オレと…淫夢?
「…?」
オレが目を覚ましたのは股間から生じる違和感からだった。
涼しい…というよりも…寒い?
寝ている途中で温んでいた掛け布団を剥いでしまったあの寒さというよりも掛け布団どころかズボンさえも剥いでしまったというような。
素肌を晒しているかのような肌寒さ。
だが寒さだけが違和感を生じさせているわけじゃない。
他にもいくつかある。
それは…そう、音。
ちゅぴ…にゅちゃ…というように水のような、それも粘度のある液体が生じさせる音。
その音だけではない。
「はむ…ん♪ちゅる…ちゅ…んん…♪じゅるっ♪」
聞いたことのある声がする。
聞き覚えのある声がくぐもって聞こえる。
それもどこか嬉しそうに、まるで笑っているかのような声。
そんな声とともに這い上がるこの感覚。
筆舌しがたいこれはいったい何なのか。
今まで経験したことのないこれは何なのか。
柔らかなベッドに横たえた体をそっと起こして下を見る。
眠くて再び閉じてしまい夢の国へと旅立ちそうになるのを耐えてそこを見た。
そこには…師匠がいた。
「ん?ひゅひゅ〜♪ユ・ウ・ハァ〜♪」
嬉しそうにオレの名前を呼ぶ師匠が。
楽しげにオレを見上げる師匠が。
固くなったオレのものを口で銜え込んでいる師匠が、そこにいた。
「…し、しょう?」
理解が追い付かない。
寝起きということもあり頭の回転が追い付かない。
師匠は何でオレのものを銜え込んでいる?
何があってこんな状況になっている?
師匠はどうして笑っている?
気だるく覚めない頭が出せる冷静な判断はここにはなかった。
ふわふわとするまるで浮いているような、体が柔らかなものに包まれている感覚。
それからはっきりとしない意識。
それはまるで昨夜師匠が酔っていた時のようなものかもしれない。
…酔い?
今まで飲酒なんてものを経験していなかったオレにとってそれは理解しがたい感覚だ。
それじゃあ…別のもの?
酔いではなくて…なんだろう。
起きているというのもまた違うこの感覚は…なんというんだっけ。
「んちゅ〜♪」
「っ!!」
柔らかな唇が先端に吸い付き、ちゅっちゅと何度も押し付けられる。
それは覚めない意識の中でも鋭く、そして甘く脳へ突き刺さってきた。
今まで経験したことのない感覚。
この未曽有の経験は…事実には思えない。
まるで…夢とでもいうような。
「んちゅ、ちゅ♪」
それでも頭に突き刺さる甘い感覚ははっきりとしている。
感じたことのない所から感じたことのない柔らかさをしっかり身に受け取っている。
時折漏れる甘い声はどこまでも嬉しそうに聞こえ、耳から入り込んで脳まで犯してくる。
しかしそれだけで終わる師匠ではないことをオレは知っている。
「んちゅ♪どうかな、ユウタ。気持ちいい?」
そう言いながらも刺激するのはやめない。
細い指が竿に絡みつき、優しく扱いては根元にある袋をくすぐった。
握られているのとはまた違う快楽はオレの意識を甘やかすように感じる。
そのせいなのか、気怠い意識は師匠の言ったことに答える気力さえ沸かせない。
それでも師匠は嬉しそうに笑う。
きっとオレが浮かべている表情を見て。
「んふふ〜♪気持ちいいんだね♪そんな顔されたら自分もやめられなくなっちゃうなぁ♪」
先端をくすぐる綺麗な指に先走りが絡みついていくのが見えた。
いけないと思いつつも体は与えられる甘美な感覚にあらがえない。
下腹部でどろどろした熱がせりあがってくるのを感じる。
その感覚が師匠にはわかるはずもないのに彼女は嬉しそうに目を細め、唇を再び近づけた。
そうして今度はさらに甘く、激しいものへと行為を移す。
「レロっ♪」
「っ!!!」
先ほどよりも強い刺激、それでいてずっと甘い快楽。
湿った柔らかなものが先端をレロレロと攻め立ててくる。
唾液の滲んだ舌の感触は手や指で与えられたものと全く違う痺れが股間から生じた。
