連載小説
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君とデザート
屋上のとあるところ。
校舎からは陰になっている部分。
校庭からしても誰もいないので見られる心配はないその場でリリムと人間がいた。
というかオレとフィオナだ。
互いに荒い息を吐いて。
普段よりもずっと熱い体を擦り合わせて。
腕をまわし、服の下へ忍ばせ摩り。
互いの服を脱がせあう。
「んん♪…ちゅ、ふ、ぁあっ♪ユウ、タぁ♪」
脱がしつつもキスすることはやめない。
というか、この間すらも惜しい。
こうして服を着ていることはとても魅力的。
フィオナがどんな服を着ていようと元が元なために似合わないことはない。
おしゃれしたフィオナの姿を見るのはいいことだがそれでも。
行為の前にはやはり邪魔になる。
これなら普段から着ている前面を大きく肌蹴たあの服のほうがマシなのだがそれはオレが禁じている。
野外であれはなし。
魅力的で淫靡である分、皆が皆注目する。
だからなんか…嫌なんだ。
フィオナのそういう姿を回りに見せつけるのは。
そういうのは…その、独り占めしたいというか。
自分自身独占欲が強いということを嫌でも自覚させられる。
オレもまた我侭なのかもしれない。
先ほどの果物のせいで体が興奮状態から冷めない。
本能が理性を押しのけ、望むままに交わろうと欲望が滾る。
この媚熱の治め方をオレもフィオナも知っているし。
本能もちゃんと理解している。
だからこそ獣の如く交わりたいと思ってしまう。
それでも。
極力優しく。
できる限り、丁寧に。
フィオナを傷つけないように注意して。
以前のように暴走せずに、わきまえて。
フィオナの服を脱がした。
ここまで自分を抑えられるということはあの果実は媚薬効果が弱いほうなのかもしれない。
普通なら理性なんて飛ばしてすぐに襲い掛かってしまうのだが。
どうやらフィオナもそこらへんは考えてくれているらしい。
そう思ったときにはオレは学ラン、およびYシャツのボタン、既にベルトまでが外されていた。
手際が良くなってるな。
そりゃ学生服姿で襲われる事だって多多あったからか。
学校帰りの買出しとか。
帰ってからすぐとか。
…思えばフィオナが来てから毎日してるんだっけ。
淫魔であり、サキュバスの最高位、魔王の娘のリリムであるんだ。
フィオナにとって体を重ねることは食事でもある。
それでも。
リリムとサキュバスとまだまだ性欲お盛んな学生。
そんな三人が一つ屋根の下だ、体を重ねないほうが無理だろう。
実際夏休みなんて何日ぶっ続けでしたのか覚えてないくらいだ。
何も言わずに部屋の前に食事が置かれているのを見たときは…頭を抱えた。
しかもそれが明らかにお父さんの手によるものだったし。
ひっそりと食事の横に精力剤まで置かれてたし。
容認して何も言わずにいてくれるのは嬉しいんだけど…。
そんなことを考えながらも手を動かす。
フィオナのつけていた下着を脱がし、その柔らかなふくらみに手を添えた。
「んんっ♪」
くぐもった甘い声を漏らしながらも応えるように抱きしめてくれる。
むしろもっとして欲しいとねだるように。
オレからも応えるように手に力を入れてその胸を揉みしだく。
既に硬くなった先端へは指でなぞるようにして刺激する。
これでも手先指先は器用なんだ、経験さえ積めば応用だって利かせられる。
人差し指と中指で挟みながらも他の指は動かすのをやめない。
また飽きられることないように刺激を変則的に変えていく。
それにしても柔らかいな。
何度も揉んできているのだがやはりそう思ってしまう。
手のひらから伝わるじんわりとした媚熱。
そして感じる柔軟な感触。
「フィオナの胸って大きいし形はいいし、その上綺麗だよな」
「んっ、本当?」
「本当だよ。思ったことまんまだって」
「私も最近大きくなってきたと思うの」
「へぇ」
「きっと誰かさんが揉んだり吸ったりしてるからね♪」
「…」
「好きなのよね、ユウタは♪」
「…………」
…あやかの前で言ったら絶対に怒られるな。
なんてことを考えているとフィオナがオレの体に手を置いた。
そのまま誘うように、惑わすように撫でまわす。
フィオナはこういうものが好きなんだよな。
互いに肌が触れ合うこととか、抱きしめあうこととか。
基本的にべったりくっつくことを好んでる。
人前では極力抑えてもらいたいものだが…まぁ、嫌な気持ちはしない。
すりすりと頬を摺り寄せ、そのままオレのズボンに手を掛けた。
