ヴァルキリーとして造られたエルルンの使命は勇者を育て上げることである。
　エンジェルなどと同じく、エルルンもやはり勇者の素質に恵まれた若い男を見つけ、教え導き神の尖兵に仕立て上げるために生まれてきた。
　主神の創造物たるエルルンに、自由意志という概念は馴染みが薄かった。彼女はただ神の命令を実行する一つの機械として自らを規定していた。
　そんな彼女が、早朝から男のベッドに忍び込んで寝巻きを脱がせて朝立ちを舌でベロベロ舐めているのは、端から見ればいかにも矛盾した光景だろう。
　エルルンに陰茎を咥えられ悩ましげな寝顔を見せているのは、ネベルという青年である。平凡な村人として生きていたところをエルルンに見出され、何年か武者修行の旅を続けている男だ。
　野党に獣に魔物娘に、この世界は戦う相手に事欠かない。エルルンによって戦場に放り込まれたのもそう最近ではなく、ネベルの手足や腹には結構な量の筋肉が付いている。
　かつてエルルンは、それら逞しい男の身体を魔と戦うための武器以上のものとして見ていなかった。
　鋭く研がれた剣や、弦の張り詰めた弓と同じような、ある種の道具として見ていたのだ。　
　しかし今、エルルンはネベルの身体を見るにつけ、それら単なる道具を見るときとはまったく異なる何か衝動的なものを感じる。見るだけでなく、頭のなかで想像するだけでも心がざわついて、じっとしていられなくなる。
　そんな時彼女は、心の中に響く神の声に従う。
　ネベルの唇を舐めろとかネベルの性器を舐めろとかネベルの精液を胎内で受け止めろとか、彼女に下される命令は簡潔ながら明瞭かつ具体的で、疑問を差し挟む余地は一切ない。
　かつて彼女が生まれた時に聞いた神の声、無機質で冷酷な「魔を滅せよ」との命令よりも今に下されている命令のほうが、エルルンにとって優先された。神の命令に無駄なものなど一つとして無く、あらゆる命令が最優先で実行されるべきでありそれらに優先順位など存在しない、筈だったが、エルルンにとってもう魔との戦いは二の次三の次となっていた。
　今朝も、起きた時から股が疼いて喉が渇いてたまらなくて、声に従ってネベルにフェラチオしに来たのだ。
　朝になると男の竿が張り詰めるということを、知識としては知っていた。かつてなら単なる一つの事実として処理したであろうそれを、なぜだか今は好ましく思う。神の機械たるヴァルキリーに好悪の感情は馴染まないものかもしれなかったが、神の声に従うのがヴァルキリーの天分である。
　大きく膨らんだ男性器を、拭いもせずにエルルンは口へ含む。一晩かけて培われた汗と垢の匂いが口中に広がって脳が揺れる。
　秘部に特有の饐えたような匂いに加えて、精液の青臭い香りと女の愛液の味がある。昨日ネベルに生で挿入してもらって三回中出しさせた時の汚れが、まだ残っているのか。
　勇者たるもの、体はいつも綺麗にしておかねばならない。エルルンの乾きを癒すとともに彼の股をも浄める一石二鳥の解決策として、神の声は朝フェラを命じたのであろう。自分で導き出した結論を一切疑わず、エルルンは更に深く竿を飲み込んでいく。
　エルルンと性交するようになって以来、やや大きくなった男性器は、彼女の喉奥まで届いて咽頭を突く。口から喉までをネベルに埋め尽くされて、エルルンは涙を流す。泣きたいくらい嬉しい苦しみをうまく心の中で処理しきれず、粘っこい唾液を垂らして淫らな水音を立ててしまう。
　ずずずずずっ、と粘膜を鳴らすとようやくネベルが目覚めた。一心不乱に竿をしゃぶるエルルンを見下ろして、狼狽の表情を浮かべる。

「エ、エルルンさん！？　朝から、何してっ……？」
「ん、ぅごっ、は、おぁようごらいまふ。ねべるサマ。……ねべるハマのおひんひんが、しょーしょーよごれへおりまひたのれ。ずずずっ……こうひてきえーにしへいまふ。……んぁーむっ」
「な、なんだよ、それ……！」

