「もしも…相手が好きだけど、その好きな人に近づけない理由があったらどうする？」

「傷つけたくないと思ってるのに傷つけちゃう、そんなのがいたらどう思う？」

「好きなんて理由で傷つけてることを隠してるのは卑怯者に見えない？」

「自分の大切なものが傷つけられて、もしかしたら死んじゃうかもしれないんだよ？」

「そうしたらどうする？」

「意見を聞きたいんだよ、長生きして、皆から称えられて敬われて奉られた神様だからこそ」

「龍であるからこそ、聞きたいんだよ」



「ねぇ、先生」



ゆうたが家に帰らなかったあの夜、あたしは先生と電話していて、帰ってきた昼、あたしは同じく先生に電話していた。
どこに行っていたか、誰といたのかなんて聞かなかったけどそれはわかる。
焦ってごまかすようだったゆうたの態度。
わずかに香ってきた爽やかな、それでも果実とは違う独特の甘い香り。
その二つだけでも何があったかなんて予想がついて当然だ。
一緒にいたのはあの女。
いた場所はさしずめあの女の自宅というところだろう。
あの夜にした電話での会話。
どこかビクビクしていて、あたしの質問に極力反応しまいとしていたあの態度。
あれくらいであたしに隠せると思っていたのだろうか。
今更双子の姉であるあたしに隠し事なんてできやしないんだから。
そして先生と話していたことはそのことについて。


ゆうたの師匠について。


灰色の長髪をたなびかせ、秀麗な姿をさらけ出し、妖しい光を燈した瞳で見つめる女。

見て知った。

―あれはあたしたちとは全く違う。

聞いて理解した。

―あんなの人とは呼べない。

感じて、わかった。



―あれは人間じゃない。




あれはいていい存在じゃない。





あれは、ゆうたの傍にいるべき女じゃない。




「…」
「あやか、今からでも遅くはありませんよ。そこまでするべきではないでしょうに」
「…あたしは先生みたいに温厚じゃないんだよ」
そういってあたしはある場所に立っていた。
隣には極上の染糸で織られた一目見ただけで高級品だとわかる着物に身を包み、普段なら自愛溢れる柔和な笑みを浮かべているのだが不安げな表情をしている女性。
袖から除く陶磁器のようなきれいな肌には傷一つ、染み一つさえも見当たらない。
満月のように輝く金色の瞳、それから同じ色の勾玉の形をしている髪留め。
そんな髪留めで結い上げられた髪は雨の中で静かに咲いたアジサイのような紫。
女のあたしから見てもこの世のものとは思えない天女とでもいえそうな美女。
この女性もまた人ではない。
人間の姿を象っているが全く違う。
長い年を生きてきた、多くの人から敬われ、奉られてきた神様。


　　　　　　 『 龍 』


あたしの合気道の先生であり、あたし達を幼い時から我が子のように育ててくれた大切な女性である。
「…あやか」
「先生は黙ってて」
いくら年上だろうが、昔からお世話になった恩人だろうが、守る術を教えてくれた先生だろうが様々な人から敬われてきた神様だろうが。
この件に先生が口を挟めるものじゃない。
これはあたしの問題でゆうたの問題で、あの女の問題なんだ。
先生にとやかく言われる筋合いがなければ止められる理由もないんだから。
あたしは先生を一言で制して目の前のボタンに指を添えた。
無駄に大きく無駄に豪華で無駄に細かな装飾のされた門の隣の小さなインターホン。
あたしはそれを迷わずにぐっと押す。
「…」
押しても音は響かなかった。
家のほうで響くタイプなのかもしれない。
別にそんなことはどうでもいいんだけど。
大事なのはあの女が出てくるか。
出てきて、話せるかだ。
「…あやか」
「…」
先生の声に耳も貸さない。
そもそも先生にはただ相談しただけなんだ、一緒に来てくれなんて頼んでないというのに。
そこまであたしが心配だろうか？
なんのためにあたしが先生から合気道を習ったというのだろうか？
あたしが習った理由は二つ。
自身の身を守る術が欲しかったのと―


