連載小説
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外と貴方とオレと膝枕 後編
「ん…むっちゅ♪」
「んんっ。」
「あぁ…ずるいです、フィオナさんばかり。私もキスしたいのに…。」
そう残念そうな声を出したのはエリヴィラ。
身をよじりオレにすがり付いてくるもフィオナがいるのでできそうにない。
…仕方ないな。
オレは名残惜しげながらもフィオナから唇を離してエリヴィラに重ねる。
「んっ♪」
「ふぁ…ユウタぁ…。」
そうすれば今度はこっちで残念そうな声。
これだから二人同時はきついんだ。
嬉しいは嬉しいんだけど…オレは一人しかいないのに二人同時に求められちゃ対応のしようがないじゃないか。
そうは言っても今のオレは唇はエリヴィラと重ねているが手は空いている。
二本とも腕は自由に動かせる。
だからオレはその手を使ってフィオナを抱き寄せた。
「あっ♪」
ただし、そのまま抱きしめることは出来ない。
なぜならいまだにオレの体は拘束されている。
離れないようにエリヴィラの蛇の部分が巻きついている。
それはオレを逃がさない拘束であり。
他のものを寄せ付けない守りでもある。
「…エリヴィラ?」
それに気づいたフィオナがエリヴィラを呼んだ。
しかしエリヴィラ、無視。
「ん、ちゅぴ…んんん♪」
「んんっ!」
フィオナの言葉なんて届いていないようにキスを堪能する。
フィオナのような激しさはない、優しいキス。
こちらが舌を絡めればそれに応じてくれて。
少し離して距離を置いて、また触れ合わせる。
深くはない、でも濃厚に。
激しくはない、それでも濃密に。
触れ合い、重ね、啜っては舐めあう。
エリヴィラらしい優しい口付け。
思わずオレもフィオナのことを忘れてキスを味わいたくなるほど。
このまま続けていたいと思うくらいに。
このまま甘く溶け合いたいと思うくらいに。
しかし、それを良しとしてくれるほどフィオナは我慢強くはなかった。
「ぶ〜!!」
あぁ…膨れてる。
オレの隣で膨れちゃってるよ。
まったく、子供っぽいなぁ。
そのうちいじけ出しそうな気もするんだけど。
しかしフィオナは膨れるのをやめた。
どうしたのだろう。
キスをしながら少しばかり顔を傾けて彼女の様子を伺おうとするのだが…。
「ふ、むぅ♪」
「むっ!!」
頬を手で挟まれて顔を動かすことが出来なくなった。
どうやらエリヴィラ、キスをしている最中に他に気をとられることが許せないようだ。
その気持ちはよくわかる。
でもエリヴィラ、力強い…。
意外と強い。
地味に痛いよ?
なんてことを思っていたら―
「―んんっ!?」
首筋に何か感じた。
ぬるりとした感覚を。
その感覚をオレは良く知っている。
オレから見て右首筋。
そこはある女性がよく噛んでくるところ。
血を吸うためにオレに噛み付いてくるところ。
それはヴァンパイアのクレマンティーヌ。
オレの妻の一人である。
彼女によく血を吸われながら時折舐められるのだが、それと同じ感覚だった。
首筋を血管に沿って舐められるあの感覚。
命を繋ぐ血の通り道を舐められるあの感触。
まるで命を舐められるような。
オレの存在を愛撫するような。
しかし、それをしているのはクレマンティーヌでない。
フィオナだ。
「む〜、むむ〜♪」
やわやわと甘噛みされる。
しかしその一方でたっぷりと溜めた唾液を舌の上にのせて肌に塗りつけられる。
擦り付けるように。
染み付けるように。
自分の証を残そうとするかのように。
それで終わってくれるわけもなかった。
フィオナはそこからするりと手を侵入させる。
先ほどエリヴィラがボタンを外していたからそれは容易に滑り込んできた。
するりと。
オレの胸を撫でていく。
「っ!」
ぞくりとした。
ただ肌に手が触れ、撫でられただけで。
「んちゅ、ふふ♪ユウタの体って硬くて…男らしくて、惚れ惚れする♪」
何度も見ているくせに。
何度も触れているくせに。
何度こうやって囁かれたかももうわからないのに。
それでも、やはり心躍る。
そう言ってくれる人なんていなかったし。
嬉しい。
思わずその言葉に応えたくなるくらいに。
「ふふ♪下のほうも―はぁっ♪」
いきなりフィオナの声の調子が変わった。
まるで快楽に蕩けたような声に。
「は、ぁっあ♪ユウタ、そこは…ぁっ♪」
「んー。」
まだエリヴィラに唇を離してもらえないからしゃべることはできない。
キスすることも出来ない。
だからオレがせいぜい出来ることといえばこれくらいだ。
本当なら野外でこんなことはしない。
今だけ、今回だけ。
フィオナの服は後ろが長く今の状態を見たら何をしているのかわからないだろう。
せいぜい悶えて震えてることがわかるくらい。
その服をいつも着ているのだから野外でしようと正面以外から肌を隠せているのでオレの言ったことに反しちゃいない。
でもやっぱり野外は気が引ける。
気が引ける分、調子に乗りそうになってしまう。
いけないシチュエーションほど燃えるというがあながち間違いじゃない。
そして、暴走しかけてしまう。
意地悪したくなってしまう。
だからこういうところでするのは勘弁してもらいたかったけど、今だけ。
オレは。
フィオナの下腹部へと手を這わせていた。
撫でて、そのまま下のほうへと移動していく。
フィオナがそうしようとしたように。
オレが先にそうしてあげる。
フィオナの下着。
それを下着といっていいのだろうか?
