連載小説
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ご主人様は…オレ
「はい、それじゃあここで起きたことがわかる人、いるかな?」

よく通る声が教室の奥まで届く。皆、その声に聞き入りながら彼女の姿を見て―否、見とれていた。
まるで蕾が花を開かせたような、元々あった素質が開花したような雰囲気はかつての危うさなんてない。ふと目で追いかけてしまう色気が溢れ、視線を離せぬ愛らしさに心を奪われる。落着きある振る舞いが、自信に溢れた声色が誰からも不安を取り除き不思議な安心を与えてくれる。
しかし、期待は止むことなく。
されど、その時を皆望んでいる。

「わかる人は手を上げて答えてね。間違っても、その分頭に残りやすくもなるからね」

にっこり笑いつつチョークを一度置き、指示棒へと握りなおす。その指先からも言葉にできない自信が漂っているのがわかる。
まるで別人のような有様だった。だが、結局彼女の根本は変わらない。

「―そうだね。だからこのとき―あれ?あれ?」

生徒の発言から黒板へと続きを書こうとして手を止める。いくら表面を擦ったところで何もつかないことを不審に思い、視線を向けてようやく気づく。
握っていたのはチョークではなく指示棒のままであったということに。

「ももちん、それ指示棒だよ〜」
「ももちんったら相変わらずなんだから」
「いいぞー!ももちん!」

そんないつも通りの姿が愛おしくて誰もかれもが安堵する。いつもと変わらぬ御子柴先生らしさに。
だが、同時に皆感心していた。
以前よりも格段に良くなった授業中の態度。ドジは少なくなりつつ、心配することも徐々に減ってきた。しかし、それで寂しく思う者はいない。むしろ、その成長ぶりに皆惑わされていた。
愛らしさには磨きがかかり、女の色気が滲み出す。異性は当然だが、同性すらも見惚れてしまう。魔性の女ではないはずなのに垣間見える妖艶さは疑いようのないものだった。



理由を知っているのは―オレ一人だけ。



その事実は優越感を生み出すが同時に取り返しのつかない後悔が板挟みをしてくる。原因を作っておきながら打つ手はなく、何をすべきかわからない。
おかげで授業内容なんて頭に入ってきやしない。暴君に相談したところで返答は手厳しい暴力だろう。
頭を抱えたいのを堪えながら昼休みのチャイムを聞く。号令で頭を下げたあと、気分転換にと思ったオレはトイレへと歩み出した。


―否、逃げ出した。



「…どうしよう」

疲れたようにため息をつきながら瞼を閉じて項垂れた。
悪いことはない、はずなのに。
授業中に向けられた視線の奥、瞳に隠した妖しい光に気づいたのは何人いたことだろうか。
スカートで隠した秘密が期待に揺れ動いていたのをわかったのは誰がいただろうか。
それが何を意味しているのか、理解できるのはきっとオレとあやかのみ。
どう考えても悪いことでしかない。そんな覆せぬ事実に大きくため息をつき、鏡に映る疲れた顔を見ていたその時だった。

「あ、『黒崎君』見っけ」
「はいぃっ!?」

あってはならない場所での御子柴先生の声。見ればトイレの入り口からこちらを興味深く覗き込む御子柴先生がいた。

「何やってるんですか先生!!」
「大丈夫だよ、近くに誰もいないから」
「いや、ここ男子トイレ!」

慌てるオレなど気にすることなくずかずかとトイレへ入ってくる。慌てながら手を洗うとハンカチを差し出された。受け取り手を拭くとにへらと笑って頭を突き出してくる。
わかってる。褒めてほしいということを。
ただ、どうしてなのか。その笑みは純粋でありながら―妖しさが垣間見える。

褒めてもらいたい―だけに思えない。

頑張りを認めてほしい―で終わらない。

これがただの勘違いであったら良かったが、流石のオレでもこれがおかしいことには気づく。
犬の嗅覚で容易く居場所を見つけられ、犬の耳は人の気配を敏感に察知してここぞとばかりに身を摺り寄せてくる。拒否できるほど冷たくもなく、その愛らしさ故に突き放せない。
学校故に名字で呼ぶが、誰も邪魔が入らなければひっきりなしに抱き着いてくる。それが男子トイレだろうと更衣室だろうとおかまいなしに。

「ねぇ、黒崎君。今日の私の授業どうだった?」
「え?ドジったところがありましたがそれでも前よりずっと良くなってると思いますよ。これなら心配して授業を見ることもなくなりそうですし。あやかだって納得してくれると思いますけど」
「んふ♪私頑張れたかな?」
「え、ええ。すごく頑張れてました」
「それなら褒めて」
「ここで!?」

何度も言うがここは男子トイレである。本来御子柴先生とは縁も所縁もない場所だ。
だというのにお構いなしに身を寄せてぐいぐいとオレの体を押してくる。背後にあるは洋式トイレの個室でありそこめがけて押し込めるように。