「…珍しいね、お姉さん」


―こういう存在からゆうたを守りたかったから。


その女はあたしと先生の目の前にいた。
まるで先ほどからずっと待ち構えていたかのように立っていた。
インターホンを鳴らし、門が勝手に開いたその先に。
あの貼り付けたような仮面の笑みを浮かべていた。
月明かりの下でいやに輝く灰色の長髪を揺らし、露出の多い服からは以前見た時よりもずっと艶やかになった肌を見せつけ、同じ女として何か気にかかる雰囲気をまとっていた。
蕾だったものが花開いたというように、今まで閉じていた魅力がさらに咲いたというかのように。
どこか余裕と満ち足りた表情の顔だった。
きっと普段とは違う、そう感じたのは同性の勘。
何かあった、そう思ったのは人間としての思慮。
ゆうたに何かをして、そう悟ったのは姉弟としての警戒。
「…」
「…おや？そっちは…」
あたしの隣にいる先生を見て怪訝そうに首をかしげた。
初めてあったあの頃ならかしげるというよりも片眉を吊り上げたりするまでに留めた筈だろうに。
仕草がどこか子供っぽく、どこか甘えん坊。
あの頃と全く違う。
冷たく、人を寄せ付けない凛とした性格だったあの頃と全然違う。
「どうも、初めまして」
彼女を前にして先生は礼儀正しく頭を下げた。
そんなこと、する必要もないというのに…。
「ふぅ〜ん…これはまた…変わった女性だねぇ、お姉さん」
「…話したいことがあるんだけど？」
あたしの言葉に彼女はうんと頷いた。
別段驚いた様子もないことからわかっていたのだろう。
あたしが訪れることも、それからこれから言うことになるだろうことも。
「いいよ、おいでよ」
それだけ言ってあたしと先生に背を向けて歩き出した。
ついて来いというのだろう。
あたしはそのまま歩き出し、遅れて先生が門を閉めて歩き出した。





「それで…何かな？お姉さん」
彼女は言った。こちらを振り向かず、足を止めて。
そこは庭の真ん中だった。
テレビに出てきそうな豪邸みたいな家の前の大きく開けた庭の真ん中。
門と豪邸の中間地点。
一本の道の脇には豊かな緑色の芝が一面を埋め尽くし、東の方には年季の入った道場が見える。
どうやらこの女はわかっているんだろう、あたしが家まで行くつもりのないことに。
ちょうどいいことにここはあたしの通ってる学校の校庭にはいかずともかなりの広さを誇る庭だ。
ここで大声あげようが近所迷惑にはならないだろうし、暴れようと誰にも迷惑かけるわけじゃない。



「それとも用があるのは隣の『龍』さんかな？」



「…」
その言葉に先生は驚いた様子も見せない。
たぶん一目見たときから互いにわかっていたんだろう。
互いに人間ではないことを、互いの正体を。
でもそんなのは別にいい。
そんなのはあたしのいないところで気にかけてればいい。
だって今日来たのは先生にこの女を会わせるわけじゃないんだから。

「…」

性格はここまで変わったというのに肌に感じるこのいやな感じは相変わらずだ。
じりじりと押さえつけてくるような重い感覚。
ぴりぴりと肌を刺激するような嫌な感覚。
どろどろと本能に語りかけてくるいやらしい感覚。
それはどこか先生に似たものでもある。
きっとこれが百人中百人が美人と答えるような美貌を持っている彼女の、人が寄り付かない理由なんだ。
どんなに綺麗でいてもどんなに美しくても、こんなものを感じれば普通の人は避けていく。
それは生物として根本的な本能に語りかけてくるもの。



すなわち危機感。



まるで獣が威嚇しているかのような、野獣が警戒しているような。
本来包み隠されていたものを無理やり引き出したような。
爪を見せつけ、牙を晒し、脅威で相手を押さえ込んでくるような。