　困惑している様子だが、拒むことはない。ネベルはエルルンに股間を弄ってもらうのが大好きで、口や手や胸で刺激されると何やかやいいながら最終的には凄く満足気になることを、エルルンは既に承知している。
　現に今も、咎めるようなことをいいながらもエルルンのことを押しのけようとはしていない。ただベッドに寝転がり、喉を反らせて呻くばかりだ。
　順調にネベルを感じさせられていることを再確認し、エルルンは更に大胆に頭を振る。
　　きゅっとしめた唇で竿を上下に擦り、凹ませた頬の裏側で張り出たカリ首を擦り、肺を膨らませて尿道口を吸い上げる。
　荒っぽく頭を上下させると亀頭が喉奥にぶつかって反射的にえづきそうになるが、少しづつ分泌される先走り汁の旨さがエルルンの思考力も、本能までも流し去っていく。
　ネベルが押し黙り、ベッドシーツを両手で強く掴んでいる。こうなると、彼が精液を出すまでもう間がない。白濁液で喉を潤すという当初の目的を思い出し、エルルンは口唇愛撫を更に強めた。
　ぐっぽぐっぽいう音が部屋に響く。日が昇ってもう結構経つので、同じ宿の住人はもう出かけた頃だろう。他人を憚る必要もないので、エルルンは全力で鈴口を吸った。
　ネベルが途切れがちに、短く喘ぐ。最後の瞬間を逃さぬよう、エルルンは陰毛が唇に張り付くくらい深く竿を飲み込み、亀頭を食道へ受け入れた。
　瞬間、濃厚な味がエルルンの喉と胃に溢れる。昨晩よりも多い精液が、ヴァルキリーの体内を白く染めていく。喉を鳴らしてそれらを飲み込んで、それでも竿と唇の間から漏れだす雫を陰毛ごと舌で舐めとって食し、男の臭いで頭をいっぱいにする。
　出された子種を一頻り飲んで、尿道に残った分を吸い取ってベッドのシミを舐めて、ようやく彼女は人心地がついた。

「……ふう。おはようございます。今日も一日、頑張りましょうね」
「なんで……こんな。エルルン……」
「申し上げたでしょう。ネベル様のおちんちんを綺麗にするためですよ」
「そんなこと、誰も頼んでないじゃないか……」
「神の声が私に命じたのです。ですから、こうすることが正しかったのですよ」

　不信の表情をありありと浮かべたネベルを見ても、エルルンの心は揺らがない。むしろ、釣り上がった眉が凛々しくてカッコイイとすら感じていた。

　昼すぎ。朝昼兼用の食事をとって、かつてのスケジュールでは二人で剣の鍛錬を行うはずの時間だったが、またしても神の天啓が下った。

「ネベル様。剣の修行は中止です。私と一緒に、部屋へ戻りましょう」
「……またか。昨日も夜まで、散々したじゃないか」
「ええ。ですが、神のご意思ですので」

　男を部屋に連れ込み服を脱がせベッドに寝かせ、自らも盾と鎧を脱ぎ捨てる。下半身を覆うスカート状の衣服は足の動きを制限しないよう大きな切れ込みが前面に二本入っており、膝立ちになって前の布をつまんで持ちあげるだけで簡単に股を露出することが出来る。

