輝くもの天より堕ち
常人を遥かに凌駕する力を主神から授かった勇者に課せられる勤めは魔王討伐だけではない。
第一の義務は無論、神が作り、そして管理するこの世界から魔物たちを追放することだが、だからといってそれさえ考えていればいいというわけではない。
魔王の征伐と比べれば優先順位は低いが、人間たちの中で主神を信仰しようとしない者や、おおっぴらに魔物娘を支援する者、はたまた単なる野盗など、主神教の教義に照らし合わせて「不適切な」人間を処罰することもまた、勇者たちには推奨されているのだ。
「う、ぐぅぅ……」
「つ、強すぎる……」
街のはずれで大きな剣を地面に突き刺して、そこへダルそうにもたれかかっている男の名はイェスパー。周囲に倒れ伏した50人ほどの盗賊団を討伐し、一息ついたところである。
文字通り神がかった力を振るい、ドラゴンやバフォメット、リリムなど魔物の中でも特に強力な者たちと対等に渡り合ってみせる勇者の力は、単なるならず者がどうにか出来る範囲を大きく逸脱している。特殊な道具も持たず、魔物の支援も無いただの人間を何千何万集めようと、たった一人の勇者に対抗することすら叶わない。
そんな訳で、「国境から侵入してきた盗賊団を壊滅させる」というイェスパーの今日の任務は一秒と掛からずして終了。彼の傍に控える天界の尖兵、神軍の前線兵たる天使ディキエルの存在は、全く意味をなしていなかった。
小さな虫を人が踏み潰す時、その人間の体重が重かろうが軽かろうが、虫は死ぬのだ。
「さーて、今日の仕事も終わり、っと。帰って飯食おうぜ」
「……イェスパー。いい加減にして下さい。あなたの仕事は、こんな雑魚どもを潰すことではないと、何度言えば分かるんですか」
微かに金色がかかった、純白の美しい翼を持つ少女。仕えている先のポリシーを体現するかのように、その肉体は凹凸が少なく、人間でいうと十代初めくらいの発達具合。
だが、ちょっとウェーブ気味な金髪や青く大きめな瞳、まさしく神の手になる美しき容貌が、肉体の貧相さを補って余りある。むしろ、清純そのものといった顔つきと合わせるには、この平たい身体以外あり得ないだろうと、幼女性愛趣味の有無を問わず見る男全てに思わせる、魔性一歩手前の魅惑。彼女こそが、勇者たるイェスパーを補佐するためにやってきたディキエルだった。
そんな美少女はしかし、顔面に浮かぶ不満の表情を隠そうともしていない。唇を噛んで眉を吊り上げ、本来補佐しなければならないはずのイェスパーを鋭く睨みつけている。
「いつもいつも、ごまかして。早くこんな街出て、魔界へ向かわねばならないというのに……」
「はははっ。ごまかされる方が悪いんだよ。
ま、話し合いは後でじっくりしようや。部屋で二人、ゆっくりと、な」
常人では振ることはおろか、持ち上げることもままならない巨大な両刃剣を右手だけで持ち上げ、肩の上に担ぎ上げてイェスパーは言った。
天使の諫言を気にも留めず、勇者は歩み去る。その背を追わざるを得ないディキエルは、ただ俯いていた。
そして宿に戻った後。
ディキエルは部屋でイェスパーに抱かれていた。
「……やめ、なさい……！ こんなこと、いい加減……！」
「またかよ。それ言いながら俺にやられるの、何回目だ？」
肉体派の勇者らしく、恵まれた体格と高い背丈を誇るイェスパーの腕の中に、小柄なディキエルはすっぽり収まってしまう。膝の上に載せた少女を男が背後から抱きしめる、まるで父親が娘を可愛がるときのような体勢だが、二人の置かれている状況は無論そんな和やかなものではない。
