渇望
学校が終わった後、ゲーセンやら買い食いやら本屋の立ち読みやらで家に帰るまで散々時間を潰していく同級生は少なくないらしいが、なぜ彼らはそうまでして帰宅したくないのだろうか。
待っていてくれる人が誰も居ない家というものは、そんなにも居心地の悪いものなのだろうか。あるいは、できるだけ顔を合わせたくない相手が家にいるのだろうか。
いずれにしてもおれには縁の無い話だな、などと、ちょっとした用事を済ませた後の昼休み、教室で自分の机に座ってつらつらと考えてみても、昼食というものをあまり必要としないおれにとって一時間という真昼の空白はもて余しがちだ。
家にいる間の時間は瞬く間に飛び去ってしまうというのに、一人で外へ出てしまうと次に帰宅するまでが恐ろしく長い。
ついこの間の球技大会以来、帰宅部員のおれを何とか引きこもうと運動部員、特に団体競技に勤しむ者たちが勧誘にやってくることもあって、そんな時にはこの無聊もわずかに紛れるのだが、今日に限ってはそれも無い。来る人来る人全員に何故運動部へ入らないのかと問われ、その度に、「集団行動というものが性に合わない。誰かに命令されるのもするのも嫌いだ」と返答していたせいかもしれない。
9割の真実を含んだフレーズは熱心なスポーツ青年たちの間に素早く広まり、昨日などは剣道部など個人競技を行うクラブの者たちが勧誘にやってきたが、何をやっていようと運動部だという時点で先輩後輩のしがらみや休日にまで及ぶ拘束などから無縁ではいられない。そのことを当の武道部員たちも重々承知してくれていたため、説得するのは容易かった。
この学校の文化部が全体的に不活発で、新入部員獲得に熱心でないのは、おれにとって幸運なことだった。
そんな、ただただひたすら退屈な学校生活を終えて放課後。おれはいつもどおり真っ直ぐ家路についた。
朝から夕方まで姉さんのことばかり考え通しで、他の人間との関わりに興味を持てなくなってきている自分を認識して、
「これはやばい。今のおれには社会性というものが全く無いぞ。世の中がおれみたいな人間ばっかりになったら、きっと世の破滅だ。なるほど近親相姦がタブー扱いされるわけだよ」
なんて考えたりしたのも昔のこと。今のおれはシスコンであることに何の躊躇も無い。
自宅へ帰り着き通学カバンを自室に置いて手早く着替え、足早に部屋を出る。向かうのは廊下の反対側、愛しい恋人にして実の姉、千草姉さんの部屋だ。
軽く声を掛けると同時に扉を開けると、やはりいつもどおり黒衣をまとった姉さんが眼前、ベッドの上に腰掛けておれを待っていた。
「おかえりなさい。今日もちゃんと、寄り道しないで帰ってきたわね」
「ん。早く、千草ねえに会いたくてな」
嘘偽りの無い心情を述べると姉さんは優しく微笑んでくれる。姉さんにおれ自身をまた味わってもらうため、絨毯の敷かれた床へ膝を付き、首を反らして喉を晒した。
身長の割に座高の低いおれは、この体勢を取ることでベッドの上の姉さんと丁度同じくらいの高さまで目線を下げられる。完全に調教されきった感じの行いにどこまでも満足げな姉さんは、真っ赤な唇を薄く開き、おれの首筋、太い総頸動脈が走っている辺りにキスしてきた。
瞬間、皮膚から神経へ走る疼痛。表皮が穿たれ血管に亀裂が生じる、その感覚がおれの脳を快楽で満たす。太い動脈に食い込む鋭い牙は、人間のものとするにはあまりに獰猛で。
おれの首から流れでた血液は空気に触れることも、滴り落ちて姉さんの部屋を汚すことも無い。全ておれの実の姉が飲み干してしまっているからだ。こくんこくんと肌から肌へ伝わる小さな嚥下音や微かに上下し動く白い喉からそれは知れる。
姉さんは吸血鬼なのだ。
一体それがいつのことだったのか、あまり良く覚えていない。
かつては姉さんも、弟たるおれと同じく日本人らしい黒髪と黒い瞳を持っていたはずである。その頃の曖昧な記憶は無いでもないが、しかし今の、月光のように儚く繊細な金髪や、夕焼けのように赤く不穏な瞳が余りにも美しすぎて余りにも似つかわしすぎて、吸血鬼でなかった頃の姉さんを思い出すのは容易ではない。
昔から、姉さんには結構可愛がってもらっていたように思う。が、姉弟という関係を超えて愛しあうようになったのは、姉さんが人間を辞めてこうなってからだ。おそらくそこには何らかの因果関係が存在するのだろうが、詳しいことはよく分からないし知ったところで別に大した意味も無いだろう。重要なのは今、おれ達が人間より遥かに優れた存在であるということだ。
そんな思考も、姉さんに血を吸って貰えるという極上の快楽に塗りつぶされていく。
人の血管の中でもかなり太い部類に入る総頸動脈に穴が空いているため、失われる血量も少なくはない。しかし自分の身体から生命の源が流出していくということ、それらが他でもない、血の繋がった姉さんに啜られているということ、その姉さんに強く情熱的にキスされているということ、自分の首筋から姉さんの唾液が流れ込み動脈血に乗って脳から全身へ回っていくことなどが、おれの魂を清めていく。余計なことを流し去って姉さんだけを残していく。
心地良い麻痺へと溺れていくおれに、姉さんは静かに問いかけてきた。
「さあ、話しなさい。今日学校であったことを、全部」
女性にしてはちょっと低めなハスキーボイスが、今まさに失血の法悦の只中にあるおれに大きな強制力を持つ。囁かれている内容以上に、誰よりも美しい実の姉に耳元で囁かれているという事そのものがおれの心を解きほぐし、姉さんの言いなりにしてしまう。
命じられるがままに語り出すが、何の団体にも組織にも所属せずつるむ相手も少ないおれに語れることなどそう多くはない。せいぜい、昼休みに女子生徒に呼び出されて告白されたことぐらいだ。
その件について語り始めると姉さんの表情が険しくなった。
女絡みの話をするといつも姉さんはこういう反応をする。愛する相手にちょっかいかけてくる相手が未だに後を絶たないという事実に憤りを感じているようだが、一方で、その男を独占できているということを再確認できて嬉しいようでもある。いつもどおり、告白を断ったと告げるだけで一気に姉さんの表情が緩むことからも、それはある程度推察できる。