なぜだか力の入らないこの状態では師匠から与えられるその感覚に煩悶することしか許されなかった。
「ん、りゅ♪これはどうかな〜♪」
楽しげで、嬉しそうで、それでどこか悦楽に浸った師匠は綺麗な灰色の長髪を揺らしてオレのものを先ほど同様口に銜え込んだ。
「っ!!」
先ほどとあまり変わらない意識の中でも師匠のしている行為を認識したからか、それが快楽だと知ったからか与えられる感覚は何倍にも増している。
窄めた唇は根元まで達し、飲み込まれたオレのものは見えなくなった師匠の口内で弄ばれている。
「んちゅるるっ♪じゅる…ん、おいし♪んむ、んん♪」
師匠はそのまま首を前後に動かした。
髪の毛が揺れ、時折むき出しにされた腹部にかかってはくすぐったいと感じる。
普通なら。
しかし男である証を師匠に飲み込まれている今、経験のない行為をされている今、そんな細かな感覚にまで気を回せるほどオレは器用ではなかった。
ぬめった口内に扱かれ、柔らかな唇は搾り取るように吸われ、さらに蠢く舌には執拗に弄られる。
あまりの激しさに腰が溶けているかのように思えるほどの快感は全身にいきわたり、染みわたっていく。
そしてその快感は確実に高みへと押し上げていくものだった。
「……っ!」
「んじゅる…ちゅぅ♪…ん、どうしたのかな、ユウタ。あ、そっか、もうイきそうなんだね♪」
言われようが言われまいがその事実は変わらない。
しかしあえて彼女が口にすることでそれさえも快楽の一つとなるかのように思えた。
湧き上がる欲望の塊が自分一人でした時よりもずっと多いことを自覚している。
いけないと思っていても体は力が入らないし歯を食いしばって耐えることさえもできやしない。
それでも師匠の行為は止まってくれない。
容赦なく高みへと押し上げられ、唯でさえはっきりとしない意識がホワイトアウトしてしまいそうだった。
「んふ♪いいよ…いっぱい、自分の口の中に出して♪ぜーんぶ飲んであ・げ・る♪」
その言葉とともに一気に師匠はオレのものを飲み込んだ。
未経験であり、他人にこんなことをされたことのないオレがこれ以上の快感に耐えきれるはずもなくとうとう欲望が弾けた。
「んんんっ♪」
熱くて白い液体はどこにも飛び散ることなく師匠の口の中で放出された。
師匠は目を閉じて口内に流れ込む体液の熱を、匂いを、感触を確かめているように見える。
そのまますぐに飲み込もうとはせずにじっくり舌で味わうようにしてからようやく喉を鳴らして飲み込んだ。
「んはぁ…♪ユウタの…すっごく濃くて…おいしかったよ♪」
そう言った師匠の顔は嬉しそうで、それなのにどこか妖しく艶っぽく、まるで昨夜のような顔をしていた。
思わず襲いかかりそうになるような、逆に襲ってほしくなるような。
それは求める顔であり、瞳は捕食者のそれにも見えた。
「…し、しょう…」
何とか喉を絞ってかすれた声を出す。
いまだに力が入らないのはどうしてかわからない。
体が動かない、自由がきかない。
拘束されているわけではないというのに。
それでようやくできたのがこの程度。
これでは抵抗もなにもできない、俎板の上でおろされるのを待つ鯉である。
「ふふ♪ユウタぁ♪」
脳が蕩けるような甘い声でオレを呼んだ師匠はそのまま体を起こして覆いかぶさるように―
「―…はっ!!」
起きた。
完璧に起きた。
気怠い気持ちはどこへやら、眠気なんてなんのその。
一気に覚醒して頭の中がクリアな状態になっている。
「…」
急いで股間に手を当てた。
そこには昨夜寝た時と同じズボンの感触があった。
先ほどのように脱がされてはいない。
ベルトもきちんとまかれている。
もう少し神経を集中させて違和感がないか探ってみる。
濡れているという感じではないし、夢精したという感じでもない。
…ということはやはり夢?
ただの勘違いであり、頭の中だけで起きていたことだろうか?