「何回でも言いますっ！ 勇者がこんな、欲に溺れて……恥ずかしくないんですかっ！」
「ディキエルこそ恥ずかしくないのか。ほれ、もうパンツが脱げたぞ」
「！」
左手で天使の微乳を荒々しく揉みしだき、動きの止まったところをすかさず、余った右手で薄布を引っ掛け膝までずり降ろしたイェスパーは、余裕そうな口ぶりとは裏腹に息を荒げ始めている。尻に当たってくる硬い感触からも、彼の昂ぶりは十分良く伝わってきた。
しかし、ディキエルは天使。決して快楽を貪ってはならない存在である。燃え滾る男の熱を感じても、例えそれを好ましく思ってしまったとしても、情欲に流されてはいけない定めにある。きゅっと強く脚を締め、無言のままに性交を拒むと、イェスパーは彼女の耳元で囁いた。
「なぁ。ディキエルは俺とセックスするの、そんなに嫌か？」
「嫌、とか、そんな……」
「そうだよな。別に、嫌じゃないよな。ご褒美って言って最初に誘ってきたの、ディキエルだもんな」
「あれは、あなたがちゃんと、勇者として……」
「そうそう。初めて魔物と戦って、魔界へ追い返したんだったなあ。
さすがに殺せはしなかったけど、でも、それでいいって言ってくれて、嬉しかったよ」
「だったら……！」
「あれ以来、俺はもうお前以外の女に興味持てなくなっちまったからな。……ディキエルが可愛すぎるからいけないんだ。しょうがないだろう？」
そんなことを言って、イェスパーは人差し指と中指で ディキエルの右乳首を挟んだ。甘い痺れが天使の身体を駆け抜ける。が、肉体的な刺激よりも、男の言葉による精神的な揺さぶりのほうが、彼女にとってはより危険なものだった。
神の創りたもうた自身の身体に不要な、邪魔なものなど無いと、ディキエルは確信していた。だからこそ、勇者として正しき道を歩みだしたイェスパーに、彼女の全てをもって報いたのだ。そのことが間違っていたとは、到底信じられない。
しかし今の彼は主神教の抱える勇者としてはかなり逸脱した状態にある。よりにもよって天使に欲情して、魔王征伐を怠けるなんて、言語道断である。何とかして自分が矯正しなければならない。
そう思い続けて、いったい今日で何日目だろうか。
毎晩毎晩、イェスパーに優しく愛され、荒々しく犯され、気絶するまで離してもらえない。こんなことを繰り返していてはダメだと思ってはいても、どうにも抵抗が出来ない。
最近では、彼との交わりを積極的に楽しみつつある自分がいることを、ディキエルは敢えて無視しなければならない程にまでなっていた。
神が天使の肉体に交わりの機能を与えた以上、これを行使することそのものは神の御意志に反しないはず。ただそれに溺れなければ、まだ自分は天使でいられるはずだと思い込んで、彼女は言った。
「ねえ、イェスパー……！ いつまでもこの街に留まっていては、お金も稼げないでしょう？ 明日にはもう、出発しませんか……！」
「金なんて、別にいいよ。たまに依頼される、盗賊討伐の報奨金がありゃ、十分だろう」
「で、でも、宿代が……」
「ここのことなら、大丈夫だよ。勇者がいてくれればこの街もずっと安泰だってんで、今日みたいにちゃんと悪い奴らを倒したり、暇な時に仕事を手伝ったりしてれば、宿泊費も食費もただにしてくれるってさ。まったく、ありがたいじゃないか。
それより、今は俺としてるんだから、こっちに集中して欲しいね」
平たい胸がイェスパーの大きな掌でぎゅむっと押しつぶされる。それだけでもうディキエルは息が止まるほどの快感を覚えた。
こんなことではいけない、いますぐにでも彼から離れ、魔界征伐へ向かうよう諭さなければならない。たとえ自分の体を餌にしてでも。