美貌が霞むほどの雰囲気。


それはきっと彼女が生まれ持ったものだろう。
あたしと違う、どこか先生に似たものをもったこの女。
お父さんの実家にいる狐や猫、提灯に化け蜘蛛なんかよりもずっと上の存在だからだろう。
神様にも届きそうな存在だからだろう。
だからそれ相応の雰囲気がある。
普通の人間なら対峙したいと思わない、見たいとも話したいとも思わない。
綺麗な花があっても隠すべき棘を隠せなければそうなるのは当然だ。
ただ、どこか変にも感じられる。
これだけの威圧感に対してこれほどの美貌。
それなら普通はその威圧を消す術を心得ているはずだ。
先生だってそうなんだから。
あたしたちにそんなに見せてはくれなかった伝説で出てくるようなあの『龍』の姿。
普通の人間が目の前に立つだけで心臓を掴まれたように感じる恐怖。
あれが本来の先生の姿であって、あるべき姿であったもの。
でも先生はそれを隠すことができるし、あの恐怖を抱かせない術を持っている。
それなのに、この女は持っていない。



それはまるで隠す術を奪われたかのように…。



「何か言ってくれないとわからないよ？」
「…じゃ、言わせてもらうけど」
あたしは一歩踏み出した。
先生は動かなかった。
あの女は相変わらず張り付いたような笑みを浮かべたままだった。



「いつまでゆうたの傍にいるつもり？」



あたしの言葉に彼女は顔色一つ変えない。
予想していた通りのものだったからだろう、笑みを変えなくともわかる余裕の表情だ。
それが頭にくる。
正直、今すぐ張り倒して投げ飛ばしてあげたいくらいに。
「お姉さんは相変わらずだね」
「そーゆーあんたも、相変わらずでしょ」
「そうだよ、変わらずだよ。昔も今も変わらずだよ―


―変わらずユウタが好きなんだよ」


そこの言葉に先生が息をのんだのがわかった。
子供のころから、ずっと小さいころから世話をしてきたゆうたを他の女性が好意を持っているという発言は少なからず驚くものだろう。
お父さんの実家にいるあれらならまだしも、他の女性が、それも人外がそうなるとは思ってなかっただろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
「そんなこと聞いてるんじゃないんだよ」
「うん、そうだろうと思ってたよ」
「…」
本当にいちいち癇に障る女だと思う。
だから嫌いなんだよこの女は。
人間離れした美貌も、ねだるように甘えた声も、いつの間にかとろけてしまった声も、ゆうたに向けるその感情も。
すべて嫌い。
まだあの凛としていたころの方が好印象だった。
こうした原因をあたしは知らない。それでも予想ぐらいできる。
その予想はきっとあっていて、それがこの問題の原因でもあることだってわかってる。
「これ以上あんたがゆうたの傍にいたらゆうたがダメになる。だから離れろって言ってるんだよ」
「ダメになる？自分はユウタとならダメになってもいいけどなぁ♪」
「…」
あたしは足を一歩踏み出した。
このふざけておちゃらけた女を投げ飛ばすつもりで片手を構える。
どうもあたしはこういうことには耐えられないようだ。
普段なら口先だけでどうでもできる自信があるけどこういった、家族が関わることはよしとできないみたい。
どこかの馬鹿弟みたいに。
…本当にあたしたちは双子なんだろうね。
しかし、その手はそっと掴まれ、動きを止められた。
先生だ。
「…何するのさ、先生」
「暴力はいけませんよ、あやか。そのために私は武術を教えたのではありません」
「暴力？あたしはそんなもの振るうわけないでしょ」
「…ゆうたのためといって鋸を振り回していたのにですか」
「あれはあの化け蜘蛛が悪いんだから」
あれは、あたしたちからゆうたを奪い去ろうとしたから。
先生のように優しいのならいい。
あの狐みたいに誘惑するようなものも…良しとしよう。
猫みたく甘えてるのも、提灯のように無害なのも、遠目で見ている狼さえも容認できる。
それでも奪い去ろうとするのは許せない。
何もしないで、ゆうたを力でねじ伏せ、奪っていくのは見逃せない。
あたしの家族を盗もうとするのは許せない。
そしてそれは、この女にも近いことがいえる。
力でねじ伏せているわけじゃない、甘えているだけだとしても。