「…早くない?」
普段もこうだけどなんというか…あれだ。
落ち着きがないというか。
本能全開になっているというか。
「だって、早くしたいんだもん」
「…」
それはこちらとしても嬉しい。
時間も限られている分、早く繋がりたいと思っている。
それに体のほうも同じ。
湧き上がる情欲が体を突き動かしている。
もどかしい快楽ではなくて。
おぼろげな快感ではなくて。
もっと激しく。
もっと強く。
もっと深い、その先を求めてる。
フィオナも、オレも。
潤み、欲情を宿した瞳は期待してる。
その瞳を見ただけでオレ自身も応えたくなる。
本能的に、精神的に。
初めて会ったあの時とはまた随分変わったものだとよく思う。
あの時はフィオナに極力関わらず、オレとの出会いなんて一時にしか過ぎないもので終わらせようとしていた。
それでも。
今はこうして出会えてよかったとつくづく思う。
こうしてフィオナといるときはよく自覚する。
ズボンを下げ、下着の中からオレの肉棒を取り出した。
そのまま愛おしそうに、うっとりとした表情で撫でる。
既に硬くなり痛いほどに張り詰めたそれ。
先ほど食べた果実のせいか、それとも目の前に魅力的な美女がいるせいか。
どちらかといえば…まぁ、勿論フィオナがいるからなんだろうけど。
優しく傷つけないようにそっと撫でられ、その感覚に体を震わすとくすりと笑い声が漏れた。
「ふふ、可愛い」
「…男に可愛いはないだろ」
思ったことをただ言っているつもりだろうがそれは男に似あう言葉じゃないっていうのに。
もう一撫でして彼女は立ち上がった。
何をするのかと思えばフィオナは屋上のフェンスに寄りかかり、オレに背を向けて片足を上げた。
いやらしく、誘うように下着を脱ぎ捨てそのまま秘所を自ら開く。
下着を取り払い、オレに見せ付けるそこ。
しみも傷も一つもない白い肌に腰から尻、太もものラインの美しさ、桜色の突起が小さく主張し、いやらしく溢れる蜜でぬらりと光り、その匂いで誘惑し、見ているだけでぞくぞくとさせられる。
「ユウタ…来て♪」
「…おう」
応えてオレはフィオナを後ろから抱きかかえ、そのまま先端を押し付けて一気に挿入した。
「ん、っぁああっああああああっ♪」
「っんぁ…」
初めてしたときと変わらない締り、柔らかく奥へと誘い込むように律動する肉壁。
絡みつく粘液に、蕩かすような媚熱。
まるで沢山の舌に舐められているような、わずかな隙間もなく密着してくる感触に思わず腰が引けそうになるが、引けない。
フィオナを抱きしめているから。
それ以前にフィオナがちゃっかり上げた足と尻尾を器用に使ってオレを離さない。
逃げ出したくなるような快楽、それでもなお味わいたいと思わされる快感。
サキュバスの最高位であるリリムと体を重ねているオレは腰が痙攣し、しばらくそのままで動くことができなかった。
最初の頃なんて入れて一度動かすだけですぐに達していたのだからこれでもまだマシになったほうである。
だから動けない代わり動く片腕を伸ばしてフェンスにしがみ付くフィオナの手に手を重なる。
「んん♪」
それだけでもフィオナは反応し、それと同時に彼女の膣もまた締まる。
思わず呻きそうになったが何とか声をかみ殺し抱きしめる腕に力を込めてフィオナの顔に並ぶように移動した。
彼女の表情を見れば先ほどよりいっそう蕩けた顔をしている。
正しく女の顔。
見ているだけでも情欲を掻き立てられ、オレの手で悦ばせたいと思わされる。
「ふぁ、あ…♪ユウタぁ、動いてぇ…♪」
そう言いつつも自ら腰を動かしてオレに行為を促してくる。
甘えるように、ねだるように。
可愛いことをしてくれるよなぁ。
ただそれに伴ってとんでもない快楽もまた体を駆け巡ってくる。
わずかにしか動いていなくても淫魔の蜜壺、男性の精を求める彼女の中は恐ろしく気持ちがいい。
だからこそ、さらにしたくなるんだよな。
オレもまた意外と欲が深いのかもしれない。
「言われなくともっ!」
フィオナの言葉に応えるようにオレは腰を引けるぎりぎりまで引いた。
尻尾に巻きつかれているので完全に引き抜くまでは至らない。
動かすたびに絡みつく様はまるでオレが抜けることを嫌がるようだ。
それでいて入れるときには全体がうねって喜び迎えてくれる。
肉厚的な子宮口が先端に吸い付いては離したくないとばかりに吸い上げる。
奥へといざなうように、それでいて搾り取るようにうねる膣内。
まるで媚薬のように触れた部分を敏感に、それでいて尽きることのない精力を与える愛液。
