温泉旅館『雪ノ胸』
小さなバスに揺られ、夕暮れ時の山道を走る。すでに辺り一帯は暗く雪が降り始め、俺ならあまり運転はしたくない状況だった。だが運転手の山瀬はこのような道に慣れているようで、いつも通り冷静にバスを運転している。素面の状態でなら彼女ほど頼りになるドライバーはいないだろう。そもそもアオオニである彼女が酒を飲んだらすぐさま夫に抱きついてずっこんばっこん始めるから飲酒運転の心配は一切無い。その夫は助手席に座り、地図を見ながらあれこれ指示している。
車内は暖房が効いているからスタッフたちも寒くはなさそうだ。特に、俺は。
「プロデューサーさーんっ」
もふっとした手で抱きついてくる、可愛い女の子。いや、可愛いのは当然だ。彼女……イエティのリッカちゃんは、俺がプロデュースしているアイドルなのだから。
「リッカちゃん、あんまり抱きつくなって。もし変なカメラマンにでも撮られたらスキャンダルに……」
「雪、つもるかな? いっぱいつもるかな?」
俺の不安など知ったことじゃないようで、リッカちゃんはくりくりした目で楽しそうに外を見ている。その純白の毛皮と褐色の素肌はとても温かく、柔らかい感触と相まってとても気持ちいい。ただでさえ彼女は露出度が高い(というか大抵自前の毛皮だけなので、正確にはほぼ全裸)というのに、こんなことをされては当然ムラムラきてしまう。
特に押し付けられる大きな胸が強敵だ。むにゅっとした感触を受けながら心を落ち着け、持っていた書類を股間部に乗せて隠す。勃起してそれを気取られれば終わりだ。
「あんまり雪が積もったら下山できなくなっちゃうだろ」
「そうなったら、わたしがプロデューサーさんをあたためてあげるっ」
俺に抱きついたままにこやかに言うリッカちゃん。確かに二人で雪山に閉じ込められることがあれば、心優しいイエティである彼女は迷わずそうするだろう。今までにもスキー場で迷子になった子供を助け出したことがあり、国中から賞賛された。さらにダンスのセンスや歌唱力も高く、人間にも魔物にもファンが多い。
俺はそんなリッカちゃんのプロデューサーだということを誇りに思っている。が、彼女には困ったことに、所構わず俺に抱きつく癖があるのだ。例えファンの前だろうと、カメラマンの前だろうと、トイレに入る直前だろうと。
イエティは単に抱きつくのが好きなだけで、他の魔物のように男を誘惑するつもりはあまり無いという。ただ無邪気なだけなのだ。しかし勃起したことに気づかれればセックスを求めたと見なされ、即座に襲われる。ただでさえ普段から様々な噂が流れているというのに、そんなことになっては二人揃って芸能界から抹消されるだろう。
「ほらほら、もうすぐ到着するから」
「んー」
彼女は名残惜しそうに離れたが、数分後にはまた抱きついてくることだろう。周りのスタッフたちも「プロデューサーもいい加減諦めればいいのに」とか「いつになったらヤるのかな、あの二人」などと他人事のように言っていやがる。毎度のことだ。
「……プロデューサー、見えきたぞ」
助手席にいる山瀬・夫が冷静に告げた。彼は女房が飲酒しているときを除き常に冷静沈着で、何かと謎が多いものの俺としては非常に頼りにしている。
バスの前方を見やると、ライトに照らされて小さな旅館が浮かび上がっていた。風情のある建物で、その側には木の枝で囲われた一角があった。
「あれっておフロかな!?」
「……そうだね」
案の定再び抱きついてきたリッカちゃんが目を輝かせる。わざとらしいまでに押し付けられる胸の感触から意識を逸らし、気を引き締める。ようやく今回の企画のスタート地点に到着したのだから……。