結果、ゆうたを傷つけている。

それは大きな鎖であり、楔であるもの。
力でねじ伏せるのとはわけが違う、強引に奪い去っていくのとは意味が違う。
それらよりもずっと性質の悪いものだ。
まだあの化け蜘蛛がいいと思えるようなものだ。
「んふふ〜、お姉さんは相変わらずだねぇ。そんなんじゃいつか犯罪者になっちゃうよ？」
「犯罪？法律って人間にしか適応されないんだけど？」
「あやか…っ！」
もう一歩踏み出そうとしたら先生に手を強く掴まれた。
抜け出せないようにだろう特別な掴み方であたしの手を拘束している。
そこまでしなきゃいけないほどあたしを危険だと思っているのだろうか。
まったく、先生は昔から世話焼きなんだから。
仕方ないので乱暴なことはせずそのまま踏みとどまる。
しかしその次の瞬間先生が口にした言葉はとても穏やかに返せるようなものではなかった。



「いいじゃないですか、別に誰が誰を好きになろうとも…」



その言葉は信じられなかった。
確かに先生は知らない。
このことを全くと言っていいほどしらない。
あたしが電話しているときも詳しくは話さないし、ゆうただってこの女のことを先生には話していない。
だから知らないのも無理があるだろうけど、その言葉は容認できない。
似たような存在だからこそ彼女は軽く思っている。
でもそれは違う。
全く違う。
先生とこの女は違うんだよ。
「人の好意に私情を挟むものではありませんよ」
そう言った先生の顔をあたしは睨みつけた。
人の好意に口を出すな？
あの女は先生と似たものだから大目に見ろ？
彼女はただゆうたが好きなだけ？
そうじゃない。
そうじゃないんだよ。
それだけじゃあたしだってここまでしない。
お父さんの実家にいる狐や猫もそれくらいなら許容してあげるけど。
それ以上のことがあるからこうしてるんだよ。
それを貴方は―
「―わかってないんだよ、先生は」
「…」
先生は何も言わない。
否、言えないんだ。
実際先生はゆうたが傷ついた姿を見ていない。
当然だ、ゆうたは先生やあの狐に心配をかけたくないからお父さんの実家に行くときは必ず怪我が治ったとき。
怪我したまま、包帯を巻いたまま、ギプスをつけたまま訪れて余計な心配を抱かせたいと思わない。
だから隠してる。
だから知らないんだ、ゆうたがどれだけ苦労しているか。
怪我して、死にかけているのか。
「見てないんだし、どれだけ怪我したか知らないんだよ。わかる？わからないよね？いつも一緒に暮らしてる双子の弟がある夜骨ぼっきぼきに折って帰ってくるんだから」
「…っ」
「何も知らないのに知った口きかないで」
神様といえ、龍といえ。
血の繋がらない他人が口を出さないで。
ただお世話してくれていただけの先生にはわからない深い問題なんだから。
わかっているのはあたしだけ。
ゆうたは気にしていないし、お父さんは何にも言わない。
この女はわかった上で近づいてる。

それがあたしは許せない。


「優しくしてるから甘えればいいってわけじゃないでしょ？」



「嫌がってないことが肯定になるわけじゃないでしょ？」




「怪我しても元気ならいいってわけじゃあないんでしょ？」





「結局生きてればいいってわけじゃないでしょっ！？」






あたしは声を荒げていた。
仕方ない、だって普段からずっと思ってたんだから。
「大切な家族がぼろぼろで帰ってきたときの気持ちがわかる！？何度もぼろぼろになってくるのを見てるのがどれだけつらいかわかる！？」
あたしは叫ぶ。
ただ叫ぶ。
近所迷惑だとか、醜態をさらしているとか関係ない。
心から言いたかったことをただ言うまでだ。
「ゆうたに頼って情けないと思わないの！？傷つけてどうにも感じないの！？」

