連載小説
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迷いと貴女とオレと路 後編
「…今日で最後になっちゃうのかな?」
双子の姉が、そう言った。
そこは家族でよく来た動物園の門の前。
高校に上がる前の春休みのときだった。
「何が?」
オレは隣で言った。
「私達ももう高校生じゃん。それだからこうして、皆で一緒に家族旅行できる機会も減るのかなぁって。」
「そりゃ…まぁな。」
「あーあ、やーだなー。高校生になりたくないなー。」
そんなこと言いながら、門の下を共にくぐった。
先に行った母達に追いつくために。
今思えば、あの言葉を。
『皆で一緒に』って言うあの意味を。
もっと噛み締めておけばよかった。
そう、思った…。

「…ん?」
目が覚めた。どうやら眠っていたらしい。
寝起きではっきりしない頭で何が起きたか確認する。
ええと…オレは。
かぐやさんと鬼ごっこして…んで、かぐやさんを捕まえて、豪華賞品である宝箱を開けたら煙に包まれて…。
なぜだかとてつもなく眠くなったんだよな…。
…何で?
「起きられたんや?」
上から声が降ってくる。
眠い目をこすりながら見上げるとそこにはかぐやさんが微笑んでオレを覗き込んでいた。
「もう夜や。随分御疲れやったのどすね。」
「あんなモン仕掛けといて何言ってるんですか…。」
さすがに気付く。あの煙が眠気を催させるタイプの物だってことぐらい。
身をもって実体験したし。
「ここは…?」
目がよく見えるようになって気付く。ここはあの一面紫の部屋じゃない。
白い壁に小さな明かり。窓は二つで生活感溢れる部屋。
おそらくここはこの店の二階、かぐやさんの部屋だろう。
オレの下に柔らかなベッドがあるのが気にかかるが…。
…ってそこじゃない。
なんか体勢がおかしいぞ?
腹の辺りに温かさをもつ重みを感じて、かぐやさんはオレの上から声をかけてきて…。
今、この状況はいったいどうなってる?
かぐやさんは相変わらず微笑んでるだけ。
起きようとしてもなんだか体が異常なまでに重く感じる。
まるで体重が二人分に増えたかのように。
…うん?二人分?それじゃ…腹部に感じる温かき重みは…まさか?
「か、かぐやさん!?これはいったいどんな状況なのでしょうか!?」
どーやらオレはかぐやさんに跨られていた。って何で!?
「どうしてあなたはオレの上に跨ってるんですか!?」
「それをうちに言わせる気どすか?いけずどすなぁ…////」
なぜ赤くなる!?
てか、さりげなく指をオレの体に這わせないでもらいたい!
胸のところでのの字を書くな!
わき腹をなで上げるな!
「ふふふ、知ってまっしゃろか?獣ちゅうのはよお自分の昂ぶりが抑えきれへん時期が来まんねん…。」
「え?」
笑みを浮かべるかぐやさん。
だがその表情はいつもと違う。
眠る前に見たあの妖艶な笑みだがどことなく違う…。
頬を赤く染め、息を荒くし、目尻をトロンと下げたその顔は、
女、そのもの。
「っ!」
「今は春、どすなぁ。」
かぐやさんは顔を鼻の先が触れるか触れないかの所まで近づける。
かぐやさんの甘い吐息が、オレに直接かかる。
普段と違うのは一目瞭然。
明らかに興奮しきっている。
さっきの言葉からして、かぐやさんは『稲荷』。
『稲荷』は『狐』。
『狐』で、春に抑えきれない昂ぶりがくる時期といえば…。
「っ!発情期、ですか…!?」
「正解。賢い人は好きや…。」
「!!」
やばい!この状況はやばいぞ!
目の前にいるのは稲荷で女のかぐやさん。
その下にいるのが人間で男のオレ。
これには流石に気付く。このあとどんな展開になるかって事に…!
「か、かかぐやさん!?流石にこれはまずいでしょ!いくら発情期だからってそんな、オレみたいな何処の馬の骨ともしれない男とするのは!」
「あらぁ?何でそないなつれへんこと、しゃべるのどすか?」
そっと、後頭部に腕を回された。
逃げないための拘束とでも言わんばかりに…。
「ずーっと前から狙っとったのどすよ。ずーっと、ずっと。待ち望んでおいやしたのどす。」
かぐやさんの甘い香りがオレの鼻腔をくすぐっていく。
「ゆうたはんのこと…。」
かぐやさんの右手が頬に添えられる。左手は変わらずオレの後頭部を拘束したまま。
「ずっと前から…」
なぜだか、かぐやさんに触れられたところが熱く疼く。