「ちょ、ととととっ!」

本来押し返せるはずなのに彼女は容易くオレを個室へと押し込めた。ドアを閉じ、鍵をかけてぱたぱたと尻尾を振る。褒められることを期待しての行為だろうがあまりにも行き過ぎてる。

「ここなら大丈夫かな?」
「ダメでしょう!」
「…褒めてくれないの?」
「うっ」

涙を溜めた上目遣い。心なしか打算的なものを感じてしまう。ドジっ子な彼女はどこへ行ってしまったというのだろうか。
顔を背けどうするかと悩む。このまま褒めるのもいいだろうが、最近の御子柴先生はあまりにも行き過ぎている。褒められたいがために頑張るが、褒められるためならば何でもやりかねない。
例えば、そう、二人きりの時は特に―

「もっともっと、頑張ればいいかな…?」
「え?」

強い決意を秘めた瞳。その奥に秘かに燃える情欲の炎。見慣れたオレにしか分からない女の妖艶さを滲ませた雰囲気に本能が反応する。
逃げ出そうにもドアの前には御子柴先生。そして狭い個室の中。動ける範囲は限られ、さらには学ランが掴まれてはどうしようもない。

「いっぱい頑張るからね!」

慣れた手つきでズボンが下され下着も同様に脱がされる。御子柴先生は臆することなく顔を近づけるとすぐさまオレのものを口へと含んだ。

「んむっ」
「っ!!」

途端に感じる湿った温もり。続くのは独特な柔らかさを持つものが舐っていく感触。ねっとりとした唾液が絡み、吐息が下腹部をくすぐっていく。疑いようのない快楽と上目遣いで頑張りを見せつける御子柴先生の姿。多くの男子生徒が夢想しただろう光景がここにある。

いけないことの、はずなのに。

下腹部から立ち上る快楽と眼下に広がる背徳な光景。『やめろ』という一言で容易く止められるはずなのに、その一言が言葉にできない。
頑張り屋な御子柴先生は突っ走ればもう止まらない。学び始めれば真面目に勉強し、覚えてはすぐに実践する。こういうところはドジをしないから困ったものだ。いや、止まらないこと自体がドジかもしれないが。
上ずった声を押し殺すが犬の耳では誤魔化せるはずもない。オレの悶える姿を見上げる御子柴先生は嬉しそうに尻尾を揺らし、より一層頑張りを見せる。

「んっ♪んぷっ♪はむっ♪ちゅっ♪」

頭を前後させいやらしい音を響かせる。誰かに聞こえれば終わってしまう。まるで妄想のような状況に昂りを覚えているのはオレだけではなかった。

「…んっ♪んちゅ♪…んんんっ♪」

時折跳ねる体とくぐもった声。御子柴先生の手が自分を慰めるように胸を揉む。布地にしわをつけ服の隙間から下着を覗かせた。切なげに零れたと息と時折走る震えは明らかに普通ではない。
そんな姿を見続ければ男として昂らないはずもなく。すぐさま下腹部からは熱がせりあがっていく。堪えることは難しく、その上彼女は奉仕するように啜り上げた。

言葉にすれば容易いだろう。

命令すれば努めるだろう。

褒めてあげれば止まらぬだろう。

滲み出した欲望が鎌首をもたげていく。快楽に揺れる意思は理性を離れて落ちそうだ。だからこのまま流されてしまっても―



「―待てっ!」



荒げた声にびくりと震え、ようやく御子柴先生は動きを止めた。次の指示が欲しいのか得意げに振るわる尻尾だが与えるべきは指示ではない。

「…ダメですから」

明確な拒絶の意思。
そしてやってはいけないという躾。
手綱を引くのはあくまでこちら。引かれて、甘やかしてはダメになってしまいかねない。
だからこそ。

「え、ぁ…そっか。今度は胸ですればいいんだね?」
「違いますから」

それでもなお飛びつこうとする御子柴先生にオレは手刀を振り下ろした。こつん、と軽く頭を衝撃が貫いた。痛みなんてほぼない一撃だったが彼女は驚きオレを見上げた。
そんなことをするはずがないと言わんばかりに目を見開いて。

「………え?」
「ダメなものはダメ、ですから。頑張る方向がぶれてきてますよ。手段と目的が逆になってます」

頑張った分だけ褒めてあげる。そのはずが、褒めてもらいたいから頑張るに変わっている。
オレを悦ばせることがご褒美へと繋がるとわかっているからこそ、いつでもどんな場所でも御子柴先生は求めてくる。
その頑張りを認めてあげたい反面、このままでは明らかに違う方向へと進んでしまう。否、既に踏み出している。行きつく先には甘美で背徳的な関係で教師と生徒が至っていい領域ではない。

だから―押し留めなければ。

「今日限りやめましょう。こんなことは」
「……え?」
「今日で終わりにしましょう」

冷たく突き放すようなことを言う。
オレとて優しくするだけではない。時には心を鬼にするし、いざというときには手だって出せる。最もそれはあやかの方が適任だけど。

「もう褒めることも指導することもありません。勝手にトイレに入ってきて褒めてもらおうなんてこと、今度したら本気で怒ります」
「な、なんで?あ、もしかして気持ちよくなかった?」
「御子柴先生」
「それなら、もっと頑張るから!」

