ねこねこニャンニャンI Love You!!
冬に差し掛かると、ある日突然気温が急降下することがある。
それまでは「まだまだ温かいなあ。秋バンザイ」なんて思っていたのに、ある朝起きると部屋の中でも吐息が白くなるほどに寒い。そんな日は、厚い衣服や暖房器具も用意できていないし身体もまだまだ冷たい空気に慣れていないものだから、もっと気温が低いはずの真冬の日よりもなお一層寒く感じたりするものだ。
震えながら起きだし寝間着から着替え、自分の体を抱きかかえながら朝食を取り、それでも温まらない部屋の中で俺たち二人は冷たい部屋の空気に耐えていた。
「うぅ、寒いニャア。いくらニャんでも、この寒さは酷いニャ。こんなのあんまりだニャ」
部屋の隅で布団をかぶって暖を取っている女の名はミーコ。その語尾や、頭頂にピンと立った一対の耳が示す通り、ワーキャットである。
頑健な肉体と靭やかな筋肉を持ち、人間よりも遥かに優れた身体能力を誇る獣人種であっても、気温の急な変化には耐性が無いらしい。布団の影から顔を覗かせ、恨めしげにこちらを見やり、俺の名を呼ぶ。
「ニャあ、キリヒト。何とかして欲しいニャ。暖かくして欲しいニャ」
「そうは言ってもお嬢さん、薪が無いよ。暖炉も、一度掃除しないと使えないし」
「ぐぬぬ」
あまりにも急に冷え込むと、寒さへの対抗手段も限られてしまう。一年ぶりの寒気に苛まれる二人の体はかくして凍え続けるのだ。
何事においても、不意打ちというのは脅威となりうる。普通に遭遇したオニよりも、バックアタックのモムノフの方が怖ろしい。正面からぶつかった角鹿よりも、背後から襲ってきた毒吹きアゲハの方が怖ろしい。要はそういうことなのだろう。
「大体、居間の暖炉使えるようにしたって、この寝室は暖かくならないじゃニャいか！ 毎朝震えて目覚めるのは嫌だニャ！」
「確かにな。何か、ちょっとした暖房器具があればいいんだが」
なんて、無い物ねだりをしてみたって仕方ない。幸い今日は休日、少しでも気温が上がるのを待って活動を開始しようとベッドに座り込むと、急に両目を光らせたミーコが布団をかぶったままこちらへにじり寄ってきた。
「暖房器具。……それだニャ！ キリヒトよ、ミーコのダンボーになるニャ！」
床に座っていた俺に飛びついて、ミーコが身体を密着させてくる。もふもふとした毛皮に覆われた四肢は冷えており、思わずさすってやりたくなる程だ。
「ミーコ知ってるニャ。寒い時には、こうして抱き合って暖めあうんだってこと」
「しょうがないなあ。雪山流ってわけかい」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、ミーコは俺の胸板に顔を擦りつけて、それこそ子猫か何かのように甘えてくる。ツンと尖った可愛い猫耳が機嫌良さげにピコピコ揺れて、寒さなんて忘れてしまうくらい可愛らしい。
ふぅー、ふぅーと鼻息荒くスキンシップの快感を貪るワーキャットの姿は愛しすぎて、これはもう遊んでやらずには居られない。俺の首元の匂いを嗅ぎ始めたミーコの前髪をちょっと持ち上げて白いおでこを晒してやると、猫はちょっと首をかしげた。
「猫の額」
「……？」
「いやあ、狭い場所のことを、猫の額くらいの場所って言うだろ。実際、どんなもんかと思ってなあ」
「そりゃあ、広くはないニャ。ワタシはおでこキャラじゃニャイからニャー」
平然とした表情を装いつつも、普段見られない場所を見られるのはちょっと恥ずかしいらしいのが見て取れる。何度も互いの裸を見せ合い、ほとんど毎日膣内射精している仲だというのに、女性の恥らう基準はよく分からない。可愛いからオールオッケーだが。