「好きどすねん…。」

疼く体へ降り注いだのはかぐやさんの気持ちを乗せた言葉。
それはオレの中の力を削いでいく。
抗う力を、抵抗する気力を…。
「こーやって近くまで寄ったりして…。」
むにゅりと、オレの胸板に柔らかなものが押し付けられる。
見なくともわかる。かぐやさんの胸の感触。
学生服越しだというのにその感覚はオレを狂わせた。
「それに…ゆうたはんもではおまへんのどすか?」
「…え?」
「体、抑えきれまんねん?」
「…っ!」
そこで気付く。体がいつもと違うことに。
普段の正常な時とはまったく違う感覚。
体の奥から何かが燃え上がる、何かが滾ってくるのが感じられる。
体中が熱い。
熱に浮されるかのように、とても熱い…!?
「…あの煙、何か…入ってましたね…!?」
「ふふふ、またも正解。実はあの煙に中に『アルラウネの蜜』と『ホルスタウロスの牛乳』、『ハニービーの蜂蜜』が入っとったのどすよ。」
「!?」
どれも知ってる。
蜜と蜂蜜はどちらも媚薬効果のあるもの…牛乳は精力増強効果のあるもの…!
そんなものをオレはかなり吸い込んでいた。ッてことは!
「こんなに体が熱いのは…!」
「捕まえられへんかったら別の手もおしたんどすけど…必要おへんどしたね…♪」
は、謀ったな!
この狐!化かして騙して嵌めやがった!
タチ悪すぎ!!
「抑え切れへんやろ?」
より強く体を、胸を押し付けられる。
そんなことをすればオレの中の理性は火の上で揺れる紙切れ同然で。
「くっ…うぁ。」
欲望の炎が理性を焦がしていく。
一方的に、ちりちりと。
「よろしおす、ゆうたはん。抗わず、拒まず、本能に身を委ねて…。」
抑えきれないのはかぐやさんの方でもあり、徐々に顔が迫ってきた。
「うちに全部任せてーな…。」
先に理性が消え、本能に支配されたのは
「んぅ♪」
「んん!?」
かぐやさんの方だった。
「ん…ふぅ…んむぅ…♪」
「んぅ…ぁ!」
強く押し付けられる唇。
その間から漏れるは艶のかかった女の声。
「ん!?」
ぬるりと、かぐやさんが舌を侵入させてきた。
舌を絡ませられ、唾液を流され、歯の裏側まで丹念に舐められる。
愛撫のようだが一方的に。
暴力的かつ妖艶に。
後頭部にある手で引き寄せられ、逃げることはできそうに無い。
時間にして三分以上、それほど長く感じさせられる口付けだった。
「ぷはぁ…はぁ…はぁ…か、ぐや、さん…ちょっとま―んむぅ!?」
空気を求め口を離すもすぐさま塞がれる。
一時も、一瞬でもさえ離れたくないとでも言わんばかりに。
さっきよりもより強く、ねちっこく、いやらしく。
オレの全てを吸い尽くそうとするかのように。
一度離してから五分以上はしていただろうか。
かぐやさんはさっきよりも長い口付けをようやくやめ、唇を離す。
オレとかぐやさんの間に銀色のアーチが架かり、ぷつんと切れた。
「ふぁ…ちょい夢中になってしもた…♪ゆうたはん、どないどした?」
「はぁ…はぁ…な、長すぎで、すよ…。」
息が続かない。いくらなんでも長いだろ…。
これだけの口付けをしてかぐやさんはもっと赤く染まった顔をオレに向けていた。
それは明らかに、発情しきった獣の顔。



