読切小説
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愛嵩ニ占錐S束
 特に運動系クラブに力を入れているわけでもなく、喧嘩や傷害事件も起こらず、何やかやと理由をつけて授業をサボろうとする輩もいないような、数ある高校の中でも進学校と呼ばれるような所では、いわゆる保健の先生に課せられる仕事は多くない。
 しかし、養護教諭・霧島 恭子の場合は少し事情が違った。彼女には、特に気をつけて世話をしてやらねばならない生徒が一人いたのだ。
 その生徒の名は五島 潤。生まれつき心臓が弱く、世に言う保健室登校を繰り返している生徒である。
 高校入試を突破出来るだけの学力があったとしても、進学校の授業は進度が早く、きちんと授業を受けないことには落ちこぼれる一方である。そこで恭子は、空いた時間で潤に勉強を教えてやっていた。
 彼女とて大卒の人間。難関大の対策などならともかく、自分の所属している学校で行われている授業の解説くらいなら難なくこなせる。
 本当なら、潤のような虚弱な男子生徒を放課後まで学校に居残らせるのは良くないことなのかもしれないが、本人にも学ぶ意欲はあったし、潤の両親も息子に酷い成績を取って欲しくはないようだったので、週に何度か保健室で、英語や数学などの主要科目の個人授業をしているのだった。
 今は、その「授業」がちょうど終わった所。軽い疲れを訴えた潤をベッドに寝かせると、すぐに眠ってしまった。あまり時間に余裕はないし、そろそろ起こして家へ帰らせなければならないのだが、恭子はそれができないでいた。

「はあ、はあ……! う、うぅっ……! ふ、ふふふ、キレイな寝顔……ん、あああっ!」

 下着をずり下ろし、潤の寝顔を見ながら濡れたおまんこを弄くり回していたからだ。今まさに自分の顔を見ながらオナニーしている女性が居ることにも気づかずにすやすやと寝ている潤の身体は同年代の男子生徒と比べて線が細く、血色も悪いが、その儚さが恭子の保護欲と独占欲を強く掻き立てる。
 保健室での個別授業は楽しいが、余り頻繁にやると怪しまれるかもしれない。日進月歩する医療技術でいずれ潤も健康になって、他の生徒達に混ざって学生生活を送るようになるのかもしれないし、そうなるのが一番良いのだと分かってはいるが、しかし自分の手から潤が離れるときのことを思うと言い様のない寂しさを覚える。

 恭子は教師でありながら、教え子に恋をしていたのだ。

 隠すほか無い想いを自慰で発散し、愛液で汚れた指を洗い清め終わった所で、潤が目覚めた。軽く伸びをして時間を確認すると、もう夕方。

「うわ、だいぶ寝ちゃいました。急いで帰らないと」
「そうね。もう暗いから、車に気をつけて」
「はい。それじゃあ恭子先生、さようなら」

 彼女の秘めた欲望に全く気づかぬまま、何も知らない潤は帰っていった。後に残されたのは、満たされない思いを抱えた若い女。

「はあ……やっぱり駄目よねえ。教師と生徒、なんて」

 保健室で多くの時間を共にしていても、二人の立場には大き過ぎる隔たりがある。潤が卒業するまで待つという手もあるが、この学校から出ていった彼とどうやって接触を保てば良いというのだ。保健の先生という立場で、学外の人間と関わる手段は限られている。
 そんな物思いに耽っていると、部屋の戸を叩く音がした。恭子が入室を許可すると、一人の女子生徒が入ってくる。
 現れたのはそこらの女優やタレントなど比較にもならないような、ものすごい美少女だった。
 大きな胸と、それとは対照的にほっそりした腰は本来異性を誘惑するためのものではない筈のセーラー服を何倍も魅力的にしている。
 長く細い両脚はまるで外国の映画女優のようだが、しかしそれよりも均整が取れている。
 異国の血でも入っているのだろうか、大きな眼の中には真紅の瞳が煌き、どこか神秘的かつ非人間的な雰囲気を醸し出す。
 陶磁器のように白くなめらかな肌を夕焼けで紅く染めたその少女の名を、恭子は一瞬思い出せなかった。

