読切小説
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音色と貴方とオレと夜
灼熱の日差しに照りつけられる砂漠のど真ん中、傍には緑あふれるオアシスがある遺跡の中で基本やることと言えば書類整理、備品購入の手続き、武具の手入れ、罠の確認などというものが大半だ。それらの仕事も大体午前中に終わり、午後はアヌビスである先輩と雑談したり、門番をしているスフィンクスと戯れたり、遺跡の主のファラオとボードゲームをしたりと様々だ。
だが、時には侵入してくる者もいる。となれば武力介入もありうること。ならばいつ、いかなる時も立ち向かえるようにしておくのがこの遺跡内で唯一の男性の役目だろう。





それ故に、オレこと黒崎ゆうたは夜中、毎日オアシスのど真ん中で稽古をしていた。




滴る汗をそのままに、流れるような手つきで型をこなしていく。それはまるでとどまることを知らない流水の如く、吹き止むことを知らない風のごとし。ただゆったりと、滑らかに、拳を握らず舞うように。

「すぅ…………はぁ………」

小さな呼吸を繰り返し、集中力を高めていく。ゆったりとした動きでも込められた力は外見以上、一挙一動がごりごりと体力を削っていく。
そうしているといつも耳に届いてくる。
それは地響きではなく。
それは先輩の怒鳴り声でもなく。
それは主の絶対的な命令でもない。



座り込んでただ耳を傾けたくなるような、とても滑らかで心安らぐ音の波。



「すぅ……は………ああ、もう」

本当なら聞き入りたいのだが今は稽古中。だというのに研ぎ澄ませていた精神が徐々に綻び、やる気もそがれていく。これでは稽古になりゃしない。
大きく息を吸い込むと音楽を奏でているであろう女性の名を叫んだ。



「シャントゥール!」



声に応じて木の上にいたのかばさばさと両腕を―――翼を羽ばたかせて降りてきた一人の女性。それは人間の姿ではない、先輩たち同様の魔物だった。
淡い月明かりに照らされたのは金色の大きな翼。足もまた獣のような体毛に覆われている。さらには耳が妖精のように尖ってはいるがその顔は誰もが認める美しさを持っていた。
水色の瞳にすっと通った鼻筋、ふっくらとした桜色の唇の間から艶めかしく舌が覗く。長く伸ばした髪の毛に肌を見せつけるような布地の少ない衣装。それはまるでアラビアンナイトに出てきそうな踊り子の姿。そして、その衣装に包まれているのは男ならば誰もが見惚れるほど整った体だった。大きく揺れる豊満な胸に艶めかしい腰の括れ、艶やかな肌に月明かりに照らされる太腿。人外な姿だろうと関係なくそれは魅力的で刺激的な姿だった。
それが『ガンダルヴァ』のシャントゥール。よくこのオアシスを訪れる女性だった。

「何かしら?」
「やめて欲しいんだけど、それ」

艶やかな笑みを浮かべるがオレは鬱陶しそうに彼女の首からぶら下がっている楽器を指さす。それは彼女が常に持ち歩いている弦楽器だった。

「何よ、私の演奏良かったでしょう?」
「稽古中に流されちゃ集中できないんだよ」
「良い物っていうのはね、自然と惹かれあうものなのよ。あんなに綺麗に舞っているのに音楽がないなんてもったいないわ」
「綺麗って言われてもこっちは真剣に集中して稽古してんの。あんまり気の散る様な事傍でしないでくれる?」

シャントゥールはいつもそうだ。オレの稽古を見るとそれに合わせて音楽を奏でていく。それ自体は悪くないのだがこちらも真面目にやっている以上集中力を削られたくない。
追い払うように手を振るうと半目で睨みつけられた。元が美人だからか大して怖くないのだけど。
音楽も止んだことだし再び稽古へと戻ろうと拳を握るが相変わらずシャントゥールはオレの隣で立ち尽くす。離れないと手がぶつかってしまうのだが、仕方ない、オレが離れることにしよう。