まるで最初の頃のような御子柴先生の姿にオレは小さくため息をついた。
頑張ることが悪いわけではない―ただ目的が変わってしまっている。
だからこそ、気は進まないもののオレは彼女の頬を軽くはたいた。

「……え…?」

音すらしないほど小さな衝撃。だけども御子柴先生の心には強く響いたらしく数秒してやっと現状を認識する。
自分が頬を叩かれた。褒められるのではなく、怒られている。その事実を。

「なん、で…?」

涙こそ出ていないものの表情は驚愕と絶望の混じりあったものだった。胸が痛むが慰めなんてしてはいけない。涙が零れようとも今だけは。

「わかりませんか?」
「わからないっ…わからないよぉ…」
「…久々に聞きましたよ、その言葉」

ここ最近はまったく言わなかったというのに。それだけ今の状況は耐え難いのかもしれない。
今まで厳しくされた分、褒めて甘やかして伸ばしての繰り返し。それをいきなり叩き伏せられては混乱するのも仕方ない。

だからこそ、今一度改めさせないといけない。

「ねぇ、御子柴先生。本来の目的はなんでしたか?」
「…ほん、らい?」
「どうしてあやかを頼ったのか忘れていたわけじゃないでしょう?」
「……ぁ」

ちょっと頑張りすぎて、突っ走りすぎてしまっただけ。それでも本来の目的を彼女は忘れてはいなかったようだ。尻尾もはたと気づいたように動きを止め彼女は眼を見開いている。

「だったらそのドジがなくせたということを証明してください。それができたら今まで以上に褒めてあげますから」
「証明って言っても…どうやって?」
「簡単なことですよ」

オレ以上に厳しくて、しっかり現実を見据え、評価を下せる人がいる。



「あやかに一度、言わせてみてくださいよ。『頑張った』と」



容易く人を褒めることはない。
できたところで称賛しない。
それができて当たり前、至極当然のことだから。
それがあやかの考え方で、価値観である。そんなあやかを一度でも認めさせることができればもはや御子柴先生にオレらの手助けは不要だろう。
御子柴先生を見据えれば彼女は難しそうな顔をする。あやかの厳しさは身をもって体感した分どれほど難しいことかわかっているのだろう。
皆と同様に上っ面だけの褒め言葉なんて送らない。本当にできた時にだけあいつは言葉にするものだ。最も、その言葉も素直じゃないのだけど。
やがて御子柴先生はオレの顔を見上げた。ここ最近になってよく見る、強く覚悟を決めた瞳を向けてくる。
そして、桜色の唇が宣言するように言葉を紡いだ。

「…頑張るよ、私」
「ええ、頑張ってください。期待してますよ」
「それで、できたら、いっぱい褒めてね」
「はい」

できたら精一杯褒めてあげたい。最も、次こそはただでは済まないかもしれないが。










それからちょうど一週間後。あやかとオレに依頼して一月近く経ったときの頃だった。

オレはあやかとともに生徒指導室に来ていた。もちろん御子柴先生も一緒に。
パイプ椅子に座りふんぞり返るあやかと隣に座るオレ。そして一人緊張の面持ちで立ち尽くす御子柴先生。教師と生徒だというのにおかしな光景だろう。
だが、室内の雰囲気は重く、どこか肌を突き刺すように鋭い。対する御子柴先生の肌にはうっすらと汗が浮かび今だけ出した尻尾もせわしなく揺れ動いていた。

「きょ、今日の授業はどうだったかな?」
「別に。わかりやすかったけど」

今日の授業の様子を尋ねられるがうちのクラスではなかったのでわからない。仕方なく何も喋らず二人のやり取りを見つめているがあやかの様子を見る限り悪い点はなさそうだ。ということはドジの方もなかったのだろうか。

「ねぇ、ももちん。ももちんはどうして教師になったんだっけ?」

いつの日にかあやかが聞いた質問を今再び繰り返す。
以前に御子柴先生が迷って答えられなかった質問だ。あの時は視線を迷わせ戸惑った声を上げていたが今は違う。真っ直ぐあやかを見据え、両手をそろえている。

「私は、教師に憧れたんだと思う」
「…思う?」

迷いのない声だというのにはっきりしない内容に思わず聞き返す。すると先生は頷きオレへと視線を移した。

「私も学生だった頃があるし、その頃は二人みたいに教壇に向かって座って、教師の声を聴いてた。その人はいろんな知識を持ってて、様々なことを例えてくれてとてもわかりやすい授業だったの」

それは今の御子柴先生のように、だろうか。
その姿に憧れて自分もまた教師へとなる。学生ならば一人くらいはいそうな夢の抱き方。それを目指して実現させた先生はドジであっても十分立派な教師だろう。
だが、隣のあやかは怪訝そうに眉を顰めていた。