それはきっと、光に晒せば素材が劣化し、人目に晒せば盗難や破損の危険が高まるということを重々承知していながら、それでも人を呼んで自分の集めたものを披露せずにはおれない美術品収集家のような心持ちなのだろう。
とっくの昔に吸血鬼の眷属と化したおれにとって、人間たちが成熟のため通う学校へ所属し続ける意味はあまり無い。もし親が居れば、いろいろな理由で通学を強制するということもありうるのだろうが、どういうわけか彼らは滅多にこの家へ帰ってこないし、帰ってきたとしてもおれたちと顔を合わすことは極めて稀だ。どうも姉さんが何かしたらしいが、よくは知らないし知る気もない。
そんなわけで、姉さんがおれに高校生活を送らせているのはつまり人間たちにおれを見せびらかしたいからではないかと思っている。最低でも人間並みの教養と知性を持ちあわせて欲しいということも勿論あるのだろうが、それならそれで他にいくらでも方法はある筈だ。
まあ、そんなことはどうでもいい。姉さんの望みが何であろうと結果は同じだ。
おれは毎日姉さんに貪られるのだから。自分の体の一部を賞味される感覚がこれほど心地いいとは、経験の無い人には分かるまい。
眠りに落ちる寸前のような浮遊感、射精直後のような虚脱感、激しく運動した後のような熱気、それらがない混ぜになった感覚は他にはなかなか例えにくく、まさしく姉さんに吸血される快感としか呼べない。
もうかなり長いこと、食事も水も摂っていない身体はほとんど姉さんの体液だけで構成されているといっていい。そんなおれにとって、血を吸われたりセックスしたりして姉さんと触れ合うという事は、人間での食事に相当するのだろう。吸血されている時の、まるで「生き返るような」快感も、これなら説明がつく。ヴァンパイアの眷属にこのフレーズが相応しいか否かは、ともかくとして。
一体どれくらいの時間がたったのかも分からないほど陶酔させられ、ようやく姉さんはおれを解放した。吸血鬼が唇を離すと、首の傷は瞬時にして癒え塞がり、余計な血を零すことは無い。普通の人間の数百倍を優に超える回復力は既にお馴染みで、今更恐れることもない。これも、姉さんから与えられた力の一つだ。
唇に残った血の雫を舌で舐めとり、姉さんが微笑む。そんなちょっとした仕草も、おれを滾らせ奮い立たせてしまう。
「今日も美味しかったよ。やっぱり私の弟は、特別なんだね」
「いや、特別なのは千草ねえだよ。千草ねえがおれを、こういうふうにしてくれたんだろう」
姉さんに血を吸われるようになって以来、おれは前とは比較にならないほど変わった。
食事も水も全然必要無いし、病気にも掛からない。身体能力や頭の回転は、同年代は疎か大人すら軽く凌ぐ。積極的に行使したことは無いが、どうも魔法のような、人間には使えない不可思議な力も備わったらしい。
多くの人間を寄せ付けてしまうこれらの能力は姉さんに与えられたものだと知っているために、誇ったり驕ったりする気には全くならない。その態度がまた他人にとって魅力的に写ってしまうらしいがあまり興味は感じない。
姉さんの言うには、これらの現象はおれが「貴族」になったゆえの事らしい。貴族というのが一体何なのかは未だによく知らないが、ただ姉さんと一緒にいられるという点のみで、それは受け入れるに値した。
「そうよ。あなたを、私好みの弟にしてあげたの。嬉しいでしょう?」
「ああ。姉さんに好かれるのは……好かれるようになれたのは、本当に嬉しいよ」
「可愛いこと言うのね。じゃあ、こんなふうに愛されるのも……?」
姉さんがおれの胸を人差し指で優しく突く。ほとんど力が入っていないにもかかわらず抗いがたいその行動で両脚を投げ出した体勢で床に座ることとなった。
一体どこから調達してきたのやら、吸血鬼になって以来、姉さんは今のような、上半身は白いブラウスのような薄い着物、その上に黒い上着のようなものをまとい、両腕には上腕骨中程まで届く丈の長い黒い手袋を、両脚にはつま先から無駄な肉の無いほっそりした太腿までを包む、やはり真っ黒なニーソックスを身に着けてはいるが、スカートやズボンの類は全く着ない。
上着とブラウスの裾が濃い目の橙色に彩られ、長めに造られていることでスカートの代役を果たしてはいるのだが、結局のところそれは、一般に言う「裸ワイシャツ」とそう変わらない。
床から見上げる形となったおれの位置からは、姉さんの股の間が垣間見えそうで、一気に情欲を高められてしまった。姉さんは今日も、下着をつけていなかった。
「ほら、ほら。こんなの、どうかな」
吸血の性感とチラ見せの誘惑とですっかり硬くなってしまったおれの陰茎を、ズボンの上から姉さんは軽く踏みつける。布越しに伝わる柔らかい足裏の感触に、おれは夢中になった。
「気持ちいいんだ。脚で踏まれても、おちんちん勃起させちゃうんだね……変態ぼーや」
坊やなんて年齢じゃないんだが、姉さんの言うことを否定する気など毛頭無い。股間を踏まれて気持ちよくなってしまっているのは事実なんだし、第一、年上の綺麗なお姉さん、それも血の繋がった相手に優しく言葉責めされて不快になる男なんていないだろう。
抵抗する様子を全く見せないおれを見て姉さんはますます調子づく。あまり他では見かけない奇妙な装飾が施された漆黒のニーソックスは、室内の光を怪しく反射し、姉さんの引き締まった長い脚の魅力を何倍にも高める。おれの足と同じ器官だとは到底思えない、不思議に柔らかいそれが軽く圧力を掛けると、もう先走りが漏れた。
「ふふ。だいぶ感じちゃってるね。じゃあもっともっと、してあげる。逃げちゃダメよ」
言われるまでもなくおれは姉さんの足裏がもたらす快感の虜だ。透明な我慢汁を漏らしている真っ最中だ。足で踏まれて絶頂してしまうのももう間近だ。
そんなおれを見下ろして姉さんが笑う。ちょっと冗談めかして、足コキの快楽に溺れているおれへ問いかけてくる。
「足で踏まれて感じちゃうなんて。お姉ちゃんのすることなら、弟君はなんでも気持ちよく感じちゃうのかな?」
「ああ……姉さんがおれにしてくれることなら、なんでも……」
「へぇ……じゃ、痛くしたり、傷つけたりされても、嬉しいのかな?」
それはやはり、どこまでやるかという程度の問題ではなかろうかと思ったが、もとより姉さんに隠し事など出来ない。思うがままに吐露した。
