読切小説
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デリュージョン、デリリウム、ディレインジメント
 深く愛した女に手ひどく振られた俺は自尊心の一切を失った。
 所詮俺ごときの誠実さなど積み上げられた札束の前には無いも同然なのだという、ごくありふれた真実が痛い。
 巷に溢れる「女に愛されない奴は努力が足りない」などという、空虚で浅薄で傲慢で他者を見下すためにしか役立たない下らない言葉が俺の心を枯れ果てさせる。
 骨髄まで染み通った労働者根性のお陰で毎日出勤することはできているが、仕事中もほとんどうわの空で会話もできない。周りの奴らもそんな俺を気味悪がって寄って来ない。
 世界には俺に関心を向けない奴と俺を捨てる奴と俺から女を奪っていく奴しかいないのだという悟りで心身耗弱状態となっていた金曜の夜、会社からの帰り道、裏道で奇妙な店を見つけた。
 小汚い雑居ビル、その入り口に濃い桃色の看板が立っている。「サロン Delusion」と書かれたそれは内側の安い蛍光灯でけばけばしく輝いており、見るからにいかがわしい。
 立地から言って間違い無く風俗店、売春の店である。
 財布に多少の余裕があった俺は理由も無く、その店に入ってみたくなった。
 この手の店で下調べ無しに良い結果を得られる確率は極めて低いのだが、そんなことは重々承知の上だ。自暴自棄になってしまえば地雷もパネルマジックも怖くはない。
 一体どんな酷い女が俺を慰めてくれるのだろうかと、刹那の虚しい癒しを求めて薄暗い階段を登っていった。
 ビルの外見の割に、妙に細長くて急な階段をただ登る。
 大人一人がやっと通れる程度の狭さで、もし上から誰か降りてきたらどうやってすれ違えばいいのかもわからない、消防法違反上等過ぎていっそ非現実的な階段を登り切り扉を開くと、小さなカウンターがあった。
 普通の店ならば待機しているはずの黒服や遣り手婆の姿は見えない。壁には張り紙がしてあり、料金が書かれている。遊べる内容や女の質にもよるが、なかなか悪くない値段だ。
 少し待ってみても、出迎えが来る様子は無い。今日は休みなのかと思いかけたが、カウンターの側、プレイルームへ続いているらしい廊下の方から人の気配がする。
 まさか、人件費削減のための経営策なのだろうか。ガソリンスタンドや無人スシバーのような、無人ピンサロだとでもいうのだろうか。馬鹿馬鹿しい妄想を抱きながら覗きこんでみると、手前に一つ大きめの扉がある。
 明かりが点いていて中に人がいるらしいが、扉は僅かに開いており鍵も掛かっていない。お楽しみ中の男の気配も無く、俺は意を決して戸を叩いた。

「……すいません。誰か、いますか?」
「あ、お客さん。どうぞどうぞ、中へ」

 ひょっこり顔を出したのは若い女の子。やけに嬉しげな彼女に手を掴まれ、そのまま個室へ引きずり込まれてしまった。
 胸元と頭に赤いリボンを結びつけたその少女が俺の相手をしてくれるらしい。キャミソールのような薄い灰色の下着だけを身につけた彼女は、小柄でありながら胸元に大きく育った魅惑の肉塊を一対ぶら下げていた。それでいて余分な肉はついておらず、腰はくびれお尻はふっくらな素晴らしい体型。更に顔の方も、釣り気味の大きな目とちょっと悪戯っぽい口角が愛嬌に溢れていて、見ているだけでも楽しくなってくる。顔も、体も、先端をくるんとカールさせた綺麗な長髪も全てがとても魅力的な、文句なしの上玉だった。
 四十路や五十路の婆を相手取ることも覚悟していた俺にとってこの神憑った引きは予想外だった。こんなに可愛い、非人間的なまでに色の白い美少女とあれこれできるとは。
 指名の有無を聞かれもしなかったことや、不審にもその少女以外誰も従業員らしきものが見当たらないことなど忘れ去ってしまうくらい、俺は「アタリ」に興奮していた。

「お客様。私がお相手で、大丈夫でしょうか?」
「もちろんだよ。君みたいな可愛い子なら文句無しだ」
「ありがとうございます。私、カスカっていいます。今日はたっぷり、楽しんでいって下さいね」