ただ一度しか腰を引き、入れたというだけで既にこらえようのない射精感が湧き上がってくる。
「ふぁ…ああ、♪んんぅあ♪」
細い腰を震わせながらも巻きつく尻尾に力が入った。
びくびく震えつつもそれに合わせて締まってくる。
それがまたオレを高みへと押し上げてくる。
本当に、良すぎる。
何度も味わってきているのに、何度も体を重ねてきているのに。
この快楽には慣れそうにない。
慣れたところで抗えそうもないな。
強制的に本能を引き出される。
交わりたいと、求めてしまう。
「はぁ♪あ、ああ♪ユウタぁあ♪そんなはげ、しぃ♪」
重ねる手に力を込めて。
抱いた体を引き寄せて。
さらに行為の激しさを増していく。
フェンスがぎしぎしと音を立てて揺れる。
ベッドの上とはまた違う金属の耳障りな音がどうしてかいやらしく聞こえた。
学校という勉学を励むべき場で隠れての淫行。
普段学ぶために通っている場で人知れず体を重ねているというのはいけないことをしているようで妙な高ぶりを覚える。
そんな中、どうも限界が近づいてきたらしい。
とんとんと何度も最奥を叩くように動かしている中で欲望も弾けたがっている。
もともとリリムの蜜壺に抗えるわけがないんだ。
むしろここまで良く持ったというところだろう。
「フィオナ、もうっ!」
「んっ、うんっ♪私も、イク、からぁあ♪ちゃんと、中、にっ♪出してぇ♪」
蕩けた甘い声のまま、フィオナは腰を下げてきた。
それとあわせるように本能のままにオレは腰を打ちつけ、固定する。
離さないように。
一番奥で、果てるように。
そうして大量の精液がフィオナの膣内へと流れ込んだ。
「ああああああああああぁあぁぁ♪れ、てるぅうっ♪」
巻きついた尻尾が一段と強くしまり。
重ねた手から。
まわした腕から。
大きく震えるフィオナの痙攣がオレの体へと伝わる。
互いの体が重なり震え、快楽の波に呑まれながらも互いをきつく抱きしめて。
波が引き、痙攣が治まるまで強く抱きついていた。
一段落し荒い呼吸を整えながらもオレとフィオナはキスをした。
「ん、む」
「ん♪ちゅ…ぅんん♪」
行為の余韻を味わいながら。
互いを互いに感じながら。
膨大な快楽ではなくて、もっと温かく、甘い感覚を
心を満たす、快楽を。
「ちゅ♪…ふふ、いっぱい出したわね♪でも」
そう言ってフィオナは腰を揺らした。
その動きに合わせて彼女の膣もまた律動する。
まるで舐めまわすように蠢く。
思わず呻きそうになった。
「まだ、全然硬い…♪」
一度出したというのにまだまだ張り詰めているオレの分身。
たかだか一度で満足するわけもなかった。
そもそもフィオナのはあまりにも良すぎる。
萎える暇も与えてくれないくらいに。
それにオレもまたこの程度で満たされたわけでもない。
学生というのはかなり性欲お盛んなのだ。
それに、先ほど食したあれのせいでもあるのだろう。
既に下腹部では熱く滾った精が溜まってきている。
これじゃあ一度や二度じゃ済みそうにないな。
朝だって一人三回、計六回出したというのに。
「ユウタぁ♪もっと、しよ♪」
そう言って可愛らしくねだってくるフィオナ。
その甘えを快く応えてあげたいとは思う。
なんだかんだ言ってもやはり彼氏彼女。
…すでにそれ以上の関係かもしれないが、それでも大切な女性であるのでできる限りは応えたい。
だが、ここは学校。
そして今は昼休み。
限られた時間でできることなんて限られている。
「ちょっと待って…」
オレは学生服の後ろのポケットを探りそれを取り出した。
黒く薄い安物の腕時計。
腕に巻くのはなんだか変な感じがするので好まず、ポケットの中に入れているものだ。
それで時間を確認する。
デジタル表示で示されている時間は…。
「…あと二十分か」
授業の開始の時間まで既に二十分を切っている。
これならまだまだ余裕もあるしできるだろうが…。
だが問題は…これくらいで治まらないというところ。
先ほどの果実の効果がこれくらいで切れるとは思えない。
そりゃ普段に比べたら口にしたものの量は少なかった。
それでも媚薬のようで、同時に精力剤のような効果をあわせ持つ。
今までで一番酷かったときは二、三日は治まってくれなかったからなぁ。
それでも―
「んんっ♪」
手をフェンスから離し、尻尾はそのままで。
ぐるりとフィオナが体を回転させて向き合う形になる。
それと同時に膣もまた回転し、擦れて快楽が生じた。
「ちょ…っと急に、何…?」
「んぁっ♪やっぱり…向かい合ってユウタしたいし…♪」
「…そっか」