「どうだろう。怪我したりするようなのは、ちょっと嫌かもしれないけど……でも、姉さんがおれを愛してそういうことしてくれるなら、それもありかもしれないな。
やっぱりおれは、姉さんに愛されるのが気持ちいいんだよ」
ちょっとクサいセリフだったが、それでも姉さんはお気に召したらしい。にっこり笑って、その綺麗な足でおれのものをむにむにと刺激しながら、囁いてくれた。
「……良い返事ね。じゃあ、いっぱいいっぱい愛してあげる。私しか見えないようにしてあげるから、余計なことなんか何にも考えないで、お姉ちゃんに溺れてね……」
言われなくとも既に手遅れである。扱かれたというのにも程遠い、服の上からふみふみされただけでイきそうになってしまっているおれは魂の底まで姉さんの思うがままだ。
何十回目かの刺激で、遂に限界が来た。下着の中が窮屈に思えるほど勃起した男根の先に足の親指が触れ、カウパー氏腺液が分泌されている鈴口とその下側の裏筋が汚れない足裏に踏みつけられ、布越しにさすられた時、おれは我慢しようと思うより先に射精していた。
「あ、出た……パンツとズボン、ベタベタだね」
姉さんに踏まれるまま服の中に射精してしまったせいでおれの下着はもうドロドロだ。毎日姉さんとセックスし続けてじわじわとその量を増す精液はおれの下半身を汚していく。着衣のまま絶頂させられ、ズボンにシミを付けていく最中も姉さんの足でいじめられ続け、学校にいた間に溜め込んだ精液を残らず搾り取られてしまった。
数十秒続いた射精の後、汚れきったおれの衣服を姉さんはすぐに脱がせてくれた。
パンツとズボンを一度にずり降ろされた時、足でイかされてもまだ萎えていないおれの陰茎が勢い良く飛び跳ねてその剛直を示した。浅ましく近親相姦を求め続けるその反応に少し恥ずかしくなってしまったが、姉さんはそれを見て喜んでくれているようだった。
「あんなに出して、まだ元気なのね。本当にいい子……。いい子には、ご褒美をあげないと」
上着のボタンを外し、ブラウスを大きく上へ捲りあげて下乳を晒し、姉さんはベッドから降りてこちらへ這い寄ってくる。おれの両脚の間に跪き、精液に塗れた男根を躊躇いなく掴み、服の中、大きな胸の谷間に誘い入れた。
本来ゆったりした服であるはずのブラウスを内側からパツンパツンに膨らませている巨大なおっぱいに左右から挟み込まれて、おれは悶絶した。
ブラジャーなどという無粋なものを端から身に着けていない姉さんの乳は、狭い服の中、男性器が差し込まれたことで更に窮屈になった空間に満ち、真ん中へ向けてむちっとした甘美な圧力を掛けている。まだ姉さんは手を触れてもいないのに、ただ胸に挟まれているだけでもすぐに達してしまいそうだった。
「気持ちいい? ……気持ちいいよねえ。そんなにだらしない顔してるんだもの。お姉ちゃんにコレされると、いっつもそうなっちゃうんだよねえ」
微かに嘲るような姉さんの言葉に口答えする気も起きない。だいたいおれが姉さんのパイズリで骨抜きにされるのはいつものことだし、姉さんがそうしようとしているのだから、おれがそうなるのはごく当たり前のことなのだ。
そしていよいよ、姉さんが両腕を持ち上げてその大きすぎるおっぱいを掴み、中心へ向けて圧迫しながら左右交互に動かし、おれ自身を責め立て始めた。
滑らかな乳肌にじんわり浮かんだ汗とさっき出した精液が交じり合って上手い具合に潤滑液の役目を果たしている。ぬるぬるの実姉巨乳で挟まれ擦られして、どうせ長くは耐えられない。余計なことは全て忘れておれは胸乳快楽のみに耽る。
んしょっ、よいしょと可愛く呟きながら姉さんは懸命におっぱい奉仕してくれる。白い服の中、自分の生殖器が一体どうなっているのか、どんな風に弄られ、あの美巨乳に揉みしだかれ挟まれ苛められしているのかは全く見えないが、それがまた一段とおれの興奮を煽る。男性器をまるごと包んでしまえる大きくて柔らかいおっぱいが敏感なカリ首を全方位から圧迫し、裏筋を乳脂肪が撫でて高まりきった性感を更に刺激する。恐らく我慢汁を漏らし、遠からず白濁液をも吹き出してしまうであろう亀頭の鈴口が今、あの乳の海の中でどうなっているのか知らされないまま凄まじい快感だけを与えられてしまうと、このパイズリ遊びに屈服する以外の選択肢はおれから一切奪われる。
姉さんのためにすべての自由意志を放棄したおれを更に苛むべく、姉さんは片手で首のリボンを解き、胸元を少し開いた。ここへ来ての突然の胸チラにおれはまた股間が熱くなるのを感じたが、姉さんの狙いはそこには無かった。
左右のおっぱいを動かし続ける手は全く休めないまま、姉さんは軽く首を下げて、数回頬を小さく膨らませたと思うと、胸の谷間、今にも射精しそうなおれのものへ向けてたっぷり、唾液を垂らしてきたのだ。
普通の水に比べて粘度の高い唾液は、汗や精液と交じり合う事で、まるで天然のローションの如き効果を発揮する。乳と陰茎との摩擦係数を最低まで下げることで姉さんのパイズリは今まで以上の快楽をもたらす。
さらに、自分の生殖器に姉さんの唾を塗りたくられること、自分の最も大切な部分に愛しい人の唾を掛けられる倒錯的な快感が、おれの忍耐力を粉砕した。
ちょっとネトつく実の姉のツバを直接口から垂らされて、微かに震えるほど感じてしまっているおれを吸血鬼は見下す。どこか酷薄な、薄い笑みを唇に浮かべ、無言のままに屈従を強いる。不死の王に魅了されきったおれはまるで人形のごとく、ただ彼女の嗜虐心を満たすためだけに悶える。
乳と汗と唾で愛撫され尽くした陰茎はもう一秒たりとも我慢出来ない。一度ため息をつくと、すべてを悟った姉さんは左右の圧迫を強め、亀頭周りを重点的にぎゅうっと責めてくれた。強すぎる姉乳の抱擁が、とどめの一撃となった。
一回目、足踏み遊びで出した時よりも更に大量の精液が姉さんの谷間に溢れる。おっぱいに強くホールドされていても構わず暴れる肉茎は乳内射精に飽きたらず、白いブラウスに醜いシミを付け、床の絨毯まで汚した。
射精が終わるまでの間ずっとおっぱいを離さないでいてくれた姉さんは自分の服にぶっかけられてとても嬉しそうだ。まだらに透けた服の向こう、大きなおっぱいとそれが作る谷間がどれほど白く染まっているのか、想像しただけでもう萎えられない。
