連載小説
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街ルート ミルクと君とオレとハンカチ  中編
カランカランッ
ドアについた小さな金色の鈴がかわいらしい音をたてた。
ここは「ミルミルオーレ」。
魔物ホルスタウロスのラティさんが一人営む牛乳屋。
「ラティさーん?いますかー?」
店の中はシン…としている。
寝ていたりするのかな?
年がら年中昼寝が似合いそうなイメージあるもんな。
なんて考えていたらパタパタと何かの駆ける音がしてくる。足音だろうか?
「ラティさーん?」
「はぁい!」
間延びした、おっとりしている声が店の置くから聞こえてきた。
ラティさんがその姿をあらわす。
ボインッ
揺れた、めちゃくちゃ揺れた。
ついでにオレの理性も少し揺れた。
「ど、どうしたのかなぁ?ユータ君。わ、私何か忘れ物でもしたのかなぁ?」
おっと珍しい。
あのおっとり系のお姉さんのラティさんが慌てている。
あ、ちょっとかわいいかも。
なんて考えを余所に置いてオレはラティさんの目の前に紙袋を差し出した。
「これ、どうぞ。今日ラティさんの誕生日らしいじゃないですか。それの誕生日プレゼントです。」
「ふぇ?へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
かわいらしい声を上げてくれるラティさん。
うん、かわいい。
年上の人に使うような言葉なのかは知らんが、その言葉が彼女には良く似合うだろう。
オレのいた世界にはこんなにかわいらしい人はいなかった。
双子の姉もその上の姉ちゃんも、この人にはかてないだろう。
…うん、とくに胸なんかは…。
「い、いいのぉ!?これもらってもぉ!?」
「いいんですよ。誕生日プレゼントですからね。」
「ふえぇぇぇぇぇ!ありがとぉぉぉ!!ユぅタくぅぅん!!」
そのままぎゅっと、抱きしめられる。
ちなみに言うと、オレと彼女の身長には少しばかりが差がある。
……うん、オレのほうが少し低いんだ。
そこ!小さい言うな!!16●センチは十分にでかいだろーが!!ラティさんの方が大きいんだよ!!きっと…。
っと、話がずれた。
まぁ、何が言いたいのかというならば。
今のオレの顔は身長の差によって、ラティさんの胸に埋まっていた。
「おわっ!!ちょ!ラティさん!!!」
「あぁぁりぃがぁとぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ちょ、抱きしめたまま揺らさないで!!オレにとってこんな強い刺激は初めてなんだから!!
あわてて彼女からの束縛を逃れ(名残惜しいが)少しばかりの距離をおいた。
「とりあえず、誕生日、おめでとうございます!ラティさん!」
「うん!ありがとぉユぅタ君!」
そう言って浮かべるにこやかな、心底嬉しそうな笑みだ。
俺もつられて嬉しくなってしまいそうなほどに。
「あけてもいいかなぁ?」
「いいと思いますよ。というか、あなた宛のプレゼントなんですからあなたの自由ですよ」
「あっ、そっかぁ」
ちょっぴり舌を出して笑うラティさん。
うわぁ、いいわぁ。
紙袋に手をかけ、袋を開けようと―――
「あれぇ?何か書いてあるぅ?」
袋の裏面に何かが書かれているのをラティさんが見つけた。
書いてある?それはきっとレグルさんとキャンディさんからの祝いの言葉だろう。
だってそのプレゼント用意したのはレグルさんらしいし。
「えぇっと…『そこにユータがいるならせっかくだからユータから中身を受け取れ!きっと忘れられないプレゼントになるぞ!』…だってぇ」
「?」
うん?なんだそりゃ?
オレから渡したほうが思い出にでもなるって言うのか?
「そういうわけだからぁ、はぁい。」
ラティさんから紙袋を受け取り、書かれている文字に目を通す。
…が、わからない。恥ずかしながらいまだにこちらの世界の文字は読むことができないんだ。最低限、店のメニューを覚えるくらいはしたのだが…。
文章になると分らなくなってしまう。
ほんとに別世界から来ると大変だな。
そんなことを考えつつもオレは紙袋の中に手を入れた。
プレゼントらしきものが、指先に触れる。
「おっとあった。それじゃあラティさん準備はいいですか?プレゼントとのご対面ですよ。」
「うん、いつでもいぃいよぉ!」
「それでは…」

バッと、プレゼントらしきものを引っ張り出した。
それは風になびくほど薄いもの。
布で作られた正方形の物。
オレの働いている食事処の店名前の由来。
ハンカチーフだった。
なるほどこれをプレゼントとするのか。なかなかレグルさんも粋なことしてくれるじゃないか。
っと思ったのは0,5秒のみ。
その色を認識したとき、オレは一気に血が引いたのを感じた。
オレの手により引き出されたハンカチーフ。
その色はなんと

          赤色だった

赤、牛、布、人、闘牛士。
頭の中で回転しているその文字たち。
そう、つまり。
オレの目の前にいる彼女、ラティさんはホルスタウロスで、つまるところ
牛なわけで!!

「……ブモォォォォォ!!!!」

恐ろしく興奮したラティさんにとてつもない勢いでタックルをオレの腹部に食らわせた。
薄れ行く意識の中にオレは誓いを立てる。
あの野郎、行きすぎなはからいしやがって…殴ってやる!と…

カランカラン
タックルの衝撃で鈴が鳴り響く。
その衝撃によって揺れたのは鈴だけでなく、表の看板がくるりと、なんとも都合がいいように回っていたことにオレも彼女も気づかなかった。

        「ミルミルオーレ」
         ただいま閉店中
11/01/16 17:11更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
中篇でございます!いやぁ、思っていたよりも長引いてしまいました。次こそはエロを書きたいと思います!エロに期待している人!お楽しみに!!

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