連載小説
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前編・夢
 光の道を抜け、私は夢の中に舞い降りた。私の姿は現実とは違い、人間と同じ二本の白い脚になっていた。彼が喜んでくれるよう、髪も奇麗なストレートに整えてある。服は艶やかな黒のイブニングドレス。この世界では何もかも自由自在、私自身も理想の自分になることができるのだ。
 ゆっくり降下しながら見下ろすのは奇妙な町の景色。彼が見ている夢の光景なのだが、私はその町の姿に感嘆した。

 曲がりくねった時計塔。
 逆さまになった家。
 どこへ繋がっているのか分からない階段。
 空中に流れている川。
 地面近くに浮かんでいる雲。

 まるで巨大なおもちゃ箱をひっくり返したような、空想の入り乱れた自由な夢。レヴォンさんはなんて素敵な夢を見るのだろう。思った通り彼は素晴らしい人なのだ。早くこの夢の町から彼を捜し出して、私のものにしてしまいたい。期待に胸を膨らませ、私は地面へと降り立つ。

 石畳に足をつけると、不思議な雰囲気がますます間近に感じられた。奇妙な建物も、分けの分からない文字が書かれているお店の看板も、レヴォンさんの夢見る力を強く表している。だがそんな奇妙な夢の町に、どことなくルージュ・シティに似た空気を感じた。

「あら……?」

 巨大なリンゴ型の建物の裏側から、小さな足音がいくつも聞こえた。やがて数人の子供達が笑い合いながら、元気よくこちらに駆けてくる。先頭にいるのは水色の髪の女の子で、額に絆創膏を貼っていた。
 これもレヴォンさんの夢の産物だ。子供達は私の側を通り、路上に浮いている雲を踏んで飛び跳ねながら、不思議な町を駆け抜けていく。もしかしたらレヴォンさんの、子供の頃の記憶かもしれない。過ぎ去った日の思い出が夢に現れることはよくある。

 そして子供達の姿が見えなくなった後、私の一番会いたかった人が姿を現した。

「あ……」

 彼……レヴォンさんは私を見て一瞬固まった。子供たちを追いかけて来たらしく、息を切らしている。
 そんな彼に、私は微笑みかけた。

「ふふっ、こんばんは」
「こ、こんにちは……」

 息を整えながら彼は応えた。驚いている様子が可愛い。

「ここを子供が通らなかったかい?」

 まだレヴォンさんは私よりも、夢に現れた子供達が気になっているみたい。彼と一緒に夢の中を駆け回って、あの子供達を追いかけるのも楽しそうだけど……やっぱり、一番美味しい果実を食べずにはいられない。

「私のお願いを聞いてくれたら、教えてあげるわ」
「お願い……何だい?」

 私の顔を、というより髪をじっと見つめ、尋ねてくる彼。いっそのことボサボサの髪で現れて、夢の中だけでも散髪してもらえばよかった。少しだけ後悔する。
 でも私はもう一つ準備をしてある。昼間の観察の成果だ。ドレスのスカートを掴み、彼にを焦らすようにゆっくりと持ち上げていく。中身が露になるにつれ、彼の目が大きく見開かれた。

「私のココ、剃ってよ」

 股にある割れ目と、その周りに生えた毛をレヴォンさんに見せつけた。夢の中ならこういうことも自由自在、どんなに変態な遊びも思いのまま。私の足下にはすでにカミソリや石鹸などの道具が一式揃っており、お湯の入った洗面器もある。夢の中でできないことなどほとんど無いのだ。
 レヴォンさんがゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。彼は屈み込んで、食い入るように私の股を見つめた。髪と同じ薄紫色の毛が生えた股を目の前にして、再び生唾を飲み込んで石鹸を泡立てはじめた。夢の中でも素敵な彼の手が、白い泡を纏っていく。

 そしてその泡が、私の股に塗られていった。

「ふふふ……気持ちいいわぁ……♥」

 彼の頭を撫でて髪の感触を楽しみながら、私は彼の作業を見守る。石鹸の泡が毛にしっかりとまとわりつくと、レヴォンさんはカミソリを手に取った。
 息を弾ませながら、彼は股の毛をゆっくり、丁寧に剃っていく。ゆっくりとやってはいるものの、その手つきは現実世界でカミソリを扱っているときと同じ、プロの理髪師のものだった。その手つきといい、私に夢中な視線といい、ゾクゾクしてくる。