そう思ってはいるのだが、どうしてもこの愛撫から逃れることが出来ない。
背後から抱きしめられて胸をいじられているだけで、股が潤んでくるのは自分の罪なのだろうか。熱い粘液を漏らし始めてしまうと体の温度が一気に上がって、理性がどんどん薄れていってしまうのは、自分の咎なのだろうか。
そんな風なことを考えていたから、締め付けの緩んだモモとモモの間にイェスパーがガチガチの男性器を挿し入れてきた時、ディキエルは全く抵抗できなかった。
思わず反射的に脚を閉じたが、それも逆効果。肉付きの薄い、すべすべした天使の太股で肉棒を挟まれるいわゆる素股の体勢になって、発情勇者を大いに喜ばせる結果にしかならなかった。
「おおっ、これは……！」
「ちょ、やめ、離れて下さいっ！」
「いやいや、これは本当に……」
ディキエルの膣口に、イェスパーのものが乱暴に擦りつけられる。先走りを溢れさせた怒張が、敏感な粘膜をごりごり責め立てて来る。ヌチャヌチャという淫らな水音が、天使の自制を少しずつ削り取っていく。
また彼のペースに飲まれて、流されてしまっている。いけない、何とかしなくては、とディキエルは朧気な意識の中で感じた。
彼女の知る、男を拒絶するただひとつの方法。男に自分の女性器を使わせないために、脚を強く閉じること。
再びそれをした時、今までよりも多くの蜜が奥から溢れ、滾った男根が一際強く恥丘に押し当てられた。快楽を拒んできた体に与えられた、急な強い刺激に耐えるには、天使の肉体はあまりに無垢過ぎた。
「ひっ……！ い、や、これいやぁっ……！！」
一瞬視界が白くなり、次いで浮遊感が襲う。何者にも縛られない開放感と欲しい物を手に入れられた充足感が綯い交ぜとなった、甘い陶酔に浸る。気づいた時には、もう遅かった。
「イッてる顔も可愛いなあ、ディキエル。我慢なんてするなよ。もっと俺に、可愛いところを見せてくれ」
「やっ、だめ、だめだめ、ダメですっ！」
彼女の嘆願を聞き入れるはずもないイェスパーは、先程よりもいっそう潤ったディキエルの股に向けて、セックスの時と同じくらい激しくピストンする。男女の淫液でぬめりを増した天使の肌は勇者にとっても致命的であったらしく、彼もまたすぐに絶頂することになった。
「一回出すぞ、ディキエル……！」
「い、や、やめて……」
動きを止める素振りすら見せず、イェスパーはそのまま腰を打ち上げ続け、遂に射精した。
ディキエルの内股に、濃厚な精液がたっぷりとぶちまけられる。二度三度と断続的に吹き上げられる白い子種汁で、天使の大腿上面と内側、のみならず腰や股間の方までも白く汚されてしまった。
先ほどの絶頂の波がまだ引ききっていない陰唇にも、白い汚液は容赦なく降り注ぐ。強制的に発情状態へと誘導された天使の生殖器へ、本日一発目のザーメンが注がれ、ディキエルの理性はまた大いに揺さぶられた。
ゆっくりと、脚が開いていくのを止められない。これは絶頂のせいで身体に力が入らないからであって、決して自ら挿入を望んでいるわけではない。誰にともなくそう心の中で言い訳し続けていたが、イェスパーはそれにすら頓着しなかった。
「なあ、いいよな？ 入れるぞ」
彼女の返事も聞かず、勇者は数秒前に射精し終わったばかりだというのに一向におとなしくならない男根を、一気に天使の中へ突き入れてくる。精液と愛液に塗れてこれ以上無く滑りの良くなった肉槍は、少女の狭くてきつい膣道をやすやすと割り開き、奥までその先端を届かせてしまう。赤黒い亀頭で胎の奥を一突きされると、ディキエルの体はまた甘く震えた。
