコーンを娶った男はその魔力のせいで第二、第三婦人を手に入れることが運命づけられてしまうらしい。
 そして様々な魔物の魔力の混ざった不純の精液こそ、バイコーンの大好物だそうな。なんつーとんでもねぇグルメだ。

「そ・れ・にっ」
「うぉふ!?」

 むにぃっ、と左右から強くムスコを圧迫してくるおっぱい。肉棒がびくんと痙攣する。このおっぱい反則だろうマジで。出会ってから今まで何回もこの胸で抜かれたってのに、全く慣れる自信がないぞオイ。

「こんなに寂しそうにしてる変態おちんぽ、放っておけないもん♥ ちゅ♥」
「ぐはっ」

 亀頭へのキスは刺激が強い。こいつ自分の唇がどんだけぷるぷるなのか分かっているのか。凶器だぞこれは。
 しかもそれだけでは空き足らず、キスを連発しながら胸をずりずり動かしてきた。吸い付くような肌の感触が肉棒に擦れ、むにむにと押しつぶされる。谷間のちょっと汗ばんだ感触が溜まらない。

「ボクもほら、人間だった頃から朝のミルク一気飲みは欠かさなかったんだよ。デロイのミルクがないと一日が始まらないもん♥」
「……そこまで言われちゃ仕方ねぇ」
「えへへ♥」

 アレットは心の底から嬉しそうに、花のような笑み浮かべる。人を惑わす魔の花ってやつだ。畜生、なんで魔物の笑顔ってのはこんなに可愛いんだよ。
 どの道止めさせることはできない。止めようにも両腕に女体がしがみついている体勢ではどうにもならない。こうなりゃ幸せを満喫してやるだけだ。

「じゃ……おちんぽミルク一番搾り、いっきまーす♥」

 宣言しつつ、彼女はおっぱいを左右から軽く叩いた。双峰がぽよんと弾み、そのぽよんという振動が俺に伝わる。そのまま立て続けにぽよんぽよんされ、リズミカルに快感を与えられる。アレットはまるでボールで遊ぶ子供のように胸を弾ませていた。柔らかい球の谷間で揺さぶられる男根。それを見下ろす赤い瞳。朝っぱらから何てことをしてくれるんだ、この嫁は。可愛くてたまらねぇ。
 ついでに左右から吹きかけられる寝息がいやらしい。魔物の息ってのは何でこんなにエロいんだ。もう魔物は何もかもエロの塊だ。

「ふ〜♥」
「うおおぅ」

 俺の心でも読んでいるのか、アレットまで亀頭に息を吹きかけてきやがった。竿が温かいおっぱいに包まれているのに、亀頭にだけはひんやりした息が浴びせられている。

「息でも感じちゃうでしょ? ふぅ〜♥」

 ピンク色の唇がすぼまるたび、いやらしい息が優しく吹きかけられる。くすぐったい。ただくすぐったいだけじゃない、男を的確に感じさせるようなくすぐったさだった。バイコーンの息に媚薬成分なんて入ってないだろうに……いや、こいつの息には俺専用の媚薬でも入っているかもしれない。レスカティエでこいつと出会って、俺はショボい人生と別れを告げた。それ以来側にいるだけで魔法をかけられたような気分になっちまう。

「ボクもデロイにおまんこ舐めてもらうとき、息がかかるとエッチな気分になるんだよ♥ ふぅ〜〜っ♥」
「うお……息でイっちまう……!」

 アレットは俺の反応に悦んでくれたらしい。ぽよんぽよんの谷間で震えている肉棒をあやすようにおっぱいを上下させ、擦りたててきた。興奮のせいか竿の方までどんどん敏感になってきてたまらなく気持ちいい。
 時々ニッセとメリカがもぞもぞと動き、俺の腕が二人の胸の谷間でむにむにされる。これ全身がパイズリされているようなもんじゃないか。腕まで性感帯になっちまいそうだ。

 そして亀頭には息責めが続けられている。赤い瞳が時々俺を見てくるのがまたエロい。昔は透き通るように青かったが、今の魔性の赤の方が活き活きと輝いている気がした。両腕が自由ならひたすら頭を撫でてやりたいくらい、めっちゃ可愛い。