うえー、したー、などと言って前髪をいじり、確かに広いとは言えないおでこを指先でツンツンつついて遊んでいると、弄ばれた彼女が不意に顔を背けた。口を真一文字に引き結び、頬を薄紅色に染めたその表情は差し詰めぷんむくれといったところ。
「もう！ いい加減にするニャ！ ダンボーの分際で、余計なことするニャ！」
怒ったようなことを言いつつも、伏せられた眼やピンと立った尻尾が彼女のどうしようもない甘え癖を如実に表してしまっている。
強気で愛想の悪いメドゥーサという魔物娘の場合も、本体が強気な態度を取れば取るほど頭の蛇が男のほうへまとわりついて親愛や慕情や愛欲を示すというが、ワーキャットの尻尾もそれと同じようなものなのだろう。本人の意志に関係なく、好きなモノは好きという感情をさらけ出してしまうこれらのパーツは、気まぐれだったり素直になりきれなかったりする娘たちへの魔王閣下からの贈り物だ。
と、そっぽを向いていたミーコが急にこちらへ視線を戻した。ジト目で俺の顔を見上げるちょっと不機嫌そうな顔も、なかなか良いものである。
「ニャあ。キリヒト。 今誰か、他の女のことを考えていなかったかニャ？」
いったい如何なる野生の勘ゆえか、ミーコはこうして俺の思考を読むことが時々ある。こういう時には慌てず騒がず、落ち着いて対処しなければならない。さもなくば、鋭い爪が振るわれることになるのだ。
「いやいや、考えてなんかいないよ。俺の頭にはずっと、お前だけだよ」
「いいやウソだニャー。隠そうとしたって無駄だニャー。……ウソは罪だニャ。罪には罰を与えるニャ」
「ウソじゃないって。ミーコこそ、俺以外の男のことを考えていたんじゃないか？」
「！？」
片手を振り上げかけていたところに返された予想外の反撃に、すっかり捕食者な気分でいた猫女は思考を停止。動きが止まったのを見て、ここぞとばかりに俺は畳み掛ける。
「ああ、やっぱり。悲しいなあ。俺はこんなにミーコのことが好きなのに。お前は俺だけを見てはくれないのか」
「ち、違うニャあ！ 他の男のことなんて考えてないニャ！」
「そうかぁ？ 自分に疚しい所があるから、俺のことも疑ってしまうんじゃないのか？」
「そんなことないニャ！ キリヒト以外に興味なんてないニャ！」
「本当？」
「本当ニャー！ ワタシが愛してるのはキリヒトだけニャー！ キリヒト大好きニャー！」
やはり愛の告白はいい。何度聴いても飽きるということが無い。熱烈であればあるほど、俺の頬は緩み、胸は熱くなるのだ。
ニヤニヤしたままミーコを見下ろしていると、からかわれたことに気づいた猫がプーッと頬を膨らませた。小さな口から文句が飛び出すよりも先に、慰撫の言葉を掛ける。
「悪かった悪かった。お詫びってわけじゃないけど……こっちに座ってみて」
立ち上がり、布団に座りなおして隣の部分をポンポンと叩く。
彼氏とベタベタくっついて発情しないワーキャットなどいない。おちょくられながらも、そろそろ我慢できなくなってるんじゃないかと当たりをつけてみたが、大当たりだったようだ。ミーコは尖らせかけた口を元に戻し、かぶっていた布団を床に落としてこちらへ来た。
俺の隣に腰を下ろして、潤んだ瞳で上目遣い。ああもう可愛いなあ、やっぱりこいつは自分の可愛さを分かってるんじゃなかろうかと悩殺された俺に、ワーキャットが囁く。
「……あっためて、くれる？」
「……ふふ」
もはや言葉は要らない。背中に腕を回し、暑い頬に軽くキスすると、股の方から水音が響く。
「四つん這いになってみて。後ろから、いっぱいしてやるから」
他の男とか、疚しい所があるとか意地悪言われたせいか、今日のミーコは珍しく従順だ。いつになく受身で、何処かMっぽい猫の媚態に興奮を抑えることができない。