「ひっ……！ ここ、こんなの、らめ、らめなんれふぅ……いぇす、ぱ……も、やめへ……」
「まだそんな事言って。でも、ディキエルのそういうところも可愛いんだよなあ、本当に。愛してるよ、俺の天使様」
「いや、いや、そんなこと……いわらいれぇ……」
いわゆる背面座位の体位で、イェスパーはベッドのスプリングを活かし、天使の膣奥へ肉棒をガンガン突き込む。小さな体を上下に揺さぶられ膣を押し広げられ、それでもディキエルがもらすのは苦痛の呻きではなく快楽の喘ぎ。
「はあ、ああ、うっ……！ ぅ、あああっ……！」
身体を、心を同時に責め立てられ、ディキエルはもう限界だった。初めて彼と交わった時から、この身体は一向にセックスというものに慣れる気配がなく、寧ろどんどん敏感に、感じやすく我慢弱くなっているような気がする。
勇者からの性欲も愛情も、天使としては、必要以上に受け取ってはならないものだったはずだ。しかし、今の彼女にとって彼からの愛撫と睦言以上に優先すべきことが何も無い。至上の存在であるはずの神すら、今のディキエルにとっては二の次だった。
「なあディキエルっ！ 気持ち、いいか？ 中出しして欲しいか？」
「いっ！？ そんあこと、いえな……」
「言わなきゃ、外に出すぞ。もうずっと中出ししてやらないからな」
中に出してやらないという言葉が、思いもよらない鋭さでもってディキエルの心に突き刺さった。天使ならば決して欲する筈の無い物を自分が今何より求めているということに驚くより、膣内に射精してもらえないかもしれないという焦りのほうが強かった。
「や、やめへ、外なんへ、いやぁ……！」
「だったら、なあ？ 聞かせてくれよ。お前の可愛い声で、エロいおねだりしてみてくれよ……！」
優位に立っている筈のイェスパーの声にもあまり余裕が無い。このままだと、本当に外に出されてしまうかもしれないという切迫した恐怖が、天使の舌と喉と声帯を勝手に動かした。
「らして、おまんこのなかにらしてぇぇっ！ いぇすぱーのせーしで、にんしんさせて……！！」
「あああ可愛いなあもう！ 愛してるよディキエルっ！！」
感極まったらしきイェスパーが、今までの倍近い速度で腰を打ち付ける。快楽への抵抗をやめた身体は、その勢いに押し流されて瞬く間に絶頂へ押し上げられていく。幼い少女を乱暴に犯す男の性器にも、限界が近づいてきているようだった。
「もう、出すぞっ！」
「らして、わらひのなかに、せーひ、いっぱいらして……！」
呂律の回らなくなった天使は、浅ましくも膣内射精を求め続ける。それに応えた男が子宮口すぐ近くで大量の精液を放つと、彼女の意識は真っ白に染まった。
「っ……！」
「ひゅっ……！ ま、また、いく……！ せーひだされて、いっひゃう……！」
神の教えも天使の勤めも忘れて、ディキエルはただ愛する男に種付けされる快楽に耽っていた。
翌朝。
いつもどおりイェスパーよりも早く目覚めたディキエルは、乱れた二人の寝姿と汚れたベッドシーツで昨夜の顛末を知った。
「(ああ……また、流されてしまったのね私は。こんなんじゃ、絶対いけないのに)」
行為の後はいつも彼女の心に後悔が残る。また神の教えに背いてしまったという、深い後悔が。
「(仕方ない。今日こそ彼を説得して……何とか私たち二人、立ち直らないと)」
ベッドの上で半身を起こし、男のほうを見やる。安らかな寝顔に邪気は全く無く、改めて自分の、この勇者への愛情を確認させられることとなった。
肩越しに見えた翼の先端がちょっと黒く染まっているように見えたのは、きっと光の加減だ。そう思い込んだのは、完全に無意識の事だった。