「まだまだ…これさかいどす♪…ん。」
今度は軽めの口付け。
触れ合わせるようなそんな優しい口付けを交わしながらかぐやさんはオレの学生服に手をかけた。
一つ一つ丁寧にボタンを外し、中のワイシャツも同じようにボタンを外す。
…手馴れてるな。
このての服はこっちの世界にはないっていうのに…。
あの時、『迷い』と共に覗かれたのかな?
全てを外し終え、オレの上半身を露出させるとそっと右手を這わせた。
オレよりも少し高い体温が非常に心地よい。
「ふふふ、逞しい体どす♪」
「…どうも。」
「そんなら…こっちゃの方は…。」
体をオレの腹の上から後ろへ移し、ズボンに手をかける。
手際よくベルトを外し、パンツごと下げられ、露になるオレの愚息。
「っ!」
「まぁ…♪」
あの煙のせいでもあるが、かぐやさんとの口付けのせいでもありおれの愚息は痛いほど張りつめ、欲求が滾っていた。
かぐやさんは目を細め、いかにも好色そうな妖艶な笑みを浮かべる。
「ゆうたはんの、こっちゃも逞しいどす♪」
「…恥ずかしいので服着ていいですか?」
「恥ずかしのならうちも服を脱ぎまひょ。」
自分の帯に手をかけ、剥ぎ取っていく。
帯の取られた和服は前を留めるものがなくなったのと同じで。
つまり、オレの瞳にはかぐやさんの体が、普段和服で隠れていたその豊満な体が晒されて…。
「っ!!」
白く艶やかな肌は熱を持ち薄い赤に染まり、二つの大きなふくらみがそこにあった。
くびれた腰つき、形の良い安産型の臀部。
その姿は妖艶で、艶かしくて、色っぽくて…。
そして何より美しくって…!
オレの理性を殺ぎ落とす凶器だった。
下のほうに視線を移せばそこには髪、瞳、耳や尻尾と同じ黄金色の茂み。
見ているだけで気を狂われそうだった。
「このまんましはるのもええどすやえど…とっておきの事をしてあげまんねん♪」
「ふぇ?…っぁ!?」
わさわさと、金色の尻尾がうごめく。
稲荷の、かぐやさんの五本の尻尾がオレの愚息を包み込んだ。
「んぅ…うぁ…!」
「ふふふ、かわいらしい顔どすなぁ♪」
しごくような動きをしたり、先をくすぐるかのような動きを見せたり。
まるで洗うかのように尻尾はオレの愚息を刺激する。
時折ちくりと感じる尻尾の体毛がよりオレを昂ぶらせ、限界へと誘う。
っていうか…もう…!
「っと、ここまで。」
「え…?」
急に刺激は消えうせ、昂ぶりは留まる。
その分出したいという欲求が急激に膨れ上がった。
それと同時に感じる疑問。
なんでここで止める?
「なん、で…?」
「そない残念な顔せいで…大丈夫、ぎょうさん出させてあげまんねん。」
かぐやさんは中途半端に羽織っていた薄紫の和服を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿となり、
ちょうどオレの下腹部あたりで腰を上げた。
「見ておくれやす…ゆうたはんがうちの店におこしやすさかい、ずっとこうどすねん。」
そう言って見せ付けてきたのは女性の、かぐやさんのそれ。
白い肌に一筋走るそこからは少し白い液体が湧き出て、オレの下腹部へ滴り落ちる。
滴った部分は疼くような熱を感じさせ、オレを魅了する。
中へ誘い込むかのように蠢くそこは、なんともいやらしいものだった。
思わずごくりと喉を鳴らしてしまうくらいに。でも―
「かぐやさんっ!?ちょっと待って!オレ、初めて―」
「もう、しんぼう、できまへん…っ。」
かぐやさんはオレの愚息へ狙いを定め、腰を止める。
そして、言った。