いつも好んで履いている短いズボンを膝まで下ろし両脚の動きを制限してみる。が、いつになくビクッとした感じに彼女の微かな恐れを悟った俺は、これ以上サディスティックになるのを中止した。
男と共に歩むために生まれてきたのが魔物娘である。乱暴にされるより、優しくされることを望むのも当然と言えよう。
ふるふる震えながらも股はしっかり濡れており、下ろした下着と陰唇の間に愛液が糸を引いていてたまらなく卑猥だ。さっさと自分の、寝間着から着替えてまだそう経っていないズボンも脱ぎ捨てて、硬くなったものを当てた。
「じゃあいくぞっ……と」
何度も交わることで俺専用に特化し、俺と一緒に気持ちよくなるための最良の形態をとりつつある女性器に肉棒を遠慮なく差し込んでいく。濡れやすい魔物娘にとって、ペッティングすらも前戯となりうるのだ。つくづく、魔物娘というのは合目的的な生き物である。
なんて、余裕ぶってもいられない。柔らかく精細な肉の襞はカリ首の高まりから裏筋、尿道付近の不規則な形状にもぴったりと張り付き、愛蜜を纏って離そうとしない。
このままでは自分一人で気持ちよくなってしまう、と俺は危惧した。ミーコにもっと感じてもらうため、膣へ挿入しながら右手を伸ばし、ベッドに押し付けられていた彼女のおっぱいを掴む。毛皮に覆われた手のひらサイズのそれを握りしめ、五本の指でじっくりまさぐると、愛撫に応える肉体が俺を受け入れる。
最近は俺も慣れてきて、少し揉んでやるだけでミーコの胸を露出させられるようになった。普段は獣の毛に覆われている乳房も、必要に応じて外気に晒すことが出来るというのは獣人を娶った男なら誰でも知っていることだ。
こんな所にも魔物娘という生き物の都合の良さが現れている。が、欲望と性愛を嫌悪するあの主神の創りたもうた我々人間男だって、普段使わないときは陰茎を小さくしておき、必要に多じて大きく固くなるよう調節しているのだ。快楽を肯定する魔王閣下の手になる魔物娘たちが人間以上に合理的であったとしても、何の矛盾も無い。
如何なる魔術によって毛を生やしたり消したりしているのかは今もって謎だが、こうしておっぱいを揉めるのならば詳しい機構など、どうでもいい。俺にあるのはたったひとつの思想だけだ。たったひとつ、「おっぱいを揉む」それだけだ。過程や方法なぞ、どうでも良いのだ。
ということですっかり露わになったCカップを、緊張を解すかのように揉んでみる。柔らかい乳肉を通して胸の奥、心臓の鼓動が伝わってくるようで、いくら触っていても飽きない。
「にゃ、にゃあ……ムネもいいけど、もっと、こっちも……」
「分かってるよ。でもこうやってオッパイをマッサージすると、身体が温まるだろう？」
「ふん。もう、知らないんだにゃっ」
興奮と劣情で煮えたぎるミーコの上半身は懐炉のように暖かく、いつまでも触っていたくなってしまうほどだが、しかし余り胸でばかり遊んではいられない。
ぎりぎり貧乳とは呼べないくらいの微妙な膨らみだけではなく、ちゃんと女性器も満足させてやらねば男が廃る。右手で控えめな膨らみを捉えたまま、俺は一気に腰を突き込んだ。
「ひ、ぃっ……！」
「う、なんか今すげー締まったな。もしかして、イったのか？」
「そ、そんにゃこと聞かにゃいでぇ……恥ずかしいんにゃから、もう……」
まだロクに腰を振ってもいないのに挿入だけで達するというのは、性的に奔放な魔物娘の価値観からしても恥ずべきことなのだろうか。確かなことは、顔を真っ赤に染めた彼女のせいで俺はもう抑えが効かないということだけだ。
膝の位置をちょっと直し、空いた左手でミーコの腰を抱えて俺は猛然とピストン運動を始めた。イったばかりで敏感なおまんこを荒々しく犯され、激しい抽送の勢いで膣口から透明な粘液が飛び散る。潮ともバルトリン腺液とも付かない熱い液体で布団を汚しながら、発情雌猫は叫んだ。