ブラウスの裾からポタポタと白濁を垂らし、腹の方まで精液に汚されながら、姉さんはやっとおれをムネから解放した。といって、これで終わりの筈は無い。
「胸だけでこんなに出しちゃうなんて、ヘンタイだねえ本当。ものすごい乳フェチなんだね」
「千草ねえのおっぱいがエロ過ぎるからだよ……」
「調子いい事言ってもダメだよ。お姉ちゃんもちゃんと、気持ちよくしてくれなきゃ……」
そう言って、おれの両肩を掴み、床へと押し倒してくる。絨毯のおかげで寝転んでいても痛くはないが、せっかくベッドがあるのだからその上でしようよと言いたかったが、もう姉さんは止まれないようだった。
「そろそろ、硬くてぶっとい弟チンポ、お姉ちゃんに食べさせてね……今日もたくさん、中出ししてくれなきゃ、イヤだからね」
おれを組み伏せ、腰を跨いだ姉さんは四つん這いになって、腰を降ろしてくる。上着の裾に隠れてぎりぎり見えない女性器からは粘ついた水音が早くも聞こえる。亀頭の尖端に熱く湿ったものが触れた、と思ったら、一気に包み込まれた。
「ふうぅっ……! 今日も、おっきいねえ……!」
「千草ねえ、きつい……!」
ゴシック風の衣装を着たままの姉と交わるのはおれにとって珍しくもないことだが、しかし飽きる気配は一向に無い。装飾的で華美で耽美的な服を着た姉さんは最高に魅力的で、どうしても中出しせずにはいられないのだ。
おれを咥え込んだ姉さんは最初から一気に腰を上下させ始める。精液と愛液で二人とも股間をぬるぬるにしていたお陰でとても滑らかな、しかも強く吸引されるような魔性の女性器をたっぷり楽しめる。騎乗位で体を激しく動かす姉さんの服の裾が捲れて、ちらちらおまんこが見えるのもまた興奮と感度を高めてくれる。
「はあ、はあ……千草ねえ、今日もエロいよ……そんな、裸みたいな格好で……!」
「あ、う、こーふん、する? ひっ、お、お姉ちゃんで、おちんぽ、またいっちゃう……?」
「もうたまんないよ。……またすぐ、出しちゃうよ」
「やっ、あっ、う、うれしい、ああもう、好き好き、大好きっ……!」
どうせ今日も朝まで何度もセックスするのだから、遠慮は要らないとばかりにおれを貪っていた姉さんが不意に、感極まったように身体をこちらへ倒してきた。一体何を、と思う間も無く、唇を奪われる。
騎乗位セックスは止めず、更に唇を重ね合おうとする姉さんの貪欲さはおれにとって何より好ましい。それだけ強く求められているということなのだから、男として奮い立たない道理が無い。
強引にキスしてきた姉さんは唇が触れるや否や、舌を挿し込んでくる。こちらもそれに応えて、互いを味わいあう熱烈なべろちゅーへと突入する。
舌と舌とを絡めあい、唾液を飲ませあい口腔を蹂躙しあうディープキスは、姉と弟という関係でして良いものではない。世間の道徳に背を向け実の両親すらも遠ざけて初めて口にする実姉のツバは例えようがない程美味だ。
綺麗なお姉ちゃんに犯され、ちゅうちゅう水音が鳴るほどの激しいキスで酔わされ、思考能力をほぼ手放しかけているおれへの追撃が来た。舌の上に走った、鋭い感覚だ。
姉さんの牙で切られたのだと知った瞬間、口から口へ吸血される凄まじい快感が魂を揺らした。敏感な口内から、姉さんの口で直接血を吸われることで普段の首からの吸血より遥かに大きな快楽が生まれたのだ。
ずるずると淫らな水音を立てて姉さんは唾と血液を啜っている。頬の裏や舌の上をねぶられるだけでも射精してしまいそうに気持ちいいのに、その上血など吸われたら、もうどうしようもない。さっき絶頂したばかりのおれは二度目の限界が近いのを感じた。
イきそうなのはおれだけではなく、姉さんの方も吸血と近親相姦の快楽で限界まで蕩けてしまっているらしい。より一層腰の動きを激しくし、精液を搾り取ろうとしながらも口からは血を啜り上げる。キスと吸血とセックス、三重の快楽がおれの理性を完全に押し流した。
「……ねえは……!」
「あむ、うじゅるる……! らひて、せーひ、なはに……!」
言葉を交わすのももどかしく二人は上り詰めていく。何十回目かのピストン、膣が陰茎を根元までぎゅっと咥え、姉さんが頬を窄ませていやらしい顔で血と唾を飲み下した時、おれは達した。
実の姉の子宮に中出し。許されない行為はやめられない気持ちよさで、おれを支配する。きつくて狭い膣に締め付けられて逃れようもなく膣内射精する快感は倫理その他のしがらみを捨て去るに充分値する。
「千草ねえっ……!」
「うぅぅぅっ……! い、イく、イっひゃう……!」
姉さんにとってもそれは同じだ。床についた膝で器用にもおれの腰を挟み込み、がっちり捉えて逃さないように、中出し以外絶対できないようにしているのだから間違いない。こちらに膣外射精の意志など毛頭無い事を分かってはいても、種付けと妊娠を望む本能がそうさせるのだろう。
姉弟でイチャイチャしてキスしてペッティングして吸血してセックスする。どんなにいけないと言われたって絶対にやめられない。無理をしたらきっと精神が壊れてしまう。
吸血鬼だとか人間だとかは関係無い。おれ達にはお互いが必要で、それ以外のものは別に要らないと、そういうことなのだ。
男性器を抜く気分にもなれず、おれ達は床の上で抱きあい続けていた。中に出した精液が、わずかに子宮から漏れでて二人の会陰を汚しているのが、酷く卑猥だった。
翌朝。
昔、本で読んだ伝承とは異なり、散々姉さんに血を吸われ続けていても、未だおれは吸血鬼にはなっていないらしく、太陽の光を好まず夕方から夜を主な活動時間とする姉さんと違って朝も普通に起きられる。手早く身支度してまたいつもどおり学校へ向かうことにする。
出来ればいつも姉さんといっしょにいたいのだが、姉さんがおれに通学を望んでいるのだから仕方ない。学校へいこうがどこへいこうが、姉さん以上に魅力的なものなど絶対見つからないというのに。
まあ、会えない時間が愛を育むことも有ると聞く。昼の間ずっと姉さんに焦がれておれが悶々とするのも、また姉さんの楽しみなのかもしれない。ならば、そんなままならない感情と戯れるのも悪くない。
どうせおれたちに与えられた時間は永遠だ。欠食児童の如く貪らなくても、快は味わい尽くせぬほどにある。おれはただ帰宅後の長い遊び時間を楽しみにしていればいいのだ。おれにとっては姉さんこそが、最愛なる全ての物なのだから。そう思って、家を出た。
