櫛と貴方とオレと簪
ジパングの街というのは興味深いものばかり。何度も同心として巡回しても日々新しい発見ばかりだ。訪れる店の雰囲気やすれ違う人との交流、時折起こる喧嘩や事件は頭を悩ますがおかげで退屈なんて思いはしない。つまるところ、ジパングでの毎日は楽しいということだ。
今日も今日とてオレは食べ終えた団子の櫛を咥えながら同心の仕事をこなす。と言っても日本語しか読めないのでできることは巡回に限られるのだが。
「〜♪」
鼻歌交じりに道を歩く。おいかけっこをする子供たちを脇によけ、挨拶をする人々に頭を下げ、握りこんだ十手をくるくると器用に回しながら。
今日も特に何もない。平和な街並みを眺めながらあたりを見回しとある店の前を通り過ぎようとしたら店の中へと手を引かれた。
「んむっ…?」
誰もいないのに引かれる手首を見るとそこに絡まっているのは艶やかな糸。ジョロウグモのしのさんが扱う蜘蛛の糸に似ているがこちらは黒いく、さらには一本一本かなり細いが量が多い。引きちぎろうとすれば肌に食い込むだろうが巻きつかれていると不思議と嫌な感触はしない。
その糸はついっと店の中へとオレを引き込んでくる。店の看板を見上げれば見覚えのある文字。読めはしないが何の店だかは知っている。
「…」
引きちぎることもできないし、何より『女性の一部』を傷付けるわけにもいかない。御呼ばれしたのなら拒否するのは失礼だろう。
団子の串を咥え直すとオレは店の中へと入っていった。
「ようこそ、ゆうたさん」
店の中に入るなり恭しく頭を下げたのは一人の女性。底の厚い下駄をはき、ただでさえ高い背がさらに高くなりオレと頭一つ分違う。紫色の着物を着崩し、真っ白な肌を見せつける、どこか遊女然とした色香を漂わせる人。大きな胸を惜しげもなく肌蹴、ちらりと見える太腿が眩しい。
だが一番目を引くのは大きな花の形の簪をさした、頭から生える長い長い黒髪だろう。日の光を反射する艶やかなそれは地面につきそうなほど長く、多い。自身の顔すら半分隠れ、体も覆い隠すほどの異常な多さだ。
「どうも、かざしさん」
彼女は簪屋を営む毛娼妓のかざしさん。ここら一帯では有名な簪の職人さんだ。
「同心のお仕事ご苦労様です」
「いえいえ、それでどうかしましたか?」
だが招かれたところで男だから簪なんてつけないし、つけるにもオレの短髪では刺さらない。付け方は知っているがつける相手なんていやしない。早い話がここにきても彼女と話し込む以外にすることはない。
「いえ、ちょっと通りかかったのでゆうたさんに簪の相談をと思いまして」
「オレの考えなんて素人同然ですが」
「それでも助かっているんですよ」
同心として巡回をすれば顔を合わせることが多く、ある時ふとしたことから簪のことを提案した。それがきっかけとなり今では時折こうして店へと引き込まれ相談を受ける。こちらには現代で培った知識があるので話す分には話せるが実現可能かはわからない。
「また何か新しいものをと思いまして」
「新しいの、ですか。そうですね…チリカンとか揺れるものとかいいんじゃないですか?」
「揺れるもの…」
「先端に小さな鎖をつけてさらに先に玉とか飾りをつけるんですよ。はたまた短冊状の小さな金属をいくつも付ければぶつかったときに音がするっていうのもありますよ」
「ふむふむ」
それでもいいらしくかざしさんはうんうんと興味深そうに頷く。長い髪の毛が揺れ、光を反射しながら頭の上の艶やかな簪が揺れた。
ただ眺めているだけでも綺麗な姿。異形ともとらえられるほどの髪の長さをしているがそれでも美人であることには変わりないかざしさん。そんな彼女をじっと見つめているとふと気づく。
「…そう言えばかざしさんて同じものしかつけないんですね」
「え?」
「簪」
長髪をただ伸ばして同じ簪をしている彼女。毛娼妓らしい姿なのだがもう少し変わった姿も見てみたい。折角綺麗な髪の毛をしているのだしもう少し変わった髪型を…ほんの少しだけアクセントを加えたりしてもいいんじゃないか。
「ええ、私の髪の毛だとまとめるのに手間がかかってしまいますからね」
「そうですか。たまにはちょっと変わった髪型も見てみたいなーなんて思ったんですがね」
「髪型ですか」
かざしさんはオレの言葉に難しそうな顔をした。
「嫌でしたか?」
「いえ、その私は髪の毛が長いじゃありませんか。そのせいであまり髪型って変えられないですよね」
それでも探せば短い部分も多少はある。例えば顔の横、触覚と呼ばれる部分とか。
「部分的にしてみません?」
そっと横紙に触れるとびくりと彼女の体が震えた。驚かせてしまっただろうかと思うがお構いなしに指を添える。というのも少しこの長い髪の毛を弄って普段と違う彼女を見てみたいからだ。
「ですが…その、恥ずかしながら私は今までこの髪型以外にしたことがなくて…その」
「できないならオレがしてあげますから、ね?」
「い、嫌じゃありません?」
「まさか。それよりもオレが触っていいならしてあげられますが、どうします?」
オレの言葉にかざしさんは頬を朱に染め恥ずかしそうに頷いた。
「痛かったら言ってくださいね」
店の奥へと進み、畳の上に正座したかざしさんの傍にオレはいた。簪を外し、前髪と繋がるこめかみ部分の毛束を残す。この後はヘアアイロンやヘアスプレーで癖をつけるのだがジパングにはどちらもない。それにこの長さからして一番適しているのは…三つ編みか。
「三つ編み、していいですか?」
「は、はい」
緊張気味に頷くかざしさんを見てオレは団子の串を指でつまんだ。
「失礼」
咥えていた団子の串の持つ部分で髪の毛を一つ、二つ、三つと束に分ける。櫛がないので手で梳かすしかないが三つ編みならそう失敗はしない。
横髪を梳くと自然とかざしさんと顔が近づく。吐息が頬にかかるほどの位置にあるが今オレの目は彼女の髪の毛へと向けられる。どんな顔をしているかはわからない。それだけ集中していたからだ。
「ゆ、ゆうたさん…近い、です…っ」
「すいません、少し辛抱を」
「は、はい…」
痛みを与えない程度に引き、交わらないように注意して伸ばす。横目で痛みを感じていないか顔を見るとほんのりと顔を赤く染めていた。痛そうではないので黙々と指を動かし続けることにする。指先に触れる心地よい感触を味わいつつ細心の注意を払いながら。
「ん…っ」
「あ、痛いですか?」
「い、いえ…殿方に髪の毛を弄られるのは初めてなもので」
「すぐ終わりますからちょっと我慢してくださいね」
「は、はい…」
強張った声を聞きながら指を動かし髪の毛を梳く。鼻孔をくすぐる甘い香りはシャンプーだろうか…いや、この街にシャンプーはないか。
だがこれだけ綺麗な髪の毛ならシャンプーのCMとか絶対出れるだろうな。テレビ映りもよさそうだし、なんてくだらないことを考えてしまう。
でもまぁ、実際のところそう思えるほど彼女の髪の毛は綺麗だ。毛娼妓という妖怪だから髪の毛は命と同じなのだろう。なら手入れをするのは当然だろうがそれにしても異常なほど綺麗だ。指先を流れる感触はまるで絹のように心地よい肌触りだし、そこから香る甘い匂いもいい。体の奥を刺激してくる不思議な香りだ。毛娼妓だから、だろうか。
三つに分けた束を梳き終ると今度は右外側を内側へ左外側を内側へと編みこんでいく。
「手慣れているんですね」
「昔からやってましたからね」
以前は母親が姉や双子の姉のあやかにしているのをよく見ていた。他にも小さなころ世話をしてくれた玉藻姐や先生にさせてもらっていた。中学からはオレがあやかにすることが多かった。ほぼ毎日していればしばらくしてなくとも体は覚えているものだ。
「もう少しですからね」
止まることなく髪の毛を編んでいく。引っ張りすぎて痛くないように注意しながら。
朱色で小さめの簪を借りると三つ編みの先っぽに突き刺す。本当なら髪ゴムが適しているのだがそんなものはない。だがこれでも止められるのだから上出来だろう。
「できましたよ。はい」
近くにあった簪用の鏡を手に取りかざしさんに向ける。すると彼女の顔が嬉しそうに綻んだ。
「わぁ…素敵です♪」
気に入ってくれたのか鏡を動かし様々な角度から自分の顔を眺めるかざしさん。普段長髪を伸ばしただけの彼女には珍しい三つ編み姿。鎖骨に届くほどの長さで片側だけにしてもそれは十分なアクセントとなる。
普段は美しいとか色っぽいとかそういうことがば似合うが三つ編みで可愛らしいとも見られる。美人なのだからどんな髪型もあうのだし、こういうのも悪くない。
「可愛いですよ。かざしさん」
「ありがとうございます、ゆうたさん」
毛娼妓の妖怪と言っても娼妓、女性らしく御洒落が好きなのだろう。先ほどからかざしさんは何度も鏡を覗き込み自分の三つ編みを眺めながら嬉しそうに言った。どうやら喜んでもらえたらしく、こちらとしても嬉しいことだ。