「早乙女先生から指示棒を借りた時、彼女みたいにかっこよく授業ができるかもしれないって思ってたの。でも、実際にやってみれば上手くいかずに、それどころかあやかさんに迷惑かけちゃった」
「そうだね」
「完璧にやらなくちゃいけないって思ってた。憧れた教師になれたのにドジし続けて、このままじゃいけないって思ってた。思ってた、はずだったの。でも………気づけばドジを繰り返して何も変われなくて。嫌気がさしてやめようと思ったことは何回もあった」
「じゃあやめれば?」

とても冷たく短い言葉。だが決して否定できない感情を突きつけられるが御子柴先生は静かに首を振った。

「やめたいと思ってもやめられなかったの」
「なんで?」
「こんな私だけど…教えてほしいって言ってくれる皆がいるから」

その言葉に今までのことを思い出す。
女子男子、ともに御子柴先生のことを慕っているのは事実。内容は不健全なことも多いが、誰もが認める良い教師。

「頼ってくれて、相談してくれて、一緒に泣いて、笑って……私が憧れてた教師の姿になれたと思ってないけど、こんな私でも必要としてくれる人がいるの」

ドジをしても授業はわかりやすくてやりやすい。そんな教え方をしてくれる教師を誰が嫌いになれようか。
まるで自分のことのように真摯に受け止め考えて、時には涙する。そんな真っ直ぐから受け止めてくれる女性を誰が批判できようか。

「それ以上に、こんな私を助けてくれる二人がいるんだもの」

御子柴先生は前へ進みだすとオレとあやかの手をとり握りこんだ。真っ直ぐ見つめて微笑まれる。

「だから、私は教師をやめないよ。これからも教師を続けたいと思ってる。憧れてたあのひとにはなれそうにないけど…それでも。これからはドジをしないちゃんとした教師として頑張りたい、かな」
「あ、そ」

聞いた本人だというのにあやかは別段気にした様子もなくそっけない返事をする。だが、そこに冷たい雰囲気はない。突き刺さるような鋭い視線もありはしない。
だが、そこには確かに今まで見せたことのない色があった。

「よく頑張ったね、ももちん」

真っ直ぐに見据え、優しくはなくも温かな声色でそう言った。
滅多に聞くことのないあやかの褒め言葉。そして、オレが先生に求めた最後の課題。これをもって御子柴先生の頼み事は終わりである。

「…頑張りましたね、御子柴先生」
「…」
「…?先生?」

返事のない彼女の顔を覗き込む。するとその頬にはうっすらと

「もう、褒めただけなのになんで泣かなくてもいいじゃん」
「だってぇ…!」

ぼろぼろと涙をこぼして嬉し泣き。泣いてはいても見ているこちらも嬉しくなる。
犬の耳を揺らし、尻尾を動かして喜びを表現する御子柴先生。そんなオレとあやかしかしらないだろう姿がなんだかとても愛おしい。

「今まで本当にありがとう、あやかさん」
「いいよ、ももちん。アタシはただ頼まれてただけなんだし」
「それから、ゆうた君も」
「あ、はい」

泣きながら感謝の言葉を述べる教師。それも相手は年下の生徒に向かって。
だけどもこの頑張りを誰が馬鹿にできようか。
しかしこの努力を誰が笑えることだろうか。
年齢差など関係なく、ただ一生懸命な姿勢が認められたという事実。もはや手助けの必要はなく、誰が見ても立派な教師な御子柴先生。目指し、憧れた姿に彼女は今なることができたのだ。

だから、素直に喜びたい―はずなのだけど。

ちらりちらりとオレの様子をうかがう御子柴先生の姿。涙を零す瞳の奥に見えてしまった妖しい光。それは日頃から目にしている褒めてもらいたい願望と、教師にあるまじき艶やかな欲望を混ぜたもの。

このままただでは終わらない。それは予感ではなく確信的なものだった。





「えへへ…♪」

あの後あやかとともに帰った―はずだったオレは御子柴先生に連れられるまま彼女の自宅へと招かれていた。最早緊張もなくソファに腰を下ろしていれば膝上に御子柴先生は体を横たえ顔をこすりつけてきた。犬の尻尾や耳は嬉しさを隠せないようにせわしなく動いている。
よほどあやかの言葉が嬉しかったのだろうか。

「ねぇ、ゆうた君。私頑張れたかな?」
「十分すぎるほど頑張りましたよ、先生」
「えへへ…♪」

オレの言葉に照れくさそうに笑いながら見上げてくる。そこへ頭を撫でてあげるとさらに嬉しそうに尻尾を振った。

「何してほしいですか?」
「んん〜♪」
「何か好きなものでも作りましょうか?」
「えへへ〜♪」
「マッサージとかもいいですよ。こう見えて結構得意なんですから」
「あふぅ♪」
「…先生?」