「デロイのおちんぽ、凄く熱い……おっぱいの間で悦んでるよ♥」

 再び先端にキス。吸い付いてくる唇で限界まで追いつめられちまう。しかも鈴口に少し舌を這わせて、先走りの液を舐めとってきやがった。

「うおお……キクわ……!」
「んちゅ……おつゆも美味しいっ♥ そろそろミルクも出そうだね」

 俺がイク寸前の状態をしっかり把握しているアレットはマジ良妻。

「あ、ああ……お前、マジで俺のためにいる女だぜ……!」
「やぁん♥ そんなこと言われるとボク、調子に乗っちゃうよ〜♥」

 アレットは満面の笑みで両側から強く挟み込んで来た。そりゃもう、むにぃっと。ひしゃげるおっぱいに強く圧迫され、俺の股間で快感が限界に達した。
 両側でニッセとメリカがうっすらと目を開け、胸の上でチルルがむくりと起き上がったがもう気にしていられない。今できるのはとにかくアレットの顔面を、俺の欲望でドロドロに汚してやることだけだ。

「出すぜ、アレット! 顔面にいくぞ!」
「うん! いっぱいぶっかけてね♥」

 次の瞬間、おっぱいの谷間で肉棒が激しく脈打った。その動きに押し出されるかのように、ゼリーのような白濁が、アレットたちの大好物を噴き出す。
 ただでさえ昇天しそうだってのに、それがびちゃびちゃとアレットの顔を汚していくから気持ちよさも倍増だ。白い頬も、ピンク色の唇も、可愛らしい鼻もべとべとにし、胸にまで垂れ落ちるる。

「ひゃぁん♥ いっぱぁい♥」

 鈴口から噴射される精液を、アレットは花櫚な笑顔でしっかり受け止めてくれた。二本の角がこころなしか輝いて見える。みんなの魔力が溶け込んだ精液を、不純の象徴である彼女は美味しそうに舐めとった。これだけ悦んでくれると出し甲斐もあるってもんだ。

 ……で。

「……おはようございます、デロイ殿」
「アレットおねえちゃんズルいー! あたしもおちんちんミルクほしいよー!」
「今朝のはどんな味だ? ちょっとくれよ」

 完全に目覚めた三人が騒ぎ出した。礼儀正しく挨拶してくるメリカ、俺の胸板でぴょんぴょん跳ねるチルル、アレットの顔についた精液を舐めるニッセ。とりあえずチルルの頭を指先で撫でてなだめてやる。

「これはボクの朝ミルクだよ。欲しいならみんなもぶっかけてもらいなよ」

 笑いながらニッセの顔を引き離すアレット。その大きなおっぱいは手を添えずとも重さで俺の股間を拘束しており、囚われの肉棒はガチガチに固まっていた。威張ることじゃないが俺はインキュバスであるからして、射精後の虚脱感とかは一瞬でなくなるんだな、これが。魔物の魔力がムンムン漂うレスカティエで捕虜性活……生活をした結果だ。おかげでこの町に移り住んでからもこの調子。

「じゃあデロイさん、舐め舐めしちゃいますぜ♥」
「おう、好きにしろ!」

 ニッセは針のついた蜂の臀部をこちらに向ける、俺の右腕を股にしっかりと挟み込んだ。腰を艶かしくくねらせ、割れ目を腕に擦り付けながら亀頭を舐め始める。舌に唾を絡ませて、ねっとりと。

「あたしもなめる〜!」

 チルルが羽を広げて飛んだかと思うと、谷間に挟まれた肉棒目がけて急降下する。

「わ!?」

 アレットは思わず声を上げた。ぽすん、という音を立て、チルルはアレットの谷間に潜りこんだのだ。ようするにおっぱいの間から、赤黒い亀頭と可愛い巻き毛の小妖精が一緒に顔を出している形になる。この光景は……やべぇ、シュールなエロさを感じるぜ。

「おにいちゃんのちんちん、いいニオイだね〜。ちゅ♥」
「おぉっ!」

 フェアリーの小さな舌がカリのくびれの所を集中攻撃。チルルのフェラはこれがたまらない。小さいだけに細かな快楽のツボをしっかり突いてくる。彼女にとっては一抱えもある肉棒に挑む姿がまた興奮する。
 そしてメリカは頬を赤らめ、俺をじっと見つめていた。

「デロイ殿……よろしければ私にも……」
「おし……メリカ、俺の股をしゃぶれ」

 命令してやると、メリカは恥ずかしがりながらも嬉しそうにチョーカーを外した。さすがに首を外してもすぐに「妖怪 ザーメン置いてけ」が現れることはない。締め付けのなくなった首はぽろりと落ち、彼女はそれを股間の方へと持っていく。亀頭にぐいっと唇が押し付けられ、三枚目の舌が小刻みにフェラを始めた。彼女もまた俺の左手を自分の花園へ導き、しきりに擦り付けて楽しむ。