待っていてくれる人が誰も居ない家というものは、そんなにも居心地の悪いものなのだろうか。あるいは、できるだけ顔を合わせたくない相手が家にいるのだろうか。
いずれにしてもおれには縁の無い話だな、などと、ちょっとした用事を済ませた後の昼休み、教室で自分の机に座ってつらつらと考えてみても、昼食というものをあまり必要としないおれにとって一時間という真昼の空白はもて余しがちだ。
家にいる間の時間は瞬く間に飛び去ってしまうというのに、一人で外へ出てしまうと次に帰宅するまでが恐ろしく長い。
ついこの間の球技大会以来、帰宅部員のおれを何とか引きこもうと運動部員、特に団体競技に勤しむ者たちが勧誘にやってくることもあって、そんな時にはこの無聊もわずかに紛れるのだが、今日に限ってはそれも無い。来る人来る人全員に何故運動部へ入らないのかと問われ、その度に、「集団行動というものが性に合わない。誰かに命令されるのもするのも嫌いだ」と返答していたせいかもしれない。
9割の真実を含んだフレーズは熱心なスポーツ青年たちの間に素早く広まり、昨日などは剣道部など個人競技を行うクラブの者たちが勧誘にやってきたが、何をやっていようと運動部だという時点で先輩後輩のしがらみや休日にまで及ぶ拘束などから無縁ではいられない。そのことを当の武道部員たちも重々承知してくれていたため、説得するのは容易かった。
この学校の文化部が全体的に不活発で、新入部員獲得に熱心でないのは、おれにとって幸運なことだった。
そんな、ただただひたすら退屈な学校生活を終えて放課後。おれはいつもどおり真っ直ぐ家路についた。
朝から夕方まで姉さんのことばかり考え通しで、他の人間との関わりに興味を持てなくなってきている自分を認識して、
「これはやばい。今のおれには社会性というものが全く無いぞ。世の中がおれみたいな人間ばっかりになったら、きっと世の破滅だ。なるほど近親相姦がタブー扱いされるわけだよ」
なんて考えたりしたのも昔のこと。今のおれはシスコンであることに何の躊躇も無い。
自宅へ帰り着き通学カバンを自室に置いて手早く着替え、足早に部屋を出る。向かうのは廊下の反対側、愛しい恋人にして実の姉、千草姉さんの部屋だ。
軽く声を掛けると同時に扉を開けると、やはりいつもどおり黒衣をまとった姉さんが眼前、ベッドの上に腰掛けておれを待っていた。
「おかえりなさい。今日もちゃんと、寄り道しないで帰ってきたわね」
「ん。早く、千草ねえに会いたくてな」
嘘偽りの無い心情を述べると姉さんは優しく微笑んでくれる。姉さんにおれ自身をまた味わってもらうため、絨毯の敷かれた床へ膝を付き、首を反らして喉を晒した。
身長の割に座高の低いおれは、この体勢を取ることでベッドの上の姉さんと丁度同じくらいの高さまで目線を下げられる。完全に調教されきった感じの行いにどこまでも満足げな姉さんは、真っ赤な唇を薄く開き、おれの首筋、太い総頸動脈が走っている辺りにキスしてきた。
瞬間、皮膚から神経へ走る疼痛。表皮が穿たれ血管に亀裂が生じる、その感覚がおれの脳を快楽で満たす。太い動脈に食い込む鋭い牙は、人間のものとするにはあまりに獰猛で。
おれの首から流れでた血液は空気に触れることも、滴り落ちて姉さんの部屋を汚すことも無い。全ておれの実の姉が飲み干してしまっているからだ。こくんこくんと肌から肌へ伝わる小さな嚥下音や微かに上下し動く白い喉からそれは知れる。
姉さんは吸血鬼なのだ。
一体それがいつのことだったのか、あまり良く覚えていない。
かつては姉さんも、弟たるおれと同じく日本人らしい黒髪と黒い瞳を持っていたはずである。その頃の曖昧な記憶は無いでもないが、しかし今の、月光のように儚く繊細な金髪や、夕焼けのように赤く不穏な瞳が余りにも美しすぎて余りにも似つかわしすぎて、吸血鬼でなかった頃の姉さんを思い出すのは容易ではない。
昔から、姉さんには結構可愛がってもらっていたように思う。が、姉弟という関係を超えて愛しあうようになったのは、姉さんが人間を辞めてこうなってからだ。おそらくそこには何らかの因果関係が存在するのだろうが、詳しいことはよく分からないし知ったところで別に大した意味も無いだろう。重要なのは今、おれ達が人間より遥かに優れた存在であるということだ。
そんな思考も、姉さんに血を吸って貰えるという極上の快楽に塗りつぶされていく。
人の血管の中でもかなり太い部類に入る総頸動脈に穴が空いているため、失われる血量も少なくはない。しかし自分の身体から生命の源が流出していくということ、それらが他でもない、血の繋がった姉さんに啜られているということ、その姉さんに強く情熱的にキスされているということ、自分の首筋から姉さんの唾液が流れ込み動脈血に乗って脳から全身へ回っていくことなどが、おれの魂を清めていく。余計なことを流し去って姉さんだけを残していく。
心地良い麻痺へと溺れていくおれに、姉さんは静かに問いかけてきた。
「さあ、話しなさい。今日学校であったことを、全部」
女性にしてはちょっと低めなハスキーボイスが、今まさに失血の法悦の只中にあるおれに大きな強制力を持つ。囁かれている内容以上に、誰よりも美しい実の姉に耳元で囁かれているという事そのものがおれの心を解きほぐし、姉さんの言いなりにしてしまう。
命じられるがままに語り出すが、何の団体にも組織にも所属せずつるむ相手も少ないおれに語れることなどそう多くはない。せいぜい、昼休みに女子生徒に呼び出されて告白されたことぐらいだ。
その件について語り始めると姉さんの表情が険しくなった。
女絡みの話をするといつも姉さんはこういう反応をする。愛する相手にちょっかいかけてくる相手が未だに後を絶たないという事実に憤りを感じているようだが、一方で、その男を独占できているということを再確認できて嬉しいようでもある。いつもどおり、告白を断ったと告げるだけで一気に姉さんの表情が緩むことからも、それはある程度推察できる。
それはきっと、光に晒せば素材が劣化し、人目に晒せば盗難や破損の危険が高まるということを重々承知していながら、それでも人を呼んで自分の集めたものを披露せずにはおれない美術品収集家のような心持ちなのだろう。