………
リッカちゃんが我ら647プロダクションの人気アイドルとなったのは最近のこと。彼女もプロデューサーの俺もそのための努力は惜しまなかったし、これからもさらに上を目指すつもりだ。
しかしある日、インターネットで次のような書き込みが見受けられた。
「イエティのアイドルって長続きしなくね? 寒冷地の魔物だし、外国ツアーとかあんまり行けないだろ」
それを見て我らが社長は「ポンときた」らしい。あの人は刑部狸だけに企画のアイディアはポンポン出る。つまりイエティである彼女に世界中を旅させてしまおうと企んだのだ。そして旅のテーマは今の日本の季節に合わせて決められた。
即ち……
「冬の日本に温かさをお届け! リッカの世界秘湯巡り!」
……雪が降り湯気の立ち上る温泉で、リッカちゃんは微笑んでいた。カメラやマイクを手にしたスタッフたちが辺りを囲み、撮影は始まっている。スタッフの中で男は俺と山瀬・夫のみで、その他はサキュバスやゴブリンなど様々な魔物で構成されている。
温泉を背景にする彼女の姿はいつもと同じ純白の毛皮だが、先ほど言ったように事実上全裸。よってこのまま入浴しても問題ない。
「えっと、こんかいが一回目のおふろですね! この雪ノ胸りょかんではたらいているのは、ゆきおんなさんばかりなんですよ!」
大きなカメラを担いだゴブリンが体の向きを変え、温泉入り口に集まっている従業員の皆さんを映す。笑顔で手を振る彼女達は青白い肌のゆきおんなで、中にはゆきわらしと呼ぶべき幼い女の子もいた。経営者から見習いに至るまで、この宿はゆきおんなで構成されているのだ。ここに居着いて彼女たちと結婚した男もいるが。
「おとこのおきゃくさんは、ゆきおんなさんをお持ち帰りしてもいいんです。でもそれだけじゃなくてね、このおんせんがすごいんですって!」
楽しそうにお尻を振りながら、岩に囲まれた湯船へと向かうリッカちゃん。もこもこの毛に覆われたお尻はとても可愛く、ファンを、そして俺を魅了する。だが決して、一線を踏み越えてはならないのだ……。
彼女はゆっくりとお湯に入っていき、腰を降ろした。肩の辺りまで浸かり、うっとりした吐息を吐く。褐色の柔らかそうな頬、そのとろんとした眼差しが無性に可愛かった。
「ほふーっ。……あ、えっと!」
はっと我に返り、カメラに笑顔を向ける。こういうちょっと抜けたところも人気があったりするのだ。
……ところで、何やら山瀬夫妻が互いに目配せをしている。眼光が鋭い。何かあったのだろうか。
「このお湯には、えっと……ゆきおんなさんたちの力が入っていて、おとこのひとが……」
リッカちゃんがおっとりと説明している、そのとき。
「うおっ!?」
俺は思わず声を出してしまった。山瀬・夫が突然俺の手を掴み、背中にまわして拘束してきたのだ。しっかりと関節を極められ身動きができないでいると、山瀬・妻が青い手で俺の服を掴む。そして何が何だか分からないでいるうちに、目にも留まらぬ素早い動きでボタンを外されてしまった。
「ちょ、お前ら何を!?」
「プロデューサー、悪いがボスの指図だ」
「大人しくしていなさい」
慣れた手つきで俺の服を脱がせていく山瀬・妻。こいつらがボスと呼ぶ相手と言えば社長しかいない。あのタヌキ、まさか秘湯巡りと一緒に分けの分からないことまで思いついたのか。
「え、なになに? なにがはじまるの?」
湯船の中から俺たちを見つめるリッカちゃん。まさかリッカちゃんの前で裸に剥かれるなんて……!