隣に寝ている師匠を見た。
「くぅ…ん」
そこには安らかな寝顔を晒す美女の姿。
オレと同じように昨夜のままの服装でいくらか髪の毛が乱れている。
寝返りを打ったのだろうけど夢のような行為をした跡は残っていない。
…なら、夢か。
先ほど見たことはただの夢。
疑いようも、証拠も何もない。
そう考えるしかないだろう。
…まったく、なんて夢を見てるんだよ、オレは。
今までにこんなことがなかったかというと…実は結構あったりする。
そりゃここまで綺麗で胸も大きい年上の女性がいれば健全な高校男児たる者妄想にふけってもおかしくないし、夢に見たって当然といえるものだ。
正直こんなところで見ることになるとは思わなかったけど。
「…」
とりあえず頭を振って先ほどの夢を忘れるように心がける。
そんなものが記憶に残っていては顔を合わせるのも気まずくなる。
隣で寝ている女性が淫夢に出てきました。
そんなの恥ずかしすぎて死ぬ。
もっとも師匠に言えば「本当!?それじゃあ夢だけじゃなくて現実でもしちゃおっか♪」みたいなことになりそうだ。
絶対に言わない。
何があっても言わない。
「…はぁ」
小さくため息をついたオレはそのままベッドから抜けだした。
このままここで悶々しているわけにはいかないだろう。
ここで師匠を眺めていたら先ほどと似た感情を抱きかねない。
そうならないように、少しの気分転換にもなるように。
どうせなら朝ご飯を作らせてもらおう。
時間的にもちょうどいいことだし。
思いついたら即行動。
オレはそのまま足音を立てることなくドアを開け、わずかな隙間から体を滑り出し、部屋の外へと抜け出した。
ドアノブをひねったままドアを閉め、そしてノブを戻す。
音を立てずに閉じてそのまま下にある台所へと向かった。
「…んふふ♪ごちそうさま♪」
オレの背に向けてそんな言葉が放たれたことにも気づかずに。
勝手ながら他人の家の台所を使わせてもらうことは失礼極まりないことである。
よくお母さんからも人の家の台所をのぞこうとするんじゃありませんなんて口を酸っぱくして言われたっけ。
それは当然のことであり、最低限のマナーで尊重すべき礼儀である。
しかしオレと師匠の間にそういったものはない。
親しき仲にも礼儀あり。
親しい仲である師匠との間には礼儀というものは当然心がけているがこういったところでは不要。
オレが師匠の家に訪れることは度々あるし、師匠の家の台所を使わせてもらうことも多々あった。
一緒に料理を作ったりもしたのだから。
そしてその相手は今は睡眠中。
それなら起きることには食事が用意されていたら嬉しいものだろう。
昨夜ワインで酔っていたんだ、二日酔いになっていてもおかしくない。
そんな状態で料理を作らせるのはいただけない。
だからこそオレが作らせてもらおう。
昨夜のお礼の意も込めて。
「それじゃ、作りますか」
白く汚れひとつ見当たらないきれいな丸い皿。
それにできた料理を盛り付け曇りひとつない銀のフォーク、ナイフをテーブルに並べていく。
そのどれもがうちにあるような安っぽいものではない。
どれもこれもそこらの店で売っているような安っぽいものではない。
先ほど使っていた包丁だって、今持っているスプーンだってそう。
何度も思うが師匠の家はやっぱりお金もちなんだなよ実感する。
料理を並べ終えたオレははぁと一息ついた。
とりあえずこれで終わり。あとは師匠を起こしてくればいい。
…普通に起こせるかわからないけど。
師匠の部屋に戻るとそこには寝返りを打ったのか仰向けになっている師匠がいた。
瞼は閉じられ柔らかな寝顔は窓から差し込んだ朝日に照らされている。
灰色の髪の毛が艶やかに光を反射し、ベッドに横たわるその姿はまるで妖精といっても過言ではないだろう。
寝乱れたその姿は美しくもどこか妖しく、目を引く魅惑の姿。
「師匠、起きてくださいよ」
肩を掴んで体を揺するが反応はない。
仕方ないので耳元で声をかけることにしよう。
「師匠、朝ですよ」
耳元で声をかけるも反応はなし。
…困ったな。
それならもっと強く揺らそうか?それとも声を大きくしようか?
…それはやめよう。人が気持ちよく寝ているところをそのように起こされるとどうなるのかよく知っているんだし。
だからと言ってこのままというのも…。
そう思っていると声がした。
「自分は寝てるよ」
「…」
「眠り姫だよ」
「…」
起きていたらしい。まったく困った師匠だ。
「眠り姫を起こすのは王子様のキスだけだよ」
「…」
朝っぱらからこの人は…昨夜のアルコールが抜けてないのだろうか?