とっくの昔に吸血鬼の眷属と化したおれにとって、人間たちが成熟のため通う学校へ所属し続ける意味はあまり無い。もし親が居れば、いろいろな理由で通学を強制するということもありうるのだろうが、どういうわけか彼らは滅多にこの家へ帰ってこないし、帰ってきたとしてもおれたちと顔を合わすことは極めて稀だ。どうも姉さんが何かしたらしいが、よくは知らないし知る気もない。
そんなわけで、姉さんがおれに高校生活を送らせているのはつまり人間たちにおれを見せびらかしたいからではないかと思っている。最低でも人間並みの教養と知性を持ちあわせて欲しいということも勿論あるのだろうが、それならそれで他にいくらでも方法はある筈だ。
まあ、そんなことはどうでもいい。姉さんの望みが何であろうと結果は同じだ。
おれは毎日姉さんに貪られるのだから。自分の体の一部を賞味される感覚がこれほど心地いいとは、経験の無い人には分かるまい。
眠りに落ちる寸前のような浮遊感、射精直後のような虚脱感、激しく運動した後のような熱気、それらがない混ぜになった感覚は他にはなかなか例えにくく、まさしく姉さんに吸血される快感としか呼べない。
もうかなり長いこと、食事も水も摂っていない身体はほとんど姉さんの体液だけで構成されているといっていい。そんなおれにとって、血を吸われたりセックスしたりして姉さんと触れ合うという事は、人間での食事に相当するのだろう。吸血されている時の、まるで「生き返るような」快感も、これなら説明がつく。ヴァンパイアの眷属にこのフレーズが相応しいか否かは、ともかくとして。
一体どれくらいの時間がたったのかも分からないほど陶酔させられ、ようやく姉さんはおれを解放した。吸血鬼が唇を離すと、首の傷は瞬時にして癒え塞がり、余計な血を零すことは無い。普通の人間の数百倍を優に超える回復力は既にお馴染みで、今更恐れることもない。これも、姉さんから与えられた力の一つだ。
唇に残った血の雫を舌で舐めとり、姉さんが微笑む。そんなちょっとした仕草も、おれを滾らせ奮い立たせてしまう。
「今日も美味しかったよ。やっぱり私の弟は、特別なんだね」
「いや、特別なのは千草ねえだよ。千草ねえがおれを、こういうふうにしてくれたんだろう」
姉さんに血を吸われるようになって以来、おれは前とは比較にならないほど変わった。
食事も水も全然必要無いし、病気にも掛からない。身体能力や頭の回転は、同年代は疎か大人すら軽く凌ぐ。積極的に行使したことは無いが、どうも魔法のような、人間には使えない不可思議な力も備わったらしい。
多くの人間を寄せ付けてしまうこれらの能力は姉さんに与えられたものだと知っているために、誇ったり驕ったりする気には全くならない。その態度がまた他人にとって魅力的に写ってしまうらしいがあまり興味は感じない。
姉さんの言うには、これらの現象はおれが「貴族」になったゆえの事らしい。貴族というのが一体何なのかは未だによく知らないが、ただ姉さんと一緒にいられるという点のみで、それは受け入れるに値した。
「そうよ。あなたを、私好みの弟にしてあげたの。嬉しいでしょう?」
「ああ。姉さんに好かれるのは……好かれるようになれたのは、本当に嬉しいよ」
「可愛いこと言うのね。じゃあ、こんなふうに愛されるのも……?」
姉さんがおれの胸を人差し指で優しく突く。ほとんど力が入っていないにもかかわらず抗いがたいその行動で両脚を投げ出した体勢で床に座ることとなった。
一体どこから調達してきたのやら、吸血鬼になって以来、姉さんは今のような、上半身は白いブラウスのような薄い着物、その上に黒い上着のようなものをまとい、両腕には上腕骨中程まで届く丈の長い黒い手袋を、両脚にはつま先から無駄な肉の無いほっそりした太腿までを包む、やはり真っ黒なニーソックスを身に着けてはいるが、スカートやズボンの類は全く着ない。
上着とブラウスの裾が濃い目の橙色に彩られ、長めに造られていることでスカートの代役を果たしてはいるのだが、結局のところそれは、一般に言う「裸ワイシャツ」とそう変わらない。
床から見上げる形となったおれの位置からは、姉さんの股の間が垣間見えそうで、一気に情欲を高められてしまった。姉さんは今日も、下着をつけていなかった。
「ほら、ほら。こんなの、どうかな」
吸血の性感とチラ見せの誘惑とですっかり硬くなってしまったおれの陰茎を、ズボンの上から姉さんは軽く踏みつける。布越しに伝わる柔らかい足裏の感触に、おれは夢中になった。
「気持ちいいんだ。脚で踏まれても、おちんちん勃起させちゃうんだね……変態ぼーや」
坊やなんて年齢じゃないんだが、姉さんの言うことを否定する気など毛頭無い。股間を踏まれて気持ちよくなってしまっているのは事実なんだし、第一、年上の綺麗なお姉さん、それも血の繋がった相手に優しく言葉責めされて不快になる男なんていないだろう。
抵抗する様子を全く見せないおれを見て姉さんはますます調子づく。あまり他では見かけない奇妙な装飾が施された漆黒のニーソックスは、室内の光を怪しく反射し、姉さんの引き締まった長い脚の魅力を何倍にも高める。おれの足と同じ器官だとは到底思えない、不思議に柔らかいそれが軽く圧力を掛けると、もう先走りが漏れた。
「ふふ。だいぶ感じちゃってるね。じゃあもっともっと、してあげる。逃げちゃダメよ」
言われるまでもなくおれは姉さんの足裏がもたらす快感の虜だ。透明な我慢汁を漏らしている真っ最中だ。足で踏まれて絶頂してしまうのももう間近だ。
そんなおれを見下ろして姉さんが笑う。ちょっと冗談めかして、足コキの快楽に溺れているおれへ問いかけてくる。
「足で踏まれて感じちゃうなんて。お姉ちゃんのすることなら、弟君はなんでも気持ちよく感じちゃうのかな?」
「ああ……姉さんがおれにしてくれることなら、なんでも……」
「へぇ……じゃ、痛くしたり、傷つけたりされても、嬉しいのかな?」
それはやはり、どこまでやるかという程度の問題ではなかろうかと思ったが、もとより姉さんに隠し事など出来ない。思うがままに吐露した。
「どうだろう。怪我したりするようなのは、ちょっと嫌かもしれないけど……でも、姉さんがおれを愛してそういうことしてくれるなら、それもありかもしれないな。