プロデューサーとしては最悪の事態が脳裏に浮かんだとき、拘束が解かれた。だがそれは服をはぎ取るためであり、その瞬間に藻掻いても脱出は叶わなかった。
全裸にされた俺を山瀬・妻が抱え上げる。オーガ種であるアオオニの腕力なら成人男性を持ち上げるくらい簡単なのだ。リッカちゃんは瑠璃色の奇麗な目を目をまん丸に開いて、俺の情けない姿を凝視していた。
そして次の瞬間、俺の体は温泉に放り込まれた。
「がぼほぉっ!?」
派手な音を立てて着水し、全身がお湯に浸かってしまう。溺れそうになりながらも何とか底に脚を着き、体を起こした。
だがその瞬間。自分に起きた異変に気づいた。
「プロデューサーさん! だいじょうぶ!?」
リッカちゃんが湯船の中を歩み寄ってくる。しかし俺の方は明らかに異常な事態に陥っていた。お湯に浸かっているにも関わらず、寒くて仕方ないのだ。体に触れているお湯は温かいのに、凍えそうなほどの寒さを感じる。外気温のせいにしてもおかしい。体が冷えているのだろうか。このままでは凍死してしまうかもしれないと思うほど、俺は異常な寒さに震えていた。
「う、うぅぅ……」
「プロデューサーさん!」
寒さに呻く俺の肩に、リッカちゃんの手が置かれた。その瞬間体がジンっと熱くなる。純白の毛に覆われた温かな手。それに秘められたぬくもりは普段から経験しているはずなのに、今日はいつも以上に熱く、優しく……気持ちよく感じる。
顔を上げると、心配そうに俺を見下ろす青い目があった。そしてボリュームのある、温かそうな褐色の胸も。
温かい。世界で一番温かくて気持ちよさそうなものが目の前にある。そう思った瞬間、俺の理性は弾けとんだ。
「リッカちゃん……ッ!」
「え……きゃぁん♥」
リッカちゃんが嬉しそうな叫びを上げた。こともあろうに俺は彼女に思い切り抱きつき、ふくよかな胸に顔を埋めて押し倒したのである。ぽよんと柔らかい胸とそれを覆う毛皮の感触、そして何よりもその温かさ。俺の体中に染み渡って、寒気を追い払うかのようなぬくもりだった。もっとそれを感じたくて、彼女を強く抱きしめる。
「プロデューサーさん、わたしをぎゅって……うれしいっ♥」
彼女の方も喜んで、俺をしっかりと抱きしめてくれる。もっとぬくもりを、凍えないようにと、自分の立場をかなぐり捨てて可愛いイエティと抱き合う。そうさ、立場さえ無ければこうしたかった。当たり前だ。
そのまま胸に顔を押し付け、柔らかさを存分に堪能する。むにむにと形を変える温かい双峰。たまらない。彼女の方もそれが嬉しいらしく、しっかり胸元に俺の頭を抱きしめて撫でてくれている。
「あっ! プロデューサーさん、ごめんね!」
突然彼女に謝られた。
「えっちしたいんだよね。うん、いっぱいえっちしようね!」
無邪気な笑顔で言うリッカちゃんを見て、ようやく気づいた。彼女のふとももに、男子を魅了してやまない褐色の美しいふとももに、勃起した俺のナニが当たっているのだ。柔らかな太腿は肉棒の張りを柔らかく押し返し、えも言われぬ気持ちよさだった。
だが彼女は姿勢を直し、俺の上に向かい合って座る体勢をとった。要するに、対面座位……
「えへへ……わたしのココ、もうトロトロ……きっとおんせんみたいに、あたたかいよ♥」
リッカちゃんの股間を覆っていた白い毛はいつの間にか消えていた。そこにあるのは褐色の肌と無毛の恥丘、そしてお湯の中に愛液を垂れ流しているであろう割れ目。イエティのような魔物が股間部の毛皮を消すのは排泄のときか、交尾のときである。
もう俺は逃げられない。そして彼女というぬくもりから逃げ、凍える世界に帰る勇気も気力もない。
「り、リッカちゃん……早く……!」