いや、常時こんな感じだった…。
「師匠」
「んむぅ」
あろうことか自分から唇を突き出してきた。
そーゆー反応は困るんだよな。昨夜のホテルに比べればまだましだけど。
「んー」
「…」
無視して部屋を出て行こうかと思ったが腕を掴まれていたことに気が付いた。
オレが逃げられないように固く握りしめている。
この女性、本当に抜け目ない。
…まったく。
「んむー」
「…はぁ」
小さくため息をついたオレは師匠の顔に右手を添えてそっと顔を近づけた。
それを感じ取った師匠は目をつぶりながらも嬉しそうな笑みを浮かべているように見える。
欲しかったものが手に入る直前の子供のような顔だ。
本当に、子供っぽくなっちゃって。
そのままオレは唇を落とす。
当然、唇にではなく額に。
「…」
「…ぶー」
ブーイングされた。
さらに頬を膨らませて明らかなに不満な顔をする。
それでも構わずオレは師匠の元から離れた。
「ぶーじゃありませんよぶーじゃ」
「おでこ…」
「ええ、おでこですね」
「何でここ?こっちを突き出してるのに」
そういって師匠は体を起こし、オレのほうに向かって唇を突き出した。
不機嫌な顔をしつつもキスをせがむその姿はできることなら答えてあげたい、むしろこちらから襲いかかってしまいたいほどのもの。
しかし決めたことがある以上襲ったり襲われたりしない。
最低限守るところは守るべきだから。
「あ、それともユウタは下の唇にしたかった?んもう♪そうと言ってくれれば喜んで脱いであげ―」
「―はいはい、それよりも師匠ご飯ですよ」
「え?ユウタが?」
「ちゃんとご飯を作ったんですよ」
「じゃ、ユウタはデザートなんだ♪」
「そんなわけないでしょうが」
「じゃ、ユウタにとって自分がデザートなんだね♪」
「そろそろ帰っていいですか?」
「待ってよ!ちょっとした茶目っ気なんだよ!本当に出て行こうとしないでよ!ユウタったらぁ!」
朝食を済ませ、食器を片づけたその後でオレは玄関に立っていた。
「それじゃあ師匠、オレはこの辺で」
「ええー」
帰ろうとしたらまた師匠にブーイングされた。
されるだろうなって予想はしていたんだけど。
「もう一日くらい泊まっていけば?」
「明日は学校なんですよ」
師匠とデート…いや、食事をした昨日は土曜日。そして今日は日曜日。
明日は月曜であり高校生として学校に通わないといけない日である。
それに先ほど携帯電話の電源をつけてみたらあらびっくり、あやかからのメールが届いていた。
『帰れ』
そのただ一言。
正直恐ろしいったらありゃしない。
きっと帰ったら殴られるだろうし、蹴られるだろうし、尻に敷かれる…のはいつものことか。
それでもあの一言だ、かなり頭にきているのはわかっている。
昨夜電源を消したあの後に何度も連絡入れていたのだろう履歴があったんだし。
帰るのがきつい。正直もう少し師匠の家にいたい。
それでもやはり帰らないといけないのは明日のことと、それから師匠の淫夢。
気まずさはないように会話していたがそれでもどこかそうなってしまう。
よく知っている女性があんなことをしている夢を見れば誰だろうとドギマギしてしまうだろう。
それにどうせ明日も明々後日も稽古で会うことになるんだし。
「帰るんならお帰りなさいのちゅーを♪」
「それって戻ってきたときのためにするやつじゃないですかね?」
「それじゃお別れのちゅーを♪」
「ちゅーから離れてください」
「それじゃあもっと激しめに下の口で―」
「―それでは」
「ああっ!!待ってよユウタ!!ちょっと!ねぇ、冗談なんだよ!!ユウタったら!!」
一日ぶりの自宅の玄関の前にオレは一人で立っていた。
さて、この扉の向こうにはどうなっているのか。
お父さんは今日は休みだからいるだろうが出迎えるわけがない。
お母さんは仕事か、従妹のところに行くって言ってたか。
姉ちゃんは大学のサークルで出ていることだろうし…とすると結果的にここにいる可能性が一番高いのは…。
「…仕方ないか」
怒っていることはわかっているんだ。
いつまでもうだうだしてここで立ち尽くしているわけにはいられない。
意を決したオレはそっとじたくのドアを開けて中へと入った。
「ただいまぐっ!!」
刺さった。
否、めり込んだ。
細長く、固く、棒状のそれがオレの顔面に。
顔面ど真ん中、鼻っ柱を砕かれたかと思うほどの強さ。
よく見るとそれはテレビのリモコンだった。
「…遅いんだよ」
呆れたように、それでいて低い声で唸るようにそう言ったのは長い髪を一つにまとめ片手に携帯電話を持った少女。
予想した通りオレのたった一人の双子の姉、あやかだった。
「今までどこに行ってた?」
「と、友達の家で泊まってきてた」
「ふぅん?」
「…うん」
普段どこか切れるような鋭さを持った黒い瞳はまっすぐオレを貫くように見つめている。
嘘を見破ろうとしているわけではない。
嘘なんてつけないぞと警告するようにだ。
もしここで師匠の家に止まってきたのではないか、などと聞かれれば絶対に見抜かれる。
そう聞かれないことを祈るばかり。
「お泊り?」
「お泊り」
「…あ、そ」
あれと思う。
もう少し言及してくるかと思っていたのだがあっさりとあやかが引いた。
こういうのにはお母さんの次に口うるさいというのに。
しかしそれについて何も言おうとはしなかった。
ここで変に刺激すれば今度は携帯電話が飛んできてもおかしくない。
「まぁいいや、とりあえずおかえり」
「ああ、ただいま」
そのまま靴を脱いで家に上がることにした。
リビングに移動してソファーにでも体を沈めてリラックスしようかとも思っているとあやかがリビングに入ってこない。
それどころか片手にある電話で誰かと話している。
相手は誰だろうか。
しかしそう思ってもあやかは会話を聞かせたくないのかリビングと玄関を隔てるドアをさっと閉める。
の閉じるまで少しの瞬間、本当に少しだけその会話が耳に届いた。
「話の続きなんだけど、先生だったらどうするっていうの?」
オレが目を覚ましたのは股間から生じる違和感からだった。
涼しい…というよりも…寒い?