第一の義務は無論、神が作り、そして管理するこの世界から魔物たちを追放することだが、だからといってそれさえ考えていればいいというわけではない。
魔王の征伐と比べれば優先順位は低いが、人間たちの中で主神を信仰しようとしない者や、おおっぴらに魔物娘を支援する者、はたまた単なる野盗など、主神教の教義に照らし合わせて「不適切な」人間を処罰することもまた、勇者たちには推奨されているのだ。
「う、ぐぅぅ……」
「つ、強すぎる……」
街のはずれで大きな剣を地面に突き刺して、そこへダルそうにもたれかかっている男の名はイェスパー。周囲に倒れ伏した50人ほどの盗賊団を討伐し、一息ついたところである。
文字通り神がかった力を振るい、ドラゴンやバフォメット、リリムなど魔物の中でも特に強力な者たちと対等に渡り合ってみせる勇者の力は、単なるならず者がどうにか出来る範囲を大きく逸脱している。特殊な道具も持たず、魔物の支援も無いただの人間を何千何万集めようと、たった一人の勇者に対抗することすら叶わない。
そんな訳で、「国境から侵入してきた盗賊団を壊滅させる」というイェスパーの今日の任務は一秒と掛からずして終了。彼の傍に控える天界の尖兵、神軍の前線兵たる天使ディキエルの存在は、全く意味をなしていなかった。
小さな虫を人が踏み潰す時、その人間の体重が重かろうが軽かろうが、虫は死ぬのだ。
「さーて、今日の仕事も終わり、っと。帰って飯食おうぜ」
「……イェスパー。いい加減にして下さい。あなたの仕事は、こんな雑魚どもを潰すことではないと、何度言えば分かるんですか」
微かに金色がかかった、純白の美しい翼を持つ少女。仕えている先のポリシーを体現するかのように、その肉体は凹凸が少なく、人間でいうと十代初めくらいの発達具合。
だが、ちょっとウェーブ気味な金髪や青く大きめな瞳、まさしく神の手になる美しき容貌が、肉体の貧相さを補って余りある。むしろ、清純そのものといった顔つきと合わせるには、この平たい身体以外あり得ないだろうと、幼女性愛趣味の有無を問わず見る男全てに思わせる、魔性一歩手前の魅惑。彼女こそが、勇者たるイェスパーを補佐するためにやってきたディキエルだった。
そんな美少女はしかし、顔面に浮かぶ不満の表情を隠そうともしていない。唇を噛んで眉を吊り上げ、本来補佐しなければならないはずのイェスパーを鋭く睨みつけている。
「いつもいつも、ごまかして。早くこんな街出て、魔界へ向かわねばならないというのに……」
「はははっ。ごまかされる方が悪いんだよ。
ま、話し合いは後でじっくりしようや。部屋で二人、ゆっくりと、な」
常人では振ることはおろか、持ち上げることもままならない巨大な両刃剣を右手だけで持ち上げ、肩の上に担ぎ上げてイェスパーは言った。
天使の諫言を気にも留めず、勇者は歩み去る。その背を追わざるを得ないディキエルは、ただ俯いていた。
そして宿に戻った後。
ディキエルは部屋でイェスパーに抱かれていた。
「……やめ、なさい……！ こんなこと、いい加減……！」
「またかよ。それ言いながら俺にやられるの、何回目だ？」
肉体派の勇者らしく、恵まれた体格と高い背丈を誇るイェスパーの腕の中に、小柄なディキエルはすっぽり収まってしまう。膝の上に載せた少女を男が背後から抱きしめる、まるで父親が娘を可愛がるときのような体勢だが、二人の置かれている状況は無論そんな和やかなものではない。
「何回でも言いますっ！ 勇者がこんな、欲に溺れて……恥ずかしくないんですかっ！」