「(何、この子。雑誌の読者モデルか何か?)」

 見覚えの無い妖しい少女の出現に虚を突かれた感じの恭子だったが、すぐに気を取り直す。小学校や中学校と違って、高校で保健教師が生徒と触れ合う機会はあまり無い。顔を知らない生徒がいたって、別段おかしくはない。
 ここまで綺麗な女生徒がいたらいくら何でも記憶に残りそうなものだが、ちゃんとここの制服を着ているし部外者というわけでもないだろう。彼女はそう思うことにした。

「どうかしたの?」
「手をちょっと、切っちゃって。膿んだら嫌なので、消毒液を使わせて下さい」

 出された右手の甲には確かに、鋭利な刃物がかすめたような傷があった。わざわざ保健室に寄る程の傷ではないが、女性の肌に傷跡が残る可能性を考えれば早めの治療が望ましい。真っ白で汚れない手と細く長い指を備えた、まるで芸術品のような手なら、なおさらだ。
 ということで、恭子は薬品棚から消毒薬と絆創膏を取り出した。
 やはり片手ではやりにくかろうという配慮のもと、美少女の手を捧げ持って処置をしてやる。掴んだその手があまりに完璧すぎて、つい口づけをしたくなった。

「(って、何考えてるのよ私は。女同士でなんて、そんな趣味無いし)」

 きっとついさっきまでオナニーしてたせいだろうと自分で自分を納得させ、簡単に傷を殺菌して治療完了。絆創膏を貼る直前、傷跡の端が微かに蠢いて裂けた皮膚が元通り繋がっていくのをみたような気もしたが、きっと見間違えだろうと気にも留めなかった。

 手当を終え、すぐに帰るかと思っていた件の美少女はしかし、保健室から出ようとはしなかった。どころか、恭子の方へ一歩歩み寄り、意味有りげな微笑を浮かべる。

「そういえば、ここへ来る時男の子が一人出ていくのを見たんですよね。あの子も何か、怪我したんですか?」
「いいえ。あの子は生まれつき心臓が弱くてずっと保健室登校をしている生徒なんだけど、それだと授業についていけないでしょう。だから私が、ちょっとした補習をしてあげていたの」
「なるほど。でも、それはおかしいですよ」

 にやにやと、さもおかしげに少女が笑う。唇の隙間から覗く歯は白く輝いて、まるで刃物のようだった。

「……おかしい? 何が?」
「勉強してたんなら、こんなエッチな臭いが部屋中に染み付くわけないじゃないですか」
「っ!」

 予想もしないことを言われ、恭子の身体は硬直した。笑い飛ばして否定すべきだと分かってはいても、その為の言葉が出てこない。不意を突かれて動転する恭子を嘲笑うかのように、少女は続ける。

「とぼけたって無駄ですよ。私、結構鼻が効くんです。こういう類の臭いには、特にね。
 セックス……は、していませんよね。精液の良い臭いが全然しませんもん。ということは、オナニーですか? きれいな男の子を生オカズにして、ヌいちゃったんですか?」

 恭子は何も反論できない。唇を震わせ、半ば無意識的に後退りすることしかできない。その無意味な後退すらも、背後に据え付けられていた生徒用のベッドに阻まれてしまう。
 日常とは一線を画する卑猥な単語を次々と使われ、全く落ち着くことが出来ず混乱を高められていく恭子を少女はただ見つめる。
 艶やかな髪、若々しい体躯、女性らしさそのものといった感じの豊満さ。更に顔はどこか外国のお姫様かと思えるほどに高貴で美麗。女の中の女とも言うべき存在が卑語を躊躇いもなく使うのはどこか現実離れしていたが、しかしそんな言葉遣いも何故か板に付いていた。

「ねえ、そうなんでしょう? あの男の子、結構良い感じでしたもんねえ。欲しくなっちゃったんでしょう? 分かりますよ、そういうの。私もちょっと、グラっと来ましたもん」