寝ている途中で温んでいた掛け布団を剥いでしまったあの寒さというよりも掛け布団どころかズボンさえも剥いでしまったというような。
素肌を晒しているかのような肌寒さ。
だが寒さだけが違和感を生じさせているわけじゃない。
他にもいくつかある。
それは…そう、音。
ちゅぴ…にゅちゃ…というように水のような、それも粘度のある液体が生じさせる音。
その音だけではない。
「はむ…ん♪ちゅる…ちゅ…んん…♪じゅるっ♪」
聞いたことのある声がする。
聞き覚えのある声がくぐもって聞こえる。
それもどこか嬉しそうに、まるで笑っているかのような声。
そんな声とともに這い上がるこの感覚。
筆舌しがたいこれはいったい何なのか。
今まで経験したことのないこれは何なのか。
柔らかなベッドに横たえた体をそっと起こして下を見る。
眠くて再び閉じてしまい夢の国へと旅立ちそうになるのを耐えてそこを見た。
そこには…師匠がいた。
「ん?ひゅひゅ〜♪ユ・ウ・ハァ〜♪」
嬉しそうにオレの名前を呼ぶ師匠が。
楽しげにオレを見上げる師匠が。
固くなったオレのものを口で銜え込んでいる師匠が、そこにいた。
「…し、しょう?」
理解が追い付かない。
寝起きということもあり頭の回転が追い付かない。
師匠は何でオレのものを銜え込んでいる?
何があってこんな状況になっている?
師匠はどうして笑っている?
気だるく覚めない頭が出せる冷静な判断はここにはなかった。
ふわふわとするまるで浮いているような、体が柔らかなものに包まれている感覚。
それからはっきりとしない意識。
それはまるで昨夜師匠が酔っていた時のようなものかもしれない。
…酔い?
今まで飲酒なんてものを経験していなかったオレにとってそれは理解しがたい感覚だ。
それじゃあ…別のもの?
酔いではなくて…なんだろう。
起きているというのもまた違うこの感覚は…なんというんだっけ。
「んちゅ〜♪」
「っ!!」
柔らかな唇が先端に吸い付き、ちゅっちゅと何度も押し付けられる。
それは覚めない意識の中でも鋭く、そして甘く脳へ突き刺さってきた。
今まで経験したことのない感覚。
この未曽有の経験は…事実には思えない。
まるで…夢とでもいうような。
「んちゅ、ちゅ♪」
それでも頭に突き刺さる甘い感覚ははっきりとしている。
感じたことのない所から感じたことのない柔らかさをしっかり身に受け取っている。
時折漏れる甘い声はどこまでも嬉しそうに聞こえ、耳から入り込んで脳まで犯してくる。
しかしそれだけで終わる師匠ではないことをオレは知っている。
「んちゅ♪どうかな、ユウタ。気持ちいい?」
そう言いながらも刺激するのはやめない。
細い指が竿に絡みつき、優しく扱いては根元にある袋をくすぐった。
握られているのとはまた違う快楽はオレの意識を甘やかすように感じる。
そのせいなのか、気怠い意識は師匠の言ったことに答える気力さえ沸かせない。
それでも師匠は嬉しそうに笑う。
きっとオレが浮かべている表情を見て。
「んふふ〜♪気持ちいいんだね♪そんな顔されたら自分もやめられなくなっちゃうなぁ♪」
先端をくすぐる綺麗な指に先走りが絡みついていくのが見えた。
いけないと思いつつも体は与えられる甘美な感覚にあらがえない。
下腹部でどろどろした熱がせりあがってくるのを感じる。
その感覚が師匠にはわかるはずもないのに彼女は嬉しそうに目を細め、唇を再び近づけた。
そうして今度はさらに甘く、激しいものへと行為を移す。
「レロっ♪」
「っ!!!」
先ほどよりも強い刺激、それでいてずっと甘い快楽。
湿った柔らかなものが先端をレロレロと攻め立ててくる。
唾液の滲んだ舌の感触は手や指で与えられたものと全く違う痺れが股間から生じた。
なぜだか力の入らないこの状態では師匠から与えられるその感覚に煩悶することしか許されなかった。