「ゆうたはんの、おくれやす…。」

じゅぷん。
言葉で表すならそんな感じだろう。そんな濡れた卑猥な音とともにオレの物はかぐやさんの中へ全て飲み込まれた。
「っぁあ!!」
熱いゼリーにでも押し込められたかのような感覚だった。
火傷しそうなほどに熱く感じられたそれは次の瞬間には快楽へと変わっていて。
まるで舌で嘗め尽くされているかのような感触もやはり快楽へと変わっていて。
一番奥であろうところにオレの物の先端は吸い付かれ、吸い出される。
今の今まで女性経験をしたことの無いオレにその快楽はあまりに大きすぎて。
さっきまで溜められた欲望全てをかぐやさんの中へ放っていた。
「ふあぁぁあぁぁ♪」
その感覚にかぐやさんは悦びに震え、体を弓なりに反らす。
かぐやさんも達した…のか…?
ピクピクと痙攣しつつも反らした体をゆっくりこちらへ倒してくる。
オレの胸板に両手を置き、こちらに見せた顔は。
発情した雌狐そのもの…!
普段大人っぽく優しいイメージからかけ離れたその顔は。
オレの理性を惑わせる。もっと見たいと欲張らせる。
「ふうぅ、あぁあん♪こないな濃い精は初めて…♪」
「かぐやさ…んん!?」
かぐやさんは急に腰を猛然と使い始める。
前後左右とグラインドさせる動きから、八の字を描くような動きまで。
とても激しく、いやらしく。
卑猥な音を響かせて。
それにより送られてくる快楽は半端な量ではない。
あの煙の効果でだろう、萎えることを許されないオレの物は早くも二発目をかぐやさんの奥へ放っていた。
「ふぅぅんん♪あ、ああ…むっちゃ、ええ…♪」
腰の動きはなお止まず。
むしろより激しさを増してオレを狂わせる…!
「かぐや…さん…!!」
あまりの快楽の量に腰を止めようと手を伸ばすが!
その手はかぐやさんに掴まれた。
両方の手は胸へと押し付けられる。
途端、両手に感じる胸の感触。
神経を経て伝わる、快感。
「んくぅっ…うぁ…!?」
腕からは温もりある柔らかさ。
「ふあぁぁ♪ほらぁ…もっとぉ♪」
鼻からはかぐやさんの発する雄を誘う香りの甘さ。
「ふっう、く…あぁ…!」
目からは普段と違う乱れに乱れたいやらしさ。
「ふふふ…ん♪ここをこうしはるとぉ…あん♪」
耳からは響く濡れた音の卑猥さ。
「そ、れ、やばいって…ぁあっ!」
そしてオレの物から感じる、感じたことの無い気持ちよさ。
その全てがオレを狂わせ、迷わせ、惑わせ、堕とす。
ぐちゃぐちゃで、ぬるぬるで。
きつきつで、ねとねとで。
にゅるにゅるで、めちゃくちゃな快感によって、堕とされる。
「これで…ふぁ♪どう、どすか?」
見せ付けるかのように足を開き、徐々に上へと腰を上げていく。
吐き出されていくオレの物はかぐやさんの愛液が滴る。
抜けるか抜けないかのぎりぎりのところで一度止まり、かぐやさんは腰を打ち付けてきた。
途端、飛び散る愛液。跳ねる汗。
さっきよりも深くオレの物は埋まる。
送られてきた快楽はさっきよりも強いものとなる!
「は、んぐ……んぁ!!」
歯を食いしばるもその快楽に耐える術を知らぬオレはどんどん精を吐き出した。
かぐやさんの膣をオレの精が一色に染め上げる。
「はぁああんん♪ええ、どすぅ♪」
三度目の射精。
そこでオレは堕ちた。
今まで耐えてきたものが、焼かれ続けていたものが、焦がされまくったそれが。
理性が、堕ちた。
「ふぅ…あぁ…ふふふ、ゆうたはん、どないどした、うちのは…?ゆうたはんの、えらい逞しくて、あはぁ…♪まだ出とるぅ…♪」
「……。」
「…?ゆうたはん?どないどし―」
がしっと、今まで胸を揉んでいた両手でかぐやさんの肩を掴む。
そして、引きずり倒す!
今までとは逆のオレが上で、かぐやさんが下になるように。
体勢まで、変えて。
かぐやさんを無理やり四つん這らせて。
後背位の体勢をとらせて。
「!?ゆ、ゆうたはん!?」
「かーぐやさん…随分と激しくヤってくれましたねぇ。」
肩から手を離し、するすると手を下げていく。
背中、背骨、白く綺麗な肌を指でなで、そしてお尻へ。
「言ったじゃないですか…オレは初めてだって。」
「ど、どないのどす?ゆうたはん…!?」
「いやぁ…初めてで、まだ学生で、そんで男の子なんですよ…?」
オレの物をかぐやさんからゆっくり引き抜く。
かぐやさんがより強く吸い付く快楽もお構いなく。
先端まで抜き、先だけを押し付ける。
「あぁっ…♪ゆうたはん…?」
「さらにあんな煙で、一服盛ってくれて…まったく…。」
かぐやさんの腰を引っつかみ、狙いを定めた。
「学生の性欲、なめんじゃ、ねぇ!」
ぱぁん!
乾いた音が響いた。
肉と肉の弾ける音が。
オレの物はさっきより深くねじ込むようにかぐやさんを突き刺し奥まで突き上げる!
「っはぁん!」
何度も何度も叩きつける。
理性によって抑えていた、本能のままに。
目の前の女を犯せという生物的本能により。
さっきより深く、さっきよりも強く。
「あん、はぁ♪ま、待って、あぁ…お、くれや、すぅん♪ゆうた…はん!こないな、格好…あぁ♪ま、まるで…けだもの、ぉ♪」
「待ちませんよ、かぐやさん。さっきまで、さんざんケダモノのように!ヤってくれたのは貴女でしょ?それに、捕まえることができたんですから好きな事、なんでもしてくれるって、言ってましてよね?」
腰を掴んでいた手を上へ伸ばし、豊かな膨らみへ這わす。
形を確かめるように。
徐々に形を変えるくらいの力をこめて、揉む。
「ふぅん♪そないな、激しい、のは…あぁ♪」
「積極的なのは嫌いじゃないんでしたね?ここ、こんなに硬くさせて…。」
「はぁぁん♪」
指の腹で撫でるように刺激する。
ただそれだけでもかぐやさんの膣は反応を示した。
頭についてる狐のような耳はぴんと立つが五本の尻尾は暴れまくる。
触ってとでも言わんばかりに…。
「…こっちは?」
「ひゃぁ!!」
五本のうち真ん中の一本を掴んだ。
力を込めず、柔らかく。
もふもふな体毛に指が埋まる。
「もしかして…尻尾って敏感なんですかね〜?」
「そ…そんなことは…はひゃん!」
なで上げる。
右手で胸を揉みしだき、左手で尻尾を刺激する。
力を入れれば入れるほどかぐやさんの膣は締まっていった。
「あぁあ♪そないに、しちゃ…あはぁ♪」
今度は腰を打ち付ける。
徹底的に、とことん強く、さらに深く。
オレの精で染まった膣はもっと精を欲しがるかのように強く締め上げる。
よりきつく、貪欲に。
突くたびに噴出す愛液が下のシーツにしみを作っていく。。
何度腰を打ちつけたかもうわからないが、オレは四度目の射精をした。
したが、止まらない。
出したままで動き続ける。
オレの精をかぐやさんの中に染み込ませるかのように。すり込ませるかのように。
まるで、オレの女だと言わんばかりに。
「ひゃぁぁぁぁぁぁああん♪あ、あぁ…出し、ながら…動いちゃ、あか…んてぇ♪」
「ん、くぅ…そのワリには喜んでるじゃないですか、かぐやさん。」
上体をかぐやさんの背につけ、背後から抱きしめる。
両手は再び胸をいじりながら。
「かぐやさん、顔こっち向けて…。」
「はぁ…ゆうた、はん…んむ♪」
再び交わされる口付け。
熱く、情熱的で官能的にオレ達は何度も何度も交わす。
夜はまだまだ明けそうにない。
盛られたことによる媚熱もまだ冷めそうにない。