 愛しの彼を奪われそうになって、やっと恭子の心に驚愕以外の感情が生まれた。
 目の前の見慣れない美少女が恋敵だというならば、たとえ教え子であったとしてもただでは済まさない。その決意を込めて睨み返すと、少女は声をあげて笑った。

「あははははっ。ごめんなさい、冗談ですよ。人のものを盗って喜ぶような、そんな下衆な趣味はありませんから。
 でもいいんですか? 先生と生徒、だなんて。誰かにバレたら、とんでもないことになっちゃいますよ」

 そう言われると恭子としては言い返しようが無い。自分でだって、いけないことだとは分かっているのだ。してはならないことをしないで済ませられるならば、この世はもっと平和であるはずなのだ。
 単なるセーラー服を着ていながら、その美少女はまるで支配者のような、抗いがたい雰囲気を放っている。美が力であるならば、今目の前に在る者こそがこの世で最強の存在だろうと思わされる。

「ふふっ、まあそうですよね。欲しいけど諦められない。手を出してはならないものにこそ強く惹かれる。生き物として、ごく自然なことですよ。
 ところで先生。先生は、魔物娘ってご存知ですか?」

 緊迫した空気の中、またしても妙な言葉が出た。
 魔物、なら小説やゲーム等でいくらでも見る言葉である。娘が付くということは、女性の形をしているのだろうか。それとも単に魔物、怪物の娘という意味なのか。

「知らないんですか。まあ、当然ですけど。
 でも、実際この世界にも居るんですよね、魔物娘。現に私がそうですし」

 言うと、少女のまとう空気が一変した。
 音も立てず、背中からは大きな一対の翼、スカートの中からは太い尾、頭頂からは角がそれぞれ生える。瞳の紅さはますます強まり、髪は眩い銀色に染まる。
 数秒の後、そこに立っていたのは一般的にイメージされる「悪魔」そのものだった。
 普通ならば、泣いたり叫んだり、逃げ出したり命乞いをしたりするところだろう。しかし、恭子はそういう気分にはならなかった。
 自分の眼前で起こった変化はどう考えてもトリックや手品ではありえない。翼や尻尾、角の質感も、作り物でないことははっきり分かる。
 何より、今の悪魔的な彼女の方が、さっきまで人間と同じ姿をとっていた時よりもずっと美しく、蠱惑的だったからだ。
 パズルの欠けたピースを元に戻したような、奇妙な充足感。物言わずして見るものに己を認めさせる真のカリスマを、少女は持っていた。

「……さすが、大人のお姉さんは違うわねえ。びっくりしないの?」
「驚いたって、しょうがないでしょう……。それより、私に何の用なの? 魂でも、取ろうっていうの?」
「そんな固くならないでよ。私は先生に、良い知らせを持ってきたんだから。
 ね、先生。あの男の子に、健康になって欲しい?」
「えっ? あ、当たり前じゃないそんなの。出来るなら、今よりもっと元気になって欲しいわよ」
「へーえ、そう。でも、もし身体が丈夫になっちゃったら、あの子もう保健室へは来ないわよ。授業もちゃんと、全部受けるようになるわけだしね。
 それどころか、クラスメイトと接する時間も増えるから、友達もたくさんできるだろうし、もしかしたら彼女なんか作っちゃったりして。あの子可愛いから、きっと女の子たち、放っておかないわね」
「……」
「女子高生と付き合うくらいなら、まあ可愛いものだけど。でも、今までずっと内に篭ってた分、外へ行けるとなったら、歯止めが効かなくなるかもしれないわね。
 あちこち遊び歩いて、顔にしか興味の無い慣れた感じの女に引っかかって、あの子の純情は弄ばれてしまうの。でも、一人の教師でしかない先生は何の手出しもできないの。あーあ、可哀想ねえ」

 少女が何を言わんとしているのか、恭子には分かっていた。
 身体の弱い教え子に元気になって欲しいと思うのは、教師として当たり前のこと。しかし、一方で彼女の中にはこのままずっと潤と触れ合っていたい、誰にも渡したくないという思いも確かにあったのだ。
 背後のベッドに腰掛け、恭子は力なく言った。