やっぱりおれは、姉さんに愛されるのが気持ちいいんだよ」
ちょっとクサいセリフだったが、それでも姉さんはお気に召したらしい。にっこり笑って、その綺麗な足でおれのものをむにむにと刺激しながら、囁いてくれた。
「……良い返事ね。じゃあ、いっぱいいっぱい愛してあげる。私しか見えないようにしてあげるから、余計なことなんか何にも考えないで、お姉ちゃんに溺れてね……」
言われなくとも既に手遅れである。扱かれたというのにも程遠い、服の上からふみふみされただけでイきそうになってしまっているおれは魂の底まで姉さんの思うがままだ。
何十回目かの刺激で、遂に限界が来た。下着の中が窮屈に思えるほど勃起した男根の先に足の親指が触れ、カウパー氏腺液が分泌されている鈴口とその下側の裏筋が汚れない足裏に踏みつけられ、布越しにさすられた時、おれは我慢しようと思うより先に射精していた。
「あ、出た……パンツとズボン、ベタベタだね」
姉さんに踏まれるまま服の中に射精してしまったせいでおれの下着はもうドロドロだ。毎日姉さんとセックスし続けてじわじわとその量を増す精液はおれの下半身を汚していく。着衣のまま絶頂させられ、ズボンにシミを付けていく最中も姉さんの足でいじめられ続け、学校にいた間に溜め込んだ精液を残らず搾り取られてしまった。
数十秒続いた射精の後、汚れきったおれの衣服を姉さんはすぐに脱がせてくれた。
パンツとズボンを一度にずり降ろされた時、足でイかされてもまだ萎えていないおれの陰茎が勢い良く飛び跳ねてその剛直を示した。浅ましく近親相姦を求め続けるその反応に少し恥ずかしくなってしまったが、姉さんはそれを見て喜んでくれているようだった。
「あんなに出して、まだ元気なのね。本当にいい子……。いい子には、ご褒美をあげないと」
上着のボタンを外し、ブラウスを大きく上へ捲りあげて下乳を晒し、姉さんはベッドから降りてこちらへ這い寄ってくる。おれの両脚の間に跪き、精液に塗れた男根を躊躇いなく掴み、服の中、大きな胸の谷間に誘い入れた。
本来ゆったりした服であるはずのブラウスを内側からパツンパツンに膨らませている巨大なおっぱいに左右から挟み込まれて、おれは悶絶した。
ブラジャーなどという無粋なものを端から身に着けていない姉さんの乳は、狭い服の中、男性器が差し込まれたことで更に窮屈になった空間に満ち、真ん中へ向けてむちっとした甘美な圧力を掛けている。まだ姉さんは手を触れてもいないのに、ただ胸に挟まれているだけでもすぐに達してしまいそうだった。
「気持ちいい? ……気持ちいいよねえ。そんなにだらしない顔してるんだもの。お姉ちゃんにコレされると、いっつもそうなっちゃうんだよねえ」
微かに嘲るような姉さんの言葉に口答えする気も起きない。だいたいおれが姉さんのパイズリで骨抜きにされるのはいつものことだし、姉さんがそうしようとしているのだから、おれがそうなるのはごく当たり前のことなのだ。
そしていよいよ、姉さんが両腕を持ち上げてその大きすぎるおっぱいを掴み、中心へ向けて圧迫しながら左右交互に動かし、おれ自身を責め立て始めた。
滑らかな乳肌にじんわり浮かんだ汗とさっき出した精液が交じり合って上手い具合に潤滑液の役目を果たしている。ぬるぬるの実姉巨乳で挟まれ擦られして、どうせ長くは耐えられない。余計なことは全て忘れておれは胸乳快楽のみに耽る。
んしょっ、よいしょと可愛く呟きながら姉さんは懸命におっぱい奉仕してくれる。白い服の中、自分の生殖器が一体どうなっているのか、どんな風に弄られ、あの美巨乳に揉みしだかれ挟まれ苛められしているのかは全く見えないが、それがまた一段とおれの興奮を煽る。男性器をまるごと包んでしまえる大きくて柔らかいおっぱいが敏感なカリ首を全方位から圧迫し、裏筋を乳脂肪が撫でて高まりきった性感を更に刺激する。恐らく我慢汁を漏らし、遠からず白濁液をも吹き出してしまうであろう亀頭の鈴口が今、あの乳の海の中でどうなっているのか知らされないまま凄まじい快感だけを与えられてしまうと、このパイズリ遊びに屈服する以外の選択肢はおれから一切奪われる。
姉さんのためにすべての自由意志を放棄したおれを更に苛むべく、姉さんは片手で首のリボンを解き、胸元を少し開いた。ここへ来ての突然の胸チラにおれはまた股間が熱くなるのを感じたが、姉さんの狙いはそこには無かった。
左右のおっぱいを動かし続ける手は全く休めないまま、姉さんは軽く首を下げて、数回頬を小さく膨らませたと思うと、胸の谷間、今にも射精しそうなおれのものへ向けてたっぷり、唾液を垂らしてきたのだ。
普通の水に比べて粘度の高い唾液は、汗や精液と交じり合う事で、まるで天然のローションの如き効果を発揮する。乳と陰茎との摩擦係数を最低まで下げることで姉さんのパイズリは今まで以上の快楽をもたらす。
さらに、自分の生殖器に姉さんの唾を塗りたくられること、自分の最も大切な部分に愛しい人の唾を掛けられる倒錯的な快感が、おれの忍耐力を粉砕した。
ちょっとネトつく実の姉のツバを直接口から垂らされて、微かに震えるほど感じてしまっているおれを吸血鬼は見下す。どこか酷薄な、薄い笑みを唇に浮かべ、無言のままに屈従を強いる。不死の王に魅了されきったおれはまるで人形のごとく、ただ彼女の嗜虐心を満たすためだけに悶える。
乳と汗と唾で愛撫され尽くした陰茎はもう一秒たりとも我慢出来ない。一度ため息をつくと、すべてを悟った姉さんは左右の圧迫を強め、亀頭周りを重点的にぎゅうっと責めてくれた。強すぎる姉乳の抱擁が、とどめの一撃となった。
一回目、足踏み遊びで出した時よりも更に大量の精液が姉さんの谷間に溢れる。おっぱいに強くホールドされていても構わず暴れる肉茎は乳内射精に飽きたらず、白いブラウスに醜いシミを付け、床の絨毯まで汚した。
射精が終わるまでの間ずっとおっぱいを離さないでいてくれた姉さんは自分の服にぶっかけられてとても嬉しそうだ。まだらに透けた服の向こう、大きなおっぱいとそれが作る谷間がどれほど白く染まっているのか、想像しただけでもう萎えられない。
ブラウスの裾からポタポタと白濁を垂らし、腹の方まで精液に汚されながら、姉さんはやっとおれをムネから解放した。といって、これで終わりの筈は無い。