「ん、りゅ♪これはどうかな〜♪」
楽しげで、嬉しそうで、それでどこか悦楽に浸った師匠は綺麗な灰色の長髪を揺らしてオレのものを先ほど同様口に銜え込んだ。
「っ!!」
先ほどとあまり変わらない意識の中でも師匠のしている行為を認識したからか、それが快楽だと知ったからか与えられる感覚は何倍にも増している。
窄めた唇は根元まで達し、飲み込まれたオレのものは見えなくなった師匠の口内で弄ばれている。
「んちゅるるっ♪じゅる…ん、おいし♪んむ、んん♪」
師匠はそのまま首を前後に動かした。
髪の毛が揺れ、時折むき出しにされた腹部にかかってはくすぐったいと感じる。
普通なら。
しかし男である証を師匠に飲み込まれている今、経験のない行為をされている今、そんな細かな感覚にまで気を回せるほどオレは器用ではなかった。
ぬめった口内に扱かれ、柔らかな唇は搾り取るように吸われ、さらに蠢く舌には執拗に弄られる。
あまりの激しさに腰が溶けているかのように思えるほどの快感は全身にいきわたり、染みわたっていく。
そしてその快感は確実に高みへと押し上げていくものだった。
「……っ!」
「んじゅる…ちゅぅ♪…ん、どうしたのかな、ユウタ。あ、そっか、もうイきそうなんだね♪」
言われようが言われまいがその事実は変わらない。
しかしあえて彼女が口にすることでそれさえも快楽の一つとなるかのように思えた。
湧き上がる欲望の塊が自分一人でした時よりもずっと多いことを自覚している。
いけないと思っていても体は力が入らないし歯を食いしばって耐えることさえもできやしない。
それでも師匠の行為は止まってくれない。
容赦なく高みへと押し上げられ、唯でさえはっきりとしない意識がホワイトアウトしてしまいそうだった。
「んふ♪いいよ…いっぱい、自分の口の中に出して♪ぜーんぶ飲んであ・げ・る♪」
その言葉とともに一気に師匠はオレのものを飲み込んだ。
未経験であり、他人にこんなことをされたことのないオレがこれ以上の快感に耐えきれるはずもなくとうとう欲望が弾けた。
「んんんっ♪」
熱くて白い液体はどこにも飛び散ることなく師匠の口の中で放出された。
師匠は目を閉じて口内に流れ込む体液の熱を、匂いを、感触を確かめているように見える。
そのまますぐに飲み込もうとはせずにじっくり舌で味わうようにしてからようやく喉を鳴らして飲み込んだ。
「んはぁ…♪ユウタの…すっごく濃くて…おいしかったよ♪」
そう言った師匠の顔は嬉しそうで、それなのにどこか妖しく艶っぽく、まるで昨夜のような顔をしていた。
思わず襲いかかりそうになるような、逆に襲ってほしくなるような。
それは求める顔であり、瞳は捕食者のそれにも見えた。
「…し、しょう…」
何とか喉を絞ってかすれた声を出す。
いまだに力が入らないのはどうしてかわからない。
体が動かない、自由がきかない。
拘束されているわけではないというのに。
それでようやくできたのがこの程度。
これでは抵抗もなにもできない、俎板の上でおろされるのを待つ鯉である。
「ふふ♪ユウタぁ♪」
脳が蕩けるような甘い声でオレを呼んだ師匠はそのまま体を起こして覆いかぶさるように―
「―…はっ!!」
起きた。
完璧に起きた。
気怠い気持ちはどこへやら、眠気なんてなんのその。
一気に覚醒して頭の中がクリアな状態になっている。
「…」
急いで股間に手を当てた。
そこには昨夜寝た時と同じズボンの感触があった。
先ほどのように脱がされてはいない。
ベルトもきちんとまかれている。
もう少し神経を集中させて違和感がないか探ってみる。
濡れているという感じではないし、夢精したという感じでもない。
…ということはやはり夢?
ただの勘違いであり、頭の中だけで起きていたことだろうか?