窓からさす月明かりの下で本能のままに交わる獣達はいっそう激しさを増していくのだった。

盛られた媚薬の効果が完全に抜けるまでオレは何回出したっけ?
23回までは数えてた…きっと30回は超えただろう…。
胸のうちに広がるのは主に後悔。すなわち―
「…やっちゃった…。」
取り返しのつかないことになった。
いくらなんでもこれは…。襲われたけど後半はオレが襲ってたし…。
一線、越えちゃったな
「ふふふ、ゆうたはんのケダモノ♪うち…こないに激しくされたの初めて…♪」
隣で寝転ぶかぐやさんが言った。
今オレはかぐやさんの部屋のベッドの上で二人して寝ころんでいた。
勿論裸。シーツを腰あたりまでかけながら。
互いの体には汗と愛液と涎と、かぐやさんはオレの精液でまみれていた。
思いっきりシた跡です、はい…。
「ほんまに初めてどすねんか?」
「初めてですよ…キスしたのだって…。」
「それにしちゃ随分…はぁん…激しいどす♪」
「悩ましい声を出さないでくださいよ…。」
性知識と欲望に偏ってりゃこうなります。
うぅ…めっちゃ恥ずかしい…。
明日からどうやってこの人と話していけばいいんだよ…。
「ほら、見ておくれやす。」
「?」
かぐやさんが黄金色の尻尾をぱたぱた揺らす。
気のせいかいつもより量が多く…多く?
二、四、六、七…七っ!?
「え!かぐやさん!?尻尾七本に増えて!?」
「ふふふ、ゆうたはんの精あまりかて濃いんで尻尾、増えてしもたんえ…。稲荷は尻尾の数だけ性欲が高まるんどす。」
「…まじ?」
春だから発情期ってわけじゃなくなりそうってことですかね?
さっきのは五本、今は七本…つまり。
かぐやさんはいつも見せてくれる大人っぽい表情をさらに輝かせた笑顔で言った。
「こないにした責任とっておくれやす、ゆうたはん♪」
「…ははは。」
笑うしかできねぇー…。
つか、誘ってきといてよくもまぁぬけぬけとそんなこと言えるな…!
手を伸ばし増えた尻尾に触れる。
「ん♪」
「尻尾ってそんなに簡単に増えるんですかね?」
「こないにすぐ増えまへん。ゆうたはんとシたからでっしゃろね…♪」
「オレと…ですか。」
「ええ、ゆうたはんとどす。流石―