よくわからない、服ともいえるそれ。
男の情欲を湧き上がらせ、本能に従順にさせる服。
それの下腹部のところにオレの手は這いずる。
フィオナの下着の中へと潜っていく。
そして、フィオナのそこを指で撫でた。
「ぁあっ♪」
指先に感じる胸とはまた違う柔らかい感触。
それと同時に感じる湿り気。
それは彼女が感じてくれている証かそれとも朝の愛し合った証か。
とにかくそれに助けられるように滑らかな動きでオレの指はフィオナのそこを撫で上げる。
ただし、周りを。
ゆっくりと、焦らすように。
肝心の部分に触れないように撫で上げる。
「ふぁ…ぁ…も、っと…ちゃんとしたところを…触ってよぉ♪」
そう言われるも触らない。
焦らすように撫で続ける。
もともと性知識は豊富だったからか。
経験が追いついてくるとなんか、とんでもないことになるな…。
そろそろ少し激しくしようかと思ったそのとき。
ようやくエリヴィラが唇を離してくれた。
「んちゅっ…。」
ただ、少し不機嫌そうに。
「ん……エリヴィラ…?」
「ずるいです、ユウタ君。」
先ほどフィオナが膨れたような表情をしてみせる。
あー…どうやらキスしながらフィオナの相手をしていたことに対して怒っているのかな?
「キスしているときぐらいはちゃんとしてくださいよ…。」
「…はい。」
だったら二人でしようとか言わないで欲しい。
そう思ったがその言葉は心の内に秘めておこう。
言ったところでやめてくれる二人じゃないし。
「あ♪」
そこでなぜだかエリヴィラが嬉しそうに微笑んだ。
オレの体を見て。
ボタンを外して肌が見えている上半身を見て、じゃなく。
抱きしめられて傍から見ることの出来ない下半身を見て、だ。
それを見てオレも気づく。
…本当にオレはお盛んだな。
「ふふふ♪大きくなってますね、ユウタ君♪」
「あ、うん…。」
大きくなるなというほうが無理があるだろうに。
下半身が蛇でも。
肌が人の色ではなく薄青い色をしているとしていても。
目の前にいるエリヴィラは美女で、オレの愛しの想い人なのだから。
「ふふ♪」
嬉しそうに妖艶に笑ったエリヴィラはそのまま身を寄せてきた。
そんなに二人の間に隙間はないが。
もっと抱きつくように寄ってきた。
しかし腕を背にまわすようなことはせずに。
オレの体を撫でて、這っていく。
下へ下へと這っていく。
蛇のようにゆっくりと確実に。
それでも愛撫のように。
愛しい者の肌を擦っていく。
そして、たどり着いた。
「っ!」
「ぁあ、とっても硬いです♪」
擦って撫でて、それを確認する。
オレの男の証を。
両手で優しく撫でる。
一撫でして彼女はそれに手を掛けた。
ズボンのチャックに。
「出しますね…♪」
エリヴィラはそれを下ろしてすっと手を侵入させてきた。
硬く大きく充血したそれを探し出すのは容易くエリヴィラはそれをすぐに見つけ出す。
見つけて、傷つけないように丁寧に外へと出した。
「熱い…です♪熱くて、逞しくて、とっても素敵です♪」
そう言ってオレのものはエリヴィラの手に包まれる。
柔らかくて温かいエリヴィラの手。
思わず腰が引けてしまうが、引けない。
巻きつかれている状態で逃げ場さえないんだから。
あったら逃げるのかと言われれば…逃げないけど。
「ユウタ君…♪」
エリヴィラは恥ずかしそうに笑みを浮かべて自分の腰の部分に手を掛けた。
大事なところを隠している布を取るために。
オレと、繋がるために。
そしてゆっくりとそれを取り払った。
一枚の布の下から現れたエリヴィラの女の証。
既に濡れているのかいやらしく光るそれ。
淫靡で、とても綺麗。
「エリヴィラ…。」
「はい♪」
これ以上言葉は不要。
そっと身を寄り合わせ肌を重ね合わせるだけ。
好きあった同士、体を本能に委ねるだけ。
オレは何も言わずにオレのものをそっとエリヴィラの証にあてがって…。
「ずーるーいー。」
「…。」
「…フィオナ…さん…。」
いけない、忘れてた。