オレの言葉を聞いていないのか顔を腹部へ押し付けっぱなしの御子柴先生。愛らしい姿ではあるものの太ももに当たる柔らかな感触は誤魔化せない。
もう何度味わっていることだろうか。時にはいやらしく、時には愛らしく。子犬のような姿で褒めてもらいたいがためになんでもこなすその姿。教鞭を振るう時とは異なる熱意を感じるが、同時に女の姿が垣間見える。

だからこそ、危うい。

生徒と教師なんて関係ない。ただ欲望まみれの爛れた関係へと堕ちていきたい。何よりも厄介なのはそれを望む自分がいるということだろう。
掌に残る柔らかな感触。もう一度手を伸ばしたところで拒まれるとは思えない。
真っ直ぐこちらを見据えた御子柴先生はただ一言。



「ご褒美、ちょうだい♪」



あぁ、もう。まったく仕方ない。
今までの頑張りを傍で見続けていたからこそその言葉には抗えない。あやかだったらお疲れさまの一言で済ませるだろうがこちとらそこまで非情でもない。
苦笑しながら心の中で呟いたオレは傍へと寄って―

「―よっと」
「きゃっ♪」

驚きつつもどことなく嬉しそうな御子柴先生を抱き上げる。両腕にかかる重みは意外と軽く、何よりも柔らかい。
静かな足取りで寝室へと移動する。ドアは先生が開け、一人で寝るにはちょっと大きなベッドの上へと下ろしてあげて―

「…先生?」
「えへへ〜♪」

蕩けた笑みでオレを見上げ回した両腕は離さない。むしろベッドへ誘い込むように引っ張ってくる。
その仕草に喜んでオレは引っ張り込まれた。隣へと寝ころび体へと手を伸ばす。胸を撫で、腹部へと顔をうずめ、徐々に下へ下へと進んでいく。

「あぁぁぁあ…♪」

服越しでも感じているのか時折震える御子柴先生。その姿を楽しみながら服へと手をかけた。

「先生…」
「…うん」

自ら晒すように服を脱ぐ。恥ずかしくて赤くなりながらもオレの意思に背く様子はない。
露わになった下半身。人間にはない、獣のような体毛が生えてはいるもののしなやかな両足は見ているだけでもぞくぞくする。

「…んっ」

毛先を揃えるように撫でながらそっと唇で愛撫する。震える声とびくつく足が愛おしい。撫でたり口づけを落としたり、時には舌を這わせて様子を窺えば顔を真っ赤にした御子柴先生が見下ろしている。
ぞくぞくする。悦んでいることがわかる、その事実に。

「先生…」
「ぁっ…」

さらに先へと進みだす。
舌を差し出し太ももから舐め上げる。犬のような体毛を指先で擽って鼻先を押し付ければ御子柴先生は切なげな声を漏らした。
さらに先へと指は動く。閉じる足の間に体を置き、漂ってくる生々しい雌の匂いへと目を向ける。そこにあったのは女性の証。薄桃色の下着に包まれているものの色濃く湿ったそれは紛れもない興奮と悦びの跡だった。

「気持ちいいですか、先生」

返事を聞く前に下着に手をかけた。止める言葉は聞こえず、思うがまま取り払う。
見上げれば御子柴先生は顔を真っ赤にしつつも荒い呼吸でその先を期待していた。その証拠に尻尾は揺れ動き、伴うように耳も動く。

「それじゃあ、もっとしてあげますからね」
「…うんっ♪」

小さな返事に応じて慈しむように唇でなぞりあげる。吐息をかけ、舌でゆっくりと撫でていく。感触がわかるほどに強く、触れているか定かではないほど弱く。

「あっ♪……っぁ、あっ」

教鞭を振るう時や皆と喋る時とは違う、切なくも甘い声が降ってくる。
唇から、舌先から、例えようのない味をした粘液が滴っていく。明らかに自分のものではないそれを指先で拭おうとすると御子柴先生が手を掴んできた。

「きれいに、するから」
「え、あ…」

指より早く唇がオレの唇へと押し付けられる。舐めていた舌先を掃除するように舐め返され、啜られた。さらには口内を這いまわり音を立てて吸い付かれる。普段からオレへと奉仕するように。褒められたく、認めてもらいたいのだろうか。

―いや、違う。

そう思えたのはあまりにも御子柴先生が夢中だったから。赤子が母を求めるように執拗に体を寄せ唇で吸い付く。
生徒と教師のするようなものではない、男と女の口づけ。否応なく高ぶりを示す体で思い切り抱きしめる。するとより一層激しさを増して―押し倒された。