「れろ……ん……♥」
「ちゅ、みゅ……おいし……ん♥」
「はふっ……ちゅ♥ ……んはっ♥」

 息づかいも荒く亀頭に群がる三人の嫁たち。その間も竿部分はアレットの谷間に包み込まれて……。
 例えるならアレットのおっぱいがケーキで、その上にトリプルフェラというイチゴをごってりトッピングしたようなもんだ。

「ううっ、たまらねぇ……!」
「あはっ♥ 愛情四倍、気持ちよさも四倍だね♥」

 集団責めに喘ぐ俺を、アレットは満足げに見つめていた。こいつはこいつで肉棒を挟み込むのに余念がない。ハーレムの女主人とも言えるバイコーンは仲間たちにも愛情を注いで、一緒に夫と交わることを楽しむ。そうしているうちにみんなの魔力が俺に入り込み、精へと変わるってわけだ。

「デロイのミルク、みんなでもっともっと美味しくしようね♥」

 三人の頭を順番に撫でてやるアレット。俺も気づいたら無意識のうちにメリカのニッセの股をいじり、ぬるついた割れ目の感触を楽しんでいた。ぷっくりと膨れたクリトリスに触るたび、二人ともいやらしい嬌声を漏らしやがる。こいつらの体は俺とアレットで開発済みだから感度良好だ。狭苦しい部屋には発情した魔物の汗が雌の匂いとなって充満し、急激に俺を高めていく。

「チルルちゃん、もうミルク出ちゃうから先っちょを舐めてあげて」
「は〜い。んちゅっ♥」
「うおおお……!」

 アレットは俺の体のことなら何でも知っている。彼女の言葉に従ってチルルは鈴口へと狙いを移し、ニッセとメリカも気合いを入れて舐めはじめた。俺もお返しに二人の股に指をぐっと突っ込む。

「んひぃぃ……らめ……♥」
「ふああぅ♥ ら、や、デロイさ、ぁぁん♥」

 俺もみんなの感じる所は熟知しているつもりだ。ニッセとメリカ、それぞれの一番敏感なところを指でくりくりしてやる。本当はアレットも、そしてチルルも気持ちよくしてやりたいんだが……。
 まあとにかく、今は出すものを出すしかねぇ!

「ほーら出すぞ! ちゃんと舐めろよ!」

 宣言した直後、二回目の射精。二回目だってのにさっきよりも量が多い。そして気持ちいい。

 チルルのあどけない顔が真っ白に彩られる。
 ニッセの艶のある金髪がべっとりと汚れる。
 メリカの清楚な口元が一生懸命に白濁をすする。

「あはぁ♥ おいしぃよぉ……♥」
「はふ……デロイ、どの……♥」
「ふああ……きもちいい♥」

 白濁を舐めとりながら、その味と快楽に酔う俺の雌たち。
 その様子に興奮して脈打ちし続ける俺を、アレットの胸と眼差しが優しく包み込んでくれていた。














………







……




















 俺は兵隊崩れのロクデナシだが、朝のイチャイチャを終えて飯を済ませたらちゃんと仕事に出る。俺の仕事はこのルージュ・シティじゃ珍しい職業だろう。ここは人間と魔物の共存を掲げて建てられた町で、新興だから差別や偏見が少なく、教団勢力圏のような宗教的な制約も無い。加えて魔物たちの魔術によって便利な道具も作られているから、職人や芸術家も思う存分に腕を振るえる。鍛冶屋、仕立屋、料理人……そんな一つの道を極めることを誓った、言わばスペシャリストが集う町だ。もちろん全員がそうってわけじゃないが。

 対して俺の仕事は……ゼネラリストだ。

「毎度どうも! 二本角印の何でも屋でござい!」

 牧場の小屋を尋ね、明るく挨拶をする。俺の隣にはアレット、後ろには他三名が控えて社員総出だ。

「お疲れさん。来てくれて助かる」

 肉屋のライジェが俺たちを出迎えた。この牧場は比較的よく俺たちに仕事を持ってきてくれるお得意様で、報酬のついでに美味い肉を分けてくれたりする。この町はノームの加護があるおかげで農業もやりやすいらしく、家畜の解体をする人間への差別もない。だから牧場は常に笑顔で溢れているが、それでもたまに問題は起きるわけだ。
 俺は懐からメモを取り出し、内容を読み上げる。

「えーと、仕事は倉庫の鍵の解錠と交換、スズメバチの巣の撤去、柵の増設、と」
「お見積もりはこちらでございます」

 会計係のメリカが書類を差し出し、ライジェは頷いた。彼の弟はどちらかというと線の細そうな男だが、ライジェは歴戦の傭兵と言われても違和感がないほどたくましい体躯の持ち主だ。だが普段肉を扱っているその手を見ると、やはり人の肉を斬る人種ではないことが分かる。元兵士の勘だ。