 言いながらも、カスカと名乗ったその少女はもどかしげに俺を座らせ、ぱっぱと服を剥ぎとってしまった。暗赤色で統一された、ビジネスホテルの客室をぎゅっと縮小したような、調度の類がほとんど置かれていない簡素な小部屋に敷かれたマットの上に寝かされて、既に勃起してしまっている。
 キャミソールの肩紐をずり落とし、大きく膨らんだおっぱいを露出させてこちらの欲望を煽ってから、カスカは男性器に吸い付いた。
 まさかこんな可愛い娘に、ウェットティッシュで拭かれるでもなくシャワーを浴びるでもなく、一日の汚れが残ったままのものをいきなり咥えてもらえるとは思ってもみなかったため、驚きと、それに倍する興奮を味わう。
 中学生男子のように節操無くそそり立ったものを、カスカはその小さな口で懸命にしゃぶる。溜まった垢をこそげ取るように裏筋からカリまでを舌でじっくり舐め上げられ、温かい口の中で唾をたっぷり塗りたくられると、あっさり我慢汁を漏らしてしまうほど気持ちいい。
 生まれて初めての即尺に悶える俺を、脚の間からカスカが嬉しげに見上げる。

「ふふふ……ふふっ。おひゃくひぁん、たまっへまふね……すごい、がっひがひ。れんぶヌいてあげまふからねぇ……」

 時間が限られているということもあるのだろうが、カスカのフェラ奉仕には容赦というものが無い。唇の端から大量の涎を垂らし、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てながら心労のせいでここしばらく射精していなかった陰茎を舐め、責め、味わう。
 美少女の口で愛される非現実的な性感に加え、男の手にも余りそうなサイズのまんまるおっぱいが、カスカの身体と頭の動きに合わせてたふんたふんと揺れる光景にも射精を促されるよう。
 いかにも柔らかそうな巨乳を凝視していたのがばれたか、カスカはこちらを一瞥すると眼でニンマリと微笑み、口は離さず肉茎をしゃぶり続けながら胴体を少し動かし、右の胸を俺の太股に乗せてくれた。
 ふにゅんっ、という擬音が似つかわしい、誰よりも何よりも弾力性に富んだ乳房が脚に押し付けられている。成熟しきった爆乳が俺の太股の上で潰れて行き場を失い、窮屈そうに横へはみ出ている。男の卑猥な妄想をそのまま現実に持ってきたような、あまりに扇情的な光景と感触が自制心を溶かしていく。
 このままでもすぐに達してしまいそうな俺をカスカは更に追い込む。
 固く凝った乳首と柔らかい乳房をぐいぐい押し付けながら、頭の上下動を一気に早めてきた。ずるずるずるとカウパーを啜りながら唇で竿を締められ、舌で舐め回されて絡め取られて、敏感な先端や尿道口を責め立てられると、もう気持よすぎて男性器と唇の境目が分からなくなってくる。
 そんな状況で我慢など出来るはずもなく、カスカが根本まで陰茎を飲み込み、頬をへこませて尿道を思い切り吸い上げてきた時、あっさりと俺は射精した。
 真空に近づいた彼女の口が動き、今まさにいっている男性器から精液を吸い取る。精嚢から直接ザーメンを啜るような、カスカの可愛さには全く似つかわしくない貪欲さが、いくら貯めていたからといっても普通では考えられない量の射精を促す。
 彼女の細い喉、食道口へ思い切り射精しているとこっくん、ごくんという嚥下音が僅かに響き、自分の出した白く濃厚な粘液が今まさに彼女の胃へ注ぎ込まれているのが分かる。
 粘度が高く飲み込みにくいザーメンを舌の根元で弄び、唾液と混ぜてとろみを薄めてからじっくり飲み込むその光景を幻視したようで、今までの射精より遥かに満足できた。
 十代の頃をも凌ぐ大量の精子を出してしまったことで強い虚脱感を覚えた俺だったが、この手の店では時間の関係上余りゆっくりできない。無理に四肢へ力を込め、なんとか服を着込むとカスカが名残惜しげに見つめる。

「もう、時間なんですね。残念です」
「俺もだよ。出来れば延長したいところなんだが」
「大丈夫ですよ、無理なさらなくても。それより、また来て欲しいです」
「そうだな。きっとそうするよ。だからまた、俺の相手してくれよ」