「…」

そうして離れようとすると突然無言で両腕を思い切り振るわれた。
人間大の体を容易く飛ばすほどの力を持つ翼から放たれる風は凄まじく、さらには砂漠の夜。先ほどまで稽古していたとはいえ汗の浮かんだ肌へ吹きつけられれば。

「あああああああああああ!寒い寒い!!やめて本っ当にやめて!」

体感温度が凄まじいことになる。
それでも無言で両腕を羽ばたかせ続けるシャントゥール。どうも先ほどの発言が気に障ったらしい。なんとか両肩を掴んだところでようやく止めてくれた。

「何、すんのさ…っ!」
「ユウタが悪いのよ」

あれほど汗の浮かんでいた肌が今では鳥肌だ。これでは流石に風邪をひきかねない。でもまぁ、オレも言い過ぎたかと思って謝っておく。

「…悪かったよ。それで、何の用?」
「いつもみたいに教えてよ」
「また?」

傍の岩を指さすと自分の隣を示すようにばたつかせる。傍に来いと言いたいらしい。

「…」

美女の隣に座るのはそりゃ魅力的ではある。男ならば嫌な気はしないだろう。
だがこちとら先ほどまで稽古をしていた身だ。汗の染み込んだ服と肌ではかなり匂うことだろう。そんな状態で女性の傍に居られるほど図太い神経はしていない。

「着替えてくるからまた後で」

そう言って逃げ出そうとするといつの間にかオレの頭上を飛んでいて、一瞬の浮遊感を味わう暇もなく岩の上へと落とされた。

「痛っ……ったく、いきなり落とすなよ」
「別に着替えに行かなくてもいいじゃない。私はそのままがいいの」
「そのままって……こっちだっていろいろ気にすんのに。それに濡れた服だと寒いんだよ」
「あら、それなら」

次の瞬間、まわされた翼に肩を抱かれた。

「うふふ♪温かいでしょう?」
「…」

傍から見れば女性が男性の肩を抱いている姿。オレがシャントゥールに抱かれている姿だ。正直情けないにもほどがある。
だがシャントゥールは気にすることなく笑みを浮かべた。若干鼻が動いているのは匂いを嗅がれているのだろうか。やっぱり着替えてくるべきだったと後悔してももう逃げ出せない。

「それじゃあ今日も教えてよ。とびきりな音楽をね」
「…仕方ないな」

そうしてオレは今日もまた口笛で曲を奏でる。それが、オレがシャントゥールにいつもしていることだった。
音楽を愛する『ガンダルヴァ』にとって新しい歌や曲には興味を惹かれるらしく、ふとした拍子に吹いた口笛を聞かれたことからこんな関係が始まった。
だが、美女相手というのは嫌なわけもないし、彼女の奏でる音楽を聞けるのは嬉しい。なんだかんだでオレも楽しんでいた。

「〜……ってな感じ」
「…素敵な曲ね」
「ゲーム内の音楽だけど」
「ゲーム?何の?」
「こっちの話」

オカリナで吹ければいいのだろうけどそんなもんできるわけもないし。
シャントゥールは空いている片手で器用に弦を弾く。響く音はどれも単調、だというのに奏でられる音楽は心に響くほど深いもの。オレの吹いた口笛をなぞっているだけだというのにどうしてこうも変わるのだろう。
弦を弾くガンダルヴァ。月明かりの下で瞼を閉じて奏でる音楽に身を任せるその姿は神々しさすら感じられるほど美しい。傍に居てはいけないんじゃないかと思えるほどに。

「〜♪」

そんなシャントゥールがこちらへ体重をかけてきた。集中のしすぎかと思って押し返そうとするとわずかに息が上がっていることに気付く。

「?」

集中している証拠だろうか。そんな風に考えていると奏でられる音楽が変わった。
ゆったりとした曲調で艶やかな音色は静かな夜にはよく響く。だけどもうるさいなんて思えないほど優しくて穏やかなものだ。

「…いい曲」
「でしょ?」
「よくそうやって弾いてるけどどこで教わってくるの?」
「大体は母さんから教わった曲よ。あと知ってるのはユウタが教えてくれたものぐらいかしらね」