「ん、ふ……むっ♪んちゅ♪」

女性が上で男性が下。立場が逆の状況だが主導権は譲らない。

「っ…どう、褒められたいですか?」

唇を離して、にっこり笑ってその頬へと手を添える。

「好きなこと、いっぱいしてあげますよ」

選択するのは彼女でも、主導権はあくまでこちら。主従の立場を変えることなくオレは御子柴先生の首を撫でた。

「ねぇ、御子柴先生」
「っぁ…えっと………♪」

命令する必要もなく彼女は体を離していく。見せつけてくれるのは人間にはない、まるで獣のような柔らかな毛並みに包まれた腕や足。胡桃色のそれは愛らしく、小動物っぽかった御子柴先生をより魅力的に映えさせた。
オレに見てもらいたくて残った衣服にも手をかけた。足元に落ちていくことも気にせずに、恥じらいと期待を込めた視線を向けてくる。
オレはただ見ているだけ。御子柴先生が何をするのか、どう褒めてあげようかと考えながら。

「…脱ぎました」

一糸まとわぬその姿。今までちらりと見てきたがやはり人肌の部分が少なくなった気がする。それはまるでぬいぐるみ。愛らしくて抱きしめたくなるそんな姿だ。
だが、抱くように隠した大きな胸は谷を作り、すらりと伸びた足をたどれば魅惑的な臀部が悩ましい曲線を描いている。愛らしくもあり、男を惑わす女の色香が漂っていた。

「どう、かな…?」
「やっぱり、綺麗ですよ」
「本当?」
「えぇ、本当に」

そう言ってあげるだけでも彼女は嬉しそうに笑みを浮かべる。だが、その程度で満足するにはあまりにも進みすぎていた。
向けられた視線に混じる期待の色。抱きしめた腕は今にも飛びかからん自分の体を抑えるためか。揺れ動く尻尾と耳が興奮の色を示してくる。

「ねぇ、ゆ、ゆうた君…」
「…いいですよ」

その先を促してオレは首を振る。御子柴先生は堪らないといわんばかりに顔を輝かせ、飛びついてきた。
小柄な体を抱きとめてベッドへと倒れこむ。押し倒されて見上げれば真っ赤な顔が間近にあった。垂れた髪と大きな耳が頬を擽る。熱い吐息が言葉にならない高ぶりを伝えてきた。

「んん〜♪あ、ふっ♪」

汚らしく交わりたくて、下品な姿を晒したくて、ただ快楽に身を落とし、だけどもいっぱい褒められたくて。
それは獣欲か、本心か、はたまたどちらのものだったかわからない。



―もはや教師と生徒なんて立場はなかった。



荒い呼吸が問いかけてくる。
熱い視線が尋ねてくる。
火照った体が聞いてくる。
下腹部から粘液が滴り落ちてくる。オレの肌を汚していき、疼きに似た感覚を残していった。
今にも襲い掛かりたい。出したこともない声をあげ、肉体同士をぶつけ合い、言葉も不要なほどに情熱的に交わりたい。
そう言っているのは果たしてオレか彼女なのか。

「先生、足、広げて?」
「…はい……っ」

御子柴先生が両足をゆっくり開く。オレの体に跨るように。
これが越えてはいけない一線だとわかっていた。それはお互い理解の上でのはずだった。
それが今では容易く踏み越えるほどにどうでもよい。それ以上に御子柴先生は頑張りたく、何よりオレも褒めてあげたい。
だから、オレは止められず、御子柴先生もまた止まらなかった。
御子柴先生に服を脱がされ、露わになるのは男の証。それを目にしてぽたりと口元から唾液た滴る。最早待てといったところで聞ける余裕もないだろう。

「いい、よね…?」

ただ静かに頷いた。それだけで十分だった。
熱く滾った柔肉に自身が埋まっていく。絡みつく粘液が伝い落ち、気の抜けた声と快楽が体に染み込んだ。

「あ…ぁぁぁ………♪」

臀部が落ちて重なり合う。手を差し伸べればおずおずと握りしめ、にへらと笑って見せた。
その笑みが―愛おしい。
そう感じたのは普段の御子柴先生を知っているからであり、皆の知らない御子柴先生の頑張りを知っているからだろうか。言葉にできない感情は教師と生徒のそれではない。明らかに男女のものだった。

「辛くないですか?」
「う、ん………ぜん、ぜん、へいきぃ…♪」

見るからに男慣れしていないぎこちない動き。男性経験がないと話していた通りの動きと、初めての感覚に御子柴先生は聞きなれぬ声で答えた。それは痛みを堪えた声ではない。熱い吐息に交えたそれは明らかに快楽を堪えるものだった。
赤い顔で困ったように眉を顰める。否、快楽を堪えるように切なげに唇を固く結ぶ。
なんといやらしくて―綺麗な姿か。
快楽も欲望も一瞬忘れて見とれてしまう。そんな視線を感じた御子柴先生はにへらと笑って一言。

「一生懸命、頑張るからね?」

まだまだ彼女の頑張りは終わらない。オレの腹部に手を押し当て、ゆっくりと腰を引き上げていく。膣壁が表面を擦り上げ、粘液を絡ませるように締め付けた。まるで離れることを厭うようにきつい。