 夢見心地に金を支払い、小部屋を出る。他に誰もいない、がらんとした廊下をよろめき歩いて外へ出て家路につく。どう帰ったのかも分からないまま、気づいたら自宅のベッドで眠っていた。

 翌日。若くて可愛くて愛想の良い巨乳美少女と格安で遊べた、まるで夢の様な体験を忘れられず俺は例の店をネットで検索してみた。
 彼女の出勤日や店の詳しい位置を知りたいと思っていたのだが、いくら探しても「サロン Delusion」のホームページが見つからない。本屋で情報誌を買ってみても、それらしい店は載っていない。あんなに良い店なのに、全く不可解なことだった。
 結局、あの店の詳細も、務めている嬢のことも何一つ分からなかった。どうやって店に辿り着いたのか思い出そうとしてみても、何故か記憶が朧気で、はっきりと道順が思い出せない。泥酔していたわけでもないのに。
 結局、カスカのことが忘れられずその夜も俺は街へ繰り出した。どうすれば「Delusion」に辿り着けるのかも分からないまま、あの日のようにただ裏路地をさまよう。
 日の暮れ切った後、無目的に歩きすぎて自分の現在位置も覚束なくなった頃、俺は再びあの店の前にいた。前に見たのと同じ小さな看板が周囲の闇を仄明るく照らし、周囲の静けさを際立たせている。俺は喜び勇んで、細長く急な階段を登っていった。
 やはり無人の入口を抜けて廊下へ顔を出すと、前と同じ部屋からカスカが顔を出した。灰色のキャミソールは右肩紐がずり落ちかけて、ノーブラの大きなおっぱいが零れ落ちそうになっている。なんとも言えない生活感を伴った艶めかしさが俺の理性を奪った。

「やっぱり来てくれたんですね! ありがとうございます」
「ああ。カスカさんは今日……空いてるのか?」
「はい、どうぞこちらへ」

 他の女を指名するつもりなど、もとより無い。誘われるがまま小部屋へ入るとやはり瞬く間に服を脱がされ、マットに座るよう促される。前にしてもらった、あの気持ちよすぎる口淫を思い出して、既に陰茎は硬くなりきっている。

「わ、もうこんなに。……ふふ。たくましくって、素敵です」
「カスカさんが綺麗だからだよ。それに凄く……その、上手かったし」
「気に入ってもらえて、私も嬉しいですよ……じゃあ今日は、さっきからずっと気にしてらっしゃる……この胸で、しましょうか」

 言って、カスカは両腕を肩紐から抜き、その童顔と小柄な体躯に似合わぬ爆乳を晒した。
 メロンのように大きく膨らんだ胸と、頂点の紅い小さい乳首。身体は小柄なのに胸だけはそこらのグラビアアドルやモデルを軽く笑い飛ばせるほど大きく、しかもそれらは下から支える彼女の指が深く食い込むぐらいふわふわ。
 マシュマロのように柔らかそうで、しかもそれでいてあまり下の方へは垂れない若々しさ。子供のように小さなカスカの手と牛のような巨乳の対比が鮮烈すぎて、俺はすぐ夢中になった。

「それじゃあ、失礼しますね」

 胸の谷間にたっぷり唾液を垂らして、おっぱいの間で軽く馴染ませてからカスカは上体を倒してきた。そのまま俺の男性器を捕え、乳肉の中でムギュッと挟みこむ。白く滑らかな乳肌で思い切り圧迫されて、思わず呻いた。

「おっぱい、気持ちいいですか? 思い切りパイズリしますから、たくさん精子出して下さいね」

 もしや女子高生かとも思える若く美しい女にそんな淫語を囁かれて、おもわず竿が跳ねた。小振りな手で大人以上の爆乳をしっかり支え、カスカはムネで男性器を扱き始める。
 蝋のように滑らかで色素の薄い乳房は粘り気のある唾液と絡んで変形し、竿の根本から亀頭の先端までぴったりとフィットし、強く抱きしめる。女性らしさの体現とも呼ぶべき柔らかさと、それに責められ搾られる快感が理性を刈り取っていく。前の女としてきたセックスを全部忘れて、ただカウパーを垂れ流すことしかできない。