別世界から来やはった人。」

「っ…気づいて、ましたか…。」
「…ええ。」
かぐやさんの顔が何処と無く淋しそうなものに変わった。
動物園で…いや、オレの『迷い』の中で見せたあの表情だ。
不安そうな、消え入りそうな顔。
「オレの『迷い』を見たときですか…。」
コクリと頷く。
まぁそうだろう。
オレは別世界から来たことを話したのは両親となってくれたレグルさんとキャンディさんの二人だけだ。
知っている奴が他にいるわけない。
そんなことを考えていたら頬が包まれた。
かぐやさんの両手によって。
「『迷い』を見たとき…ともにとてつもない悲しみや後悔が伝わってきたんや。ほんまは―

しんどいんでっしゃろ…?」

「…。」
なにも答えない。
答えたくないからじゃない。答えればオレの中の何かが崩れそうだったから。
心の奥底に閉じ込めた物が溢れそうだったから。
「ゆうたはん、時折遠い眼してまんねん。…家族と急に離されて淋しいでっしゃろ…?」
「…。」
答えない。
何も、言わない。
そこで、今度は抱きしめられた。
顔が温かく柔らかな胸に埋まる。
「か、かぐやさん?」
「皆そないトコに惹かれてるのかもしれまへん…。」
「皆?」
「ゆうたはんのことを好きでおる他の娘達。でも、ゆうたはんはどなたはんかて渡しはしいひんけど♪」
「は、はは…。」
何だそれ。オレのことを好きでいてくれた奴が他にもいたのか?
気づかなかった…。
「皆、ゆうたはんに母性本能くすぐられとるんや。」
「母性本能って…。」
オレは子供かよ…。
もう十八歳だぞ?
「子供どす…ゆうたはんは。」
かぐやさんは言った。
子供をあやすかのように優しく、オレに言った。
「我慢しか知らん不器用な子…。」
「…我慢なんてしてないですよ。」
「嘘。」
ぎゅうっと、さっきよりも強く抱きしめられる。
「一人で背負いすぎや。しんどいならしんどいって言っておくれやす。」
「…。」
「淋しいなら淋しいって言っておくれやす。」
「…。」
「泣きたいときは泣おいやしたってええのどす。」
「…やめて、くださいよ。」
オレは言った。
かぐやさんの腕の中で縮こまり。
震える声で言った。
「そんなに優しくされたら、オレ泣きますよ…。」
「ええのどす…。」
優しくささやくように、言い聞かせるように言われる。
「存分に泣いておくれやす。」
「……。」
「涙が止まるまで。ずっと。」
「………………………………今、だけ…。」
顔をかぐやさんの胸に押し付け、顔を決して見られないようにして言う。
震える声で言う。
「今だけで、いいですから…明日にはきっと…いつものように戻れますから…今だけ

泣いても、いいですか……?」

小さく震えるオレにかぐやさんは優しく言ってくれた。
「よろしおす…存分に泣いておくれやす。」
「…っ。」
オレは泣いた。
強く、声をあげずに、小さく泣いた。
静かに号泣した。
「うっ……ぁっ………あぁ……っ。」
レグルさんとキャンディさんに養子になれと言われて泣いたあのときよりもずっと強く。
弱弱しく震え、泣き続けた。
その間かぐやさんは一言もしゃべらずにただずっとオレの体を抱きしめてくれていた。
優しく温かく、オレを包んでくれた。
だからオレは。
今まで溜め込んでいたものを吐き出すように、ただ泣き続けた。