「ディキエルこそ恥ずかしくないのか。ほれ、もうパンツが脱げたぞ」
「！」
左手で天使の微乳を荒々しく揉みしだき、動きの止まったところをすかさず、余った右手で薄布を引っ掛け膝までずり降ろしたイェスパーは、余裕そうな口ぶりとは裏腹に息を荒げ始めている。尻に当たってくる硬い感触からも、彼の昂ぶりは十分良く伝わってきた。
しかし、ディキエルは天使。決して快楽を貪ってはならない存在である。燃え滾る男の熱を感じても、例えそれを好ましく思ってしまったとしても、情欲に流されてはいけない定めにある。きゅっと強く脚を締め、無言のままに性交を拒むと、イェスパーは彼女の耳元で囁いた。
「なぁ。ディキエルは俺とセックスするの、そんなに嫌か？」
「嫌、とか、そんな……」
「そうだよな。別に、嫌じゃないよな。ご褒美って言って最初に誘ってきたの、ディキエルだもんな」
「あれは、あなたがちゃんと、勇者として……」
「そうそう。初めて魔物と戦って、魔界へ追い返したんだったなあ。
さすがに殺せはしなかったけど、でも、それでいいって言ってくれて、嬉しかったよ」
「だったら……！」
「あれ以来、俺はもうお前以外の女に興味持てなくなっちまったからな。……ディキエルが可愛すぎるからいけないんだ。しょうがないだろう？」
そんなことを言って、イェスパーは人差し指と中指で ディキエルの右乳首を挟んだ。甘い痺れが天使の身体を駆け抜ける。が、肉体的な刺激よりも、男の言葉による精神的な揺さぶりのほうが、彼女にとってはより危険なものだった。
神の創りたもうた自身の身体に不要な、邪魔なものなど無いと、ディキエルは確信していた。だからこそ、勇者として正しき道を歩みだしたイェスパーに、彼女の全てをもって報いたのだ。そのことが間違っていたとは、到底信じられない。
しかし今の彼は主神教の抱える勇者としてはかなり逸脱した状態にある。よりにもよって天使に欲情して、魔王征伐を怠けるなんて、言語道断である。何とかして自分が矯正しなければならない。
そう思い続けて、いったい今日で何日目だろうか。
毎晩毎晩、イェスパーに優しく愛され、荒々しく犯され、気絶するまで離してもらえない。こんなことを繰り返していてはダメだと思ってはいても、どうにも抵抗が出来ない。
最近では、彼との交わりを積極的に楽しみつつある自分がいることを、ディキエルは敢えて無視しなければならない程にまでなっていた。
神が天使の肉体に交わりの機能を与えた以上、これを行使することそのものは神の御意志に反しないはず。ただそれに溺れなければ、まだ自分は天使でいられるはずだと思い込んで、彼女は言った。
「ねえ、イェスパー……！ いつまでもこの街に留まっていては、お金も稼げないでしょう？ 明日にはもう、出発しませんか……！」
「金なんて、別にいいよ。たまに依頼される、盗賊討伐の報奨金がありゃ、十分だろう」
「で、でも、宿代が……」
「ここのことなら、大丈夫だよ。勇者がいてくれればこの街もずっと安泰だってんで、今日みたいにちゃんと悪い奴らを倒したり、暇な時に仕事を手伝ったりしてれば、宿泊費も食費もただにしてくれるってさ。まったく、ありがたいじゃないか。
それより、今は俺としてるんだから、こっちに集中して欲しいね」
平たい胸がイェスパーの大きな掌でぎゅむっと押しつぶされる。それだけでもうディキエルは息が止まるほどの快感を覚えた。
こんなことではいけない、いますぐにでも彼から離れ、魔界征伐へ向かうよう諭さなければならない。たとえ自分の体を餌にしてでも。
そう思ってはいるのだが、どうしてもこの愛撫から逃れることが出来ない。