「息、くすぐったいわよ……♥」
「ご、ごめん」

 次第に毛が薄れ、つるりとした地肌が見えてくる。割れ目の隙間から見えるピンク色に、レヴォンさんはかなり興奮しているようだ。少し疼いて、汁が出てくるのを感じた。レヴォンさんは再び生唾を飲み込み、それでも手際よく毛を剃っていく。
 最後にお湯をかけて石鹸や毛を流すと、私の股はツルツルになっていた。

「で、できたよ」
「ありがと……ふふっ」

 割れ目を指で撫でると、粘液が糸を引いた。レヴォンさんの目はそこに釘付けになっている。
 このまま彼と繋がってもいいけれど……せっかくの夢。もっとやりたい放題やってからにしよう。

「立って」

 声をかけると、彼は言われるがままに立ち上がった。もっこりとふくらんだズボンを見て、私はその中身を想像する。
 次にやりたいことが決まった。

「今度は、私が剃ってあげるわね」
「えっ!?」

 私がぱちんと指を鳴らすと、彼のズボンも下着も煙のように消え去った。その下から出てきたのは、反り返って真上を向いた立派なモノ。いいニオイがする。
 レヴォンさんが慌てて前を隠そうとするが、彼の体も夢の体である以上、私が少し念じれば動けなくなってしまう。下半身丸出しで金縛りになった彼の前に、今度は私がひざまずく。

「な、何を……!?」
「言ったでしょ。貴方のココの毛、剃ってあげるの」

 おちんちん周りの毛を撫でてみると、レヴォンさんの体がぴくりと震えた。
 彼がしてくれたように石鹸を泡立て、それをおちんちんとその周りになすり付ける。まんべんなくヌルヌルと擦りつけると、レヴォンさんはまた息が荒くなってきた。

「や、やめ……」
「あら、止めて欲しいようには見えないけど?」
「こ、こんな……うっ」

 指先でおちんちんを弾いてあげると、レヴォンさんは切なそうな声を漏らした。彼をメチャクチャにしてあげたいという心に火がつく。
 私は左手でおちんちんを優しく握り、右手にはカミソリを手にとった。丁寧に丁寧に、愛情を込めて剃っていく。泡まみれの陰毛を剃り落とすたび、手の中で泡まみれの肉棒が震える。大好きなレヴォンさんのおちんちん。その動きは目の前にいるメスを、この私を孕ませたいと訴えているかのようだ。

「あ、うぅぅぅ……!」
「ふふ……可愛い声を出すのね。それにぴったりな、ツルツルの可愛いおちんちんにしてあげる」

 私のいやらしい言葉が効いたのか、彼のおちんちんが一際大きく脈打った。今にもその先端から、白くて濃くて美味しいミルクが溢れてきそう。

「あら、もうイきそうなの? ただ握ってるだけなのに」

 右手で毛を剃りながら、左手に力を入れたり抜いたりする。ぎゅっと肉棒を握るたびに彼が喘ぎ、とても気持ち良さそうだ。毛を半分剃り終わった頃には、もう射精寸前の状態になっていた。現実での私同様に、彼も敏感なタイプなのだ……少し嬉しい発見。
 こういうときは早漏呼ばわりしていじめるのもセオリーだろうけど……私は優しくしてあげることにした。

「ううぅ……やめてくれ、も、もう……!」
「いいわ……女の子におちんちんの毛を剃られながらイっちゃう、変態さんになりましょうね」

 そう囁いて、おちんちんに息を吹きかけた瞬間。石鹸の泡に覆われた先端部分から、泡とは違う白い液体が噴き出した。どろりとしてニオイの強いそれは水鉄砲のように飛び、私の顔に当たっていい音を立てた。彼の顔を見上げるととても気持ち良さそうで、浴びている私も気持ちいい。

「あははっ、本当に出ちゃった……♥」
「あ、あああ……!」

 大好きなレヴォンさんのベトベト精液。それを顔にぶっかけてもらえたというだけで、もう最高にいい気持ちだ。左手を前後させると、石鹸でぬめる肉棒がますます射精の勢いを強める。