数日後 食事処ハンカチーフ

暖かな日差しの下。
風に乗ってくるのは甘い花の香り。
故郷の桜が花開いているだろう今日この頃。
客足も減る昼過ぎの今。
オレは店で賄いを食べていた。
キャンディさんお手製シチュー。
結構おいしい。さすが食事処を営むだけある。
オレのいた世界でもこんなに美味しいシチューはなかったな。
そんなことを感じながらシチューをつつく手を休め、顔を上げる。
「……。」
「ふふふ。」
なぜかかぐやさんがいた。
というか、かぐやさんと一緒に昼食をとっている。
…なんでだ?
そもそもオレがこれから遅めの昼食にしようとしたときにちょうどかぐやさんが来たんだっけか。
タイミング良すぎだろ…。まるで見計らってたかのように…。
そんなことを考えても当本人はこちらを見ている。
否、見つめている。
「あ、あのかぐやさん…そんなに見られると恥ずかしいんですが…。」
「好きな人を見とったくなるんは当たり前のことどす、ゆうたはん。」
「…////」
そうゆうことを堂々と言われるとなんか…照れる。
っていうか、今の発言厨房にいるレグルさん達に聞こえてないよな…?
あの二人やたらオレの色恋に干渉してくるし。
この前のかぐやさんの家に泊まってきたことを何とか上手く誤魔化せたがいずればれるだろうな…。
ばれたらどんなことになるか…はぁ。
店内にはオレとかぐやさんの二人だけ。
沈黙がその場を支配する。
気まずくは無い、だが気恥ずかしい、そんな感じ…。
「ふふふ。」
「…はぁ。」
かぐやさんは自分の手前にある稲荷寿司に箸を伸ばしオレはシチューにスプーンをつけ食事を再開しようとしたそのときだった。
からんからんっ
入り口のドアの鈴が乾いた音とともに開いた。
そこから入ってくるのは銀色の長髪をたなびかせたデュラハン。
「セスタ!」
「ん?ああ、ユウタ!」
隣の家に住んでいるセスタだった。
いつも着ている禍々しいあの紫の鎧姿ではなく私服で黒い布を首に巻くという珍しい姿で。
「どーしたん?これから飯?」
「ああ。少々寝過ごしてしまってな。今から朝食だ。」
「もう昼過ぎだぞ。」
「何?それは…寝過ごしすぎたな…。あ、かぐやさんじゃないか。」
今頃かぐやさんがいることに気づいたか。
かぐやさんを見れば黄金色の尻尾を揺らしにこやかな顔でセスタを見ていた。
「こんにちわどす、セスタはん。」
「ああ、こんにちは。相席かまわないか?」
「ええ、どうぞ。」
セスタは隣のテーブルの椅子をひとつ掴みオレとかぐやさんのいる席に座った。
そのときかぐやさんがどことなく機嫌悪そうな表情をしていたが…気のせいだろう。
席につき、かぐやさんを見てセスタは首をかしげる。
何か不思議そうに。
「…?なにかいつもと違うな?こう…雰囲気でも変わったかのようだぞ?」
セスタ、鋭い。
「ふふふ、そうどすか?」
「ああ、なんだかいつもよりこう…艶っぽいというか、色っぽいというか…。」
その言葉を聞いてオレの背中は汗でダラダラだった。
その原因を作ったのはオレ。
別に悪いわけでもないのだが。
…卑しいことはしたのだが。
そこでセスタは気づく。
かぐやさんが必要以上に揺らしている黄金色の尻尾に。
「あ!尻尾の数が増えているのか!」
「正解どす。」
「五本が一気に七本に増えているな。その尻尾は急に増えるものなのか?」
「ふふふ、それはどうどすやろ…。」
そんな言葉とともにオレを見るかぐやさん。
その目がやたら色っぽい。
なんかもう…誘ってような顔で。
「美味しいモンおいやしたやくと増えるんどす。」
「美味しいもの…?」
「そない、例えばやなぁお稲荷さんとかやなぁ。」
そのお稲荷さんは寿司のほうですよね?稲荷寿司のほうですよね!?
そんな目で見られるとなんかそっちの方しか思い浮かばないんですけど!?
「お稲荷さん?」
「特にゆうたはんのお稲荷さんなんて…はぁ…////」
何かを思い出したように熱いため息をつくかぐやさん。
頬を少し赤く染めて。
…今のは完全に下ネタだったな。
「むっちゃようて…。」
「ふむ、ユウタのお稲荷さんか。ユウタ、私にもそれを頼む。」
「…ああ。」
セスタは食べ物のほうを言ってるんだよね?そうだよね!?
かぐやさんのせいで真昼間っから危険な状態になりそうなんだけど!
「おっと、セスタじゃねぇか!」
「あらセスタじゃないの。」
そこでレグルさんとキャンディさんの二人が厨房から出てきた。
つか、二人とも調理道具は置いておこうよ。
レグルさん包丁持ったままだしキャンディさんなんかはオタマだ。
「いらっしゃいな。」
「ああ、二人ともこんにちは。」
「なにか食べてく?」
「ああ。できればユウタの『お稲荷さん』というものを食べてみたかったんだが…。」
…なんかもう下ネタにしか聞こえないぞ。
「あら、それじゃユウタが作らないとね。」
「ほらユータ!注文だぞ!」
「はいはい。」
オレはシチューをそのままに席を立ち、厨房へ向かおうとする。
が、そこで腕を掴まれた。
見なくてもわかる。
かぐやさんの手だ。
「?どうしたんですかかぐやさん。」
「ゆうたはん、口元シチューで汚れていまんねんよ。」
「え?どこです?」
掴まれていないほうの腕で口元を拭う。
「そないトコほななくて…ここどす。」
「え?」
かぐやさんはオレの腕をより強く引っ張る。
そのせいでオレは体勢を崩し、かぐやさんの方へと倒れ掛かったそのときだった。
ちゅっ
何かやわらかいもので口をふさがれる。
というかそれはあの夜何度も味わったかぐやさんの唇だった。
「!?」
「ん…。」
「「「………」」」
一分くらい口付けてようやく離してくれる。
だが店内は客足が少ないこともあるが沈黙に包まれていた。
顔真っ赤であろうオレと。
頬を少し赤く染めたかぐやさんと。
唖然としているレグルさんにキャンディさんにセスタ。
「か、かぐやさん!?いったい何を!!?」
「ふふふ、ゆうたはん知っていまっしゃろか?」
かぐやさんはオレの耳に口付けるようなそんな近くまできて囁いた。
恋人にするかのように。
秘密のことを話すかのように。
「おなごちゅうのは独占欲が強いのどす。…目の前で他のおなごと話されちゃたまったモンほなあらしまへんよ。」
顔を離すときオレの頬に口付けて。
かぐやさんは言った。
皆に聞こえるように。
「春はまだまだ長おすし、これさかいもずっとよろしゅうお頼申しますね