「にゃ、にゃあああっ！ すご、キリヒト、これすごいにゃっ、ワタシ、ワタシ……！」
「あああ可愛いよミーコ！ もっとエロいとこ、見せてくれ！ だらしない顔、俺だけに見せてくれよっ！」
はぁはぁと短い息を吐きながら激しい感覚に翻弄されるミーコ。そんな彼女を逃さぬよう、両腕でしっかりと捉えて離さない俺。
もしかして彼女は先程からずっと絶頂しっぱなしなんじゃあなかろうか、そう思えるほどに強烈な締まりの肉筒に激情を叩きつける。既に我慢汁が漏れ出てきているのをなんとなく感じながら、それでも俺は腰の力を抜かなかった。
「ミーコ、気持ちいいか？ 俺ので、またイけそうか！？」
「ふにゅ、ひゃ、にゃぁ……！ イく、ワタシ、イくよぉ……キリヒトのが好き過ぎて、また……！」
「そうかそうか。じゃあ、今日もたっぷり中出ししてやるからな……！」
「あ、ほ、欲しい！ せーし、中に出して、イかせて……！」
一人の男として、手前の女の願いを叶えない訳にはいかない。しっかり種付けすべく、俺はラストスパートに入った。
一度腰を振って陰茎を子宮口まで届かせる度に、狂った膣肉は潤滑液を吹いて喜び悶える。股間を彼女の淫蜜でどろどろにされた俺もまた、その性感に溺れていく。最後に一回、今まで以上にしっかり奥まで犯してやると、竿の根元から鈴口まで同時に快感を与えられ、俺は忍耐を手放した。
「ふっ……！」
「ぅ、くぅぅっ！ あ、熱い……！ キリヒトの、精液……！」
胎の中に子種汁を注ぎ込まれて、やっとミーコは満足したらしい。熱い液を体の奥で受け止めて、ようやく寒さから解放されたのだろう。
「ああ、暖かい……キリヒト、大好き……」
うわ言のように呟かれる甘い言葉は、俺の体温も急上昇させてくれた。
数日後。
ジパング発祥の、コタツという名の暖房器具を購入した俺とミーコは、二人揃って肩までその布団の中に潜り込み、暖気を貪っていた。
「はふぅ、すんごくぬくいニャー。これ最高だニャー」
「うん。全く、ジパング人は良い物を考えつくなあ」
このコタツという家具は正方形の机と布団を組み合わせたものであり、内部の器具から発せられる熱を逃さず高効率な暖房を実現している。先日ミーコと共に見に行った家具屋で展示されてあるのを見て、今の我々に必要なものはこれだ、と二人して天啓を受けてしまったのだが、やはり買って正解だったようだ。
「ニャー、ところで。 ……にゅふふふ」
「？」
俺以上にコタツを気に入ったらしいミーコはここ最近、することがなければほとんど一日中これに篭っている。今も、俺の隣でごろんごろん寝転がりながら、外気の冷たさを拒絶し続けていたのだが。
「いくら寒いからって、ずっとゴロゴロしてるだけってのは、やっぱり良くニャいよニャ？」
「まあ、それはそうかね」
なんとなく先が読めてきたが、彼女のセリフを奪うこともなく俺は続きを待つ。掛けられた言葉は果たして、予想と違わぬものだった。
「じゃあ、二人でうんどーするかニャ？ ……にゃフフ。いっぱい汗かこうニャ」
見る見るうちに瞳を淫蕩に染めていくミーコは、器用にもコタツに入ったまま服を脱ぎ、俺の衣も剥いでしまった。
体が温まり、目の前には最高の美人。こんな状況で陰茎が勃起しないはずはなく、唇を合わせて抱きあうのすらもどかしく、俺たちはまた互いを貪り合うのだった。
「この冬も、ずっと一緒だにゃ？ キリヒト……」
「そうだな。これからも、俺の側にはお前だけだよ」
これからますます冬は深まり、気候は寒く厳しくなっていくだろう。しかし、暖めあう相手さえいれば冷たい風など、どうということはない。敢えて確かめ合うまでもなく、俺たちはそれを知っていた。