そうして再び曲調が変わる。アップテンポで跳ねあがる様な、今にも踊りだしたくなる明るい曲。これもまたオレが教えたゲームの曲だがスピーカーから流れてくるのとは段違いだ。

「いろんな曲があるわ。悲しいときの慰めの曲、楽しくするための温かな曲、心に響かせて癒すための曲とか、争いを鎮めるための艶やかな曲とかね」
「へぇ、そんなことまでできるんだ」

確かに音楽の与える影響力は凄まじいと聞く。それがガンダルヴァの奏でるものならなおのことだろう。

「でも、ユウタが教えてくれたのも好きよ」
「そりゃどうも」

正面から好きと言われるのは気恥ずかしい。それがオレの事ではなくとも美女相手ならなおの事だ。

「例えばこれとかね」
「…!」

シャントゥールが奏でたのは普段テレビ越しに聞いていた有名なものだった。CMでもよく聞いていたそれを音楽に乗せて口ずさむとそれに合わせてシャントゥールも歌いだした。
何度も聞いていただけあって頭の中に鮮明に残っている。おかげで何度彼女の前で歌ってしまったことだろうか。

「…あ」

歌い終わって気づく。
あ、これラブソングだった。
壮大に愛だの恋だのあふれ出る想いだのを歌う良い歌だが女性の隣で歌うにはちょっと難易度が高すぎる。思わず赤くなった顔で隣を伺うとにっこり微笑まれた。

「私この歌一番好きよ」
「そっか」
「愛してるってこんなに綺麗な曲調で伝えられるなんて素敵なんだもの。それに、こうして一緒に歌えるしね」

片手だというのに器用に弦の長さを調節し、手元を見ることなく奏でていく。
月明かりに照らされたオアシスにはラブソングが響いてく。寒さを感じる夜風から身を守るように寄り添いあった二人の男女。現実離れしたその空間はロマンチックな雰囲気に包まれていた。

「…っ」

そんな音楽に耳を傾けているとなぜだか頭がくらくらする。
奏でられる音楽のせいか、漂ってくる甘い香りのせいなのか。先ほど似合わないラブソングを歌ってしまったせいなのか。
無理やり奪われたはずの熱が再び灯り、平衡感覚が失われていく。だというのに嫌な気分は全くせず、どこか心地いい。
いつもそうだ。シャントゥールの傍に居るとどうしてだかこんな風になる。帰ってシャワーを浴びれば戻るのだが今日は一段と酷く、思わずシャントゥールへと倒れこんでしまった。

「あ…悪い」

まずいまずいと思って体を起こそうと力を込めるとそれ以上の力で抱き寄せられる。見つめればシャントゥールの顔は赤く染まり、興奮気味に呼吸を荒くしていた。

「シャントゥール?」
「…ん」

逃げるように後ろへ体重をかけるが彼女の腕は許してくれない。それどころかさらに体を寄せ、大きな胸がオレの胸板に押し付けられた。

「っ」

途端に肺一杯を満たしていくシャントゥールの甘い香り。頭の中を蕩かして欲望の炎を滾らせる、危険で甘美な香りだった。

「ユウタ…」

切なげな声で名を呼ばれ、水色の透き通った瞳が真っ直ぐ見つめてくる。オアシスの湖よりも綺麗なそれは熱を孕み、切なげに潤んでいた。目を逸らせないのはオレが見惚れているからか、それともシャントゥールが逸らす気がないからか。
楽器を支えていた紐が外され、草の上に落ちた。だがそれを気にすることなくシャントゥールはオレを見つめ、さらに体を近づけてくる。

「…」

きっとオレは酔っていた違いない。奏でられた音楽が、紡がれる声が、くすぐる香りが、染み込む体温が、シャントゥールの全てがオレを酔わせたに違いない。
だからこの一瞬理性が働かなかったのも仕方のないこと。
本来ならばもっと考えて整理できなかったのも仕方ないこと。



