連載小説
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プリネイア

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鬨(とき)の声が辺りに響く城門周辺。
凱旋する戦士を出迎えるのもそこそこに『獲物』を物色する者達。
その一人一人が人を超える姿を有している。そんな光景。

ここは魔界のはずれ 国境に程近い拠点のひとつ

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「任務 御苦労。成果も上々のようだな」

この拠点の責任者であるデュラハンから労いの言葉を頂いた。
拠点の内側でも重装備のままというのが勤勉な正確を匂わせている。

「そうなのよ!ダンナ候補一括納入!活きの良いのが勢ぞろいよ♪」

それに比べて私の性根ときたら聞いての通りよ。あっ 濡れてきた。
あ 私はプリネイア。ぴっちぴちのサキュバス!プリンって呼んで!
ちなみに目の前のデュラハンはノーラ。長い付き合いなんだ。

「・・・助かる。婿不足で内乱では目も当てられないからな」

さっきの私の言葉に眉をピクッと上げて不快そうに睨んでる。ゾクゾク
溜息まじりでも感謝の言葉を貰うと良い気分。キスしちゃおうかしら。

私が知っている限り魔界には3パターンの婿探しがあるの。

1:捕獲されてきた『獲物』の中から選ぶ
2:国境を越えて好みの男を探す旅に出る
3:戦場で運命の出会いをする

ちなみに私は3狙いかな。そのせいか今だ運命の人に会えないの。

物思いに耽っている間にも続々と門をくぐって『獲物』が通り過ぎていく。
手枷だけの者や口枷付き、更には拘束服の者までいる。
詠唱なしで魔法を行使できる極上の『獲物』にはサービスで答えなきゃ☆

「ほぅ 確かに活きはよさそうだ。」
「でしょでしょ?生け捕りは大変なんだから」

生け捕りと言ったけど事故以外での殺害は原則禁止。生かさず殺さず。
あ イってくれないと困っちゃうわね。でも安心して。
今回の『獲物』は勃起検査も全員合格。男色家はいないみたい。
中には元気すぎる奴もいたみたいだけど・・・

『獲物』が通り過ぎた後、現れた一団を見てノーラが渋面を作る。
その一団は担架で誰かを運んでいた。姿は被せられた布で見えない。

「犠牲が出たのか」
「傭兵連中が囲っていた女の子よ。見つけたときには 遅かった」

酷い有様だった。夥しい量の精液、醜悪な淫具、転がった薬瓶。
食事を取った形跡が無かった。おそらく睡眠もとれなかっただろう。
見つめていた担架から不意にこぼれた腕には縄の痕が刻まれていた。
随行していた者が辛そうに腕を戻している姿が痛々しい。

「下手人供は捕らえたのか?」
「当然、一人残らず捕獲したわ」
「君ならそいつらの処遇をどうする?」
「そうね・・・ 『拷問派』のダークエルフに引き渡すかな」
「奇遇だな。私もそのつもりだった」

男を屈服させる事に喜びを見出したダークエルフの一族も
その手段によって様々な派閥があるらしい。
中でも『拷問派』の悪名は魔界に轟くほど凄い。
曰く『問い詰める事も無いけど楽しいから拷問』をモットーにして
永久の暴力を与え続けるのだとか。もちろん 死なない程度に。

「被害者の子は『霊園』に運んでくれ。使用を許可する」
「ありがとう」

『霊園』とは文字通り死者の眠る場所、見た目は人のそれと変わらない。
重要なのは魔力溢れる魔界で眠りに付くという事。
つまり、ゾンビやゴースト、スケルトンになる余地を残そうという事なの。
魔物に変わった子は墓守さんに保護されて第2の生活を謳歌するってワケ。

「今度は幸せに生きて欲しいな」
「そうね」

・・・男は大好きだけど、こういうことがあると さすがにキツイ。

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10/09/17 02:59更新 / Junk-Kids
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