「胸だけでこんなに出しちゃうなんて、ヘンタイだねえ本当。ものすごい乳フェチなんだね」
「千草ねえのおっぱいがエロ過ぎるからだよ……」
「調子いい事言ってもダメだよ。お姉ちゃんもちゃんと、気持ちよくしてくれなきゃ……」
そう言って、おれの両肩を掴み、床へと押し倒してくる。絨毯のおかげで寝転んでいても痛くはないが、せっかくベッドがあるのだからその上でしようよと言いたかったが、もう姉さんは止まれないようだった。
「そろそろ、硬くてぶっとい弟チンポ、お姉ちゃんに食べさせてね……今日もたくさん、中出ししてくれなきゃ、イヤだからね」
おれを組み伏せ、腰を跨いだ姉さんは四つん這いになって、腰を降ろしてくる。上着の裾に隠れてぎりぎり見えない女性器からは粘ついた水音が早くも聞こえる。亀頭の尖端に熱く湿ったものが触れた、と思ったら、一気に包み込まれた。
「ふうぅっ……! 今日も、おっきいねえ……!」
「千草ねえ、きつい……!」
ゴシック風の衣装を着たままの姉と交わるのはおれにとって珍しくもないことだが、しかし飽きる気配は一向に無い。装飾的で華美で耽美的な服を着た姉さんは最高に魅力的で、どうしても中出しせずにはいられないのだ。
おれを咥え込んだ姉さんは最初から一気に腰を上下させ始める。精液と愛液で二人とも股間をぬるぬるにしていたお陰でとても滑らかな、しかも強く吸引されるような魔性の女性器をたっぷり楽しめる。騎乗位で体を激しく動かす姉さんの服の裾が捲れて、ちらちらおまんこが見えるのもまた興奮と感度を高めてくれる。
「はあ、はあ……千草ねえ、今日もエロいよ……そんな、裸みたいな格好で……!」
「あ、う、こーふん、する? ひっ、お、お姉ちゃんで、おちんぽ、またいっちゃう……?」
「もうたまんないよ。……またすぐ、出しちゃうよ」
「やっ、あっ、う、うれしい、ああもう、好き好き、大好きっ……!」
どうせ今日も朝まで何度もセックスするのだから、遠慮は要らないとばかりにおれを貪っていた姉さんが不意に、感極まったように身体をこちらへ倒してきた。一体何を、と思う間も無く、唇を奪われる。
騎乗位セックスは止めず、更に唇を重ね合おうとする姉さんの貪欲さはおれにとって何より好ましい。それだけ強く求められているということなのだから、男として奮い立たない道理が無い。
強引にキスしてきた姉さんは唇が触れるや否や、舌を挿し込んでくる。こちらもそれに応えて、互いを味わいあう熱烈なべろちゅーへと突入する。
舌と舌とを絡めあい、唾液を飲ませあい口腔を蹂躙しあうディープキスは、姉と弟という関係でして良いものではない。世間の道徳に背を向け実の両親すらも遠ざけて初めて口にする実姉のツバは例えようがない程美味だ。
綺麗なお姉ちゃんに犯され、ちゅうちゅう水音が鳴るほどの激しいキスで酔わされ、思考能力をほぼ手放しかけているおれへの追撃が来た。舌の上に走った、鋭い感覚だ。
姉さんの牙で切られたのだと知った瞬間、口から口へ吸血される凄まじい快感が魂を揺らした。敏感な口内から、姉さんの口で直接血を吸われることで普段の首からの吸血より遥かに大きな快楽が生まれたのだ。
ずるずると淫らな水音を立てて姉さんは唾と血液を啜っている。頬の裏や舌の上をねぶられるだけでも射精してしまいそうに気持ちいいのに、その上血など吸われたら、もうどうしようもない。さっき絶頂したばかりのおれは二度目の限界が近いのを感じた。
イきそうなのはおれだけではなく、姉さんの方も吸血と近親相姦の快楽で限界まで蕩けてしまっているらしい。より一層腰の動きを激しくし、精液を搾り取ろうとしながらも口からは血を啜り上げる。キスと吸血とセックス、三重の快楽がおれの理性を完全に押し流した。
「……ねえは……!」
「あむ、うじゅるる……! らひて、せーひ、なはに……!」
言葉を交わすのももどかしく二人は上り詰めていく。何十回目かのピストン、膣が陰茎を根元までぎゅっと咥え、姉さんが頬を窄ませていやらしい顔で血と唾を飲み下した時、おれは達した。
実の姉の子宮に中出し。許されない行為はやめられない気持ちよさで、おれを支配する。きつくて狭い膣に締め付けられて逃れようもなく膣内射精する快感は倫理その他のしがらみを捨て去るに充分値する。
「千草ねえっ……!」
「うぅぅぅっ……! い、イく、イっひゃう……!」
姉さんにとってもそれは同じだ。床についた膝で器用にもおれの腰を挟み込み、がっちり捉えて逃さないように、中出し以外絶対できないようにしているのだから間違いない。こちらに膣外射精の意志など毛頭無い事を分かってはいても、種付けと妊娠を望む本能がそうさせるのだろう。
姉弟でイチャイチャしてキスしてペッティングして吸血してセックスする。どんなにいけないと言われたって絶対にやめられない。無理をしたらきっと精神が壊れてしまう。
吸血鬼だとか人間だとかは関係無い。おれ達にはお互いが必要で、それ以外のものは別に要らないと、そういうことなのだ。
男性器を抜く気分にもなれず、おれ達は床の上で抱きあい続けていた。中に出した精液が、わずかに子宮から漏れでて二人の会陰を汚しているのが、酷く卑猥だった。
翌朝。
昔、本で読んだ伝承とは異なり、散々姉さんに血を吸われ続けていても、未だおれは吸血鬼にはなっていないらしく、太陽の光を好まず夕方から夜を主な活動時間とする姉さんと違って朝も普通に起きられる。手早く身支度してまたいつもどおり学校へ向かうことにする。
出来ればいつも姉さんといっしょにいたいのだが、姉さんがおれに通学を望んでいるのだから仕方ない。学校へいこうがどこへいこうが、姉さん以上に魅力的なものなど絶対見つからないというのに。
まあ、会えない時間が愛を育むことも有ると聞く。昼の間ずっと姉さんに焦がれておれが悶々とするのも、また姉さんの楽しみなのかもしれない。ならば、そんなままならない感情と戯れるのも悪くない。
どうせおれたちに与えられた時間は永遠だ。欠食児童の如く貪らなくても、快は味わい尽くせぬほどにある。おれはただ帰宅後の長い遊び時間を楽しみにしていればいいのだ。おれにとっては姉さんこそが、最愛なる全ての物なのだから。そう思って、家を出た。
12/06/16 16:46更新 / ナシ・アジフ