ここでキスをしてしまっても仕方のないことだ。



重なり合った唇はどちらが先に押し付けたのだろうか。考える暇もなくただキスの感触を味わう。初めて感じる口づけは例えようのない柔らかさを持っていた。わずかに開いた隙間から感じる甘い味。もっと味わいたいと思ってしまい、気づけば自ずと舌を突き入れていた。

「ん、ちゅ♪む……は、んんっ♪」
「ん……む、ん……っ」

シャントゥールからも舌をだし、二人して舌を絡ませた。互いの口内へと移っては唾液を啜り、考えもなく舌を動かし自由に舐めとる。むしゃぶりつくように何度も唇を重ね合わせては染み込んでくる甘い味に翻弄された。
そうして唇を離すと自然に伸びた手がシャントゥールの肌に触れた。肩をゆっくり下へ向かって撫でるとわずかに反応して声を漏らす。それに構わず脇腹を、お腹を摩っていき、そして胸へと添えられた。

「あ…っ♪」

許可なく装飾を取り払い、オアシスの上へと落とすと豊満な胸が露わになった。褐色色とは異なる、つんとそそり立った先端が実に可愛らしい。そっと力を込めるたびに形を変える。吸い付くような瑞々しい柔肌を傷つけぬように揉み、そっと口づけを落とした。

「んっふ…ぁ♪」

先端にある桜色の突起を優しく舐め、周りを舌でなぞりあげる。痛みを与えぬように注意を払い、そっと歯を立てながら執拗に先端を嬲り、啜る。

「や♪乳首、ばっかり、んん♪」

その刺激だけでも堪らないのかシャントゥールは口の端から唾液を垂らし、艶やかな声を降らせた。
これだけで終わるはずもなくもう片手をそっと下へと滑らせていく。腹部を伝い、おへそを撫でて下腹部のさらに下へと差し込んだ。

「あぁっ♪」

指先がじっとりと濡れるほど湿ったシャントゥールの女の部分。指の腹で撫で上げると艶やかな声を漏らし、びくびくと体を震わせた。そっと指を引き抜くと人差し指と中指に銀色の橋がかかっていた。

「っ…」

ぞくぞくする。こんなに感じてくれるなんて男として誇らしいことだ。
オレの首筋に顔を埋めて荒い呼吸を繰り返すシャントゥール。彼女はゆっくりと体を起こすとオレの上に跨った。薄布でできた下着を取り払うとたっぷりと潤った膣内が露わになる。我慢できないと言わんばかりに愛液を滴らせてはオレの上へと伝い落ちた。

「…っ」

ぴっちり閉じたその部分は人間となんら変わらないもの。見て分かる程湿っていて淫らな香りが鼻孔をくすぐった。
より一層強くなる匂いは今まで感じていたものとは違うもの。生々しいような、だけど癖になる筆舌しがたいそれは本能を刺激する女の香り。雄を誘う雌の匂いだ。

「ユウタ…♪ね…♪」

切なげに名を呼ばれては我慢できない。すぐさまベルトを外し、下着ごと下げてオレのものを取り出すと手を添えてシャントゥールのそこへとあてがった。露わになった途端彼女の表情が淫らに歪み、先ほど以上に呼吸が荒くなる。それだけ興奮しているということだろう。
シャントゥールが腰を押し付け、そして一気に飲み込んでいった。

「ああああっ♪」
「んん!」

初めて味わう女性の味。温かな柔肉が隙間なく締め付け、蕩けるような快感を叩き込んでくる。それだけではなく子種を取り込もうと奥へ奥へと蠕動するたびに上ずった声が漏れた。暴発していないのが不思議なほどで凄まじい快感を堪えようと何度も呼吸を繰り返す。

「っ」

だがそうして肺を満たすのはシャントゥールの甘い香り。頭を、理性を蕩かす魅惑の香りだ。ただでさえ抑えきれない欲望を煽られているというのにさらに拍車をかけられてはたまったものではない。