あまりにもいい雰囲気だったから忘れていた。
そうだった。ここにいるのはオレとエリヴィラだけじゃない。
フィオナもいたんだ。
さらに言うとオレの片手はまだフィオナの下着の中に入っているままだ。
よくこんな状態で忘れられたな、オレ。
「エリヴィラばっかりじゃないの。私だってして欲しいんだから…ん♪」
そういうことを言いながらオレの手を掴んで動かさないで欲しい。
こすり付けるように動かないで欲しい。
人の手を使って何してるんだフィオナ。
…あ、エリヴィラそんなに嫌な顔しないでくれよ。
あからさまに嫌な顔しないでくれよ。
そりゃようやく出来るところで邪魔されちゃ不機嫌になるのはわかるけどさ。
「フィオナさん…。」
エリヴィラが睨む。
綺麗な金色の瞳でフィオナを睨む。
…なにこれすげー怖いんだけど。
普段温厚な人物ほど怒ったときは恐ろしいというが…間違いじゃなかったな。
「わ、わかってるわよ。邪魔したいわけじゃなくて…私もして欲しいんだから…。」
しどろもどろに答えるフィオナ。
そんな彼女を前にオレは―
「―…。」
…仕方ないか。
ここで頑張るのが男の役目なんだし。
オレはいまだに侵入したままの手に力を入れる。
指先に、少しだけ。
先ほどの続きをするように動かす。
「ひゃぁ♪」
もう片手はエリヴィラの腰に回して。
「あ♪」
そして言った。
「このまま、しよ?」
一度に二人の相手をしようと言った。
その言葉に少し渋るような、それでも嬉しそうに笑みを浮かべてくれるエリヴィラ。
快楽に悶えながらも子供のような無邪気な笑みを浮かべるフィオナ。
あ、よかった。
了承してくれたみたいだ。
…でも。
二人同時に相手にするということで一番負担が掛かるのは言うまでもなく、オレ。
一人分がただでさえ激しく長いというのにそれを倍だ。
体は疲れるし体力だって精力だっている。
だからって、やめはしない。
それがオレの決めたことだから。
愛すると、決めたことだから。
フィオナを、エリヴィラを。
ヘレナ、セスタ、クレマンティーヌを。
五人を愛するって決めたんだから。
それ相応に頑張らせてもらう。
それがオレの義務であり、責務であり。
覚悟なんだから。
「それじゃ…エリヴィラ。」
そっと囁くように彼女の名を呼んだ。
「はい♪」
恥ずかしそうなそれでも嬉しそうな笑みで返事を返してくれる。
その返事を聞いてオレは腰を動かす。
あてがわれたオレのものを押し出してエリヴィラへの中へと進む。
柔らかな感触とぬるりとした粘液を感じながらオレのものは呑み込まれた。
温かいエリヴィラの中に包まれていく感覚は搾り取るようなものではなく優しく受け止められるようなもの。
思わず甘えてしまいたくなるような、甘えれば受け止めてくれそうなもの。
ゆっくりと時間を掛けてオレのものは全てエリヴィラの中に呑み込まれた。
呑み込まれて、同時に先端に触れ合う子宮口。
「んんっ。」
「はぁ♪」
思わず互いの熱い吐息が掛かる。
互いに何も言わない。
この状態を味わいたいために。
静かに、じっくりと確かめたいために。
オレは腰にまわしていた片手を戻してエリヴィラの手に添えた。
それに気づいたエリヴィラは応えてくれるように手を繋いでくれる。
勿論指を絡めて。
優しく繋いでくれる。
手のひらから伝わる彼女の体温。
温かくて、心地よくて、とても満たされるもの。
ずっとこうしていたい。
そう思ってしまうのも頷けるほど。
そうしているとエリヴィラが小さく笑った。
「やっぱりユウタ君としている時はとてもいいです♪」
「そう?」
「はい♪とても温かくて、とても落ち着けて、とても、幸せです♪」
「そっか。オレもだよエリヴィラ。」
そう言ってもらえるなんて思ってなかった。
とくに向こうの世界では聞けるような言葉じゃなかった。
だからつくづく思うんだ。
こっちの世界に来れてよかったって。
フィオナに、エリヴィラに、皆に会うことが出来てよかったって。