やはり互いの顔が見え抱きしめあうことができるほうがいい。
肌を重ね、体を重ね、唇を重ねることができるほうがいい。
オレもフィオナ同様に触れ合うことが好きなのかもしれない。
フィオナの顔が見える今。
蕩けながらも微笑むその表情を見ている今。
―好きなんだよなぁ。
好き。
オレはフィオナが好きだ。
だからこそ、オレもまた欲しくなってしまう。
あやかも共に抱いているときにも感じるが。
それでも二人きりだとよく自覚する。
どうしようもないくらいに好きでいて、嫌というほど欲しくなる。
心の底から尽くしたくて、これ異常ないほど愛おしい。
だからこそ。
「まったく、仕方ないな」
既に口癖に近い言葉を口にしながら苦笑した。
それはフィオナとあやかがわかる肯定の意味。
困ったような顔をしても、それでもオレからも求めている。
そういうことだ。
「それじゃあ…♪」
「ああ」
腰を下ろしてオレが下になる。
体の上でフィオナを抱きしめながら。
硬く無機質な屋上の床の上で…続きといこうか。
先ほどよりもずっと強く、ずっと大きく。
それでいて、激しく。
フィオナはオレに抱きつき、その柔らかな体を押し付けてきた。
吸い付くような白い肌が肌蹴た胸板に重なり彼女の感触が伝わってくる。
それと同時に安らぐ。
こうやって抱きしめ、抱かれていると落ち着くんだよな。
そんなことを考えながらもフィオナと手を繋ぐ。
片方の手は背に回し、もう片方は重ねて離れないように。
そうして行為は再開される。
「んんっ♪あ、ああ、あ♪」
激しい腰使い。
上下左右、前後しては渦巻くように回して精を求めてくる。
オレもまた動きを合わせるように腰を動かす。
熱く、触れたところが疼く媚薬のような愛液が伝っていき、染みを作る。
甘く、野外だというのに酔いそうな香りが充満する。
柔らかく、押し付けられた胸が擦れて言葉に出来ない感覚を伝えてくる。
それで。
「ひゅきっ♪ユウタぁあっ、ああっ♪大好きっ♪」
愛くるしく、その言葉を口にする。
快楽に蕩けながらも想いを伝える
それがたまらなく嬉しく、たまらないほど愛おしい。
その言葉をもっと聞きたかったがフィオナが唇を奪ってきた。
それと同時にまわされた腕にも力が入る。
まるで拘束のように。
美しく、柔らかく、甘い鎖のように。
隙間なんて存在しないほどきつく抱きしめあいながらも互いを貪りあう。
たっぷりと蜜のように甘い唾液を啜り。
ねっとり舌と舌を絡ませあい。
荒い息を吐きつつも激しさを損なわず。
欲望を、想いを重ね続ける。
「ふむっ♪…ん……ちゅ、んん〜♪」
くぐもった甘い声。
それと響く肉と肉のぶつかり合う音。
こんなに大きく響かせていたら下の教室にまで聞こえてしまうかもしれない。
そう思ったが思ったところで止めるとこはできやしない。
「んちゅっ♪ユ、ウタぁあ♪好きぃ、い♪」
紡がれる言葉。
沸き立つ想い。
体を重ねることにより得られる快楽よりは劣るだろうがそれ以上に温かな気持ちになれる。
それに、フィオナの抱く想いはオレもまた抱いている。
オレも同じように抱きしめ、尖った耳に口を寄せ呟いた。
「好きだ、フィオナ…っ!」
途端にきつく締まる膣内。
「う、ぁっ!?」
「ひゅぁあっ♪」
ぎゅ、ぎゅと小刻みに抱きしめ精を搾り取ろうとする。
既に下腹部で溜まった熱く滾る欲望が今にも弾けそうだ。
その上ぐりぐりと腰を回して押し付けてくる。
これ以上抜く気はない。
流れ出す精を一滴も無駄にしないため、全て子宮で受け止めるため。
オレの限界を悟られたのかもしれない。
それともフィオナもまた近いのかもしれない。
激しくなっていく腰の動き。
それと共に足に巻きついた尻尾もまたきつくなる。
「ユ、ウタ、ぁああ♪もう、私…またイきそう…っ♪」
「ああっ!オレ、も…っ」
フィオナの動きが止まり、子宮口が先ほどよりも吸い付いてくる。
共に降り注ぐのは疼くような熱を持った愛液。
そしていっそう強く体も、膣もまた同じく抱きしめられた。
もう…限界だっ!
「フィオ、ナっ!」
体を大きく動かし、降りてくる腰にぶつけ肉棒の先端を子宮につきたてた。
そして、二度目の絶頂。
「ひゃあああああああ♪」
「く、あっ…!」
全て搾り取るかのように腰が無意識に動かされ、オレもまた無意識に体が動く。
最後まで注ぎ込むために。
搾り取るような締め付けに貪るような腰の動き。
それによってたたき出される激しい快楽の波に呑まれながらも繋いだ手は離さない。
互いに抱きしめ絶頂の震えが収まるまで強く抱きしめていた。