「ゆうたならって思わないで。ゆうたなら大丈夫なんて思わないでよ！」


「それで死んだらどうするの！？ゆうたなら死なないって思ってるんでしょ！？」



「勘違いしないで。あんたや先生じゃないんだから。神様でも化け物でもない、人間なんだから！！」




「ただ…我慢強くなっちゃった……だけの…弟なんだから…っ！！」




一滴、頬に何かが伝った。
それでもあたしは嗚咽なんてあげない、表情を変えない。
ただ目の前の女を睨んだままだ。
一滴が頬から顎にかけて滴り、地面に落ちた。
「…」
「…」
何も言わない。
先生も口を開けない。
別にそれでいい。
すべきことはしたんだから。言うべきことは言ったんだから。
「…帰る」
返事を聞くまでもない。
というかこの女の前にいたくなかった。
ただ個人的にこの女が嫌いだから。
ゆうたが異常なまでに優しくするこの女が大っ嫌いだからか。
あたしは流れた涙を袖で拭って歩き出した。
後ろではあの女に一礼して先生がついてくる。
足音も立てないように静かな足取りで。
今が誰も起きていない真夜中だからだろう、それでも嫌に響いた。
「…あやか」
先生はどこか遠慮がちにあたしの名前を呼んだ。
いや、遠慮じゃない。
後ろめたさか、罪悪感か。
あたしがこうなるまでかかわれなかったことに対する申し訳なさか。
ゆうたが怪我しているのに介入できなかった自分の不甲斐なさか。
先生の声はどこか弱いものになっていた。
「…私は…」
「いいよ、何も言わないでよ」
そんな先生に対してあたしは遮るように言った。
先ほど口にしたようにこれは先生がかかわる問題じゃない。
すでに起きて、たとえ神様が介入したところでどうにもならないんだから。
余計な行動はされたくない。
いらない同情を誘いたくない。


これはゆうたと、あの女と、あたしの三人だけの問題なんだから。


静かな夜に月がいやにぎらついた下をあたしと先生は距離を置いて歩き続けていた。




「…傍にいるべきじゃない、か………自分でも…わかってるんだけどね。…痛いところ言われちゃったな」

■作者メッセージ
ということで師匠とお姉さん、それから先生の三人のお話でした
本来ならお姉さんがここで大暴れしようかと考えていたのですが先生によって阻止されました
さすが先生です

そして師匠がこんな状態になってしまった原因もちゃんとあるんですね
ただこれは後半最後のほうになるのでそのときまで楽しみにとっておいてください

今回のお姉さんの発言は後々師匠を苦しめることとなってきて…
これ以上は次回です


それでは次回もよろしくお願いします！！




そしてここから先は未公開シーンです



「ふぅ〜ん、へぇ〜、初めてユウタに会った時から気になってたけど…そうなんだ」
「？」
「ユウタったら昔から龍と一緒にいたんだね。それなら道理で自分をみてもおかしく思わないわけだよ」
「…」
「それに、そんなに胸の大きなお姉さんがずっと傍にいたら大きいほうが好きになるよね♪」
「…」
「…あら、わかりますか？」
「んふふ〜♪そりゃわかっちゃうよ♪ユウタったら本当は好きなのにそっけない素振りするんだもん」
「そうなんですよ。こちらも胸を押し付けてはいてもすぐに逃げ出すようになって…昔は大好きなんて言って抱きついてきたというのに…」
「いいなぁ〜自分もそんなふうに言われて抱きつかれたいなぁ」
「でも恥ずかしがるのもまた可愛らしいんですけどね♪」
「んふふ〜♪そうなんだよねぇ♪」
「…」
「あやか？どうしたのですか？」
「んふふ〜♪お姉さんには入れない話題だったかな？」
「いや…なんだかんだであれだよね…結局のところ先生も敵だよね…」
「あ、あれ…お姉さん、その両手に持ったものどうしたの？」
「ゆうたの部屋に隠してあったんだよ。すごいよね、いつの間にこんな『鞭』なんて持ってたんだろ、ねぇ？誰があげたんだろうね？」
「い、いや…自分はね、ちょっとユウタの誕生日プレゼントに…ね？」
「人んちの弟に何させるつもりなのさ」
「いや、そのね、ユウタにしてもらいたいなぁ〜…なんて」
「あ、あやか？どうして私の後ろにまわるのですか？」
「いや、結局先生も敵だから」
「いやいやいや、お姉さん、穏便に済まそうよ！自分はユウタ以外にそんなことされたくないなぁ！」
「あ、あやか！流石にそういうことはしてはいけませんよ！私はそんな風に育てた覚えはありませんっ！」

「問答無用っ！！」