「……で、結局私をどうしようって言うのよ」
「ふふっ。良い知らせだって言ったでしょ。
 ね、先生。先生は、魔物になってみる気、無い?」

 驚愕に次ぐ驚愕で正常な判断力を失っていた恭子の心には、「魔物になる」というフレーズがすんなり浸透した。
 人間をやめる、というのは一般的には忌避すべき、悍ましいものなのだろうが、今ここにいる「魔物」の完成された美を見てしまうと、その観念も信じきれなくなってくるのだった。
 拒否も拒絶も示さなかった恭子の反応に気を良くしたのか、少女は幾分嬉しげに語りかけてくる。それは文字通り、悪魔のささやきだった。

「魔物になるって言っても、先生が先生じゃなくなるわけじゃないわよ。今の、先生の魂、思考とか性格とか記憶とかは全部そのままで、身体だけ人間よりも一つ上の存在に入れ替わるの」
「……上の、存在?」
「そう。何が上なのかというとね、愛する人を捕まえる能力よ」

 このフレーズに恭子はぴくんと反応した。何か危険があるかもしれないと思っていても、不意に目の前に現れた餌を無視出来るだけの自制心を備えた人間はそういない。

「もちろん身体能力は上がるし病気にもかかりにくくなるんだけど、そんなのは瑣末なこと。この世でただ一人選んだ旦那様を自分に振り向かせて、永遠に離さない。その為に存在しているのが、魔物なのよ」

 潤を自分に惚れさせて、夫婦になる。お互い死ぬまで離れない。そう聞いて、恭子は自分の中で、少女への不信感が急速に薄れていくのを感じていた。

「で、魔物になれるのは基本的に女の人だけなんだけど、男の人は代わりにインキュバスって生き物になれるの。
 姿形はあんまり変わらないんだけど、人間よりずっと丈夫になって、色々強化されて、病気も治るの。生まれつき弱い器官があっても、普通以上に改善されちゃうのね」

 ここへ来てやっと、恭子は少女の目的が見えてきた。その予想を裏付けるような言葉が、紅い唇から紡がれる。

「男の人をインキュバスに出来るのは、その人を愛してあげられる人だけ。
 先生。彼を救ってあげたいんでしょう? 誰にも傷つけられないように、ずっと守ってあげたいんでしょう?
 私はその願いを叶えるためにやってきたのよ」

 もう恭子に迷いは無かった。勝ち誇ったように笑う少女を見上げて、ゆっくりと言う。

「……そういうことね。わかったわ。魔物に、してちょうだい。それであの子が、私のものになるなら」

 契約の言葉を引き出した魔物は、今までで一番晴れやかに笑った。邪気の無い満面の笑みは、不思議とその異形の体に似合う。

「よーしよし。素直でいい子ですね、先生は。
 くくくくっ。欲しい物を欲しいってちゃんと言える人間さん、私は大好きです。何でもしてあげたくなっちゃいますよ」

 今までで一番人外らしいことを言った少女は、ベッドに座っている恭子の目の前に進み出る。と、上半身を倒して顔を近づけ、いきなり唇を奪った。

「……! ん、む、うぅぅっ……!」
「……ふふ、うむ……ちゅっ、ちゅるるっ、う……」

 舌は入れず、唾液を交換するだけのキスだったが、同性同士でする経験など恭子には無い。慌てて身体を離し、目線で抗議する。

「怒らないでくださいよ。これも、魔物になるために必要なことなんですから」
 ……ところで先生。先生って、経験済みだったんですね」
「な、なによ。いけないの?」

 ヴァンパイアにユニコーン。恭子の脳裏には、処女を好むと言い伝えられる怪物の名が行き交っていた。
 さっき少女は「たった一人の旦那様を愛する」と言っていた。すると、やはり処女でなければ魔物にはしてくれないのだろうかと俄に不安になった所。

「いやいや、大丈夫ですよ。ヴァージンであろうとなかろうと、ちゃんと魔物にしてあげます。
 重要なのは、魔物になってからの生き方なんですから。人間だった頃のことを引きずる必要なんて、ありませんよ」