その後相談の続きを受け、お茶菓子をいただいて店を出る。敷居を跨ぎながらふと思う。簪をあれだけ売っているのにどうして櫛は売ってないのだろうか。いや、売るどころかおいてもない。髪の毛に簪を刺す際には必要になるはずなのに。
ジパングの街を闊歩する人たちを目で追ってみる。歩く女性は皆髪の毛を結っていた。きっと自宅でしているのだろう。
…かざしさんが持ってないだけなのか。
なら今度訪れる時にでも櫛を買っていこうかな。相談を持ち掛けられるが彼女には相談なしで時折お茶を御馳走にもなる。普段からお世話になっているお礼だというがなんだか申し訳ない。
オレとかざしさんの仲というのもある。別段特別な関係というわけではないが赤の他人ではないのだし、時には贈り物もいいだろう。
となると…どこが一番いいのかな。
そう考えながら十手をくるくる回していると手首に光る細い糸に気付いた。
「んん?」
まるでワイヤーのようなそれは先ほど弄っていたかざしさんの髪の毛だろう。ためしに伸ばしてみると両腕なんて軽く超える長さだ。
「…長っ」
その長さに改めて驚きながらどうしたものかと考える。この黒髪に似合う色の櫛は何色だろうか。
お揃いか、はたまた朱色とか鼈甲だろうか。そんな風に頭を悩ませながらオレは巡回の続きへと戻っていくのだった。
そうして数日後。再びかざしさん宅を訪れた。どうやら気に入ってくれたらしくあれから彼女の横髪は三つ編みのままだ。ただ慣れないのか少し歪んでいるが。
「三つ編み自分で編んだんですか?」
「ええ、ただ慣れないのでうまくできないんですが…」
「最初は誰だってそういうもんですよ。やりましょうか?」
「…お願いします」
店内で恥ずかしそうに俯きながらかざしさんはオレに頼む。素直なことに微笑むとオレは彼女の髪に手を添えて―
「―あ、そうだ」
自分の胸ポケットに入れたものを思い出した。すぐにそれを引っ張り出すとかざしさんの目の前に差し出す。
「どうぞこれ」
それは紙に包まれた櫛だった。光を艶やかに反射する漆黒で、桜の模様が刻み込まれたもの。値段はそこそこしたがこの街でオレは食費ぐらいしか使わないので大した出費にはなっていない。
差し出した櫛に目を見開くかざしさんは震える手でとるとそれを眺める。震えるほど嬉しかったと受け取っていいのだろうか。
「こ、これは…!?」
「いえ、櫛を持っていないようなので贈ろうかと思いまして」
「それって……い、いいんですか私が、これを…貰っても?」
「ええ、そのために買ってきましたから」
艶やかな黒髪に揃えて買った漆黒の櫛。刻まれた桜の模様が粋なそれならかざしさんに似合うことだろう。
「いいんですね?私が、貰っても…」
「…?」
随分と念入りな確認をする女性だ。それほどまでに櫛が何かを意味するのだろうか。
…もしかして、不謹慎な意味合いを込めていたりするのだろうか。神様もいるこの街じゃ迷信や天罰などが真面目にあると思われている。カラス天狗の先輩なんて時折火打石で切り火とかやるし。
そうなるとオレはとんでもない失態をしてしまっただろうか。
「嫌でしたか?」
「いえまさか!そんな…本当に私が頂いてよろしいのですね?」
「ええ、いいですよ」
三度目の確認に頷くとかざしさんの顔が嬉しそうに輝いた。
「もうっ♪ゆうたさんたらっ♪」
「え?」
突然伸びてきた両手がオレの体へと回った。それだけではなく強く体を抱きしめられる。学ラン越しでも隠せない柔らかな胸の感触が伝わってくるのだがそれよりも突然の事にどうしたのか頭が追い付かない。
どうしてかざしさんはこんなに喜んでいるのだろうか。
「いきなり求婚してくださるなんて…大胆な人♪」
「え?え?…」
きゅうこん?それは…植物のあれではないほうだろうか。
中世のヨーロッパではハンカチが求婚の証とか婚約の証とかで贈られると聞いたことがある。ならこの街で、櫛が求婚の証となるのもおかしくはないことか。
だがオレはそんなこと知らない。知っていれば当然軽々しく贈ることもない。
しかしそんなことお構いなしにかざしさんは嬉しそうだ。今更違うというのは気が引けるが言わなければ。
そう思うのだが指先、手首、肘、腕、腰、膝、足首、つま先、そして首。全身のありとあらゆる部分に髪の毛が巻き付いてくる。痛みを与えないように柔らかく、それでも逃がさぬようにしっかりと。
あ、これまずい。そう感づくときには既に遅かった。
「ゆうたさんから求婚していただくなんて…ふふ♪」
嬉しそうに微笑み櫛を眺めていたかざしさんはオレの方へと向き直る。既に彼女の髪の毛が巻き付き体中髪の毛だらけな姿を目に映しながら。
「もう少し大胆にならないとわからないかと思ってましたが…ゆうたさんもそうだったんですね♪」
「え…」
何が?と聞こうとするとかざしさんがオレの頬に手を添えた。向けられた瞳は潤み、熱っぽい視線を送ってくる。
色っぽい。美人にそんな表情を浮かべられれば男としていろいろと堪らない。健全な男子高校生でも同じことだ。
だが先ほどの発言とまるで逃げ出さないように、そして愛するものに抱擁するかのような行為。毛娼妓にとって大切な髪の毛で雁字搦めにする意味。
…謝っただけでどうこう済みそうにない。
すり寄ってくるかざしさんから逃げ出そうと足を出すと髪の毛に引かれ、店先に倒れこんでしまった。
「あぅっ」
木の板の床に体を打ち付ける。痛みはないが起きるよりも先にかざしさんが身を寄せていた。その顔は徐々に近づき、自然と体も距離が縮まっていく。
別の髪の毛が店先の戸を閉め、窓まで閉める。完全な密室で二人きりの状況下、オレは倒れその上に寄り添ってくるかざしさん。
非常に、まずい。
「あ、あの……すいません。そんな、櫛にそんな意味が込められてるなんて知らなくて…」
「あれだけ確認したじゃないですか…女をその気にさせておいて何もせずに去るなんて無責任なことしないでくださいよ」
「ですがオレはそんなこと知らなくてただの贈り物程度としか思って―んむぅっ!」
突然髪の毛に首を引かれ、かざしさんの顔が近づいた。避けることもできずそのまま唇同士が接触する。いきなり感じた柔らかさに体が強張るが彼女はお構いなしに強く押し付けてきた。
「ちゅ……ん、む……ん♪」
力のままに形を変える、言葉を伝えるための器官。纏わりつくように重なり離れる素振りは欠片も見せない。頭を後ろに下げようにも首に巻きついた髪の毛がそれを邪魔する。
「は、んむ…っ♪」
一度離してはまた重ねる。先ほど以上に強く、深く、激しく。
その行為に徐々に瞼が閉じていく。抵抗なんてやめてこの感触を心行くまで味わいたいと欲望が叫んでる。
実際のところ抵抗はできない。逃げることもできない。こんな状況ではオレができることなど叩き込まれる感覚を享受することのみだろう。
それにオレの勘違いでこのような結果になってしまった以上責任はオレにある。ならば腹を括って応じるべきか。それともこんな状況下でも抵抗し続けるべきか。
だがオレの葛藤を知ることもなくかざしさんは唇の隙間から舌を差し込んできた。唇とは違う柔らかさをもつそれは迷うことなく舌へと絡みついてくる。
「じゅる…ん、ふぅ♪んむぅっ♪」
口内を這いずり回る、ねっとりと絡みつくような甘さ。この街で味わってきたどの甘味よりも甘く頭の中を溶かしていきそうだ。
視界がぼやける。それでもはっきりと映し出されているのは真っ赤にし蕩けきった表情を浮かべるかざしさんだった。
「ん…んちゅ♪」
何度も何度もオレの口内へ自分の唾液を塗りたくるように舌が蠢きまわる。それでいて舌が触れるたびににちゃにちゃと擦られ甘い唾液が伝って喉の奥へと流れ込む。頭の奥をしびれさせるような感触と甘さに抵抗できずに何度も飲み下した。飲み干せないのは唇の端から滴り落ちていく。
ようやく離れた時には滴る唾液を彼女が舐めとっていた。
「んふ…とっても甘い口づけでした♪いつもお団子ばかり食べているからでしょうかね」
うっとりとした表情で囁くかざしさん。自分の唇に触れて笑う姿はとてもいやらしい。
毛娼妓。まさしく娼妓という名前に相応しい淫らな姿だった。
「体の方は…どうなっているんですか?」
単純な好奇心かはたまた本能的な欲望か、かざしさんは長い髪の毛を操ると服の隙間から潜り込ませてきた。
「ひ、っぁ…っ!!」
歪んだ三つ編みが頬を撫でる。くすぐったさに身を捩るのだが髪の毛は離れてくれない。
服の内側へと潜り込んできた髪の毛が束になって擦れあう感触はまるで絹に擦られているように感じられる。だが数多の髪の毛に擦られる感触というのはむず痒く、くすぐったい。
「私の髪の毛くすぐったいですか?ふふ、体を震わせて…可愛らしいですよ♪」
「んな…っ……!!」