それまでは「まだまだ温かいなあ。秋バンザイ」なんて思っていたのに、ある朝起きると部屋の中でも吐息が白くなるほどに寒い。そんな日は、厚い衣服や暖房器具も用意できていないし身体もまだまだ冷たい空気に慣れていないものだから、もっと気温が低いはずの真冬の日よりもなお一層寒く感じたりするものだ。
震えながら起きだし寝間着から着替え、自分の体を抱きかかえながら朝食を取り、それでも温まらない部屋の中で俺たち二人は冷たい部屋の空気に耐えていた。
「うぅ、寒いニャア。いくらニャんでも、この寒さは酷いニャ。こんなのあんまりだニャ」
部屋の隅で布団をかぶって暖を取っている女の名はミーコ。その語尾や、頭頂にピンと立った一対の耳が示す通り、ワーキャットである。
頑健な肉体と靭やかな筋肉を持ち、人間よりも遥かに優れた身体能力を誇る獣人種であっても、気温の急な変化には耐性が無いらしい。布団の影から顔を覗かせ、恨めしげにこちらを見やり、俺の名を呼ぶ。
「ニャあ、キリヒト。何とかして欲しいニャ。暖かくして欲しいニャ」
「そうは言ってもお嬢さん、薪が無いよ。暖炉も、一度掃除しないと使えないし」
「ぐぬぬ」
あまりにも急に冷え込むと、寒さへの対抗手段も限られてしまう。一年ぶりの寒気に苛まれる二人の体はかくして凍え続けるのだ。
何事においても、不意打ちというのは脅威となりうる。普通に遭遇したオニよりも、バックアタックのモムノフの方が怖ろしい。正面からぶつかった角鹿よりも、背後から襲ってきた毒吹きアゲハの方が怖ろしい。要はそういうことなのだろう。
「大体、居間の暖炉使えるようにしたって、この寝室は暖かくならないじゃニャいか！ 毎朝震えて目覚めるのは嫌だニャ！」
「確かにな。何か、ちょっとした暖房器具があればいいんだが」
なんて、無い物ねだりをしてみたって仕方ない。幸い今日は休日、少しでも気温が上がるのを待って活動を開始しようとベッドに座り込むと、急に両目を光らせたミーコが布団をかぶったままこちらへにじり寄ってきた。
「暖房器具。……それだニャ！ キリヒトよ、ミーコのダンボーになるニャ！」
床に座っていた俺に飛びついて、ミーコが身体を密着させてくる。もふもふとした毛皮に覆われた四肢は冷えており、思わずさすってやりたくなる程だ。
「ミーコ知ってるニャ。寒い時には、こうして抱き合って暖めあうんだってこと」
「しょうがないなあ。雪山流ってわけかい」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、ミーコは俺の胸板に顔を擦りつけて、それこそ子猫か何かのように甘えてくる。ツンと尖った可愛い猫耳が機嫌良さげにピコピコ揺れて、寒さなんて忘れてしまうくらい可愛らしい。
ふぅー、ふぅーと鼻息荒くスキンシップの快感を貪るワーキャットの姿は愛しすぎて、これはもう遊んでやらずには居られない。俺の首元の匂いを嗅ぎ始めたミーコの前髪をちょっと持ち上げて白いおでこを晒してやると、猫はちょっと首をかしげた。
「猫の額」
「……？」
「いやあ、狭い場所のことを、猫の額くらいの場所って言うだろ。実際、どんなもんかと思ってなあ」
「そりゃあ、広くはないニャ。ワタシはおでこキャラじゃニャイからニャー」
平然とした表情を装いつつも、普段見られない場所を見られるのはちょっと恥ずかしいらしいのが見て取れる。何度も互いの裸を見せ合い、ほとんど毎日膣内射精している仲だというのに、女性の恥らう基準はよく分からない。可愛いからオールオッケーだが。
うえー、したー、などと言って前髪をいじり、確かに広いとは言えないおでこを指先でツンツンつついて遊んでいると、弄ばれた彼女が不意に顔を背けた。口を真一文字に引き結び、頬を薄紅色に染めたその表情は差し詰めぷんむくれといったところ。