「うん! わたしのココのおんせんで、ポカポカあたたまってね……♥」
彼女がゆっくりと、腰を降ろした。
「あ……!」
肉棒の先端が、割れ目の表面を滑る。リッカちゃんはもふもふの手で肉棒を掴み、角度を調整して挿れ直した。
先端部が彼女の内側に包まれた瞬間、二つの温かさが俺を包み込んだ。一つは膣の温度による物理的な温かさ。そしてお湯の中で、今まで恋いこがれてきた相手と繋がれたことによる、心のぬくもりだ。
「あんぅ……♥ プロデューサーさんの、おちんぽだぁ……♥」
リッカちゃんの方もまた、欲しかったおもちゃを手に入れた子供のように目を輝かせていた。口元を緩ませ、恍惚とした表情でさらに腰を降ろす。湯船の中でもしっかりとぬめりを帯びた膣はスムーズに俺を受け入れていった。イエティは抱きしめた男が勃起すると「相手がセックスを求めている」と認識し、メスとしてそれに応じる。だから女性器が男を受け入れる準備を整えるのも早いのかもしれない。
粘液をはらんだ熱いヒダの感触は、まるでリッカちゃんの内側そのものがとろけているかのようで……
「ああ……熱い……ッ!」
「んふぅぁぁ♥ プロデューサーさんがわたしの、おまんまんにぃ……おちんぽがはいって、きもちイイ♥」
うっとりと卑猥な言葉を口にしながら、リッカちゃんはゆっくりと腰を揺らす。お湯の浮力を利用して小刻みにトントンと上下させ、咥え込んだ肉棒を弄んできた。
彼女の膣内はそれほど締め付けは強くない。だが外の肌以上に温度が高く、しかもまとわりつくヒダが一杯だった。腰がゆすられるたび、肉棒を優しく包み込む膣がうごめいてくすぐってくる。俺はどんどん高められていった。
「あはぁ……♥ えっちで、ポカポカ……きもちイイよぉ♥」
そしてリッカちゃんの口からぽろぽろ出てくる淫らな言葉が、それに拍車をかける。彼女は口端から唾液を垂らし、俺にしがみつくようにして頬ずりしてきた。ミルクチョコレートのような褐色の肌が、優しく擦れていく。そして下半身では、肉棒と肉穴が淫らに擦れている。
自分がこんなにも我慢弱いとは思わなかった。というより、我慢する気力自体失われていた。
「で、出るよ……リッカちゃん、もう……!」
「うんっ、だしてぇ……んぅっ♥ あかちゃんのもと、いっぱいいっぱい……♥」
リッカちゃんに、唇を奪われた瞬間。
ついに、俺は絶頂に達した。
「んんむぅぅぅぅ♥」
俺の唇を吸い、口の中を舐め回しながら、アイドルイエティは俺の迸りを受け止めていた。自分でも信じられない、凄まじい量の精液だった。彼女の膣内にドクドクと注ぎ込まれ、それが逆流してお湯の中に溢れ出す。透き通ったお湯の中に白濁がふよふよと漂い、花びらのように水面に浮かんだ。溶けないほど濃厚で、ゼリーのようだった。
そしてそれを受け止めたリッカちゃんも……
「ふあっ、ふぅぅぅああぁぁぁ♥」
俺をぎゅっと抱きしめ、膣内も肉棒をぎゅっと締めつけ、盛大に絶頂を迎えたのだった。
お湯の中でぴくぴくと体を震わせ、繋がったまま脱力する。俺にもたれかかってくる彼女にそっとキスをし、彼女も惚けた笑みでキスを返してくれた。
「……あ」
リッカちゃんはふと顔を上げた。俺もそのとき、スタッフたちが片手で自分を慰めながらも撮影を続けていることに気づく。俺たちの交わりに興奮したようで、従業員のゆきおんなたちまで仲間同士で互いを慰めていた。山瀬夫妻の姿が見えない辺り、多分更衣室へ引っ込んでヤっているのだろう。
カメラは確かに俺たちの姿を捉えており、リッカちゃんはそれに向かって笑いかけた。