可愛らしいなんて言葉に喜べる男はそういないだろう。オレもそうであり否定しようとしたが体を這いずる髪の毛の感覚が邪魔をする。心地いいのにくすぐったく、擦れるたびに呼吸が乱れ、体が震える。その姿を見下ろすかざしさんはうっとりとした表情を浮かべていた。
「逞しい体、素敵です♪」
髪の毛にも神経が通っているのか感触を確かめるように締め付け、撫でる。その度はぁっと熱いため息を漏らすかざしさん。
「今度はその体見せてくださいね」
そう言うと肌を這いまわる髪の毛が別の動きをし始めた。細くも強い髪の毛は服の下で蠢くと器用にもボタンを外していく。見慣れぬ洋服だというのに構造がわかっているのかてきぱきと脱がしにかかってきた。
「これも、脱ぎましょうね?」
優しく幼子に言い聞かせるような口調で囁くとかざしさんはベルトに髪の毛を巻きつけた。金具ごと引き離すと外されたベルトは髪の毛で別の場所へと置かれる。他の服も同様にオレの手の届かぬ場所へと落とされた。
「はぁ……素敵です♪」
晒された肌をかざしさんはうっとりとした表情で見下ろしてくる。だがこちとら女性の前で肌を晒して喜べるほど変な性癖は持っていない。身を隠すように縮こまろうとすると髪の毛が邪魔をし、彼女はそんな様子を見て薄く笑う。
「ゆうたさんだけじゃありませんよ。今私も脱ぎますからね」
するすると髪の毛で紫色の着物を苦も無く脱ぎ捨て、オレの服の上に落とす。そしてかざしさんの一糸まとわぬ姿が晒された。
華奢な手足に魅惑的なくびれ。膨らんだ臀部や豊かに揺れる大きな胸。傷一つない肌は髪の毛も相まって異常なほど白く映る。そして淡い茂みの生えた女の部分。全体的に完成された女の体から視線を外すことができない。
「…そんなに見ないでください。恥ずかしいです」
頬を朱に染め視線を逸らす。だがそれでも髪の毛は動くのをやめずオレの体を這いまわった。胸に、腕に、首に、腹に、足に。そうして縦横無尽に這いまわっていれば当然ながらそこにも触れる。
「あっ…♪すごく熱くて固い…♪」
いつの間にか逸らしていた視線を戻しとある場所へと注ぐ。それはオレの男の証。かざしさんの肌を見て興奮しきったものへと。
「すごい…こんなに大きくなるものなんですね♪」
裸で髪の毛に絡まれては隠すこともできない。そこから視線を外さずうっとりとした表情でかざしさんは囁いた。
「あんまり見ないでもらえますか…その、恥ずかしいんで…」
「ご立派ですよ、ゆうたさん」
そう言うとするすると髪の毛が巻き付いてかざしさんの黒髪に包まれてしまった。
女性の髪の毛でされるというのはどこか背徳的な気分になる。綺麗だからこそ汚したい、そんな感情に近いだろう。だがこの状況では主導権はオレにはない。
「こんなのはどうですか?」
「は、ぁっ!?」
巻き付いた黒髪が締め付け、たまらぬ刺激を送り込んでくる。強く締め上げてはやわやわと波打ち、また締め上げる。髪の細さと力の強さで痛みと感じとるかと思っていたが傷みなんて少しもない。人肌とは違う奇妙な感触だが快楽であることに違いなかった。
「ゆうたさんの強く脈打ってますよ♪あ、また震えて…気持ちいいんですね♪」
まるで尽くすような素振りだがオレの抵抗は許さない。ためしに手を出して止めようとするがやんわりと髪の毛で抑え込まれる。無理やりではないがとことん尽くし抜くつもりらしい。まぁ、オレもそんな彼女に嫌とは言えないのが悪いのだが。
「次は擦ってあげますね♪」
そう言うと巻き付いた髪の毛が上下に動く。細い髪一本一本が愛撫をするように刺激してくる。カリに引っかかるように動いたかと思えば裏筋を入念に擦りあげ、全体を扱いてはオレを徐々に絶頂へと押し上げてくる。滑らかで体温のある肌とは違うのにどうしてこうも気持ちいいのだろうか。
「今度はいっぱいしてあげます♪」
「え…あっ!?」
あまりの快楽に必死に耐えてきたオレは一瞬言葉の意味がわからなかった。だが次の瞬間体が理解することとなった。
束になった髪の毛が擦りあわされ、扱かれ、突き出した先端は毛先でくすぐられた。別の髪の毛は締め付けを行い、徹底的に悦ばそうと蠢いた。肌の部分など少しも見えず髪の毛の中で壮絶な攻めを行われる。腰を引こうにも髪の毛は外れることなくオレは叩き込まれる快感に体を震わせた。
今まで散々責められたというのにこんな快感を叩き込まれては耐えられるはずもなくとうとう爆発した。
「あぁああっ♪」
理性を飲み込み欲望が吐き出される。みっともなく腰をがくがくと震わせながら何度も精液を吐き出して、黒髪を汚すように撒き散らす。だがかざしさんはそれを嫌がることなく、むしろ嬉々として受け止めた。
「こんなにいっぱい出してくれたんですね…♪」
恍惚とした表情で髪の毛についた精液を眺める。束にして掬い上げると口元へ運び、見せつけるように舐め上げた。
「んふ♪ゆうたさんの味がします♪」
髪の毛についた精液を舐めとる仕草がいやらしい。流石は娼妓と名のつく妖怪だ。仕草の一つ一つが男の欲望を掻き立ててくる。
だがかざしさんもまた興奮していた。呼吸は荒くなり赤みを帯びた肌には汗が滲む。浮かべた表情はとろけきった雌の顔をしていた。
「まだ、ですよ…」
顔を寄せ囁くように言葉を紡ぐ。
「まだ、こちらがありますからね?」
そう言って膝立ちになると彼女はある部分を見せつけてきた。
「私の、おまんこにも沢山出してください、ね♪」
髪の毛で見せつけるように開かれた女の部分。同じ色をした淡い茂みの下には前戯が必要ないほどに濡れて髪の毛に粘液が滴った。甘い匂いとはまた違う、本能を刺激する雌の香りが漂ってくる。
「…っ」
ごくりと思わず唾を飲み込んだ。下腹部では先ほど吐き出したというのにもっと快感を求めて固くなるオレがいる。それに気づいたかざしさんは嬉しそうに微笑んだ。
「出したばかりなのにまた固くして…私のここで興奮してくれたですね♪なら、すぐに入れてあげますから♪」
髪の毛で開いたまま彼女は腰を下ろしてきた。髪の毛で捕らわれたオレの体を跨って一点に向かって近づけてくる。滴る粘液は下腹部へ落ち、疼くような熱を灯して床へと滴った。
くちゅりと、湿ったものが擦りあう音が響く。
「うぁ…っ」
「んんっ♪」
ただそれだけでも互いに声を漏らしてしまうほど気持ちいい。先ほど髪で扱かれたのとはまた違う、粘液と女の感触が堪らない。肉質的な柔らかさと熱く火傷しそうな熱のあるそれは興奮を掻き立ててくる。
「それじゃあ…いきますね♪」
「…はい」
人間と妖怪。人と人外の交わりだというのに抵抗なんて欠片もなかった。
彼女の言葉に頷くと愛液をまぶすように動かしていたかざしさんが腰を下ろした。いまだ絡みついた髪の毛に角度を定められたオレのものはされるがままに彼女の中へと誘われる。髪とは違う、肌とも違う柔らかさを感じながら徐々に中へと埋まっていく。
そして僅かな抵抗を感じたのは一瞬。次の瞬間には熱く柔らかなものに全てを包み込まれた。
「は、ぁぁぁ…♪ぁ……ん、ぁ……♪」
荒い呼吸を整えるように肩を上下させる。見ればかざしさんの女がオレを全て飲み込んでいた。触れ合う下腹部に赤い液体が伝ってくる。それは女の純潔の証だろう。
初めて感じる女性の体。すぐさま爆発しそうになるのを耐えながら彼女に聞く。
「痛くないですか?」
「あぁ…大丈夫です、よ…♪」
それでもなかなか彼女は顔をあげられない。やはり初めては痛いのだろうか。
対してこちらが感じているのはきつく締め付けてくるかざしさんの処女地。それは柔らかくも燃え上るように熱く、それでいてやわやわと甘やかすように揉みしだいてくる。膣内の肉ひだが表面をなぞり、まわりの壁が隙間一つもないくらいに密着する。
そして何より先っぽに吸い付く他とは違う柔らかさをもった部分。これ以上ないほど奥にあるそれはかざしさんの子宮口だろう。先端を離さず、まるで精液をねだるように吸い付いてくる。その全ての感覚が二度目の絶頂へとオレを押し上げる。
気持ちいい。それ以外に言葉が見つからない。だが未だ動かずにいるかざしさんに何かしてやれることはないだろうか。
「…」
髪の毛に塗れた両手を伸ばしかざしさんの頬に添える。突然の事でこちらに顔を向けた彼女へ今度はオレから唇を押し付けた。
「んむっ♪」
突然の事に目を見開くがやがて瞼は閉じ、されるがままに唇を重ねあう。二度三度、啄むように重ねては舌を使ってさらに深く情熱的に。
そうして唇を離すとかざしさんが額を重ねてきた。唇にはうっすらと笑みを浮かべて。
「もう、ゆうたさんたら。そんなこといきなりされたら…とまりませんよ♪」
悪戯っぽく囁いたかざしさん。そんな彼女に向かってオレも微笑むと突然下腹部から快感が湧き上がってくる。見ればゆっくりとだがかざしさんの腰が動いていた。
「んん♪いっぱい、気持ちよく…してあげますからね♪」