「もう！ いい加減にするニャ！ ダンボーの分際で、余計なことするニャ！」
怒ったようなことを言いつつも、伏せられた眼やピンと立った尻尾が彼女のどうしようもない甘え癖を如実に表してしまっている。
強気で愛想の悪いメドゥーサという魔物娘の場合も、本体が強気な態度を取れば取るほど頭の蛇が男のほうへまとわりついて親愛や慕情や愛欲を示すというが、ワーキャットの尻尾もそれと同じようなものなのだろう。本人の意志に関係なく、好きなモノは好きという感情をさらけ出してしまうこれらのパーツは、気まぐれだったり素直になりきれなかったりする娘たちへの魔王閣下からの贈り物だ。
と、そっぽを向いていたミーコが急にこちらへ視線を戻した。ジト目で俺の顔を見上げるちょっと不機嫌そうな顔も、なかなか良いものである。
「ニャあ。キリヒト。 今誰か、他の女のことを考えていなかったかニャ？」
いったい如何なる野生の勘ゆえか、ミーコはこうして俺の思考を読むことが時々ある。こういう時には慌てず騒がず、落ち着いて対処しなければならない。さもなくば、鋭い爪が振るわれることになるのだ。
「いやいや、考えてなんかいないよ。俺の頭にはずっと、お前だけだよ」
「いいやウソだニャー。隠そうとしたって無駄だニャー。……ウソは罪だニャ。罪には罰を与えるニャ」
「ウソじゃないって。ミーコこそ、俺以外の男のことを考えていたんじゃないか？」
「！？」
片手を振り上げかけていたところに返された予想外の反撃に、すっかり捕食者な気分でいた猫女は思考を停止。動きが止まったのを見て、ここぞとばかりに俺は畳み掛ける。
「ああ、やっぱり。悲しいなあ。俺はこんなにミーコのことが好きなのに。お前は俺だけを見てはくれないのか」
「ち、違うニャあ！ 他の男のことなんて考えてないニャ！」
「そうかぁ？ 自分に疚しい所があるから、俺のことも疑ってしまうんじゃないのか？」
「そんなことないニャ！ キリヒト以外に興味なんてないニャ！」
「本当？」
「本当ニャー！ ワタシが愛してるのはキリヒトだけニャー！ キリヒト大好きニャー！」
やはり愛の告白はいい。何度聴いても飽きるということが無い。熱烈であればあるほど、俺の頬は緩み、胸は熱くなるのだ。
ニヤニヤしたままミーコを見下ろしていると、からかわれたことに気づいた猫がプーッと頬を膨らませた。小さな口から文句が飛び出すよりも先に、慰撫の言葉を掛ける。
「悪かった悪かった。お詫びってわけじゃないけど……こっちに座ってみて」
立ち上がり、布団に座りなおして隣の部分をポンポンと叩く。
彼氏とベタベタくっついて発情しないワーキャットなどいない。おちょくられながらも、そろそろ我慢できなくなってるんじゃないかと当たりをつけてみたが、大当たりだったようだ。ミーコは尖らせかけた口を元に戻し、かぶっていた布団を床に落としてこちらへ来た。
俺の隣に腰を下ろして、潤んだ瞳で上目遣い。ああもう可愛いなあ、やっぱりこいつは自分の可愛さを分かってるんじゃなかろうかと悩殺された俺に、ワーキャットが囁く。
「……あっためて、くれる？」
「……ふふ」
もはや言葉は要らない。背中に腕を回し、暑い頬に軽くキスすると、股の方から水音が響く。
「四つん這いになってみて。後ろから、いっぱいしてやるから」
他の男とか、疚しい所があるとか意地悪言われたせいか、今日のミーコは珍しく従順だ。いつになく受身で、何処かMっぽい猫の媚態に興奮を抑えることができない。
いつも好んで履いている短いズボンを膝まで下ろし両脚の動きを制限してみる。が、いつになくビクッとした感じに彼女の微かな恐れを悟った俺は、これ以上サディスティックになるのを中止した。