―ただ、それが不安になることも少しあるけど…。

「んん、ユウタぁ…っ!」
ねだるような声を上げてきたのは先ほどから蚊帳の外に置かれていたフィオナ。
我慢できなくなったのかオレの腕を上ってくるように手を動かしてくる。
そしてそのまま首にまわされる。
まったくこのわがまま姫は。
微笑ましくも時に悩ましいところがあるんだよな。
それを含めて愛しく思うんだけど。
「おう。」
小さく返事をしてオレは先ほどと同じように指を這わせる。
這わせるが、それと同時に手のひらを擦り付ける。
撫で上げるように。
フィオナを刺激するように。
「んんっ♪」
こすってさすって。
そうしていると手のひらまでがぬるりと湿ってきた。
フィオナの蜜によってだろう。
喜んでくれているということがわかる。
それがわかって、嬉しくなる。
今更どこで感じてくれるのか、どう良くなってくれるのかわからないわけじゃないけど。
それでも、オレので気持ちよくなってくれているということは嬉しい。
オレは中指を立ててフィオナの中へと差し入れた。
「ひゃっ♪」
蜜で湿ったそこに何の抵抗もなく埋まっていく。
ゆっくりと、深く。
差し込むたびに指を伝って蜜が溢れ、フィオナの下着に染み込まれていく。
「はぁ、あ…っ♪」
ゆっくりと動かすたびに震えるフィオナの体。
朝していたというのにオレの指をきつく締め付ける。
「っ。」
動かすたびに、呑まれるたびに。
指の感覚が鋭くなって。
中で擦られて神経を浮き彫りにされて。
まるでオレのものを差し込んでいるかのように思えてしまう。
ただ指を差し込んでいるだけだというのにこちらが果ててしまいそうになる。
それでもオレは指を動かしてフィオナを悦ばせようとする。
これでも結構手先は器用なんだ。
経験さえ積めばそれなりの動きをすることも出来る。
「ふぁっあ…すごい、いい…っ♪」
腰をくねらせてもっとねだろうとしているのかフィオナは顔を近づけてきた。
ねだりながら、キスもねだろうとしているのか。
本当に貪欲で、強欲で。
本能に従順で、欲望に素直で。

―愛しいんだよなぁ。

オレも応えるように顔を近づけ、キスしようとした、そのとき。
「っぁ!?」
思わず情けない声が出かけた。
快楽に蕩けた声が出そうになった。
目を見開いて、驚いた。
「ユウタ君…私もかまってくださいよ…。」
「…ごめん。」
不機嫌そうな表情をしたエリヴィラだった。
どうやらかまって欲しくて腰を動かしたのだろう。
思わず快楽に声が震えるところだった。
いけないいけない。
エリヴィラを忘れていた。
どうも一方を相手すると集中しすぎてもう一方に気が回らなくなってしまう。
わかってはいる。
いるんだけど…。
オレが相手を気持ちよくさせてるということがあまりにも嬉しくて頑張りたくなっちゃうんだよな。
もともとされるのよりも尽くすほうが得意だし。
それがオレの性分なんだから。
「ユウタ、君…♪」
「ユウタぁ♪」
エリヴィラはオレの首に手を回して、抱き寄せて。
フィオナはオレもオレの首に手を回して抱きしめて。
二人して身を寄せてねだってくる。
それに対して、オレは。
「…頑張らせていただきます。」
精一杯。
全身全霊で。
そう言ってまず腰を動かした。
エリヴィラの中に埋まっているオレのもの。
腰を動けば当然それも同時に動く。
腰を引いて、オレのものをエリヴィラの中から引き抜く。
「あ、はぁ…あんっ♪」
エリヴィラに巻きつかれているので動きは制限されてしまうがそれでも引けるところまで腰を引いた。
引いて、止まる。
ちょうどオレのものの先端がエリヴィラの中から出ないという位置だ。
…フィオナと同じようなことをするんだな、エリヴィラ。
抜こうとしても抜けないように。
逃げようとしても逃げられないように。
拘束して、束縛して、抱き寄せる。
でもその拘束は嫌じゃないんだよな。