「はい、ったぁ♪」
「あ…っ」

互いに繋がりあった部分を見ると一筋の赤い滴が落ちていくのが見えた。そのことについては何も言わない。だが、純潔を貰った嬉しさと、どことない申し訳なさが胸の内に広がっていく。
痛くはないだろうか、そう思ってシャントゥールを見ると震えていた。人外と言えどやはり初めては辛いのかもしれない。

「少し、このままでいい?」
「ん…♪」

オレの言葉にシャントゥールは静かに頷いた。
やはり辛いのならば慣れるまで待つべきだろう。今にも無茶苦茶に動いて吐き出したいのだが痛みだけの初体験となってしまっては最悪だ。やはりするのならば感じてもらいたい。

「温かい…不思議な感覚ね」
「辛くない?」
「平気よ。ただ少し…感じ過ぎちゃいそう♪」

互いを見つめて語らう姿はまるで恋人のそれだろう。だが甘く、熱く、絡み合う姿はラブソングなんてものよりもずっと過激で密な行為だった。

「それじゃあ、あ…動くわね♪」

先に動いたのはシャントゥールだった。
ゆっくりと腰を上下に動かす。ぎこちない動きだが未経験のオレにとっては十分すぎる刺激だった。
腰を引き、オレのものを引き抜くと腰を押し付け再び飲み込む。穢れのない柔肉を無理やり押し広げて突き進む感触はまるで神経を直接撫でているようにも感じられる。きつく締め上げ、肉ひだで擦られ、彼女の熱で溶けてしまいそうだった。

「んっ…あ♪あ、……♪すごく、気持ちいい…♪」

粘着質な水音をオアシスに響かせながら何度も何度も腰を動かしていく。蕩けるように熱く柔らかな肉壁と擦れる甘美な快感に体が震える。動くたびに豊かな胸は上下に揺れ、奥へと飲み込まれるたびに彼女は甘い声を漏らした。

「あっんん♪やぁぁ…♪」
「シャントゥールっ…!」

砂漠の夜の寒さは尋常ではない。だからこそ重なり合ったシャントゥールの体温が心地よい。首へと回された両腕、背中を包む数多の羽、押し付けられた胸に重なった肌、回された両足。そして繋がりあった大切な部分。わずかに動いただけでも擦れあい、弾きだされる快感に翻弄される。

「ね、ね、ユウタぁ♪ユウタも、気持ちいい…?」
「んっ…すごい、いいよっ」

徐々に激しさを増していく、踊り子の如く右へ左へ揺れる腰使いは、欲望に塗れているだけではなく、見る者を虜にするような艶のあるもの。動くたびに淫らな音を響かせて惑わし、確実に追い詰めてくる。
かと思えば今度は円を描くように腰をまわす。オレの物を覆う肉壁の圧迫が増し、あちらこちらの肉ひだが擦りあげていった。

「っん」

みっともない声を上げそうになるのを堪え、こちらも負けじと腰を動かす。どうやれば感じてくれるのかなんて余裕は欠片もない粗暴で本能的な動き。膣内をごりごりと引っ掻きまわす快感にシャントゥールは体を大きく震わせた。

「はっぁあ♪ん、ぁ…あ♪あんっ♪」

艶やかに喘ぐ嬌声、腰と腰のぶつかり合う音、動くたびに響くいやらしい水質音。二人で奏でる交わりの音は今まで聞いたどんな音よりも響いてくる。
蒸れた汗と雌の香り。それと交わりによるいやらしい匂いが互いの肺を満たし、昂ぶらせていく。
重なり合った肌と肌の間では互いの熱が混ざり合っていく。どちらの熱なのかなどわからずにただ溶けていきそうな感覚に陥った。



そして、もっと欲しくなる。



その艶やかな声が、濃厚なメスの匂いが、混ざり合った体温が、交わりによる快感が。
全てを本能が求めていた。
この女性を自分のものにしたいと。
このメスとつがいになりたいと。
この女を自分の子種で孕ませたいと。
汚らしい欲望と暴虐な本能を止める理性はもう残ってない。気遣いも今は掻き消え、抑え込むものは何もなくなっていた。