「えっと、こんなふうに……このおんせん、ゆきおんなさんの力が、こもっていてぇ……入ったおとこのひとは、ゆきおんなさんから「氷のいき」をかけられたみたいになっちゃいます。おんなのひとのあたたかさが欲しくてたまらなくなっちゃうから、ふりむいて欲しいおとこのひとをつれてくれば……えへへ♥」
こうなります、とでも言うかのように、彼女は俺を抱きしめてくる。
もはや俺に良識や理屈を考える余裕などなく、その確かなぬくもりと幸せを満喫するのだった。
……ちなみにその後、社長から次のようなメッセージが送られてきた。
「リッカちゃんのファンからな、『プロデューサーといつ結婚するんですか』っちゅう問い合わせが沢山来とったねん。この際やからあんたらをくっつけて、婚前旅行を兼ねた企画にしたんねん。せやからほら、安心してとっとと次の秘湯に行かんかい!」
車内は暖房が効いているからスタッフたちも寒くはなさそうだ。特に、俺は。
「プロデューサーさーんっ」
もふっとした手で抱きついてくる、可愛い女の子。いや、可愛いのは当然だ。彼女……イエティのリッカちゃんは、俺がプロデュースしているアイドルなのだから。
「リッカちゃん、あんまり抱きつくなって。もし変なカメラマンにでも撮られたらスキャンダルに……」
「雪、つもるかな? いっぱいつもるかな?」
俺の不安など知ったことじゃないようで、リッカちゃんはくりくりした目で楽しそうに外を見ている。その純白の毛皮と褐色の素肌はとても温かく、柔らかい感触と相まってとても気持ちいい。ただでさえ彼女は露出度が高い(というか大抵自前の毛皮だけなので、正確にはほぼ全裸)というのに、こんなことをされては当然ムラムラきてしまう。
特に押し付けられる大きな胸が強敵だ。むにゅっとした感触を受けながら心を落ち着け、持っていた書類を股間部に乗せて隠す。勃起してそれを気取られれば終わりだ。
「あんまり雪が積もったら下山できなくなっちゃうだろ」
「そうなったら、わたしがプロデューサーさんをあたためてあげるっ」
俺に抱きついたままにこやかに言うリッカちゃん。確かに二人で雪山に閉じ込められることがあれば、心優しいイエティである彼女は迷わずそうするだろう。今までにもスキー場で迷子になった子供を助け出したことがあり、国中から賞賛された。さらにダンスのセンスや歌唱力も高く、人間にも魔物にもファンが多い。
俺はそんなリッカちゃんのプロデューサーだということを誇りに思っている。が、彼女には困ったことに、所構わず俺に抱きつく癖があるのだ。例えファンの前だろうと、カメラマンの前だろうと、トイレに入る直前だろうと。
イエティは単に抱きつくのが好きなだけで、他の魔物のように男を誘惑するつもりはあまり無いという。ただ無邪気なだけなのだ。しかし勃起したことに気づかれればセックスを求めたと見なされ、即座に襲われる。ただでさえ普段から様々な噂が流れているというのに、そんなことになっては二人揃って芸能界から抹消されるだろう。
「ほらほら、もうすぐ到着するから」
「んー」
彼女は名残惜しそうに離れたが、数分後にはまた抱きついてくることだろう。周りのスタッフたちも「プロデューサーもいい加減諦めればいいのに」とか「いつになったらヤるのかな、あの二人」などと他人事のように言っていやがる。毎度のことだ。
「……プロデューサー、見えきたぞ」
助手席にいる山瀬・夫が冷静に告げた。彼は女房が飲酒しているときを除き常に冷静沈着で、何かと謎が多いものの俺としては非常に頼りにしている。
バスの前方を見やると、ライトに照らされて小さな旅館が浮かび上がっていた。風情のある建物で、その側には木の枝で囲われた一角があった。
「あれっておフロかな!?」
「……そうだね」