「ネベル様も、剣の稽古なんかよりこっちの方がいいですよね？　私のここが濡れたら、ネベル様のを挿れてもらえって神も言っていますから。だから、いいですよね？」

　抗弁を聞く気にもなれず、エルルンは仰向けにしたネベルの身体を跨ぎ、腰を落として男の剛直を受け入れる。陰唇に亀頭が触れて蜜が溢れ、滑りの良い膣口粘膜が生き物のように竿を取り込んでいく。ずぷずぷ、と男根の中ほどまで飲み込むとネベルも無駄な抵抗を止め、いつもの如くエルルンの身体に溺れてくれる。
　狭い膣内を硬い肉の棒で押し広げられる感覚は何者にも代えがたく、微弱な電流のような感覚とともに自分の胎内が満たされる、この瞬間のためにこそ自分は生まれてみたのだと思ってしまうほどだ。ともすれば真意の否定にもつながりかねないそんな考えを、しかし神の声は否定しない。それどころかもっと味わえ、もっと悦べとエルルンを煽り立ててくる。駆り立てられるまま、彼女は身体を上下させ始めた。
　我慢汁と愛蜜の混じった卑猥な液体がシーツに飛び散る。ベッドの弾力を使ってエルルンが身体を激しく動かすごとに、膣奥から溢れる液体は会陰から漏れでて辺りを汚す。
　腹に力を込めると膣の筋肉がきゅっと締まって、囚われた男性器はなすすべなく震える。粘つく先走り汁を自分の体の中に塗りつけられる感覚で、頭が茹だる。
　肉筒をぎゅぎゅっと絞って荒っぽく腰を振ると、いつもネベルは簡単に屈した。はぁはぁと傷ついた獣のように情けなく喘いで、神の、エルルンの命じるまま膣内に射精するのがここ何日かの常だった。
　今日もそんな感じで、夕食までに何回も絶頂させられるだろうとエルルンは甘く考えていたが、しかしネベルはまだ抵抗的だ。
　毎朝毎日毎晩彼と生殖行為に励みながら、エルルンは彼のことを一層大切に想うようになっていた。抗議を無視して押し倒して生ハメ逆レイプしておいて何を、と思われるかもしれないが、彼の言うことを聞いてあげたいという気持ちも確かにあった。それが神に命じられたからなのか否かは、エルルン自身深く考えていなかったが。

「エルル、ン……もうずっと、こんな……だめ、だよ……」
「なぜ？　私の身体、気持ちよくありませんか？　男性は女の身体で気持ちよくなって、精液を出すのでは？」
「そう、そうだけど……ずっと生で、子供ができたら……」

　子供。その言葉を聞いた瞬間、彼女の精神に閃光が走った。
　心の奥底から沸き上がる神の声は、子供を作れと命じている。ネベルの精液を何回でも子宮で受け止めて、妊娠するまで生セックスし続けろと命じている。ただひたすら戦えと命じる声とは全く異なる、熱くて強くて親しみ深いの声に、エルルンは自分の全てを委ねようと思った。

「……子供。そうです、子供です」
「な、もし、できちゃったら……エルルンも、困るだろ……？」
「いえ。子供、作りましょう。
　ネベル様の精液を子宮に出してもらえば、子供が出来るんですよね。準備はできていますから、孕むまで中出しし続けて下さい」
「え！？　そ、そんなバカな……！？」

　ネベルの子を授かって腹を大きく膨らませて胸から母乳を出している自分の姿を想像すると、エルルンはいよいよ自分を抑えきれなかった。
　両膝でネベルの腰あたりを挟むようにして、万が一にも子種が膣外へ漏れないようにして、上下運動を一層速める。蜜が溢れて二人の股間がぬらぬら光る。胎の奥を男性器で突かれる度に目がくらむ。
　楽しめ、貪れ、孕めと命ずるのはいつの間にか神の声でなく自分の声になっていたが、もうどちらでも良かった。エルルンは神に命ぜられたから孕むのではなく、ネベルの子供が欲しいから孕むのである。
　激しすぎるピストンに、ネベルは耐え切れなかった。動き続けるエルルンの子宮へ濃厚な子種汁が注がれる。腹の奥にじんわり広がる暖かさがもっと欲しくて、エルルンは男を射精させながらも騎乗位搾精を止めない。

「ちょ、まって、とめ、て……」
「もっと。もっとください。ネベル様の濃いザーメンで、妊娠させて下さい。
　妊娠させてくれるまで、今日は離しませんからね……」

　膣内に出された精液が止まらないピストンでぐちゅぐちゅ言っている。神の声よりも、この音をずっと聞いていたいと、エルルンは願った。

■作者メッセージ
いつになく筆が進んだ。