「ああああ……!」
「……ふふっ、いっぱい出してくれたわね♥」

 そう言いながらも、私はまだ彼の陰毛を剃りながら肉棒をしごいていた。たっぷりかけられた精液はとてもいいニオイで、舐めるととろけるような甘い味がした。一度味わえば虜となってしまうような美味しい精液。

「あぁ……素敵ね。もっと楽しみましょう、この夢を……」
「夢……」

 私の手の中で、おちんちんがまた大きくなり始めた。夢の世界ではレヴォンさんも疲れ知らずだ。射精したときに泡が流れ落ち、亀頭の先だけが見えて可愛い。あまり可愛いから、その鈴口にちゅっとキスをしてしまった。

「あっ……」
「気持ちいいの? もうすぐ剃り終わるからね……♥」

 最後に残った所をそり落とし、お湯をざぱっとかけて石鹸を洗い流す。すると泡の中から、ビンビンに勃起した無毛のおちんちんが出てきた。毛が無いから子供みたいだけど、サイズは大人のまま。もちろんこれは夢だから、彼が起きれば元通り毛が生えている。

 そうなる前に……


「このおちんちん、おっぱいで挟んでもいいかしら?」

 わざと彼に許可を取るように尋ねてみる。レヴォンさんはまたゴクリと生唾を飲み込み、必死で頷いた。

「お、お願い、するよ」

 夢だと分かったから自重する必要がなくなったのだろう。私は彼に見せつけるようにして、ドレスの胸元を左右から力任せに引っ張った。黒いイブニングドレスが無惨に破れ、布地のしたからぽろんと乳房が飛び出す。現実ではコンプレックスの種である大きな胸も、夢の世界でなら男の人を虜にする武器にできる。わざわざドレスを破ったのは、ただ脱ぐより背徳的でいやらしく見えると思ったからだ。
 実際にレヴォンさんは感嘆の声を漏らしながら、破れた布地と揺れる乳房を見つめていた。体が自由に動くのなら、自分から肉棒を押し付けてきたかもしれない。でもここは私の領域、彼は犯される存在なのだ。

「えいっ……♥」

 胸をたぷんと持ち上げながら、私はおちんちんを谷間へ迎え入れた。

「うわっ……!」

 彼が小さく叫ぶ。極限まで勃起した肉棒は胸肉に挟まれ、ぴくぴくと震えている。私も熱い感触で谷間が気持ちよくなってきた。手で乳房を押しておちんちんを圧迫すると、たちまち先走りの液が滲み出てきた。

「レヴォンさん、気持ちいいかしら?」
「う、うん……やわらかくて、凄い……!」

 レヴォンさんが素直に快感を受け入れているのが嬉しくて、そのままむにむにと胸を擦り合わせ、谷間でおちんちんを弄ぶ。毛が無くなったところが敏感になっているのか、ちょっと強く押し付けただけで気持ちよさそうに震えていた。鈴口から垂れてきたお汁で谷間がたちまち粘つき、ねちゃねちゃといやらしい水音を立て始める。

「貴方のおちんちん、おっぱいに抱かれて悦んでるのね……♥」
「ううっ、気もちいい……」

 今にも射精しそうな表情のレヴォンさんを見ていると、私もますます興奮してきた。そしてまたもや、夢だからこそできる行為を思いつく。それも彼の趣味にぴったりなこと。

「それじゃあ、レヴォンさんが一番好きな物でとどめを刺してあげるわ……♥」
「え……?」

 彼が疑問符を浮かべた直後、私の髪の一部が細い束になり、蛇のように鎌首をもたげた。それが私の胸へしゅるしゅると伸びていき、谷間に潜り込んでいく。自分でもくすぐったい。

「あ、うあああああ……!」

 レヴォンさんが声を上げ、おちんちんがさらに汁を吐き出す。私の髪は谷間に埋もれている肉棒に絡み付き、乳肉と一緒に優しくしごきはじめたのだ。
 髪の毛を通じておちんちんの脈打ちが伝わってくる。もうそろそろ限界のようだ。