案の定再び抱きついてきたリッカちゃんが目を輝かせる。わざとらしいまでに押し付けられる胸の感触から意識を逸らし、気を引き締める。ようやく今回の企画のスタート地点に到着したのだから……。
………
リッカちゃんが我ら647プロダクションの人気アイドルとなったのは最近のこと。彼女もプロデューサーの俺もそのための努力は惜しまなかったし、これからもさらに上を目指すつもりだ。
しかしある日、インターネットで次のような書き込みが見受けられた。
「イエティのアイドルって長続きしなくね? 寒冷地の魔物だし、外国ツアーとかあんまり行けないだろ」
それを見て我らが社長は「ポンときた」らしい。あの人は刑部狸だけに企画のアイディアはポンポン出る。つまりイエティである彼女に世界中を旅させてしまおうと企んだのだ。そして旅のテーマは今の日本の季節に合わせて決められた。
即ち……
「冬の日本に温かさをお届け! リッカの世界秘湯巡り!」
……雪が降り湯気の立ち上る温泉で、リッカちゃんは微笑んでいた。カメラやマイクを手にしたスタッフたちが辺りを囲み、撮影は始まっている。スタッフの中で男は俺と山瀬・夫のみで、その他はサキュバスやゴブリンなど様々な魔物で構成されている。
温泉を背景にする彼女の姿はいつもと同じ純白の毛皮だが、先ほど言ったように事実上全裸。よってこのまま入浴しても問題ない。
「えっと、こんかいが一回目のおふろですね! この雪ノ胸りょかんではたらいているのは、ゆきおんなさんばかりなんですよ!」
大きなカメラを担いだゴブリンが体の向きを変え、温泉入り口に集まっている従業員の皆さんを映す。笑顔で手を振る彼女達は青白い肌のゆきおんなで、中にはゆきわらしと呼ぶべき幼い女の子もいた。経営者から見習いに至るまで、この宿はゆきおんなで構成されているのだ。ここに居着いて彼女たちと結婚した男もいるが。
「おとこのおきゃくさんは、ゆきおんなさんをお持ち帰りしてもいいんです。でもそれだけじゃなくてね、このおんせんがすごいんですって!」
楽しそうにお尻を振りながら、岩に囲まれた湯船へと向かうリッカちゃん。もこもこの毛に覆われたお尻はとても可愛く、ファンを、そして俺を魅了する。だが決して、一線を踏み越えてはならないのだ……。
彼女はゆっくりとお湯に入っていき、腰を降ろした。肩の辺りまで浸かり、うっとりした吐息を吐く。褐色の柔らかそうな頬、そのとろんとした眼差しが無性に可愛かった。
「ほふーっ。……あ、えっと!」
はっと我に返り、カメラに笑顔を向ける。こういうちょっと抜けたところも人気があったりするのだ。
……ところで、何やら山瀬夫妻が互いに目配せをしている。眼光が鋭い。何かあったのだろうか。
「このお湯には、えっと……ゆきおんなさんたちの力が入っていて、おとこのひとが……」
リッカちゃんがおっとりと説明している、そのとき。
「うおっ!?」
俺は思わず声を出してしまった。山瀬・夫が突然俺の手を掴み、背中にまわして拘束してきたのだ。しっかりと関節を極められ身動きができないでいると、山瀬・妻が青い手で俺の服を掴む。そして何が何だか分からないでいるうちに、目にも留まらぬ素早い動きでボタンを外されてしまった。
「ちょ、お前ら何を!?」
「プロデューサー、悪いがボスの指図だ」
「大人しくしていなさい」
慣れた手つきで俺の服を脱がせていく山瀬・妻。こいつらがボスと呼ぶ相手と言えば社長しかいない。あのタヌキ、まさか秘湯巡りと一緒に分けの分からないことまで思いついたのか。
「え、なになに? なにがはじまるの?」
湯船の中から俺たちを見つめるリッカちゃん。まさかリッカちゃんの前で裸に剥かれるなんて……!