「ふ、ん………ん♪」

今度は反対にゆっくりと腰を下ろしていく。慣れぬ柔肉を無理やり割り開いて飲み込む。きつく締まる膣内は異物を押し返すような、それでいて情熱的に迎え入れるようなどちらともつかない感触を弾き出した。
今まで得てきた快感は子供騙しだったのか。そう思えるほどに強烈で心地よい。まるでこのまま溶け合ってしまいかねない程に熱くて蕩ける感覚だった。

「んっ…♪ふ、ぁ…♪あっ♪…」

大きな胸が上下する。赤みを帯びた肌の上を弾ける汗は艶めかしく、荒い呼吸と肉同士の弾ける音が是が非でも欲情を駆り立てる。
汗が肌の間にたまっていく。柔らかな肉がこすれる感触はまるで溶けて一つになったような、不思議な感触だった。
呼吸が重なる。動きが伴う。鼓動は強く刻みまれ、否定できぬ高ぶりが身を焦がした。
髪の毛を振り乱し、大きな耳を揺り動かす。尻尾が振るわれて明りの下に陰影がともる。
そこにあるのは愛らしい姿ではなく、艶やかな女の姿。オスを求め淫らに動くメスであった。

「っぁあ♪や、ぁあ♪あ、ふ、ぁ♪」
「っ…!」

低く唸り声を上げながらそっと手を伸ばす。頬へと手を添えただけでも一瞬彼女は動きを止める。にへらと蕩けた笑みに喜びが混じり、再び頑張りへと繋がっていく。
一生懸命に腰を振る御子柴先生。柔らかな臀部が太ももを叩き、筆舌し難い快楽を弾き出す。もはや我慢も限界が近づき、だけども拒まなければと最後の理性が働きかけた。

「先生っ……!もう、出ますから…っ!」
「うんっ♪うんっ♪」

必死に頷いた御子柴先生は腰の動きを止めようとはしなかった。むしろより激しく、さらに深くまで叩きつける。
そこには理性なんて残っていない。まさしく獣。雄を求める雌の姿。それ以上に頑張りを褒めてもらいたい、いつも通りの先生らしさ。突っ走りすぎて止めようのない事態に陥っていた。

「だ、からっ!先生、止まって!」
「はっ…はっ♪はっ…あぁあああああああっ!!」

一際甲高い声とともに体が震えあがった。腰の動きが止まり、膣内が激しく律動する。最奥へと吐き出していく。当然遮るものなど何もない。
応じるようにと御子柴先生の膣内は締め付け、啜り上げていく。蠕動しては最奥で受け入れていく。それはまさしく獣。孕むことしか考えない単純で貪欲な動きだった。

「っ!」

当然抵抗できるはずがない。快楽で視界が弾け、脳裏が焼き切れる。逃げ出そうにも腰をしっかり抑え込まれ、上にまで乗られている。できることといえばシーツを強く握りしめ押し上げられた意識が高みから戻るのを待つのみだった。

「ぁぁぁぁ……ぁ」

脈動が収まり、やがて熱も引いていく。声が徐々に落ち着いて、思考がはっきりとし出してくる。そして、やっと事の重大さを理解した。
途端に青くなる。欲望任せで至ってはいけない場所へと踏み込んだ事実に。
今更遅く、既に手遅れ。精液は彼女の膣内を満たし求められるままに注ぎ込んでいく。腰も引けず、力も入らず、何度も脈動を繰り返しただ応じるように吐き出した。

「…んふぅ…♪」

その感覚が伝わっているのか言葉にならない声を漏らし御子柴先生は体を大きく震わせた。
熱い熱いため息を吐き出して満足げにオレのほうへと倒れこんでくる。白く魅惑的な臀部からぱたぱたと揺れ動く尻尾が愛らしい。
荒い呼吸が胸板を擽る。玉の汗がしたたり落ち、肌の間で体温が解けていく。ちらりと覗き込めば余韻を味わうかのように御子柴先生は動かなかった。
オレの視線に気づいたのかこちらを向くと蕩けた笑みを見せて一言。

「わふっ♪」

理性が削れた。本能が滾った。一瞬で立場が消え失せた。
心に残ったものはどちらかなんて確かめる必要もない。オレの手には見えなくとも確かに手綱を握りしめていた。それも、首輪のついたものを。

「上手にできたかな?」
「…お上手でした」

一瞬言葉に迷ったが気持ちよかったのは事実。もはや後戻りできないところまで踏み込んでしまったがこうなりゃやけだ。
御子柴先生の頭を掻き抱き思い切り撫でてあげる。それだけでも彼女は嬉しそうに身を捩り、オレにじゃれついてきた。
足と足が絡み合い両腕を回して抱き合って。ベッドの上で笑っているとふと彼女はオレを見上げてきた。