「出そうなの? 早漏さんね♥」
「ご、ごめん……!」
「いいのよ、謝らなくても」

 私はにっこり笑って、ウィンクしながら言ってあげた。

「私、早漏で変態なレヴォンさんが大好きよ……♥」

 ……髪の毛がカリ首に巻き付いた瞬間。ついにレヴォンさんは絶頂に達した。

「で、出るよ……ああああぁ!」

 ゼリーのように濃い白濁が、私の胸と顔に飛び散った。肩の辺りまで白いのが付着し、とてもいいニオイを放っている。二度目でもとても濃くて美味しいし、量は先ほどよりも多そう。彼が私の虜になりはじめたのかもしれない。私の方もこのぶっかけられた多幸感は癖になりそうだ。そしてその精液はとても美味しく、一口舐めるたびに力があふれてきて、もっとエッチなことをしたくなる。

「あはぁ……こんなにかけてくれて、幸せよ♥」
「僕も、だよ……」

 笑顔でレヴォンさんを見上げると、彼も笑って私を見つめていた。幸せな気持ちに浸りながらも、私はこの人をもっと悦ばせる夢遊びを考えついていた。

「私の大きな胸、堪能してくれたみたいね♥」

 おちんちんにキスをする。その瞬間、レヴォンさんは夢の力で再び勃起した。

「じゃあ、次は……」

 私が立ち上がって念じると、レヴォンさんは驚愕の表情を浮かべた。私の背がどんどん縮んでいったからだ。手足が縮んで背が小さくなり、肩幅も狭くなる。精液まみれの大きな乳房もしぼんでいき、やがて小さいぺたんこな胸となった。

 そう、私は子供の姿になったのだ。
 レヴォンさんの腰の辺りにすり寄り、戸惑っている彼の顔を見上げる。

「私の小さな胸を味わってね、レヴォンお兄ちゃん♥」

 元気よく、可愛く聞こえるように言ってみる。夢の世界ではこういう演技も簡単だ。
 私は小さく無邪気な女の子となり、彼の腰に思い切り抱きつく。腕も脚も使い、彼にしがみつくようにして胸をおちんちんに押し付けた。二度も射精したというのにレヴォンさんの肉棒は敏感に反応し、まな板のような胸で小さく震えている。

「えへへっ♥ 子供おっぱいの、ちっぱいずり。気持ちいい?」
「うん、すごい……! 小さいのに、なんだか……!」

 レヴォンさんは言葉では言い表せない、不思議な快感を感じているようだ。ほとんど膨らんでいないのに、どこか柔らかい……そんな子供の胸は敏感な彼をよがらせるのに十分だった。しがみついたまま体を揺らすと、乳首がこすれて私も気持ちいい。何よりも小さくなった体で彼に抱きついていると、素敵なレヴォンさんの存在がよりボリューミーに感じられるのだ。

「えいえいっ、出しちゃえ出しちゃえ♥」

 無邪気にはやし立てながら、貧乳を激しくこすりつける。彼は気持ちよさそうにうめき声を漏らし、快楽を享受していた。
 追い打ちをかけるべく、再び髪を触手のように伸ばした。レヴォンさんは何かを期待するような目でその動きを追っている。私は自分でも分かるような、悪戯っぽくて意地悪な笑みを浮かべてしまった。

「こうしちゃおっと。えいっ♥」
「え……うあっ! ちょ、そこは……!」

 レヴォンさんが驚いたのも無理はない。私の髪は彼のお尻の穴をくすぐったのだ。さらにもう一本髪束を伸ばし、玉袋もいじめてあげる。レヴォンさんは喘ぐばかりだ。

「うううぅ、ま、あ……!」
「あは……♥ こんな小さな女の子にお尻の穴くすぐられて、嬉しいんだね♥」

 彼の様子を見るのが楽しくて楽しくて、私は夢中で胸を擦り付け、髪でくすぐる。レヴォンさんの女の子のような顔はすっかりとろけていた。これでもうこの夢は、彼にとって忘れがたい一晩になるだろう。もう寝るたびに私を待ち望み、この快楽を期待しながらベッドへ潜り込むことになるのだ。彼はもう私の虜。なんて素晴らしいことなのかしら、私の虜!