プロデューサーとしては最悪の事態が脳裏に浮かんだとき、拘束が解かれた。だがそれは服をはぎ取るためであり、その瞬間に藻掻いても脱出は叶わなかった。
全裸にされた俺を山瀬・妻が抱え上げる。オーガ種であるアオオニの腕力なら成人男性を持ち上げるくらい簡単なのだ。リッカちゃんは瑠璃色の奇麗な目を目をまん丸に開いて、俺の情けない姿を凝視していた。
そして次の瞬間、俺の体は温泉に放り込まれた。
「がぼほぉっ!?」
派手な音を立てて着水し、全身がお湯に浸かってしまう。溺れそうになりながらも何とか底に脚を着き、体を起こした。
だがその瞬間。自分に起きた異変に気づいた。
「プロデューサーさん! だいじょうぶ!?」
リッカちゃんが湯船の中を歩み寄ってくる。しかし俺の方は明らかに異常な事態に陥っていた。お湯に浸かっているにも関わらず、寒くて仕方ないのだ。体に触れているお湯は温かいのに、凍えそうなほどの寒さを感じる。外気温のせいにしてもおかしい。体が冷えているのだろうか。このままでは凍死してしまうかもしれないと思うほど、俺は異常な寒さに震えていた。
「う、うぅぅ……」
「プロデューサーさん!」
寒さに呻く俺の肩に、リッカちゃんの手が置かれた。その瞬間体がジンっと熱くなる。純白の毛に覆われた温かな手。それに秘められたぬくもりは普段から経験しているはずなのに、今日はいつも以上に熱く、優しく……気持ちよく感じる。
顔を上げると、心配そうに俺を見下ろす青い目があった。そしてボリュームのある、温かそうな褐色の胸も。
温かい。世界で一番温かくて気持ちよさそうなものが目の前にある。そう思った瞬間、俺の理性は弾けとんだ。
「リッカちゃん……ッ!」
「え……きゃぁん♥」
リッカちゃんが嬉しそうな叫びを上げた。こともあろうに俺は彼女に思い切り抱きつき、ふくよかな胸に顔を埋めて押し倒したのである。ぽよんと柔らかい胸とそれを覆う毛皮の感触、そして何よりもその温かさ。俺の体中に染み渡って、寒気を追い払うかのようなぬくもりだった。もっとそれを感じたくて、彼女を強く抱きしめる。
「プロデューサーさん、わたしをぎゅって……うれしいっ♥」
彼女の方も喜んで、俺をしっかりと抱きしめてくれる。もっとぬくもりを、凍えないようにと、自分の立場をかなぐり捨てて可愛いイエティと抱き合う。そうさ、立場さえ無ければこうしたかった。当たり前だ。
そのまま胸に顔を押し付け、柔らかさを存分に堪能する。むにむにと形を変える温かい双峰。たまらない。彼女の方もそれが嬉しいらしく、しっかり胸元に俺の頭を抱きしめて撫でてくれている。
「あっ! プロデューサーさん、ごめんね!」
突然彼女に謝られた。
「えっちしたいんだよね。うん、いっぱいえっちしようね!」
無邪気な笑顔で言うリッカちゃんを見て、ようやく気づいた。彼女のふとももに、男子を魅了してやまない褐色の美しいふとももに、勃起した俺のナニが当たっているのだ。柔らかな太腿は肉棒の張りを柔らかく押し返し、えも言われぬ気持ちよさだった。
だが彼女は姿勢を直し、俺の上に向かい合って座る体勢をとった。要するに、対面座位……
「えへへ……わたしのココ、もうトロトロ……きっとおんせんみたいに、あたたかいよ♥」
リッカちゃんの股間を覆っていた白い毛はいつの間にか消えていた。そこにあるのは褐色の肌と無毛の恥丘、そしてお湯の中に愛液を垂れ流しているであろう割れ目。イエティのような魔物が股間部の毛皮を消すのは排泄のときか、交尾のときである。
もう俺は逃げられない。そして彼女というぬくもりから逃げ、凍える世界に帰る勇気も気力もない。
「り、リッカちゃん……早く……!」
「うん! わたしのココのおんせんで、ポカポカあたたまってね……♥」
彼女がゆっくりと、腰を降ろした。
「あ……!」
肉棒の先端が、割れ目の表面を滑る。リッカちゃんはもふもふの手で肉棒を掴み、角度を調整して挿れ直した。
先端部が彼女の内側に包まれた瞬間、二つの温かさが俺を包み込んだ。一つは膣の温度による物理的な温かさ。そしてお湯の中で、今まで恋いこがれてきた相手と繋がれたことによる、心のぬくもりだ。