「透明なの、出てきましたね。しっかり塗り拡げてあげますからね……ふふっ。うりうりぃ」

 止めどなく湧き出る我慢汁を、カスカは唾と混ぜあわせて亀頭粘膜に塗りたくる。自分の出した汚い液が彼女の唾と混ざり合う倒錯的な快楽、自分の急所に唾を浴びせられる背徳的な味わい。そこに、風俗嬢と客という上下関係は存在しなかった。
 左右から強く押し付けられるおっぱいをカスカは交互に動かし、オナニーなどとは比べ物にならない、複雑かつ連続的な刺激を加えてくる。カウパーと唾の混合液が乳と竿の間でにちゃぁっと淫らな音を立てる。美少女の胸で弄ばれてただ悶えるしか無い俺を、薄赤い瞳のカスカが嬉しげに見上げてくる。ニンマリと口角を釣り上げた、いかにも好色そうな嘲笑すら愛しい。
 彼女と、彼女の与えてくれる快楽以外の感覚全てが朧気となり、時間も料金も現実も、なにもかもどうでも良くなってくる。
 まだあどけなさの残る巨乳美少女が大きすぎる胸を唾と我慢汁まみれにしながら自分のものを挟んで扱いてくれている光景は、いっそ非現実的ですらあった。

「どうですか? そろそろ、出ちゃうんじゃないんですか?」
「あ、ああ、もう、すぐにでも……」
「はい、じゃあそのまま胸の中にどうぞ。濃いぃ精液で私のおっぱい、妊娠させて下さいね」

 余りにも積極的な淫語と強烈な圧搾で、僅かに残っていた忍耐は潰えた。手の動きを早め、細い指と指の間からたっぷりと乳肉をはみ出させながら、カスカが今まで以上の速度でパイズリ奉仕する。
 左右の乳房がカリ首を同時に擦り乳脂肪が亀頭全体を包み込んだ時、俺はあっさり屈した。

「で、出る……!」
「や、 ……どくどく言って、これ……」

 両手で強く締め付けられた乳と乳の間に大量の精液が噴き出る。おっぱいに捕まったままの男性器は谷間と胸元と乳房にザーメンを撒き散らし、白い肌の上に白い汁を重ねていく。
 射精している最中もカスカは胸から手を離さず竿を挟んだままだったため、精子を出す度に飛び跳ねる陰茎がまたおっぱいに摩擦され、いきながらなお気持ちよくされてしまう。
 絶頂しながら精液でドロドロになった胸に責められ続ける快感は苦痛一歩手前の激しさで、俺の思考力を奪い取った。

「……お疲れ様です。いっぱい射精してくれて、ありがとうございました」

 精液を出し終えてもすぐにはそれと気付けないくらい疲弊した俺はもうカスカのこと以外何も考えられなくなっていた。
 陰部を丁寧に拭われ、金を払う段になってもまだ酩酊感にも似た恍惚が抜けきらず、どこか白日夢を見ているようなフワフワした気持ちでいた。

「また来て下さいね。待っていますから」
「ああ。きっと来るよ。その時は …… !?」

 振り向いて、どうにか別れを告げようとした瞬間、精一杯背伸びしたカスカに唇を奪われた。いつの間にか背中に回されていた両腕で俺の身体をきつく抱きしめ、小さめな口で激しく吸い付いてくる貪欲なキスは、事を終えた後にはあまり相応しくない。
 舌の先を入れて歯や口蓋まで舐めるディープキスを少ししてから顔を離して、彼女はにっこり笑った。

「また会いましょうね。お互い、寂しくなっちゃう前に」

 予想もしなかった濃厚過ぎるサービスで、俺の心は完全に掌握されてしまったのだ。

 それ以来、俺は毎日のようにカスカの元へ通った。
 日中は彼女のことしか考えられないし、自分で抜こうとしても全く上手くいかない。カスカの部屋へ行って射精させてもらわなければどうにもならないのだ。
 今までに恋愛をしたことはあったが、ここまで溺れることはついぞ無かった。風俗嬢に入れ込んで散財するなどまるで阿呆のようだと自覚はあったが、どうにもやめられない。
 それどころか、彼女が売春婦であるということ、俺以外の客にもあんな素晴らしい奉仕をしているであろう事を想像すると、痛みと妬みで気が狂いそうになる。客の立場で何を偉そうな、と言われてもこの感情は抑えられない。
 もしいつか、俺があの店に赴いて、ちょうどその時カスカが別の客を相手にしていたとしたら、一体どうすればいいのだ。
 そんな、愚かしくもままならない妄念に苛まれながらもどうにか仕事はできていたので、給料は貰える。かなり寒々しかった財布がどうにか息を吹き返し、俺はまた彼女のもとを訪れる。
 やはり無人の風俗店、いつもの小部屋で抜いてもらって料金を支払った後。いつもならそのまま俺を見送るはずのカスカが急に口を開いた。