隣に寝ている師匠を見た。
「くぅ…ん」
そこには安らかな寝顔を晒す美女の姿。
オレと同じように昨夜のままの服装でいくらか髪の毛が乱れている。
寝返りを打ったのだろうけど夢のような行為をした跡は残っていない。
…なら、夢か。
先ほど見たことはただの夢。
疑いようも、証拠も何もない。
そう考えるしかないだろう。
…まったく、なんて夢を見てるんだよ、オレは。
今までにこんなことがなかったかというと…実は結構あったりする。
そりゃここまで綺麗で胸も大きい年上の女性がいれば健全な高校男児たる者妄想にふけってもおかしくないし、夢に見たって当然といえるものだ。
正直こんなところで見ることになるとは思わなかったけど。
「…」
とりあえず頭を振って先ほどの夢を忘れるように心がける。
そんなものが記憶に残っていては顔を合わせるのも気まずくなる。
隣で寝ている女性が淫夢に出てきました。
そんなの恥ずかしすぎて死ぬ。
もっとも師匠に言えば「本当!?それじゃあ夢だけじゃなくて現実でもしちゃおっか♪」みたいなことになりそうだ。
絶対に言わない。
何があっても言わない。
「…はぁ」
小さくため息をついたオレはそのままベッドから抜けだした。
このままここで悶々しているわけにはいかないだろう。
ここで師匠を眺めていたら先ほどと似た感情を抱きかねない。
そうならないように、少しの気分転換にもなるように。
どうせなら朝ご飯を作らせてもらおう。
時間的にもちょうどいいことだし。
思いついたら即行動。
オレはそのまま足音を立てることなくドアを開け、わずかな隙間から体を滑り出し、部屋の外へと抜け出した。
ドアノブをひねったままドアを閉め、そしてノブを戻す。
音を立てずに閉じてそのまま下にある台所へと向かった。
「…んふふ♪ごちそうさま♪」
オレの背に向けてそんな言葉が放たれたことにも気づかずに。
勝手ながら他人の家の台所を使わせてもらうことは失礼極まりないことである。
よくお母さんからも人の家の台所をのぞこうとするんじゃありませんなんて口を酸っぱくして言われたっけ。
それは当然のことであり、最低限のマナーで尊重すべき礼儀である。
しかしオレと師匠の間にそういったものはない。
親しき仲にも礼儀あり。
親しい仲である師匠との間には礼儀というものは当然心がけているがこういったところでは不要。
オレが師匠の家に訪れることは度々あるし、師匠の家の台所を使わせてもらうことも多々あった。
一緒に料理を作ったりもしたのだから。
そしてその相手は今は睡眠中。
それなら起きることには食事が用意されていたら嬉しいものだろう。
昨夜ワインで酔っていたんだ、二日酔いになっていてもおかしくない。
そんな状態で料理を作らせるのはいただけない。
だからこそオレが作らせてもらおう。
昨夜のお礼の意も込めて。
「それじゃ、作りますか」
白く汚れひとつ見当たらないきれいな丸い皿。
それにできた料理を盛り付け曇りひとつない銀のフォーク、ナイフをテーブルに並べていく。
そのどれもがうちにあるような安っぽいものではない。
どれもこれもそこらの店で売っているような安っぽいものではない。
先ほど使っていた包丁だって、今持っているスプーンだってそう。
何度も思うが師匠の家はやっぱりお金もちなんだなよ実感する。
料理を並べ終えたオレははぁと一息ついた。
とりあえずこれで終わり。あとは師匠を起こしてくればいい。
…普通に起こせるかわからないけど。
師匠の部屋に戻るとそこには寝返りを打ったのか仰向けになっている師匠がいた。
瞼は閉じられ柔らかな寝顔は窓から差し込んだ朝日に照らされている。
灰色の髪の毛が艶やかに光を反射し、ベッドに横たわるその姿はまるで妖精といっても過言ではないだろう。
寝乱れたその姿は美しくもどこか妖しく、目を引く魅惑の姿。
「師匠、起きてくださいよ」
肩を掴んで体を揺するが反応はない。
仕方ないので耳元で声をかけることにしよう。
「師匠、朝ですよ」
耳元で声をかけるも反応はなし。
…困ったな。
それならもっと強く揺らそうか?それとも声を大きくしようか?
…それはやめよう。人が気持ちよく寝ているところをそのように起こされるとどうなるのかよく知っているんだし。
だからと言ってこのままというのも…。
そう思っていると声がした。
「自分は寝てるよ」
「…」
「眠り姫だよ」
「…」
起きていたらしい。まったく困った師匠だ。
「眠り姫を起こすのは王子様のキスだけだよ」
「…」
朝っぱらからこの人は…昨夜のアルコールが抜けてないのだろうか?
いや、常時こんな感じだった…。
「師匠」
「んむぅ」
あろうことか自分から唇を突き出してきた。
そーゆー反応は困るんだよな。昨夜のホテルに比べればまだましだけど。
「んー」
「…」
無視して部屋を出て行こうかと思ったが腕を掴まれていたことに気が付いた。
オレが逃げられないように固く握りしめている。
この女性、本当に抜け目ない。
…まったく。
「んむー」
「…はぁ」
小さくため息をついたオレは師匠の顔に右手を添えてそっと顔を近づけた。
それを感じ取った師匠は目をつぶりながらも嬉しそうな笑みを浮かべているように見える。
欲しかったものが手に入る直前の子供のような顔だ。
本当に、子供っぽくなっちゃって。
そのままオレは唇を落とす。
当然、唇にではなく額に。
「…」
「…ぶー」
ブーイングされた。