背後から抱きしめられて胸をいじられているだけで、股が潤んでくるのは自分の罪なのだろうか。熱い粘液を漏らし始めてしまうと体の温度が一気に上がって、理性がどんどん薄れていってしまうのは、自分の咎なのだろうか。
そんな風なことを考えていたから、締め付けの緩んだモモとモモの間にイェスパーがガチガチの男性器を挿し入れてきた時、ディキエルは全く抵抗できなかった。
思わず反射的に脚を閉じたが、それも逆効果。肉付きの薄い、すべすべした天使の太股で肉棒を挟まれるいわゆる素股の体勢になって、発情勇者を大いに喜ばせる結果にしかならなかった。
「おおっ、これは……！」
「ちょ、やめ、離れて下さいっ！」
「いやいや、これは本当に……」
ディキエルの膣口に、イェスパーのものが乱暴に擦りつけられる。先走りを溢れさせた怒張が、敏感な粘膜をごりごり責め立てて来る。ヌチャヌチャという淫らな水音が、天使の自制を少しずつ削り取っていく。
また彼のペースに飲まれて、流されてしまっている。いけない、何とかしなくては、とディキエルは朧気な意識の中で感じた。
彼女の知る、男を拒絶するただひとつの方法。男に自分の女性器を使わせないために、脚を強く閉じること。
再びそれをした時、今までよりも多くの蜜が奥から溢れ、滾った男根が一際強く恥丘に押し当てられた。快楽を拒んできた体に与えられた、急な強い刺激に耐えるには、天使の肉体はあまりに無垢過ぎた。
「ひっ……！ い、や、これいやぁっ……！！」
一瞬視界が白くなり、次いで浮遊感が襲う。何者にも縛られない開放感と欲しい物を手に入れられた充足感が綯い交ぜとなった、甘い陶酔に浸る。気づいた時には、もう遅かった。
「イッてる顔も可愛いなあ、ディキエル。我慢なんてするなよ。もっと俺に、可愛いところを見せてくれ」
「やっ、だめ、だめだめ、ダメですっ！」
彼女の嘆願を聞き入れるはずもないイェスパーは、先程よりもいっそう潤ったディキエルの股に向けて、セックスの時と同じくらい激しくピストンする。男女の淫液でぬめりを増した天使の肌は勇者にとっても致命的であったらしく、彼もまたすぐに絶頂することになった。
「一回出すぞ、ディキエル……！」
「い、や、やめて……」
動きを止める素振りすら見せず、イェスパーはそのまま腰を打ち上げ続け、遂に射精した。
ディキエルの内股に、濃厚な精液がたっぷりとぶちまけられる。二度三度と断続的に吹き上げられる白い子種汁で、天使の大腿上面と内側、のみならず腰や股間の方までも白く汚されてしまった。
先ほどの絶頂の波がまだ引ききっていない陰唇にも、白い汚液は容赦なく降り注ぐ。強制的に発情状態へと誘導された天使の生殖器へ、本日一発目のザーメンが注がれ、ディキエルの理性はまた大いに揺さぶられた。
ゆっくりと、脚が開いていくのを止められない。これは絶頂のせいで身体に力が入らないからであって、決して自ら挿入を望んでいるわけではない。誰にともなくそう心の中で言い訳し続けていたが、イェスパーはそれにすら頓着しなかった。
「なあ、いいよな？ 入れるぞ」
彼女の返事も聞かず、勇者は数秒前に射精し終わったばかりだというのに一向におとなしくならない男根を、一気に天使の中へ突き入れてくる。精液と愛液に塗れてこれ以上無く滑りの良くなった肉槍は、少女の狭くてきつい膣道をやすやすと割り開き、奥までその先端を届かせてしまう。赤黒い亀頭で胎の奥を一突きされると、ディキエルの体はまた甘く震えた。
「ひっ……！ ここ、こんなの、らめ、らめなんれふぅ……いぇす、ぱ……も、やめへ……」