男と共に歩むために生まれてきたのが魔物娘である。乱暴にされるより、優しくされることを望むのも当然と言えよう。
ふるふる震えながらも股はしっかり濡れており、下ろした下着と陰唇の間に愛液が糸を引いていてたまらなく卑猥だ。さっさと自分の、寝間着から着替えてまだそう経っていないズボンも脱ぎ捨てて、硬くなったものを当てた。
「じゃあいくぞっ……と」
何度も交わることで俺専用に特化し、俺と一緒に気持ちよくなるための最良の形態をとりつつある女性器に肉棒を遠慮なく差し込んでいく。濡れやすい魔物娘にとって、ペッティングすらも前戯となりうるのだ。つくづく、魔物娘というのは合目的的な生き物である。
なんて、余裕ぶってもいられない。柔らかく精細な肉の襞はカリ首の高まりから裏筋、尿道付近の不規則な形状にもぴったりと張り付き、愛蜜を纏って離そうとしない。
このままでは自分一人で気持ちよくなってしまう、と俺は危惧した。ミーコにもっと感じてもらうため、膣へ挿入しながら右手を伸ばし、ベッドに押し付けられていた彼女のおっぱいを掴む。毛皮に覆われた手のひらサイズのそれを握りしめ、五本の指でじっくりまさぐると、愛撫に応える肉体が俺を受け入れる。
最近は俺も慣れてきて、少し揉んでやるだけでミーコの胸を露出させられるようになった。普段は獣の毛に覆われている乳房も、必要に応じて外気に晒すことが出来るというのは獣人を娶った男なら誰でも知っていることだ。
こんな所にも魔物娘という生き物の都合の良さが現れている。が、欲望と性愛を嫌悪するあの主神の創りたもうた我々人間男だって、普段使わないときは陰茎を小さくしておき、必要に多じて大きく固くなるよう調節しているのだ。快楽を肯定する魔王閣下の手になる魔物娘たちが人間以上に合理的であったとしても、何の矛盾も無い。
如何なる魔術によって毛を生やしたり消したりしているのかは今もって謎だが、こうしておっぱいを揉めるのならば詳しい機構など、どうでもいい。俺にあるのはたったひとつの思想だけだ。たったひとつ、「おっぱいを揉む」それだけだ。過程や方法なぞ、どうでも良いのだ。
ということですっかり露わになったCカップを、緊張を解すかのように揉んでみる。柔らかい乳肉を通して胸の奥、心臓の鼓動が伝わってくるようで、いくら触っていても飽きない。
「にゃ、にゃあ……ムネもいいけど、もっと、こっちも……」
「分かってるよ。でもこうやってオッパイをマッサージすると、身体が温まるだろう？」
「ふん。もう、知らないんだにゃっ」
興奮と劣情で煮えたぎるミーコの上半身は懐炉のように暖かく、いつまでも触っていたくなってしまうほどだが、しかし余り胸でばかり遊んではいられない。
ぎりぎり貧乳とは呼べないくらいの微妙な膨らみだけではなく、ちゃんと女性器も満足させてやらねば男が廃る。右手で控えめな膨らみを捉えたまま、俺は一気に腰を突き込んだ。
「ひ、ぃっ……！」
「う、なんか今すげー締まったな。もしかして、イったのか？」
「そ、そんにゃこと聞かにゃいでぇ……恥ずかしいんにゃから、もう……」
まだロクに腰を振ってもいないのに挿入だけで達するというのは、性的に奔放な魔物娘の価値観からしても恥ずべきことなのだろうか。確かなことは、顔を真っ赤に染めた彼女のせいで俺はもう抑えが効かないということだけだ。
膝の位置をちょっと直し、空いた左手でミーコの腰を抱えて俺は猛然とピストン運動を始めた。イったばかりで敏感なおまんこを荒々しく犯され、激しい抽送の勢いで膣口から透明な粘液が飛び散る。潮ともバルトリン腺液とも付かない熱い液体で布団を汚しながら、発情雌猫は叫んだ。