旦那さん♪」

自分のものだと言うかのように。
所有物だといわんばかりに。
「…はは。」
笑うしかできねぇ…。
狐はいたずら好きだというけど。
あまりにも好きすぎてこれじゃあ本当に、
「タチが悪いって…。」
どうやらオレはこの狐に一生翻弄されそうだ…。
そんなことを感じる昼下がり。
暖かな春風が止むのはまだずっと先になりそうである。


数年後、この街でなんとも奇妙な店ができる。
名前は『迷い路屋』改め
『旅路屋』
なんとも変わった名前で宿屋の名前かと思うがそうではない。
ここではこの世界ではないまるで別の世界に旅立てるというもの。
だが本当に旅をするわけではなく、いうなればシュミレーション。
別世界の風景を、異世界の景色を楽しめる一風変わったスポットだ。
人気はすごいものでいまや大陸を越えてまでやってくる客もいるという。
その店の店主は珍しい九尾の稲荷。その稲荷の旦那も珍しい黒髪黒目の青年。
とある噂ではその黒髪黒目の旦那の元いた世界だとかそうでないとかそんな話があるが。
それが嘘か真かは誰も知らない…。


「ふふふ、とうとう九尾になったんや♪」
「…なぜだろうか。嬉しいんだけど素直に喜べない。」
「あら、なんでどすか?旦那さん。」
「いや、なんだか最近よくムラムラするって言うか…やたらと卑しい気分になるというか…。」
「ふふふ、ええでおまへんどすか。なんぼ欲情しよけと鎮めてあげまっしゃろから。」
「…なんか、嵌めてない?かぐやさん。」
「さて、なんのことやら…。それよか今晩もともにしっぽりと…♪」
「…まぁいいんだけど。それじゃベッドに行きますか。」
「寝かしまへんよ、ゆうたはん♪」
「そいつはこっちのセリフですよ、かぐやさん♪」


        娯楽店 『旅路屋』
    あなたは『そこ』へたどりつけましたか?

         HAPPY END
11/05/04 20:29更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
これにて稲荷編完結です!
書き終わり見てみるとこれ…主人公どー見てもはじめてに見えない…。

それからお知らせです。
今回のでこの街ルートはいったん止めさせていただきます。
まことにご勝手ながらすいません。
一つのルートに四人ぐらいを目安にして次のルートに行かせてもらいたいと思います。
そして次回のルートは洞窟。
「クロクロ洞窟ルート」!
魔物の中でもひときわハチャメチャなあいつら登場!
主人公と魔物娘達がおりなすストーリーをご堪能あれ!

そして主人公、もげろ!

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