「もっと、もっと……頑張るから、ね?」
「え?」

ぎらつく瞳は子犬のそれではない。明らかに獣な色を前にただ乾いた笑い声しか出ないのだった。










「私ね、決めたんだ」
「何をですか?」

既に月も真上から傾いていく時間帯。明りを消した部屋の中、ベッドの上で互いに裸の状況で。誰が見ようと生徒と教師で済ませられぬ姿のオレは上体を起こした御子柴先生を見上げた。
先ほどまで堪能していた大きな胸がたゆんと揺れる。既に興奮は落ち着いたはずなのに体の奥から否定できない熱が湧き出す。華の十代、性欲はまだまだ収まり切りないらしい。
そんなオレに背中を向けた御子柴先生はどこからかあるものを取り出し、両手で差し出してくる。

「はい、これ」
「……これは?」

黒い布地でできた輪の様なもの。一部分に煌めく宝石みたいなものがついているそれはブレスレッドにしては大きすぎる。だが、派手過ぎず地味すぎず、教師がつけても問題なさそうなデザインのアクセサリーだった。

「チョーカー、だよ」

確か、首につけるアクセサリーの一つだったはず。あやかも一つくらいは持っていた。
御子柴先生の顔と見比べてみる。おとなしげで愛らしい彼女にもよく似合う落ち着いたデザインではあるものの、ちょっと今の姿では別のものに見えてしまう。

「何のために教師になったのかって初めてあやかさんに聞かれた時私答えられなかったでしょ?それって結局なりたくて頑張ったのに、今はただ教師だから教師をやってるだけなんだなって思ったの」

チョーカーを渡した御子柴先生はオレの目を真っ直ぐに見据えて語りだした。オレはその言葉を何も言わずにただ聞き入る。

「頑張ってるつもりだったのに、頑張るための目標もなくなってた。憧れた先生の姿に近づこうとしてたはずなのに、私はただ教師でいられることに満足してるだけだったの」

頷き、先を促した。

「あやかさんに言ったのも今まで頑張るための目標だった。だから、せめてこれからは…ちゃんと頑張る目標を立てたいの。ドジしないように、私が教師として胸を張っていられるように」
「…先生」

立派であると褒めてあげたい。頑張ったと称えてあげたい。もはやドジな教師の姿はない。あるのは誰もが認める一人前の教師だろう。
ただ、それがなんでチョーカーを用意する理由に繋がるのかが一切わからない。
いや、本当は頭のどこかで理解している。だが、まさか、そんな、御子柴先生がそんなうちの師匠みたいに…。

「だから、ゆうた君」
「はい」

真剣そのものの顔で両手を握りしめられた。真っ直ぐ向けられる瞳に迷いはなくこれからドジをするような不安もない。
ただ、真っ直ぐオレを見つめてチョーカーを握りこませてきた。



「私の御主人様になって下さい」
「行き過ぎでしょうがっ!!」



行き過ぎ所か突き抜けてる。事故った所じゃ済まないくらいに。

「これからはゆうた君のために頑張るから、だからいっぱいできたら沢山褒めて欲しいの!」
「待って!待って!御主人様って何!?」

ぶんぶんと尻尾を振る御子柴先生とぶんぶんと首を振るオレ。それでも彼女はオレの手を離そうとはせずあまつさえチョーカーをオレの手でかけさせようとする。どうしてもオレを御主人様としたいらしい。
だが、残念なことにオレはそこまでアブノーマルになるつもりはない。両手を振りほどき、チョーかを掴んで取り上げた。

「御主人様になってくれるの!?」
「いえ、普通に恋人でお願いします」
「こっ恋人っ!?」

慌てて思わずぽろりと零れた言葉に御子柴先生は顔を真っ赤に染めて飛び上がった。

「恋人、恋人………えへへ〜♪」

にへらと蕩けた笑みで嬉しそうに何度もその言葉を繰り返す。唇に馴染ませるように、あるいは頭に覚えこませるように。
言葉に伴い尻尾を揺らす。左右にゆっくり、されども嬉し気に大きく。
思わず飛び出た言葉だったが喜んでもらえたらしい。最も、その内容は教師と生徒にはあるまじきものなのだけど。いや、それどころか既に行き過ぎてしまったのだけど。

「頑張ったら、いっぱい褒めてね♪」
「……………あぁ、もう。まったく、仕方ありませんね」
「えへへ〜♪」

こんな笑顔を独り占めできるのなら御主人様でもいいかもしれない、そんな風に思うのだった。



―HAPPY END―










「なんだか最近ももちんやけにやる気じゃない?」
「いいことじゃん」
「何かしたの?」
「え、別に…」
「…」
「…」
「最近ももちんゆうたのとこの変態みたいな目してるんだけど」
「師匠の悪口やめろよ」
「発情期みたいな顔してるんだけど」
「…」
「保健」
「やめろよ」
「保健所」
「やめろ」


16/06/19 23:26更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
ということでこれにて現代コボルド編は完結です。
ドジっ子から成長した御子柴先生ですがドジとはまた別の方向へと至ってしまいました
このあとはお姉さんも師匠も加えてさらに騒がしいことになりそうです

次回は久々に堕落ルート、やや短めに二、三話のものを考えております

ここまで読んでくださってありがとうございます!!
それでは次回もよろしくお願いします!!

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