引き抜いたのと同じ速度でエリヴィラの中へと差し込む。
「んんっ♪ぁ…ふぁ…ユウタ君…っ♪」
差し込むときは拒まず、抜こうとすれば締め上げて抵抗する。
そして全て飲み込まれると優しく包み込んでくれるエリヴィラの中。
優しく温かく蕩けるような快楽がオレを包む。
「エリヴィラ。」
そっと手を伸ばして頬を撫でて、彼女の名を呼ぶ。
そのまま甘い空気の中で、彼女の中でもっと触れ合いたいと思うのだが、止まる。
今は二人じゃなくて、三人だから。
「フィオナ。」
三人一緒に気持ちよくなろう。
そのために全力で尽くすまで。
オレはフィオナのほうを見た。
「ユウタぁ♪」
切なそうな声を漏らし、真っ赤な顔でオレの名を呼ぶ彼女。
ただ見ているだけで理性を奪われかねないその姿。
妖艶で、淫靡でそれでいて綺麗で可愛らしくて。
愛らしい。
そんな風に感じながらも指の動きを再開する。
先ほどとよりも深くへ差し入れ。
先ほどよりも強く撫でる。
爪で傷つけることのないように、指の腹で。
時折くすぐる様に小さい動きで。
「ひゃ、あぁぁっ♪」
撫でるたびに中が締まって指が柔らかな感触に包まれる。
熱い粘液が絡みつき指を逃がさないようにと締め付けて。
その反応をしっかりと感じながらオレは腰を動かし始める。
エリヴィラとの行為を再開する。
「んんっ♪」
不意打ち気味だったのか予想外の感覚にエリヴィラの体が震える。
その動きと同じように彼女の中も締まった。
「っ。」
締まって、どろりとした熱い蜜がオレのものに降りかかる。
思わず蕩けそうになる感覚。
腰が抜けてしまいそうな感触。
目の前が真っ白になってしまいそうで。
意識なんて弾けてしまいそうな。
それを歯を食いしばって何とか耐える。
耐えて行為を続ける。
腰を動かしエリヴィラを喜ばせることを。
指を動かしフィオナを感じさせることを。
エリヴィラに巻きつかれていて、フィオナもオレのほうを見ているので何をしているのかわからないだろうが傍から見ればオレが攻めているように見えるだろう。
でも、実際は逆かもしれない。
エリヴィラによる甘い快楽に今にも腰が砕けて貪りたいと思ってしまう。
フィオナによる熱い快感に今にも意識を削がれそうになってしまう。
理性は削られ、欲望が滾る。
場所が外だということを忘れてただひたすらに交わりたいと思ってしまう。
攻めているように見えて攻められているのはオレなのかもしれない。
「ひゃぁあ、あっ♪ユウタ君のが、奥まで届いて、ぇ♪」
「ふ、ぁぁぁっ♪ユウタ、激し、いぃ♪」
引いて押し込み。
撫でて擦って。
そして感じて。
二人同時に相手するというのはやはり体力がいる。
その二人の相手がエキドナとリリムなのだから当然で。
愛しい妻だからなおのこと。
頑張りたいと思う反面自身の体力切れを心配してしまう。
…いや、体力じゃなかった。
インキュバスになってから異常な体力と精力を持った今の状態、これぐらいで体力切れを起こさないだろう。
切れそうなのは理性のほうで、意識のほう。
弾けて切れてしまいそうになる。
そして暴走してしまいそうになる。
気を抜けば二人をめちゃくちゃにしたいという欲求に呑まれそうで心配である。
それはいけない。
愛しい相手に尽くすことが目的で、めちゃくちゃにしたいとは思ってないから。
「はぁ…あむっ!?」
荒い息を吐いて呼吸を整えようとしたその時。
口を開いたわずかな瞬間を狙って唇を押し付けられた。
そのまま舌がゆるりと侵入してきて口内を犯し始める。
激しく、やらしく。
切なく、強く。
深くて甘いキスをする。
その相手が誰だか何て見なくてもわかるだろう。
「あぁっ!ずるい、です、フィオナさん、んぁあっ♪」
快楽に声を蕩けさせながらも言ったエリヴィラ。
彼女の言うとおり今オレに吸い付いているのはフィオナだろう。
その証拠に目の前で瞼を下ろしてキスを味わっているのはフィオナの顔だ。
赤く染めた顔でひたすらにオレの口内を味わっている。