そう言って腰が揺らされるたびに肉壁が、ひだが擦れていく。愛液によって抵抗もなくスムーズに動き、その度強烈な快感が生まれた。一番奥をつけばびくびくと痙攣し、時折強く締め上げられる。それはきっとかざしさんが感じてくれている証拠だろう。
だが、そんなことをされてはたまらない。ただでさえこちらは未経験。こんな強烈な快感には慣れていない。先ほど吐き出したというのに再び下腹部では欲望が滾ってくる。跨って腰をふるこの女を犯せと、自分のものに染め上げろと喚きながら。
それに気づいたのかかざしさんはオレの耳元で囁いた。
「いいですよ…我慢んっ♪しないで、くださいね…♪」
いやらしい表情を浮かべそんなことを言われてはたまらない。我慢することなど馬鹿みたいに思えてくる。優しく言い聞かせるような声に理性は蕩け、たまらずオレも腰を動かした。
「ひゃんっ♪あぁあっ♪」
擦りあげ、奥を突くたびにかざしさんの膣内が締め付けてくる。甘い声を降らし快感に酔いしれる姿は普段の色っぽい姿以上に興奮を誘う。この姿を見たのはオレ一人、その事実にまた、燃え上る。
だから止まらない。オレが彼女の初めてということに。
それゆえ止まれない。初めて味わう女に酔いしれてしまって。
奥をつく。そのたび軟からな肉壁が阻むように締め付ける。ゆっくり引き抜く。すると離れることを厭うかのように吸い付き擦りあげてくる。動かずとも奥へ誘うように蠢いては先端に子宮口が吸い付いてくる。
我慢なんてもう考えられなかった。
「ゆうた、さんっ♪ぁあああっ♪や、ゆ、うたさんっ♪んんん♪」
蕩けた声でオレの名を呼び腰を動かすかざしさん。その肌には玉の汗が浮かび、時折弾けて甘い香りが漂う。メスの匂いと相まってさらにオレを昂ぶらせてくれる。
腰が弾むたびに目の前で揺れうごく二つの膨らみ。先端は桜色の突起が鎮座し、揺れるたびに上下する。その感触を確かめてみたくてオレは手を伸ばしていた。
「ひゃぁああっ♪」
触れた途端にかざしさんの体が震えた。
指が沈み込むほどの柔らかさ。掌に感じる固くなった突起。じんわりと染み込んでくる体温。力を入れれば形をかえ、筆舌しがたい感触を伝えてくる。
「あぁっ♪やぁあ♪ゆうたさ、んっそんなに胸、揉んでは…はぁっ♪」
中央に寄せたり掬い上げたり、欲望のままに揉みしだいては時折愛おしげに撫で、そっと口づける。唇で突起を愛撫し、舌で舐め上げる。そうすると気持ちいいのかかざしさんは弓なりに背を逸らし、嬌声をあげてだらしない表情を見せた。
それがまた堪らない。オレの手で彼女を悦ばせているという事実がたまらなく嬉しい。
もっと悦んでもらいたくて指に力を込めると突然叩き込まれた快感い指が止まった。
「あぅ…っ!」
「もう、ゆうたさんたら…♪」
見れば根元に髪の毛が巻き付いていた。わさわさと蠢き膣内とは別の快楽を叩き込んでくる。毛先が裏筋を撫で上げれは腰を動かし膣で擦りあげ、ゆっくりと腰を上げれば晒された部分に髪が密集する。
止むことない女の快楽と、徹底的に叩き込まれる髪の快感。毛娼妓だからこそできる技は人間には到底再現不可能なもの。なら、人間であるオレにとってもそれは耐えがたい刺激であり、たまらず体からは力が抜ける。
「私だって気持ちよくしてあげますからね♪」
甘やかすような声と共に肉と肉のぶつかり合う音が響き渡る。嬌声と重なる交わりの音は互いをさらに興奮させ、叩き込まれる快感を加速させた。
絡みついた髪の毛からは逃げられず、覆いかぶさってくるかざしさんから抜け出すこともできない。それどころか足が絡み、髪の毛はより一層強く締め上げてくる。そして絶頂へと押し上げてくる快感に耐えることは不可能だった。
「かざし、さんっ…もう…っ!」
「はいっ♪な、中にぃ♪おまんこにっ、いっぱい出してくださいっ♪私も、もう…っ♪」
求める声と淫らな動き、そして叩き込まれる快感に二度目の絶頂へと押し上げられた。
目の前で火花が散るほどの快感を弾きだし、大きく脈動しながら精液を注ぎ込む。熱く滾ったそれを受けたかざしさんの膣内は震えあがっていた。
「はぁあああああああああああああああああああ♪」
びくびくと快感に背筋を震わせ悲鳴のような嬌声を上げる。いくら戸を閉めたとはいえここは店先で壁一枚向こうは大通りだ。誰かに聞かれてしまうのではないかと思ったがそんなことを考える余裕はなかった。
流し込まれる精液の感触に絶頂を迎えたのか膣内が先ほど以上に締め上げてくる。子宮口は一滴たりとも漏らさないように吸い付いては絞り出すように撫で、抱きしめられた。求められるがまま何度も脈打ち注ぎ込む。先ほど髪の毛に出した以上に吐き出してはかざしさんの膣内を汚し尽くした。
「はっぁああ?!」
だがそれだけでは終わらない。射精中のオレのものに纏わりつくのは膣壁だけではなく、かざしさんの髪の毛も根元を刺激する。それだけではなく下の玉袋もやわやわと揉みしだくように擦れ、もっとよこせと言わんばかりに動かされた。たまらぬ快感に息は詰まり、抗えずにさらに精液を注ぎ込む。
「あぁあっ♪まだ、いっぱい…♪」
脈打ち吐き出される精液を感じながらゆっくりと倒れこんできたかざしさん。優しく抱き留めると大きな胸が胸板で形をかえ、早鐘のように打つ激しい心音を伝えてくる。汗の滲んだ肌が重なって互いの体温が溶け合う感触が心地いい。
「お腹、温かいですよ…ゆうたさん♪」
すぐ目の前にあるかざしさんの顔は満たされたように笑みを浮かべていた。そっと手の平が下腹部に添えらえ、注がれた精液を確かめるように撫でられる。とても幸せそうにする姿をみてこちらも思わず笑みが零れた。
「私のおまんこ、気持ちよかったですか?」
「はい…」
あれだけの快感を叩き込まれて気持ちよくないわけがない。オレは感じたことを素直に肯定する。
するとかざしさんは悪戯っぽく笑う。
「なら、髪の毛とおまんこ、どちらが気持ちよかったですか?」
「………」
その言葉に迷ってしまう。というのもどちらとも甲乙つけがたいものだったからだ。
束になればまるで絹のような肌触りに擦りあげられるのはたまらない。だが彼女の膣内はきつくも優しく締め付け、極上の快感を与えてくる。どちらがいいかなんて選べるはずもない。
「両方、ですね」
「なら、また両方で感じさせてあげます」
「…え?」
その言葉に首をかしげるとかざしさんはゆっくりと体を起こす。大きな胸が揺れ動き、伸びた髪の毛は波打ち、下腹部へと集中する。両手の平はオレの胸に添えられて再び騎乗位の姿勢をとった。
「もっと、いっぱい出して良いですからね♪」
未だに固さを保つオレのもの。性欲お盛んな花の十代故だろう。だが収まりを見せないのは毛娼妓で彼女も同じらしい。互いの交わった部分からは精液の混じった愛液が溢れだしてくる。
いやらしく舌で唇を舐めるかざしさん。娼妓の名は伊達じゃないなと思いながらも再び弾きだされる快感に溺れていくのだった。
気づけば既に時刻は夕方。開け放った窓からは赤い光が差し込んでくる。そんな時間にオレはいそいそと学生服を着こみ、既に支度を終えたかざしさんは店の奥へ行ってしまった。
どう顔を合わせればいいのかわからない。知らなかったとはいえ求婚して、さらにはあんなことまでしてしまった。もう恥ずかしいどころではない。取り消すなんてことはもう頭にないがこれからどうするべきなのか。
「ゆうたさん♪」
「はい?」
上機嫌にオレを呼ぶ声に振り返るとかざしさんが両手で黒い紐の様なものを持っていた。光で艶やかに映えるそれはいったいなんだろう。
「手を出してくれませんか?」
「手ですか」
言われるがままに手を差し出すとその黒い紐を手首に巻きつけた。よくよく眺めてみれば歪みながらもちゃんと三つ編みで編みこまれているそれはミサンガのように見えるがこれは―
「―髪の毛、ですか?」
「はい、私の髪の毛です。ですがやはり慣れていませんからその…」
歪んでいるのはそのせいということだろう。彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「なら今度教えてあげますよ。ですが、これは?」
自分の一部を手渡す。まるでおまもりみたいでロマンチックだがこれはどういうことだろう。
「おまじないです。怪我をしないでまっすぐに帰ってこられるようにって」
「…帰って?」
「はい。お仕事が終わったらご飯作って待ってますから。その後はまた…ね♪」
「…はい」
その言葉にお互いに顔を赤くする。先ほどあれだけのことをしたというのにだ。
誤魔化すように巻きついた髪の毛に手を添える。擦れるとなんだか体の奥を刺激する様な、ぞわぞわしておかしな気分になるのだが…気のせいだろう。
とりあえずは仕事に戻る。それで彼女が先ほど言ったようにここへ帰ってくる。突然の事で戸惑っているがそれでも誰かが待っててくれるのは悪いもんじゃない。
「それじゃあ行ってきます」
「はい、いってらっしゃいませ、ゆうたさん」