「あんぅ……♥ プロデューサーさんの、おちんぽだぁ……♥」
リッカちゃんの方もまた、欲しかったおもちゃを手に入れた子供のように目を輝かせていた。口元を緩ませ、恍惚とした表情でさらに腰を降ろす。湯船の中でもしっかりとぬめりを帯びた膣はスムーズに俺を受け入れていった。イエティは抱きしめた男が勃起すると「相手がセックスを求めている」と認識し、メスとしてそれに応じる。だから女性器が男を受け入れる準備を整えるのも早いのかもしれない。
粘液をはらんだ熱いヒダの感触は、まるでリッカちゃんの内側そのものがとろけているかのようで……
「ああ……熱い……ッ!」
「んふぅぁぁ♥ プロデューサーさんがわたしの、おまんまんにぃ……おちんぽがはいって、きもちイイ♥」
うっとりと卑猥な言葉を口にしながら、リッカちゃんはゆっくりと腰を揺らす。お湯の浮力を利用して小刻みにトントンと上下させ、咥え込んだ肉棒を弄んできた。
彼女の膣内はそれほど締め付けは強くない。だが外の肌以上に温度が高く、しかもまとわりつくヒダが一杯だった。腰がゆすられるたび、肉棒を優しく包み込む膣がうごめいてくすぐってくる。俺はどんどん高められていった。
「あはぁ……♥ えっちで、ポカポカ……きもちイイよぉ♥」
そしてリッカちゃんの口からぽろぽろ出てくる淫らな言葉が、それに拍車をかける。彼女は口端から唾液を垂らし、俺にしがみつくようにして頬ずりしてきた。ミルクチョコレートのような褐色の肌が、優しく擦れていく。そして下半身では、肉棒と肉穴が淫らに擦れている。
自分がこんなにも我慢弱いとは思わなかった。というより、我慢する気力自体失われていた。
「で、出るよ……リッカちゃん、もう……!」
「うんっ、だしてぇ……んぅっ♥ あかちゃんのもと、いっぱいいっぱい……♥」
リッカちゃんに、唇を奪われた瞬間。
ついに、俺は絶頂に達した。
「んんむぅぅぅぅ♥」
俺の唇を吸い、口の中を舐め回しながら、アイドルイエティは俺の迸りを受け止めていた。自分でも信じられない、凄まじい量の精液だった。彼女の膣内にドクドクと注ぎ込まれ、それが逆流してお湯の中に溢れ出す。透き通ったお湯の中に白濁がふよふよと漂い、花びらのように水面に浮かんだ。溶けないほど濃厚で、ゼリーのようだった。
そしてそれを受け止めたリッカちゃんも……
「ふあっ、ふぅぅぅああぁぁぁ♥」
俺をぎゅっと抱きしめ、膣内も肉棒をぎゅっと締めつけ、盛大に絶頂を迎えたのだった。
お湯の中でぴくぴくと体を震わせ、繋がったまま脱力する。俺にもたれかかってくる彼女にそっとキスをし、彼女も惚けた笑みでキスを返してくれた。
「……あ」
リッカちゃんはふと顔を上げた。俺もそのとき、スタッフたちが片手で自分を慰めながらも撮影を続けていることに気づく。俺たちの交わりに興奮したようで、従業員のゆきおんなたちまで仲間同士で互いを慰めていた。山瀬夫妻の姿が見えない辺り、多分更衣室へ引っ込んでヤっているのだろう。
カメラは確かに俺たちの姿を捉えており、リッカちゃんはそれに向かって笑いかけた。
「えっと、こんなふうに……このおんせん、ゆきおんなさんの力が、こもっていてぇ……入ったおとこのひとは、ゆきおんなさんから「氷のいき」をかけられたみたいになっちゃいます。おんなのひとのあたたかさが欲しくてたまらなくなっちゃうから、ふりむいて欲しいおとこのひとをつれてくれば……えへへ♥」
こうなります、とでも言うかのように、彼女は俺を抱きしめてくる。
もはや俺に良識や理屈を考える余裕などなく、その確かなぬくもりと幸せを満喫するのだった。
……ちなみにその後、社長から次のようなメッセージが送られてきた。
「リッカちゃんのファンからな、『プロデューサーといつ結婚するんですか』っちゅう問い合わせが沢山来とったねん。この際やからあんたらをくっつけて、婚前旅行を兼ねた企画にしたんねん。せやからほら、安心してとっとと次の秘湯に行かんかい!」
13/01/13 23:03更新 / 空き缶号
戻る
次へ