べったりと唾液をオレの舌に塗りつけて。
時折啜っては口内を蹂躙する。
朝よりも激しい分オレの頭の中まで犯されているように感じた。
「ちゅ、ちゅるっ、んん…♪ふ、むぅ…ちゅ、ユウタぁ♪」
「んん、ふむ…フィオナ―んんっ!?」
ようやく唇を離したところで。
互いに名を呼び合ったところで。
潤んだ瞳で視線を交わしたところで。
再び塞がれる唇。
誰かなんてもうわかるに決まっている。
エリヴィラだ。
フィオナとのキスを目の前で見せ付けられて彼女もたまらなかったということか。
とにかくだ。
ねだってきたのならオレはそれに応えるまで。
下げていた手を上げてエリヴィラの頬に添えて。
舐めあうようなキスをする。
「ちゅ、ん♪ちゅ、ちゅっ♪」
「ふ、むん。」
舐めあうような、啄ばむようなキス。
舌を差し入れない唇で愛撫するようなもの。
時折温かく湿ったものが唇を舐めていく。
舐めて、塗りこんでいくように蠢く。
どれでもオレの口内へと侵入してこない。
まるで誘うようだ。
その誘いにオレは乗ることにした。
唇を舐めるエリヴィラの舌を追いかけてオレの舌を差し入れる。
その綺麗な唇に。
優しく甘い口付けと共に。
「ん、ふ、エリヴィラ…っ!」
「はぁっ♪んちゅぅ、んん…む、んっ♪ユウタ、君ん♪」
名を口にするたびに胸の奥から湧き上がるこの感情。
温かくて、気持ちよくって。
嬉しくて、愛おしい。
舐めて、探って、絡み合わせて。
唾液が漏れ出さないように。
一滴も逃がさないように。
オレとエリヴィラはゆっくり、それでいて深く口付けをし続ける。
「んちゅ、ぷはぁ♪」
「んぁっ!」
エリヴィラの口から名残惜しそうにオレの舌を引き抜いた。
二人の間に銀色のアーチが掛かってぷつりと切れる。
荒く熱い息が互いの顔にかかる中お互いの唾液で濡れた舌を引いたそのとき。
「ふむっ♪」
「んー!?」
「あっ!フィオナさんっ!!」
今度はフィオナに吸い付かれた。
またか、と思いながらもやはり応じてしまう。
やっぱりオレも好きなんだな。
フィオナのことが。
勿論エリヴィラのことも。
ヘレナ、セスタ、クレマンティーヌのことも。
そう思いながらもまた舌を伸ばして―
「んちゅっ♪」
「―むっ!?」
フィオナが吸い付いた反対側。
そこへ今度はエリヴィラが吸い付いてきた。
二人同時によるキス。
唇が吸い付いるので舌を戻すことも出来ずされるがままになってしまう。
「ちゅっ♪んちゅ♪」
「んん〜む♪」
舌にキスをされ、二人の舌が絡んでくる。
一人と一人じゃ感じられないキス。
フィオナの舌が裏を舐めればエリヴィラの舌が脇を舐め上げ。
エリヴィラの舌が絡まればフィオナが啜ってくる。
気持ち、良すぎる。
抵抗する気なんて起こらなくなるくらいに。
理性なんて捨てて求めたくなるくらいに。
もっと。
もっと欲しくなるくらいに。
「っ!!」
だが二人はその欲求を知ってかしらずか。
それとも自分が求める欲望のままにか。
行為を続けた。
オレを求め続けた。
フィオナはいまだに差し込まれているオレの指をきつく締め付けて。
オレの手のひらに蜜をこすり付けて。
エリヴィラは腰を動かして。
呑み込んでいるオレのものを優しく締め上げて。
二人同時の攻め。
二人同時の求め。
「ちょっと…っ二人、ともっ!」
舌を離して二人から離れようとするが。
腰を引くにも引けなくて。
指を抜くにも腕をつかまれてて。
逃げ出すにも逃げ出せなくて。
優しい快楽が。
激しい快感が。
オレの体を駆け巡る。
「ユウタ君んんっ♪」
「んん、ユウタぁ♪」
離れてもすぐに抱きついてきてすぐに甘美な感覚の渦へと誘われる。
エリヴィラはオレの体に手を回して、抱き寄せて。
フィオナはオレの首に手を回して抱きしめて。
二人して、さらに強く。
さらにきつく、さらに温かく。
オレの逃げ場をなくして拘束して、強い快楽を叩きつける。
こ、こんなの…っ!