「まだそんな事言って。でも、ディキエルのそういうところも可愛いんだよなあ、本当に。愛してるよ、俺の天使様」
「いや、いや、そんなこと……いわらいれぇ……」
いわゆる背面座位の体位で、イェスパーはベッドのスプリングを活かし、天使の膣奥へ肉棒をガンガン突き込む。小さな体を上下に揺さぶられ膣を押し広げられ、それでもディキエルがもらすのは苦痛の呻きではなく快楽の喘ぎ。
「はあ、ああ、うっ……！ ぅ、あああっ……！」
身体を、心を同時に責め立てられ、ディキエルはもう限界だった。初めて彼と交わった時から、この身体は一向にセックスというものに慣れる気配がなく、寧ろどんどん敏感に、感じやすく我慢弱くなっているような気がする。
勇者からの性欲も愛情も、天使としては、必要以上に受け取ってはならないものだったはずだ。しかし、今の彼女にとって彼からの愛撫と睦言以上に優先すべきことが何も無い。至上の存在であるはずの神すら、今のディキエルにとっては二の次だった。
「なあディキエルっ！ 気持ち、いいか？ 中出しして欲しいか？」
「いっ！？ そんあこと、いえな……」
「言わなきゃ、外に出すぞ。もうずっと中出ししてやらないからな」
中に出してやらないという言葉が、思いもよらない鋭さでもってディキエルの心に突き刺さった。天使ならば決して欲する筈の無い物を自分が今何より求めているということに驚くより、膣内に射精してもらえないかもしれないという焦りのほうが強かった。
「や、やめへ、外なんへ、いやぁ……！」
「だったら、なあ？ 聞かせてくれよ。お前の可愛い声で、エロいおねだりしてみてくれよ……！」
優位に立っている筈のイェスパーの声にもあまり余裕が無い。このままだと、本当に外に出されてしまうかもしれないという切迫した恐怖が、天使の舌と喉と声帯を勝手に動かした。
「らして、おまんこのなかにらしてぇぇっ！ いぇすぱーのせーしで、にんしんさせて……！！」
「あああ可愛いなあもう！ 愛してるよディキエルっ！！」
感極まったらしきイェスパーが、今までの倍近い速度で腰を打ち付ける。快楽への抵抗をやめた身体は、その勢いに押し流されて瞬く間に絶頂へ押し上げられていく。幼い少女を乱暴に犯す男の性器にも、限界が近づいてきているようだった。
「もう、出すぞっ！」
「らして、わらひのなかに、せーひ、いっぱいらして……！」
呂律の回らなくなった天使は、浅ましくも膣内射精を求め続ける。それに応えた男が子宮口すぐ近くで大量の精液を放つと、彼女の意識は真っ白に染まった。
「っ……！」
「ひゅっ……！ ま、また、いく……！ せーひだされて、いっひゃう……！」
神の教えも天使の勤めも忘れて、ディキエルはただ愛する男に種付けされる快楽に耽っていた。
翌朝。
いつもどおりイェスパーよりも早く目覚めたディキエルは、乱れた二人の寝姿と汚れたベッドシーツで昨夜の顛末を知った。
「(ああ……また、流されてしまったのね私は。こんなんじゃ、絶対いけないのに)」
行為の後はいつも彼女の心に後悔が残る。また神の教えに背いてしまったという、深い後悔が。
「(仕方ない。今日こそ彼を説得して……何とか私たち二人、立ち直らないと)」
ベッドの上で半身を起こし、男のほうを見やる。安らかな寝顔に邪気は全く無く、改めて自分の、この勇者への愛情を確認させられることとなった。
肩越しに見えた翼の先端がちょっと黒く染まっているように見えたのは、きっと光の加減だ。そう思い込んだのは、完全に無意識の事だった。
12/05/12 10:10更新 / ナシ・アジフ