 これで恭子は完全に陥落した。ベッドへ仰向けに倒れこみ、その上に少女が覆いかぶさる。
 部屋には淫らな水音と、短い喘ぎ声だけが響いていった。


 次の日。恭子は昼休み、やはり保健室に居た潤に声を掛けた。

「ちょっと見せたいものがあるの。そこのベッドに寝転んでみてくれない?」
「……? はい、わかりました」

 何も知らない彼は促されるまま横たわる。恭子が扉の鍵を閉め、窓のカーテンを閉めている間も、その表情に不安や恐怖はなかった。彼が自分に心を許しきっていることを確認し、新たに生まれた魔物の魂はますます燃え滾った。
 潤の寝ているベッドに恭子が乗り、四つん這いになって体を跨ぐ。女から挑みかかる体勢になって初めて、潤は狼狽え始めた。

「ちょ、恭子先生、何して……」
「ねえ潤くん。潤くんは先生のこと、好き?」
「へ? い、いや、それは、好きですよ。僕みたいな弱い奴をいろいろ気遣ってくれるし、勉強も教えてくれるし……」
「そう。じゃあ、もっともっと好きになってもらうわ。私があなたのことを好きなのと、同じくらいにね」

 恭子の中に新しく宿った、冷たい炎。恋心以外の感情をを静かに燃やし尽くす蒼炎の抑制を外す。解き放たれた魔物の血は、彼女の体をあるべき姿へと変えた。
 二本の脚は一本にまとまり、鱗の生えた蛇の体に。日本人らしく真っ黒だった髪はその対極、あらゆる汚れを寄せ付けない純白の髪に。真っ赤な瞳を除く全身が保健教師の着る白衣と同じ色の、白蛇である。
 長い間慣れ親しんだ優しい先生が突然人外に変形して、当然潤はパニックに陥る。それを予期していた恭子は、彼が大きな叫び声を上げる前に無理矢理唇を重ねた。
 恭子の赤い唇でキスされ、物理的にも精神的にも叫べなくなった潤は目を白黒させる。たっぷり一分間はくちづけしあって、ようやく囚われた男子高校生は口を解放された。

「……ふう……どうだった? ファーストキスのお味は」
「そんなの、分かんな……って、なんで、初めてだって……!」
「分かるわよ。先生は潤くんのことなら、なんでも知っているんだから
 ……でも、キスだけでそんな興奮してていいのかな? これからもっと凄いこと、するってのに」

 情熱的なキスでがちがちになっていた潤の肉棒を、制ズボンの上から恭子がそっと撫でる。布越しのその感触が余りに甘美すぎて、誘惑に抗う心はすぐに潰えた。

「……それ、って、まさか」
「そうよ。先生に潤くんの童貞、ちょうだい? そしたら私がずっとずっと、可愛がってあげるから」

 答えも聞かないまま、恭子は潤のベルトを緩め、ズボンと下着を引きずり下ろす。体格の割に大きめな陰茎が露出されても、彼は逃げようとしなかった。

「……これが、潤くんの……! 結構、立派なのね……! 惚れ惚れしちゃうくらい。こんなのを隠し持ってたなんて、いけない子」
「あ、あんまり見ないで……! 恥ずかしい……!」
「見ちゃ、だめなの? じゃあ、こういうのはどうかな」

 言うなり、恭子は潤の肉棒を口に含んだ。
 若者らしく張り詰めた男性器は強い雄の臭いをプンプン放っている。恋焦がれていた相手のそんな臭いを口中に満たされて、恭子の性欲は更に喚起される。蛇らしく、細く二股に分かれた舌を竿に絡めて、愛情たっぷりの口唇奉仕に突入する。
 喉奥にまで届く長大な男性器を唇と、舌と頬裏とで余す所無く愛撫する。飢えに任せて飲み込んだせいで亀頭の先っぽが喉の奥にぐいぐい当たるが、魔物の口はそれでもフェラチオを止めようとしない。
 ちゃんと毎日風呂には入っているらしく、目立った恥垢も汚れも無かったが、しかし白蛇の舌は咥えた肉槍を美味しいと感じていた。