「にゃ、にゃあああっ！ すご、キリヒト、これすごいにゃっ、ワタシ、ワタシ……！」
「あああ可愛いよミーコ！ もっとエロいとこ、見せてくれ！ だらしない顔、俺だけに見せてくれよっ！」
はぁはぁと短い息を吐きながら激しい感覚に翻弄されるミーコ。そんな彼女を逃さぬよう、両腕でしっかりと捉えて離さない俺。
もしかして彼女は先程からずっと絶頂しっぱなしなんじゃあなかろうか、そう思えるほどに強烈な締まりの肉筒に激情を叩きつける。既に我慢汁が漏れ出てきているのをなんとなく感じながら、それでも俺は腰の力を抜かなかった。
「ミーコ、気持ちいいか？ 俺ので、またイけそうか！？」
「ふにゅ、ひゃ、にゃぁ……！ イく、ワタシ、イくよぉ……キリヒトのが好き過ぎて、また……！」
「そうかそうか。じゃあ、今日もたっぷり中出ししてやるからな……！」
「あ、ほ、欲しい！ せーし、中に出して、イかせて……！」
一人の男として、手前の女の願いを叶えない訳にはいかない。しっかり種付けすべく、俺はラストスパートに入った。
一度腰を振って陰茎を子宮口まで届かせる度に、狂った膣肉は潤滑液を吹いて喜び悶える。股間を彼女の淫蜜でどろどろにされた俺もまた、その性感に溺れていく。最後に一回、今まで以上にしっかり奥まで犯してやると、竿の根元から鈴口まで同時に快感を与えられ、俺は忍耐を手放した。
「ふっ……！」
「ぅ、くぅぅっ！ あ、熱い……！ キリヒトの、精液……！」
胎の中に子種汁を注ぎ込まれて、やっとミーコは満足したらしい。熱い液を体の奥で受け止めて、ようやく寒さから解放されたのだろう。
「ああ、暖かい……キリヒト、大好き……」
うわ言のように呟かれる甘い言葉は、俺の体温も急上昇させてくれた。
数日後。
ジパング発祥の、コタツという名の暖房器具を購入した俺とミーコは、二人揃って肩までその布団の中に潜り込み、暖気を貪っていた。
「はふぅ、すんごくぬくいニャー。これ最高だニャー」
「うん。全く、ジパング人は良い物を考えつくなあ」
このコタツという家具は正方形の机と布団を組み合わせたものであり、内部の器具から発せられる熱を逃さず高効率な暖房を実現している。先日ミーコと共に見に行った家具屋で展示されてあるのを見て、今の我々に必要なものはこれだ、と二人して天啓を受けてしまったのだが、やはり買って正解だったようだ。
「ニャー、ところで。 ……にゅふふふ」
「？」
俺以上にコタツを気に入ったらしいミーコはここ最近、することがなければほとんど一日中これに篭っている。今も、俺の隣でごろんごろん寝転がりながら、外気の冷たさを拒絶し続けていたのだが。
「いくら寒いからって、ずっとゴロゴロしてるだけってのは、やっぱり良くニャいよニャ？」
「まあ、それはそうかね」
なんとなく先が読めてきたが、彼女のセリフを奪うこともなく俺は続きを待つ。掛けられた言葉は果たして、予想と違わぬものだった。
「じゃあ、二人でうんどーするかニャ？ ……にゃフフ。いっぱい汗かこうニャ」
見る見るうちに瞳を淫蕩に染めていくミーコは、器用にもコタツに入ったまま服を脱ぎ、俺の衣も剥いでしまった。
体が温まり、目の前には最高の美人。こんな状況で陰茎が勃起しないはずはなく、唇を合わせて抱きあうのすらもどかしく、俺たちはまた互いを貪り合うのだった。
「この冬も、ずっと一緒だにゃ？ キリヒト……」
「そうだな。これからも、俺の側にはお前だけだよ」
これからますます冬は深まり、気候は寒く厳しくなっていくだろう。しかし、暖めあう相手さえいれば冷たい風など、どうということはない。敢えて確かめ合うまでもなく、俺たちはそれを知っていた。
11/11/15 00:04更新 / ナシ・アジフ