差し込む夕日にかざしさんの髪の毛が妖しく輝くのを見ながらオレは外へ出ていくのだった。
―HAPPY END―
今日も今日とてオレは食べ終えた団子の櫛を咥えながら同心の仕事をこなす。と言っても日本語しか読めないのでできることは巡回に限られるのだが。
「〜♪」
鼻歌交じりに道を歩く。おいかけっこをする子供たちを脇によけ、挨拶をする人々に頭を下げ、握りこんだ十手をくるくると器用に回しながら。
今日も特に何もない。平和な街並みを眺めながらあたりを見回しとある店の前を通り過ぎようとしたら店の中へと手を引かれた。
「んむっ…?」
誰もいないのに引かれる手首を見るとそこに絡まっているのは艶やかな糸。ジョロウグモのしのさんが扱う蜘蛛の糸に似ているがこちらは黒いく、さらには一本一本かなり細いが量が多い。引きちぎろうとすれば肌に食い込むだろうが巻きつかれていると不思議と嫌な感触はしない。
その糸はついっと店の中へとオレを引き込んでくる。店の看板を見上げれば見覚えのある文字。読めはしないが何の店だかは知っている。
「…」
引きちぎることもできないし、何より『女性の一部』を傷付けるわけにもいかない。御呼ばれしたのなら拒否するのは失礼だろう。
団子の串を咥え直すとオレは店の中へと入っていった。
「ようこそ、ゆうたさん」
店の中に入るなり恭しく頭を下げたのは一人の女性。底の厚い下駄をはき、ただでさえ高い背がさらに高くなりオレと頭一つ分違う。紫色の着物を着崩し、真っ白な肌を見せつける、どこか遊女然とした色香を漂わせる人。大きな胸を惜しげもなく肌蹴、ちらりと見える太腿が眩しい。
だが一番目を引くのは大きな花の形の簪をさした、頭から生える長い長い黒髪だろう。日の光を反射する艶やかなそれは地面につきそうなほど長く、多い。自身の顔すら半分隠れ、体も覆い隠すほどの異常な多さだ。
「どうも、かざしさん」
彼女は簪屋を営む毛娼妓のかざしさん。ここら一帯では有名な簪の職人さんだ。
「同心のお仕事ご苦労様です」
「いえいえ、それでどうかしましたか?」
だが招かれたところで男だから簪なんてつけないし、つけるにもオレの短髪では刺さらない。付け方は知っているがつける相手なんていやしない。早い話がここにきても彼女と話し込む以外にすることはない。
「いえ、ちょっと通りかかったのでゆうたさんに簪の相談をと思いまして」
「オレの考えなんて素人同然ですが」
「それでも助かっているんですよ」
同心として巡回をすれば顔を合わせることが多く、ある時ふとしたことから簪のことを提案した。それがきっかけとなり今では時折こうして店へと引き込まれ相談を受ける。こちらには現代で培った知識があるので話す分には話せるが実現可能かはわからない。
「また何か新しいものをと思いまして」
「新しいの、ですか。そうですね…チリカンとか揺れるものとかいいんじゃないですか?」
「揺れるもの…」
「先端に小さな鎖をつけてさらに先に玉とか飾りをつけるんですよ。はたまた短冊状の小さな金属をいくつも付ければぶつかったときに音がするっていうのもありますよ」
「ふむふむ」
それでもいいらしくかざしさんはうんうんと興味深そうに頷く。長い髪の毛が揺れ、光を反射しながら頭の上の艶やかな簪が揺れた。
ただ眺めているだけでも綺麗な姿。異形ともとらえられるほどの髪の長さをしているがそれでも美人であることには変わりないかざしさん。そんな彼女をじっと見つめているとふと気づく。
「…そう言えばかざしさんて同じものしかつけないんですね」
「え?」
「簪」
長髪をただ伸ばして同じ簪をしている彼女。毛娼妓らしい姿なのだがもう少し変わった姿も見てみたい。折角綺麗な髪の毛をしているのだしもう少し変わった髪型を…ほんの少しだけアクセントを加えたりしてもいいんじゃないか。
「ええ、私の髪の毛だとまとめるのに手間がかかってしまいますからね」
「そうですか。たまにはちょっと変わった髪型も見てみたいなーなんて思ったんですがね」
「髪型ですか」
かざしさんはオレの言葉に難しそうな顔をした。
「嫌でしたか?」
「いえ、その私は髪の毛が長いじゃありませんか。そのせいであまり髪型って変えられないですよね」
それでも探せば短い部分も多少はある。例えば顔の横、触覚と呼ばれる部分とか。
「部分的にしてみません?」
そっと横紙に触れるとびくりと彼女の体が震えた。驚かせてしまっただろうかと思うがお構いなしに指を添える。というのも少しこの長い髪の毛を弄って普段と違う彼女を見てみたいからだ。
「ですが…その、恥ずかしながら私は今までこの髪型以外にしたことがなくて…その」
「できないならオレがしてあげますから、ね?」
「い、嫌じゃありません?」
「まさか。それよりもオレが触っていいならしてあげられますが、どうします?」
オレの言葉にかざしさんは頬を朱に染め恥ずかしそうに頷いた。
「痛かったら言ってくださいね」
店の奥へと進み、畳の上に正座したかざしさんの傍にオレはいた。簪を外し、前髪と繋がるこめかみ部分の毛束を残す。この後はヘアアイロンやヘアスプレーで癖をつけるのだがジパングにはどちらもない。それにこの長さからして一番適しているのは…三つ編みか。
「三つ編み、していいですか?」
「は、はい」
緊張気味に頷くかざしさんを見てオレは団子の串を指でつまんだ。
「失礼」
咥えていた団子の串の持つ部分で髪の毛を一つ、二つ、三つと束に分ける。櫛がないので手で梳かすしかないが三つ編みならそう失敗はしない。
横髪を梳くと自然とかざしさんと顔が近づく。吐息が頬にかかるほどの位置にあるが今オレの目は彼女の髪の毛へと向けられる。どんな顔をしているかはわからない。それだけ集中していたからだ。
「ゆ、ゆうたさん…近い、です…っ」
「すいません、少し辛抱を」
「は、はい…」
痛みを与えない程度に引き、交わらないように注意して伸ばす。横目で痛みを感じていないか顔を見るとほんのりと顔を赤く染めていた。痛そうではないので黙々と指を動かし続けることにする。指先に触れる心地よい感触を味わいつつ細心の注意を払いながら。
「ん…っ」
「あ、痛いですか?」
「い、いえ…殿方に髪の毛を弄られるのは初めてなもので」
「すぐ終わりますからちょっと我慢してくださいね」
「は、はい…」
強張った声を聞きながら指を動かし髪の毛を梳く。鼻孔をくすぐる甘い香りはシャンプーだろうか…いや、この街にシャンプーはないか。
だがこれだけ綺麗な髪の毛ならシャンプーのCMとか絶対出れるだろうな。テレビ映りもよさそうだし、なんてくだらないことを考えてしまう。
でもまぁ、実際のところそう思えるほど彼女の髪の毛は綺麗だ。毛娼妓という妖怪だから髪の毛は命と同じなのだろう。なら手入れをするのは当然だろうがそれにしても異常なほど綺麗だ。指先を流れる感触はまるで絹のように心地よい肌触りだし、そこから香る甘い匂いもいい。体の奥を刺激してくる不思議な香りだ。毛娼妓だから、だろうか。
三つに分けた束を梳き終ると今度は右外側を内側へ左外側を内側へと編みこんでいく。
「手慣れているんですね」
「昔からやってましたからね」
以前は母親が姉や双子の姉のあやかにしているのをよく見ていた。他にも小さなころ世話をしてくれた玉藻姐や先生にさせてもらっていた。中学からはオレがあやかにすることが多かった。ほぼ毎日していればしばらくしてなくとも体は覚えているものだ。
「もう少しですからね」
止まることなく髪の毛を編んでいく。引っ張りすぎて痛くないように注意しながら。
朱色で小さめの簪を借りると三つ編みの先っぽに突き刺す。本当なら髪ゴムが適しているのだがそんなものはない。だがこれでも止められるのだから上出来だろう。
「できましたよ。はい」
近くにあった簪用の鏡を手に取りかざしさんに向ける。すると彼女の顔が嬉しそうに綻んだ。
「わぁ…素敵です♪」
気に入ってくれたのか鏡を動かし様々な角度から自分の顔を眺めるかざしさん。普段長髪を伸ばしただけの彼女には珍しい三つ編み姿。鎖骨に届くほどの長さで片側だけにしてもそれは十分なアクセントとなる。
普段は美しいとか色っぽいとかそういうことがば似合うが三つ編みで可愛らしいとも見られる。美人なのだからどんな髪型もあうのだし、こういうのも悪くない。
「可愛いですよ。かざしさん」
「ありがとうございます、ゆうたさん」
毛娼妓の妖怪と言っても娼妓、女性らしく御洒落が好きなのだろう。先ほどからかざしさんは何度も鏡を覗き込み自分の三つ編みを眺めながら嬉しそうに言った。どうやら喜んでもらえたらしく、こちらとしても嬉しいことだ。
その後相談の続きを受け、お茶菓子をいただいて店を出る。敷居を跨ぎながらふと思う。簪をあれだけ売っているのにどうして櫛は売ってないのだろうか。いや、売るどころかおいてもない。髪の毛に簪を刺す際には必要になるはずなのに。