「はふ、はふぅ……じゅ、ずるるる、ちゅりゅぅぅぅっ……」

 早くも溢れでてきた先走りを細長い舌でちろちろ舐めとる。本来なら生苦いだけのカウパーが、今はこの上無い美味に感じられる。
 美味しい物を舐め啜ることで恭子の乾きも癒されるし、何より、ぺろぺろすればするほど、眼前の可愛い男の子が悲鳴を上げて喜んでくれる。となれば、しゃぶり尽くさない理由が無かった。

「せ、先生……! こんなの、ダメ……!」
「……んふふ……いーわよ。へんへぇのおふひに、いっはいらしなはいね……」

 魔物は我慢する生き物ではない。恭子はようやく眼にした男根から口を離したくないとすら思っていた。
 唾をだらだら垂れ流し、唇と竿の間で露骨な水音をぴちゃぴちゃ立てながら一心不乱に奉仕する。大人の女、それも魔物娘が本気になったら、経験不足の若い男は瞬殺される以外に無い。

「せんせっ、出る、出るから、口離して……!」
「んー? やぁーよ……ふふふ、ず、れろ、えろろろ……じゅるるるるっ!」

 竿の根元まで、男性器全てを口に含み、喉を使って強引にバキューム。早くもカウパーを漏らしていた男子高校生が耐えられるものでは、到底無かった。
 蛇の舌でカリ首をねっとり舐められ、それで潤はあっさり屈服した。

「恭子先生……!」
「んぐっ!? ん、ふっ、うぁ……くっ、んぐっ、く、こくっ……」

 強い臭いを放つ子種汁を、出される端から恭子が飲み下していく。口から喉、食道から胃まで潤の臭いでいっぱいにされて、淫らな蛇はこの上ない満足感を味わった。

「先生、どうして……」
「ああ、この格好? 綺麗でしょう。私、白蛇になったのよ。人間なんかより、ずっと凄いんだから」
「……? いや、でも、今のは……」
「潤くん。これはね、治療行為なの。潤くんの心臓は、人間をやめさえすれば簡単に治るものなのよ。私はあなたを、元気にしてあげたいの」

 唇の端から白濁液を一筋垂らして、恭子が立ち上がる。長い尾を潤の両脚に絡みつけて下半身の動きを完全に封じて、白髪の女は狙いを定めた。

「じゃあ、もういいよね? 本番、いっちゃいますよ?」
「ま、待って……」
「大丈夫、大丈夫だから。何にも怖くないから、安心して先生に身を任せて。ね?」

 言って、恭子は自らの女陰をまだ萎えていない潤の肉茎に触れさせた。
 亀頭粘膜が膣口に触れて、熱い愛液が漏れ出る。未知の体温に潤が目を見張った瞬間、まるで蛇が物陰から獲物を襲うように、一気に腰を降ろす。
 ずぶぶぶ、と蛇の肉筒が若い男根を飲み込んでいく。脚を縛られ逃げることもできない潤を犯し童貞を奪う嗜虐的な快楽に、恭子は酔いしれた。
 脚に鱗の方が残るくらい強く巻き付いて、白蛇は腰部を上下させ始める。人間で言う騎乗位に近い交合であり、騎乗位が女性上位の体位であるのと同じように、恭子は拘束した若い男を思うがままに貪っていく。
 遠慮も容赦もない魔物の搾精は一般人の男が長く耐えられるものではないが、しかし童貞少年は瞬殺を免れた。先ほど射精したばかりであるため、膣を絞めつけてガンガン腰を振っても潤はまだ射精する兆しが無い。
 年上のお姉さんに強姦され、あっさり膣で射精させられる屈辱を味わわずに済んだのは彼にとって幸運なことだったかもしれないが、それは同時に、男を一瞬で射精させることのできる凄まじい快楽を長くその身に受け続けることを意味する。
 無垢な体に暴力的な快楽を刷り込まれ、潤はただ涎を垂らして悶えることしかできないが、それでも恭子の欲望は暴走し続ける。愛しい男に蛇の身体を絡め、肉棒で胎を貫かれる、その喩えようのない甘美さが彼女にとっての全てだった。