「ねぇ、ユウタ」
「ん?」
あの後も熱が治まるまで体を重ね、ようやく行為を終え、後始末をして。
あと数分で授業が始まるというところ。
オレはフェンスに寄りかかっていた。
抱きついているフィオナの頭を撫でながら。
フィオナはこれが好きらしい。
オレが撫でるのはとても気持ちいいんだと言っている。
そうなのだろうか。
オレ自身よくわからない。
そりゃお父さんの実家にいる猫も撫でてやると気持ちよさそうにしてくれるけど。
まるで無邪気な子供のように気持ちよさそうに笑みを浮かべるフィオナ。
こうしてみるとリリムいってもやはり女の子なんだなと思わされる。
年頃の乙女。
恋する乙女。
淫魔だろうと、サキュバスの最高位だろうとそれは変わらない。
「怒って…ない?」
「どうして?」
「だって…その、こんなお昼に急にしちゃって…」
「…」
弁当を持ってきてくれたことは嬉しかった。
デザートがあんなものだったとしても、嬉しかった。
それに。
オレは撫でる手を止めてフィオナを見た。
見上げるように、そしてどことなく不安な表情の彼女。
「…怒ってるわけ、ないだろうが」
…そんな顔をされたら怒りたくなくなるっていうんだよ。
フィオナもオレのためを思って持ってきてくれたんだし。
それなのに怒るなんて勝手すぎるだろう。
フィオナはこれでもやることはやってくれるし。
時折家を空ける両親、また姉ちゃんに代わって家事をしてくれている。
掃除、洗濯、料理とさまざま。
オレもあやかも学校に行っている間にしてくれていることは嬉しい。
以前なんて帰ってきてからオレが全部こなさなきゃいけなかったし。
とても助かっている。
だから。
こうやって甘えられるときには甘えさせたい。
魔王の娘であったんだ、以前の生活も楽というわけではなかっただろう。
だからこそ、せめてこんなときぐらいはフィオナの好きにさせたい。
「よかった♪」
そう言って嬉しそうに微笑んだ。
「ねぇ、他の日も来ていい?」
「…えっと」
急な発言にどもってしまう。
だってそうだろう。
今日来ただけでもあの反応。
それが他の日も、それでオレに会いに来るというのだ。
嬉しいは嬉しいが…騒ぎになることは間違いない。
いや、絶対になる。
「…ダメ?」
「…」
…そうやって聞いてくるのはずるいんだよ。
まったく。
「…水曜日だけなら」
「だけ?」
「…」
…ああもう!!
「月、水、金の三日で」
「やった♪」
「…」
…なんていうか…甘やかしすぎているかもしれない。
これから週に三日フィオナが来るか…。
…友達に制裁、されるな。
でも、フィオナがこれだけ嬉しそうなんだ。
それくらい我慢しよう。
そう思ってオレは授業開始の五分前のチャイムがなるまでフィオナを抱きしめ撫でていた。