ジパングの街を闊歩する人たちを目で追ってみる。歩く女性は皆髪の毛を結っていた。きっと自宅でしているのだろう。
…かざしさんが持ってないだけなのか。
なら今度訪れる時にでも櫛を買っていこうかな。相談を持ち掛けられるが彼女には相談なしで時折お茶を御馳走にもなる。普段からお世話になっているお礼だというがなんだか申し訳ない。
オレとかざしさんの仲というのもある。別段特別な関係というわけではないが赤の他人ではないのだし、時には贈り物もいいだろう。
となると…どこが一番いいのかな。
そう考えながら十手をくるくる回していると手首に光る細い糸に気付いた。
「んん?」
まるでワイヤーのようなそれは先ほど弄っていたかざしさんの髪の毛だろう。ためしに伸ばしてみると両腕なんて軽く超える長さだ。
「…長っ」
その長さに改めて驚きながらどうしたものかと考える。この黒髪に似合う色の櫛は何色だろうか。
お揃いか、はたまた朱色とか鼈甲だろうか。そんな風に頭を悩ませながらオレは巡回の続きへと戻っていくのだった。
そうして数日後。再びかざしさん宅を訪れた。どうやら気に入ってくれたらしくあれから彼女の横髪は三つ編みのままだ。ただ慣れないのか少し歪んでいるが。
「三つ編み自分で編んだんですか?」
「ええ、ただ慣れないのでうまくできないんですが…」
「最初は誰だってそういうもんですよ。やりましょうか?」
「…お願いします」
店内で恥ずかしそうに俯きながらかざしさんはオレに頼む。素直なことに微笑むとオレは彼女の髪に手を添えて―
「―あ、そうだ」
自分の胸ポケットに入れたものを思い出した。すぐにそれを引っ張り出すとかざしさんの目の前に差し出す。
「どうぞこれ」
それは紙に包まれた櫛だった。光を艶やかに反射する漆黒で、桜の模様が刻み込まれたもの。値段はそこそこしたがこの街でオレは食費ぐらいしか使わないので大した出費にはなっていない。
差し出した櫛に目を見開くかざしさんは震える手でとるとそれを眺める。震えるほど嬉しかったと受け取っていいのだろうか。
「こ、これは…!?」
「いえ、櫛を持っていないようなので贈ろうかと思いまして」
「それって……い、いいんですか私が、これを…貰っても?」
「ええ、そのために買ってきましたから」
艶やかな黒髪に揃えて買った漆黒の櫛。刻まれた桜の模様が粋なそれならかざしさんに似合うことだろう。
「いいんですね?私が、貰っても…」
「…?」
随分と念入りな確認をする女性だ。それほどまでに櫛が何かを意味するのだろうか。
…もしかして、不謹慎な意味合いを込めていたりするのだろうか。神様もいるこの街じゃ迷信や天罰などが真面目にあると思われている。カラス天狗の先輩なんて時折火打石で切り火とかやるし。
そうなるとオレはとんでもない失態をしてしまっただろうか。
「嫌でしたか?」
「いえまさか!そんな…本当に私が頂いてよろしいのですね?」
「ええ、いいですよ」
三度目の確認に頷くとかざしさんの顔が嬉しそうに輝いた。
「もうっ♪ゆうたさんたらっ♪」
「え?」
突然伸びてきた両手がオレの体へと回った。それだけではなく強く体を抱きしめられる。学ラン越しでも隠せない柔らかな胸の感触が伝わってくるのだがそれよりも突然の事にどうしたのか頭が追い付かない。
どうしてかざしさんはこんなに喜んでいるのだろうか。
「いきなり求婚してくださるなんて…大胆な人♪」
「え?え?…」
きゅうこん?それは…植物のあれではないほうだろうか。
中世のヨーロッパではハンカチが求婚の証とか婚約の証とかで贈られると聞いたことがある。ならこの街で、櫛が求婚の証となるのもおかしくはないことか。
だがオレはそんなこと知らない。知っていれば当然軽々しく贈ることもない。
しかしそんなことお構いなしにかざしさんは嬉しそうだ。今更違うというのは気が引けるが言わなければ。
そう思うのだが指先、手首、肘、腕、腰、膝、足首、つま先、そして首。全身のありとあらゆる部分に髪の毛が巻き付いてくる。痛みを与えないように柔らかく、それでも逃がさぬようにしっかりと。
あ、これまずい。そう感づくときには既に遅かった。
「ゆうたさんから求婚していただくなんて…ふふ♪」
嬉しそうに微笑み櫛を眺めていたかざしさんはオレの方へと向き直る。既に彼女の髪の毛が巻き付き体中髪の毛だらけな姿を目に映しながら。
「もう少し大胆にならないとわからないかと思ってましたが…ゆうたさんもそうだったんですね♪」
「え…」
何が?と聞こうとするとかざしさんがオレの頬に手を添えた。向けられた瞳は潤み、熱っぽい視線を送ってくる。
色っぽい。美人にそんな表情を浮かべられれば男としていろいろと堪らない。健全な男子高校生でも同じことだ。
だが先ほどの発言とまるで逃げ出さないように、そして愛するものに抱擁するかのような行為。毛娼妓にとって大切な髪の毛で雁字搦めにする意味。
…謝っただけでどうこう済みそうにない。
すり寄ってくるかざしさんから逃げ出そうと足を出すと髪の毛に引かれ、店先に倒れこんでしまった。
「あぅっ」
木の板の床に体を打ち付ける。痛みはないが起きるよりも先にかざしさんが身を寄せていた。その顔は徐々に近づき、自然と体も距離が縮まっていく。
別の髪の毛が店先の戸を閉め、窓まで閉める。完全な密室で二人きりの状況下、オレは倒れその上に寄り添ってくるかざしさん。
非常に、まずい。
「あ、あの……すいません。そんな、櫛にそんな意味が込められてるなんて知らなくて…」
「あれだけ確認したじゃないですか…女をその気にさせておいて何もせずに去るなんて無責任なことしないでくださいよ」
「ですがオレはそんなこと知らなくてただの贈り物程度としか思って―んむぅっ!」
突然髪の毛に首を引かれ、かざしさんの顔が近づいた。避けることもできずそのまま唇同士が接触する。いきなり感じた柔らかさに体が強張るが彼女はお構いなしに強く押し付けてきた。
「ちゅ……ん、む……ん♪」
力のままに形を変える、言葉を伝えるための器官。纏わりつくように重なり離れる素振りは欠片も見せない。頭を後ろに下げようにも首に巻きついた髪の毛がそれを邪魔する。
「は、んむ…っ♪」
一度離してはまた重ねる。先ほど以上に強く、深く、激しく。
その行為に徐々に瞼が閉じていく。抵抗なんてやめてこの感触を心行くまで味わいたいと欲望が叫んでる。
実際のところ抵抗はできない。逃げることもできない。こんな状況ではオレができることなど叩き込まれる感覚を享受することのみだろう。
それにオレの勘違いでこのような結果になってしまった以上責任はオレにある。ならば腹を括って応じるべきか。それともこんな状況下でも抵抗し続けるべきか。
だがオレの葛藤を知ることもなくかざしさんは唇の隙間から舌を差し込んできた。唇とは違う柔らかさをもつそれは迷うことなく舌へと絡みついてくる。
「じゅる…ん、ふぅ♪んむぅっ♪」
口内を這いずり回る、ねっとりと絡みつくような甘さ。この街で味わってきたどの甘味よりも甘く頭の中を溶かしていきそうだ。
視界がぼやける。それでもはっきりと映し出されているのは真っ赤にし蕩けきった表情を浮かべるかざしさんだった。
「ん…んちゅ♪」
何度も何度もオレの口内へ自分の唾液を塗りたくるように舌が蠢きまわる。それでいて舌が触れるたびににちゃにちゃと擦られ甘い唾液が伝って喉の奥へと流れ込む。頭の奥をしびれさせるような感触と甘さに抵抗できずに何度も飲み下した。飲み干せないのは唇の端から滴り落ちていく。
ようやく離れた時には滴る唾液を彼女が舐めとっていた。
「んふ…とっても甘い口づけでした♪いつもお団子ばかり食べているからでしょうかね」
うっとりとした表情で囁くかざしさん。自分の唇に触れて笑う姿はとてもいやらしい。
毛娼妓。まさしく娼妓という名前に相応しい淫らな姿だった。
「体の方は…どうなっているんですか?」
単純な好奇心かはたまた本能的な欲望か、かざしさんは長い髪の毛を操ると服の隙間から潜り込ませてきた。
「ひ、っぁ…っ!!」
歪んだ三つ編みが頬を撫でる。くすぐったさに身を捩るのだが髪の毛は離れてくれない。
服の内側へと潜り込んできた髪の毛が束になって擦れあう感触はまるで絹に擦られているように感じられる。だが数多の髪の毛に擦られる感触というのはむず痒く、くすぐったい。
「私の髪の毛くすぐったいですか?ふふ、体を震わせて…可愛らしいですよ♪」
「んな…っ……!!」
可愛らしいなんて言葉に喜べる男はそういないだろう。オレもそうであり否定しようとしたが体を這いずる髪の毛の感覚が邪魔をする。心地いいのにくすぐったく、擦れるたびに呼吸が乱れ、体が震える。その姿を見下ろすかざしさんはうっとりとした表情を浮かべていた。
「逞しい体、素敵です♪」