「キス、キスしてっ♪もっといっぱい、して♪」

求められるままに顔が近づいて唇が重なった。さっきよりもずっと素直に、本能的に、舌を突き出すとどちらともなく絡み合う。離さぬように腕まで回し、貪るように吸い付いて。僅かな隙間からは溢れた唾液が滴っていく。にちゃにちゃと唾液まみれの舌が絡む音が頭の奥へと響き、より一層興奮を掻き立てた。
昂ぶり、押し上げてくる快感に限界が近づいてくる。ぞくぞくと背筋を悪寒のような震えが走り、下腹部で滾っていた欲望が徐々にせり上がってきた。避妊具なんて当然してなくこのままでは膣内で吐き出してしまう。

「シャントゥール…っ」

かすかな理性を握りしめ、耳元で名前を呼ぶと悟ったように微笑まれた。
絡みついた足に力が籠り、密着した体がこれ以上ないほど押し付けられる。当然、オレの物は全て彼女の中へと飲み込まれてしまった。

「う、ぁ…っ!?」

先端に押し付けられる柔肉とはまた違う感触を持った子宮口。それが精をよこせと言わんばかりに吸い付いてくる。ねだる様な可愛らしいものではなく、搾り取らんと情熱的な動きで。
そしてとどめに甘い一言。

「奥、奥に…ね♪いっぱいユウタのを、出して…♪」
「っ…!」

そんな動きに、そんな声に堪え切れるはずもない。凄まじい快楽は脳を焼き切り、膣内射精の躊躇いすら塗りつぶす。抱きしめる翼と足が拍車をかけ、気づけばオレからも腕を回して抱きしめていた。
お互い興奮は最高潮に達していた。だが、どちらが先に絶頂を迎えたのかはわからなかった。

「っ出る…!」
「あ、ああああああああああああああ♪」

脈打つオレの物からシャントゥールの一番奥へと精液を吐き出した。それは何にも遮られることなく子宮の中へと流れ込んでいく。断続的に何度も何度も、その度に甘い痺れが叩きだされ頭の中を焦がしていく。
それはシャントゥールも同じこと。注ぎ込み、子宮に精液が叩きつけられるたびに体を震わせ締め付けてくる。一滴も逃さないと言わんばかりに子宮口が吸い付いて何度も何度も蠕動してくる。さらに奥へ、もっと奥へ、子宮の奥で余すことなく受け止めようと回された足にも力が込められた。

「ぁっあ…!」
「んあぁああっ♪」

蕩けた顔がこちらを見つめる。互いに絶頂の最中でオレもきっとだらしない顔を浮かべていることだろう。だがそんなことはどうでもいい。シャントゥールもこんなになるまで感じくれるのなら男冥利に尽きるというものだ。
だがそれだけで止まらないのが人外の体らしく絶頂中だというのに彼女の体は動いたまま。それは子種を求め、求愛するメスの動き。オレという男を全力で求める貪欲な女の姿だった。
残っているものを吐き出させようと腰が前後し、肉ひだが敏感な先端を執拗に撫でていく。腰が砕けそうな快感にこらえる暇もなく再び彼女の中へと精液を吐き出した。

「んん、ぁあっ♪」
「くっぅ……」

ようやく過ぎ去った絶頂に堪えるようにシャントゥールの体を思い切り抱きしめる。彼女もまた余韻を味わいながらオレの首筋に顔を埋めた。荒い呼吸を繰り返し何度も肩が上下する。
だが。

「……あ、れ?」

行為が終わろうとも興奮の熱が引かない。たった一度で満足できる程華の十代の性欲は甘いものじゃない。だが、それ以前にもっと体の根本を刺激してくるものがある。
それがずっと立ちのぼっていたこの肺一杯を満たす香り。濃密で濃厚で、雄を誘うフェロモンを惜しげもなく撒き散らすこの匂い。本能を刺激し、欲望を刺激し、雄の心を滾らせる。
一度出したというのに頭はハッキリせず、だというのに感覚は鋭くなる。漂う香りを、触れ合う肌を、伝わる鼓動を、交わる感覚をより貪欲に感じるために。