HAPPY END





―放課後―

「あやかー、帰るぞー」
「…ね、ゆうた」
「うん?何だよ」
「あんたからフィオナのニオイがするんだけどどうして?」
「っ!」
「それと一緒にゆうたの精のニオイもするんだけど…何で?」
「お、おいおい何言ってるんだよ。そんな犬じゃないとわからないようなことあやかがわかるわけないだろ」
「あたしはサキュバスだよ?精のニオイには敏感になってるんだよ」
「…」
「…昼休み、してたんだ?」
「…はい、してました」
「へぇ、あたしを抜きでたった二人で?」
「…いやだってあやかはいつも友達といるだろ?誘うに誘えないんだよ」
「でも普段からもよく二人で出かけてはなっがい時間帰ってこないときとかあるじゃん、いったい何してるのかな?」
「…えっと」
「近所の公園なんて茂みが沢山あるから何でもできるよね〜…ねぇ?」
「…」
「パフェ三個で黙認してあげる」
「…今月もう小遣いがやばいんだけど」
「じゃ、じゃあ…今夜、その分頑張ってよね」
「…尽くさせていただきます」
11/11/06 20:17更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
ということでした
なんやかんや言っていても結局は甘えさせてしまう主人公
それはフィオナが頑張っているからであり、また知らない彼女の苦労を思って…というところなのでしょう

それでも主人公には毎度のこともげてもらいたいと思ってしまいますw

このあと月水金はフィオナに、火木はお姉さんに求められちゃったりしますw

また後日談でお姉さんとの話、主人公が暴走しちゃう話、フィオナといちゃらぶ冬編なんてものも考えております!


そしてこの下からはちょっとした予告編です
もう一つの出会い
主人公が教団側に召喚され、フィオナと出会う物語です

――――――
それは、ある日のこと
ただ帰路を急ぐとある日の出来事
踏み切りに差し掛かり、急に来た電車に轢かれたと思ったらオレは―

―異世界にいた

「ようこそ、勇者様!」
「よく来た、我らが希望よ」

勇者として召喚されたオレに待っていたのは見知らぬ王とその娘であろう王女と、翼を生やした天使のような少女と、数多くの騎士とそれから

「どうぞよろしくお願いしますね、『高校生』君」

同じ世界から来た、『勇者』だった


―黒崎ゆうた―『勇者』―
「高校生がいきなり勇者って…無理があるだろ…」
「お互い…苦労してるね」
「魔物って…あれで!?」
「笑わせるじゃねぇかよ…これで勇者!?こんなことをするためにオレは呼ばれたのかっ!!」

―???―『勇者』―
「初めまして、ボクも貴方と同じ世界から来た者です」
「さて、それでは僭越ながら勇者であるこのボクが皆様を殺してあげましょうか」
「女性は…嫌いなんですよ」
「これがボクの正義です」

―エリザベス・ミリアム・ロザリオ―『王女』―
「それでは、護衛をお任せ致しますわ」
「勇者…さま…っ」
「ふふ、それでは今宵も共に夢を見ましょう、勇者様…♪」
「下がりなさい!下賎な魔物よ!!」

―フィオナ・ネイサン・ローランド―『リリム』―
「勇者、同胞を傷つける貴方を討伐するわ!」
「貴方は…何者なの?」
「ぶー…いけずなんだから」
「私はフィオナ・ネイサン・ローランド。魔王の娘で彼を旦那にする女よ」



二つの異端、対極の存在

白い魔物と黒い勇者

金色の姫と歪んだ正義

思惑と、想い

陰謀と、覚悟

「オレ達にはしなきゃいけないことがあるだろーが!!」

「どこの世界でも人は同じことの繰り返しです」

「これで私に手を出せる者はいなくなりますわ…」

「男一人のために国一つと戦う、魔王の娘としてそれくらいやってみせるわよ」


―『クロクロ勇者ルート 正義とオレと君とKISS』―


「えっと…結婚初夜ってどうすりゃいいの?」
「それは…私にもわからないわよ」
「それじゃあ…その、とりあえずよろしくお願いします」

――――――

というようなものを考えております
これはヒロインが敵側で会うことになるので…どうなるのかわかりませんね
新キャラも出る予定です!

それでは、次回ヴァンパイアルートで!

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