「はあ、はあ、あああ気持ちイイっ! おちんぽ、最高……! 潤くんも、気持ちいい……?」
「は、い、先生……これ、凄いですっ……!」
「いいのよ……もっと私で、気持ちよくなって。私は、潤くんのためだけに今生きているんだから……」

 最初こそ恭子の変身と淫行に恐怖し戸惑っていた潤だが、魔物の体の、そのあまりに気持ちよさにもうすっかり魅了されてしまったらしい。
 しかし魅了されているのは恭子も同じだ。恋心を長く溜め込んでいた分、爆発した時の勢いは凄い。挿れてみると見た目以上に大きく感じられる男性器があの線の細い美少年のもの、いつも勉強を見てやっていた潤のものであると思うだけで、恭子は激しい快楽と背徳感で脳幹が焼けそうな思いをした。
 飛び散った淫蜜がベッドのシーツにシミを作るほど激しく腰を振り立て、白蛇はか弱い青年をじっくりと味わう。女としてあるべき姿になった恭子は今、人生の絶頂を極めていた。

「ねえ、私のセックス、気持ちいいでしょう? 私のこと、前より好きになった?」
「好きだよ……先生のこと、ずっと、僕は……」
「ああ……もう、可愛いなあ、もう! ……あうぅっ! あハ、おちんちん、ゴリってしたねぇ……」
「恭子せんせ、今ので、僕、また……」
「ん、いいわよ。二人で仲良く、一緒にイきましょうね。わたしのお腹の中に、潤くんの赤ちゃんの素、いっぱい頂戴ね……」

 当然のように膣内射精させると言った恭子を、潤は拒みもしない。先生と生徒とか、避妊とか、そういうことは既に頭の中から飛んでしまっいるのだろう。
 膣の中で男性器がヒクヒク痙攣しだしたのを察知した恭子は、腰の上下を一気に早めた。精液を搾り取り男を骨抜きにするための動作で、彼の身も心も手に入れようとする。
 何十回かの往復の果て、二人の股間と股間が一番近づいた瞬間、潤は今日二度目の射精をした。
 濃厚なザーメンが膣奥、子宮口にぶちまけられる。体の中からじんわり暖まる感覚で、すぐに恭子も絶頂した。

「せん、せ……!」
「あ、ああ、あああっ、イ、イクぅ……」

 一番欲しかったものを手に入れたことで、彼女の顔は幸せに満ちていた。

 しばらく後。
 放課後の保健室、鍵を閉めきった密室で、二人はまた愛し合っていた。
 白衣を着たまま白蛇の形態を露わにし、全裸に剥いた潤の脚の間に陣取る。恭子は着ていたブラウスとブラジャーを脱ぎ捨て、むっちりしたおっぱいをさらけ出した。

「今日は私の胸でしてあげる。遠慮しないで、精液私の谷間に出してね」

 上半身を倒し乳房の間に男性器を迎え入れ、左右からギュッと圧迫する。スタンダードなパイズリである。
 汗でしっとり湿ったおっぱいは潤滑液もなしにぬるぬる滑り、ガチガチに勃起した肉棒を愛撫する。手や口やおまんことはまた違った感覚が豊かな双球によって生み出され、責められる少年は呻いた。

「はぁ、はぁっ……先生、これ、気持ちいい……!」
「そう? だったらもっとしてあげる。あなたを射精させられるのは、私だけなんだもの」

 恭子と交わりインキュバス化することで、潤の心臓は急速に回復した。
 それにより保健室登校から脱し普通の学生生活を送れるようになり、同級生たちとの付き合いも格段に増えた。しかし、それでも彼が恭子のいる部屋を訪れない日は無かった。
 あの日童貞を奪われて以来、潤は恭子の虜になったのだ。

 白蛇が手に力を込める。むにっと変形する柔らかそうなおっぱいはあらゆる方向から男性器に擦りつけられ、優しくも容赦なく性感を高めていく。強い乳圧に潤が喘いだ時、ぽつりと恭子が言った。