「実は私、お客様のおかげでようやく実体化できたんですよ」
「は? ジッタイカって、なんだ?」
「ようやくこの身体で、お客様を愛してあげられるということですよ。
 ねえ、もし良かったら私のこと、このお店から買い取ってみませんか?」

 この申し出は恐らく、昔の遊郭で言うところの身請け。つまり今、カスカは俺だけのものになりたいと、俺のものになってくれると、そう言ってくれている。
 事態を認識するやいなや、俺は一切悩まず財布を取り出し、中にあった紙幣をありったけ見せた。

「これで足りるか。いや、ダメだろうな。でも預金はもっとある、すぐにでも引き出してきてやる。
 クレジットカードもあるぞ。一体いくらだ。絶対揃えるから、金額を教えてくれ。借金でもなんでもしてやる、腎臓でも肝臓でも売ってやるよ」

 そうまくし立てると、カスカは晴れやかに笑って俺の首に手を回し、軽くキスした。耳元に顔を寄せ、喜色を隠しきれぬまま囁く。

「ありがとうございます。そう言って下さるって、信じてました。私のこと、愛してくれるって……信じてました。
 それじゃあ今から、お客様じゃなくてご主人様ですね。ふふ……私、私のことを好きになって、夢中になってくれたご主人様にお礼がしたいです」

 そっと俺をマットへ押し倒し、腰を挟んで膝立ちになる。キャミソールの裾を抓んで股が見えるか見えないかくらいのところまで捲ってみせる。彼女が今から何をしてくれようとしているのか、既に明白だった。具体的な金額を言わなかったことや、先に言っていた奇妙な単語のことなど忘れるまでに期待感を煽られてしまう。

「いいですよね? ご主人様の精液、中に欲しいんです。今までと違って、この身体で、感じたいんです」
「ああ、いい、いいよ。ダメなわけ無い。愛してるよ、カスカ」

 そう聞いた彼女は赤い両眼を少し潤ませて、それからじっくり腰を落としてきた。
 亀頭の先に濡れた粘膜が当たる。少しひんやりした感触が気持ちいい。男性器を少しだけ受け入れた膣がどろりと潤滑液を溢れさせた。

「濡れてる……? もう、こんなに」
「だって、ふふ、ずっと欲しかったんです。身体、やっと貰えて……嬉しいんです。
 もう、妄想なんかじゃありません。現実です。私とご主人様、二人だけの現実……ああ、素敵!」

 奇妙な台詞を言いながらカスカは身体を落とし、膣で男性器を根本まで咥え込んだ。
 胸や口で抜いてもらうことは今まで何度もあったが、彼女とこうしてセックスするのは初めてである。店の形態から言って当然のことだ。
毎回激しく射精させられながらも興味を捨て去れなかった、カスカとの本番、生での子作り。激しく締まる肉の感触が実感をもって襲ってくる。じっとり濡れた柔肉に扱き上げられて思わず喉を反らすと、かなり余裕の無さそうなカスカが言った。

「どう、ですか? 私の、きついですか? 気持ちいい、ですか?」
「すごい、いいよこれ……ぎゅうぎゅうして、やばい……!」
「あふ、うれしいです。私、初めてだから……胸も口も、ご主人様にしか使ってあげたこと無かったから……こっちでもご主人様のために、がんばりますねっ」

 予想外の言葉を聞いて脳内の血流量が増した。確かに彼女は初めてと言った。
 確かに本番行為を提供する類の店ではないとはいえ、普通、風俗嬢が処女を守っている筈は無い。当たり前の話だ。「清純派AV女優」じゃあるまいし、ヴァージンの売春婦なんて笑い話にもならない。
 しかしカスカの言葉は素直に信じることができた。特にこれといって信頼出来る根拠は無いが、彼女が俺に嘘をつくことは絶対にあり得ないような気がしたのだ。
疑問も持たず反論もしないでいると、上に跨るカスカが満足げに言った。