髪の毛にも神経が通っているのか感触を確かめるように締め付け、撫でる。その度はぁっと熱いため息を漏らすかざしさん。
「今度はその体見せてくださいね」
そう言うと肌を這いまわる髪の毛が別の動きをし始めた。細くも強い髪の毛は服の下で蠢くと器用にもボタンを外していく。見慣れぬ洋服だというのに構造がわかっているのかてきぱきと脱がしにかかってきた。
「これも、脱ぎましょうね?」
優しく幼子に言い聞かせるような口調で囁くとかざしさんはベルトに髪の毛を巻きつけた。金具ごと引き離すと外されたベルトは髪の毛で別の場所へと置かれる。他の服も同様にオレの手の届かぬ場所へと落とされた。
「はぁ……素敵です♪」
晒された肌をかざしさんはうっとりとした表情で見下ろしてくる。だがこちとら女性の前で肌を晒して喜べるほど変な性癖は持っていない。身を隠すように縮こまろうとすると髪の毛が邪魔をし、彼女はそんな様子を見て薄く笑う。
「ゆうたさんだけじゃありませんよ。今私も脱ぎますからね」
するすると髪の毛で紫色の着物を苦も無く脱ぎ捨て、オレの服の上に落とす。そしてかざしさんの一糸まとわぬ姿が晒された。
華奢な手足に魅惑的なくびれ。膨らんだ臀部や豊かに揺れる大きな胸。傷一つない肌は髪の毛も相まって異常なほど白く映る。そして淡い茂みの生えた女の部分。全体的に完成された女の体から視線を外すことができない。
「…そんなに見ないでください。恥ずかしいです」
頬を朱に染め視線を逸らす。だがそれでも髪の毛は動くのをやめずオレの体を這いまわった。胸に、腕に、首に、腹に、足に。そうして縦横無尽に這いまわっていれば当然ながらそこにも触れる。
「あっ…♪すごく熱くて固い…♪」
いつの間にか逸らしていた視線を戻しとある場所へと注ぐ。それはオレの男の証。かざしさんの肌を見て興奮しきったものへと。
「すごい…こんなに大きくなるものなんですね♪」
裸で髪の毛に絡まれては隠すこともできない。そこから視線を外さずうっとりとした表情でかざしさんは囁いた。
「あんまり見ないでもらえますか…その、恥ずかしいんで…」
「ご立派ですよ、ゆうたさん」
そう言うとするすると髪の毛が巻き付いてかざしさんの黒髪に包まれてしまった。
女性の髪の毛でされるというのはどこか背徳的な気分になる。綺麗だからこそ汚したい、そんな感情に近いだろう。だがこの状況では主導権はオレにはない。
「こんなのはどうですか?」
「は、ぁっ!?」
巻き付いた黒髪が締め付け、たまらぬ刺激を送り込んでくる。強く締め上げてはやわやわと波打ち、また締め上げる。髪の細さと力の強さで痛みと感じとるかと思っていたが傷みなんて少しもない。人肌とは違う奇妙な感触だが快楽であることに違いなかった。
「ゆうたさんの強く脈打ってますよ♪あ、また震えて…気持ちいいんですね♪」
まるで尽くすような素振りだがオレの抵抗は許さない。ためしに手を出して止めようとするがやんわりと髪の毛で抑え込まれる。無理やりではないがとことん尽くし抜くつもりらしい。まぁ、オレもそんな彼女に嫌とは言えないのが悪いのだが。
「次は擦ってあげますね♪」
そう言うと巻き付いた髪の毛が上下に動く。細い髪一本一本が愛撫をするように刺激してくる。カリに引っかかるように動いたかと思えば裏筋を入念に擦りあげ、全体を扱いてはオレを徐々に絶頂へと押し上げてくる。滑らかで体温のある肌とは違うのにどうしてこうも気持ちいいのだろうか。
「今度はいっぱいしてあげます♪」
「え…あっ!?」
あまりの快楽に必死に耐えてきたオレは一瞬言葉の意味がわからなかった。だが次の瞬間体が理解することとなった。
束になった髪の毛が擦りあわされ、扱かれ、突き出した先端は毛先でくすぐられた。別の髪の毛は締め付けを行い、徹底的に悦ばそうと蠢いた。肌の部分など少しも見えず髪の毛の中で壮絶な攻めを行われる。腰を引こうにも髪の毛は外れることなくオレは叩き込まれる快感に体を震わせた。
今まで散々責められたというのにこんな快感を叩き込まれては耐えられるはずもなくとうとう爆発した。
「あぁああっ♪」
理性を飲み込み欲望が吐き出される。みっともなく腰をがくがくと震わせながら何度も精液を吐き出して、黒髪を汚すように撒き散らす。だがかざしさんはそれを嫌がることなく、むしろ嬉々として受け止めた。
「こんなにいっぱい出してくれたんですね…♪」
恍惚とした表情で髪の毛についた精液を眺める。束にして掬い上げると口元へ運び、見せつけるように舐め上げた。
「んふ♪ゆうたさんの味がします♪」
髪の毛についた精液を舐めとる仕草がいやらしい。流石は娼妓と名のつく妖怪だ。仕草の一つ一つが男の欲望を掻き立ててくる。
だがかざしさんもまた興奮していた。呼吸は荒くなり赤みを帯びた肌には汗が滲む。浮かべた表情はとろけきった雌の顔をしていた。
「まだ、ですよ…」
顔を寄せ囁くように言葉を紡ぐ。
「まだ、こちらがありますからね?」
そう言って膝立ちになると彼女はある部分を見せつけてきた。
「私の、おまんこにも沢山出してください、ね♪」
髪の毛で見せつけるように開かれた女の部分。同じ色をした淡い茂みの下には前戯が必要ないほどに濡れて髪の毛に粘液が滴った。甘い匂いとはまた違う、本能を刺激する雌の香りが漂ってくる。
「…っ」
ごくりと思わず唾を飲み込んだ。下腹部では先ほど吐き出したというのにもっと快感を求めて固くなるオレがいる。それに気づいたかざしさんは嬉しそうに微笑んだ。
「出したばかりなのにまた固くして…私のここで興奮してくれたですね♪なら、すぐに入れてあげますから♪」
髪の毛で開いたまま彼女は腰を下ろしてきた。髪の毛で捕らわれたオレの体を跨って一点に向かって近づけてくる。滴る粘液は下腹部へ落ち、疼くような熱を灯して床へと滴った。
くちゅりと、湿ったものが擦りあう音が響く。
「うぁ…っ」
「んんっ♪」
ただそれだけでも互いに声を漏らしてしまうほど気持ちいい。先ほど髪で扱かれたのとはまた違う、粘液と女の感触が堪らない。肉質的な柔らかさと熱く火傷しそうな熱のあるそれは興奮を掻き立ててくる。
「それじゃあ…いきますね♪」
「…はい」
人間と妖怪。人と人外の交わりだというのに抵抗なんて欠片もなかった。
彼女の言葉に頷くと愛液をまぶすように動かしていたかざしさんが腰を下ろした。いまだ絡みついた髪の毛に角度を定められたオレのものはされるがままに彼女の中へと誘われる。髪とは違う、肌とも違う柔らかさを感じながら徐々に中へと埋まっていく。
そして僅かな抵抗を感じたのは一瞬。次の瞬間には熱く柔らかなものに全てを包み込まれた。
「は、ぁぁぁ…♪ぁ……ん、ぁ……♪」
荒い呼吸を整えるように肩を上下させる。見ればかざしさんの女がオレを全て飲み込んでいた。触れ合う下腹部に赤い液体が伝ってくる。それは女の純潔の証だろう。
初めて感じる女性の体。すぐさま爆発しそうになるのを耐えながら彼女に聞く。
「痛くないですか?」
「あぁ…大丈夫です、よ…♪」
それでもなかなか彼女は顔をあげられない。やはり初めては痛いのだろうか。
対してこちらが感じているのはきつく締め付けてくるかざしさんの処女地。それは柔らかくも燃え上るように熱く、それでいてやわやわと甘やかすように揉みしだいてくる。膣内の肉ひだが表面をなぞり、まわりの壁が隙間一つもないくらいに密着する。
そして何より先っぽに吸い付く他とは違う柔らかさをもった部分。これ以上ないほど奥にあるそれはかざしさんの子宮口だろう。先端を離さず、まるで精液をねだるように吸い付いてくる。その全ての感覚が二度目の絶頂へとオレを押し上げる。
気持ちいい。それ以外に言葉が見つからない。だが未だ動かずにいるかざしさんに何かしてやれることはないだろうか。
「…」
髪の毛に塗れた両手を伸ばしかざしさんの頬に添える。突然の事でこちらに顔を向けた彼女へ今度はオレから唇を押し付けた。
「んむっ♪」
突然の事に目を見開くがやがて瞼は閉じ、されるがままに唇を重ねあう。二度三度、啄むように重ねては舌を使ってさらに深く情熱的に。
そうして唇を離すとかざしさんが額を重ねてきた。唇にはうっすらと笑みを浮かべて。
「もう、ゆうたさんたら。そんなこといきなりされたら…とまりませんよ♪」
悪戯っぽく囁いたかざしさん。そんな彼女に向かってオレも微笑むと突然下腹部から快感が湧き上がってくる。見ればゆっくりとだがかざしさんの腰が動いていた。
「んん♪いっぱい、気持ちよく…してあげますからね♪」
そう言って腰が揺らされるたびに肉壁が、ひだが擦れていく。愛液によって抵抗もなくスムーズに動き、その度強烈な快感が生まれた。一番奥をつけばびくびくと痙攣し、時折強く締め上げられる。それはきっとかざしさんが感じてくれている証拠だろう。