「よろしく頼むぜ。丁度人手を割けないんでな」
「あいよ、お任せくださいって。やるぞ、お前ら!」
「おおー!」
「頑張りますよー!」


 ……俺は娼婦の腹から生まれ、誰が父親かも分からないまま生きてきた。生きるためには何でもやったてきたから、やろうと思えばいろいろな仕事ができるが、どれもスペシャリストに叶う腕じゃない。クロスボウは得意だが名将になれるほどの腕じゃない。
 だがアレットのおかげで、俺の周りには様々な能力を持った魔物が寄ってきやがる。みんなの力を借りて、仕事を選ばない仕事をしてやろうと思った結果がこれ……何でも屋だ。痒い所に手が届くこの商売、それなりに需要はある。毒虫の駆除や除草、ゴミの片付け、果ては旦那の浮気調査なんていう探偵じみたことまで請け負ってきた。やり始めるとこれがなかなか楽しい。
 当面の目標は今よりも広く、頑丈な家を買うことだ。今の家は借りた空き地に自力で作った掘っ建て小屋で、たまにアレットが床板を踏み抜いたりする。本物の馬ほど重くはなくても、ケンタウロス属の魔物がドタバタすれば床がダメージを受ける。いつかそれに耐えられる家を買い、みんな一緒に心置きなく笑い合える生活をしたい。だからアレットも、他のみんなも頑張っているのだ。

「この木、なかなか頑丈だね。余ったらうちの床の修理に使えないかな?」
「こらこら、お客さんの物だぞ」

 冗談を飛ばしながら地面に杭を打っていく。増設する柵の長さは結構あるが、アレットが重い材料も運んでくれるから楽だ。もうすぐニッセがスズメバチの巣を片付けて合流するだろうし、メリカとチルルに任せた鍵の交換もそれほど時間はかからないだろう。あいつらは以外と器用だし、早く俺と一緒に仕事をしたいと思っているはずだから。

「よいしょ、っと……うん、どこから見ても美しい!」

 打ち込んだ杭を満足げに眺め、次の材料を取ってくるアレット。ドスケベで不純なバイコーンでも、こうしているときは清純に見える。ああ、尻尾をふりふりしながら走りやがって。可愛い奴め、帰ったら下半身もブラッシングしてやろう。

「ねぇ、デロイ」
「ん? どした?」

 ハンマーを振るいながら応えると、アレットはくすくすと笑った。何か面白いことでもあったのか。

「あのね、今朝ライジェさんの奥さんが裏山でワームを見たんだって」
「ワームだって?」

 虫のことじゃない。翼を持たないドラゴンで、知能が低い代わりに凄まじいパワーを持つという。今の世の中、教団が言うような凶悪な魔物は存在しないが、男を手に入れるために手段を選ばない奴はいる。それがこの町に現れたとなればちょっとした大事だ。
 だが杭を打ち込んで顔を上げてみると、アレットは楽しげに微笑んでいた。

「ボクらで捕まえようよ。この牧場が踏み荒らされたら大変だし、そうなる前に捕まえればボクらの評判も上がるよ!」

 勝ち気な口調で言うアレット。正義感が強いのは人間時代からだ。とは言っても今回の場合、別の目的があるのは明白だな。

「アレット、そのワームをうちに取り込むつもりだろ?」
「えへへ、正解」

 ああ、くそ。ペロリと舌を出すな。今すぐ頭なでなでしたくなるだろうが。

「ワームなんてでかい魔物が来たら、寝床がいっぱいになっちまうぜ?」
「それはそれで楽しいじゃん。女体密度が高まって気持ちいいでしょ」

 彼女は無邪気に微笑んだ。そう言われると俺も現金なもんで、もう一人ハーレム要員が増え、五人に包まれて寝るのが凄く楽しみになっちまう。これもバイコーンの魔力に侵されてるのかもな。
 まあそれでもいい。俺はアレットがいてくれる限り何だってやってみせる。ショボい人生はもうまっぴらだと思ってこの町へ来た身、冒険の一つもできないでどうするってんだ!

「……よし、やっちまうか。ニッセたちが来たら作戦を考えようや」
「了解! そうこなくっちゃ!」
13/02/25 23:13更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ

お読み頂きありがとうございます。
以前から溜まっていたネタの一つですが、ようやく固まったので書いていきます。
出だしで分かるかもしれませんが、今回は若干はっちゃけた話にする予定です。
もちろんイエティSSも書いておりますぜ!

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