耐えられるわけがない。
耐え切れるわけもない。
こんな魅力的な女性二人に攻められて。
こんな魅惑的な想い人に求められて。
オレは今にも果ててしまいそうだった。
そして、限界はやってくる。
オレのものがびくりと震えた。
エリヴィラの中で大きく跳ねた。
彼女はそれがなんだかわからないわけもない。
エリヴィラと何度も肌を重ねていて、これが何の予兆かわからないわけでもない。
「あっ♪ユウタ君、イきそう、なのですね♪」
嬉しそうに腰の動きを早めるエリヴィラ。
それにつれて快楽もまた増大する。
「っぁ!」
思わず声が漏れてしまう。
情けない声を聞かれたくはない。
なのでそれを何とかこらえようと歯を食いしばるのだが―
「はむっ♪」
「―んむっ!?」
耐えようとして、フィオナが唇に吸い付いてきた。
先ほどの激しい脳内まで犯すようなキスがまた再開される。
歯を食いしばりたいのにできない。
唇を噛んで耐えたいのにできない。
逃げることも抗うこともできない。
「出してくださいっ♪いっぱい、一杯ユウタ君の精液、くださいっ♪んんっ♪」
「はむっ!?」
エリヴィラまで唇に吸い付いてきた。
フィオナを押しのけるようにしながらキスをする。
二人の唇がオレの唇に重なって。
その一方でフィオナが口内まで舐めていれば。
エリヴィラはオレの唇を執拗に舐め上げる。
それでも彼女の腰は止まらない。
抜いて呑み込み擦って絡めて。
先端に子宮口が吸い付けば全体が締め上げて。
そのたびに蕩けるような、溶け出すような感覚に翻弄される。
そんな常識外れの快楽に。
あまりにも膨大すぎる快感に。
オレは果てそうになりながらも―
「―んむぅっ♪」
最後の抵抗を試みた。
というのも指を動かしただけ。
中指を折り曲げて、親指の腹で撫で回す。
ただし、それは。
フィオナの中でしたことであって、親指が撫でているのは女性の敏感な部分。
「ん、ん、んんーっ♪」
忘れるわけもない。
三人で、気持ちよくなろう。
そう決めたのだから。
できる限り、精一杯尽くすまで。
唇を重ねているのでくぐもった声しか出せていないが、そうとう感じてくれているということがわかれば十分。
先ほどからもしていたからだろう、既に限界の近いフィオナ。
オレはそのまま親指に力を込めて―
「―っ!!」
「んんん〜っ♪」
込めたところで、果てた。
フィオナの体が硬直して痙攣するのと同時に限界を迎えてしまった。
体の内側で滾っていた欲望が流れ出した。
「んんんんんんんひゅぅぅぅうっ♪」
流れ込むと同時にエリヴィラの体が大きく痙攣する。
艶のある嬌声を上げながら震え上がる。
そして、締め上げる。
オレのものをきつく。
一番奥で。
逃げ場のないところで。
エリヴィラの子宮に全てを注ぎこむように。
一滴も漏らすことないように蠢いた。
奥へ奥へと誘うような動きじゃなくて。
優しく包んでくれる甘い動きでもなくて。
貪欲に。
強欲に。
先端はオレのものの先を離さないで。
オレのものからさらなる精を搾り取ろうと締め上げて。
激しく強く蠢いた。
その動きに応じるようにオレもまたさらに精を流し込む。
人間には明らかに多すぎる量を注ぎ込む。
そうして、やっとのことで精を流し込むのをやめて。
いまだに小刻みに震えるフィオナの中から指をゆっくり引き抜いて。
少しばかり体を離して、巻きつかれているので後ろにあるエリヴィラの蛇の部分に背をもたれさせて。
一息ついた。
…疲れた。
それも予想以上に。
今までだってその…複数でしたことはあったけど。
やっぱり疲れるな。
体力的にというか、精神的に。
こっちをかまえばそっちが求めて。
そっちを相手すればこっちがねだる。
体一つじゃ厳しいものがあるもんだ。
分身なんてできたらどれほどいいのだろう。
…いや、できなくていいか。
オレは一人なんだから。
一人で全員愛するって決めてるんだから。
「ふ、ぁ…♪ユウタ君の精液が…おなかの中に…一杯です…♪」
いまだにオレのものを呑み込んでいるエリヴィラは下腹部に手を当てて微笑みかけてきた。
先ほどまで快楽に蕩けていた顔で。
その余韻を残しながらも優しげに、愛おしいそうに。
オレに微笑みかけてくれた。