さらに頬を膨らませて明らかなに不満な顔をする。
それでも構わずオレは師匠の元から離れた。
「ぶーじゃありませんよぶーじゃ」
「おでこ…」
「ええ、おでこですね」
「何でここ?こっちを突き出してるのに」
そういって師匠は体を起こし、オレのほうに向かって唇を突き出した。
不機嫌な顔をしつつもキスをせがむその姿はできることなら答えてあげたい、むしろこちらから襲いかかってしまいたいほどのもの。
しかし決めたことがある以上襲ったり襲われたりしない。
最低限守るところは守るべきだから。
「あ、それともユウタは下の唇にしたかった?んもう♪そうと言ってくれれば喜んで脱いであげ―」
「―はいはい、それよりも師匠ご飯ですよ」
「え?ユウタが?」
「ちゃんとご飯を作ったんですよ」
「じゃ、ユウタはデザートなんだ♪」
「そんなわけないでしょうが」
「じゃ、ユウタにとって自分がデザートなんだね♪」
「そろそろ帰っていいですか?」
「待ってよ!ちょっとした茶目っ気なんだよ!本当に出て行こうとしないでよ!ユウタったらぁ!」
朝食を済ませ、食器を片づけたその後でオレは玄関に立っていた。
「それじゃあ師匠、オレはこの辺で」
「ええー」
帰ろうとしたらまた師匠にブーイングされた。
されるだろうなって予想はしていたんだけど。
「もう一日くらい泊まっていけば?」
「明日は学校なんですよ」
師匠とデート…いや、食事をした昨日は土曜日。そして今日は日曜日。
明日は月曜であり高校生として学校に通わないといけない日である。
それに先ほど携帯電話の電源をつけてみたらあらびっくり、あやかからのメールが届いていた。
『帰れ』
そのただ一言。
正直恐ろしいったらありゃしない。
きっと帰ったら殴られるだろうし、蹴られるだろうし、尻に敷かれる…のはいつものことか。
それでもあの一言だ、かなり頭にきているのはわかっている。
昨夜電源を消したあの後に何度も連絡入れていたのだろう履歴があったんだし。
帰るのがきつい。正直もう少し師匠の家にいたい。
それでもやはり帰らないといけないのは明日のことと、それから師匠の淫夢。
気まずさはないように会話していたがそれでもどこかそうなってしまう。
よく知っている女性があんなことをしている夢を見れば誰だろうとドギマギしてしまうだろう。
それにどうせ明日も明々後日も稽古で会うことになるんだし。
「帰るんならお帰りなさいのちゅーを♪」
「それって戻ってきたときのためにするやつじゃないですかね?」
「それじゃお別れのちゅーを♪」
「ちゅーから離れてください」
「それじゃあもっと激しめに下の口で―」
「―それでは」
「ああっ!!待ってよユウタ!!ちょっと!ねぇ、冗談なんだよ!!ユウタったら!!」
一日ぶりの自宅の玄関の前にオレは一人で立っていた。
さて、この扉の向こうにはどうなっているのか。
お父さんは今日は休みだからいるだろうが出迎えるわけがない。
お母さんは仕事か、従妹のところに行くって言ってたか。
姉ちゃんは大学のサークルで出ていることだろうし…とすると結果的にここにいる可能性が一番高いのは…。
「…仕方ないか」
怒っていることはわかっているんだ。
いつまでもうだうだしてここで立ち尽くしているわけにはいられない。
意を決したオレはそっとじたくのドアを開けて中へと入った。
「ただいまぐっ!!」
刺さった。
否、めり込んだ。
細長く、固く、棒状のそれがオレの顔面に。
顔面ど真ん中、鼻っ柱を砕かれたかと思うほどの強さ。
よく見るとそれはテレビのリモコンだった。
「…遅いんだよ」
呆れたように、それでいて低い声で唸るようにそう言ったのは長い髪を一つにまとめ片手に携帯電話を持った少女。
予想した通りオレのたった一人の双子の姉、あやかだった。
「今までどこに行ってた?」
「と、友達の家で泊まってきてた」
「ふぅん?」
「…うん」
普段どこか切れるような鋭さを持った黒い瞳はまっすぐオレを貫くように見つめている。
嘘を見破ろうとしているわけではない。
嘘なんてつけないぞと警告するようにだ。
もしここで師匠の家に止まってきたのではないか、などと聞かれれば絶対に見抜かれる。
そう聞かれないことを祈るばかり。
「お泊り?」
「お泊り」
「…あ、そ」
あれと思う。
もう少し言及してくるかと思っていたのだがあっさりとあやかが引いた。
こういうのにはお母さんの次に口うるさいというのに。
しかしそれについて何も言おうとはしなかった。
ここで変に刺激すれば今度は携帯電話が飛んできてもおかしくない。
「まぁいいや、とりあえずおかえり」
「ああ、ただいま」
そのまま靴を脱いで家に上がることにした。
リビングに移動してソファーにでも体を沈めてリラックスしようかとも思っているとあやかがリビングに入ってこない。
それどころか片手にある電話で誰かと話している。
相手は誰だろうか。
しかしそう思ってもあやかは会話を聞かせたくないのかリビングと玄関を隔てるドアをさっと閉める。
の閉じるまで少しの瞬間、本当に少しだけその会話が耳に届いた。
「話の続きなんだけど、先生だったらどうするっていうの?」
12/05/19 20:31更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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