「ん、はぁあ♪ユウタぁ…♪」

何度も何度もオレの匂いを確かめるように呼吸していたシャントゥールはゆっくりと顔を上げるとそのまま倒れ込んできた。抱き留めるとすぐさま唇が塞がれる。
突然の口づけ。驚きながらも拒む理由はなく、むしろこちらから求めて押し付ける。突き出した舌を絡ませあい、口内を舐めとって啜り上げると下腹部に灯っていた熱が激しさを増していく。
そして、再びオレとシャントゥールは心の赴くままに腰を動かし始めるのだった。















なんてこった。

事を終え、服を着ながら自分のしたことに頭を抱えたくなった。
いくら雰囲気が良かったとはいえそのまま情事へと至ってしまうなんて情けない。だがそれだけシャントゥールは魅力的だったし、こちらも満更ではなかったのも事実。後悔することは失礼だとしても自分の流されやすさに腹が立つ。
後ろではわずかな布地と装飾の服を着こむシャントゥールがいた。首筋には吸い付いた時にできたキスマークが残っている。後始末は終えたものの行為のためか足取りがおぼつかない。それにあれだけ激しいものだったせいで汗が滲んでいる。いくら人外だろうが女性が体を冷やすのはいただけない。

「…立てる?」
「ん、平気よ。いざとなったら飛べばいいんだし」

そうはいっても無理しているのは見え見えだ。それに帰すにもシャントゥールの自宅がどこにあるかなんて知らないし、何より夜の砂漠は危険もある。飛べるとはいえ女性一人帰すなんて男としてダメだろう。

「……」

なら、仕方ないか。

「ほら」
「きゃっ」

だから、オレはシャントゥールの体を思い切り抱き上げた。思った以上に軽い体重に内心驚きながらもついでに楽器も掴んでおく。

「休んでいったら?その、体冷やすといけないしさ」
「え、いいの?いつもは部屋に上がらせてくれないのに?」
「そりゃ…まぁ、行くところまで行っちゃったわけだし」

本来ならばそういう関係すらない相手を軽々しく部屋にあげることはないし、何より露出が高い姿でベッドのある部屋をうろつかれてはオレがたまったもんじゃない。
だが、シャントゥールと行為へ及んだ以上もう関係もないだろう。無理はさせたくないし、それになんだかんだで一緒にいるのも嫌じゃない。

「んふ、ありがと♪」

お礼を言ったシャントゥールはオレの首へと翼を回し、上機嫌に歌を紡ぐ。それも、よりによって先ほど歌ったラブソングを。

「それ、今歌わなくともいいんじゃないの?」
「いいじゃないの、大好きなんだもの♪」
「…ああ、もう」

意味を知りながら耳元で囁くように歌われては恥ずかしいったらありゃしない。だがこんな状態では耳も塞げない。それをいいことに先ほどの情事を表すように言葉を紡ぐ。
甘ったるい声色で好きだの想いだの囁かれてはたまらない。さらには意味深な感情を込めた水色の瞳が真っ直ぐこちらを見つめている。そのまま見詰め合ったら多分、先ほどと同じことになりかねない。
視線を逸らすように真っ赤になった顔をあげながらオレはシャントゥールと共に遺跡内へと入っていくのだった。


                        ―HAPPY END―
15/02/04 21:44更新 / ノワール・B・シュヴァルツ

■作者メッセージ
ということで新しい魔物ガンダルヴァのお話でした
今回の舞台は懐かしき砂漠の事となりました
夜中に月明かりの下のオアシスで二人寄り添いラブソング
なんてことロマンチックだなぁなんて思っちゃう今日この頃です



ここ最近ちょっと筆の進み具合が悪いのでしばらく読み切りか、はたまた書き溜めておいた別の連載に手を付けております
堕落ルートを期待されている方には申し訳ありません
ですがこちらの方もゆっくりですがちゃんと書かせていただきます!

ここまで読んでくださってありがとうございます!!
それでは次回もよろしくお願いします!!

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