だが、そんなことをされてはたまらない。ただでさえこちらは未経験。こんな強烈な快感には慣れていない。先ほど吐き出したというのに再び下腹部では欲望が滾ってくる。跨って腰をふるこの女を犯せと、自分のものに染め上げろと喚きながら。
それに気づいたのかかざしさんはオレの耳元で囁いた。
「いいですよ…我慢んっ♪しないで、くださいね…♪」
いやらしい表情を浮かべそんなことを言われてはたまらない。我慢することなど馬鹿みたいに思えてくる。優しく言い聞かせるような声に理性は蕩け、たまらずオレも腰を動かした。
「ひゃんっ♪あぁあっ♪」
擦りあげ、奥を突くたびにかざしさんの膣内が締め付けてくる。甘い声を降らし快感に酔いしれる姿は普段の色っぽい姿以上に興奮を誘う。この姿を見たのはオレ一人、その事実にまた、燃え上る。
だから止まらない。オレが彼女の初めてということに。
それゆえ止まれない。初めて味わう女に酔いしれてしまって。
奥をつく。そのたび軟からな肉壁が阻むように締め付ける。ゆっくり引き抜く。すると離れることを厭うかのように吸い付き擦りあげてくる。動かずとも奥へ誘うように蠢いては先端に子宮口が吸い付いてくる。
我慢なんてもう考えられなかった。
「ゆうた、さんっ♪ぁあああっ♪や、ゆ、うたさんっ♪んんん♪」
蕩けた声でオレの名を呼び腰を動かすかざしさん。その肌には玉の汗が浮かび、時折弾けて甘い香りが漂う。メスの匂いと相まってさらにオレを昂ぶらせてくれる。
腰が弾むたびに目の前で揺れうごく二つの膨らみ。先端は桜色の突起が鎮座し、揺れるたびに上下する。その感触を確かめてみたくてオレは手を伸ばしていた。
「ひゃぁああっ♪」
触れた途端にかざしさんの体が震えた。
指が沈み込むほどの柔らかさ。掌に感じる固くなった突起。じんわりと染み込んでくる体温。力を入れれば形をかえ、筆舌しがたい感触を伝えてくる。
「あぁっ♪やぁあ♪ゆうたさ、んっそんなに胸、揉んでは…はぁっ♪」
中央に寄せたり掬い上げたり、欲望のままに揉みしだいては時折愛おしげに撫で、そっと口づける。唇で突起を愛撫し、舌で舐め上げる。そうすると気持ちいいのかかざしさんは弓なりに背を逸らし、嬌声をあげてだらしない表情を見せた。
それがまた堪らない。オレの手で彼女を悦ばせているという事実がたまらなく嬉しい。
もっと悦んでもらいたくて指に力を込めると突然叩き込まれた快感い指が止まった。
「あぅ…っ!」
「もう、ゆうたさんたら…♪」
見れば根元に髪の毛が巻き付いていた。わさわさと蠢き膣内とは別の快楽を叩き込んでくる。毛先が裏筋を撫で上げれは腰を動かし膣で擦りあげ、ゆっくりと腰を上げれば晒された部分に髪が密集する。
止むことない女の快楽と、徹底的に叩き込まれる髪の快感。毛娼妓だからこそできる技は人間には到底再現不可能なもの。なら、人間であるオレにとってもそれは耐えがたい刺激であり、たまらず体からは力が抜ける。
「私だって気持ちよくしてあげますからね♪」
甘やかすような声と共に肉と肉のぶつかり合う音が響き渡る。嬌声と重なる交わりの音は互いをさらに興奮させ、叩き込まれる快感を加速させた。
絡みついた髪の毛からは逃げられず、覆いかぶさってくるかざしさんから抜け出すこともできない。それどころか足が絡み、髪の毛はより一層強く締め上げてくる。そして絶頂へと押し上げてくる快感に耐えることは不可能だった。
「かざし、さんっ…もう…っ!」
「はいっ♪な、中にぃ♪おまんこにっ、いっぱい出してくださいっ♪私も、もう…っ♪」
求める声と淫らな動き、そして叩き込まれる快感に二度目の絶頂へと押し上げられた。
目の前で火花が散るほどの快感を弾きだし、大きく脈動しながら精液を注ぎ込む。熱く滾ったそれを受けたかざしさんの膣内は震えあがっていた。
「はぁあああああああああああああああああああ♪」
びくびくと快感に背筋を震わせ悲鳴のような嬌声を上げる。いくら戸を閉めたとはいえここは店先で壁一枚向こうは大通りだ。誰かに聞かれてしまうのではないかと思ったがそんなことを考える余裕はなかった。
流し込まれる精液の感触に絶頂を迎えたのか膣内が先ほど以上に締め上げてくる。子宮口は一滴たりとも漏らさないように吸い付いては絞り出すように撫で、抱きしめられた。求められるがまま何度も脈打ち注ぎ込む。先ほど髪の毛に出した以上に吐き出してはかざしさんの膣内を汚し尽くした。
「はっぁああ?!」
だがそれだけでは終わらない。射精中のオレのものに纏わりつくのは膣壁だけではなく、かざしさんの髪の毛も根元を刺激する。それだけではなく下の玉袋もやわやわと揉みしだくように擦れ、もっとよこせと言わんばかりに動かされた。たまらぬ快感に息は詰まり、抗えずにさらに精液を注ぎ込む。
「あぁあっ♪まだ、いっぱい…♪」
脈打ち吐き出される精液を感じながらゆっくりと倒れこんできたかざしさん。優しく抱き留めると大きな胸が胸板で形をかえ、早鐘のように打つ激しい心音を伝えてくる。汗の滲んだ肌が重なって互いの体温が溶け合う感触が心地いい。
「お腹、温かいですよ…ゆうたさん♪」
すぐ目の前にあるかざしさんの顔は満たされたように笑みを浮かべていた。そっと手の平が下腹部に添えらえ、注がれた精液を確かめるように撫でられる。とても幸せそうにする姿をみてこちらも思わず笑みが零れた。
「私のおまんこ、気持ちよかったですか?」
「はい…」
あれだけの快感を叩き込まれて気持ちよくないわけがない。オレは感じたことを素直に肯定する。
するとかざしさんは悪戯っぽく笑う。
「なら、髪の毛とおまんこ、どちらが気持ちよかったですか?」
「………」
その言葉に迷ってしまう。というのもどちらとも甲乙つけがたいものだったからだ。
束になればまるで絹のような肌触りに擦りあげられるのはたまらない。だが彼女の膣内はきつくも優しく締め付け、極上の快感を与えてくる。どちらがいいかなんて選べるはずもない。
「両方、ですね」
「なら、また両方で感じさせてあげます」
「…え?」
その言葉に首をかしげるとかざしさんはゆっくりと体を起こす。大きな胸が揺れ動き、伸びた髪の毛は波打ち、下腹部へと集中する。両手の平はオレの胸に添えられて再び騎乗位の姿勢をとった。
「もっと、いっぱい出して良いですからね♪」
未だに固さを保つオレのもの。性欲お盛んな花の十代故だろう。だが収まりを見せないのは毛娼妓で彼女も同じらしい。互いの交わった部分からは精液の混じった愛液が溢れだしてくる。
いやらしく舌で唇を舐めるかざしさん。娼妓の名は伊達じゃないなと思いながらも再び弾きだされる快感に溺れていくのだった。
気づけば既に時刻は夕方。開け放った窓からは赤い光が差し込んでくる。そんな時間にオレはいそいそと学生服を着こみ、既に支度を終えたかざしさんは店の奥へ行ってしまった。
どう顔を合わせればいいのかわからない。知らなかったとはいえ求婚して、さらにはあんなことまでしてしまった。もう恥ずかしいどころではない。取り消すなんてことはもう頭にないがこれからどうするべきなのか。
「ゆうたさん♪」
「はい?」
上機嫌にオレを呼ぶ声に振り返るとかざしさんが両手で黒い紐の様なものを持っていた。光で艶やかに映えるそれはいったいなんだろう。
「手を出してくれませんか?」
「手ですか」
言われるがままに手を差し出すとその黒い紐を手首に巻きつけた。よくよく眺めてみれば歪みながらもちゃんと三つ編みで編みこまれているそれはミサンガのように見えるがこれは―
「―髪の毛、ですか?」
「はい、私の髪の毛です。ですがやはり慣れていませんからその…」
歪んでいるのはそのせいということだろう。彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「なら今度教えてあげますよ。ですが、これは?」
自分の一部を手渡す。まるでおまもりみたいでロマンチックだがこれはどういうことだろう。
「おまじないです。怪我をしないでまっすぐに帰ってこられるようにって」
「…帰って?」
「はい。お仕事が終わったらご飯作って待ってますから。その後はまた…ね♪」
「…はい」
その言葉にお互いに顔を赤くする。先ほどあれだけのことをしたというのにだ。
誤魔化すように巻きついた髪の毛に手を添える。擦れるとなんだか体の奥を刺激する様な、ぞわぞわしておかしな気分になるのだが…気のせいだろう。
とりあえずは仕事に戻る。それで彼女が先ほど言ったようにここへ帰ってくる。突然の事で戸惑っているがそれでも誰かが待っててくれるのは悪いもんじゃない。
「それじゃあ行ってきます」
「はい、いってらっしゃいませ、ゆうたさん」
差し込む夕日にかざしさんの髪の毛が妖しく輝くのを見ながらオレは外へ出ていくのだった。
―HAPPY END―
14/08/17 18:44更新 / ノワール・B・シュヴァルツ