「……ところで。今日、潤くん誰かに呼び出されてたよね。あれ、何だったの?」
「!」

 乳奉仕の手は緩めないまま、冷たい目付きで恭子が問う。睨みつけられた哀れな少年は、しどろもどろになりながら答えた。

「同じクラスの、女の子だよ……」
「それで、告白されたってわけね」
「で、でも、ちゃんと断ったよ! 僕にはもう好きな人がいるからって……」

 言われなくてもそれぐらいのことは知っている。
 いくら若かろうが、セーラー服を着ていようがスクール水着を着ていようが、一緒に過ごす時間が長かろうが、そんな些細なことは人間が魔物と張りあうための何のアドバンテージにもならない。魔物に対抗して男を奪い合えるのは魔物だけだ。
 しかし理屈ではそう分かっていても、感情は納得しない。自分の大切な男にちょっかいかけられたという怒りと、人の欲しがるような良い男を自分の物にしているという優越感。複雑に入り混じった情念は青い炎を産み、捕らわれた少年をまた追い詰めた。

「ぐぅうっ! せ、先生、これ、苦しい……!」

 異常に亢進させられた性欲は男の心身を苛む。それを唯一鎮められる恭子は、ひたすら胸で肉棒を刺激するばかりで、解放してやろうという気は微塵も見せない。優しくも過酷なパイズリで潤を責め立てながら、呟くように言った。

「……やっぱり心配ね。潤くんは可愛いしかっこいいから、私がちゃんと守ってあげないと何処の誰に襲われるか、分かったもんじゃないわ。
 よし、決めた。潤くん、卒業したら私の家で一緒に住みましょう。ゆくゆくは結婚する、ということで」

 これには潤もかなりのショックを受けたらしい。いきなりのプロポーズ、それも女教師から男子生徒に向けてなんて、まず普通は予想できない。第一、まず親の承諾が得られないだろう。驚いて言葉を返せないでいる潤に、恭子は殊更残念そうに言った。

「……嫌なの? 私と同棲するの、嫌?
 悲しいなあ。一緒に住んだら、エッチな事もいっぱいしてあげられるのになあ。潤くんは私のエッチ、あんまり好きじゃないのかなあ。
 じゃあ、このパイズリも、もう止めちゃっていいかなあ。なんだか疲れてきたし」
「ややや止めないで、最後までイかせて! このままじゃ、生殺しだよ!」
「じゃあ、一緒に住んでくれる?」
「住む、住むから! 父さんと母さんも、説得してみるから!」
「ふふっ。ありがとうね。じゃあ約束通り……私の胸に、中出ししていいよ」

 青い炎で焚き付けられて硬度を増した男根を、恭子はその巨乳でしっかり包みこむ。左右互い違いに乳房を上下させ、乳肉に埋めたカリ首を柔らかい肌できゅっきゅと摩擦すると、炎に焼かれ駆り立てられる少年はすぐに達した。

「恭子先生出るっ……!」

 言うと同時に、白蛇の胸の谷間が濃い精液で溢れかえる。二度三度と断続的に吹き出るザーメンが、恭子の大きなおっぱいを白く汚していく。
 胸にとどまらず顎やへその方まで粘度の高いドロドロスペルマを撒き散らし、ようやく少年は嫉妬の炎から解放された。ベッドで仰向けになり、ちょっと脱力したところに恭子がのしかかっていく。

「まだまだ、やりたりないでしょ? 若いんだから……すぐ精が有り余って、それで他の女の子なんか寄せ付けちゃうのよね……
 よし。これから毎日、勃たなくなるまで先生に中出ししなさい。そうすればきっと、悪い虫なんてつかなくなるわよ」

 白蛇の嫉妬がまた青い炎を灯す。愛欲に焼かれる少年は、これからもずっと情け深い蛇に絡みつかれ続けるのだろう。
12/04/03 16:30更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
リリムさんのスーパー口ハウント教室は書いててテンション上がりました。

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