「すごくよかったよ、エリヴィラ。」
オレがそういうと彼女はすっと身を寄せて。
先ほどオレが離れた隙間を埋めて擦り寄って。
そっと手を繋いで。
額を触れ合わせて。
気恥ずかしげに小さく笑って。
「私もです、ユウタ君♪」
そう言って優しいキスをして―
「ふみゅっ♪」
「―んむっ!!」
「………。」
できなかった。
いや、キスはできた。
ただしエリヴィラとではなくてフィオナとだけど。
オレの頬を両手で挟みこんで無理やり自分のほうへと向けて。
唇を押し付けられて、重ねられて。
技量も何もない、唇を押し付けるだけのキス。
荒っぽさのあるフィオナらしいキス。
……ここで邪魔しちゃいけないと思うんだけどな。
まったくこのわがまま姫は。
「ちゅっん♪ユウタぁ、次は私にしてぇ♪」
唇を離して、いやらしく舐めてきて。
妖艶にオレを求める言葉を言った。
…来るとは思っていたさ。
ただの指くらいで満足してくれるほどフィオナの求めは浅く優しいものじゃないからなぁ。
それくらいわかってる。
かなりわかってる。
それから―
「ダメですっ!ユウタ君はまだ私とするのですからっ!!」
―エリヴィラも同じということを。
優しく甘い求めでもその欲求はフィオナと同じ。
オレを求めることは共通している。
そして、これくらいで満足してくれない事だって、同じ。
「エリヴィラは今してもらったじゃないの!」
「そういう貴方は朝から愛してもらったのでしょう!」
あーあ…まったく二人は…。
普段は仲がいいのにこれにいたってはいつもこうだ。
オレを求めてくれるがゆえに、喧嘩する。
嬉しいなんて感じてしまう自分を複雑に思いながらもオレは苦笑した。
自分自身に対して。
それから、微笑ましい二人に対して。
「ほら、二人とも。」
腕を伸ばして。
身を寄せて。
二人の背へと手を回して、オレは二人を抱きしめた。
ただ、フィオナはエリヴィラの体があるので上半身だけだけど。
「ユウタ?」
「ユウタ君?」
「まったく二人は…喧嘩はしないでくれよ。」
困ったような表情を浮かべているだろうオレは。
というか、本気で困っているオレは。
自分からさらに困るような発言をした。

「そんなにしたいなら…存分に付き合ってあげるから。」

自殺発言、だろう。
一人相手でもこの発言はとんでもないのに。
それを、二人同時にだ。
それがどれほど大変なことかわかっている。
でも、やっぱり。
尽くしたいと思っちゃうんだよな。
「本当っ!?」
「本当ですか!?」
「本当も本当。だから喧嘩なんてしないでくれよ。」
そんなことを言いながら午後まで体力が持ってくれるだろうかなんて心配しながらオレは続ける。
「あ…たださ。」
控えめにそれを口にする。
別に二人の求めが嫌とかいうことではなく。
二人の求めに対応できないとかいうわけではなく。
それを言った。
「やっぱり室内でしよう?」
こうやって周りから何をしているか見えないようにしているのはいいけど。
それでもやっぱり見られているというのは生きた心地がしないというか。
二人の乱れに乱れた姿も声も、独り占めしたいというか。
そんな気持ちから。
そんな感情から。
オレは二人に微笑みながら言った。

「野外はこれっきりにしてくれ。」

なんて事を言いながらこの後もピクニックと称して大きな木の下でフィオナとしにいっちゃったり…
茂みの中に隠れてエリヴィラとしちゃったり…
そんなことも多々あるのだが…まぁ…それはその…
…若気の至りっていうことで…。
11/07/29 21:04更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
ということでエリヴィラ編でした!
エリヴィラ編といいながらフィオナも出ての3P!
港ルート以来でしたので上手くできたのか不安です
流石にフィオナとはしなかった…けど
この後主人公は二人にたっぷり絞られましたw
そりゃもうとんでもないくらいに!

そして次回は!
バフォメットのヘレナ・ファーガス
彼女が出ます!
それでは次回もよろしくお願いします!!

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