「そうです。信じて下さいね、私のこと。私だけはご主人様を、絶対裏切りませんからね。私を呼んでくれた貴方を悲しませたりなんか……絶対しませんからね」

 言い捨てて彼女は、また激しく腰を上下させ始めた。
 狭い膣道で竿を摩擦され、既に一度抜かれているにもかかわらずまた感じさせられてしまう。身体全体を震わす騎乗位搾精の、そのダイナミックな動きでキャミソールの両肩紐がずり落ち、とすんとすんと重そうに揺れる巨乳が顕わになる。
 血が通っていないのかと思えるほどに白い乳肌、その上で可愛らしく勃起した真紅の乳首が鮮烈な印象を残す。むっちりした質感のそれに、思わず吸い付いた。

「ひゃっ……! おっぱい、そんな吸っちゃ……!」

 上に跨って腰を振って責めているつもりだったらしいカスカは不意の乳首への攻撃で可憐に喘ぐ。コリコリした乳頭を甘噛みして、彼女が俺の精液を啜るときのように頬を凹ませて乳腺を刺激してみる。母乳は出なかったが、反応は最高だった。

「や、だめ、まだ、おっぱい……ミルクなんか、出ませんよぅ……!」
「いいじゃないか。美味しいぞ、カスカのムネ」
「でも、そんなに乳首いじめられたら、私もイっちゃ……!」

 小さな美少女に屈服させられそうな所でそんな可愛い台詞を言われたら、もう手心を加える訳にはいかない。
 痕が残りそうなくらい強くおっぱいを吸い、更にそのたっぷりの乳脂肪を右手で揉みしだく。乳を搾って乳首を吸う、それはまさしく搾乳。
 大きくて柔らかくて卑猥な胸乳を虐めるとカスカの動きが益々激しくなり、俺に咥えられたままの乳首は強く引っ張られて一層強く刺激される。上下同時に感じさせられた彼女の女陰は湿り気と熱と細かい襞でもって竿を擦りたて、我慢汁とそれに続くもっと濃厚な液体を出させようとする。

「あぅ、ら、だめ、こんなされたら、わたしもう!」
「俺ももう……中で、いいのか?」
「はひ、中、ナカじゃなきゃ嫌! ご主人様の、私の、本当の身体に……!」

 どの道カスカのおっぱいを吸いながらでは外に出し様が無いし、こんなに乱れてくれている彼女を押しのけるつもりも無い。カスカが身体を少し倒し、俺の身体に抱きついて顔にその巨乳が押し付けられた時、そのまま子宮へ精液を放った。
 一回目に出した以上のザーメンがカスカの膣内へ注がれる。きつきつのおまんこの中で竿が跳ねて二度、三度と射精する。深く繋がり合って種付けされて、俺を掻き抱きいてカスカは痙攣する。シミ一つない綺麗な背中にうっすらと汗を浮かせ、大きく肩で息をしている。
 小さな体が性感に狂ってバラバラに分解してしまうんじゃないかと急に怖くなって彼女を抱きしめると、膣奥の精子がどろりと逆流してきてマットを汚した。

「はぁ、はぁ、これが生の身体……これが、いくってことなんですね……本当に凄い、妄想なんかとぜんぜん違う……」
「俺も気持ちよかったよ。最高だ、カスカ」
「……じゃあ、もっと私として下さい。抱きしめて、妊娠するまで中に射精して下さい。
 私はもう二度と、ご主人様から離れませんから。あんな寂しい思いは、一生、させませんから。
 だから私のこと、犯して……ぐちゃぐちゃにして、ください……」

 断る理由など、何一つ無い。俺はカスカと繋がったまま、今度は逆に彼女をマットに押し倒す。正常位の体位に移り、両脚を抱えて股を開かせて、まだ萎えていなかった男性器を力任せに突き込んだ。

「ひ、い、いい、これいいです!もっともっと、して、ずっと私と、私だけと……」

 断る理由など一つも無い。俺はもう、彼女のためなら二度と朝日が拝めなくても構わないと、そう言い切れるくらい悩殺されてしまっていたのだから。
 これからは、まるで妄想のような、二人だけの世界が俺達にとっての現実だ。他のことは全て、きっとありもしないことなのだろう。
13/11/17 00:00更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
私が風俗で学んだことが一つあるとすれば、それは「安物買いの銭失い」というフレーズの正しさでしょうね。

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