「あははっ、レヴォンお兄ちゃんは私のものね♥」
「ああぁ……そ、そうだよ……それでいいから、うぅぅ!」

 そろそろまた射精する……そう悟った私は、おちんちんの先端に口をつけ、ぱくっと亀頭を咥えた。

「あ、あ、あああああああ!」

 雄叫びを上げながら、レヴォンさんは絶頂した。途端に口の中へ、ねとねと精液が一杯に広がる。

「んんっ♥」

 小さな子供の口では溢れてしまう。私は甘い精液を必死に飲み下しながら、元の大人の姿に戻るよう念じた。少しずつ口腔内に余裕ができはじめ、同時に全身で彼にしがみついていた体が、地面につく大きさになる。胸もずっしりと重くなった。

「んっ、んっ、んくっ……♥」

 どんどん流れ込んでくる濃厚な液体を、ゴクゴクと飲み下していく。ぶっかけられたものを舐めるのもいいけど、こうやって味わった方が美味しい気がする。もちろん一番美味しいのは、アソコで味わうことだけど。

 恍惚状態で射精を続けるレヴォンさんの精を飲み下し、おちんちんをしゃぶり……飲み干した。

「ああ……」

 私が口を離した瞬間、彼はへなへなとへたり込んでしまった。とても幸せそうな顔で。

「ふふっ、大人の大きなおっぱい、子供の小さなおっぱい……両方味わえてよかったわね……♥」

 彼の頭を撫でながら語りかける。そう言う私の体も、もう精液のスコールを受けたかのように白濁まみれだった。この後やることと言えば決まっている。

「さあ、一番気持ちいい時間の始まりよ……♥」

 舌なめずりしながら、アソコの割れ目を指で開いてみせる。汁が滴るピンク色の肉に、彼の体は早くも反応しはじめた。

「ふふ……挿れたい?」
「い、挿れたい!」

 必死で叫ぶレヴォンさんに、くすりと笑ってしまう。現ではあんなに凛々しく理髪師をしているのに、夢の中では私に弄ばれる可愛いペットのようになってしまうのだ。そんな彼がまた、たまらなく愛おしい。

「いいわ、シましょう……♥」

 レヴォンさんに向かって髪を伸ばしながら、彼の腰をまたぐ。割れ目から垂れた汁がおちんちんにかかった。伸びた髪の毛は手足に巻き付き、撫でさすり、レヴォンさんはただでさえ女の子のような顔でうっとりした表情を浮かべている。
 はやる気持ちを抑え、髪のゆりかごで彼を包み込みながら、私はゆっくりと腰を降ろして……



「――!?」


 ……突然、どこからともなく聞こえてきた不快な音。最初は遠く聞こえた音が急激に大きくなり、鼓膜を揺さぶるようなけたたましい不快音になった。体がビリビリと揺れ、目の前の景色が……いや、夢の世界までもが振動し始める。
 やがて世界にヒビが入りはじめた。私とレヴォンさん、その周りの全てが次から次へと砕け、消えて行く。


 嫌だ

 やめて


 まだここから出たくない


 やめて! お願いだから!

 やめて! やめて! やめて!

 やめろ、やめろやめろやめろ止めろヤメロやめてやめろやめろ やめろやめろやめろやめろやめろ

 やめろやめろやめろやめろやヤメロめろやめろやめろやめろやめろやめてやめてやめて
 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ  ろやめ や ろ めろやめ やめ   ろ

























 ………






 ……








 …










 ……私が寝室で我に返った瞬間、レヴォンさんはベッドから身を乗り出し、机に置いてあった不快音発生源を停止させました。まだ外は闇に覆われています。レヴォンさんは眠気眼をこすりながら、「故障かな」などと言ってその根源を眺めていました。

 私は背中に冷や汗をびっしょりかいて、無我夢中で肩で息をしていました。そして何が起きたのか分かってきたとき。
 レヴォンさんがゆっくりと、私の方を見て……

 目が合いました。



「ッきゃあああああぁぁ!」



 その瞬間、私は寝室の窓を蹄で蹴破り、そのまま空中に飛び出しました。二階の高さからガラスの欠片と一緒に落下し、石畳の上になんとか着地します。
 四つの脚に加わった衝撃を味わう余裕もなく、夜の町の中を泣きながら駆け出しました。夢の中での高揚感も幸福感も、全て吹き飛んでしまったのです。全力で疾走しながら、私はただ悔しさと、あの不快音への憎しみを高ぶらせることしかできませんでした。

 ナイトメアであるこの私が、よりにもよって……


「目覚まし時計に負けたぁぁぁぁ!」
12/11/09 22:58更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ
やりたい放題やらせようと思った結果、かなりマニアックなこともやらせてしまったでござるの巻。
しかも当然ですがまだ続きます。

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